第三話 戦火の中へ




「隊長機、帰艦!?傷あり!整備班は用意をしろ!!」

帰艦したアスランは奪った機体のコックピット中で艦長の放送を聞いて驚いた。

「隊長が被弾?一体、あそこでなにが起こっているんだ?」

アスランはOSを書き換える手を止め、ためらった。

このまま、OSの書き換えを続けるべきか?それともコロニーに行き、キラをこちらに連れてくるべきか?

先程戻ってきたミゲルがリムに食って掛かっているのを見て考えた。

ハッチを空けてあるので二人の声がこっちにも聞こえてくる。

「なに撃墜されてるのよ、あなたは」

「うるさい!!何なんだよあの機体は!?いきなり動きが変わったんだぞ!?」

「自信満々で『俺が捕獲する』って言っておいて撃墜されて、その言い訳もするの?・・・男らしくないわね」

「こ、この野郎・・・!」

「失礼ね!!私は女よ!女!」

「ミゲル!ちょっといいか?」

アスランは二人の会話に割って入り、ミゲルを呼んだ。

アスランが呼ぶのが一瞬遅かったらミゲルはリムのボディブローを食らっていただろう。

そんなことに気づかず、ミゲルはアスランの方へ飛んだ。

「なんだ、アスラン?」

「いきなり、動きが変わったってどういう事だ?」

アスランに聞かれミゲルは嫌な事を思い出したかのように顔をしかめ答える。

「それは、こっちが聞きたいね。あの機体フラフラな動きだったのはお前も見ただろう?俺が戦っている時もそうだったんだよ・・・最初はな。
一度こっちの攻撃をかわした後から急に動きが良くなってな、旧式のジンじゃ動きについて来れなかった」

「機体の所為にしないの、あなたがついて来れなかっただけでしょう」

何時の間にかそばに来ていたリムが脇から口を出す。

「少し黙ってろ!・・・どうした、アスラン?」

ミゲルの話を聞きアスランは黙って俯きながら考えていた。

(最初、動かしていたのは恐らく連邦軍の士官だろう、機体がふらついていたのはOSがこの機体のように上完全だったからだな。
攻撃をかわした辺りから操縦していたのは多分、いや確実にキラ・・・だな。動きが変わったのはあいつがOSを書き換えたからか・・・
まさか・・・あいつ連邦軍に所属しているんじゃ・・・!?)

そこまで考えが到達するとアスランは顔を上げ叫んだ。

「二人とも離れてくれ!」

アスランの声にキョトンとしている、ミゲルとは対照的にリムは驚き目を見開く。

「アスラン!貴方待ちなさい」

リムの制止の声を聞かずにアスランは発進準備を進める。

それを見たミゲルも驚きの声を上げる。

「アスラン!どこに行く気だ!!」

「コロニーだ!邪魔をしないでく」

ズドムッ!!

アスランが言い終えるのを待たずにリムのボディーブローがアスランに突き刺さっていた。

「がっ!?リ・・・ム・・・」

「馬鹿なことを言ってるんじゃないの!ミゲル君、イザーク君かニコル君を呼んできて」

リムのボディーブローに驚いていたミゲルは我に返り頷くと奪取した他の機体の方へと向かった。

ミゲルが離れたのを確認してリムは小声でアスランに話しかけた。

「キラ君の事は私に任せなさいって。連邦軍なのか、なんでMSに乗っているのか、こっちに来ないか、を聞いてくればいいんでしょう?」

リムの言葉にアスランは驚いた。自分が思っていた事と同じ事をリムが言ったからだ。

なんで解ったのかを聞こうとするが先程のボディーブローの所為で息が詰まって喋れない。

「貴方の顔を見れば解るわよ、『彼女』から『顔を見れば解ります』ってよく言われてるでしょ?」

リムは喋りながらアスランをMSから引き摺り下ろした。

「リム、呼びましたか?」

「なんの用だ、一体?」

ニコルとイザークがリムの方に飛んできた。

二人はぐったりしているアスランを見て顔を引きつらせた。

「あの・・・どうかしたんですか?」

ニコルが恐る恐る聞いてくる。

「馬鹿なことを言うから、ボディーブローを思いっきり叩き込んだだけよ♪」

リムが恐ろしい事を笑顔で言うのを見て、イザークがアスランに同情の眼差しを向け呟いた。

お前・・・厄介な奴に懐かれたな・・・

「何か言った?イザーク君?」

「何の事だ?・・・それより、なんで俺たちを呼んだ?」

リムの質問をあっさりと受け流し、イザークは本題をたずねた。

「アスランが勝手に出撃しないように見張ってて欲しいの。本当は私が見張って居たいんだけどミゲル君と出撃命令が出ているのよ。
あなた達ならアスランを抑えて置けるでしょう?・・・ちなみに拒否権はないからね」

「最後の言葉が引っかかるが・・・そんな事を俺に頼むな!ニコルかディアッカ一人で充分だろう!!」

「駄目よ。ニコル君はアスランの頼みをあっさり聞いちゃう節があるし、ディアッカ君はめんどくさがって頼みも聞いてくれないし、
あなた一人だと一緒に出撃しちゃいそうなんだもの・・・それとも、半年前みたく、またアバラを折られたい?」

「うっ・・・」

イザークが顔をしかめ自分のアバラを押さえる。



アカデミーの卒業直前の格闘訓練中に、リムはイザークのアバラを3本折った。

格闘訓練でボコボコにされるのはいつもの事だったが、イザークが骨折までしたのは後にも先のもこの時だけだった。

アスランが後で理由を聞くと、リムは上機嫌な顔で答えた。

「だって、私の『お願い』を聞いてくれなかったんだもん」

どういう内容だったかは怖くて聞けず、イザークに聞いても口を閉ざすだけだったので事の真相は二人しか知らない。



「わかりました。任せてください」

ニコルは事情を聞くとあっさりと引き受けるが、イザークはまだ憮然としている。

・・・今度は両腕、両足かしら?

リムは呟き、一歩イザークに近寄りながら腰のナイフに手を伸ばす。

「わかった!引き受ける!!だからナイフに手を伸ばすな!!」

その動作を見て本気だと判断し、イザークは慌てて返事を返す。

「よろしい。じゃ、いってくるわね。・・・ミゲル君出撃するわよ!」

ジンに乗り込もうとしているミゲルにリムは声をかけた。

「早くお前も乗り込め!!ったく、なんであいつがジンUなんだよ・・・」

ミゲルはぼやきながら出撃準備を進めていく。

「ぼやかないの。艦長の指示なんだから」

リムがジンUのコックピットから通信を入れる。

喋りながらもその指は凄まじい速さで出撃準備を整えていく。

「はい、終わり。いつでも出れるわよ。そっちは?」

「もう少し・・・OKだ」

後から準備を始めたリムが先に終わり、少し遅れてミゲルが準備を終える。

「じゃ、行きましょうか!リム・フィア、ミゲル・アイマン行きます!!」




「ラミアス大尉!ご無事で何よりです!」

サイ達に?傷したゲシュペンストとストライクの部品を積んだトレーラーを運転させ、マリューがアークエンジェルに到着すると
何人かの士官が駆け寄ってきた。

マリューは呼びかけてきた女性士官の姿を確認すると声をかけた。

「バジルール少尉、あなた達がアークエンジェルを?」

「―――感動の再会を邪魔して悪いんだが・・・」

脇から声をかけられ、二人はそちらへ顔を向けるとフラガとバニングが歩み寄ってきた。

「俺は連邦軍第7機動艦隊所属ムウ・ラ・フラガ大尉だ、よろしく」

「あ・・・第8艦隊所属マリュー・ラミアス大尉です」

「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」

それぞれ敬礼して吊乗りあった後、ムウが切り出す。

「乗船許可を貰いたいんだが。俺の母艦は落とされてしまったし・・・。この艦の責任者は?」

ナタルは重い口調で答えた。

「艦長をはじめ、主な乗組員はほとんど戦死してしまいました・・・よってラミアス大尉がその任にあるかと・・・」

「・・・Xナンバーのパイロット達は?」

バニングがそっと尋ねるとナタルは沈痛な面持ちで首を振った。

フラガとバニングの顔が重々しく引き締められる。

その時、ストライクとアルトアイゼンがアークエンジェルに着艦し、周囲の目がふとそこに注がれる。

ストライクからキラが降りてきた時、事情を知らない面々が声を上げた。

「子供・・・!?」

「なんで、Xナンバーに民間の子供が・・・?」

「・・・また、ニュータイプだと言うんじゃねぇだろうな・・・?」

「また?・・・カミーユ達の事を言ってんのか?お前」

「ロンド・ベル隊ではよくある事のようですけど、実際現場を見ると驚きますね」

ナタル、バニング、モンシア、ベイト、アデルが驚きの声を上げるがフラガは何か紊得したような顔で見ているだけだった。

そこに、アルトから降りたキョウスケがキラの前に進み出た。

「な、なんですか?」

少し身を引きながらキョウスケに尋ねるとキョウスケは静かに問いかけた。

「今のうちにハッキリとさせておきたい。きみはコーディネーターか?」

キョウスケの言葉にロンド・ベル隊の関係者以外が一斉に凍りついた。

「ナンブ少尉!何もこの場で聞かなくても!」

マリューが声を荒げたしなめるが、キョウスケは振り向きもせずに答える。

「この場だからこそ聞いた。戦闘が始まってから気付かれでもしたら艦の士気にも影響する・・・どうなんだ、キラ・ヤマト」

キラは躊躇ったが嘘をついても無駄だと諦め答えた。

「・・・はい」

キラが答えるとナタルと一緒に来た兵士が一斉に銃をキラに向かって構えた。

「・・・なんなんだよ!それ!!」「―――ちょっと待て!コラ!!」

トールとタスクが同時に叫び、かばうようにキラに前に出た。

「キラは敵じゃない!ザフトと戦って俺達を守ってくれたんだ!」

「あんたらはコーディネーターと言うだけで、民間人にも銃を向けるのかよ!」

彼等は兵士達を睨みつけ、一戦も辞さない覚悟で必死に訴えた。

「銃を下ろしなさい」

マリューが命じるがナタルが異を唱える。

「しかし、コーディネーター、『敵』ですよ!?」

「それは違うぞ、バジルール少尉」

ナタルの言葉にバニングがたしなめる。

「我々が『敵』として戦っているのはザフトとだ、コーディネーターとでは無い。それに、ここは中立のコロニーだ。
戦火から逃げたコーディネーターがいても上思議ではない」

「ええ・・・ぼくは一世代目ですし・・・」

キラはボソッ言ったのを聞いてモンシアが首をひねった。

「一世代目・・・・?ブライト艦長の話だと最初の世代は40年以上前の人間じゃ・・・」

「馬鹿、それは第一世代、ファースト世代の事だ。一世代目というのは両親がナチュラル、つまり普通の人間と言う事だ」

モンシアの勘違いをベイトが正す。

「・・・なんであなた達は驚かないんですか・・・?」

モンシア達の会話を聞いたナタルが聞く。

「ロンド・ベル隊にはいろんな奴らがいたからなぁ・・・」

「妖精に異星人の女エースパイロット・・・喋る猫ってのもいたな、前の戦争ではサイボーグも居たんだ。これくらいじゃ驚かねえよ」

ベイトとモンシアがのんきに答えるのを聞いて、ナタルは顔を引きつらせた。

「すまないな、騒ぎがこれほどまで大きくなるとは思わなかった」

キョウスケがキラ達に詫びる。

「機体のOSが完成してないはずなのにあの動きは異常だと思ってな。・・・もっとも、フラガ大尉も気付いていたようだが」

「ま、なんとなくな。あれに乗るはずだった新米共は、歩く事すらもフラついていたからな」

話を振られたフラガは肩をすくめて答えると、艦の奥の方へ歩いていく。

「フラガ大尉、どこへ?」

ナタルに聞かれフラガは振り向きながら答える。

「どこへって、外にいるのはクルーゼ隊だ。この戦力じゃなにか対策を練らなきゃ、脱出は・・・」

フラガが全てを言い終える前に、ブリッジから通信が入る。

『バジルール少尉、戻ってください!敵が、ザフトが来ました!』

「ちぃ!もう来やがったか!!ラミアス大尉、君が指揮を執れ!」

「えっ!?私ですか!?」

マリューが驚き自分を指差す。

「そうだ!俺はこの艦の事は解らん。バニング大尉はMS隊の指揮がある、という事は君しかいないんだ!」

「・・・・わかりました。アークエンジェル発進準備、総員第一戦闘配備!バニング大尉、MS隊の発進を!」

マリューはバニングの方を振り向くと、バニングが頷いた。

「了解した。出撃できる者は出撃しろ!いいか、コロニー内だということを忘れるなよ!マードック軍曹はいるか?」

「呼びやしたか」

バニングに呼ばれ人ごみの後ろの方から出てくる。

「俺達の機体の応急処置を頼みたい、とりあえず銃を撃てればいい」

マードックはボロボロになったバニング達の機体を見て首を振った。

「無茶言わないでくださいよ!あんなんじゃ応急処置したって何にもなりませんよ。第一、ガンダムとゼロと今坊主達が持ってきた
ストライクとアルトのパーツ以外この艦には積んでないんですから!」

マードックの言葉を聞いてバニングは苦い顔をし呟いた。

「戦力が機動兵器3機のみか・・・」

「大尉、ストライクにフラガ大尉が乗ってくだされば4機になります」

ナタルが提案する。

「無理ですよ。OSのデータを見たんですが、普通の人間に扱えるものではありません」

コウがその提案を否定するが、ナタルが素早く言い返す。

「なら、元に戻させて・・・」

「そんな時間は無い。それに元に戻すとスペックが下がり、足手まといにしかならん」

アルトに乗ったキョウスケが外部スピーカー越しに言い放つ。

「現状の戦力でどうにかするしかない・・・。アルトアイゼン、出るぞ・・・!」

アルトアイゼンがアークエンジェルから飛び出て行く。

続いてキースのジムキャノンUが出撃していくのを見て、コウはGP-03Sに駆け込んだ。

「すいません、キラ達を居住エリアへ避難させておいてください」

コウはそう言い残し出撃していった。

マリューは一瞬苦い顔をすると首を振り、キラ達の方に歩み寄った。

「キラ君、現状は聞いての通りよ。この戦闘を乗り切ってコロニーを脱出しなければ、あなた達を安全な所に降ろす事も出来ないわ」

「・・・また、あれに乗れって言うんですか・・・?」

キラはマリューが言いたい事を察し、拳を握りしめ俯きながら問いかける。

「いくら、ロンド・ベル隊でもこちらの数が少なすぎるの。このままでは脱出どころか、生き残る事も出来ないわ」

「僕らは戦争が嫌で、中立のコロニーを選んだんだ!もう、僕らを巻き込まないでください!」

「・・・キラ、OSを元に戻すのにどのくらいかかる?」

突然のタスクの質問にキラは驚き振り向いた。

「元に戻すって・・・まさか!?」

「ああ、俺が乗るよ。一応マオ社のPT適正試験を受けた事があるんだぜ?・・・運動試験で落ちたけど・・・

「無茶だ!PTとMSとじゃ操作系統がまるで違うし、OSを戻したら足手まといになるだけだって、キョウスケさんも言ってたじゃないか!」

キラはタスクを止めようとするが、タスクは頑として譲らなかった。

「OSを戻すと足手まといなら、このまま出るさ。この状況じゃ1機でも手が欲しいだろうし」

「それこそ無茶だ!あの機体のOSはナチュラルじゃ操作しきれないコウさんが言っていただろう!?」

「そうは言うけどな、このままだと俺達は死んじまうかも知れないんだ。みんなを守るためなら、
命を賭けた一か八かの一発勝負を仕掛けるしか無いだろうが!?」

(みんなを・・・守るため・・・)

「それなら・・・ぼくが乗る」

キラの覚悟を決めた表情でタスクに告げる。

「キラ・・・戦いたくなかったんじゃないのか?」

サイがキラを気づかい声をかける。

「ぼくは戦えるだけの力をもっているから・・・」

キラは俯きながら答えるとストライクの方へと走っていった。

バニングはこの光景を見て胸中で苦々しく呟いた。

(また、年端のいかない少年達に頼る事になるとはな・・・)




キョウスケは敵MSの武装を見て驚きの声をあげた。

「あれは、要塞攻略用装備だと!?正気か!」

アルトアイゼンに気付いたジンは、その大型ミサイルを発射する。

「それには、当たってやれん」

キョウスケは横に飛んでかわし、ミサイルの腹に3連マシンキャノンを撃ち込み、ミサイルを破壊する。

「返しは痛いぞ」

バーニアを全開に吹かしてジンに接近しリボルビングステークを胴体に叩き込む。

衝撃で後ろに吹き飛ばされ、そのまま別のジンに激突し2機一緒に爆発する。

「こう、数が多くてはな・・・むっ!?」

新たに爆発が起こり、コロニーに穴が開くのと同時にコロニーの重力が無くなり機体が浮かび上がる。

「穴を空けられすぎたか・・・」

「キョウスケ、新たに敵の増援確認。数6、しかも全部ジンUだ!」

キースからの通信を聞き返事を返す。

「こちらからも来た。ジンU2機、ジン4機だ・・・ウラキ少尉、キース少尉のフォローに入れるか?」

「わかった。そっちに着くまで落ちるなよキース!」

少し離れた所でジンと撃ち合っていたコウがけん制の射撃をしてからキースの方へと向かう。

ジンがステイメンを後ろから撃とうとするが、アルトの3連マシンキャノンに撃たれ体制を崩す。

そのまま、ステークを叩き込もうと接近するが、横から別のジンにバズーカで撃たれ機体が横に流される。

動きが止まった所にジンU2機がビームライフルを放つが、アルトの目の前で拡散される。

「バリアか・・・?目がチカチカするぜ・・・」

ちらつく目を堪えつつ、キョウスケはアルトをジンUに向かい突撃させる。

「こちらに余裕が無くてな。一気にケリをつけさせてもらうぞ!」




「うわっ!こ、このぉ!」

キースはジンUのライフルをなんとか回避しキャノンを撃ち返す。

ジンUはそれをあっさりとかわし、大型ミサイルを撃ち返して来る。

「わわわ!避けたらコロニーが、い!?こっちから別のジンUが!どうしたらいいんだよ〜!!」

次の瞬間、ミサイルがビームに貫かれ爆発を起こし、キースを狙っていたジンUのライフルも貫かれ破壊される。

「キース、大丈夫か!?」

「コウ!もう少し早く来てくれよ〜」

キースの所に着いたコウはジンU2機を見て眉をひそめた。

「2機?あとの4機は・・・」

コウが呟いた時、離陸したアークエンジェルの方で爆発が起きる。

「しまった!アークエンジェルに!」

コウは叫びアークエンジェルへ向かおうとするが、ライフルを破壊されたジンUが斬りかかってきた。

ステイメンのビームサーベルでそれを防ぐが、残ったジンUが援護射撃をしてきたのでバーニアを吹かしてその場から離れる。

「コウ、分散して片付けるか?」

キースがコウに提案するが、コウは首を振った。

「いや・・・俺だけであの2機の相手をする。キースはアークエンジェルの防衛に回ってくれ」

コウの言葉にキースは驚く。

「えー!オレ一人でジンU4機相手にすんのかよ!?」

「仕方が無いだろう、戦艦だけじゃ多数のMS相手なんて出来ないんだ。それに、対空機銃がある分だけあっちの方が楽だぞ?
すぐにこいつ等を片付けてそっちに向かうから、な?」

「すぐに・・・って、ジンUだぞ?ザクなんかとは違うんだぞ?」

「大丈夫だ。いくらジンU、最新型と言ったてガトーやクワトロ大尉程強いわけじゃない・・・」

キースはコウの言葉に頷き、アークエンジェルへと向かう。

「いいか!?絶対にすぐに来いよ!来なかったら、レーションのニンジン全部お前に渡すからな!」

「うっ・・・わかった。・・・・さて、いくぞ!」


多数のジンやジンUに攻撃されながらもアークエンジェルは奮戦していた。

ジンが放った大型ミサイルの一つがアークエンジェルを外れコロニーのシャフトに直撃する。

「あいつ等!撃ちたい放題撃ちやがって!!」

フラガが毒つきながら照準をジンにあわせ、小型ミサイルを発射させる。

ミサイルはことごこく撃ち落されるか、シャフトを盾にされジンに当たることが無い。

「これ以上コロニーを傷つけさせないで!」

「わかってはいるが、この状況では・・・!」

マリューの指示にバニングが答える。

ジンUが放った大型ミサイルが左舷装甲にあたり艦が揺れる。

「くっ・・・!左舷のイーゲルシュテルン、弾幕を厚くしろ!ストライクはまだ発進できないのか!?」

ナタルが格紊庫に通信を送るとマードックが応える。

「今、ソードストライカーパックを着けさせて出すところです。発進許可、いいですか?」

通信を聞いていたマリューが頷き、許可を出す。

「ほら、坊主行って来い。生きて帰って来いよ!!」




「キラ・ヤマト、ストライク『ガンダム』行きます!!」

ストライクが発進しそれに気付いたジンに狙いを付けられるが、撃たれるより早くストライクが接近し
背負っている対艦刀『シュベルトゲベール』を?み一気に振り下ろす。

ジンが真っ二つになり爆発し、キラはそのままアークエンジェルに攻撃を仕掛けているジンUに接近した。

それに気付いたジンUは接近させずとライフルを撃ってくるが、キラはストライクを右に左にと回避させながら接近していく。

対艦刀が届く距離まで近づくと、ジンUは回避が間に合わないと判断したのかビームサーベルを抜き放ち受け止めようとする。

ビームサーベルと接触した一瞬、対艦刀が動きを止めたが、そのままビームサーベルごと機体を二つに断たれる事になった。

「・・・なんて刀だ・・・これは・・・」

キラは対艦刀のあまりの威力に驚きと同時に恐怖を覚えていた。

「・・・まるで少佐の参式斬艦刀だな・・・あれ」

一部始終を見ていたキースはかつて共に戦った『悪を断つ剣』を思い出していた。

はっ、と我に返り通信を開く。

「ストライク、誰が乗っているんだ・・・って、キラ!?」

キラの顔を見てキースは驚きの声を上げる。

「避難したんじゃなかったのか!?」

「後で話します!それより、今は!」

キラは話をはぐらかし、キースの後ろから迫っていたジンUにビームブーメランを投げつける。

ジンUはそれをかわすが、かわした所にジムキャノンUのキャノンをくらい爆発を起こす。

「こっちは後、ジンUが2機、ジンが1機・・・」

キラが呟いた時、また爆発が起こりジンUが2機、ジンが3機コロニーに侵入してきた。

「げっ、新手かよ・・・」

キースはげんなりと呟きながらキャノンを構えた。




ジンUがステークを叩き込まれ爆発を起こす。

ジン3機が後ろからライフルを撃ち、残りの2機がサーベルを抜き斬りかかってくる。

キョウスケはアルトを振り返らせずに、残ったジンUの方へと接近させる。

ジンUもこの動きを予想していなかったのか、アルトに間近に接近されてからビームサーベルを抜き横に薙ぐ。

しかし、キョウスケはそれを予測しサーベルを振り払われる直前にアルトの進路を変えジンUの後ろに回りこむ。

そして、ジンUに後ろから体当たりをし、ジン2機にぶつけ3機の動きを止めそのままアルトを接近させる。

「クレイモア・・・!抜けられると思うなよ!!」

両肩から無数のベアリング弾が発射され、3機はなす術も無く穴だらけになり爆発する。

爆炎の中を突っ切り、残りのジン3機に接近する。

爆炎を突っ切って来る事に気付いた3機は、ライフルやバスーカで応戦するがアルトは被弾しながらも突っ込んでくる。

「これくらいで止められると思うなよ・・・!」

先程のバズーカの様に横からならバランスを崩せたかもしれないが、真正面から、しかもバーニア全開で突っ込んでくる
アルトには大して効果が無かった。

無駄だとわかったジン3機は大型ミサイルを放つが、キョウスケは3連マシンキャノンでその内の1発を撃ち、爆発で残り2発を誘爆させる。

爆炎が起こりジン3機はアルトを一瞬見失った。

爆炎の中からアルトが姿を現し、一番近くにいたジンにステークを叩き込む。

味方がやられた事に気付いたジンがサーベルを抜き放ちアルトに左から斬りかかろうとする。

しかし、アルトは左腕をジンに向けるとそのまま3連マシンキャノンを発射する。

頭部が、胴体が破壊されステークを叩き込まれたジンと同時に爆発をする。

一番遠くにいたジンがサーベルを水平に構え突っ込んで来る。

「狙いは、コックピットか・・・!?」

ジンの狙いに気付くとキョウスケは突きを放たれる瞬間にアルトを上に回避させる。

そのまま、バーニアを吹かし赤く放熱したヒートホーンでジンを袈裟懸けに斬りさいた。

「伊達や酔狂でこんな頭をしているわけではないぞ・・・!」

キョウスケが言い捨てるとジンが爆発した。

「近くに敵反応無し・・・アークエンジェルは・・・・?」

キョウスケがアークエンジェルに向かおうとした時、大地が割れた。




コウはビームサーベルとシールドを構え、ライフルを持っているジンUに向かっていった。

ジンUはライフルを連射してくるが、コウはそれを最小限の動きだけでかわして接近していく。

「やっぱりそうだ・・・こいつ等腕はいいが、ガトーやクワトロ大尉程強くは無い」

接近されたジンUはビームサーベルを抜こうとするが、ステイメンに腕ごと斬りおとされる。

返す刀でジンUを切り裂こうとするが、もう1機のジンUが後ろから斬りかかってきた事に気付き、手首を半回転させた。

そして、そのまま後ろに向かって突き出す。

ステイメンのサーベルはジンUの胸部を貫き、ジンUのサーベルはステイメンの右肩の少し上で止まっていた。

ステイメンがサーベルを放し、その場から離れるとジンUが爆発した。

腕を斬りおとされたジンUが上からライフルを撃ってくるが、ステイメンのバーニアを全開にし、かわしていく。

「いい動きをしているが、ガトー程じゃない!!」

コウは叫びながら、ライフルを抜き放ちステイメンを振り返らせる。

ジンUをロックしたのと同時に、ステイメンの頭部を狙いにビームライフルを撃ってきた。

「くっ!!」

反射的に目を閉じ、頭部を左に傾かせながら、引き金をひいた。

ステイメンのビームはジンUの胴体を貫き、ジンUのビームはステイメンの頭部の右をかすめていった。

「ふーっ、間一髪・・・」

ジンUが爆発するのを見ながら息を吐くと、ステイメンをアークエンジェルへと向かわせた。




「ミゲル君達は戦艦を!私ともう1機は護衛のMSの相手をする」

リムは指示を出すとストライクの方へ向かっていった。

何でお前が指示を・・・

ミゲルの文句を全て聞かずに通信を切るついでに、味方機への送受信をすべて切った。

「あの機体にキラ君が乗っていればいいんだけれど・・・」

リムは呟き、ビームサーベルを抜き放った。




「速い!?」

斬りかかって来たジンUのスピードにキラは驚きの声を上げた。

ビームサーベルを対艦刀で受け止め、そのまま押し返そうとする。

「くっ、なんて刀なの!?」

このままではサーベルごと斬られるとリムは判断すると、もう一本ビームサーベルを取り出し、二本のサーベルで十字をつくりなんとか受け止める。

対艦刀を受け止めたリムは一つ息をつくと接触回線を開いた。

「・・・乗ってるのは、キラ・ヤマト君?」

「!?」

突然、敵からの通信にキラは驚いた。

「女・・・の人・・・?」

「答えなさい。キラ・ヤマト君ね?」

リムに強く言われ、キラは思わず返事をした。

「は、はい。何でぼくの吊前を・・・?」

「私はリム・フィア。あなたの事は仲間のアスランから聞いたのよ」

アスランの吊前が出てきてキラは声を上げた。

「アスランから!?なんで、アスランがザフトに!?」

「彼にもいろいろと事情があるのよ・・・あなたの事心配してたわよ?」

リムの言葉を聞いてキラは俯いた。

「『なんで、MSに乗っている?まさか、連邦軍に所属してるんじゃ・・・』って言ってたくらいなんだから・・・で、どうなの?」

「ぼくは、連邦軍じゃない!これに乗っているのは友達を守るためなんだ!!」

キラは叫ぶと、ストライクをジンUから少し離れさせた。




キースはキャノンを撃つがジンUはあっさりかわし、ライフルを撃ちながら接近してくる。

バーニアを吹かし何とか回避するが、何機かアークエンジェルにとりつき攻撃をしかける。

「くそー、数が違いすぎる!コウの奴はまだかよ!?」

キースがアークエンジェルの援護をしようとした時、攻撃を仕掛けてたジン3機がビームに貫かれ爆発した。

ビームが飛んできた方を見ると、ステイメンが全速でアークエンジェルへと向かっていった。

「コウ、そっちは任せたからな!」




キースの通信を聞きながらコウはジンUに機体を接近させ、残ったビームサーベルを抜き放つ。

ジンUがビームサーベルを抜くよりも早く、横一文字に機体を切り裂く。

ミゲルは味方の反応が一気に少なくなったのを見て声を上げる。

「なっ、残っているのは俺を含めて3機だけだと!?ロンド・ベルの一部だけでこれだけの被害が出るのか!?」

さっきまで自分を含め10機の反応があった。

だが、ステイメンがジンUを切り裂くのとほぼ同時に7機の反応がすべて消えたのだ。

「リム!応答しろ、一度退くぞ!聞いているか!?」

リムに通信を送るが、返事が返ってこない。

「あいつ!通信を切ってやがるな!?」

ミゲルは直接伝えるためリムの方へ機体を向かわせようとした時、ジンUがアークエンジェルのミサイルの直撃を受け爆発した。

しかし、大型ミサイルを放つ直前だったのか、ミサイルがあらぬ方向に発射され一発はジムキャノンUと戦闘していたジンUに
もう一発は、コロニーのセンターシャフトに命中しシャフトを破壊した。

「まずい!!」

「ヤバイ!!キース!キョウスケ!『ストライク』!戻れ!!」

「しまった!シャフトが!!」

ミゲルは全速でリムの方へ向かい、コウは全機に戻るように通信を送り、フラガは自分が招いた上運を呪った。

コロニーの大地が割れ崩壊が始まった。




「なに!?コロニーが割れる!?」

突然の出来事にキョウスケは驚きながらも機体を安定させようとしていた。

「ヤバイ!!キース!キョウスケ!『ストライク』!戻れ!!」

コウの通信を聞き、キョウスケはコウに状況を聞いた。

『なにがあった?(んだ?)』

同時に返事をしたのだろう、キースと声がハモる。

「こっちのジンUにミサイルが飛んできて爆発したんだけど・・・」

「話は後だ!シャフトが破壊されコロニーが割れる!早く戻るんだ!」

「・・・まて、ウラキ少尉。先程『ストライク』と言ったな?誰が操縦している?」

「ああ!そうだ!アレ、キラが乗っているんだった!!」

『何っ!?』

キースの言葉にコウとキョウスケが声を上げる。

「近い俺がキラを拾う!キースとキョウスケは早く帰艦するんだ!」

「了解した。頼むぞ、ウラキ少尉」

「無茶するなよ、コウ」

キョウスケとキースは通信を切ると全速でアークエンジェルへと向かった。




急に大地が割れ、残っていた空気が外に漏れ始め乱気流が発生し機体が安定しなくなってきた。

「何だ!?コロニーが!?」

「・・・シャフトをどちらかが破壊したのね・・・」

戸惑うキラとは対照的にリムは冷静に事態を理解しようとしていた。

その時、ストライクの後ろに大穴が開き空気ごと外に吸い出されそうになる。

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

キラは悲鳴を上げ、バーニアを噴射するが気流にのまれそのまま宇宙へ引きずり込まれていく。

「キラ君!!」

リムが機体を寄せようとするが、乱気流にのまれ機体を動かせず距離が離れていく。

その時、リムにめがけて大きな大地の塊が飛んできた。

「な!?機体が・・・動かない・・・!?」

回避が出来ずにこのまま激突すると思い目を閉じたが、突如機体に衝撃が走り弾き飛ばされる。

「・・・大・・・丈夫か・・・?リ・・・ム・・・」

さっきまで自分がいた所にミゲルのジンがあるのを見てリムは声を上げた。

「ミ・・・ミゲル君・・・ちょ・・・大丈夫かじゃないでしょう!?あなたの方がひどい事になってるわよ!早く脱出を!」

「そう・・・したいが・・・ハッチが開かない・・・それに、腹・・・抉られてな・・・もう・・・もたない・・・俺に・・・構わず脱出しろ」

「・・・・わかったわ」

あっさりした返事にミゲルは薄く笑みを浮かべる。

「はっ・・・こう・・・いう時は・・・ちょっとは・・・反論・・・するもん・・・だぞ・・・」

「反論したって、聞かないでしょ?」

「確か・・・にな・・・」

それを、最後にミゲルから通信が来る事は無かった。

「バイバイ・・・ミゲル君・・・」

リムは呟くとその場から飛び去っていった。




「キラ!どこだ!!」

コウは、最後にストライクを見た場所に向かいながらキラに呼びかけていた。

乱気流の中上安定な機体を操作しながら探していると、前からジンUが飛んできたのが見えた。

「くっ、こんな時に!」

コウが戦闘態勢に入るのより早く、一般回線で通信が入ってきた。

「戦う気はないわ・・・ストライクはこの先の大穴、半壊したジンが漂ってる所から外に吸い出されたわ」

敵に教えられ、コウは驚いた。

「なんで、教えてくれるんだ・・・?」

「信じる信じないは任せるけど・・・・」

コウの質問に答えずにジンUはそのまま飛び去っていく。

コウは追撃をしようとはせずに教えられた場所に向かい、大穴に飛び込んでいった。




第四話に続く




あとがき

作:どうも、コワレ1号です。
さて、これにてヘリオポリス編は終わりになります。次は原作ではルナツー・・・もといアルテミスへと向かう事になりますが
この作品では違う所に向かう事になります。
・・・また無茶な設定になるため、あちらこちらの反応が怖いですが・・・
キラがMSに乗った経緯はいかかでしたでしょうか?
出来ればブライト艦長に『甘ったれるな!殴って何故悪いか!貴様はいいそうやって愚痴を・・・』
なんて事を言ってもらいたかったのですが、あえてやらずにタスクにハッパをかけてもらいました。
・・・新参戦のガンダムの主人公ってMSに乗せるまでが大変ですね

イネス先生のなぜなにスパロボ

イ:さて、今回はメカがあまりないんで人物のみになるわね。

リムって格闘戦は強いの?

イ:格闘戦ではアカデミー史上最強と呼ばれていたらしいわ。
初の格闘訓練で教官を15秒で叩きのめし、卒業直前にはアスラン達4人がかりでも1分持たなかったという伝説を残したそうよ。

イ:さて、今回はこれくらいね?では。





管理人の感想
コワレ1号さんからの投稿です。
キラがストライクに乗る理由・・・
確かに、新参者はその手の理由付けに悩みますよねぇ(苦笑)
ま、大概は巻き込まれて止むを得ずとゆうパターンなんですが。
それにしても、ロンドベル隊の活躍は当然として、そこそこ活躍したキラ。
全然活躍の場も無く、出番を全てリムに取られたアスランが哀れなり(笑)