奇跡の勇者 登場 〜不死鳥転生〜

 いまや機動兵器産業の担い手の一つとなったマオ・インダストリー社のドックが、ここ旧Gアイランドシティにある。現在Gアイランドは機能を人工島に移しているため、このあたりの呼び名が“旧”Gアイランドとなった。

 新Gアイランドはココから二十キロほど離れた場所にある。『21世紀警備保障』や『アナハイム・エレクトロニクス』をはじめとした大企業の本社も多い。

 流線型の、後部に大きなブースターを取り付けた中型艦・ジャンヌダルクがそのドックへ入ろうとしていた。

 それを見上げている少年がいた。無骨に見えるフォルムが、小学生の彼にはかっこよく見えたのだ。

 窓側の席の彼は、先生の話も聞かずにその特徴的なグリーンの瞳にジャンヌダルクを映していた。

「ケンタ君!天野ケンタ君!!」

「はぁ、はいっ!!」

 担任の先生に呼ばれ、ケンタは我に返った。

「そんなに戦艦が珍しいかしら?」

「あ、いえ、その・・・」

 木星トカゲの出現から、戦闘機や戦艦の出入りが最近は多くなった。ネルガル重工、マオ・インダストリーと、二社のドックがあるこの土地ではことさら多い。

「じゃぁ、授業をちゃんと聞いてたのかしら?」

「はい」

「じゃぁ、何故、一年戦争は予想以上に早く終結したの?」

 もちろん、聞いているわけが無い。ケンタは、歴史の授業が死ぬほど嫌いなのだ。Cマイナスを取るのが当たり前くらいに。

 一年戦争と呼ばれることとなったジオン独立戦争は“メテオ5”が落下したことにより終結した。現統合軍要塞コンペイトウに集結した二つの軍は通過したメテオ5により壊滅、そのまま終戦となった。

「ええとお・・・それは・・・・」

 しょうがない、といった顔をした先生は、次の質問をした。

「じゃあ、昨日の復習。12年前、ヘテロダインを倒すのに用いた旧連邦軍の兵器は、何?」

 歴史の年号は覚えられなくても、兵器の名前は覚えられる者はいる。ケンタも、そういう性格だ。
 すぐにOE兵器という言葉が出てきた。もっとも、祖父から毎日のようにその言葉を聞いていれば忘れようが無いのだが。20世紀末で言うヒロシマ原爆と同じように、現在ではOE兵器が使用された日に犠牲者を弔う式典がある。

 ヘテロダインというのは、十数年前に桜田栄二郎博士を中心に研究・出版された『界震』に関する論文にて予言されていた。怪獣映画に出てきそうな外見を持つ生物だ。当時誰もが信じていなかったが、実際に出現したことにより研究者としての地位を確立した。

だが、一切動きを見せていなかったヘテロダインは突如移動を開始。東京湾沿岸でOE兵器により熱処理された。その際、逃げ遅れた研究メンバーの中に、桜田栄二郎もいた。


「よろしい。では、次からは、ちゃんと授業を聞くように」

「は〜い!」

 返事のよさ(だけ)は、誰にも負けないケンタだった。





 夕暮れ。ジャンヌダルクがドック入りしてから数時間が経過した。

 マオ・インダストリー極東支部の一番奥の機密ドックに、三角錐を倒したような形の紅い色の戦艦が鎮座していた。夕暮れに溶け込みそうな船体は、最終チェックのため、いたるところにコードがつながれている。

「これがラグナロクですか・・・」

 ブライト・ノアがそれを見上げながらつぶやいた。

 まじめそうな男だが、つい一時間前まで死相が出ていたとは、誰も思わないだろう。


「我々のプロジェクトの要、重砲撃艦ラグナロク。メガ粒子砲を超える威力の副砲、自動制御の対空装備、そしてわが社が総力を挙げて造りだした主砲。これがあなたの艦です」

 四十代半ばの男、基地最高責任者のサイトウが自慢げに答えた。

「左舷の弾幕が薄くなることもありませんよ。ハハハハハ」

 何気にひどいことをいう男である。

「はぁ・・・それで、なぜ、これをエゥーゴに?」

「この艦のテスト航行とデータ収集をお願いしたく思いましてね。あくまで、これはテスト艦ですから」

「・・・・安全面の保障はできるのでしょうか?私個人としては、クルーを必要以上に危険にしてまで最新鋭の装備を欲しいとは思いません」

 最新鋭の装備には、それに見合ったリスクが生じる。実戦配備がされていない状態で、どのようなトラブルが起こるかもわからず、万一起こったら対処しにくい。最新鋭の装備一つと、旧型だが信頼性のある装備を多数。前線で好まれるのは、当たり前だが後者だ。

 自分の命がかかっている。少しでも信頼性のあるものに頼るのは当然だ。ブライトも、新兵器の威力とリスクを考えてのことだ。実物を見る前に、資料に一通り目を通した。

 メガ粒子砲の連射、木星トカゲの機動兵器輸送艦・チューリップをも一撃で吹き飛ばす主砲、さまざまな対空火器。数十回に及ぶ主砲のテストでも、事故という事故は起こっていない。

 信じられないほど、安定した出力だった。それでも、やはり不安はぬぐいきれない。

「問題ありません。主砲以外はすべて既存の兵器です」

「そうですか。それで、エゥーゴとも話が通っているんですね?」

「抜かりなく」

「・・・・・・・・・・」

(これも、性分か)

「わかりました。準備が整い次第、テスト航行を行います」



 テスト航行のスケジュールに目を通したブライトが「騙された」ということに気づくのは、引継ぎの書類にサインをした後だった。

 エゥーゴの戦艦アーガマのメンバーがこの基地に来たのは、壊滅したティターンズの後始末のためだ。パプテマス・シロッコ以下の中心人物は現在背任罪として連合軍宇宙要塞“コンペイトウ”に拘束されている。逮捕の際の手引きを行ったのは、現在誇張なしにトップの財力を持つフヨウ財団だ。フヨウ財団関係の物がない家庭はまず存在しないし、軍や政府にもいろいろと顔が効く。地球圏の全財産の一割はフヨウ財団のものだとも言われていた。

 ティターンズ宇宙艦隊提督であるバスク・オムは無能として現在は広く知られている。ティターンズが壊滅した理由が、彼にあるからだ。彼が軍事要塞に改造しようとしたコロニー“グリプス”はフヨウ財団の会長が生まれたコロニーであり、そのことで反感を買った。結果、計画が表に出た次の日には統合軍エリート部隊・ティターンズは軍から抹消されることとなる。

 関係者は全て逮捕。中には云われ無き者までいたが、全てフヨウ財団の指示で一度は逮捕されている(完全にシロだと分かると、一生かかっても使い切れないほどの慰謝料と共に釈放された)。

 そのようなこともあり、軍は当面木星トカゲに専念できるようになった。何しろ、ティターンズの横槍が激しかった頃はマトモに宇宙艦隊を動かすことも出来なかったのだ。東方・サイド1方面管轄部署に所属するミスマル・コウイチロウ提督はストレスが溜まりっきりで髪が三割は減ったとウワサされていた。

 エゥーゴが計画していたダカールでの演説作戦も開始数時間前というところで中止となった。マオ社のヨーロッパ支部で補給を受けた後、アーガマを乗り捨ててこの極東支部まで来たのだ。アーガマ自体も、度重なるティターンズとの戦闘でボロボロであり、後処理をしている間にオーバーホールを行う予定だった。

 そして、移動に使ったのが高速移動艦ジャンヌダルクであり、揺れがひどくてほぼ全員(その中にはエースパイロットであるクワトロ大尉やアムロ中尉も含まれる)が船酔いしていた。
 ブライトとて例外ではない。死相が出ていたのはそれが理由だ。

 エゥーゴに話が通っているということは、少なくとも数日前から譲渡されることをブレックス中将は知っていたはずだ。だが、直前までブライトが知らされなかったのは合点がいかない。

 予定が狂ったのか、それとも、元々こういうシナリオだったのか。

 どちらにせよ、テストが済んでいないような試作艦を与えられるのが自分の性分なのだと、哀しくも自分に言い聞かせた。




「イーヤッホーーーッ!!」

 大はしゃぎで昇降口からケンタが飛び出した。キョロキョロ周りを見渡し、ある人物を探す。従姉妹のハルカの姿を見つけた彼は、一目散にそばに駆け寄った。

 彼女の瞳の色はグリーンだ。だから、この二人は校内のちょっとした有名人である。

「なぁハルカ、じいちゃんのアレ、今日完成するんだろ!?」

「アレって、なぁに?」

 キョトンとした顔で、ケンタを見つめ返す。

「アレだよアレ!ア・ン・ド・ロ・イ・ド!」

「アレだったら、ケンタが来たらすぐに実験するって言ってたわよ」

「イィヤッホーーーゥ!!」

 ハルカはため息をつきながら、あきれたような目で、ケンタを見た。

「ケンタの玩具じゃないのよ?」

「だって、アレが完成して動いたらミラクルカッコいいジャン!!」

「よくそんなこと言えるわねぇ。機械が見たいなら統合軍基地に行けばいいじゃない。モビルスーツがうようよいるわよ。・・・ちょっと遠いけどさ」

「い・や・だ〜!ジムはかっこ悪いし、ザクはノロマだし。ガンダムがこんなところにいるわけもないし・・・」

 嘘か誠か、五百以上のザクと五十以上の戦艦を撃墜したと言われている、旧連邦軍のMSガンダム。

 まあ実が二割に虚が八割といったところだ。

 神話にも似たその活躍は軍内は言うに及ばず、民間にまで知れ渡っている。赤い彗星と言われたシャア・アズナブルの知名度は、その足元にも及ばない。

 本人は内心悔しいらしい。

「私は・・・・MSよりも」

 ハルカは空を見上げながら、つぶやいた。

「コメット・ブラスターのほうが、憧れるな・・・」

 地球に飛来する隕石を破壊する、軍とは別の組織。宇宙からの隕石落下を食い止める、“オービタルステーション”勤務のコメット・ブラスター隊員は、ほとんどが女性で構成されている。だから、アースノイドの女の子の憧れの的なのだ。

 ファンの多くが彼女たちの性格を知らないのだが。


「・・・・・・逝っちゃった」


 意識が彼方のほうに行ってしまったハルカを残し、ケンタは祖父の研究所へ向かった。




 旧Gアイランドのはずれ、海を臨む断崖絶壁の上に天野平和研究所はあった。数十年も前に立てられた古い灯台が特徴的なところだ。


「じいちゃん!」

「おお、よく来たなケンタ」

 出迎えたのは、白髪と白衣の、いかにもといった好々爺だ。

「アンドロイドは!?」

「もう準備は出来とる」

 意外なほど広い研究所の中を、天野博士とケンタは歩いていった。

「良いかケンタ。ヘテロダインの出現によるOE兵器の使用。隕石の落下。世界各地、神出鬼没の木星トカゲ。人々は不安を抱えながら生きておる。つまり、この星はマイナスエネルギーに満ちておる。このままでは、近いうちに暗黒世界が来てしまう。じゃからこそ・・・・」

「世界平和のために、研究に励んでおるのじゃ。でしょ?」

 台詞をとられた天野博士は、あっけにとられた顔で

「よぉくしっとるなぁ?」

「うん。毎日聞いてっからね」

 秘密のエレベーターを抜け、大量の機材が並んだ部屋に出た。その部屋をも抜け、通路に出る。

「うわぁ・・・・」

 何度見ても、ケンタは感嘆のため息を漏らす。通路の窓から見えるのは、青を基調としたカラーリングのジェット機や、黒い重戦車だ。

「お〜ぃ。ケンタ〜、戻ってこ〜い」

 精神が通常空間に復帰したのは、五分ほどの後の話だ。その間にハルカも研究所に着いていた。


「特にあのDrジャンゴは科学者の皮をかぶった極悪人じゃ!桜田博士をハメたのも、みんなあいつじゃ!!」

「でも有名じゃないね。・・・・・じいちゃん含めて」

「みんな気づいておらんのじゃ!!気づいたときには統合軍も歯が立たないような暗黒の力を手にしているに違いない!!それに、ワシはそのテの科学者の間じゃ有名だ!」

「で、結局暗黒の力って、何なの?それに、どうやってこの研究所造ったの?お金になってるようには見えないけど?」

 天野の抗議を無視してケンタが質問する。

「要は強大な力じゃ。この研究所は・・・まぁ、秘密じゃ」

「ずるい・・・」

 実際には、博士は統合軍将官を軽く上回るほどの収入がある。誰にも教えていないことなのだが。教えられないといったほうが正しいか。







「熱エネルギー探知。解析します」

 統合軍の宇宙ステーションの一つが、それを探知した。巨大な熱源が一つと、少し離れてそれよりも小さな熱源が複数。

「・・・・・解析完了。・・これは・・・・」

「どうしたんだ?」

 不思議そうな顔で、オペレーターが答えた。

「質量がゼロです。しかし、エネルギー自体は要塞並み・・・計器の故障か、誤認かと」

「熱反応があるんだ。適当な小隊を調査に向かわせろ」

「了解」





「なんか雲行きが怪しくなってきたね」

「そうじゃな。さっきまでは晴れておったのに」

 いつの間にか、ほんの十分ほど見ないうちに、外は黒雲に覆われていた。

「ハルカ、今日はわしの研究が完成する日じゃ。お赤飯の用意は出来とるかぁ?」

 ちなみに、この博士は家事のほとんどをハルカに任せている。

「お赤飯よりこっちが大事よ?」

 その手には、女の子には大きすぎるくらいの消火銃が握られていた。頭にはヘルメット。

「信用しとらんな?」

「してもらえるようなこと、一度でもした?」

「いやぁ・・・それはじゃなぁ・・・・・」




 沈黙してしまう自分が情けないと思う、博士であった。




「ねぇ、じいちゃん。とっとと動かしてよ」

「おお、そうじゃな。いよいよ!火鳥勇太郎に命が吹き込まれるのじゃ!!」

「火鳥勇太郎?」

「このアンドロイドの名じゃ。人間型ロボットなんだから、人間の名前があったほうがいいじゃろう?」

「でも何で日本人の名前?このアンドロイド目が青だよ?」

「そういうお前じゃって緑だろうが」

「そりゃあまぁ・・・・」

 ドイツ系の血があることはケンタもハルカも特に意識したことは無い。

「それじゃぁ気を取り直して、いくぞぉ!!」

 壁に固定してある金色のアンドロイドに、さまざまなコードを取り付けていった。

 それが終わり、博士が手元のレバーを引くと、すべての回路に電気が送り込まれた。同時に複数のボタンを順に押していく。

「目覚めよ!火鳥勇太郎!!!」


 瞬間、アンドロイドは一歩、また一歩と歩き始めた。

「す、すっげー!!」

「ほ、本当に動いた・・・・」

 ケンタは感激し、ハルカは初めて祖父の実験が成功したことに対する感激。というよりも意外すぎて思考が停止しかけていた。


 が、三歩、四歩と歩くうちに動きが緩慢になり、とうとう倒れてしまった。


「お、おかしいのう・・・」

「ほら、やっぱり駄目だった」

「じいちゃん!」



「はぁ・・・」

「がっかりすること無いよ、じいちゃん」

 すっかり落ち込んだ博士だったが、孫の言葉に励まされたのか、元気を取り戻した。

「そうとも!宇宙の果てから正義のエネルギー生命体がやってきて、火鳥勇太郎に乗り移ってくれるんじゃ!!」

「宇宙からの?」

「エネルギー生命体?」


「心配するな。きっとそうなる。その前祝にお赤飯を・・・」


「ああ!!」


 ハルカが叫んだ。火鳥を固定していた台が燃えているのだ。

 だが、同時に自動消火装置が働き始める。

「い、いかん!!これではコンピューターが水浸しだ!」





 消火装置の元栓を締めてしまった博士のおかげで、ハルカの消火銃が大活躍した。火は消すことが出来たから問題ないのだが・・・・・。

 どっちが保護者かわからない。






「以上が、今後の予定になる」

 ブライトが、クルーに今後の予定を説明した。テスト航行とは名ばかりの、単なる雑用だった。マオ・インダストリー社が資金援助している研究所の開発したロボットを回収するのが、主目的だ。

「なお、ウッソ・シャクティの両名はここで待機となる」

「わ、わかりました」

 ウッソも、シャクティも、ジャンヌダルクに乗艦する際に、一緒についてきた。乗艦できた理由はブライトも聞かされていない。とりあえずは、ラグナロクの乗組員ということで登録がされた。

 だが、二人とも十歳くらいの少年少女だ。実際に戦艦に乗せるわけにはいかない。だからこうして居残り組みにしたのだ。

 そのあたりの事情が分からない年ではない



 その一時間後、ラグナロクは最初の目的地、光子力研究所へ向かった。





「雲行きが怪しくなってきたね、シャクティ」

「・・・・良かったのかしら、これで。カサレリアで、帰りを待ったほうが・・・」

「カミオンのおじいさんたちがいってたろ。待つだけじゃ、得られない物もあるって」

「・・・・・そうね」






「壊れとる!?・・・ということは、猛烈なマイナスエネルギーを検知したのじゃ!!ついに悪魔が動き出したか!!」

 一階に戻った博士が発見したのは、彼が開発した妙な機械の一つ・マイナスエネルギー検知器の無残な姿だった。


 と、次の瞬間だった。カッという大きな音が、研究所を振るわせたのだ。

「ら、落雷か!?ここに!?いや、その割にはどこにも異常が無いようじゃが・・・」

『じいちゃん!じいちゃん!地下の実験場に来てよ!!』

 ケンタからの内線の呼び出しだ。ちなみにこちらから返事をすることは出来ない。

「な、何事じゃ?」


 地下研究所にいくと、そこには待ってましたとばかりにケンタが飛び出してきた。

「やったよ、じいちゃん!!火鳥勇太郎が、誕生したんだ!!!」

「なにぃ!?さっき壊れたんじゃ・・」


 だが、ケンタの後ろには黄金のアンドロイドが立っていた。

「さっきの雷のおかげで、動き出したんだよ!!・・・・自己紹介!」

「わ、わしがお前を作った天野じゃ。よろしくな」

「わ、わしはお前に作られた火鳥じゃ。よろしくな」

 鸚鵡返しに、火鳥が言う。

「まだ言葉をうまくしゃべれないんだよ」

「ケンタ、動いたのをみせたんだし。人口皮膚かぶせないの?」

「あ、そうだよ!!早く人間の姿にしようよ!!」

「そうじゃな。ハルカ、こいつの服を持ってきてくれ」

「うん」


「火鳥の顔のプログラムはどうする?」

「この前ハルカが顔の理想図書いてたよ。それ入れてあげれば?『憧れの君』なんだって」

「そうじゃな」

 実は、博士は顔の用意をしていなかった。


 人工皮膚はナノマシンを含んだクリームを塗ることにより、プログラムしたとおりの形になる。整形手術によく用いられる、ポピュラーなものだ。




 その後、理想の顔の男性を目の前にしてハルカが跳んだのは、言うまでも無い。







「これがヴィクトリーか」

 お気に入りの玩具を見るような目で、新型の白いMS.ヴィクトリーガンダムを見上げていた。家にはMSシミュレーターがあったため、それなりに操縦は出来る。

 もっとも、基本データがジムのため今の操縦システムには対応していない部分もそれなりに多い。



 勝手にコックピットに入り、いろんな計器をいじり始めた。全計器を作動させると、レーダーに赤で示された光点が映っていた。

「・・・・・熱反応?ビルなんかじゃないよな・・・レベルからしてMS以上・・・」


『緊急警報!市街地に謎の機動兵器出現!社員は速やかにシェルターに非難せよ!!』


「これ・・機動兵器なの!?ち、近いじゃないか・・・・」

(どうする・・・・ヴィクトリーを動かす・・・?)

「や、やれるはずだ!!」


「サイトウさん!ヴィクトリー、借ります!!」

『な、何!?待ちたまえ、ウッソ君!!』

 通信を拒絶すると、ヴィクトリーのジョイントを強制排除した。


 フットレバーを思い切り踏み込み、一気に格納庫から飛び出した。前方、三キロほど離れたところから黒煙が上がっているのを確認すると、フルスロットルでそこへ向かっていった。





「街中にアリ地獄?」

 ケンタが怪訝な顔で博士に聞いた。

「そうじゃ。突然現れたらしい。ロボットも一緒だそうだ・・・・軍が到着するまで三十分はかかってしまう。火鳥勇太郎!早速出動じゃ!!」

『“ちょっと”じゃすまないくらい遠いじゃないか』

 ケンタは心の中でハルカに抗議して、口には出さなかった。




 火鳥が司令室にあるシートに座ると、自動的にそれはさらに地下深くへ下がっていった。同時に新しいシートがその穴を埋める。そのシートにはケンタが座った。

「へへっこのチャンスを待ってたんだ!」

「ヘルメットを持って行け!」


「ケ、ケンタ!!」


 シートは十メートルほど下がり、そこで方向転換する。奥に進んだシートはいったんとまり、パイロットはそこでヘルメットを拾う。それを確認すると、さらに奥へ、シートは進む。

 奥は二つ分かれ道がある。片方は極地用メカ、もう片方は汎用型ジェット機が待機している。

 二人のシートはジェット機の方へ向かっていった。

 エントリー直前、九十度角度が変わり、同じく地面と垂直なジェット機のコックピットとドッキングする。



『いいか、そのジェット機はあくまで救助用じゃ。救助用装備が、お前の武器だ、火鳥。冷静に行動しろ』

「冷静に行動、了解」



 と、会話している裏では

『ケンタは降りてらっしゃい!!』

「やなこったぁ!これるもんなら来て見ろ〜〜!」

 という小学生らしい会話があったそうな。





 崖の岩が開き、滑走路になった。そして、ジェット機は空高く飛び出していった。





「なんだ、アレ・・・・ムカデ・・いや、アリ地獄?」

 ウッソが見たのは、細長い体に腕のようなものが幾つもついたロボットだった。破壊しているのは周辺の化石燃料タンク。つまり、石油がしこたま入っている。

「まったく!何でいまどき化石燃料なんか!!」

 ビームライフルを構え、空中から頭部を狙って連射する。もちろん、軸線上からタンクをはずして。

 だが、それに気づいたアリ地獄は炎を吐いてそれを無効化してしまった。同時にタンクへの攻撃をやめ、ヴィクトリーに攻撃目標を変更する。


「正規軍の到着まで後360秒・・・・何とか、持たせる!!」

 ビームサーベルを取り出し、両手に構えた。ヴィクトリーを着地させ、ひざを折らせる。一気に近づいて、相手を押して身動きを取れなくする。

「いけぇ!!」

 ヴィクトリーで突撃し、サーベルを怪物に突き立てる。だが、それは表面に傷をつける程度に留まった。

「な、何!?」

(ライフルも、サーベルも駄目!?そんな、これ以外に武器なんか・・・)


 バルカンは、論外だろう。







「あれだよ!火鳥兄ちゃん!!モビルスーツが戦ってる!」

(しかも・・・ガンダムだ!!)

 白いボディとV字アンテナ。それは誰もが知っているガンダムのトレードマークだ。

『消火だ!石油が爆発したらえらいことだ!消火弾を発射するんじゃ!!』

 機首の側面が開き、無数の玉が排出される。それは空中ではじけ、消化剤を撒き散らした。

 消火を確認すると、ジェット機は空き地に水平着陸し、機首の底が開いてシートが地面につく。

「良かった・・・逃げ遅れた人はいないみたい」


 火鳥は、怪物をにらんだまま、叫んだ。

「ドライアス!!」





「ジェット機!?それに、子供・・僕よりも小さい!?何でこんなところに!!」

 自分がいえたことではないが、確かにジェット機に乗って現れた少年と青年は異様だった。


「くそぉ!!」

 サーベルの出力を最大にし、地面に投げつけた。破壊されたコンクリートが宙を舞い、怪物の動きを制限・・・出来るような相手ではなかった。

 関係なく、腕をヴィクトリーに近づけてくる。

「こなくそぉ!!」


 ジャンプさせ、空中で体制を立て直す。上空二十メートルほどだが、相手の攻撃はここまでは届かない。

 タンクに攻撃の手を向かわせないよう、ライフルを散発的に撃つ。







「ファイヤァァァァジェェェェェェット!!!」

 火鳥が叫ぶと、ジェット機はひとりでに飛び出した。空中で機首が底部に廻り、ウィングも底部に廻る。赤い頭部が出現し、尾翼の部分が頭のほうに周り、腕が出現した。推進部が伸び、中央に移動し、脚になった。

 ガンダムのアーマーが垂直に向き、V字アンテナを取ってカラーリングを変えたような姿。ジェット機・ファイヤージェットは、完全な人型に変形した。

「はぁぁ!!」

 火鳥が跳び、人工皮膚が消え、人型の胸に収まる。


『チェイィィィンジ!!ファイバァァァド!!!』

「あ・・・・ああ・・」


「な、何だよあれ!!人型・・・モビルスーツ・・・いや、パーソナルトルーパーだったの!?」

 ウッソの叫びをよそに、ファイバードは一点を指差した。

『貴様!ドライアスの手先だな!!』

 ファイバードの指は、確かに、化け物を指していた。


 ウッソも、ケンタも、目の前の事態に驚愕していたが、それ以上に驚いたのは天野博士だ。

 司令室のモニターにはファイバードの目から入った映像が映し出されていた。

「何がどうなっとるんじゃ・・・」

「ドライアスの手先って・・・何?」

「あの手は誰の手じゃ?ふぁいばあど?それに、わしゃあんな人型に変形する設計はしとらんぞ・・・?」

(いや・・・獅子王の奴ならやりかねんが・・・)




『このファイバードがいる限り、宇宙の平和を乱させはしない!!』



「そうか!本当に宇宙からのエネルギー生命体が乗り移ったんだ!!」


 ケンタが歓喜する裏では、


(あれは、冗談のつもりだったんじゃが・・・)

 と、首をひねっていた。




『てぇいッ!』

 ファイバードは化け物にハイキックを放ち、相手の背中に廻った。そして相手の腕をもぎ取ろうとつかんだが、体格差がありすぎた。超ヘビー級とライト級が戦うようなものだ。たちまち投げられ、ビルにたたきつけられる。




「何なんだよ、あれ・・・」

『ウッソ君!危険だ、早く戻りなさい!!』

「で、でもあのロボットは・・・」

『こちらでもモニターしている。それよりも、君の事だ!早く戻りたまえ!!』

「わ、分かりました・・・・」

 ちょうど正規軍が到着する頃だ。




『ぐあぁっ!』

 ビルにファイバードをたたきつけた化け物は、火炎放射で攻撃を始めた。熱でビルのガラスは蒸発している。

 じりじりとファイバードの装甲を焦し、表面が赤みを帯びてくる。


『くそぉ!フレイムブレスター!!』





「緊急コールじゃと!?ジェット機からじゃ!」

 博士がコールの処理を始めるより前に、支援戦闘機・フレイムブレスターは大空へ飛び出していった。



 火炎放射が一瞬止まった。ある程度エネルギーのチャージが必要なようだ。その隙を突き、ファイバードは相手の足元に飛び込む。そして強烈なアッパーを喰らわせた。

 「ギシャア」という不気味な声を出しながら化け物がもんどりうっている間にフレイムブレスターが到着した。

 それはファイバードの胸の部分にドッキングし、後部が頭部に重なる。フルフェイスのヘルメットをかぶったような感じだ。そしてキャノンの部分が後部に回り、垂直になっていた肩アーマーが水平になった。

『フォーム・アップ!!武装合体ファイバード!!』

 ガンダムのようなX字の飾りが頭部に出現し、ファイバードは『武装合体ファイバード』となった。

『フレイムソード!!』

 ファイバードは機首から巨大な剣を取り出した。ビーム兵器ではなく、純然たる剣だ。鍔元には太陽をかたどったようなエンブレムが着いている。合体したファイバードの胸にあるものと同じだ。

 だが、ファイバードに再度、強力な火炎が降り注ぐ。

『フレイム・バリアァァ!!』

 剣を前にかざすと、目に見えない幕がファイバードを覆った。それに触れた炎は一瞬の間もなく消滅する。

 化け物は奇声を発し、腕を飛ばす。ワイヤーでつながった腕は、地面に突き刺さった。その衝撃で直径数メートルほどのクレーターが発生するほどの威力だ。だが、比較にならないほど先ほどより回避能力があがったファイバードは難なく避け、ワイヤーをすべて切り落とした。

 巨大な尾がファイバードを襲う!だが、それをもフレイムソードの一太刀が切り裂いた。

『フレイムソード!チャァァァジアァァァップ!!!』

 ファイバードがフレイムソードを空にかざす。と、その瞬間、火の鳥が現れ、フレイムソードと一体化した。炎をまとったフレイムソードがその大きさを増す。それを前に向け、ファイバードは化け物に突撃する!


 炎の一閃。両断された化け物を、火の鳥の怒りの業火が襲う。怒りの業火は灰まで燃やし尽くすと、フェニックスとなって空高く舞い、消えた。

 フェニックスの姿を、見たものはいても、明確なデータを残すことが出来た者は皆無だった。



「すごいや!!すごいやぁ!!」




 ファイバードはファイヤージェットに変形し、ケンタを回収するとその場を後にした。正規軍が発見したのは、火も消え、化け物の姿も無い荒地だった。

 灰まで無くなった化け物の調査も、不可能と判断された。







「本当に宇宙から来たエネルギー生命体なんだ!!」

 ジェット機で水中を進みながら、後方の火鳥に聞いた。

 コレは汎用ジェット機である。水中を進むことも出来る。天野平和研究所の技術力を持ってすれば、このようなことも可能なのだ。

「・・・喜んでばかりいないでくれ。ドライアスとの戦いは、始まったばかりだ」

「え・・・・」

 火鳥の澄んだ目は、どこか、遠くを見ていた。






あとがき
 ファングはとてつもないほどのファイバード好きです。ですから、どうあがいてもファイバードを活躍させようとしています。たとえそれが他の勇者を悪者にしようとも。

 設定上、この世界にはGアイランドが二つあります。ガガガファンの皆さん、怒んないで下さい・・・

 他にも、いろいろ設定をいじってるので、間に受けると恥を書く可能性もあります・・・・ご注意ください。

 でもって、ティターンズの連中は好きじゃないんでいきなり壊滅してもらってます(笑

 

 

 

 

代理人の感想

 いや、悪者にするのは流石にどうかと思いますが。

 両方立たせてこそのクロスオーバーでしょう。

 

 

>本人は内心悔しいらしい。

 爆笑。

 ファングさんナイス!(笑)

 

 

>ウッソ10歳

 ・・・おや?

 原作では二人とも13歳でしたが、何かの伏線かな?