第二話 鋼鉄の弧狼




ミゲルは、自分が体験していることが信じられなかった。

さっきまでフラフラしてたMSの動きが急に良くなり、その動きにこちらがついて来れずに翻弄されている。

「このっ!」

マシンガンを撃つも全てがかわされ、肉迫される。

離れようとペダルを踏むが間に合わず2本のナイフが機体に突き刺さる。

「バッテリー低下!バーニア反応なし・・・!くそぉっ!」

ジンがもう動かないと知ると自爆コードを打ち込み脱出し、後から来たジンに通信を送る。

「こちらミゲル!どっちでもいい、回収してくれ!」




サイ達4人は逃げ場を失っていた。

戦場を迂回してシェルターに行こうとしたら、運悪く瓦礫に道を塞がれてしまった。

「早くここから離れなきゃ・・・」

サイが脱出できる場所を探しながら言う。

「サイ!ここ、何とか登れそうだ!トール足場造るの手伝ってくれ」

「わかった!」

タスクが比較的壁が低い所を見つけ、トールと足場を造っていく。

「え・・・ここ登るの・・・?」

「しょうがねぇだろう!オレ達がここにいたんじゃ、あの機体やられちまうぞ!」

ミリアリアの言葉にタスクがPTを指しながら怒鳴る。

「まぁ、そう怒るなよタスク。だいじょーぶだってミリィ。俺が上から持ち上げてやるからさ」

「ならいい・・・でも・・・」

トールの言葉に了承するが、タスクの方を見ながら付け加える。

「・・・下から見ないでよ」

「この状況で見るかっ!」




「もってあと2、3撃というところか・・・くっ!」

ジン2機は接近戦ではなく遠距離からの射撃のみでこちらを攻撃してきている。

近づきさえすればプラズマステークを叩き込めるのだが、ゲシュペンストの脚部サーボモーターは限界に達し、
歩くこともままならない。

「残弾が30をきったか・・・今回は駄目かも知れんな・・・」

キョウスケが覚悟を決め、せめて下の民間人を助けようとした時、ジンが横から飛んできたビームに貫かれ爆発した。

「キョウスケ!無事か!?」

「ウラキ少尉。すまん助かった」

コウから通信が入り、ふうっ と息をつくとポツリと誰にも聞かれないような声でつぶやいた。

「ふうっ・・・今度もまた生き残れたな・・・」




「なんだと!?」

ミゲルは今撃墜されたジンを見て叫んでいた。

「何故Nジャマー下で開戦前のMSが動けるんだ!?」

Nジャマーは全ての核運動を抑制する効果があり、ザフトは開戦時にこれをを地球圏全域、ほとんどの地上に散布していた。

作戦開始時にこのコロニーにも散布しておいたので、開戦前に製造したMSが動くはずがない。

「隊長に報告しなければな・・・オイ!早いとこ回収してくれ」

再度通信を送ると残っていたジンがミゲルを回収し、その場から飛び去っていった。




「退いていく・・・助かったのか・・・?そうだ!トール達は!?」

キラが周囲を見渡し友人達を探そうとした時、キョウスケから通信が入る。

「マリュー・ラミアス大尉・・・無事ですか?」

「マリューさん・・・!?大丈夫ですか!?

後ろを見るとマリューが気を失っており、それがキョウスケからも見えたようだ。

「!ラミアス大尉は怪我をしていたのか?」

「はい・・・肩を撃たれて・・・」

キョウスケの質問にキラが答える。しかし、その答えにキョウスケは1つの疑念を持った。

「では、先程ストライクを操縦していたのは・・・君か?」

「!?それは・・・」

キラは答えるのを躊躇する。

誤魔化そうとも思ったが、キョウスケが鋭く睨んでいるので諦めて正直に答えた。

「はい・・・そうです・・・」

するとキョウスケは睨むのをやめて、

「そうか・・・・大尉を降ろしてくれないか?手当てをする・・・すまん名前は?」

と言ってきたのでキラは緊張を解き答える。

「キラです。キラ・ヤマト」

「そうか、俺はキョウスケ・ナンブだ。頼むぞキラ・ヤマト」

「あの・・・キョウスケさん、僕の友達は無事ですか?」

「・・・足元にいた民間人か?ならウラキ少尉達が今、救助している安心してくれ」

「はいっ!ありがとうございます!」

キラが礼を言うと通信がきれた




通信をきるとキョウスケはキラの事を考えた。

(操縦していたのが民間の少年か・・・ニュータイプだと思いたいが・・・)




『ミゲル・アイマンより通信が入ってますが・・・回しますか?』

コックピットに入った通信にクルーゼは眉をひそめる。

報告ならアデス経由でクルーゼに伝わるはずである。

ならば、何故直接通信を送る必要があるのだろうか?

「フム・・・構わん、回せ」

少し考えてから指示すると音声のみの通信が入ってくる。

「ミゲルです。すみません隊長、機体を3機失いました」

「ほう・・・その報告のために直接通信を入れたのかね?」

「違います。奴らMSとPTをつかっています」

「新型ではないのかね?」

「いえ、開戦前の・・・ロンド・ベル隊の機体です」

「なんだと!?」

ミゲルの答えにクルーゼが珍しく声を荒げて驚く。

「間違いないのか?」

「はい、GP-03Sを確認しました。まちがいありません」

「Nジャマー下でも稼動する開戦前のMSか・・・どういうことだ・・・?」

クルーゼは思考し、ミゲルに帰艦するように指示を出すとブリッジに通信を送る。

「アデス、ジンUは何機持ってきてある?」

「は?ジンUですか?10機程積んではありますが・・・まさか!?」

クルーゼの意図に気づきアデスは目を張る。

「ああ。中立コロニーなど旧式のジンだけで十分かと思ったが、事情が変わった」

ジンUは今現在のザフト軍主力MSで開戦直前にロールアウトした機体である。

ビーム兵器が装備されており、1年戦争末期にロールアウトされたジンとは性能が段違いだった。

「私が出たらMSを呼び戻し、お前が腕がいいと思う者をジンUに搭乗させろ」

「了解しました。しかし、隊長もジンUで出撃した方が・・・」

返事をしながらアデスは思った事を口に出す。

するとクルーゼは、フッと笑い、

「私はシグーならば十分さ。お前も私の模擬戦のデータを見ただろう?」

と言い返す。

クルーゼは模擬戦で、熟練パイロットの操るジンU3機を性能の劣るシグー1機で撃墜した事があった。

アデスもその事を思い出し、無意味な質問だったと気づいた。

「わかりました。ジンUの装備はどうしますか?」

「D装備だ。残っているジンにも装備させろ」

クルーゼの指示にアデスは驚いた。

D装備とは要塞攻略用の最重装備であり、コロニー襲撃にはまず使用しないものだ。

「頼んだぞアデス。ラウ・ル・クルーゼ、シグー出るぞ!」

アデスの返答を待たずにクルーゼはMSを発進させた。




「なんだ?敵が引いてく・・・?」

バニングは敵の妙な引き際を不思議に思った。

猛攻を仕掛けて来たジン12機は8機にまで減ってはいたが、数の上ではまだ敵の方が有利だったからだ。

「なんで敵さんは引いてくんだ?」

ベイトもこのタイミングで引くのを不審に思ったようだ。

「別にいいじゃねぇか。大尉、中が心配だ。一度コロニーへ戻りましょうや」

モンシアは中に残っているコウ達とキョウスケが心配だった。

「・・・そうだな。一度、中に戻る。損傷はどうだ?」

バニングはモンシアの提案を呑み戻ることにした。

「こちらアデルです。バーニアと装甲を少しやられました」

「ベイトです。シールド破損、右脚部小破」

「モンシア。右腕を少しと左脚をやられやした」

「ムウ・ラ・フラガ。損傷なし」

次々と報告が入り、バニングは顔をしかめた。

「で、オレが左マニュピレーター(手)損傷と右ショルダー破損か・・・思ってたよりも酷いな。」

「しかし、コーディネーターってのはみんな腕が立ちますね」

ベイトが損傷を聞いて呆れて言う。

「まったくだ。こんだけの能力を持ってんのになんで『秘密にして欲しい』なんていったんだろうな?」

モンシアは開戦直前にシナプス、ブライト両大佐に教えられた事を思い出した。

前大戦中、シャア・アズナブルの調査時にブライトとアムロは一度プラントへ行き、その時に
現最高評議会長シーゲル・クラインと非公式に会談し、コーディネーターの存在を知ったのだが
シーゲルは事をまだ公にしないで欲しいと願ったのだ。

アウデアー外務次官、ドーリアン外務官も今公表すると混乱がさらに大きくなると考え、彼等の願いに同意し
この事実を最高機密としてブライト、アムロそして一部の上級官僚のみにしか知られてはいなかったのだ。

「それは直接、シーゲル・クラインに聞かなければわかりませんね。しかし、多数のコーディネーター
相手に旧式で損害無しだなんて、さすが『鷹』の大尉ですね」

「まったくだ。同じMSでならアムロ少佐と互角って噂も本当かもな」

アデルの言葉にベイトものる。

「オイオイ、いくらなんでもニュータイプのアムロ・レイ少佐と比べないでくれよ」

フラガも軽いノリでつっこんでくるが、急にまじめな声で質問してくる。

「そういや、なんでアンタ達のMSはNジャマー下でも動けるんだ?」

戦闘中は考えてる余裕はなかったが落ち着けば思う当然の疑問だった。

Nジャマーのせいで今までのMS、一部のPTが動かなくなってしまいフラガはMSから改造した旧式に
乗り換えざる得なくなってしまったのだから。

その質問をした途端、ベイト達は急に黙りバニングが代わって答える。

「すまんが、我々にはそれに答えられる権限を与えられてはおらんのだ。」

「え?与えられていないって・・・」

フラガは驚きの声を上げ、バニングは続ける。

「岡長官の命令でな、どんな人物であれ長官の許可なくして知る事は禁じられており、我々はそれを守らねばならない」

「無理に知ろうとすればあなた達が阻止するという訳ですか・・・」

「そういうことだ。では、戻るとしようか」

フラガとの話を終えバニング達はコロニーへ向かう。

「この感じ・・・まさか・・・」

その時、フラガは感じなれたプレッシャーを感じゼロを反転させた。

「フラガ大尉!どこへ行く!?」

「敵だ!気を付けろ!」

バニングに敬語も使わず注意を促すと、プレッシャーの感じる方へ飛んでいく

「敵だと?レーダーに反応はなにも・・・・!?レーダーに感あり!フラガ大尉が向かった方です!!」

ベイトの報告にバニングは胸中で呟いた。

(レーダーより早く敵を見つけるだと・・・まさかフラガ大尉もニュータイプだとでも言うのか?)

「全機反転!フラガ大尉を援護する!!」

「了解!!」×3




感じなれたプレッシャーがこちらに向かってくるのを感じ、クルーゼはひとりごちた。

「私がお前を感じるように、お前も私を感じるのか・・・?ムウ・ラ・フラガ!!」

クルーゼが吼えながらシグーのライフルを連射する。

フラガのゼロは紙一重にライフルをかわし、ガンバレルを展開させる。

「貴様・・・!ラウ・ル・クルーゼ!!」

ガンバレルのオールレンジ攻撃をシグーはあっさりかわした。

「そのような旧式でもお前は邪魔だなムウ・ラ・フラガ!もっともお前にもそれはご同様かな!?」

ゼロから放たれたビームをかわし、そのまま接近戦を仕掛けようとする。

それを阻止するかのようにライフル弾が飛んできたが回避する。

「ほう・・・確かに開戦前のMSだな・・・動力の換装に成功したのか・・・?」

クルーゼは援護に来たバニング達の機体を見て呟く。

「それともEOTでも使っているのか・・・?まぁ墜としてみればわかることか!」

シグーをさらに加速させバニング達に攻撃を仕掛けてきた。




「しかし、すげーな、これ本当にキラが操縦してたのか?」

「OSが緻密だな・・・今までの連邦、ジオニックの機体にもなかった形に仕上がっている・・・」

「コウさん、これってやっぱガンダムなの?」

「コンセプトは凡用性を高めた機体か・・・パーツ換装もできるみたいだな・・・」

「あの〜・・・コウさん?聞いてる・・・?」

「それより、マリューさんの手当てを・・・あ、目を覚ましたみたいだ」

マリューはゆるゆると現状を認識し、自分が横たえられているベンチから身を起こした。

さっきの少年が心配そうな顔でこちらをのぞき込んでくる。

傍らには膝をついた姿勢をしたストライクと、そのコックピットを覗き込んでいる民間人の少年達を見て
彼女は、ハッとして拳銃を抜き放ち叫んだ。

「機体から離れろ!」

彼女を見る少年達はキョトンとしている。かまわず空に向かって1発撃った。

衝撃で肩が痛むが歯を食いしばりこらえ、もう一度警告をする。

「もう一度いう、機体から離れろ!!」

少年達の非難の声より早くコックピットから声が上がる。

「わっ!すいません!!」

「・・・へっ?」

マリューは気の抜けた声をあげた。

コックピットからウラキ少尉が申し訳なさそうな顔で降りてきたのを見て、マリューは頭を抱えたくなった。

「・・・少尉、この機体は機密事項にあたる代物なんですよ?なんで民間人に堂々と覗かせてるんですか・・・?」

「すいません・・・システムを見るのに夢中になってしまって・・・ハッチを閉め忘れてました・・・」

(MSヲタクだとは聞いてたけど・・・周りも見えなくなるとはね・・・)

コウの言い分にマリューは深いため息をついた。

「あなた達も、その機体から離れなさい」

マリューは銃を構えながら少年達をストライクから離れさせる。

この子達に含む所は無い、全ては機体から目を離してしまった自分と、ハッチを閉め忘れたウラキ少尉に責がある

マリューは内心の迷いを押し隠し断固とした口調で言った。

「私はマリュー・ラミアス。連邦軍の将校です。申し訳ないけどあなた達をこのまま解放する訳にはいきません。
事情はどうあれ、軍の機密事項を見てしまったあなた達はしかるべき所と連絡が取れ、処置が決まるまで
私と行動を供にしてもらいます」

「しかし、大尉!まだ子供ですし・・・」

「黙りなさいウラキ少尉!あなたがハッチを閉めていればこの子達は巻き込まれなかったのよ!!」

「うっ・・・・」

少年達より先にコウが反論してくるがマリューの一括にあっさり敗北する。

その時、目の前にトレーラーが止まりキョウスケとキースが降りてきた。

「民間人に何故銃を向ける?マリュー・ラミアス・・・!」

今の状況を見て、階級が2つも上のマリューに敬語も使わずにキョウスケが言い放つ。

その目は先の戦闘中の時よりも鋭くなっており、傍から見ても怒っているのがわかった。

キョウスケの放つ怒気に怯みつつもマリューは応える。

「な・・・何故ってナンブ少尉、彼等は機密事項を見たのよ?身柄を確保するのは軍規に・・・」

「もう、既に4体も敵に奪われて機密も無いと思うが?
それに俺の、俺達の教官は、『軍規がどうであろうと民間人にその刃を向けてはならん』と教えていたぞ」

マリューの反論を全て聞かずにキョウスケは言い返した。

反論できずにいるマリューから視線を外しキョウスケはコウに話しかけた。

「ウラキ少尉、キース少尉の手伝いを頼む」

「わかった。コンテナを下ろすんだな」

コウはそう言うと、トレーラーの荷台へと走っていく。

そして今度は少年達のほうを向き、

「すまないが、しばらく俺達と行動を共にしてくれないか」

と 言った途端、少年達は一斉に不平の声をもらした。

「なんで!?」

「冗談じゃねぇよ、なんだよそれ!」

「ぼくらは“ヘリオポリス”の民間人ですよ?中立です。軍なんて関係ないです!」

「さっき、機密も何も関係ないみたいなこと言ってたじゃねぇか!!」

「黙れ・・・!」

キョウスケの声に、みな気圧されて黙った。

「死にたいのか?コロニーの非常警報が8にまで上がっている。今からではどのシェルターも開かんし
中から開けれるとも思えん・・・。それにコンテナを取りに行く最中に見たが、ここから近いシェルターは
あらかた吹き飛ばされていた・・・。このままではまた戦いに巻き込まれるぞ」

「でも、ザフトはもう去ってんじゃ・・・」

トールの言葉にキョウスケは首を振る。

「いや・・・奴等はウラキ少尉のステイメン、俺のゲシュペンストとまだ開いていないコンテナ・・・
そして奪取し損ねたストライクがあることを知っている。これらを奪取、又は破壊を目的にもう一度仕掛けてくる」

「それに備えるためにコンテナを・・・アルトアイゼンを取りに行ってたのね・・・」

マリューの言葉に頷き、少年達にもう一度告げる。

「事情は理解してくれたか?安全な所に着くまで俺達と行動してくれ」

ここまで説明されて文句を言うほど少年達は愚かではなかった。




クルーゼの操るシグーにバニング達は苦戦していた。

あまりの動きの早さにバニング達4人はついてこれずに損傷を増やしていく。

その動きに唯一反応できていたフラガだが、機体の性能差で確実に押され始めていた。

シグーがライフルを一射し、それに反応したバニング機が右へと回避するがそれを見越したかの様に
回避した所にライフルが飛んでくる。

「くっ!」

バニングはすぐさまペダルを踏み上へと逃げながらも、ライフルを撃ち返す。

その攻撃をかわしながらクルーゼは薄く笑みを浮かべた。

「流石はロンド・ベルだな・・・並みのコーディネーターならばとうに墜されているぞ」

「クルーゼ!!」

不意を衝く形で後ろからフラガのゼロがガンバレルを放つ。

しかし、クルーゼはそれをかわしながらもガンバレルの一つを破壊した。

「そんな旧式で私とここまで戦えるとはやるではないか、ムウ・ラ・フラガ!!」

「貴様などメビウス・ゼロで十分だ!!」

「ならば墜してみせろ。もっとも貴様がMSに乗ったとしても無理だろがな!!」

「ぬかせっ!!」

ゼロから放たれるビームをかわすと、シグーは急に進路を変えてコロニーの方へと向かっていった。

「コロニー内に向かう気か!?」

フラガもシグーの後を追いコロニーへと向かう。

「俺達もコロニーへ向かうぞ」

「しかし大尉、私達までコロニーへ向かってはここの守りは・・・」

「そうは言うけどな、今の俺達の状態じゃ敵さんの足止めも出来ねえし、
フラガ大尉の旧式じゃあちときつい相手だろうが」

バニングの指示に異論を唱えるアデルをベイトが説き伏せる。

ベイトが言うように今のバニング達のMSは満身創痍そのものだった。

「その通りだ。どの道、修理と補給もしなくてはならんからな。
全機、コロニーへ向かうぞ」




「キョウスケ、コンテナのパスコードは知っているのか?」

と、キースが聞いてくるがキョウスケは短く、

「・・・察しはつく」

と、答えながらコンテナへと向かう。

『パスコードを入力してください』

機械的な声がパスコードを求めてくる。

「・・・・」

キョウスケは何も入力せずにEnterを押した。

途端にコンテナのロックが外れ、目の前の扉が開く。

「・・・・プロテクトが存在しないわけだよ」

「人間の心理を読んだプロテクトだ、とカザハラ博士は言っていたがな」

キースのあきれた言葉にキョウスケは答えながら、前にカザハラ博士と会った時の事を思い出していた。



「人間は思い込みで行動しがちだからね。例えば鍵のかかったドアを前にしてある人物に大量の鍵を渡して、
『このドアの鍵を開けてくれ』と頼むとその人物はその大量の鍵の中から正解を選ぼうとするんだ。
・・・誰もこの鍵の中にある鍵を使ってとは言ってないのにね。それと同じでパスコードを求められると
みんな色々と試すのさ、ありもしないプロテクトを解こうとしたり、存在しないパスコードを入力したりね
私はこれを人間の心理を読んだ新しいプロテクトだと思うんだが、君はどう思う?」

「・・・博士、戯言はいいから早く現場に戻ってください。グルンガストの調整作業はまだ終わっていないんですよ?」

カザハラは助手に引きずられていく。



「まさか、本当に使うとは思わなかったが・・・」

と呟き、キョウスケは目の前に立つ赤い機体『アルトアイゼン』に乗り込んだ。



「こちらX-105ストライク、アークエンジェル応答願います・・・だめですね」

キラが通信で母艦である新造艦『アークエンジェル』に呼びかけるが返事は返ってこなかった。

あの後キラ達は、とりあえず母艦に連絡を取ろうという事になりストライクでの通信はキラが担当する事になった。

「やっぱりバッテリーが不足してるのかしら・・・ウラキ少尉の方は?」

「・・・こっちも駄目です」

コウがステイメンのコックピットから顔を出しながら言う。

「マリューさーん、パワーパックの用意が出来ましたー」

トレーラーの上からタスクがマリューを呼んだのを聞き、返事をしながらキラに指示を出す。

「わかったわ。キラ君、パワーパックを装備してもう一度やってみて」

「わかりました」

キラはストライクをトレーラーの方に向かわせパワーパックを装備させようとした時
頭上から爆発音が響き、そこから1機の新しいMSが舞い降りてきた。




「あれが最後の1機か・・・それにGP-03SにジムキャノンU・・・あの赤い機体がコンテナの中身か
我々の物にならないのであれば破壊させてもらう!」

攻撃を仕掛けようとした時、後ろから狙撃されシグーはバランスを崩した。

「やらせるか!クルーゼ!!」

「ちぃ!邪魔をするな、ムウ!!」

狙いをストライクからゼロに代えライフルを発射する。

ゼロは何とか回避するが、外れた弾がセンターシャフトに次々と命中していく。

「しまった!シャフトに!」

フラガが一瞬、視線をそらした瞬間、ゼロの動力部に被弾し失速していく。

「終わりだな、ムウ・ラ・フラガ!!」

クルーゼが止めを刺そうした時、機体が高エネルギー反応を察知した。




キラがゼロを援護しようと高インパルス砲"アグニ”を手に取ろうとした時、
突如軍港の方から大出力のビームが飛んできた。

「な!?コロニーの中で高出力のビームを使うなんて!」

キラが軍港の方を見ると白い戦艦が出入り口を破壊しながら入ってきた。

「あれは、ホワイトベース・・・?」

「いいえ。確かに似てるけど、あれは地球連邦軍の新造艦アークエンジェルよ」

キラの呟きが聞こえたのだろう、マリューが訂正をする。

アークエンジェルが放ったビームをシグーはかわし、そのままシャフトを貫きコロニーの壁を貫通する。

「なんて・・・事を・・・」

マリューは今出来た穴を見上げ呟く。

本来ならば自動修復されるであろうがシステムが故障したのか一向に修復される気配がない。

アークエンジェルはシグーにミサイルを発射するがことごとく撃ち落されるか、シャフトを盾にされて当たる事がない

「止めさせなきゃ、コロニーが!」

ストライクがアグニを使おうとするのを見てマリューが慌てて止めさせる。

「まって!そんなのを使ったらまた大穴が出来るわ!ウラキ少尉とキース少尉が向かったから
あなたはアークエンジェルに通信を繋いで!」

マリューに言われ通信を開くが、アークエンジェルに通じ無い。

「こちらストライク!アークエンジェル、コロニーを傷つけないでください!応答してくださいアークエンジェル!
アークエンジェル!!攻撃を、やめろーーー!!!」

キラの叫びはコックピットに響くだけだった。


「なんて速さだ!全然当たらない!」

キースがジムキャノンUのキャノンを撃ちながら叫ぶ。

「キース、援護を頼む!一か八か飛び上がって接近戦を仕掛けてみる!」

キースの返事を待たずに、コウはステイメンのバーニアを全開にして飛び上がる。

「コウ!ったくあたっても、文句を言うなよ!」

キースは出来るだけシグーをステイメンの近くに来させるようにキャノンを撃つ。

シグーがキャノンを避けた瞬間、ステイメンが真正面の至近距離でシグーを捕らえた。

「もらったーーー!!」

コウは叫びステイメンのビームサーベルを振り落とす。

「ふっ、あまいな!」

シグーが右脚を支点に回転させビームサーベルをかわすと、その勢いのまま腰のサーベルを抜き放ち
ステイメンに斬りかかる。

「なに!うわ!?」

コウは反射的にシールドで防御するが勢いに押され、そのまま下に落ちていく。

落下するステイメンにシグーはライフルを撃ちながら接近してくる。

「もらったぞ!ガンダム!!」

その時、さっきまで下にいた赤い機体が飛び掛ってきた。

「なに!?速い!?」

予想以上のスピードで接近してきたのでクルーゼの反応が一瞬遅れる。

「ステーク!いけぇ!!」

アルトアイゼンのリボルビングステークがシグーの右肩に突き刺り、杭が打ち込まれる。

シグーはその衝撃で吹き飛ばされ、さらに右肩が爆発を起こす。

「ちぃ!とんでもない機体だ!!クルーゼだ、損傷した帰艦する」

不利と悟りシグーは先ほど出来た穴からコロニーの外へと逃れていった。

「どうやら動力部を改装したわけでは無いようだが・・・私の障害になるか?ロンド・ベル隊・・・」




「キョウスケ、アルトはもう使えるのか!?」

「ああ、起動に少々手がかかったがな。しかし、とんだじゃじゃ馬だな。踏み込みが一歩半進みすぎた」

キョウスケが狙ったのは、シグーの右肩ではなく胴体だった。

踏み込みが思ってたよりも進み過ぎたために狙いがずれたのだ。

「それに、空中での姿勢制御が難しい。陸戦向きの機体だからな」

「ウラキ少尉、ナンブ少尉聞こえる?」

マリューから通信が入る。」

「キース少尉とキラ君がアークエンジェルに連絡をつけたわ。アークエンジェルへ向かいましょう」

「了解しました。・・・んっ?味方識別反応が・・・」

「どうした、ウラキ少尉?」

「味方が4機こっちにくるみたいだ」

反応があった方、先程ゼロとシグーが入ってきた所をコウが見ると4機のMSが入ってきた。

「バニング大尉達だ!!」

「4人とも無事か!?」

「よお。お前さん達のMSの改修は終わったようだな」

「メビウス・ゼロは・・・ボロボロですね・・・」

「おお!ホワイトベースもどきがいるぜぇ!」

バニング、ベイト、アデル、モンシアが次々と通信を送ってくる。

「バニング大尉」

キョウスケがバニングに通信を送る。

「キョウスケか。アルトアイゼンは受け取ったようだな」

「はい。我々はアークエンジェルへ向かいます・・・まだ動けますか?」

「なんとかな・・・しかしこれでは・・・」

「ええ・・・第二波までの修理は無理ですね」

キョウスケがバニング達のMSを見て答える

「こちらの戦力は戦艦1隻とウラキ達のMS2機と新型が1機、それにキョウスケのアルトアイゼンだけか・・・」

バニングが現状の戦力を確認し苦い顔をする。

「ひどい手札ですが、我々はそれを場に出すしか無いですね」

「全くだ、ロンド・ベルではよくある事だがな」

キョウスケの言葉に慣れたことだと言うように応えると全機に指示を出す。

「全機、アークエンジェルへ向かうぞ。それまでは機体を持たせろよ」

(・・・だがアークエンジェル内にパーツがあるのかが問題だがな・・・)

バニングは一抹の不安を抱きながらMSをアークエンジェルへと向かわせた。



第三話へ続く

あとがき

作:どうも皆様コワレ1号です。
さて、第二話をお届けいたしましたが如何でしたでしょうか?
まず、言い訳を。Nジャマーの設定をいじりました。
SEEDの世界のNジャマーは広範囲、核分裂のみを妨害しましたが、
この作品のは範囲は狭いですが、核反応全てを妨害します。
ジンUについてですが、『SEEDの世界は敵MSが少ない』と言う友人のアドバイスにより登場させた機体です。
私の中ではジンが旧ザクの立場にあり、ジンUがザクUの立場にあると思っております。
なぜ、ロンド・ベル隊のMSのみ動けるのか、前回代理人から指摘があった戦力の問題等は
物語を進めていくうちに明らかになりますので、気になる方はもうしばらくお付き合いください。

イネス先生のなぜなにスパロボ

イ:・・・結局このタイトルな訳ね・・・安直だわ・・・
作:すみませんね、ネーミングセンス無くて・・・・
イ:初めから期待してないわよ。さて、最初の説明をするわね。

「ジンUの設定について」

イ:まず、ジンはSEEDの世界のザフト軍主力MSよ。立場上ザクと同じね。
で、今回登場したジンUはこの作品のザフト軍主力MSになるわ。つまりジンUがザクでありジンが旧ザクになったの

機体名:ジンU
原動力:電気バッテリー
武装:ビームサーベル×2 ビームライフル×1 
備考:ジンの後継機でありジンでは不可能だったビーム兵器の携帯が出来る
    バーニアの出力等も格段に上がっており、ネオ・ジオンのギラ・ドーガ並の性能を有しており
コーディネーターの能力も合わさってギラ・ドーガ以上の戦闘能力を持っている。
コストも安めではあるが、装甲の材質がジンと同じなため頑丈とは言いがたい。

「Nジャマーについて その2」

イ:さて、前回説明不足だったのでもう一回やるわよ。
作:・・・お手数かけます・・・(泣)
イ:まず、原作との変更点についてね。SEEDの世界には核融合が存在しないのでNジャマーは
核分裂のみを防ぐのを目的として開発されたものね。
この世界(宇宙世紀)は核融合が成功しているので、原作どうりのNジャマーでは代理人さんが言うとおり
なんの意味も無くなるわ。
作:それで、この作品では・・・
イ:そう。核運動を全て抑制するNジャマーよ。本当は前の話の時に書こうかと思ってたらしいんだけど・・・
作:すみません・・・手直しの時にその辺も間違えて消したまんまになっていました・・・(泣)
イ:・・・だ、そうよ。この作者はこの後私の実験に付き合って罪を償うそうよ。
作:まてーい!!んなこと一言も言ってないし聞いてないぞ!!
イ:問答無用。

何かを口に放り込まれる
バタッ!!
倒れこみそのまま動かなくなる

イ:・・・流石『ナデシコ惨大兵器』艦長の手料理のかけらね・・・・
さて、続きね、原作では一発で広範囲に影響が出たんだけど、この世界では狭い範囲にしか影響が出ないわ。
・・・狭いと言っても関東地方の半分ぐらいの範囲だけどね。

イ:それと、もう一つ。このNジャマーに電波かく乱作用は無いわ。
この世界では未だにミノフスキー粒子が戦闘開始時に散布されるわ。

「フラガとクルーゼってひょっとして・・・?」

イ:SEEDの後半戦を見た人はわかるわね・・・あの効果音と額の『閃き』はヤバイでしょ。
作者も唖然としてたわよ・・・
SEEDではどうかは置いといて、この世界ではフラガ大尉は『アレ』よ。
アムロ・レイと互角かどうかは知らないけど・・・
クルーゼの方は・・・後のお楽しみということで・・・

イ:まぁ、こんなものかしら?文句は全て作者にね。
じゃ、私は新薬の実験があるから

イネスは動かない作者を引きずっていく・・・・

 

管理人の感想

コワレ1号さんからの投稿です。

なんか面子が面子なだけに、キラの特殊性なんか全然目だってないですね(笑)

それとフラガとクルーゼの『閃き』については、監督自ら『アレ』だと言っていたような気がするんですが?

ま、どちらにしろアムロと戦えばはっきりしますがねw

 

・・・この布陣だと、今後キラがストライクに乗って戦う必要なんて無いんじゃ?