アラスカ戦勃発まで残り1ヶ月となると、アズラエルは戦備の増強をさらに加速させた。彼はアークエンジェルから運び込まれたデータから

ダガーとスカイグラスパーの改良と生産を推し進める一方で、史実には存在しなかった新兵器の開発にも莫大な予算を投じて行った。

今日も今日とてアズラエル財閥技術部に自ら足を運び、自らが考案した新型機の進み具合の視察及び技術者との意見交換をしていた。

「どうです? 新型機の調子は?」

「はい。量産型スカイグラスパーですが、ストライカーパックの装備機能を省略した廉価版の生産が開始できました。また輸送機、攻撃機、偵察機

 はバッテリーを追加装備させる事で長時間ミラージュコロイドが展開可能になりましが、残念ながらコストが割高になるのは避けられません。

 宜しいのですか?」

「構いません。時期が来れば連合軍もこの3機種を採用せざるを得ないでしょうから」

「はぁ……」 

どこからその自信が浮かぶんですか、と思わず口に出そうになったのを慌てて飲み込む。あまり下手なことは言うことは出来ない。

もしこの人の機嫌を損ねようなら自分達の明日の暮らしがどうなるか火を見るより明らかだからだ。尤もこの技術者の様子に気にすることなく

アズラエルは目の前にある機体を見つめ続ける。

「それより、こいつのミラージュコロイドの持続時間は?」

「は。輸送機、攻撃機は約30分。偵察機は約50分です」

「十分です。よくやってくれました。あとで経理の人間に命じて君たち開発部の人間にボーナスを出しましょう」

「ありがとうございます。理事」

開発主任がひたすら頭を下げているが、すでにアズラエルの頭には彼のことなど片隅にもなかった。あるのは今後の戦争での戦略のみ。

(さて、これでオーブ戦になった際にマスドライバーを確保するための手駒は揃うな。もっともアラスカとパナマで勝利できればわざわざ莫大な

 労力を使ってオーブ戦など考える必要もなくなるんだけどね……)

現在パナマには史実を超える数のMSが集められている。これはアズラエルの判断でコーディネイターを積極的に技術者として雇い、MSの

開発と生産を急ピッチで進めさせたこと、そしてアークエンジェルでキラが作ったOSを用いることで可能になったのだ。

(アフリカでバルトフェルド隊を撃滅、インド洋でモラシム隊を撃滅……破竹の快進撃だな)

ちなみにアークエンジェルに送ったのはバスターとデュエルで、パイロットはそれぞれサイとトールが務めている。

現在アークエンジェルはインド洋でモラシム隊を撃破したものの、かなりの損傷を受けたのでインド洋方面艦隊司令部が置かれている

インド洋にあるディエゴガルシア島の連合軍基地で修理を受けている。

史実ならこの基地は壊滅していたのだが、MSの配備が若干早く始まったこの世界では壊滅を免れていた。このためアズラエルとサザーランド

の取り計らいもあり、アークエンジェルはこの基地のドックで修理と補給を受けているのだ。

まぁ彼らの活躍で、連合軍はアズラエルの予想以上の数のMSを配備できたのだから、その報酬としては安いものだろう。

「NJCの開発は?」

「残念ながら、こちらはまだ理論しか完成していません。開発にはさらに時間と資金、人材が必要と思われます」

アズラエルとしてはエネルギー事情改善のために、核ミサイルにつめないサイズの物でも良いからNJCを欲していた。しかしながら残念な事に

連合の技術力ではそれを開発できる段階に到着するのは、まだ先の話だった。

「………そうですか」

「り、理事?」

 この様子を見て、機嫌を損ねたと思った技術者が恐る恐る尋ねる。だがアズラエルは軽く手を振って大丈夫と知らせる。

「さて私も暇ではないですしこの辺で帰るとしましょうか」

「わかりました。今日は視察に来ていただきありがとうございました」

「ははは、別に其処まで畏まる事はありませんよ。これも全ては我々ナチュラルが勝つためです。…ああ、先ほど言ったボーナスは明日までには

 振り込んでおきましょう」

 礼を述べながら頭を下げる主任を尻目にアズラエルは扉を開き部屋を出た。この後もいくつかの視察をこなし、彼は意気揚々と本社へ戻った。

そして本社に着くなり、視察中に自身のパソコンに送られてきた各種資料を見て、彼はアラスカ戦の方針を決めた。

(この調子ならサイクロプスを使用しなくても良いな。だが万が一の事態に備えてグリーンランドに司令部を移す準備もしておこう)

このときアズラエルの梃入れを受けてMSの早期配備が進んだ連合軍もアラスカを決戦の地と見なしていた。彼らはアラスカから戦力をパナマに

引き抜きつつも極秘裏に北米から戦力をアラスカに回していた。このためにアラスカ基地の戦力は史実を上回っていた。

(一応、三馬鹿はアラスカに配備。それと防衛軍司令官にはバークを任命しておこう。奴はブルーコスモス派で有能だし)

人事と配備する面子を決めると、アズラエルは必要な手続きに入った。





 一方でザフトは、地球連合軍の早期のMSの導入によって各地で無視できない損害を被り、特に地上軍はかなり深刻な事態に陥っていた。

バルトフェルド隊が壊滅したアフリカ方面では、ディエゴガルシア島を後方拠点とした地球連合軍の防御攻勢を受けて少なからざる消耗を強いられ

ヨーロッパではユーラシア連邦の生命線とも言える黒海周辺の鉱山に対する攻撃が頓挫して、多くの兵士と物資を消耗してしまった。

尤もこの戦いでユーラシア連邦軍も少なからざる打撃を受けており、戦死者だけでも7万人を越えるのではないかと言われる大損害を

受けてしまい、大西洋連邦からのMS供給と引き換えに極東方面軍主力をアラスカに送る羽目になっている。

「このままではアラスカの攻略にどれだけの犠牲が出るか判らんな……」

 パトリックは思わずため息をついた。アラスカ攻略戦を行うのは各地からひねり出した余剰戦力で行う予定だったが、こんな状況では

必要な戦力まで引き抜いてアラスカにぶつける必要があるのではないか……彼は本気でそう考え始めた。

パトリックはユウキにヨーロッパ方面に送る予定だった増援部隊を、スピットブレイクに備えさせることを命じようとした。彼はバルトフェルド、

モラシム隊と言ったザフト軍屈指の精鋭部隊を壊滅させたアークエンジェルがアラスカに到着することを警戒してこのアークエンジェル追撃を

行っているザラ隊に増援を送ると同時にアークエンジェル撃沈を厳命した。

ユウキはこのふたつの命令のうち、前者の命令を何とか撤回させようと必死に説得を行った。

「しかし、それではヨーロッパでのミリタリーバランスが崩れる可能性があります」

「やむを得ないだろう。このままではアラスカ攻略に支障をきたす」

「アラスカの守備隊は未だに従来兵器がメインです。現在投入を予定している戦力でも落とせる自信があります」

実際には、アラスカ基地内部にMS生産工場が建設され、さらにMSも配備を開始されていたのだが、連合軍諜報部のスパイ狩りと

欺瞞情報によってザフトはその事実を掴めていなかった。

ユウキの必死の説得で、パトリックはヨーロッパ方面への増援はそのまま実施することにした。だが代わりにボアズ、ヤキンドゥーエ

の駐屯部隊の一部をスピットブレイクに投入することとなった。これは第8艦隊壊滅によって連合が宇宙艦隊の温存を優先したために

通商破壊が低調となったことが理由だった。尤もユウキとしては本国の守りを薄くするようなことをしたくはなかったが、代案がない

のではパトリックを納得させることができなかった。

「何としてもアラスカ基地を落とすのだ。アラスカさえ落ちれば、ナチュラルとは言え手を挙げざるをえないからな」






           青の軌跡 第2話







 アラスカ攻防戦まであと僅かとなった日、アズラエルは予想外の報告を耳にした。

「アークエンジェルのMS隊が壊滅した? そんな馬鹿な………」

アズラエルが送ったMSはバスターとデュエル各1機ずつ。このためアークエンジェルには合計してGが3機も配備されていた。確かにこれだ

けの戦力があればそう簡単にやられる訳がないのだが、残念ながら今回ばかりは相手が悪かった。

アークエンジェル撃沈を厳命されたザラ隊は、増援に寄越されたディン部隊とカーペンタリアから回された水陸両用部隊でアークエンジェルに

飽和攻撃を仕掛けたのだ。指揮官のアスランとしては、説得できる望みがあったかもしれないキラを討つのは本意ではなかったようだが、

議長の直接命令とあっては拒否できなかった。彼は持てる限りの能力、戦力を使ってアークエンジェルを攻撃したのだ。

アスラン達の決死の猛攻でアークエンジェルのMS隊はストライク撃破によってキラが行方不明、バスターが大破してサイが重傷、デュエルが

完全に破壊されてトールが戦死。スカイグラスパーのフラガも撃墜され負傷していた。この戦果と引き換えにザフトは増援として回ってきたディン隊と

水陸両用部隊の半数を喪失、ザラ隊もブリッツ、バスターを失いニコル戦死、ディアッカが捕縛され、さらにデュエル、イージスがそれぞれ中破、

大破してイザークとアスランが負傷していた。

「ザフトはザラ隊にディン部隊、水陸両用部隊も動員してアークエンジェルに総攻撃を仕掛けた、か……普通ここまでやるか?」

『しかしザフトは投入した兵力の実に半数を喪失し、残り半数にも甚大な損害を被っています。さらにオーブの領海内で戦闘を

 したようなのでオーブとの関係も悪化しています。ストライクを撃墜されたのは痛いですが、戦略的な面から見れば、

 こちらが有利だと思われます』

この人間の心というものを感じさせないサザーランドに、アズラエルは内心で苦いものを感じた。

何故ならアークエンジェルは地球連合軍の中でも最も有名な戦艦でもあり、そのMS隊の壊滅が知れれば士気の面の影響は計り知れない。

(まぁ敵大部隊の半数を道連れにしたとなれば、宣伝にもなるが……あまり効果は期待できないな)

そういいつつも、自分自身がその士気を下げかねない作戦を実施しようとしているのに気づいて、アズラエルは苦笑いした。

(俺も、結局は同じ穴のむしろか)

「アークエンジェルは?」

『アークエンジェル自体は損傷を負いつつも、負傷者を救出した後にアラスカに向かっています』

「……」

サザーランドに対してアズラエルは拙いことになったと言わんばかりに舌打ちしてみせたが、内心ではかなり焦っていた。

(これも歴史の修正力って奴なのか?)

アズラエルとしてはアークエンジェルに送った戦力があれば、十分にアラスカにたどり着けるだろうと思っていたので、この結末には

驚きを隠せなかった。尤もアズラエルは思考を即座に切り替えた。

(キラが行方不明になったことで、奴がマルキオの元からプラントに行く可能性が出てきたな……という事は、史実どおりの展開が

 行われる可能性が高いってことか)

アズラエルはフリーダムの登場、そしてラクス達の三隻同盟軍が結成される可能性が跳ね上がったと判断した。

(歴史を変えるってのは難物だな………まぁこうなった以上は仕方ないか、こちらも出来るだけの手を打つとしよう)

「ジャベリンはアリューシャン列島に建設した臨時の航空基地に配備。さらに第4洋上艦隊には北上の準備を」

『了解しました。しかし本当にサイクロプスをお使いにならないのですか?』

 もったいなさそうに言うサザーランドに、アズラエルは宥めるように言った。

「さすがにこれだけのMSをもっているのに、最高司令部を爆破したらチキン扱いですよ。MSのデモンストレーションだと思えばよいでしょう」


 こうしてアズラエルの指示によってステルス機が各地に極秘裏に配備された。

「準備は整った。あとはザフトの動き次第だな……史実どおりなら、あと僅かだな」

 彼の予想通りアークエンジェルがアラスカ基地に寄港して数日後、彼の知る通りにザフト軍のオペレーション・スピットブレイクが発動して

ザフトの大軍がアラスカ基地に襲い掛かった。

「予定通りですな」

 アラスカ基地の連合軍司令部に勤務しているサザーランドだったが、今回はハワイの大西洋連邦軍太平洋方面軍司令部でアズラエルと

共にアラスカ戦の様子を観戦していた。このように連合軍司令部の面々はすべて避難済みで、他の将官も見物しているのが見える。

これは万が一、アラスカが陥落した際に指揮系統を即座に再建するために取られた手段である。

「ええ。第4艦隊はすでに出撃しましたし、あとはバークの采配次第でしょうね」

彼の言うとおりサイクロプス使用時にはアラスカ基地自爆後に到着する予定だった第4洋上艦隊は、すでにアラスカに急行していた。

最初から配備しておく案もあったが、こちらがアラスカに戦力を集めている事を気付かれるためハワイ北方海域からの出撃となった。

ちなみにアラスカ基地には、ユーラシア連邦軍以外にも大西洋連邦軍部隊も展開しており、史実の2倍近い部隊が展開している。さらに言えば

多くのMSも配備されているので、質の面ではかなりのものだ。これに対抗できるのはパナマ守備軍だけだろう。

「しかし、サイクロプスの使用をバークに一任して宜しかったのですか?」

「あれは捕虜になるくらいなら自爆して果てるタイプだ。心配は無いさ。尤も道連れにされる部下は溜まったものじゃないけどね」

そう言いつつアズラエルは、スクリーンに映し出される極寒の大地で繰り広げられる戦いを眺めていた。




「スワード半島東部にディン隊が侵入。第36航空隊が交戦中」

「ロマンヅフ岬からザウード隊が上陸。基地南方に制圧射撃を開始しました」

相次いで入る報告に、アラスカ基地司令官に命じられたバーク准将は、矢継ぎ早に指示を飛ばした。

「スワードには第24航空戦隊を送れ。第11師団も高射大隊で支援させろ、連中にアラスカの空の厳しさを教えてやるんだ。ザウードには近くの

 戦車部隊を向かわせろ。あの機体なら戦車でも撃破できる筈だ!」


バークの指示で次々に部隊が派遣される。

「いいか、敵のMSが如何にすばしっこくても、数を撃てばあたるんだ。弾の出し惜しみは厳禁だぞ!」

 この日に備えて、アラスカには大量の対空火器が持ち込まれていた。このためにアラスカの上空はまるで火の壁ができたかのように真っ赤に

なっている。さらに自走砲や重砲(かなりの年代物含む)が持ち込まれており、リニアガン・タンク部隊と共に砲弾の雨を見舞ってザフト軍に

出血を強いた。いつもなら、バグゥがその機動力で前線に突入して戦車を蹂躙して突破口を開けるのだが、今回ばかりは勝手が違った。

「ビーム砲だと?!」

友軍機がビームの直撃を受けて爆発したのを見て、バグゥ部隊は何事かとばかりに、ビームを撃ってきた方向を見る。そこには……。

「ナチュラルのMSだと?!」

 ストライクダガーの姿があった。それもざっと見て10機近く。彼らは接近してくるバグゥに対して、ビームライフルで弾幕を形成す

ることで、MSに比べて著しく機動力の劣る戦車と自走砲が後退する時間を稼ぎ始めた。

「くそ、アラスカには留守番部隊しかいないんじゃなかったのかよ!」

バグゥ隊の指揮官はそう言って悪態をつくが、罵ったところでダガーは消えはしない。ビーム兵器を持ち、火力面でザフト軍MSを圧倒している

ダガー隊を前にして苦戦を余儀なくされた。

「ええい、機動力ではこっちが上だ。この程度は突破できる!!」

 バグゥはその四足歩行の利点である高い機動性を使い、ストライクダガーに取り付こうとする。しかし……。

「滅殺!!」

そんな彼らに上空に飛行していたGAT−X370レイダーが襲い掛かる。レイダーはMA形態でバグゥをクローで掴み上空に運び、

そして次の瞬間、ゼロ距離でクローに仕込まれているプラズマ砲でバグゥを撃ち抜いた。

 この予期せぬ敵の出現にバグゥが怯んだのを見て、レイダーのパイロットであるクロトは、バグゥの死角である天頂方向から急降下しつつ

機関砲をバグゥに掃射していく。80ミリ、76ミリと言うふざけた口径の機関砲を受けて多くのMSが次々に機能を低下させていく。中には

当たり所が悪くて爆散したものもいる。このバグゥ部隊の苦戦を見たジン部隊は、友軍を援護すべく突撃銃でレイダーを撃墜しようとするが、

そんな攻撃に簡単に当たるクロトではない。

「甘いんだよ、バーカ!」

一通り攻撃を回避し終わると、今度はこっちの番とばかりに、ジン部隊に接近していく。無論、接近してくるレイダーを迎え撃たない

訳がないのだが、レイダーは一瞬でMS形態に変形して破砕球をジンに浴びせた。彼らは弾幕を密にするために密集していたことが

仇となり、何機からがまとめて破砕球によってダメージを受ける。そして動けなくなったジンに、後退していた戦車や自走砲が集中砲火を

浴びせる。身動きが取れないMSなど案山子同然であり、彼らは次々に撃破されていった。

内陸の部隊が苦戦を強いられている頃、上陸を果たして沿岸部のトーチカ群を掃討していたグーンやゾノの災厄が襲い掛かった。

「おらおらおら!! そんなにトロトロしてたら死んじまうぜ!!」

バスターすら可愛く見える圧倒的火力を持つカラミティが、グーンやゾノに襲い掛かったのだ。無論、カラミティ1機ではない。彼の近くには

カラミティの護衛MSと、カラミティを支援するバスターが着いている。尤もそんなことは気にも留めないカラミティのパイロットである

オルガは手当たり次第にザフト軍MSを掃討していく。陸上では動きが鈍いグーンやゾノにとってカラミティはまさに災厄であった。

彼らはビームによって次々に焼かれていく。無論、彼らは必死に増援を要請したが、増援は護衛部隊によって次々に立ち往生を余儀なくされた。

「くそ! これが噂のPS装甲か!!」

カラミティの護衛についていたのは配備を開始されたストライクとデュエルだ。尤も数にするとデュエルのほうが多かった。これは

史実において生産数を確保するために、換装システムのある105ダガーより、より簡略化したタイプのダガーの生産を優先した

連合軍と同じように、この世界の連合も、より生産数を増やせるデュエルに生産の重点を置いていた。しかし、かと言ってストライク

を生産していないと言うわけではなく、彼らは少数の腕利きに優先して配備されていた。

エールストライカーパックを装備したストライクは高い機動力でジンやバグゥ部隊を翻弄し、ビームライフルで次々に撃破していく。

そしてデュエルは、カラミティの左右にぴったりを張り付いて盾の役目を果たしつつ、チャンスを見てビームは放つ。そんな彼らに

反撃しようにも、実体弾しか持たないザフト軍では歯が立たない。倒そうと思ったら、76発もの砲弾を当てる必要があるのだが、

それを出来るほど彼らの能力は高くなかった。まして今回、ストライクに乗っているのは戦闘用コーディネイターのソキウス。

これでストライクを正面から撃破しようと思ったら、4、5機程度で包囲してたこ殴りしなければならないが、支援部隊のバスター

の攻撃もあり、ジン部隊、バグゥ部隊ともに容易には近づけない。

かくしてザフト軍の水陸両用部隊は甚大な損害を受けて後退を余儀なくされる。それは沿岸部の掃討が不十分のままであり、後続の部隊が上陸す

る際に大きなダメージを受けかねないことを意味していた。

このように各地でザフト軍が苦戦していることを知ったクルーゼは、予想以上の地球軍の底力に驚嘆した。


「ナチュラルどもも意外にやるようですな」

「関心している場合か、第4洋上艦隊が救援に向かっているとの情報もある。あまり長引けば挟み撃ちなんだぞ」


潜水母艦クストーのモンロー艦長は、忌々しそうにクルーゼに不満を漏らした。


「くそ、どこが主力がパナマに出払っているだ。きっちり居るではないか。それも見慣れぬMSまで居る始末……」

「恐らく騙されていたのでしょう。ナチュラルに一杯喰わされましたな」

「だが、これだけの部隊を撃破してアラスカを落とせばナチュラルも負けを自覚するはずだ。何としてもメインゲートを落とせ!」


モンローはそう言って激励するが、水陸両用部隊のうち、少なからざる部隊が先日のアークエンジェルとの戦いで打撃を受けており

メインゲートに取り付く余力が無かった。無論、周辺に展開しているユーラシア連邦軍所属の艦艇はかなりの数を撃沈しているが、メインゲート

そのものには取り付けていない。ザフトは何とかしてメインゲートを落とそうと、予備の部隊を次々に投入する。

しかしそれは必然的に、潜水母艦周辺の守りが薄くなることを意味していた。この隙を突くように1機のMSが出現した。

「はぁああああ!!」

海中から突如として現れたフォビドゥンは、ザフト軍の潜水母艦を死神の鎌を連想させるニーズへグで切り裂いて撃沈する。

近くに居たグーンやゾノはフォビドゥンを止めるべく、海中から頭を出して攻撃をしようとするが、彼らの放った攻撃はフォビドゥンが装備して

いるエネルギー偏向装甲によって、すべてがあらぬ方向に逸らされてしまう。尤もシャニからすれば煩い事に変わりはなく、グーンやゾノを

掃討するためにフォビドゥンは誘導プラズマ弾を放った。

 進行方向を変えることが出来るエネルギー兵器の存在を知る由も無いザフト兵士は、回避する間も、攻撃を受けたと認識する暇も無く

次々に撃破され、冷たいアラスカの海の藻屑と消えていった。

「弱い、弱い……」

シャニは、そう呟きつつも、次々に潜水母艦を手にかけていく。

このように連合のMSはまさにザフトにとっての疫病神だったが、その疫病神を支えているのが他ならぬアークエンジェルだった。

アークエンジェルはその強力な火力と防御力、MS運用能力を買われて、前線で移動基地のような扱いを受けていた。

アークエンジェルには絶えず補給を望む友軍のMSが出入りして、格納庫は大賑わいだった。無論そんなことをやっていれば、

ザフトの攻撃目標になることは請負で、現在ディン部隊の集中攻撃を受けている。しかしそれをナタルの指揮能力、アラスカ基地に

到着してから超突貫で行われた改装工事を受けて増大した対空火力、そして何より友軍の支援が其の攻撃を跳ね返していた。

しかしすべての戦線でザフトを叩きのめしていると言うわけではない。アラスカ戦線を見れば、各地でザフト軍MSの攻撃によって

屍をさらす戦車、航空機、そしてダガーが徐々に増えている。彼らはこれまでなら決して挙げることが叶わなかった戦果と引き換えに

撃破されたのだが、その戦果を持ってしてもザフトを壊滅させるには至らない。第二防衛ラインはそんな簡単には破られないが、いつまで食い止め

られるかは判らない。





「中々奮戦しているな……尤も完全に押し返すには至らないが」

アラスカ基地司令部では、バークが全戦域の様子をチェックしながら、次の手を考えていた。現在、アラスカ基地防衛軍はザフト軍を

第ニ防衛ラインで食い止めることに成功しているが、犠牲は決して少なくなく部隊の消耗率は平均して15%にも及ぶ。

「メインゲートを守備していたユーラシア連邦艦隊はかなりの消耗を受けています。このままでは遠からず全滅するでしょう」

特にノートン湾に展開していた洋上艦艇の消耗は酷く、すでに40%の艦艇が撃沈、もしくは戦闘不能になっていた。

「間違いないだろうな。メインゲートを破られるのは時間の問題だ………基地内部のMS隊は?」

「メインゲート内側にバスターとダガー隊を配備しています。仮に連中がメインゲートを越えてきても、火力を集中して撃退します」

「さらに戦車部隊も展開しています。こちらは無人化していますが、有線操作で攻撃を指示できます」

メインゲートを越えても、ザフト軍に消耗を強いることができるように、バークは必要な手を打っていた。尤もこれだけの手を

打ったとしても、このままではザフトに押し切られる可能性がある。

「よし、敵MS隊を内陸部に引き寄せる。第二防衛ラインを放棄。最終防衛ラインにまで防衛ラインを下げろ。

 アリューシャン列島の各航空基地に配備していたステルス機は?」

「ステルス攻撃機はすでに発進した模様です。さらに第4洋上艦隊も北上しつつあり、うまく行けば包囲殲滅も可能です」

すでにシャニのフォビドゥンによってコツェビー湾に展開していたザフト軍潜水母艦は大打撃を受けて後退している。

残った母艦群は、ステルス偵察機の偵察の結果、彼らのシナリオどおりにアラスカ基地東方のノートン湾に集結していた。彼らはロマンヅフ岬の

部隊と合流することで防衛力を強化することを図っているのだが、それこそバークの思う壺だった。

「ザフト軍を最終防衛ラインで釘付けにしろ。絶対に逃がすな。それと例のステルス輸送機の準備を急がせろ」

「予備のダガー隊と戦車は出さないのですか?」

「あれは最後の仕上げのために必要だ」



 アラスカ基地防衛軍が後退していくのを見たザフト軍は、一気にアラスカ基地内部に突入すべく総攻撃を仕掛けた。特に唯一、連合に

一方的に打撃を与えることに成功しているメインゲート周辺では、一気にメインゲートを突破しようと一気に水中用MS隊を上陸させる。

しかしそんな彼らにはバスターとダガー隊からありがたくも無いビームの嵐がお見舞いされた。

「くそ、連中は自分の基地を壊すのに何のためらいも無いのか!!」

ゾノのパイロットがそう悪態をつくほどの攻撃だった。何せ外れ弾や流れ弾が、基地内部の施設を情け容赦なく吹っ飛ばすのだから、

ザフト軍パイロット達は連合軍MSのパイロットが正気かどうか本気で疑った。尤も連合軍は元々アラスカ基地をサイクロプスで自爆

させようとしていたので、今更バスターの兵器で壊れる程度の施設の破壊に目くじらを立てる訳がない。

この狂気ともいえる攻撃を受けて、メインゲートに突入したザフトは完全に立ち往生を余儀なくされた。

一方で、最終防衛ラインにまで連合軍を追い詰めたザフト軍だったが、彼らは炎の壁と言ってもよい弾幕にさらされていた。

「くそ、真っ赤に染まって前が見えない!」

地球連合軍の底力を見せてやると言わんばかりの攻撃に、さすがのザフト軍兵士も梃子摺った。しかしここで引き下がってはこれまで

彼らが払った犠牲が無駄になる。彼らは決死の思いで前進しつつ、さらなる増援と補給を母艦群に要請した。

「補給と増援か……こうなっては直掩機のディンも、最低限度のものを除いて送るしかないな」

この要請を受けてモンロー艦長は苦渋の決断を行うが、それはバークの仕掛けた罠に嵌ることを意味していた。

「ザフト軍がディンとゾノを送るようです」

「掛かったな」

そう言うとバークは確認のために時計の針を見る。そして即座に決断を下した。

「ダガー隊、第1空挺部隊、出撃せよ」




 バークが最後の仕上げをすることを決意した理由となっている部隊が、アラスカ基地東方のノートン湾に到着した。尤も彼らはザフト、連合双方

に確認できないので、その存在を事情を知る人間以外は知ることはできないでいた。

「目標は?」

「ボスゴロフ級潜水母艦多数。3分の2が浮上。残りが潜行中です」

「そうか。じゃあ少なくとも3分の2は喰えるわけだ……」

前線の誰もが其の存在自体知らない部隊の指揮官は、冷静に命令を下す。

「目標、ザフト軍ボスゴロフ級……全機、攻撃開始!!」

突如として現れた大量のミサイルに、ザフト軍指揮官はパニック状態になった。

「どこからの攻撃だ?!」

「判りません! とにかく迎撃を!!」

ディン隊と、ボスゴロフ級に搭載されている戦闘機を発進させようとするが、彼らで対処できるような数のミサイルではなかった。

このとき、放たれたミサイルは160発。この内、130発が浮上中の潜水母艦に襲い掛かった。

「ザフト軍潜水母艦の半数余りを撃沈。残りも大半が潜行不能となった模様です」

「盟主が導入を進めたジャベリン、中々のものだな」

バークはステルス攻撃機《ジャベリン》の戦果に満足した。アズラエルが提案して、実戦配備したこの機体はミラージュコロイドを

展開して敵に気づかれること無く、敵中枢を壊滅させるのが主な任務だ。敵指揮官、敵要人を施設ごと爆殺することも出来ると言うある意味で

暗殺専用機みたいなものだ。これが初の実戦なのだが、そこで挙げた戦果は華々しいものだった。

「よし敵にトドメをさすぞ」

母艦が撃沈されたとの情報に浮き足立つザフト軍に、反撃のとき至れりとばかりに士気が上がった連合軍が襲い掛かる。これまで温存されて

いたダガーや戦車が大量に投入されて、ザフト軍を駆逐していった。ザフトは必死に体勢を整えようとするが、母艦の撃沈によって補給が断たれた

こと、そして何より内陸に引き込まれすぎていたことが仇となった。

水中用MSは自力で脱出したものの、ジンやバグゥ、さらにザゥードは猛攻撃を受けて撃破されていく。

「くそ、沿岸まで撤退するぞ!」

ついにザフト軍前線指揮官は撤退を決意した。アラスカから逃げ出すにしても、ジンやバグゥは水中で活動できない。彼らは母艦が踏み留まって

くれるのを信じて沿岸を目指した。だが連合軍部隊を迎撃しつつ後退していく彼らの背後にステルス輸送機から降り立ったダガー隊が襲い掛かった。


「馬鹿な!」


突然の奇襲に、ザフト軍指揮官は絶句する。しかし彼らに残された時間は多くは無かった。正面からは連合軍の大部隊、そして背後

からは空挺部隊のダガー隊……悪夢とも、理想的とも言える挟撃を受けてザフト軍部隊は瓦解していく。

この時点では、まだ双方の戦力は互角に近いはずだった。しかし潜水母艦の損害とそれに伴う補給の途絶、そして退路の遮断はザフト軍兵士の

士気を根こそぎ奪うに十分なものであり、さらにこれまでの激戦で蓄積した疲労との相乗効果によってザフト軍の戦闘能力は急激に失われていた。

「撤退……ですな」

クルーゼは友軍が総崩れになって掃討されていくのを見てそう呟くように言った。実際に第4洋上艦隊がアラスカに迫っており、

このまま時を無為に過ごせばアラスカ基地防衛軍と第4洋上艦隊によってザフト攻撃軍全軍が包囲殲滅されるだろう。

尤も第4洋上艦隊司令官のダーレスは、わざわざ艦隊が到着するまで何もしないような男ではなかった。彼は上空警戒に必要な最低限

の戦闘機を残して、他の機体を根こそぎアラスカ基地に送ったのだ。この機体の中には対潜ミサイルを装備した機体もあり、彼らは

被弾して潜行することもままならない潜水艦や、ザフト軍MSを収容しようとしている潜水母艦、さらに潜行して離脱を試みている

船にも容赦の無いミサイル攻撃を浴びせていく。ノートン湾はまさしくザフト軍にとっての墓場と化した。



 バークは一連の戦果を聞いて、ザフトのアラスカ攻撃軍がほぼ全滅に近い状況に陥っていると判断した。

「これで戦局は変わるな」

ザフトが今回、アラスカに送り込んだのは主に各方面の地上軍から引き抜いた部隊だ。このために部隊を引き抜かれた各方面は

弱体化を余儀なくされている。これまで通りMSをザフトのみが保有していたのなら、戦況はそう変わらないだろうが、連合がMSを

配備しはじめた今、地上での戦局は大きく変わるだろう。

「コーディネイターどもを徹底的に叩かなければ戦争は終わらん。今度は宇宙での戦闘がメインになるな……」

バークはすでにこの戦闘に蹴りがついたと判断して、今後のことに思いをはせていた。だが、その直後の報告で中断される。

「所属不明機に攻撃を受けている?」

「はい。すでにダガー隊3個部隊が音信が途絶しています」

「馬鹿な! たった5分もしない内にか?!」

バークはこの異常事態を受けて、音信が途絶したと思われる現場にステルス偵察機を送った。そこには……。

「何だ、あのMSは?!」

巨大な6枚の翼を持つ、Gに似た形状をしたMSが映っていた。アズラエルが見たらフリーダムだと一瞬で見破るだろうが、

残念ながらここにアズラエルはおらず、さらに言えば、ハワイにもいなくなっていた。彼はアラスカの戦闘の趨勢が決まるのを

見てさっさと大西洋連邦本国に戻ったのだ。何しろ彼は山と言ってもよい量の書類を整理しなければならないので、アラスカ戦を

いつまでも見ている時間はなかった。尤も後日、彼はこの日の行いを大いに悔やむことになる。

「一体、何が目的だ? ザフト軍の撤退を支援するのが目的なのか?」

 近くの友軍を撃破していくフリーダムの姿を見て、バークは歯軋りした。このときは知る由も無いが、フリーダムが攻撃を加えていた

のは投降してきたザフト軍兵士を虐殺していた連合軍部隊だった。憎しみの連鎖を断ち切るために舞い戻ってきたキラにとって連合軍

のそういった行いは決して許されるものではなかったのだ。尤もそれを知る由も無いバークはフリーダムの撃破を命じる。

だがフリーダムを操るキラは連合軍の攻撃を、常識外れの機体の機動力と自身の操縦技能にものを言わせて回避していく。いや、逆に幾つかの

部隊がまとめて戦闘不能にされる始末。この事態に業を煮やしたバークはカラミティ、フォビドゥン、レイダーにフリーダム撃破を命じた。

強化人間達は敵の出現を受けて一躍フリーダムに襲い掛かろうとしたが、フリーダムは正面から戦うことを避けてアラスカから離脱していった。

さすがの3機も本気で離脱を図ったフリーダムを止められなかった。

「全く、あれは何をしたかったんだ?」

フリーダムが去ったことを確認したバークはそう呟いた。





 かくしてアラスカ戦の幕は閉じた。ザフトは意図したアラスカの攻略に失敗したばかりか、攻撃軍をほぼ壊滅させられると

言う大損害を受けた。水中用MSはそれなりに生き残ったが、ジン、バグゥ、ザウードはほぼ全滅しており、潜水母艦も

ジャベリン、第4洋上艦隊航空隊、第4洋上艦隊主力部隊、さらに沿岸に展開したアラスカ防衛軍のMS、戦車からの攻撃で

投入した艦の約7割が未帰還という前代未聞の消耗を被った。以後、ザフトは地上での戦いの主導権を失っていくことになる。

一方、開戦以来初の大勝利を飾った地球連合軍だが、その犠牲は非常に大きかった。ストライクダガーの喪失は総数の30%に及び

修理不能と判断された機体も含めれば、その数は全体の40%を超える。他にバスター2機、デュエル3機、ストライク1機を喪失、

戦闘機は全体の25%が撃墜され、修理不能機を含めれた喪失機は総数の35%にもなった。戦車は約30%が撃破され、20%が

大規模な修理を必要と判断された。だが殊更酷いのは艦艇で、メインゲート前に展開していた艦艇は実に70%が撃沈され、

他の艦艇も長期間の修理を必要としていた。この兵器群の被害に加えて、アラスカ基地もかなりのダメージを受けており、

基地防衛施設の稼働率は40%以下に低下、地下ドック施設も流れ弾でダメージを受けてしまい艦艇を修理する能力は、戦闘前に

比べて約60%程に低下してしまった。MS生産施設の被害はないが決して軽微とは言えない損害だ。

「………史実どおり自爆させておけばよかったかな?」

アズラエルは挙げた戦果と被った被害を見ながらぼやいた。ダガー隊を含めたMS部隊の消耗は笑って済ませられるものではない。

尤も史実を超える大戦果を挙げているために、そこまで問題にはされていないが、下手したら反攻計画そのものに悪影響が出ていただろう。

「まぁユーラシア連邦が史実ほどとはいかないけど、ある程度弱体化してくれて助かったかな」

地球連合軍は大損害を受けたがMS以外の兵科での損害は、多くがユーラシア連邦軍のものだった。元々、大西洋連邦軍主力は

パナマに展開しており、アラスカに配備された部隊は余剰戦力に過ぎない。実際に大西洋連邦軍所属でアラスカに配備されていたのは

MS部隊を除けば、ステルス輸送機とスカイグラスパーから構成される戦闘機部隊、そしてアークエンジェルと自走砲部隊程度だ。

まぁ後方要員などはそれなりにいたが、それでも実質矢面に立っていたのはユーラシア連邦軍だろう。

「必要以上に恨みを買うことなくユーラシア連邦軍を弱体化できた。さらに大西洋連邦軍の実力を示せた。

 この2点だけでも満足するべきか」

アラスカにフリーダムが現れたことを知った彼は非常に悔しがっていた。最初からザフト軍への打撃を狙っていたとしても下手に歴史を知る分、

彼の頭からフリーダムを早期に撃破(又は鹵獲)したいと言う考えが離れなかったのだ。

「……まぁ良いさ。次はパナマの準備を進めておくとしよう」

アズラエルは強化人間とそのG、そしてソキウス達を高速輸送機でパナマに移動させる。さらにデトロイトやワシントンなどの北米に存在する

重要拠点の守備隊の一部をパナマに送るように交渉することにした。

「パナマで勝てなければ、アラスカでの勝利は意味が無いんだ」

一方、プラントでは今回の全滅と表現してもよい大損害がパトリック・ザラの独断専行から導かれたという事実から、パトリックへの

批判が高まっていた。彼は史実どおりにクライン親子に責任を擦り付けることで当面の事態の打開を図る一方、パナマを攻略する

ことで政治責任を有耶無耶にすることを企んでいた。その為に彼は、アフリカ戦線とジブラルタル守備軍から戦力を引き抜いて

パナマ攻撃軍の編成を決意していた。アラスカ攻防戦が終結した直後から、両軍による次の戦いに向けての準備が始まっていた。