<夕暮れ時の掃討戦>



第一章.事の起こりは・・・

「ソースケ!! あたしさらわれちゃって・・・早く助けに来なさいよ!! 解ったわね!!
 あたしは今・・・プツ!!、ツーツーツー」
「おい、千鳥!!」
 千鳥からの電話は用件だを告げて切れてしまった。
 ・・・と言うよりも千鳥の携帯電話の電源が切れた様だ。
 ・・・ついでの様に俺の携帯電話にアラームが鳴る。
「むっ・・・電池切れか。」
 これで千鳥との連絡方法は完璧に絶たれてしまった訳だ。
 いや待て・・・所在地なら常備身に付けている様にと渡した発信機がある筈だ。
 部屋に備え付けの受信機で千鳥の居場所を探る・・・
「自宅だと?」
 思わず部屋の向かいにある千鳥の自宅を眺める・・・が。
 どう考えても千鳥が部屋から助けを求めたとは考えられない。
 常時俺が見張っているのだからな、それに争った気配は感じなかった。
「八方塞・・・か。
 いや、取り敢えず現場を確認しよう。」
 俺は素早く装備を整えて千鳥の部屋へと向かった。

 千鳥の部屋の前に辿り付き取り敢えずインターホンを鳴らす。
 待つ事3分・・・反応は無し。
 俺は無言のままでプラスチック爆弾を玄関に慎重に塗り込む。
「・・・ソースケ止めとけ後でカナメに殴られるぞ。」
 むっ!! 突然の呼びかけに素早く声のかかった方を向く。
 そこには一人の男が立っていた。
「クルツ、何故お前がここに・・・」
 声の主は俺の同僚・・・クルツ・ウェーバー軍曹だった。
「何故と言われてもな・・・定時連絡をしてこなかったら不審の思うだろうが?」
 ・・・迂闊だった、俺とした事が定時連絡を忘れるとは。
 やはり千鳥の事になると俺は少し冷静さが無くなる。
 何故だ?
 一人思案にくれる俺にクルツから能天気な声がかかる。
「どうせまたカナメがらみだろうが?
 だから俺は現場まで見に来るのは御免だったんだ。
 カナメの事となると誰かさん人が変わるからな・・・」
 俺の顔を見てニヤニヤしながらそう言い放つクルツ。
 事実が少し含まれているだけに反論の余地が無かった。
「・・・千鳥の所在が不明だ。
 出かけ先で何かトラブルに巻き込まれたかもしれん。」
 簡潔に現在の状況をクルツに報告する。
 そして再びプラスチック爆弾を・・・
「だから止めろって・・・ったく。
 ちょっと退いてろソースケ。」
 俺が素直に退いて場所を譲るとクルツはポケットから針金を取り出す。
 そして針金を鍵穴に刺し込み・・・2、3度回した後、あっけなく鍵は開いた。
「まっ、ざっとこんなモンだ。」
「・・・何故お前がこんな技能を持っているんだ?」
「俺様の七つの特技の一つだと思ってろ。」
 俺が首を傾げながらクルツと一緒にカナメのアパートに入っていった。
 ・・・ちなみに手掛かりになる様な物は無く。
 収穫は千鳥に渡した発信機を兼ねたネックレスをテーブルの上で見付けただけだった。
「何処にいるんだ千鳥・・・」



第二章.捜索とは・・・

「で? これからどうする。」
「決まっている。
 千鳥は俺に助けを求めていた・・・ならば救出するのみ、だ。」
 俺は即答で今後の方針を語る。
「でも手掛かりが無いんだぜ?
 どうやってカナメの居場所を探すんだよ。」
 クルツが運転する軽自動車の中で、俺は持参してきた地図を睨んでいる。
「・・・何だよその地図の上に描いてある赤丸は。」
 クルツの声に不審の響きが混じる。
「この周辺の暴力団の事務所の場所をピックアップした地図だ。」
 俺の返答を聞いてクルツが天を仰ぐフリをする。
「もしかして、カナメが人身売買の組織に捕まったとか思ってるのか?」
 クルツが呆れた口調で俺に話しかける。
「可能性は否定できんだろう・・・例の組織が動いたにしては仕事が雑だ。
 それに恭子にも連絡が取れないのがおかしい。
 二人揃って拉致される事となると・・・」
 人身売買、臓器密輸、それとも・・・
「・・・お前また頭の中で暴走してるだろ。」
「・・・取り敢えずその交差点を右に曲がってくれ。」
「はいはい、ったく!! 俺もお人好しになったもんだよ!!」
 クルツの切ったハンドルの向きにそって自動車はドリフトをし、交差点を曲がっていった。
「待ってろよ千鳥・・・」

 ドガッァァァァァァァンンン!!
「な、何だ!! 何が起こったんだ!!」
 パラララララララララッッッ!!
「どうした!! 敵対組織の殴り込みか!!」
「残念だが違うな・・・」
「なっ!! 貴様一体何処からこの部屋に!!」
 まずビルの横手を爆破し中に発煙筒を投げ込む。
 一階の爆発に気をとられている下っ端を無視し、煙に紛れ込み俺は組長を襲撃した。
 そして慌てている組長らしき男を後ろから羽交い締めにして、動きを押さえる。
「・・・質問は一つだ貴様の組では人身売買をしているか。」
 首にグルカナイフを突き付けて俺が組長らしき男に尋問をする。
「そ、そんな事を正直に話すと思ってるのか!!」
「そうか・・・では残念だがここで人生を諦めて貰おう。」
 突き付けたナイフを3cm程進ませる・・・
 男の首から血が流れ出始める。
「ま、まってくれ!! 俺の組は人身売買関係は関わってないんだ!!」
「なら何処にいけばいい?」
「・・・み、港の事務所がそうだ。
 た、頼むから俺が話したまなんて・・・グアッ!!」
 最後まで話しを聞かず俺は男の後頭部を一撃して意識を奪う。
 置き土産にもう一本発煙筒を部屋に置いて行く。
 そして窓から抜けだしクルツに合流する。
「で、8件目での成果はどうですかサガラ軍曹。」
「港の事務所が担当らしい。」
 俺の返事を受けてクルツが肩を竦める。
「8件目にしてやっと一歩前進かよ。
 このままなら東京中の暴力団事務所を襲撃しないと駄目なんじゃないか?」
「黙って港に行け。」
「へいへい。」
 そしてクルツの運転する軽自動車はホイルスピンをしながら、港に向けて走り出した。
「今行くからな千鳥・・・」



第三章.死闘とは・・・

 俺達が港の事務所に着いた時・・・既に相手は臨戦体制を整えていた。
「まっ予測はしてた事だよなコレはさ。」
 ハンドルに両足を乗せてくつろぎながらクルツが俺に意見を求める。
「・・・サポートを頼む。」
 俺は愛用の拳銃を懐にしまい、愛用のナイフ一式を装備する。
「まあ別段それくらいやってやるけどさ。」
 その言葉を聞きながら俺は愛用のサブマシンガンに弾薬を詰める。
 次に愛用のライフルに弾を込めクルツに手渡す。
 そのライフルを受け取りながらクルツが呟く。
「・・・お前さんもう少し冷静になれ無いか?」
 その言葉を無視して俺は手榴弾と閃光弾、予備の弾薬一式を肩にかける。
「・・・大量殺人は犯罪なんだぞ、知ってるか?」
 俺は車から出てトランクを開ける。
 トランクの奥に眠っているロケットランチャーを取り出し動作確認をする。
「・・・ソースケ、お前そんな物まで。」
 クルツの言葉に呆れを通り越して恐れが混じり出す。
 俺は無言で動作確認の終わったロケットランチャーに弾を込める。
 そして俺は全ての準備を完了し戦場へと向かう・・・
「ここにASさえあれば・・・完璧にあいつらを殲滅できるのにな残念だ。」
「・・・冗談になってないぞソースケ。」
 一分後・・・港は灼熱の地獄と化した.

 ドコォォォォォォンンンン!!
 チュドォォォォォォォンン!!
 パパパパパパパパパパッ!!
「ぎやぁぁぁぁぁぁ!!」
 パン!! パン!! パパァン!!
「ここは日本じゃなかったのか〜〜〜〜〜!!」
 ドォン!! ドドォン!!
 ズズズズズゥゥゥゥンンン・・・・
「た、大変ですよ兄貴!! 港が崩れだしましたよ!!」
「何〜〜〜!! そうかここは埋立地だから地盤が緩いんだ!!」
「すげ〜!! さすが兄貴だ博識っすね!!」
「おうよ!! 何てたって俺は・・・ギィヤ〜〜〜〜!!」
「あ、兄貴〜〜〜〜!!(泣)」
 ダン!! ダダダダァン!!
 ドドドドドドドッド!!
 ボカーーーーーン!!

 ・・・その日死傷者は出なかったものの多数の怪我人が病院に運ばれた。
 そして東京の地図上から一つの港が消滅した。

「おいソースケ・・・」
「なんだクルツ。」
「確かに誘拐された女性はいたな。」
「ああ、確かにいたぞ。」
「・・・カナメじゃねーじゃねーかよ。」
「・・・そうだな。」
 俺の同意を得てから後ろの光景を見渡すクルツ。
「・・・どんな報告書を書くつもりだお前さん?」
「・・・報告書はお前にまかせる。」
「そりゃお前は報告書じゃなくて始末書だっつーの!!」
 そして壊滅した港に夕日が落ちていくのだった・・・
「千鳥・・・君は今何処にいるんだ?」



第四章.再会とは・・・

「次の事務所を襲撃するぞ。」
「・・・まあ諺にも毒食うならば皿までってあるからな。」
 最早呆れて何も言わない、と言ったばかりのくせにそう俺に言い返すクルツ。
 次の事務所の場所の確認と襲撃プランを練っていると、クルツから声がかかった。
「なあソースケ・・・幻って信じるか?」
「・・・大気中の水蒸気が見せるアレか。」
 そしてクルツが歩道の一点を指差す。
「じゃああれは水蒸気の固まりなんだな。」
 そこには・・・千鳥と恭子が二人で歩いていた。
「・・・幻だ忘れろ。」
「んな訳あるか!! あれは本物の千鳥カナメだろうーが!!」
「むっ・・・そうだな。」
 俺は不本意ながら現実を認めた。

「千鳥・・・何故君がここにいる?」
 俺が後ろから声をかけると・・・千鳥が肩を振るわせ振り向く。
「キョーコ・・・この馬鹿どうする?」
「ん〜〜と、取り敢えず晩御飯奢ってもらおうかな。」
 二人だけで何やら会話を進めている。
「千鳥、君は確か謎の組織にさらわれて、俺に救援を頼んだ筈ではないのか?」
「そうそう、お陰で俺もいい迷惑だったよ。」
 俺の言葉を聞いて千鳥が溜息をつく。
 何時の間にかちゃっかりクルツの奴も俺達の隣に来ている。
「・・・説明が悪かったわね、そもそも携帯の電源が落ちるのがミスの始まりだけど。」
「相良君、カナメちゃん生徒会の会長に駆り出されて校庭の草抜きしてたんだよ。
 謎の組織なんて相良君らしい発想だけど大間違いだよ。」
 なんだと? 校庭の草抜き?
「それで人手が足りないからキョーコも呼んだのよ・・・
 ソースケの携帯にはあれからは何故か繋がらないし。」
 お手上げのジェスチャーをする千鳥・・・それはそうだろう俺の携帯も電源が落ちている。
 俺の後ろではクルツが殺気を放っている。
「・・・俺も晩御飯を奢ってもらえそうだな。」
「じゃあ皆で食べに行こうよ!!」
 和気あいあいと歩き出すクルツと恭子・・・
 俺も千鳥の隣を一緒に歩き出す。
「で? 実際今まで何処で何をやってたのよソースケ。」
「・・・街の大掃除だ。」
「ふ〜〜ん、ソースケが街の大掃除ね? 空き缶拾いでもしたの。
 まっ、人様に迷惑をかけて無いのならいいでしょう!!」
 俺の返事を聞いて千鳥がそう判断を下した。
「うむ、誰にも・・・一般人には誰にも迷惑をかけて無いぞ。」
 俺も事実だけを告げる。
 俺の目の前ではクルツが再び肩を竦めているのが見える。
「それじゃあ何を奢ってもらおうかな♪」
 元気な千鳥の笑顔を見ながら・・・
 千鳥が無事なら今日の事も些細な事だ、と俺は思った。



<夕暮れ時の掃討戦>			END
								1999.8.21
								  By Ben

後書き。

この作品を読んで下さった方。

どうも有難うございます!!

7月から予告をしていたフルメタル・パニックです。

やっと書けましたね・・・最近いろいろと予定が詰ってて(笑)

結局8月になってしまいましたね。

でも2度目の予告は遵守したので勘弁して下さい。

出来れば感想をメールか掲示板にて送って欲しいです・・・

反響が良ければまた懲りずに書くつもりですから(笑)

では、さようなら・・・

 

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