終わらない明日へ・・・





  第八話 敵軍の妖精 〜拒絶〜




 ―ナデシコ内 ブリッジ

 「ふにゅぅ・・・」

 艦長席で報告書に目を通すユリカ。何やら不満げにうめき声を漏らしている。
 彼女の手にある報告書には、二人の少女について書かれていた。
 二人の少女とは、デブリ帯で拾った、ホシノ・ルリと白鳥ユキナだ。

 今、ユリカに迫っているのは二人の処遇という壁。この壁がまたなかなかの強度を誇っているのだ。
 この二人がただの一般人であれば、壁は簡単に貫くことが出来る。
 しかし、彼女らは違った。
 プラント最高評議会議長―即ち、プラント最高権力者―の実の娘、ホシノ・ルリ。そして、その侍女、白鳥ユキナ。
 二人は表面上民間人なのだが、この状況下ではそう言っていられない。
 そのため、この壁は簡単に貫くことの出来ない強固な壁となっている。

 ユリカの不満の原因は、言うまでもなくこのことにあった。
 貫こうと思えば、この壁は簡単に貫くことが出来る。
 二人の身柄を連合に明け渡すことだ。
 軍は大喜びでその身柄を引き受けることだろう。

 しかし、ユリカは民間人を戦争に巻き込むことに気が進まなかった。

 ―アキトくん達を巻き込んだのだ。今更何を善人振る?

 そう自嘲する自分もまたいる。
 それでも、この二人を素直に引き渡す気にはなれないのだ。

 ―もう巻き込みたくないから・・・この二人だけは何とかしたい。

 これが彼女の答え。
 自嘲する自分、悲観する自分、軍人としての自分、自分らしい自分。
 その全てが重なり合って導き出した”彼女”の答え。
 曇り掛かっていた彼女の瞳に太陽を思わせる輝きが灯った。



 『艦長。』

 艦長席の肘掛先に備え付けられているモニターに光が灯った。

 『彼女達が乗っていた思われるローラシア級艦の残骸を発見した。
  どうやら証言に虚偽はないようだな。』

 そこに映っているのはヒエンだ。
 彼は、指示を仰ぎ付近の宙域に偵察に出ている最中である。
 バイザーをつけた彼の表情は伺えないが、最近では声色から彼の心情を読み取ることができるようになった。

 「そうですかぁ。ホントご苦労様でした、上がってくださぁい。」

 吹っ切れたユリカは既に既に天真爛漫モードに戻っている。
 そんなユリカを見て、ヒエンはふっと微笑する。
 常日頃から暗いオーラを纏っているヒエン。
 しかし、これもまた最近になってのことだが、そのオーラの向こうに垣間見える彼の本質を理解し始めた。

 『どうかしたのか?』

 ボーっとしてしまったらしい。
 ヒエンが怪訝な声でユリカに尋ねた。

 「い、いえ。何でもないですよ。ははは・・・」
 『まあいい。それで、彼女たちをどうする気だ?』
 「はい。いろいろと考えているんですが・・・彼女たちを無事にプラントに送りたいんです。」

 その言葉に、ヒエンは猛反対をするだろうな、とユリカは思っていた。
 しかし、ヒエンは少し俯き声を殺して笑っていた。
 あまりに意外な反応にユリカは驚いたが、ふとあることに気付く。

 −笑っているとこ、初めて見たな・・・

 『一番、困難な道を選んだわけだ。』

 また惚けているとヒエンが復活する。

 「はい、それでもこれが私の答えなんです。」
 『わかった。俺もできる限り協力しよう。』
 「え!?」

 ユリカはあまりのことに大声を出してしまった。
 ブリッジ要員の変な視線がとても痛い。

 『そんなに意外か?』

 自分の案に賛同し、手を貸そうと言うのだ。
 軍人としては反対するのが道理だろう。実際、このことをジュンに話していれば反対されたのは目に見えている。
 ユリカは無意識のうちにヒエンを試していたのかもしれない。
 自分の、軍の意思にまるで反した考えにどう対応してくるか?
 彼もまた彼女達を巻き込みたくないと思っているのかもしれない。ヒエンとユリカの意見は今までも暫し一致することがあった。

 軍人の本質を嫌い、他者を守りうる力を欲する。
 これがユリカが軍人の道を志願した動機だ。
 ヒエンの動機は知らない。
 しかし、これだけ自分と意見が一致するのなら、彼も自分と同じ考えなのではないか、ユリカはそう思った。

 「いえいえ。じゃあ、お願いしちゃいます!」

 動機を問う必要はない。
 彼が手伝ってくれるというのだ。それを問うのは少々ナンセンスではないか。
 ユリカはヒエンの申し込みを満面の笑みで申し出を受けた。





 ―ナデシコ内 食堂

 「近寄らないでよ!!!」

 ほとんど人のいないナデシコの食堂に響き渡る少女の悲鳴。
 メグミ・レイナード嬢は半分泣き顔で、ホシノ・ルリ嬢が近寄るのを拒絶した。
 居合わせたアキト、ガイ、ハーリー、ラピスは愕然と驚き慌てている。

 ホシノ・ルリ嬢と共に舞い込んだのははからずも不思議な安堵の雰囲気であった。
 彼女にはそういった力が無意識のうちに備わっている。
 そんな束の間の休息を打ち破る絶叫。

 「コーディネイターの癖に、馴れ馴れしくしないで!!!」

 この言葉はルリだけに在らず、アキトにも重く圧し掛かった。
 彼女の心の傷の所為はコーディネイターにある。

 ―コーディネイターが、私達の平和を・・・母さんをっ!!!

 平和を、母を奪ったコーディネイターを生理的に拒むメグミ。
 彼女の心に巣食う闇は計り知れない。
 それを、アキトは理解しているだけに余計にその言葉に押しつぶされそうになる。

 「すみませんでした・・・」

 先に耐えられなくなったのはルリの方だった。
 瞳を涙で潤ませながら、彼女は小走りに食堂を去っていく。
 それを無言のうちに追うアキト。

 「アキトさん?!」

 去り際のアキトの腕を引きとめる細い腕。
 アキトは振り向く勇気がなかったが、それはメグミのものだとすぐにわかる。

 「アキトさんは別です!アキトさん!?」

 メグミの腕を引き払って、アキトは逃げるように食堂を後にする。
 食堂の中央ではメグミが泣き崩れていた。



 「待って。」

 食堂から逃げ出すかのように小走りするルリを呼び止める。
 ルリの華奢な肩はふるふると震え、振り向いた彼女の顔には、涙の筋があった。
 そんな顔はアキトの不安定な精神に拍車を掛ける。

 「部屋まで送るよ。途中で見つかったら大変だろ?」
 「・・・結構です。」

 二人の間に訪れる痛い沈黙。
 肌をちくちくと突き刺すような緊張感、手足に感じる枷のような重圧。
 逃げ出したくなるような空間で、アキトは粘った。

 「俺の友達が酷いこと言って・・・その、ゴメン。」
 「・・・あなたは優しいんですね。」
 「え?」
 「私、この艦に来て、ほとんどの人から”嫌な目”で見られてきました。
  だけど、あなただけは私を嫌な目で見ていない。」
 「・・・俺も、コーディネイターだからね。」

 遠い目で、自嘲するようにルリにそう告げる。
 ルリは微笑んで応える。その目にもう涙はない。

 「それでも、優しいのはあなた自身じゃないですか。」

 二人を包んでいた陰の空間は影をひそめ、二人の距離は僅かにだが確実に縮まった。





 ―ナデシコ内 一室(ルリ&ユキナ軟禁室)

 アキトはここで思わぬ再会を果たす。

 「ああ!ルリ、どこ行ってたのよ?・・・って、その男はぁ!?」

 部屋に入ると元気のいい声が飛んでくる。
 アキトはこの声に、格納庫でも少し感じていた懐かしさを感じていた。
 何故なのかは今の今まで深く考えようとはしなかった。
 しかし、今目の前にいる少女を見て、アキトはその懐かしさを瞬時に理解する。

 「ええ、この人は・・・」
 「知ってるわよ、テンカワ・アキトでしょ?」
 「え???」

 ユキナは不敵にニヤニヤと笑い、ルリは?マークを浮かべながらアキトの方を向く。
 アキトは目を見開いて、額を冷や汗でびっしょりに濡らしていた。

 「も、もしかして・・・ユキナちゃんか!?」
 「その通りぃ。見違えたでしょ、アキトォ?」

 なお不敵に笑いながらアキトに訊くユキナ。
 どうやら二人は知り合いのご様子で、ルリはとりあえず傍観を決め込んだ。

 「ななな、なんでお前がここに?」
 「そこにいるルリのぼでぃがぁどをやってるのよ。」
 「なるほど。」

 変に納得するアキト。
 二人のやりとりを見て、余計に?マークを増やすルリ。

 「お知り合い、ですか?」
 「「まあ、腐れ縁?」」

 まるで計ったかのように同時に振り向き、まったく同じ台詞で答える二人。

 話によれば、ユキナはアキトの大親友の妹らしい。
 ユキナは幼い頃から活発的で、いつもアキト達に混じって遊んでいたそうだ。
 しかし、ユキナ達の養父の都合でプラント異動になって別れて以来、連絡すら取れなかったという。

 「それで、何でアキトがそっち側にいるわけ?」

 ごく自然な感じでユキナはアキトに尋ねた。
 それはルリも先程から疑問に思っていたことだ。
 地球連合軍はコーディネイターを執拗に嫌っているという。
 彼がコーディネイターということは隠せるはずがない。
 何故連合軍側にいるのだろうか?

 「いろいろとあってね。君達と別れてから俺はオーブのコロニーに移ったんだ。
  そこで戦闘に巻き込まれて・・・その後は流れに身を任せるしかなかった。」
 「成り行き、ですか。」
 「ああ。」
 「でも、そっちにいちゃぁお兄ちゃんに会えないじゃない。」
 「・・・もう九十九には会ったよ。」

 触れられたくはない話題ではあったが、アキトは静かに語り始めた。

 「戦闘に巻き込まれたって言ったろ?あのときに九十九と会って、話もした。」

 「じゃあなんでそんときにお兄ちゃんについて行かなかったのよ?お兄ちゃんがあなたを連れていこうとしないわけないでしょ?」

 「勿論、九十九は戻って来いって言ってくれた。それでも・・・俺には守りたい友達がいる。」

 「お兄ちゃんを裏切ってまでその友達を守りたいっていうの?」

 「裏切ってなんかいない。それだけは約束できる。それにどっちが大切だなんて計りきれないよ。でも、何の関係もないのに戦争に巻き込まれて・・・そんな 彼らを見殺しにして自分だけ助かるなんて俺はできない。彼らを守ってあげたい。そう思ったから今俺はここにいるんだ。」

 切実に、辛そうにそう語るアキト。
 疑問を投げかけるユキナも辛そうであるが、何か使命感からなのか、彼女はなおも質問を続ける。

 「もし、またお兄ちゃんと戦うことになったらアキトはどうするつもり?」
 「・・・わからない。」

 ユキナはまだアキトがエステバリスに乗って戦っていることは知らない。
 戦うとは戦艦に乗って、出会ったことを指すに過ぎない。

 アキトはそれを知ってか知らずか、明確な返答をしなかった。
 いや、逃げていただけなのかもしれない。

 戦場において、兵士は通常の精神状態を保つことが困難である。
 無論、コーディネイターとて例外ではない。
 いつもは表に出ていない、残忍な性格。好戦的な性格。戦闘を愉しむ性格。
 それは人それぞれであるが、またアキトと九十九が相見えるとき、彼らはいったいどうなるのか?
 しっかりとした自我を持って、彼と戦うことができるだろうか?





 ―プラント 防衛総庁

 防衛総庁のある一室に一人の青年が待ち惚けを喰らっていた。
 相当長い間待たされているらしく、つま先で床をこんこんと叩きながら落ち着かない顔をしている。

 「待たせたな、九十九よ。」

 無益な時間も終わり、部屋に扉の開閉音以外何も音を立てずに入ってきたのは北辰だ。
 武術に精通した九十九でも、北辰の気配を探るのは難しい。
 北辰は、いつ何時も油断を見せず、独特の禍々しいオーラを纏っている。
 殺気とも違わぬそのオーラでさえ、感じるのは僅かな一瞬である。

 「早速だが、話をさせてもらうぞ。」

 部屋にたった一つしかないイスに腰を降ろしながら、手に持つリモコンを操作する。

 すると、正面にある大きめなモニターに明かりが灯る。
 そこに映ったのは、銀髪の美少女。
 ホシノ・ルリだ。
 彼女は九十九の許婚である。
 しかし、そこに互いの愛などはなく、それは政略結婚という冷たい関係でもある。

 「貴行にある任務が下った。かのホシノ・ルリ嬢は悲劇追悼一周年式典に出席するために、慰問団の団長としてユニウスセブン跡地へと向かっていたそうだ。 だが、その艦との連絡が先日より途絶えている。貴公には彼女の捜索をしてもらうことになる。」
 「そして、彼女が生きていれば、救出しヒーローとして凱旋、考えたくはありませんが死んでいる場合は亡骸の前で号泣でもしろと?」

 さもあっさりと言ってのけた九十九ではあったが、内心では焦っている。
 ルリは恋愛感情抜きで親しい仲ではあるし、ルリの側近として彼女の傍にいつもいるのは九十九の実の妹、ユキナのことでもある。

 九十九の思惑とは関係もなく、九十九に義務付けられたのは英雄となることだった。

 「理解が早くて助かる。
  ヴェサリウスの改修が済み次第、即刻出撃となる。準備をしておくのだ。」

 紅い瞳の義眼で九十九を一睨みし、北辰は席を立った。



 「ふぅ・・・」

 狭い通路に出て、九十九は溜め息をついた。

 「よぅ、九十九。どうしたぁ?溜め息なんてついて。」

 よく聞き覚えのある大声。
 ふり返ってみるとそこには大柄な男、源八郎が立っていた。

 「いや、別に。ただ疲れているだけだ。」

 先に授かった任務のことは話そうとしない。
 話したところで何が変わるわけでもないが。

 「ん〜?そうか、ならいいんだがな。何か厄介事があれば俺に言えよ。」

 この男、秋山源八郎とは訓練学校以来の仲で、この他北辰隊の赤服、月臣元一朗、高杉三郎太も該当する。
 ぶっちゃけ親友だ。

 「本当に大丈夫だ。」

 源八郎を言いくるめて九十九はその場を後にした。

 九十九は大きなストレスに押しつぶされそうになっている。
 親友と敵同士で再会したことから始まって、養父の主戦論、そして今回の件だ。
 彼が真に頼れる人間は北辰隊の赤服達だけである。
 しかし、彼は頼ろうとはしなかった。
 九十九は責任感の強い人間であるため、滅多に人に頼ろうとはしない。
 例えそれが親友であっても、だ。
 いや、親友であるからこそかもしれない。

 彼のストレスは発散の場を失い、積もる一路を辿っているのだ。





 ―ナデシコ内 食堂

 そこにはガイがたった一人でゲキガンガー3を鑑賞していた。
 ラピスはメグミを医務室へと連れて行き、ハーリーは何も告げずに何処かへ行ってしまったためだ。

 1話27分程度(CMは抜き)のゲキガンガー3もBパートの中盤に差し掛かったところでラピスが戻ってきた。

 「あれ?ハーリーは?」
 「・・・」

 返答はくるはずもなかった。
 ゲキガンガーを鑑賞中のガイは他のことへの興味を全く示さない。自分の世界にずっぽりとハマりこみ、その世界から彼を引きずり出すことはいかなる方法を もってしても不可能である。
 それをよぉぉぉく理解しているラピスであったが・・・

 「ヤァマダァ!!!」

 ―スパァァァン!

 ラピスはどこからともなく巨大なハリセンを取り出してガイをすっぱたく。
 しかし、ガイは微動だにしない。
 彼の全神経はゲキガンガーに向いている。身体の痛みもそっちのけで・・・

 ハリセンから始まって、ロンギ○スの槍、メイ○ウ攻撃、イデ○ンソード、ゴルディ○ンハンマー、エトラセトラエトラセトラ・・・
 ラピスは次々と名作の一撃必殺技を繰り出すもガイは身動き一つせずゲキガンガーに集中している。



 「ラ、ラピス?」

 黒こげとなって見る影もなくなった食堂に帰ってきたハーリーが野獣のような息遣いのラピスに恐る恐る聞いた。
 ブリッジでは食堂の大爆発で大騒ぎだったが、それはまた別の話。

 「ああ、ハーリーどこ行ってたの?」

 さも何もなかったかのように満面の笑みでハーリーの方を向くラピス。
 その表情に変わるのに要した時間、0,02秒。売れっ子アイドルも驚きだ。
 諸手には金色の鉄鎚二股の槍が握られている。

 「そ・・・それよりも、ヤマダさんは大丈夫なの?」

 二人がガイの方を向くと、丁度ゲキガンガー3が終わっていた。

 「うぉぉぉ、やっぱりゲキガンガーは最高だぁぁぁぁぁ!!!
  ん?ハーリーにラピス、どうかしたのか?」

 ・・・もはや何も言うまい。





 ―ナデシコ内 一室(ハーリー&ガイ私室)

 「で、ハーリーはどこに行ってたのよ?」

 場面変わってハーリーとガイの部屋。
 三人は使い物にならなくなった食堂を離れ、場所を移動したのだ。

 「ちょっとアキトさんが気になって、部屋に様子を見に行ってたんだよ。」
 「それにしては随分と長い間いなかったな、お前。」
 「ゲキガンガーの最初から最後までいなかったんだから・・・だいたい30分ぐらいね。なんでそんなに?」
 「いや・・・言いにくいんだけど、部屋の前で立ち聞きしちゃってさ・・・」
 「へえ〜、ハーリーってそーゆーことするんだぁ。」
 「あぅ・・・と、とにかく、そのとき聞いちゃったんだけどさ。
  アキトさん、友達と戦っているって・・・」

 この後、彼らはアキトの嘘のない心境を全て聞くこととなる。
 それを知った彼らの心境は様々であった。

 「アキトの奴、辛いんだろうな。」
 「戦うだけでも辛いのに、相手が親友だなんて・・・」
 「だから僕らでアキトさんを支えてあげましょう。」
 「ああ、もちろんだ。俺達がアキトのお荷物にはなれないからな。」
 「ハーリー、このことメグミさんには言っちゃ駄目だよ?」
 「わかってる。またアキトさんが傷つけるわけにはいかない。」

 そんな会話をする片隅で・・・彼女は聞いていた。

 (ZAFTのパイロットが友達?)





 ―ナデシコ内 ブリッジ

 そこでは二人の男が口論を繰り広げていた。

 「なんで民間人のあの二人がプラントに返還できないんですか!?」
 「さっきも言っただろう!彼女達はもはや民間人ではない。それに軍本部から身柄引き渡すように命令も来ているんだ。」
 「軍人ってのはそういうものなのか?!関係のない人達を巻き込んで戦争なんかやって!それがあんた達の仕事なのかよ?!!」
 「ま、まあジュンくんもアキトくんも抑えて抑えて、ね?」

 紛糾する二人はジュンとアキト。
 アキトはルリとユキナを無事プラントに還すよう頼みに来ていた。
 しかし、ジュンはそれを頑として受け入れようとはしないのだ。

 「ユリカ!ここで食い下がられたら艦の士気に影響するんだよ?ここは毅然として返さなきゃいけないんだ!」
 「ユリカさん!あなたもそうなんですか?軍人は誰だってこうなんですか!?」
 「ああん、もういい加減にしてください!!!」

 そんな中、ナデシコにはある朗報が入る。

 「艦長、お取り込み中申し訳ありませんが、報告があります。」
 「なになに?いったい何があったの???」

 救いの手と言わんばかりにこれに食いつくユリカ。

 「第8艦隊先遣隊より救援信号が入りました。
  こちらに向かっているとのことで、先ほどモントゴメリ、バーナード、ローの三艦をレーダーで確認しました。」

 誰もが待ち望んでいた救いの手。彼らの所属する大西洋連邦の艦隊。
 正真正銘の味方だ。

 「ホントですか?!
  ミナトさん、早速ですが先遣隊との合流ポイントに進路をとってください。」
 「りょぉかい。」
 「艦長、もう一つご報告が・・・」
 「へ?」
 「先遣隊の艦にレイナード外務次官も乗艦しているそうでして。」
 「外務次官がまたどうして?」
 「・・・艦長?もしかして忘れてませんか?」

 冷や汗ダラダラで必死に考え込むポーズのユリカ。
 報告した伍長はやれやれと呆れ返っている。

 「この艦には外務次官の娘、メグミ・レイナード嬢が乗っているんだ。」

 思わぬところからの返答。
 声のした方を向いてみると、いつの間にかヒエンがそこに立っていた。
 その声はいつもよりもさらに低く、どこか哀愁が籠められているようにも聞こえる。

 その微妙な違いに気付いたのはユリカ一人だけだった。

 「大尉、どうかしたんですか?」
 「・・・いや、なんでもない。」

 何かを言いに来たのだろうか。ヒエンはなおも暗い雰囲気を漂わせながら続ける。

 「先遣隊との合流、急いだ方がいい。」

 その言葉に籠められた感情までユリカは理解できなかった。
 しかし、ヒエンが何か必死の思いで彼女にこのことを告げているということは理解できた。

 「ミナトさん、相転移エンジン最大出力、全速で合流ポイントに向かってください。」





 ―ナデシコ内 食堂

 ごく短時間で食堂はウリバタケの手によって修復されていた。
 ”How?”は聞かないで頂きたくて候。
 どうしても知りたい?
 ・・・ウリバタケの腕を舐めるな、ということで勘弁(汗

 「メグミさん聞きました?お父さんが先遣隊の艦に乗ってこちらに向かっているって。」
 「さっき艦長が教えてくれたの。」
 「メグミさんのお父さんって、どんな人なんですか?」
 「私ね、父親の顔、あんまり覚えてないんだ。
  連合の外務次官の仕事をしていてね、大忙しで家族にあっている暇がなかったの。だから、父親なんてどうでもいいと思ってた。
  でも、今私は一人ぼっちになっちゃって・・・」

 メグミとラピスが楽しそうとは言えぬ会話をしていた。
 それでも彼女らには幾分かの安心感が伺える。
 艦には自然と和やかな雰囲気が漂い、人々の心にも余裕ができてきたようだ。

 「父親は唯一の肉親で・・・相手にされていなかったとも思ってたけど父さんはちゃんと私に会いに来てくれる。」
 「きっと優しい方なんですね。」

 メグミの傷ついた心にとって、残った肉親の存在はとても大きなものだ。



 しかし・・・
 そんなメグミの希望を全く無視して運命は残酷にも彼女に襲い掛かることになる。
 絶望と憎悪の始まりが近づいていることを彼女はまだこのとき知る由もなかった。 





 あとがき

 どーもー、はーどげ・・・ACEです。ええ、私は断じてHGではありませんよ(きっぱり)
 皆さん〜長らくお待たせしました〜(誰か一人でも待っていたと願いたい。実際、違うんだろうけど・・・)
 PCのトラブルにより、長期間投稿が滞ったことにお詫びいたします。

 さて、最近フルメタを中心とした小説を読んでいるんですがね、いやぁ自分の文の未熟さに嘆くばかりですね、はい。
 そして、PC復活して、以前相当はまったSS、「時の流れに」を読みましたが・・・
 激しく、性格を受け継いでますね。特にラピス。

 未熟でも、私は書き続けます。勇気ある誓いと共にぃぃぃ!!!

 

 

感想代理人プロフィール

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代理人の感想

HGじゃないならMGだな?(更違)

まぁそれはこっちにおいといて。

 

お話は相変らず丁寧な仕事、感心します。毎回言ってますが、ナデシコのキャラを移植するにあたりちゃんと変換して落とし込んでますから読んでるだけで楽しい。

 

色々と誤字や細かいところの文法の間違いが目に付きましたがとりあえずいくつか。

まずこれはかなり多い間違いなんですが、「あいまみえる」は「合間見える」ではなく「相見える(これで「あいまみえる」と読む)」と書きます。

「合間が見える」ではなく「相(互いに)まみえる(相手を視認する)」ということですので。

 

「ここで食い下がったら士気に影響する」ですが、「食い下がる」のはアキトの方ですので「彼が食い下がったら」ないし「食い下がられたら」とするのが正しいですね。

 

「救いの手とも言わんばかりにこれに食いつくユリカ」

「も」は不要です。

 

>一話27分のゲキガンガー

今時の30分アニメなら正味は24分弱、マジンガーZ等が放映されていた頃でも大体26分前後。

27分もあるということは・・・そうか、ローカル局用にOPを延長したタイプだな!?(爆)