ストライクを大気圏に叩き落したアスラン達“クルーゼ隊”はプラントに帰還していた。
足つき“アークエンジェル”の追撃任務を地上の部隊に引き渡した彼等は、任務後の休暇を活かして骨を休めていた。
だが、アスランだけは束の間の休暇を満喫しようとはせずに同部隊で戦死した“ニコル・アマルフィ”の実家に訪れていた。



「―――さあ、お掛けになって」
ニコルの母“ロミナ・アマルフィ”はそう言ってアスランにソファを促すと、ティーカップにお茶を注ぎ淹れた。


「すみません。お忙しいときにいきなり‥‥‥」
申し訳なく頭を下げるアスランにロミナは穏やかな笑みで首を振った。



「いいんですのよ。自宅には私しかいませんし、それにお友達が訪ねて来たら、あの子もきっとお喜びになったでしょうから」
切なげに微笑むロミナはやんわりと否定した。
齢四十を超えた夫婦なのだが、そのゆったりとした物腰から実年齢よりも若く見えた。
だが、息子の死には計り知れない苦痛を受けたのだろう。
頬は痩せこけ、瞼の下の翳りがアスランの瞳にちらついた。



「ユーリさんは?」


「今は仕事でお出掛けになっているの。あ、でも‥‥‥あの子がいなくなってから家にも帰ってこない日が続いていて、もしかしたら今日も‥‥‥」
来賓用の紅茶を差し出す彼女の瞳が愁いだ。
琥珀色に輝く紅茶を前にアスランは一口つけた。


「そうですか‥‥‥」


「ごめんなさいね。せっかく来てくれたのに‥‥‥」
ユーリ・アマルフィ。他界したニコルの父親である。
機械化工学を専門とする国防委員の一員である。
彼はMSの開発グループにも加わり、思想的には穏健派を通している。
その彼が最近帰宅せずに仕事に打ち込む様になったという。
それも仕方が無い―――と、アスランは納得した。


「戦争なのはわかるの。あの子が‥‥‥ニコルが死んでしまったのは戦争のせい。あの人もそれを分かっていても心が‥‥‥」
息子の死という想像を絶する事実に苦悶したユーリ。
その心痛を職務に励む事で僅かでも紛らわそうとしているのだろう。



「‥‥‥地球のナチュラルが憎いのもその所為‥‥‥あの人がそうであるように」
眉を顰め、両手に抱いたカップを覗き込みながらロミナは言葉を搾り出した。


「でも、そんな事はいいの。あの子がいてくれさえすれば‥‥‥それで良かった」


「‥‥‥ニコルの仇は討ちました」


「そういうことじゃないのよ。殺されたから殺して、殺したから殺されて‥‥‥あの子が帰ってくるわけじゃない」
愁いを帯びたエメラルドの瞳が、そう訴えかけていた。
ニコルは音楽が好きだった。
よく自作した楽譜を自分に見せ、自慢げに演奏してくれたりもしていた。
その彼が、なぜ死なねばならないのか。
殺される程の何か悪い事を仕出かした訳ではない。
人並みに我侭を言いつけた。人並みに悪戯を仕出かした事もある。
だが、あのニコルが死なねばならぬほどの理由では無いはずだ。



(ミゲルも‥‥‥ラスティもそうだ)
アスランは苛立たしげに紅茶を飲み干した。
地球のナチュラル共がヘリオポリスでMS開発を行わなければ、こんな事にはならなかった。
ニコルもミゲルもラスティも‥‥‥そして、キラも殺めずに済めた。



「怖い顔‥‥‥」


「すみません。考え事ばかりしていました」


「いいの。少しでもあの子の事を思い出してくれる人さえいれば、あの子もきっと報われると思うから」
死人の様な声色を残して、彼女はソファから立ち上がり部屋から出て行った。
しばらくして紙類の束を両手に抱き抱えたロミナが姿を現した。
その紙束の一部をアスランに差し出す。



「楽譜‥‥‥?」


「ニコルの部屋に残っていたものよ。あなたには是非見てもらいたくって」


「‥‥‥」
よほど使い込んだのだろう。
皺や汚れの形跡が隅角に見受けられた。
ニコルは音楽が好きだった。
楽聖たちの生まれた地球の古い都市に旅行したいと本人は語っていた。
グランドピアノの鍵盤に指を走らせる彼の横顔。
ピアニストになりたいと夢見がちに語る彼の横顔。
その全てが脆くも崩れ去った。まるで元から存在がしなかった様に。
友がみな死ぬ。
次は誰が死ぬ。
自分か?
他の奴らか?
友が死ぬのはもう我慢なら無い。さっさとこんな戦争は終わらせなくては。
アスランはニコルが残した生き証を握り締めた―――。








『第八話・勝利』








状況説明室(ブリーフィングルーム)と銘打たれた簡素な室内には総勢十三名のクルーが集結していた。
パイロットの俺とムゥは連合の仕官服姿のままだが、いざ戦闘となればパイロットスーツに着替える。
他にも艦内放送で呼び出されたブリッジクルーのメンバーが、好き勝手に雑談をしていた。



「静かに、ブリーフィングを始めるぞ」
入室した副艦長が静かだが力強く宣言した。
途端に静まり返る室内に緊迫した空気が奔った。



「全員集合したな?では、これより艦長から今回の作戦について説明がある!」
厳しく引き締められた口元から副艦長の“ナタル・バジルール”が、俺たちに告げた。
その横を通過した艦長の“マリュー・ラミアス”が俺達クルーの正面に歩み立った。



「皆も知っていると思うけど、私達はアラスカ連合本部に向かう為に、砂漠の虎を倒し、このアフリカから脱出しなくてはいけないわ」
固唾を呑み、傾注する。
マリューが電子モニターのスイッチを入れた。
途端に画面全体に電子地図が映り広がった。



「私たちの舞台はこの鉱山跡地よ。この廃坑には多数の地雷が埋設しており、これを活用しない手は無いわ。もちろん、敵もそれを承知で攻めに来るでしょう」
地雷が埋設されている箇所に目印が描かれている。
戦場としての利用的価値は高い。
ならば、敵もそれを罠と承知で足を踏み出すのならば何かしらの手段を講じる筈だろう。



「今までの戦闘で確認された敵戦力はバクゥに戦闘ヘリ‥‥‥レセップス!」
画面に映り出された光景が電子地図から、連合軍が入手したMSの詳細に切り替わった。
四本足の犬じみた外見を宿した機体と各種武装が事細かに記されていた。



「これが敵MS。重力下での高機動性が売りのMSよ。主武装のミサイルポッドの破壊力は大変脅威だけど、PS装甲が有るからって、くれぐれも油断しない様にね‥‥‥」
私情を割り切り艦長は『命令』を下された。
唯一のMSパイロットである俺は一度だけ頷いた。
前々回の様な無様な醜態を演じる訳にはいかない。絶対に。



「今回の作戦には『明けの砂漠』の方たちにも協力してもらう手筈です。出撃には『ストライク』と『スカイグラスパー一号機』に出てもらい敵部隊を殲滅してもらいます。そして、アークエンジェルは敵母艦への艦砲攻撃でこれを撃沈します。何か質問は‥‥‥?」


「もし、地雷が何かしらの手段で無力化された場合、どうするのですか?」


「‥‥‥その時は、残念だけど総力戦となるわ」
つまり臨機応変に真正面からぶちのめせというのか。



「伏兵が存在していた時の対処は‥‥‥?」


「同じよ‥‥‥今のうちに言っておくけど、私達には罠を張る時間も余裕もないの。でも、警戒しておくに越した事はないわね」
伏兵の存在を警戒して行動するのと、しないのとでは大分勝手が違うだろう。
アニメでは悉く地雷を爆破された挙句、伏兵の出現によって更なる危機に陥った。


「じゃ、他に質問は無いわね‥‥‥では、これより“レセップス突破作戦”の状況を開始します!各員の健闘を祈ります!」
命令を下されたクルーは一斉に立ち上がり、敬礼後に弾ける様に室外に飛び出した。
俺もその後に続く―――が。



「どうしたんだ?トール」
退室しようとした俺の眼前にトールが立ち遮った。
眉間に皺を寄せ、怒りと哀しみが入り混じった複雑な表情をしていた。



「‥‥‥ちょっと来てくれ」


「?‥‥‥仮にも作戦中だぞ」


「いいから、まだ出撃まで余裕あるし」
返答を待たずに強引に俺の腕を引いて部屋から連れ出した。
何処に連れて行く気だ?
それにパイロットには待機命令が出ているんだが―――。
通路の角を曲がり居住区の下士官の共同生活部屋に差し掛かる所で、トールは躊躇いがちに呟いた



「‥‥‥キラ。お前がフレイの‥‥‥その」


「恋人か?」
戦死したサイの事情を含めて俺の方から告げた。
図星を言い当てられたトールはビクッと肩を震わせた。



「あ‥‥そ、そうなんだ。フレイさ、最近元気なくて。キラに元気付けて上げて欲しいんだ。ほら、キラはフレイの恋人なんだから」


「別に‥‥‥俺は」
曖昧に言葉を濁し否定する態度にトールは怒りに眉間を顰めた。


「サイは‥‥‥どうなるんだよ?あいつ、フレイがお前の恋人になってそれで幸せになるなら、フレイの親父さんの事もあるし、それでいいって!」
責める様に罵り返すトールの言葉に絶句した。



「ミリィだって、ついさっきまで部屋で寝込んでて、今は艦橋の方にいったけど―――!」
そして、憎々しげに睨むトールの口振りから“キラはフレイの恋人”という図式が成り立っているようだった。



「待て。お前はどう知ったのかは知らないが。俺は懇ろしてない。アイツは清らかなまま、サイは欺かれだけだ」


「だけどさ!その、キラは‥‥‥したんだろう?なら―――」
あの馬鹿が撒いた種を摘むがなければならない事に酷い理不尽を覚えた。


「だから、するわけがないだろう。フレイとは恋人でもないし、そもそもああいう高飛車な女はタイプじゃないから‥‥‥兎にかく慰めればいいんだろう。行くぞ」


「ま、まてよ。それじゃ死んだサイが―――」
軽く肩を叩き部屋に踏み入る。
室内は暗く照明は落としたままであった。
その陰鬱な空気が立ち篭る室内の一角から女の啜り泣く声が聞こえた。
仕方なく、なるべく同情めいた声音で女を呼びかけた。


「随分やつれたな。ブサイク面に磨きがかかっているぞ」
違う。俺はそんな事を言いに来たわけではないはずだ。
けれど、泣き疲れ憔悴し切きれているフレイの姿を前に無意識に唇の端が吊りあがる
背中を背けたままシーツに包まるフレイに喜悦を覚えてしまう。
ざまぁみろ―――と。



「‥‥‥‥」


「これが望みだったのだろう?変な噂を吹っかけてアイツを貶めて―――」


「‥‥‥‥‥て」


「勝手にバクゥで出撃したメガネを死なせ。まぁ。そういう意味では感謝する。今思うとあのまま放置していれば今以上の何かを仕出かしていただろうし―――」


「‥‥‥ろ‥‥して」


「あ?聞こえねぇなぁ。馬鹿なナチュラルの彼氏が死んだのが、それほど悔しいか?けどなアイツを殺す要因を作ったのは―――」


「殺して殺るって言ってんでしょよおおおおッ!!」
突如、尋常ではない形相と共にフレイは大音声を張り上げた。
シーツを勢い良く跳ね除け俺の喉元目掛け飛び掛る。
まるで全てから追い詰められた様な必死の形相。
その顔つきに奇妙な懐古の情を抱かせられた。


「死ね!死ね!」
仰向けに突き飛ばし、そのまま馬乗りになったフレイ。
常軌を逸した眼差しで見下ろす彼女は、呪い染みた文句を浴びせ掛けながら締め殺そうとする。
苦悶の喘ぎが唇から漏れ出す。
だが、彼女のその必死さに憐みと哀しみが綯い交ぜになった感情を覚えた。


「ふ、フレイ!?」
背後からトールが戸惑い叫ぶ。
気になりこっそり聞き耳を立てていたのか。
トールの足音が大きくなる。



「やめろよ、フレイ!キラが死んじまうよ!」
仰天したトールは背後から羽交い絞めにして、フレイを引き剥がした。


「イヤァアア!離して、離してよ!こんな奴にサイはね!サイはッ!」
その度に泣き叫び理解できない罵詈を吐き散らすフレイ。


「‥‥はぁ、は!かはっ」
喉下を圧迫され呼吸する度に咳き込む。
朦朧とし出した意識のまま何とか立ち上がり、覚束ない足取りで踵返した。
部屋から出よう。これ以上ここにいても気が滅入るだけだ。



「あんたみたいなコーディネイターなんか!皆死んじゃえば良いのよッ!」


「いい加減にしろッ!」
乾いた音が部屋に響いた。
恐らくトールが錯乱したフレイを呼び覚ます為に頬を打ったのだろう。
そんな事をぼんやり思い浮かべながら、俺はフレイのあの形相が眼に焼きついて離れなかった。


(此処に来た頃の俺にそっくりだ。あれっ)
嫌な記憶を思い出した。
頭をニ、三度揺さぶり部屋を後にした。
もう。この連中とは一緒にいない方が良いかもしれない。








閑話/その9








「なんで“ザウート”なんて寄越すかね、ジブラルタルの連中は!“バクゥ”は品切れか!?」
三日間の連戦において全て撃退され“バクゥ”を六機も損失したバルドフェルドは腐れていた。
そもそも作戦目的を果たしたのに早々と撤退しないバルドフェルドの指揮に問題があるのだが、その事実を叱責できる人物は誰もいなかった。
ジブラルタル基地から補給された砲撃支援向けの地上用重火器MS“ザウート”は砂漠の地理的条件に対し無限軌道状態に変形可能だが、如何にその姿が鈍重な事だろうか。
重力下での敏捷さを身上とする“バクゥ”とは雲泥の差である。


「はぁ‥‥‥これ以上は回せないと言う事で」
補給内容が明細に書き込まれた書類をデスクの上に放り投げた上司と同じ不満をダコスタは抱いていた。
だが、連合軍はジブラルタル基地のマスドライバーを目的に侵攻を始めた為に防衛だけで手一杯なのだろう。
寧ろ二機のMSを確保出来ただけでも僥倖とするべきなのだろう。


「‥‥‥ダコスタ君」


「は‥‥はい!」
不意に名前を呼ばれ返事が上擦った。
悟られた様子は無い。
現に部下の狼狽には気づいておらず、冷然と佇んでいた



「確かこの間、僕らのバクゥが見つかったんだっけ?」


「はい。残骸を調べましたが、確かに我が軍の機体でした」


「他に何か発見できたかい?」


「負傷した連合の兵を見つけました。外傷が酷いので現在はバナディーヤの病院に収容しております」
その報告には捕虜として収容したという意味合いが色濃く含まれていた。
バルドフェルドはそんな当たり前の配慮に一言一句を頭の中で噛み締めた。


「そっか。なら彼らはその事を知らない筈だ。知らないという事は行方不明か死亡扱い。艦内の士気も下がるし、一機だけというのも気になる。もしや―――」


「バルドフェルド隊長‥‥‥?」
ぶつぶつ独り言を呟くバルドフェルド。
敵攻略の目処が立ち始めたのだろう。ダコスタは上司の名を呼び掛けた。
間も無く、精悍な鋭い顔つきを宿したバルドフェルドが毅然な態度で宣言した。



「‥‥‥行こう。ダコスタ君。出撃は今しかない」


「りょ、了解!」
突然の出撃命令にやっとの調子で返答をする。
一礼と共にくるりと踵返しダコスタは室外に飛び出した。バルドフェルドはその背中を諦観の色を含めた瞳でじっと見つめていた。








]T/Interlude








「そうだよ!一号機にはランチャー!二号機にソードだ!」
紫色のパイロットスーツに着替えたムゥが艦内通信に向けて大声で指示を飛ばしていた。
喉が未だにヒリヒリと痺れる。


「『何で』って、換装するよりも俺が乗り換えた方が早いからさ!」


「それに、MS戦が終わったらすぐに対艦戦に突入しますから」


「そういうことだ!わかったら、さっさと終わらせてくれよ!」
他にも幾つかの指示を作業員に言い含めて、彼は通信回線を閉じた。
パイロットスーツに着替え終えた俺は打ち合わせの確認を済ませる事にした。



「一号機が先行し偵察。ストライクの出撃と平行してレジスタンスも出撃。MS部隊を撃破した後にランチャーに換装。ムゥさんは二号機に乗り換えて再度出撃‥‥‥で、いいんでしたね」


「ああ。けど連中には悪いが。レジスタンスの戦力なんぞ、はっきり言ってアテにはならん」
戦力外とハッキリ認識した上でムゥは宣言した。
その辛辣ながら鋭い見解に素直に頷いた。気持ちだけでは如何にも成らない象徴だろう。ストライクも片腕と片足を削ぎ取られた。気持ちだけでは如何にも成らない。


「はっきり言っておきます?」
その言葉にムゥは諦めた様に首を振った。


「やめとけ。余計に頭に血ぃ上って、面倒になるだけださ」


「風も人も熱いお土地柄なんですね」


「ま、連中は街を焼かれた恨みで気が立っているからな。俺たちだけでも肩の力を抜いて、踏ん張ってこうぜ」


「ええ。俺も大分戦いには慣れてきましたし、たぶん何時も通りにいけると思います」


「へぇ。言うねぇ。このっ、このっ」
背中を肘で小突かれる。
はにかみながらも不思議とこの戯れに嫌悪感を抱かなかった。
これが先輩としての気遣いなのだろう。細かい心配りに感心していた。



<フラガ少佐、ヤマト少尉は搭乗機へ―――」


「おっと。じゃ、行くか」


「はい」
今思えば、なぜ彼はサイの事を訊ね様としなかったのか。
この時に改めてムゥ・ラ・フラガという人物を見誤っていた真実に気が付かされた。








ストライクに乗り込む。
OSを即時に立ち上げ、コクピットハッチを閉じる。
計器類に光が灯り、駆動系が力強い唸り声を上げた。



『坊主!また壊したらデュエルのパーツで補うしかないんだからな。丁寧に扱えよ!』


「約束は出来ませんが、善処します」


『たくッ。返事だけは調子いいんだからよ‥‥‥わっーた!バッチシ決めて来い!』
投げ掛けられた激励と共に通信が途切れた。
未だに喉が痛むが情けない声を上げるつもりは無い。



<スカイグラスパー一号、フラガ機!発進!>
ランチャー装備の一号機がカタパルトから鋭い音をかき鳴らし飛翔した。
順次にカタパルトに機体を固定。エールパックが装着される。
グリップを握り締め、己の世界から妨げとなる雑音を排除。自己の意識を収束する。



<続いて“ストライク”―――どうぞ>
生気のないミリアリアの容態を危惧したが、当事者の俺には上手く掛けれる言葉が見つからなかった。
親友を殺したかもしれないコーディネーターとして怨まれているかもしれない。もし、そうならば此方から友人関係を断絶した方が無難かもしれない。



<ヤマト少尉、地雷が無力化された以上、ストライクの敗北は此方の敗北を意味する。絶対に撃破されるな!>


「了解。キラ・ヤマト!ストライク、出るぞ!」
真赤の火花を撒き散らし、カタパルトから弾丸の如く打ち出された。
寸前、目前に迫る戦闘ヘリをイーゲルシュテルンで打ち落とし、PS装甲を起動させた。
火を噴く戦闘ヘリのすれ違い様に地面に着地。砂塵が鈍い衝撃と共に舞い上がる。



「敵は―――どこだっ!?」
本命のレセップスを確認。
戦闘ヘリはスカイグラスパーとアークエンジェルが対処。
ハッチから次々と鋼鉄の獣が吐き出されていく。



「バクゥ‥‥‥四、五機か。数だけは揃えてはいるようだがッ」
味方からの艦砲攻撃に当たらぬ様にバーニアを全力で吹かす。
さぁ、踊れ―――。








閑話/その10








<艦長、十一時の方向に敵艦を発見した!こいつぁ、やばいぜ>


「なんですって!?」
偵察も兼ねて先行し出撃させたスカイグラスパーの報告にマリューは耳驚いた。
CICに見入る。北北東に裂けた岩山があり、戦艦一隻がちょうど納まる巨大な断崖であった。
戦闘が始まる前に前もって、そこに伏兵を忍び込ませていたのだろう。マリューは下唇を噛んだ。



「もう一隻、伏せていたのか!?」
ナタルが歯噛みした。
母艦のレセップスを敢えて囮にし、アークエンジェルを挟撃する作戦。
もしキラ・ヤマトの進言が無ければ気づかずに敵の策略で窮地に陥れられたであろう。
マリューは彼の用心深さに感謝した。それは誤解なのだと気づかずに。



「“ヘルダート”で、崖の山頂部を狙ってッ!動けなくさせるわ!」


「“ヘルダート”てぇーッ!」
号令の下にリニアカノンの砲塔が火を噴く。
弾頭は一直線に崖の頂を粉砕した。
岩壁が崩れ落ち駆逐艦の上に降り積もる。少なくともこれで時間を稼ぐ事は出来た。



「スラスター全開!船体を上昇“ゴッドフリート”で止めを刺すのよ!」
マリューの瞳に輝きが宿る。それは勝利を確信した灯火であった。
アークエンジェルの誇る必殺の主砲が駆逐艦に狙いを定めようとしていた。








]U/Interlude








「ふんッ―――!」
短い気合と共にバクゥの下あごを蹴り上げる。
獣が紫電の悲鳴を張り上げ、仰向けに転倒する。
間も掛けず、黄土色の砂漠に寝転んだバクゥの上に馬乗りになる。
そして―――。


「ダぁあありゃアアアッッ!」
無様に見上げるバクゥの顔面に堅硬を誇るPS装甲の拳打の嵐を浴びせ掛けた。
咆哮と共に放たれる連撃は明白にバクゥのコクピットである犬面を破壊し尽くした。
まるで神話に登場する狂戦士染みていると、己が繰り出す拳打を嘲り笑った。



―――だからどうしたというのだ?まだ死にたくは無い。それだけ―――
自分にはこの世界から生きて戻る生存権があるのだ。
俺は悪くない。戦いを仕掛ける奴らが悪い。それでいいではないか。



「‥‥‥!?」
危険が迫る事を示す電子音が鉄箱の中に鳴り響く。
横に目線をスライドさせる。
急激な速度で肉薄する無数の誘導弾。盾は背後に置き捨てている。馬乗りである以上、防ぐ手段はない。
いや―――ひとつだけ防衛手段があった。



「よっ‥‥‥おれの代りに死んでくれ!」
眼下に沈むバクゥの残骸を持ち上げ、全く躊躇せずに急迫するミサイルの群れに無造作に放り投げた。
刹那、視界全体を覆い尽す爆発が起こった。
轟音を轟かせ、視界には殺意に揺らめく火炎が蔓延していた。



「正に外道―――!」
己の所業に畏怖を覚えつつ、ストライクの太腿からコンバットナイフを瞬時に引き抜く。
銀色に鈍く光る短刀。刃に仕込まれた細かな鎖状の鋸歯(きょし)が回転駆動する。
銀色の短刀を握り締めミサイルを放った敵の位置の見当をつける。
爆炎に遮られた向こう側の敵に狙いを定め。即殺せんと短刀を投擲した。
すぐさま、背後に置き捨てたシールドを回収。一投の間隙を縫うように立ち上がりバーニアを全開。突進めいた勢いで疾走する。


「喰らったか!」
爆炎を掻い潜った先にはナイフが頭頂部に突き刺さり事切れたバクゥの骸だけがあった。
転がるように飛び込み短刀を無造作にもぎ取る。そのままバーニアを噴出したまま転がり続ける。



「もう一機!」
横転するストライクが先程までいた場所に、次々に飛来したミサイルが着弾し粉塵を撒き散らした。
その射線の先に立つのは五機目のバクゥ。
そのまま掬い上げる様に、狙いを定めて右手に納めた短刀を投げ付けた。
けれど、掌から放たれた無骨な短刀はバクゥの横面を掠め反れただけに終わった。



「だが―――アーマーシュナイダーは無敵だ!」
シールドに格納したビームライフルを抜き取り、地上を疾走する五機目のバクゥを狙い乱射する。
けれど一撃も当たらない。撃ち放たれる閃光はバクゥの左右に粉塵を巻き上げる。
だが、それでいい。
太腿からアーマーシュナイダーを引き抜き、投擲を阻害する意味しか持たないアンチビームシールドを投げ捨てる。
左手に必至の構えを取る。ビームを乱射し続け接近するバクゥの進行方向を固定する。
絶対に避け切れない距離まで目安を定める。



「さん、に、いち‥‥‥いけっ―――アーマーシュナイダァアア!」
直撃必至の距離にまで近づいたバクゥに確信を込めた一撃を放つ。
瞬く間に放たれた短刀はバクゥの懐を喰い破り蹂躙した。
けたたましく鳴り響く機械の紫電。直後、動力バイパスを断絶されたバクゥは事切れた様にその場に崩れ落ちた。



「これで雑魚は全部片付けた―――か」
投げた二本のコンバットナイフを回収。太腿に格納した。
そこへ通信が入った。敵航空機を迎撃していたムゥであった。



<岩陰に隠れていた駆逐艦を撃沈した。後は親玉の“レセップス”だけだ>


「了解。こちらもちょうど敵MS部隊を殲滅しました」


<それじゃ、バッテリーの不安もあるし換装するぞ。今からそっちに向う>


「はい‥‥‥いや、待ってください。敵反応をキャッチしました」
レーダーに光点が表示される。数は一機。
敵は―――奴だろう。



<なに!?‥‥‥それじゃ、いますぐそっちに>


「もう遅いです。いま換装したら狙い撃ちされる。敵を撃破します」
通信を切る。
ビームライフルを構える。
油断無く。敵が此方に来るのを待ち構える。



<やぁ。少年。久しぶりだな>


(‥‥‥周波数を解析された?)
突然。一昨日聞いた飄々とした男の声が耳に響いた。
近づく事で段々とその姿を大きく現したバクゥの指揮官機。
機体全体をオレンジ色のカラーリングに塗り上げた鋼鉄の獣。背部に装着されたミサイルランチャーを排除し二門のビームキャノンを搭載しているのを視認した。



<あれからどうしたか、気になっていた>


「‥‥‥」


<‥‥‥ところであの女の子はどうしている?ほら、あのやんちゃな金髪の子だ>
まるで世間話でも語り掛けているかのような調子だ。
無論。そんな戯言に答えるつもりは無い。



「‥‥‥‥」


<ダンマリかい?‥‥‥それもいいだろう。しっかし、これだけの実力がありながらも戦いが嫌いなのかい?>


「‥‥なに?」
指摘された事実に表情が凍る。
その反応にバルドフェルドは心底愉快気に笑った。



<ハッハッハ。図星を指されたのがそんなに意外かい?>


「煩い」
煩わしい男の戯言を永久に黙らせんとビームライフルの照準を定め一撃する。
寸での所で回避した指揮官機“ラゴゥ”。光が砂を焼き払った。



<僕たちの部隊を倒した君の戦いぶりを拝見させてもらった。なるほど、確かにたいした強さだ。腕も良い。だが、それは王道ではない。覇道だ>


「覇道?」
ストライクを中心に円を描きながら旋回するラゴゥを見据えながら問い返す。
ビームライフルの銃口が擡げる。


<君の強さには決定的に倫理が欠けている。暴力といっても良い。君には人としての誇りが無いのかい?>


「無いとでも言うのか」


<無いな。だから君は此処で倒す。倒さなければこの世界‥‥‥君の様な不幸な人間を更に増やす事となる。それが大人として、同胞としての私の役目だ>


「‥‥‥俺は、人間だ。まして貴様なんかに不幸な人呼ばわりされる筋合いはない!」
進行方向の先を予想し銃口を合わせ連射する。
瞬きすらも許容しない無数の光弾が撃ち放たれる。
ラゴゥ。間断なく放たれる連弾を高速の動きを以って巧に回避する。
俺とは違い洗練された動き。どうもこの世界の名のあるパイロットは妙に強い。



「‥‥‥当たらない」


<そうそう。当たるものではない!>
応射するラゴゥのビームキャノン。
身を翻して二連の光を躱し切る―――が、右手に所持していたビームライフルの横腹に不可視の閃光が直撃した。
エネルギーが行き場を失い爆発寸前のライフルを間一髪で投げ捨てる。



「ちっ‥‥‥」


<君は死すべき人間だ。残酷すぎるほど君は強すぎる。将来の成長次第では僕とは比べ者になら無いほどの豪傑となろう。それが君の不幸だ!>


「なんだと―――!」
イーゲルシュテルンを連発しバーニアを全開。接近戦に移行する。
それは相手も同様なのか烈火の如くビームを乱射しながら突進して来ようとする。
錬鉄染みた火花を散らすビームサーベルを肩口から引き抜く。
互いの間合いを侵犯し互いに必殺の機を窺う。



<君はコーディネーター(調整者)であり過ぎた!!>


「ワケのわからぬ事をッ!!」
炸裂する光の砲弾が左肩に直撃し装甲を燃焼する。
これ以上接近すればコクピットに直撃しよう。
けれど臆する事は死を意味する。恐怖心を薙ぎ払い交差する一点に精神を集中し―――!


「ぜぇエい!」

<ふん―――!>
両者の覇気が呼応した。
絶殺せんと薙ぎ払われた一刀がラゴゥの砲塔を刹那の合間に熱し切り、同時に飛翔したラゴゥは銜えたニ連装の刃でストライクの頭部をボールのように斬り飛ばした。
一瞬の間に交錯する両者。たが、俺の気持ちは昏い。
それは敵であるバルドフェルドも同じであろう。文字通り必殺ならば相手を殺さなければ意味を成さない。
その時バッテリーが底を尽いた。フェイズシフトダウンが発生し、鮮やかなトリコロールが惜しむらくは消え失せた。


「‥‥‥」

<‥‥‥>
弛緩した周辺の空気が凍りつく。
此方は首根っこから上は斬り飛ばされ、メインカメラ共にサブカメラが使用不能。
コクピットを開き有視界で視界を確保。
敵機は主砲の二連装ビーム砲を破壊されている。
つまり次回の交差が生死を決する事となる。
用済みと化したストライカーパックを脱ぎ捨てる。
両太腿からナイフを掴み取り両手に装備。順手に柄を握り締め必殺の構えを取る。


<次で終わりのようだな。少年>


「‥‥‥」
答える余裕など無い。
此方はナイフ以外の装備は皆無であり、PS装甲は起動不能に陥っているのだ。
故に即時に己が掻き集めた必至の一手をシミュレートする
我が愛機が有する二刀“アーマーシュナイダー”の奇技。
せめて確実とはいえない技。だが―――勝機はこれ以上の他に無い。


<行くぞッ!>
砂漠の虎が吼えた。
大地を踏みしめ駆け抜ける。
呼応する様にストライクが砂漠の大地を疾駆する。
急速に肉薄する敵機の殺意を前に俺は酷く冷静であった。


(一交差に六手の撃を叩き込む‥‥)
激烈に立ち昇る気勢。
砂塵の大地に足を下ろし、此度は刺突を基本する手中の短刀は刃を擡げる。
飛び掛る虎。物凄まじい迫力で迫る敵の顎を膝で蹴り飛ばす。
腹を曝し決定的な間隙を与えた己を尊敬する。
刹那―――後肢、前肢、頭部、腹部に狙いを定め。



「―――シュナイダーを叩き込むッッ!!」
回避する事も、まして視認する事さえ絶対に許さない気勢で突き込む。



「ラスト‥‥‥シューッ!」
六度の斬撃で斬り飛ばされ横転したラゴゥの手向けに短刀を投擲する。
鋭利なまでに鍛え上げた鋼鉄の刃が鉄をも切り裂き巨獣の腹に突き立たれた。
瞬間、飛散した電火が燃料に引火したラゴゥは一帯に凄惨な爆発を轟かせた。
敵将を仕留めた。感傷に浸る暇も無くすぐさま通信回線を抉じ開ける。



「少尉!」


<キラ!ランチャーをそっちに送るぞッ!>


「はい!」
満身創痍のストライクの直上にスカイグラスパーが通過する。直前、着脱したランチャーパックが降下する。
装着。急激に電子メーターのバッテリー量が限界まで回復する。
戦地を駆ける活力を得たストライク。機械の瞳に力強い輝きが再び宿った。



「後は始末をつけるだけだ。ストライク!」
主の命に呼応するかの如く堅牢を誇るPS装甲が再び起動された。
バーニアを全力噴射。射程圏ギリギリまで距離を突き詰める。
二号機に乗り換える為に帰還した一号機を尻目に巨大な陸戦艦“レセップス”を有視界で補足した



「‥‥‥!」
長距離からの狙撃が目的の銃砲“アグニ”を腰溜めに構え砲口の切っ先を、甲板上に佇むタンク型MSに差し向けた。
慎重に狙う。何せロックオンも全て己の視覚で補わなければならない。
直撃する様に射線を予想する。少しずつ位置を修正しトリガーを引き絞る。



「アグニィッ!」
砲口から伸びる破壊を彩る眩い真紅の砲弾。
炸裂した閃光は一気にタンク型のMSに向け直進したが狙いが浅く掠めるだけに終えた。
だが、直撃とは至らぬものの掠るだけでアグニの光熱がMSの左半身を消し飛ばしていた。
真赤に焼き爛れるソレは既に機能を停止している。搭乗者も恐らくアグニの膨大な熱量によって焼け死んでいる事だろう。
今更ながらランチャーパックの極端な火力に驚いた。
同時に上空から鋭く巨大な光が一直線に通過した。その巨大な光は圧倒的な力で“レセップス”を飲み込んだ。
化け物染みた火力を有するアークエンジェルの主砲“ゴッドフリート”の砲弾であった。
見れば、今の一撃でレセップスは原型を留めない程に融解していた。



「終わったのか‥‥‥」


<お疲れ、どうやら俺の出番は無いみたいだな>


「勝ったんですよね。俺たち‥‥‥」


<ああ。勝ったんだ>
ムゥの一言にどっと疲れが溢れ出た。
関門は突破した。帰還しよう。ストライクの頭も無いし。
歩くのがやっとの巨人の中でマードック曹長の呆れ声を想像の中で耳にした。








閑話/11








ニコルの実家の帰り掛けに、アスランは予定していたラクス・クラインの邸宅を訪問していた。
閑静な住宅街でも一際目立つ高級住宅に住む婚約者であり、プラントの歌姫。
最初に訪れた時は緊張に体がガチガチに固まっていたが、今では十分その認識を改めていた。
自分の大切な婚約者として―――。



「―――お戻りと聞いて、お会い出来る日を楽しみにしておりましたのよ。今回は、ゆっくりおできになりますの?」


「さあ、それは‥‥‥休暇の日程は、あくまで予定に過ぎませんので」
アスランは言葉を濁した。
その期待を裏切る返事にラクスは表情を一瞬だけ曇らせたが、すぐさま明るい笑みを作り細かく砕いたクッキーを小鳥に分け与えた。



「‥‥‥この頃は、また軍に入る方が増えてきているようですわね。私のお友達も、何人も志願していかれて‥‥‥」
ラクスの愁いだ瞳にアスランは掛ける言葉が見つからず途方に暮れた。
徴兵制ではないザフト軍の軍人の殆どが志願兵で構成されている。
故に利点としては優秀な人員が多く、士気が高いのが特徴である。欠点は各戦地で人員不足に喘ぎ苦しんでいる事ぐらいだろう。



「戦争がどんどん大きくなっていく様な気がします」


「そうなのかもしれません‥‥‥実際‥‥‥」
一刻でも早く戦争を終結させようと軍に入隊したアスランだったが、次々に戦死する同胞に言葉に出来ない不快感が内側から溢れ出ていた。



「そういえば‥‥‥」
ラクスが沈んだ空気を跳ね除ける様な、ふんわりとした口調で―――。



「あの人‥‥‥アスランは知っています?」


「え‥‥?」


「私が捕虜として、捕えられていたときに私の事を“姫さん”っと、呼んでくれた方ですわ。とてもナチュラルには見えなくて‥‥‥もしかしたら私たちと同じ人なのかもしれませんわ」


「いえ、ですから。その人とは?」


「お名前は最後まで教えてくれませんでしたわ。気さくなお方で、あなた方が“足つき”と呼ばれた戦艦のMSのパイロットをしていましたわ‥‥‥」
キラだ‥‥‥。
アスランは反射的に背筋を強張らせた。
その余りの反応をラクスは見逃さなかった。



「もしかして、アスランのお知り合いの方ですか?」


「‥‥‥はい、多分。昔、月の幼年学校で一緒だった。キラ・ヤマトっていう旧友です」


「まぁ♪では、幼馴染だったのですね」
ラクスの表情が華やいだ。
対照的にアスランは傷口をぐりぐりと指で抉られているかのような、際どい不快感に襲われた。


「はい。一応」
アスランの歯切れの悪い返答に訝しんだラクス。
その表情にアスランは眉を伏せ自嘲気味に付け足した。



「キラは死んだんです。俺がイージスで地球の重力圏に蹴り落として、それで‥‥‥」


「‥‥‥そう‥‥‥でしたの。ごめんなさい。私が尋ねたばかりに」


「いえ。良いんです。過ぎたことですから‥‥‥」
本当はそんな簡単に片付けられる問題ではない。
一気に萎むラクスの笑顔にアスランは情けなくなっていた。
兎に角この立ち篭る沈痛な空気を和ませようとアスランは気の利いた会話を試みようと、勇気を振り絞り話しかけようとした。
その時、狙い済ましたかのようなタイミングでポケットに収めていた携帯電話の着信音が鳴り響いた。
肩を落としたアスランは取り出した携帯電話に耳を当てた。



「‥‥‥アスラン・ザラです。はい‥‥‥え?」


「‥‥‥?」


「X105が生きている?まさか‥‥‥そんな!?」
アスランは震える声で召集令に応じた。
地上に降下し足つきの追撃任務に加わる。
足つきを地上まで追い詰めたクルーゼ隊ならば今度こそは撃墜してくれるだろう。



(また‥‥‥殺すのか?キラを、二度も)
アスランは皮肉気に笑う現実を心底恨んだ。








]V/Interlude








「酒だ。酒。飲め!」


「お前、未成年だろう?」


「知るかバカ。こんな時に飲まずにいられるか」
久しぶりのアルコールは喉に来たぜ。
半壊したストライクを見せたらマードック曹長に想像通り呆れられたからな。



「それに始末書を書けっていわれたんじゃ‥‥」


「あっはっはっは!」
あひゃあひゃあひゃ。飲まなきゃやってらんねぇよ。



「ていうかさぁ。お前今までどこに行ってたんだよ。バギーには見かけなかったしよ〜」
酔いが回り始め呂律が危うくなり始めている。
月光に照らされ輝くカガリを肴に大人集団からこっそり失敬した酒を飲む。


「乗ろうとしたんだ。アレに。そしたら羽交い絞めにされて、追い出された」


「アレ?ああ、二号機ね」
勇猛と無謀を履き違えているカガリの事だろう。
原作どおりスカイグラスパー二号機に乗り込むかもしれず、念のために整備員に注意した効果はあったようだ。



「私だって、戦えた筈だ」


「そう気を落とすなよ。次があるさ」


「本当か!?」


「あ?いや、ゴメン嘘だ。アハっ♪」
カラカラと笑う。
カガリの美しい顔立ちが歪む姿を摘みにぐっと酒を呷る。
空になったステンレスのカップを人差し指で引っ掴み、ゴツゴツとした岩肌をした壁に寄りかかる。



「‥‥‥あ〜。しっかし疲れた。ねむぅ」


「そろそろ戦士を送る祈りをやる筈だ。それまで我慢していろよ」
へいへい、と。
蓄積された疲労と睡魔の濁流に押し流されそうになるのを必死に抑えながら、村人が静かに黙祷を奉げる光景を眺める。
弔砲が鳴り響き老人が戦死者の名を一人ずつ挙げていく。


「‥‥‥サイ・アーガイル」


「なんか言った?」


「なんでもねぇよ」
呟き。俺は瞳を閉じた。
これから紅海に乗り出しアークエンジェルはオーブに向う。
終焉までの道のりは長い。けれど俺は戦うだろう。
生きる。ただそれだけの為に―――。



「お、おい!より掛かんなって、寝るなら部屋で寝ろよ!しかも、涎たらすなぁああッッ!」


「ぐー」








<『皆殺し編』・終幕―――次回『ニューガンダム編』に続く』>








『種運命のキャラ紹介』


シン『一子相伝の暗殺拳『南斗神拳』の使い手。もったいぶった登場の仕方をした割に、あっさり死んだ変人。ケンシロウのライバル』


レイ『南斗水鳥拳の使い手。シスコンで、やっぱりというか変人。ゲイ・ガ・バレタの人とは無関係』


ルナマリア『娼婦』


メイリン『両親を山賊に殺されて精神的疾患を患う。愛称は“リン”』


キラ・ヤマト『最近、解脱したらしい』


ラクス『神の御方‥‥‥ヴァルゴのシャカに失礼ですね』


アスラン『主人公』


カガリ『泣いているだけ』


ディアッカ『降格&フラレタ』


イザーク『昇進&傷が無い』


ホルツヴィア『生存証明。今年一杯はもう書かないので、宣言しておきます。本来の皆殺し偏はカガリとセガール以外の明けの砂漠が全滅し、アークエンジェルの人員の半数が戦死する話でした。でも流石にヤバイと思いました。ワタシ自重した』