学園都市、桜ヶ丘の一角。緑に囲まれたログハウス風の一軒家に彼女は住んでいる。
 フリル付きのパジャマに身を包む、金色の髪の眠り姫。彼女の名はエヴァンジェリン、通称エヴァ。今でこそ麻帆良学園都市女子中等部三年A組の一生徒だが、十五年前までは六百万ドルの賞金を掛けられていた吸血鬼の真祖、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルである。傍目には小学生にしか見えないが、れっきとした中学三年生である。更に言えば実年齢は百歳を越えているが、これに関してはあまり触れてはいけない。
 全寮制の麻帆良学園において一人一軒家に住んでいるあたり、彼女の特殊性を端的に現していると言えるだろう。

「マスター、起きて下さい」
 この家のもう一人の住人が彼女を起こしに来る。名は絡繰茶々丸。男のような名前だが、れっきとしたエヴァと同じ女子中等部三年A組に在籍する女子生徒である。
 ただし、彼女は人間ではない。かと言って、エヴァの様な吸血鬼でもない。
 何を隠そう、彼女は同じクラスの生徒である「ハカセ」こと葉加瀬聡美により作り出されたロボットなのだ。
 吸血鬼とロボット、一見接点のなさそうな二人だが、茶々丸はエヴァのパートナー。すなわち『魔法使いの従者(ミニストラ・マギ)』である。そのためか、生みの親のハカセと共にではなくエヴァと共に暮らしている。
「うぅ…今日は休みだろ、もう少し寝かせろ…」
「マスター、朝倉さんとの約束をお忘れですか? 早く起きて下さい」
 茶々丸のその言葉を聞いてエヴァの閉じていた瞳がカッと見開かれる。
「…茶々丸、今何時だ?」
「九時五十六分三十秒です、マスター」
 それを聞いたエヴァは慌てて飛び起きた。
 クラスメイトである『麻帆良のパパラッチ』こと朝倉和美と、今日十時に会う約束をしていたのだ。しかも、どこかで待ち合わせるのではなく、この家に来るように言ってある。まさか寝巻き姿で出迎える訳にはいかない。
「私の着替えはどこだ!?」
「こちらに御座います」
 大急ぎでパジャマを脱ぐエヴァ、茶々丸も手馴れたもので、すぐさま着替えを彼女に手渡す。

「いや〜、顔に似合わず大人っぽいの穿いてるんだねぇ」

 しかし、和美は既にそこまで来てカメラを構えていた。

「え゛?」



 直後、『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』と呼ばれる真祖の悲鳴が、麻帆良学園都市に響き渡った。

エヴァンジェリンさんは心配性!


「デ、データはちゃんと消したんだろうな!?」
「わかってるって」
 リビングのテーブルに場所を移し、涙目のエヴァに苦笑しながら端末を操作して先程見た光景の写真データを消す和美。
 しかし、如何せんエヴァは機械の類に弱い。彼女の目の前でデータを消しても理解できないため、不安が残るのか真っ赤な顔して和美を睨みつけている。
 和美は約束の時間の五分前に訪れただけ、茶々丸は約束通りに訪れた客を通しただけ。結局の所は寝坊をしたエヴァが悪いのだが、それを認めるには彼女は素直さという物が少し足りない。

「フン、まぁいい。それより、依頼した物は…」
「ああ、それならここにあるよ」
 茶々丸の出したお茶を飲みながら分厚い封筒を出す和美、それには『ネギ周辺女生徒調査報告書』と書かれている。
「まさか、エヴァちゃんにネギ君の周りの女の子の調査依頼されるとはね〜」
「マスター、そんな事を依頼していたのですか?」
 お茶菓子を準備してきた茶々丸もエヴァの隣の席に着く。その視線はやはり気になるのか和美の出した封筒に注がれていた。
「やっぱあれ? 彼氏の素行調査?」
「だっ、誰が彼氏か!?」
 和美の突っ込みに顔を真っ赤にして否定するエヴァ。意外と純情である。

「と、とにかくだ! お前もヘルマンとやらの一件に関わっただろう? 今後も同じような事が起き、より強い敵が現れる可能性は大いにある。しかし、私はそういつもネギのぼーやの側にいる訳にはいかんのだ」
「だから、ネギ君の周囲…いや、『魔法先生の正体を知っている者』を把握しておく必要があるわけだ?」
 そういう事だとエヴァは湯呑みをぐっと呷る。こうして落ち着いている時の仕草ははっきり言って中学三年生のそれではない、もっと年をとっ…もとい、大人っぽい仕草だ。

 彼女達の担任であるネギ・スプリングフィールドは一部の生徒にしか知られてはいないが、魔法使いである。最強と謳われる『サウザンドマスター』の子であり、エヴァとはかつて矛を交えた間柄だ。
 その後、エヴァは修学旅行で京都に行った際には窮地に陥ったネギ達の元へ援軍に駆けつけ…ネギやその敵とは格の違う圧倒的とも言える大魔法であっさりと戦いを終わらせた。ネギの正体以上に周囲には知られていないが、彼女は正しく最強の魔法使いなのだ…ただし、全盛期の魔力が使えればと言う前提条件があるのだが。
 そもそも、何故元賞金首の彼女が極東の島国の中学校で一生徒をしているのか?
 実はエヴァはネギの父『サウザンドマスター』とも戦った事があり、その際に『登校地獄(インフェルヌス・スコラステイクス)』と言う呪いを掛けられてしまったのだ。そのため麻帆良学園に縛られ離れる事ができず、実は十数年中学生を繰り返していたりする。
 それと同時に魔力も抑え込まれ、満月の晩以外は碌に魔法が使えなくなってしまっているのだ。
 呪いのためいつも側にいる事ができないのではなく、いても魔力が抑え込まれているため助けられないと言うのが正確な話なのだが、流石にそこまで話す気はないらしく、そのあたりは適当に誤魔化すエヴァ。和美もエヴァの話を疑う様子は無い。

「要するにだ、ネギのぼーやと一緒に戦えるヤツがどれだけいるかを把握しておきたいんだ」
「マスターはネギ先生が心配で心配で、内心いつもハラハラしているんです」
「…茶々丸、いいかげんその方面のつっこみはよせと言っただろう」
 ジト目で茶々丸につっこみ返すエヴァ。和美は茶々丸の言葉に好奇心を刺激されたのかメモ帖を開いている。
「ですが、毎日の修行が終わればネギ先生を寝室に連れ込み、その間は私達を近付けずに…
「誤解を招くような事言うなー! ええいっ、巻いてやるっ! 巻いてやる!!」
「ああ、そんなお巻きになってはいけません…」
 漫才の様なやり取りを繰り広げて、茶々丸の頭のネジを巻くエヴァ。その姿は子供そのものだ。
 ちなみに、エヴァが毎日修行の後にネギを寝室に連れ込んでいるのは事実だ。紆余曲折を経て弟子としたネギから、稽古をつけてやる授業料代わりに、献血程度の血を頂いているだけだが。

「まー、エヴァちゃんとネギ君の秘め事はともかく、話続けるよー?」
「秘め事って言うなっ!」
 顔を真っ赤にしているエヴァの言葉を無視して、話を進める和美。エヴァは気付いていないが、密かに茶々丸の頭のネジを巻くエヴァの姿はデジカメに収められている。



「まずは…契約してる四人からだね」
 エヴァと茶々丸の漫才を一通り見届けてから和美は四枚の書類をテーブルの上に並べる。それらにはそれぞれ「神楽坂明日菜」、「宮崎のどか」、「桜咲刹那」、「近衛木乃香」のプライベートを撮影したであろう写真がクリップで留められている。
 魔法使いが『魔法使いの従者(ミニステル・マギ)』を選ぶ際に、まだ本契約の出来ないネギのような子供が、その代りに行うのが仮契約(パクティオー)だ。
 『魔法使いの従者』とは魔法使いを守り、助ける者の事だ。従者は魔法使いからの魔力供給を受ける事により、肉体、精神を強化する事ができる。仮契約の場合は激しい時間制限がかかるのが難点だが、それでもかなりの効果だ。更には血行促進、精力倍増、お肌もつるつるになれるらしい。
 仮契約を行うと従者の姿が描かれた仮契約カードが生み出され、魔法使いがマスターカード、従者はその複製を持つ。そしてそれは「アデアット」と言う言葉と共に魔法の道具、すなわち『アーティファクト』へと変化したりするのだ
 アーティファクトはそれぞれ特殊な力を持ち、それを持つ彼女達はエヴァの言う戦力と言う意味では重要なキーパーソンである事は間違いない。


「ネギ君の一番側にいるのは、間違いなくアスナだろうねぇ」
「神楽坂明日菜か…」
 ネギの同居人であり、ネギ曰く「お姉ちゃんに似てる」とか。ベルの付いたリボンで髪をツインテールにした少女で、身体能力が恐ろしく高い。
 「ハマノツルギ」と言う、召喚された魔物等を一撃必殺で元いた世界へと送り返してしまうアーティファクトを持ち、本人も何故か魔法無効化(マジックキャンセル)能力を持っている。ネギのペットのオコジョ妖精アルベール・カモミールことカモ君曰く「ネギと愉快な仲間達」は彼女がいなければ格好がつかない要との事。
「要である事は確かだが…コイツは気に入らん」
 しかし、エヴァは明日菜の調査書類をぽいっと投げ捨ててしまった。

「は? なんでまた…」
「マスターにとって魔法障壁を無効化できる明日菜さんは天敵なんです」
「あ、なーる」
 とにかく、明日菜はエヴァ的には却下らしい。


「次に契約したのは本屋だね…私も関わってたんだけど」
「修学旅行では面白そうな事をしたらしいじゃないか、学校でやる時は私も呼べよ?」
 わかってると笑顔で返すと和美は宮崎のどかの調査書類を差し出す。「本屋」と呼ばれる程本好きな図書館探検部にして学園総合図書委員。少し前まで前髪で目を隠し、クラスでも目立たない存在だったが、最近は髪型を変えて、ネギとの関係でクラス内での注目度も急上昇中だ。
 書類の写真は髪型を変えた後の物、極最近撮影された物だと思われる。
 彼女のアーティファクトは『DIARIUM EJUS(ディアーリウム・エーユス)』と言う、名前を呼んだ相手の心の表層を読む事のできる本だ。相手に特定の質問をすれば、より効果的に使う事ができる。
「悪くはないが…性格的には戦いには向いてなさそうだな」
「本屋だからねー、こう影で支えるって言うか」
 元々内気な性格で、それはネギと出会って少しは改善されたが、それでもやはりまだまだ内気だと言える彼女。
 だが、ネギをサポートする甲斐甲斐しさを持ち合わせている事は確かだ。
「パートナーとしては…まぁ、悪くないか。扱いやすいし
「何か言った?」
「いや、何でもない。次に行くぞ」
 エヴァはごまかした。


「その次は桜咲刹那…確か、神鳴流の剣士だったか」
「流石、詳しいねー」
「お前もまだ知らない事だって、色々知ってるかも知れんぞ?」
 そう言ってエヴァは妖艶にフフッと笑う。おそらく事実だろうが、それを聞いた所で素直に教えてくれるとは思えない。和美は好奇心が刺激されたが、とりあえず今はスルーする事にする、とりあえず今は。
「そう言えば、この子のアーティファクト知らないわね」
「夕凪だったか? 自分の剣を持っているし、従者としての魔力供給でより自分で身に付けた気で戦うのが主だからな」
 基本的に気と魔力は相反(コンフリクト)する。相応の練習があればその限りではないが、今の彼女では単純に気に魔力を上乗せして強化すると言う訳にはいかない。
 刹那は京都神鳴流を修めた剣士で、一太刀で石柱を叩き斬る腕を持っている。戦力としてみた場合、単純に考えれば四人の従者の中では間違いなく一番の強さであろう。
 ネギ、明日菜、そして木乃香しか知らない事ではあるが、彼女は烏族のハーフ…つまり純粋な人間ではない。
 一族の掟として正体がばれれば姿を消さねばならないのだが、同じく魔法使いと言う正体を知られればオコジョにされるネギも既に十人近くにばれているので、余り意味がある掟とは言えないかも知れない。
 神鳴流だけでなく陰陽術も修め、性格も誠実でネギに対しても好意的。従者として申し分ないのだが…

「しかし、あいつはぼーやの従者と言うより近衛木乃香の護衛だろ?」
 そう、刹那はもう一人の契約者木乃香の幼馴染であると同時に、彼女の護衛を子供の頃からずっと務めているのだ。

「ずっと、ネギ君の側ってのは難しいかもねぇ」
「惜しいんだがな」
 刹那、退場。


「最後は木乃香だねー」
 四人目の契約者近衛木乃香。彼女は京都に本拠地を置く『関西呪術者協会』の長、近衛詠春の娘にして、この学園都市麻帆良学園の学園長にして関東魔法協会の長である近衛近右衛門の孫である。一般から見た家柄だけでなく魔法使いとしてもかなりの「お嬢様」だと言える。
「関西呪術者協会の長の娘であると同時に関東魔法協会の長の孫であるお嬢様を一魔法使いのぼーやが従者にって…考えてみれば凄い話だな」
「そういう事を一番気にしてないのは木乃香本人だと思うけどね」
 性格は一言で言って天真爛漫。彼女と明日菜の二人がネギの同居人であるが、彼女達の部屋における家事を司るのは彼女だ。
 人につっこみを入れる際に金槌を使用したり、占いグッズが好きでそれが関わってくると目の色が変わる等、良い所ばかりではないが基本的に母性溢れる面倒見の良い娘だ。

 その血筋のためか強大な魔力容量を持ち、『偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)』を目指す事も可能と言われている。
 治癒魔法に高い素質を持つようで、その方面はネギもエヴァも苦手としているため「ネギと愉快な仲間達」の中でも重要な位置にいると言える。
「しかし…コイツはネギの従者と言ってしまっていいのか…?」
「どう言う事?」
 珍しく困った表情を見せるエヴァにどこからか取り出したマイクを向ける和美。報道部員魂だ。
「本人から聞いたが…ヘルマンは近衛木乃香が成長すれば、自分の石化の呪いを解けるかも知れないと言ったのだろ?」
「ああ、そういやそんな事言ってたね」
 軽く言う和美、彼女は気付いていない。
 ネギの故郷には悪魔ヘルマンにより石とされて、治療される事なく眠っている人々がいる。
 治療していないのではない、できないのだ。

「西洋の魔法使い、誰一人として治療できなかった石化の呪いを解けるのだぞ? それが事実であれば近衛木乃香は世界でも最強クラスの魔力を持っていると言っても過言ではあるまい」

「…マジ?」
「マジだ」
 エヴァの言葉に和美は絶句する。つい先程までただのクラスメイト…いや、ネギの秘密を共有する仲間だと思っていた彼女が遥か彼方の雲上人の様に思えてくる。
 しかし、忘れてはならない。彼女は他ならぬ近衛木乃香なのだ。
「でも、木乃香だよ?」
「まぁ、そうなんだがな」
 和美のイメージの中の彼女は「みんなおらんと、さみしいわー」と言って自ら雲の上から降りてきていた。エヴァのイメージする木乃香もそんな感じらしい。

「近衛木乃香も私の弟子だ。あいつならまかせられるかも知れんが、今は自身を鍛える事に専念してもらわんとな」
 彼女は今まで魔法使いの家系の事を隠されて生きてきたため、魔法使いとしての技術は拙いどころか零に近い。
 エヴァの元で修行を始めたが、今は「宝の持ち腐れ」としか言えない状態だ。

「なんか、個人的主観入ってない?」
「そ、そんな事はないぞ?」



 続いて、和美は古菲(クーフェイ)、長瀬楓、龍宮真名、綾瀬夕映(ゆえ)、そして茶々丸の生みの親であるハカセこと葉加瀬聡美。五名の調査書類をテーブルに並べる。
 彼女等に共通する事はネギの正体を知り、なおかつ仮契約を行っていない者達と言う事だ。ハカセ以外はネギの戦いにも関わっており、仮契約以外は、先程の四人と立場に差は無い。和美もカテゴリーで分けるならば、この五人と同じ位置にいると言える。

「…神楽坂明日菜も合わせて、バカレンジャー五人中四人か」
「補習とかしてるからねぇ、それだけ親しくなる機会があったって事じゃない?」
 呆れ果てた目をするエヴァに対して、和美も苦笑いを浮かべている。
 三年A組の誇るバカレンジャーとは、定期テストの学年順位最下位近辺をキープし続ける者達の事である。
 バカブラック兼バカリーダーである夕映を筆頭にバカレッド明日菜、バカブルー楓、バカイエロー古菲の四人と、最後の一人バカピンク佐々木まき絵の五名で構成されている。
「それに、ゆえっちは成績悪いけどバカじゃないよ?」
「それはわかっている」
 そう、夕映は図書館探索部に所属し、知識欲が強い。雑学知識は太平洋よりも広く、果ては哲学にまで及んでいる。
 そもそも、最小限に近い状況証拠からネギの正体に辿り着き。更には麻帆良学園の謎にまで近付き、諸々の魔法使いに関する秘密を紐解かんとした彼女を「バカ」と断ずる程、流石のエヴァも傲慢ではない。
 年齢的に、その子供の様な外見を気にするかと言えば、そんな様子も無く。正体不明の変な飲み物を好み、世間のしがらみより自分の好奇心を優先させる。まことに一貫した行動原理を持っていると言えるだろう。
「ネギの仲間としては頼もしい、それは認めよう」
「パートナーとしては?」
 先を促す和美の問いに、エヴァはこめかみを押さえて目を閉じる。
 夕映自身、ネギに対しては好意的と言うか、「最もマトモな部類に入る男性」と彼女から見れば最高級とも言える評価をしている。しかし、彼女は「本屋」ことのどかの親友であり、彼女の恋を応援するというスタンスを貫いているのだ。
「偽者のネギ君に迫られた時は、満更でも無さそうだったけどねー」
「例の修学旅行の一夜か…後で映像をよこせ」
「りょーかい、安くしとくよ♪」
 そんな取引を交えながら、彼女達の会話は続く。

「そいや、くーふぇはその時にスカカード作ってたね」
「…それ、役に立つのか? 紙の式神とキスしてできたカードだろ? 仮契約は本契約と違ってチェックが甘いとは言え」
「エヴァちゃんに分からない事が、私に分かる訳ないじゃん」
 スカカードがあれば、正式に仮契約を行わなくても、一時的に身体能力を上げたりする事ができる。
 古菲は中武研こと、中国武術研究会の部長であり、形意拳、八卦掌を得意とし、太極拳と心意六合拳を本人曰く「ミーハーでちょっとネ」との事。
 性格は極めて能天気で天真爛漫。しかし、中国拳法に関してはストイックらしい。
 本人を見ているととてもそうとは思えないが、「とびげりじょしちゅうがくせい」や「へたれたかびーおじょうさま」等と悪口のような言葉が出るスカカードにまで「すといっくかんふーちゃいな」と言われるのだから相当な物なのだろう。
 カモは既に彼女を「ネギと愉快な仲間達」の前衛としてプランに組み込んでいるらしい。古菲本人の恋愛感情が如何程かは分からないが、強くなったら婿になれとか言うあたり、それなりに好意は持っている様子。

「しかし、マスターから見ればライバルですね」
「うむ」
 茶々丸の言葉に、鷹揚に頷くエヴァ。
 エヴァがネギの魔法の師とするならば、古菲はネギの格闘技の師となる。
 彼女に言わせれば、自分に弟子入りしたネギが他の者に師事する事などプライドが許さない。彼女とて無敵を誇る最強の魔法使いだったのだ、接近戦もお手の物である。そのため、あえてネギを茶々丸と格闘技で戦わせるテストをしたりもした。
「でも、結局は認めたんでしょ?」
「…う、あれは茶々丸が」
「あれは、ネギ先生の頑張りがあってこその結果だと思います」
「………」
 茶々丸に言い返されてしまったエヴァ。和美はそれを見て、テーブルを叩いて笑いを堪えていた。

 後日、サウザンドマスターの得意としていた接近戦の連携技を実際に食らわせて教えたのは、きっとエヴァのちょっとした嫉妬心だったのだろう、多分。


「次行くぞ、次!」
「はいはい、次は楓だね」
 長瀬楓、中学生離れした長身と豊穣の女神の如き身体を誇るバカブルー。彼女を見れば、脳に行くはずの栄養が別の部位に行ってしまうという俗説も少しは信憑性が高まるかも知れない。
 彼女は、今更誰もつっこまないが忍者である。甲賀の中忍らしいが、それ以上の詳しい事は和美も調べ切れなかった。
 修学旅行の時は救援に駆けつけ、ヘルマン伯爵との戦いの時はエヴァと共に見守っている。かつてのエヴァとの戦いの時は傷ついたネギを立ち直らせるなど、慈愛溢れる事この上ない。
 ネギにとっては姉…いや、母の様な立場にあると言えるだろう。楓の方から見ても、「ネギ坊主」と言う呼び名から分かる通り、ネギは庇護するべき子供なのだと思われる。
「楓と真名が、実力じゃツートップだろうね」
「…ああ、おそらくは桜咲刹那の嬢ちゃんより強い」
 嘘である。刹那の正体を考えれば、本気になって戦えば本当に一番強いのは間違いなく彼女だ。しかし、それをここで明かす程エヴァは人でなしではない。
 そしてもう一人の実力者、龍宮真名。彼女もまた中学生離れした長身である。日に焼けたのか、生来なのかはわからない褐色の肌に、艶やかな長い黒髪。学園都市内の神社で巫女のバイトをしているそうだが、その正体は銃を手に刹那と共に仕事をする『魔を討つ者』である。
 無論、本物の銃ではなくエアガンなのだが、弾の方に細工をしているらしく、修学旅行の時はライフルや、二丁拳銃で妖魔達と渡り合っていた。
「でも、楓はともかくとして、真名の方はドライだからねぇ…」
 そうなのだ。真名と他の者達で決定的に違う所は、他の者達が自らの意思でネギと共に戦ったのに対し、彼女は料金を受け取り、仕事として共に戦ったのだ。
 刹那や楓と親しく、いざと言う時はツケにしてくれるぐらいの融通は効かせてくれるだろう。
「今まで接点がなかったから仕方あるまい。逆に言えば、金さえ払えば龍宮真名は仕事をこなす」
「ネギ君のためなら、金に糸目は付けない?」
「…学園長に払わせるだけだ」
 そう言いつつもエヴァは、頭の中でなんとかして真名をネギと仮契約させられないものかと知恵を絞っていた。翌日、この空しい努力は知恵熱と言う結果を伴って彼女に返ってくる事となるが、今の彼女は知る由も無い。

「そういえば、楓はネギ君をお風呂に入れてあげた事あるらしいよ?」
「…それがどうした。ネギのぼーやが、この学校に来た頃の騒ぎを忘れたか? ウチのクラスじゃ、ぼーやと一緒に風呂に入った事がない方が少ないだろ」
「………それもそっか、私も二人だけで入った事あったわ」
 全て、実話だったりする。
 平然とした態度のエヴァ。しかしその心の中では、修行に用いている彼女自作の「別荘」で風呂嫌いのネギをどうしてくれようかと綿密な計画が練られていたりする…かも知れない。仮にこれ以上となく完璧な計画を立てたとしても、いざ実行しようとすれば、明日菜達が乱入してご破算となるのがお約束だが、それにはあえて触れない事にする。


「最後は葉加瀬聡美だが…コイツの中で『魔法』がどのような位置付けにあるのかよくわからん。綾瀬夕映以上に理詰めの人間だ」
 己のパートナー、茶々丸の生みの親に対しての言葉では無い気もするが、ハカセは魔法を科学と同列の技術体系として考えている節がある。両極端に位置する二人を繋ぐのは「アバウトさ」であり、エヴァとハカセの関係は、和美にとっても理解不能の領域にあると言える。
「それに、ハカセは…なぁ、茶々丸?」
「な、何の事でしょうか?」
 エヴァの意味有り気な視線に、珍しくうろたえる茶々丸。
 彼女自身の恋愛感情はネギだけでなく、全ての男性に対してほぼ皆無であり、言わば「科学に恋した少女」だ。
 それに、今は茶々丸の恋を応援中であり、自分の事よりも彼女の事を考えていると思われる。
 ネギと言うより、エヴァにとって欠かせない人間ではあるが、今の所ネギ達にとっては友人以上ではない。
「ま、これから次第だろ」

「さっきも言ったけど、エヴァちゃんの個人的主観入ってない?」
「そんな事はない」



 茶々丸にお茶のお代わりを頼んだ和美は、封筒の中に残った全ての書類を出してテーブルの上に並べた。
 これらの調査書類はエヴァが出した条件、「今は魔法とも戦いとも関わりがなく」、「相応の能力を持ち」、そして「仮契約しそうなぐらいにネギと親しい者」この三つの条件を満たす者達だ。
 エヴァにとって今までの九人、そして調査を依頼した和美は言葉は悪いが「現行で使える駒の確認」であり、むしろ調査自体はこちらがメインディッシュと言える。
 和美の方も、この三つの条件を聞いた時点でエヴァの真意を悟っている。自らネギの秘密を守るエージェントと名乗る彼女としては複雑な心境だ。しかし、麻帆良のパパラッチとしては、ネギを巡る恋の鞘当ては複雑に絡みあった方が面白いので大歓迎だったりする。男女逆の様な気もするが、そのあたりは気にしてはいけない。

「まずは委員長だね」
「雪広あやか…要注意人物だな」
 エヴァが危険視するのも無理はない。彼女はネギが赴任して来た当初から虎視眈々と彼を狙うショタコンだ。
 ただ少年であれば誰でも良いと言う訳ではなく、礼儀正しく、快活な少年に限られるそうだ。
 弟が生まれるはずだったが、死産により出会う事なく別れてしまったと言う過去を持っている。もしかしたら、ネギに理想の弟像を重ねているのかも知れない。
 本人曰く「修学旅行を経てネギへの愛が一回りも二回りも成長した」とか。彼に対して誠心誠意尽くす覚悟があり、和美から言わせれば「恋愛で損しそう」との事。「見返りを求めない、無償の愛」と言う言葉通りの愛情を身に付けたと考えれば、彼女の言葉もあながち嘘とは言い切れないのだから侮れない。
「色々な意味で『突き抜けた』ヤツだよな」
「ホント、良いヤツなんだよね」
「だいたい、ショタだショタだと言われているが、宮崎のどかに対して同じ事言った奴はおらんだろ?」
「そのあたりは謎だよねー」
 身長の差だとでも言うのだろうか?

「雪広あやか流合気柔術『雪中花』? 雪広あやか流恋の心眼術? なんだこれは?」
「いや、修学旅行で実際に使ってたんだってば。河童、投げ飛ばしてたよ?」
「雪広あやか流って、要するに我流だろ?」
「心眼術の方はホントに見えてたっぽいし」
「………」
 雪広あやか、本人曰く武芸百般でさまざまな段位を取得しているとの事。色々と謎の多き少女である。
 ただ、彼女はそれこそ小学生の頃から、あの明日菜と互角に喧嘩し続けてきたキャリアがある。その実力は本物だと言っていいだろう。
「しかし、あれだけネギのぼーやと関わろうとしておきながら、どうしてぼーやの秘密にぶち当たらないんだろうな?」
「運が悪いと言うか、間が悪いと言うか…」
 両方かも知れない。


 次の調査書類には、三年A組の誇る天才児、超鈴音(チャオ・リンシェン)の写真が添えられている。
 和美曰く、勉強、スポーツ、お料理、なんでもござれの無敵超人。あのハカセよりも成績は上位なのだから、その天才ぶりは推して知るべしである。
 『超包子(チャオバオジ)』と言う肉まんの販売を普段から行っており、これを世界中に広めると言う野望を抱いているらしい。
 学園祭の時期は三年A組の料理の鉄人四葉五月、それに古菲、茶々丸、ハカセを率いて路面電車を改造した屋台で超包子の販売も行っている。五月の人柄もあり、教師、生徒問わずの人気店だ。
「確かに、能力的には文句の付け所もない…が」
「が?」
「何で、ぼーやとの接点が全くと言っていい程ないんだ!?」
「い、いや、私に聞かれても…」
 そう、彼女も我が道を行くタイプのせいか、ネギとの接点が肉まんの売買ぐらいに限られている。あやかと同じく、完璧に近い彼女に唯一足りないのは「運」と言う事だろうか。いや、足りないのは「縁」なのかも知れない。
「ほら、最近は超包子の屋台でも顔合わせてるし、どっかできっかけがあれば仲良くなれるかもしれないじゃん?」
「…うむ、それに期待するか」
 興奮するエヴァをなんとか宥める和美、話題を変えようと次の書類を手に取る。
「あー、そいや五月はどう?」
「ん、あいつは私も認めてはいるが…」
 エヴァにしては珍しく歯切れが悪い。五月は三年A組の中でエヴァが唯一認める「本物」であり、だからこそ魔法使いの戦いに巻き込んで、脇道に逸らすような事はしたくないと言う願望がエヴァの中にはある。
 和美もそれを察したのか、テーブルの上の書類の中にあった五月の物を封筒の中にしまい込んだ。
「確かに、わざわざ魔法の事教えなくても、充分にネギ君を支えてくれるよね」
「すまんな」


 続いては運動部仲良し四人組。新体操部のバカピンク佐々木まき絵を筆頭に、サッカー部マネージャーの和泉亜子、バスケ部の明石裕奈、そして水泳部の大河内アキラの四人の事を指す。
 部活こそばらばらだが、普段から一緒に行動する事も多い四人。まき絵がネギと仲が良い事もあり、自然とネギとの接点も多いメンバーである。
「佐々木まき絵か…ガキというか、青いよな」
「そういう事言っちゃうのは、年とった証拠だよー?」
 年齢百歳を越えるエヴァにとっては今更な話である。
 まき絵は新体操の選手で「麻帆良の桃色のアホウドリ」の異名を持つ、意味はよくわからないが何だか凄そうだ。
 バカレンジャーの一人として身体能力は高く、常に持ち歩いているリボンは、ボールや本、そしてネギまでをも絡め取る。
「あのリボンがアーティファクトになったら、どんな動きを見せてくれるのだろうか…」
「まき絵もスカカード持ってるけどねぇ」
 かつてはネギを「かわいがりたい」と言う子供を見るような想いを持っていたが、今の彼女は好意を通り越したほのかな恋愛感情をネギに対して抱いている。
 ある意味一緒に暮らす明日菜よりネギの事を信じ、理解しているかも知れない彼女。エヴァもそれなりに見所があると思ってはいる。

 次の書類は和泉亜子、そして明石裕奈。亜子はまき絵のルームメイトで関西弁を駆るつっこみ役だ。裕奈は楽しい事には首を突っ込む主義で、通販好き。二人ともまき絵を通じてネギとも仲が良い。
 亜子はマネージャーであり運動部の部員ではないが運動能力は高く、かつて高校生である麻帆良の「黒百合」と勝負をした時は、種目がドッジボールであるにも関わらず、裕奈と共に見事なボレーシュートとダンクシュートを披露した。
「和泉亜子、コイツも要注意人物だな」
「へ、なんで?」
「彼女もネギ先生に好意を抱いているからです」
 淹れ直したお茶と新しい茶菓子を持ってきた茶々丸の言葉にエヴァの顔が一瞬にして真っ赤に染まり、それを見た和美の目が光った。
 彼女は赤いあめ玉・青いあめ玉、年齢詐称薬で十五歳の姿となったネギに一目惚れしており、唯一の手がかりである明日菜に接触したりと、積極的に動いている。それがエヴァにとって面白くないのだ。
 しかし、和美は十五歳になったネギの正体を知らないため、「普段の」ネギを好きな亜子に嫉妬するエヴァと解釈した。
「へ〜、それは聞き捨てならないね〜」
「いや、それはだな…」
 ボイスレコーダー片手ににじり寄る和美。壁まで追い詰められたエヴァは、まるで猫に追い詰められた鼠のよう。
 エヴァにとっての十五歳のネギは、ネギが将来はサウザンドマスター似に育つ原石である事を彼女に示していた。そういう意味では亜子にとっての十五歳のネギとは意味合いが違うのだが、面白くないと言うのには変わり無い。
 しかし、その事を和美に知られる訳にはいかない。
「ま、待て! 調査書類がまだ一枚残っているだろうが!」
「…しょうがないね、それじゃこの話は後で」
 とりあえず、この場は引き下がった。後で問い質す気満々だ。

「ふっふっふっ、これが最後の一人。これが終わったらちゃんと覚悟してもらうよ〜?」
「うぅ…」
 和美は視線をエヴァから外さずに、最後の調査書類を手に取った。
 運動部仲良し四人組最後の一人、大河内アキラ。水泳部のエースで高等部からも期待されている。
 四人の中で最も背が高いが、口数が少なく、気が付けばそこにいると言う事が多い。
「あの四人の中じゃ、ネギ君の事を一番きっちり子供扱いしてるよね」
「精神的にも、佐々木まき絵達に比べて一つ上って感じだな」
 二人の言う通り、まき絵達と違って一線引いているイメージがある。
 しかし、彼女を侮ってはいけない。
 アキラはネギ赴任当初から「カワイイ」とネギに対して好意的で、何かと気にかけている。
 先日、皆でボーリングに行った時などは、火花を散らすあやか、まき絵、のどか、古菲をよそに、さり気なくネギの隣に座ってずっと世話を焼いていたのだから、大河内アキラ恐るべしである。
「いやー、やるねぇアキラも」
「…ちょっと、待て」
「ん?」
 アキラの調査書類に目を通していたエヴァが、ある一項目に目を止め、和美と茶々丸も釣られて覗き込んだ。
「このプロフィールにある、好きな物「小動物」と言うのは…」
「まんまでしょ?」
「ネギ先生は小さいですが、動物と言うのは…」
「!?」
 茶々丸のポツリと呟いた言葉を聞き、和美の脳裏に稲妻が走った。
「ま、まさか…」
「もしかして、大河内アキラは、小動物を可愛がる感覚でぼーやを可愛がってるんじゃないか?
「…あ、有り得る」
 世界に衝撃が走った。
 確証はまったく無いがネギを小動物、いや愛玩動物のように可愛がる。そうしたい気持ちは痛いほどわかる。いやむしろ自分がそうしたい。
 茶々丸だけは二人が何を考えているのかわからなかった様だが、眼前の二人が醸し出す雰囲気が普通じゃない事は理解できた。


「ねぇ、ネギ君ってカワイイよねー」

「…ああ」

「たまに、ちょーっといじめたくもなるけどねー」

「ああ」

「やっぱ、愛情の裏返しってヤツ?」

「そうだな」

「やっぱ、エヴァちゃんの修行もそうだったんだねぇ」

「まぁな………ハッ!

 自分の言葉に慌てて我に返ると、すぐそばにボイスレコーダーを持った和美がエヴァを見てニヤリと笑っている。
「あ、朝倉和美! お前も意識を彼岸に飛ばしていたのではないのか!?」
「フッフッフッ、私のジャーナリスト魂を甘く見たね。ネギ君は確かに可愛いけど、大スクープの魅力には敵わないって!」
「は、謀ったな! 何故!?」
「だって、エヴァちゃん。まるで息子のガールフレンドにチェック入れるママみたいなんだもの」
「ぐはっ!」
 和美のつっこみに、エヴァは精神的ダメージを受けた。

「さぁ〜、キリキリと白状してもらいましょうか」
「え、えと…そうだ、他の奴も調査を、あの双子とか! アーティファクトを得れば本気で分身するかも知れんぞ!」
「鳴滝姉妹は史伽の方が怖がりだからねぇ、それに楓の弟子みたいなモンだから」
「それじゃ、那波千鶴はどうだ? ヘルマンとの戦いに巻き込まれた関係者だし」
「あの子は今頃、拾った子犬の尻にネギでも刺してるでしょ」
 さり気にやばい事を言う和美だが、否定要素も無いのでさらりと流す。
「ならば、相坂さよ!」
「いや、あれ以上は調べようがないでしょ、幽霊だし」
「ザジ・レニーデイ!」
「あの子については、私もまだ調べきれてないのよ。だから、今はエヴァちゃんの調査を…」
「うぅ…」
 駄目だ。何を言ってもかわされてしまう。
 追い詰められたエヴァは、茶々丸に助けを求めるが…
「マスター、私も気になります」
「おのれー!」
 あっさり彼女も裏切った。
「あぅ、あぅ…」
 もはやここまでかと思われたその時。

「! マスター、書類を片付けて下さい!」
 突然の茶々丸の言葉に何事かと思いながらも、すぐさま反応した二人はテーブルに広げられた調査書類を慌てて封筒に入れてクッションの下に放り込んだ。
 そして、その直後「こんにちはー」と聞き覚えのある声が玄関の外から聞こえてくる。
「運が良かったね」
「………」
 その声の主はネギ、何時の間にか修行の時間になっていたのだ。今日は日曜日なので、平日と違って早い時間から修行を始める。
 逃げ切った。実はネギが来る時間が近付いていた事に気付いていたエヴァは、そっと安堵の溜め息を漏らす。

「そ、それじゃ、私はこれからネギのぼーやに稽古を付けてやるのでな」
「あんまり、いじめちゃだめだよー?」
「わ、わかっている!」
 顔を真っ赤にして大声を出すエヴァにひらひらと手を振りながら見送る和美。
 そのまま、封筒を隠したクッションの上に座っていると、ネギだけでなく明日菜やこのか達「ネギと愉快な仲間達」も一緒に「別荘」へと通じるボトルのある地下室へと入っていく。おそらく、魔法の練習でもするつもりなのだろう。

 彼等を見送った後、和美はフッと笑って立ち上がる。
「甘いわねー、エヴァちゃん」
 和美は、はじめて「別荘」に入った時、エヴァから聞いた説明をはっきりと覚えている。

 この別荘は一日単位でしか使用できず、丸一日外に出る事ができない。

 最早、彼女は籠の中の鳥だ。ネギには悪いが、スクープのために今日は中国拳法の修行でもしてもらおう。ちょうど古菲も一緒に入っていることだし。

 ニヤリと笑った和美は、ボイスレコーダーとデジタルカメラを手に、地下室へと歩を進めるのだった。



合掌





あとがき

 ネギまアニメ化を記念してと言う訳でもありませんが、ネギまSSを書いてみました。固有名詞が多いので単行本とにらめっこです。時期的には文化祭の準備中と言った所でしょうか?
 Actionでは初めてのジャンルなので、ネギま入門書のようなSSにしています。
 最後の方はこのまま進めたらクラス全員分行きそうなので、強引にシメてます。それでも、ここ最近書いたどのSSよりも長いですが。

 一つ解説しますと、作中で「魔法使いの従者」の読み方に「ミニステル・マギ」、「ミニストラ・マギ」の二種類がありますが、これは男女の差です。女性の場合「ミニストラ・マギ」となるそうです。
 そう考えると、女性である木乃香が「マギステル・マギ」と呼ばれるのはおかしい気もしますが、これは一般名詞として男性形を使っているのでしょう。

 ネギまという作品はキャラが多くて個性的なので色々と書けそうです。
 アニメ化を期にSSが増えればなーっと個人的願望も言ってみたり。




感想代理人プロフィール

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代理人の感想

まーなんつーかにぎやかなこって(苦笑)。

原作を読んだことはないのですが、登場する女子はクラスで31人、つまり今回話に出てきたのでやっと半分。

よくもまぁそんだけ書き切れるもんですなぁ。

設定はもとより、プロットもこっそり誰かに作ってもらっているというのは満更嘘ではないかもしれない(笑)。

 

・・・で、「赤いあめ玉・青いあめ玉、年齢詐称薬」ってなんやねん!(爆)

メルモとハリーポッターと二重にパクリかいな!

これでも聞く限りでは「まだまだ序の口」だというし、さすが噂に聞こえたパクティオー、もといパクリオー(ぉ。