第七話 強襲、ロンデニオン 





プラント本国に着いたヴェサリウスから、クルーゼ、アスラン、リムは降りると軍事ステーションを離れるシャトルへと乗り込んだ。

機内には1人先客がおり、その人物の顔を見た途端アスランは息をのんだ。

クルーゼは驚きを見せずに微笑むが、リムは苦い顔をしながら相手に聞こえる位の声を漏らした。

「げっ・・・!」

「・・・リム、失礼だぞ。ご同道させていただきます、ザラ国防委員長閣下」

「ふん、相変わらず礼儀がなっておらんな。クルーゼ、挨拶は無用だ。私はこのシャトルには乗っていない事になっている」

リムに一瞥を向けてからクルーゼに返すと、念を押すようにアスランの方を見つめた。

それを見てアスランはぎこちなく頭を下げる。

「はい・・・お久しぶりです、父上・・・」

久々に再会した親子とは思えないよそよそしいやり取りに、アスランは寂しさのようなものを感じた。

「・・・傍から聞いてると、親子の会話とは思えないわね」

2人の様子を見て、リムがアスランの父、パトリックに向かって冷たく言い放つ。

昔からリムはパトリックを嫌っており、極力顔を会わせないようにするか、会っても敬語等を使わずに辛辣な言葉を発していた。

「・・・目上の人間に対する口の利き方を教わった事がないらしいな。まぁ、あんな『父親』が教えるとは思わないが・・・」

パトリックがリムを睨みながら言い捨てると、リムの眼つきが鋭くなるのをアスランは見た。

「ころ「リム! 先に座っていてくれ! すまない・・・堪えてくれ、いつか父もわかってくれるから・・・

とっさにリムの腕を掴み、アスランは耳元で小声で詫びた。

「・・・・・・・・・・わかったわ」

歯を食いしばりながら、リムは了承すると一番後方の席に腰を下ろした。

「・・・奴等がそれほど高性能なMSを開発した、という所にある・・・アスラン! 聞いているのか!?」

「はい!? すみません!!」

クルーゼと話していたパトリックから急に話を振られ、アスランは驚き聞き返す。

「あんな娘の事など構うな! いいか、お前のレポートからパイロットの部分は削除しておいたぞ。
重要なのはMSとロンド・ベルの機体だけであって、パイロットなどどうでもいい」

父の言葉にアスランは、はっとするが、その彼を父は冷たい目で一瞥した。

「あちらに残した機体のパイロットもコーディネーターだったなど。そんな報告は穏健派に無駄な反論をさせるだけだ」

「君も自分の友人が、連邦に寝返った者として報告するのは辛かろう?」

クルーゼも優しい口調で言い足す。

(・・・まるで、キラが罪人になったみたいな言い方じゃないか・・・)

アスランの胸がちくりと痛んだ。

「ロンド・ベルでもない、ナチュラルが操縦してもあの性能を発揮するMSを奴等は開発した。そういうことだぞ。わかるな、アスラン」

「・・・はい。失礼します・・・」

アスランは頷くと、踵を返しリムの方へと歩み寄る。

「・・・立場上、都合の悪い事は、発表の前に握り潰す・・・か。連邦を嫌っているくせに、やっている事は連中と大差ないわね」

話を聞いていたリムが腕を組みながら言い捨てる。

「話の流れから、貴方がMSについての証言、私がヘリオポリス崩壊の証言をさせるつもりらしいわね・・・気に入らないわ」

「・・・しょうがないさ。事実上、父上が我々の上司にあたる立場で、そこの決定なんだから」

アスランが自分に言い聞かせるように言った時、不意にキラの言葉が頭に浮かんだ。

『君こそ、なんでザフトなんかに! 戦争は嫌だって君も言ってたじゃないか!!』

戦争なんて自分も嫌だと思っていたが、今は自らが銃を取る身だ。

キラが責めるのも無理はない。キラは友達を守る為に戦うと言った。

自分には友達と呼べる存在がいるのだろうか? キラ以外に・・・

「・・・また、キラ君の事考えてたの?」

「えっ?」

リムに話しかけられ、アスランは驚く。

「・・・気にしていても仕方ないわよ? それに、彼がいる戦艦にはロンド・ベルのメンバーが何人もいるんだから、下手な所にいるよりは安全よ」

「・・・そうだな・・・」

アスランの表情が晴れていないのを見て、リムは肩をすくませる。

(・・・まるで、1人で旅行にいった弟を心配している兄って感じね・・・『あの子』の事もそれ位思って欲しいものだわ・・・)




「オイ、本当にグレンダイザーはあの中にいるのか?」

マザーバーンのブリッジにいるゴーマンは、コロニーを見ながら手近にいた兵士に話しかけた。

「はっ、偵察機があの中に入っていく所を確認しています」

兵士の言葉を聞きながらゴーマンは面白くない顔をする。

(フリード星で討ち損ねたグレンダイザーをこの手で討てるのはいいが、この情報がガンダルからというのが気に食わん・・・)

自分が嫌っており、相手も自分を嫌っているはずなのに情報を提示した事に引っ掛かりを感じていた。

(何か、裏があるな・・・)

ゴーマンがそう考えた時、兵士から攻撃準備が整ったという報告が届く。

「攻撃を開始しろ。いいか、グレンダイザーがいようがいまいが関係なしに全てを破壊しろ!」

指示を出した時、コロニーから一つの機体が飛び出してきたのが見えた。

「来たな、グレンダイザー。デューク・フリード!!」




アークエンジェルが出港するよりも早く、グレンダイザーはコロニーから飛び出した。

「シュート、イン! グレンダイザー、ゴー!!」

スペンザーから分離をするとベガ星宇宙軍の前に立ちふさがる。

「とうとう、侵略を開始したか! ベガ星宇宙軍!!」

『久しぶりだな! デューク・フリード!!』

「その声は・・・ゴーマン大尉か!?」

ベガ大王の親衛隊々長の声を聞き、デュークは驚いた。

「貴様が居るという事は・・・まさか! ベガ大王も!?」

『ほう、察しがいいな。 前は貴様を取り逃がしたが、今度はそうもいかんぞ! 全機、攻撃を開始しろ!!』

「それはこちらのセリフだ! ボクをあの時と同じだとは思うな!!」

デュークはそう叫び、グレンダイザーを円盤獣達の中へと突っ込ませた。

「ハンドビーム!!」

攻撃を仕掛けようとしていた、何機かのミニフォーをハンドビームで撃墜する。

爆炎をつっきり、3機の円盤獣ギルギルがレーザーを発射してくる。

「くっ! スクリュークラッシャーパンチ!!」

被弾しながらも、スクリュークラッシャーパンチを撃つが2機を破壊できただけで、1機がそのまま突っ込んで来る。

ギルギルは体当たりをし、グレンダイザーを吹っ飛ばした。

体勢を立て直している所を、後ろから別のギルギルが接近し、クローで斬りつけて来た。

「まだ、やられはせんぞ! ダブルハーケン!!」

ダブルハーケンを両手にとり、今攻撃してきたギルギルを斬り裂いた。

背後からミニフォーがビームバルカンを撃ちながら接近して来たが、

「アイアンカッター!!」

突然、飛んできたアイアンカッターに切り裂かれ爆発した。

「すまない、甲児君」

「無茶しすぎだぜ? デューク」

マジンガーZの後ろから、アークエンジェルやロンデニオンから発進されたMSが見える。

『甲児くん! まだ、発進命令は出してないのよ!?』

マリューの叱責の声が甲児だけでなく、デュークにも聞こえてきた。

「細かい事は気にしなさんなって!」

『こ、細かいって・・・』

甲児の発言にマリューは目眩をおぼえた。

「いつも・・・こんな感じなんですか・・・?」

「ああ、まぁね・・・ブライトなら後で修正をするが・・・」

キラの小声の質問にアムロが答える。

「・・・艦長、MS隊の発進を」

ナタルが冷静な声で指示を促してくる。

「えっ? ええ、そうね。MS隊、全機発進!」

「全機発進と同時に、グレンダイザー等を援護する! バリアント、ゴットフリート発射用意!!」

マリューの命令に次いで、ナタルも指示を出す。



「ストライクはソードで行くぞー!!」

「でも師匠、エールの方が機動性が・・・」

「機動性も大事だが、火力も高くなきゃあの手の敵には通用しないんだよ。かといって、ランチャーだと接近されたら終わりだしな」

アストナージの指示を聞いて、マードックは『なるほど』という様に頷き全員に指示を出す。

それを聞いていたタスクが近くにいた整備班に話しかけた。

「・・・あの、おっさ・・・マードックさんが今、師匠って・・・」

「ん? ああ、軍曹が初めて配属された整備班を指揮ってたのが、あの人だったんだとさ」

「へ〜、ロンド・ベルの整備班のヌシが最初の上司で師匠か〜」

タスクが何か納得した様に、マードックを見る。

(道理で腕が良いと思ったら、そういう事か・・・マオ社でもあんなに腕が立つ人はいなかったからな・・・)

「ほら、そこ! ボケッとしてないで、修理パーツの用意をしておけ! 何時機体が被弾して戻ってくるかわからないんだぞ!!」

『は、はい!!』

アストナージに注意されると、タスクと整備班達は慌しく動き始めた。




「奇妙な戦艦だな? あれがこの星の正規軍の兵器か・・・」

ゴーマンはアークエンジェルやMSを見ながら呟いた。

「しかし、統一性のない部隊だな・・・? 寄せ集めただけの集団か? こんな未開の惑星でならありえるな」

低く笑いながら、ゴーマンは戦況を見ていたが、兵士の悲鳴じみた声でその考えを捨て去る事になる。

「ゴ、ゴーマン大尉! 初めに出撃した円盤獣の半数が落とされました!!」

「なに!?」




ミニフォー3機がアムロのリ・ガズィを狙い、ベガトロンビーム、ビームバルカンを撃ってくるが、あっさりと回避をする。

「そこっ!!」

アムロは攻撃してきたミニフォー達に、ビームキャノンを続けざま3発放つ。

ミニフォーは回避運動をとるが、かわせずにビームに貫かれる。

ギルギルがΖガンダムにレーザーを放つが、あっさりと回避され、回避しながら撃たれたビームライフルに貫かれ爆発する。

「お〜お、カッコいいね〜。こっちも負けていらんないな」

アムロ達の動きに感心しながら、フラガはガンバレルを展開させて2機のミニフォーを破壊する。

ストライクが対艦刀を振りかざし、ギルギルを二つに断つと後ろから別のギルギルが襲い掛かって来る。

「わお! いい位置じゃない?」

ヴァイスリッターのオクスタンランチャーがギルギルを吹き飛ばし、吹き飛んだ所にガンダムMK-Uのバズーカが直撃した。

「エクセレンさん、フォウさん、すみません!」

「いえいえ、美少年を助けるのは当然の事よん」

「気をつけてね」

2人はキラに通信を返すと、散開して攻撃を再開していった。

アルトに向かい、ギルギルが体当たりをしてくるが、キョウスケは回避しようとせずに機体を接近させる。

「ステーク! いけぇ!!」

カウンターでステークが叩き込まれ、ギルギルが吹き飛ばされ爆発する。

「よし、敵の数は残り半数だ。一気に押し込むぞ!」

アムロが全機に指示を出しながら、自分に向かってきたギルギルをメガビームキャノンで叩き落した。




「馬鹿な!? 短時間であれだけいた円盤獣の半数を落すだと!?」

『ゴーマンだがゴーヤだか知らねぇが、俺達を甘く見ていたな!!』

甲児の言葉にゴーマンは歯軋りをすると、新たに指示を出した。

「残っている円盤獣を全部出せ!! グレンダイザーとあの地球のメカを生かして返すな!!」




「正体不明艦から、増援が発進しました!」

少し離れた宙域で待機していたガモフが、マザーバーンからの増援を掴んだ。

「よし! ガモフ全速前進! MS隊発進! いいか? 標的は連邦艦だけだ! 不明艦にはこちらから仕掛けるなよ!?」

『了解!!』

ゼルマンの指示にイザーク達は返すと、ガモフから出撃していった。




「!? 敵戦艦補足! 照合・・・ザフト、ナスカ級です!!」

「くっ! こんな時に・・・!」

サイの報告にナタルが苦い顔をする。

「ベガ星宇宙軍は火力の高い機体で対応して! アークエンジェルと機動性の高い機体はザフトを!!」

マリューがMS隊に指示を出すと、ナスカ級から大量のミサイルが発射された。

「ミサイル接近!!」

「イーゲルシュテルン起動! 迎撃!!」

ナタルが指示で張られた弾幕が大量のミサイルを叩き落していった。




「ディアッカ、ニコル、お前達は連邦艦を攻撃しろ」

「イザークは?」

「オイオイ、リムが居ないからってサボるつもりか?」

イザークの指示に、ニコルとディアッカが聞き返してくる。

「そんな事するか! お前じゃあるまいし! オレは防衛のMSを相手にする」

イザークは言い返すと、デュエルを先行させた。

イザークの指示は間違えてはいない。

バスターは接近戦を苦手とし、ブリッツは隠密性は高いが正面きっての戦闘には向いてはいないので、
どんな状況でも戦えるデュエルが対MS戦を担当するのがベストなのだ。

「あれは・・・ガンダム!?」

アークエンジェルの防衛をしていたファが、デュエル達を見て驚く。

驚きながらも、メタスのビームガンを連射し迎撃をするが尽く回避され、接近されてしまう。

「は、速い!?」

「もらったー!!」

とっさにビームサーベルを抜き、デュエルのビームサーベルを受け止めるが押され、機体ごと弾き飛ばされてしまう。

「きゃっ!」

「これで、1機目!!」

弾き飛ばされたメタスにトドメを刺すべく、イザークはビームサーベルを振り上げた。

しかし、背後からの敵機をレーダーが捉え警報が鳴り響く。

「やらせるかっ!!」

「くっ!」

背後から放たれたリ・ガズィのビームキャノンをとっさに回避する。

「アムロ少佐!」

「ファ、無理はするな。 カミーユ、ウラキ少尉、他の2機のガンダムを頼む! フォウとファ、キースはアークエンジェルの防衛に!!」

『了解!』

アムロの指示に答えると、アークエンジェルへと向かって行く。

アムロはリ・ガズィを反転させ、デュエルにミサイルを放った。

「なめるな! そんな旧式で!!」

イザークは吼えながらミサイルをかわし、リ・ガズィにビームライフルを放つが、

「あまい!!」

リ・ガズィは機体をバレルロールさせ、ビームライフルを紙一重でかわしながらビームキャノンを放ってくる。

「なっ、なんだと!?」

イザークは驚きながらも、なんとかシールドでビームキャノンを防ぎビームライフルを連射するが、ナチュラルとは思えない、
コーディネーターでも出来ない回避能力で尽く回避される。

「あの動き・・・ま、まさか・・・」

最悪とも言える事実がイザークの中で拡大していく。

「ア・・・アムロ・レイか・・・?」



「ディアッカ、こっちにMSが2機、接近して来ます」

「ちっ! この部隊に足止めが1機じゃ足りないか!!」

ニコルの知らせを聞き、バスターを接近中のMSの方へと向ける。

「・・・来ます!!」

ニコルの声を合図に、バスターとブリッツが散開する。

バスターに向かってくるMSに高インパルス砲を放つが、それは高速で回避しながらこちらに接近してきた。

「あれは・・・ウェイブライダー!? って事は、Ζガンダム!?」

半ば悲鳴のような声をディアッカは上げると、接近をさせまいと両肩のミサイルランチャーを放つ。

「見える・・・そこ!!」

しかし、カミーユはアムロと同等の動きで回避すると、ビームガンを撃ち返す。

「くそっ、乗ってんのまさかニュータイプじゃないだろうな!?」

毒つきながらも、ビームガンを回避するが方向を読んでいたのか、ウェブライダーから変形したΖガンダムが近くにいた。

「げっ! まずい!!」

「直撃させる!!」

咄嗟に回避運動をとるが、回避できずグレネードランチャーが胴体に直撃した。



「ディアッカ!!」

ニコルはバスターの方を見て叫び援護に向かおうとするが、ステイメンがビームサーベルを抜き放ち立ち塞がる。

「このぉ!!」

ブリッツはビームライフルを連射し、道を開こうとするがステイメンは回避しながら接近してくる。

「流石、ロンド・ベル隊ですね・・・」

ニコルは感心した様に呟くと、ビームサーベルを抜き放ち接近戦を仕掛ける。

ステイメンの隙を作ろうと、接近しながらグレイプニールを発射する。

「!? あれも武器だったのか!!」

コウは慌てて回避運動をとるが、回避する位置を読んでいたブリッツが隙を狙い斬りかかってくる。

「たぁー!!」

「くっ!!」

とっさにシールドで攻撃を防ぐが、前回のシグーと違い今回はビームサーベルだ。

長時間接触していると、なんのコーティングもされていないシールドは融解していまう。

コウの判断は早かった。

ビームサーベルが接触し、シールドの表面が融解を始めると、とっさにシールドをパージし後ろに下がる。

ステイメンから押し返される力がなくなり、ブリッツの機体が前に流される。

「!? しまった!!」

「てやぁー!!」

そこを狙い、ステイメンのビームサーベルがブリッツに迫る。

回避しようとニコルはバーニアを吹かすが、

(間に合わない!?)

そう思った瞬間、ステイメンがいきなり攻撃を止め上に上昇した。

ニコルが不思議に思った次の瞬間、目の前にミサイルが迫ってきた。

「!?」

回避できずに直撃するが、PS装甲のおかげでさしたるダメージはなかった。

「くっ! どこから・・・?」

ミサイルが飛んできた方向を見ると、円盤獣ゴスゴスがいた。

「あの、不明艦からの機体ですか・・・ロンド・ベルを中心に仕掛けているみたいですが、
こちらを見逃してくれる訳ではないか・・・」

イザーク達の方を見ると、彼等もロンド・ベルに攻撃を仕掛けている円盤獣の攻撃に巻き込まれていた。

「イザーク、ディアッカ、分散していては不利です!」

「・・・確かにそうだな」

「同感。しかし、弱気だなイザーク?」

「・・・アムロ・レイがいる」

『!?』

イザークの言葉にディアッカとニコルが衝撃を受ける。

「本当・・・ですか・・・?」

「・・・よく無事だったな」

「運良く、不明機からの横槍があってな。アムロ・レイからの攻撃が分散した・・・それでも回避に専念するしかできなかった・・・流石だな」

イザークの発言に、ディアッカとニコルは危機感を覚えた。

(イザークがここまで言うなんて・・・)

2人はそう思ったが、

「それでこそ、オレの目標でもある! いずれオレが倒す!!」

「そっちですか!?」

「そういや、お前アムロ・レイのサインを大事に部屋に飾っていたよな・・・」

ニコルとディアッカが半ば呆れたように言う。

「いずれだ。今は無理な事ぐらいはわかる。とりあえず、一旦合流して再度、連邦艦に攻撃を仕掛けるぞ」




ゴスゴスから放たれたベガトロン光線がマジンガーZに直撃する。

「おっと! いい攻撃じゃねぇか!!」

もし直撃していたのがMSだったら、完全に破壊されていたであろうが、超合金Zを貫く事はできなかった。

「こいつはお返しだぜ! ロケットパーンチ!!」

ロケットパンチはゴスゴスに命中するが、破壊は出来ずに弾き飛ばしただけだった。

「くっ! 頑丈だな、固さだけなら戦闘獣以上だぜ」

ゴスゴスを見て甲児が呻く。

一撃で破壊されないと解ると3機のゴスゴスが一斉にマジンガーZに向かって行く。

「甲児君!!」

デュークが援護に向かおうとするが、ゴスゴスとギルギルに阻まれてしまう。

「集まってきたな・・・マジンガー、パワー全開だ!! ブレストファイヤー!!」

甲児は待っていたかのように、マジンパワーをオンにしゴスゴス達にブレストファイヤーを叩き込む。

出力が上がっているマジンガーZのブレストファイヤーに耐え切れず、ゴスゴス達は破壊される。

「わお! 意外とさる師なのね」

「策士・・・だ。力押しだけで2つの大戦を戦い抜けたはずが無いからな」

その光景を見ていたエクセレンの言葉に、キョウスケはつっこみを入れる。

2人に向かってゴスゴスが4機、攻撃を仕掛けてくる。

2機が距離を取りミサイルを放ち、残る2機がランサーを構え突っ込んで来る。

「エクセレン、後方の2機は任せたぞ・・・」

「はいはい。私も尽くすタイプよね」

キョウスケはアルトを突撃させ、エクセレンはヴァイスをその場で待機させ、オクスタンランチャーを用意したまま3連ビームキャノンを放つ。

ヴァイスの放ったビームは、ランサーを構えていたゴスゴス2機に命中しその攻撃速度を少し落とさせた。

後方のゴスゴスが放ったミサイルは、全てアルトに命中するが、

「装甲の厚さがとりえでな・・・」

大した損傷もなく速度の落ちたゴスゴス達に肉迫した。

「どんな装甲だろうと・・・打ち貫くのみ・・・!」

出会い頭にゴスゴスはステークを叩き込まれ、後ろに吹き飛ばされると爆発した。

その瞬間、エクセレンは用意していたオクスタンランチャーを構えると、

「オクスタンランチャー、Eモード! いざ!!」

爆炎で後方のゴスゴスからはアルトとヴァイスは見えない。

しかし、エクセレンは爆炎が上がる直前にゴスゴスの位置を確認しているので場所はわかっている。

そして、爆炎を切り裂いて飛んできた高出力のビームにゴスゴスは貫かれた。

ここで、キョウスケ達が予想していなかった事が起こる。

後方のゴスゴス1機と他の何機かの円盤獣がアルト達の方に向かわずに、コロニーの方へを向かっていた。

「!? あの機体の狙いは、初めからコロニーか!?」

キョウスケが反転し、追おうとするがそこを狙ってゴスゴスがランサーを連続で繰り出してきた。

とっさに回避しようとするが、回避しきれずに3、4発食らってしまう。

「ちっ! ひらりとはいかんな」

このまま後ろを向けたら串刺しにされると判断したキョウスケは、アルトをゴスゴスに突撃させた。

ゴスゴスはランサーを繰り出すが、アルトはそれを紙一重でかわし、そのまま脇で掴んだ。

「覚悟してもらおう・・・」

ランサーを離さず、身動きがとれないゴスゴスにアルトのヒートホーンが突き刺さり、そのまま下に切り裂いた。

「この距離では、アルトは追いつけんか・・・エクセレン!」

「ヴァイスちゃんでも、追いつけるかしらね・・・」

エクセレンが急いで追いつこうとするが、目の前にギルギル、ゴスゴスが立ち塞がった。

「あ〜ん、もう! 寄れば斬るわよ!!」

プラズマカッターを抜き放ち、突破口を開こうとするが、ヴァイスのプラズマカッターの出力では簡単に円盤獣を破壊できなかった。

「誰か、コロニーの防衛に!!」

エクセレンが全機に呼びかける。

「今、俺と坊主が向かっている! それまでロンド・ベルが踏ん張ってもらうしかない!!」

フラガは通信を返すと、ストライクと共にコロニーへ向かっていった。




「ビーチャ! 敵がいっぱい来る!!」

モンドの悲鳴のような知らせがビーチャの耳に入ってくる。

「解ってるよ! エル、オレが合図したら撃つんだぞ!」

「まっかせてよ!」

「張り切ってるわね」

「・・・なんで、年下のビーチャが仕切ってるんだ・・・」

ビーチャの指示にエルとルーは乗り気であったが、カツは不平を漏らしていた。

(ボクの方が年は上なんだぞ・・・なんで、ブライトさんはボクに任せてくれないんだ・・・)

「・・・ん! カツさん! 撃って!!」

「え!?」

ルーの呼びかけに、カツは気付くが遅かった。

カツの所為で撃ち漏らした2機が、ビーチャ達を突破してコロニーへと近づく。

ビーチャの作戦は、敵がメガライダーの射程に入ると同時に百式、ガンダムMK-U、リ・ガズィ、ジェガンで一斉射撃をし
接近してくる敵機を破壊、又は敵機を接近させずにフラガ達を待つ作戦だったが、撃たなかったカツの所から接近を許してしまった。

「しまった! コロニーが!!」

ルーが追うが、他の円盤獣に邪魔され追う事が出来なかった。

その時、コロニーから1機のグルンガストが飛び出してきた。

「ゲットセット! インフェリア・ジャベリン!!」

飛び出してきたグルンガストは薙刀を抜き放つと、横になぎ払いコロニーに接近してきた円盤獣達を破壊した。

「ここから先には行かせないぞ!!」

ブリットは薙刀を脇に構え、円盤獣達の前に立ち塞がった。

「おいしい所を持って行ったわね〜。クスハちゃんにも見せて上げたいわ」

「ちょ、エクセレン少尉、からかわないでください!!」

エクセレンの言葉にブリットは赤面する。

その間にも多数の円盤獣がグルンガストに向かってくる。

3機のギルギルが一斉にレーザーを放ってくるが、ブリットは構わずギルギル達に接近する。

「虎龍王程じゃないけど、このグルンガスト改にも念動フィールドがあるんだよ!!」

ブリットが吼えた瞬間、目の前に念動フィールドが展開されレーザーを防ぎきった。

そのまま、3機のギルギルに接近し、

「切り裂け! インフェリア・ジャベリン!!」

薙刀を横に振るい、2機のギルギルを破壊した。

残った1機が体当たりをしてきたが、ブリットは薙刀をしまい腰に装着されているトンファーを手にする。

「叩き潰す! ソニック・トンファー!!」

体当たりしてきたギルギルに、左右のトンファーによる超高速の打撃が叩き込まれ破壊される。

3機を破壊したばかりだと言うのに、グルンガスト改に新たな円盤獣が襲い掛かってくる。

「くそ! まだいるのか!」

ブリットが呻いた瞬間、襲い掛かって来たギルギルが背後から飛んできたビームブーメランによって破壊された。

「間に合った!!」

キラはそう言いながら、対艦刀を構えグルンガスト改の隣に並んだ。

「えっと、キラ・ヤマト君だっけ? フラガ大尉は?」

「キラ、でいいですよ。フラガ大尉はあっちの援護をしています」

キラに促されてビーチャ達の方を見ると、ゼロが百式の援護をしている所だった。



ゴスゴスは百式のビームライフルをかわし、ランサーを突き出そうとする。

「うわーっ!」

ビーチャは悲鳴を上げ回避しようとするが、距離が近いためかかわしきれない。

もう駄目かと思い、目を瞑ろうとした時ゴスゴスが横に吹き飛ばされた。

「悲鳴を上げている場合か! 今の内にトドメをさせ!!」

フラガに激を飛ばされビーチャは我に帰ると、ビームサーベルでゴスゴスを貫いた。

その間にフラガはエルのガンダムMK-Uを攻撃していたギルギルをビーム砲で叩き落す。

続けざまガンバレルを展開し、今度はルーとカツの援護へとまわる。

「こっちはオレがフォローする! 坊主、コロニーに1機も入れるんじゃないぞ!!」



フラガの言葉を聞きながら、キラは対艦刀を振り上げゴスゴスに斬りかかる。

ゴスゴスはランサーで受け止めようとするが、対艦刀はランサーごとゴスゴスを二つに断つ。

その隙にギルギルが体当たりをしてきたが、返す刀で叩き斬るとその間に2機のギルギルに突破されるが、

「ブリットさん!」

「任せろ! インフェリア・ジャベリン!!」

すぐ背後で構えていたグルンガスト改が、薙刀を横薙ぎに振るい1機を破壊する。

もう1機は離れていたので被害を受けずにコロニーへと近づくが、

「逃がすか!!」

ブリットが吼えながら薙刀を投てきの様に構えギルギルへとなげつける。

ギルギルは背後から薙刀に貫かれ爆発した。

「コロニーへの別働隊はこれで全部か」

「ええ。フラガ大尉の方も終わったみたいです」

キラがフラガの方を見ると、最後のゴスゴスがゼロのガンバレルとビーム砲の集中砲火によって破壊される所だった。




エクセレンはギルギルの放ったレーザーをかわしながら、3連ビームキャノンを撃ち返す。

「蝶のように舞い、蜂のように刺すってかんじ?」

調子に乗るエクセレンの背後からゴスゴスが接近してくるが、

「ボヤっとするな! エクセレン!!」

キョウスケが間に入り、ゴスゴスに狙いを定める。

「これで決めにする・・・! クレイモア! 抜けられると思うな!!」

接近して来ていたゴスゴスは、ベアリング弾の雨の中に突っ込む事になり耐え切れずに爆発する。

「サンキュ、こっちも決めるわよ〜・・・!」

オクスタンランチャーを構え、ギルギルに狙いをつける。

ギルギルは回避行動を取ろうとするが、エクセレンにとっては大して意味がある動きではなかった。

「オクスタンランチャーで決めちゃうわよ!」

ギルギルの回避パターンを読み放った高出力のビームは、あっさりとギルギルを貫いた。




イザーク達は合流してから再度アークエンジェルに攻撃を仕掛けていたが、アムロ達相手に防戦がちになっていた。

「このっ!」

バスターがリ・ガズィを狙い、散弾を放つがあっさり回避されビームキャノンを撃ち返された。

「やらせるかっ!!」

デュエルがバスターの前に出て、シールドでビームを防ぎビームライフルを撃つ。

「遅い!!」

アムロが回避すると、別の角度にいたΖガンダムがハイパー・メガ・ランチャーを構えていた。

「!! 2人とも、散ってください!!」

「いけぇー!!」

ニコルの声を聞き、イザークとディアッカは慌ててその場から離れた瞬間、高出力のビームが通り過ぎ、
アークエンジェルを攻撃していたギルギル2機を貫いていた。

「くそ!!」

ディアッカがΖガンダムに高インパルス砲を撃ち返すが、それはあっさりと回避されビームライフルを撃ち返される。

なんとか回避をするが、それを読んでいたアムロが発射したミサイルが直撃した。

「だぁー!!」

その直後、ブリッツがリ・ガズィに斬りかかるがアムロはあっさりと回避する。

「今です! イザーク!!」

「もらったー!!」

ニコルの合図で、アムロが回避した所にイザークがビームライフルを放つ。

いくらニュータイプでもかわせるタイミングでは無かったが、アムロは機体を横に弾き飛ばすようにして分離、回避した。

「なんだ!? 今の動きは!?」

「BWS(バックパック・ウエポン・システム)からの分離!? でも、分離時の動きが異常だ!!」

その動きを見てイザークとニコルが驚きの声を上げる。

アムロはブリッツの攻撃を回避した時、ブリッツ達が何を狙っているのかが分かった。

だが、今から回避運動をしても、また分離をしても間に合わないと踏むとリ・ガズィ本体の足で、BWSをいつでも蹴り飛ばせるように構えていたのだ。

そして、デュエルのビームライフルが放たれた瞬間に蹴り飛ばし、慣性の法則によりBWSと本体が弾き飛ぶように分離して見せたのだ。

「くそっ! これだけ手を込んでも落せないのか!? ディアッカ! 手を貸せ!!」

「無茶言うな! こっちはΖガンダム相手だけで手一杯だ!!」

ビームライフルを連射しながらイザークはバスターの方を見ると、Ζガンダムのビームサーベルを回避しながらミサイルで反撃する所が見えた。

「なにかの冗談だと思いたいですね・・・別の敵と戦いながらの相手にクルーゼ隊が押されているなんて・・・」

ニコルはバスターに攻撃しながらも、円盤獣への攻撃を行っているΖガンダムや、こちらの攻撃を回避しながらグレネードランチャーで
円盤獣へ攻撃をしているリ・ガズィを見て苦々しく言った。

リ・ガズィは2機のビームライフルを回避しながらもデュエルに接近するとビームサーベルを抜き放った。

「うおおおっ!!」

「この! いくらアムロ・レイ相手でも負けるか!!」

イザークは吼えながらビームサーベルを抜きリ・ガズィの攻撃を受け止め、一度機体を離れさせ再度斬りかかって行く。

「くらえー!!」

「遅い!!」

しかし、その一撃をアムロは機体の半身をずらすだけで回避するとビームサーベルを構えた。

(やられる・・・!?)

その瞬間イザークは死を覚悟したが、

(!? なにかいる!?)

アムロは何かに引っ掛かるとデュエルに攻撃を仕掛けず、後ろに向かってビームサーベルを振り払った。

すると、何もないはずの空間で小規模の爆発が起こりブリッツが姿を現した。

ミラージュコロイドを展開しリ・ガズィの背後から斬りかかろうとしたのだが、アムロが反射的に振るったビームサーベルに右腕を落とされ、
慌ててPS装甲を展開し直したのだ。

「作戦前の心配が当たりましたね・・・いくらミラージュコロイドでもニュータイプの勘は騙せませんか」

ニコルは感心した様に言い、ランサーダートを放ちながら後退する。

アムロがランサーダートを回避しているうちにイザークもリ・ガズィから距離を取り、そこにΖガンダムからなんとか逃げ切ったバスターが合流する。

「ニコル、まだ戦えるか?」

「・・・厳しいですね、機体の損傷もありますがバッテリーが・・・」

「ディアッカ、そっちはどうだ?」

「こっちもバッテリーがヤバイ・・・これに、戦艦の防衛に回ったステイメンが戻ってきたらマズイぞ・・・」

現在の各機の状態とディアッカの言葉を聞いたちょうどその時、ガモフからの撤退信号が上がった。




「え、円盤獣の9割が撃墜されました!!」

「なんだと!? なんなんだこの部隊は!?」

兵士の報告を聞いて、ゴーマンは信じられないという表情になる。

搭載していた円盤獣の数は決して少なくは無い。

未開惑星の軍隊ならあっさり全滅できるだけの数はあったはずだ。

しかし、その数はそう長くない時間の間に殆ど落とされた。

そして、ゴーマンは何かに気付いた様にはっとする。

「グレンダイザーはどこだ!?」

その言葉に兵士達は気付きモニターを見るが、グレンダイザーとマジンガーZの姿がなかった。

その直後、兵士の悲鳴のような報告が入ってくる。

「いました! ま、真下です!!」

「なに!?」

直後、マザーバーンに衝撃が襲った。




「スクリュークラッシャー!」「ロケット!」『パーンチ!!』

同時に放たれたパンチがマザーバーンの砲台を貫く。

「キョウスケ達に気を取られすぎたな!」

甲児は砲台を破壊しながら言い放つ。

「おのれ! オレをコケにしおって! あの地球メカを破壊しろ!!」

ムキになったゴーマンがマジンガーZに攻撃を集中させる指示を出すが、

「こちらを忘れているぞ! スペースサンダー!!」

スペースサンダーで艦の一部が破壊される。

「くっ! おのれ・・・!」

歯噛みするゴーマンに次々と被害報告が入ってくる。

「ベガトロンビーム砲が半分破壊されました! 機関部出力が下がっています!!」

「くそ!! 撤退だ! 急げ!!」

苦い顔をしながら撤退指示を出すが、

「逃がすかっ! いくぞ甲児君!!」

「おう! やるぜデューク!!」

間髪いれずに、グレンダイザーとマジンガーZが一斉に攻撃を仕掛ける。

「反重力ストーム!!」

「ブレストファイヤー!!」

2機の攻撃が直撃するが、マザーバーンは大破はしたものの撃沈はしなかった。

「オレは運がいいらしいな・・・機関最大! 基地まで着ければいい、この場を離れる事を優先しろ!!」

指示通りに兵士達は機関を無理矢理全開にし、マザーバーンは戦闘宙域を離れ始めた。

(ガンダルの奴め・・・オレを様子見に使いやがったな・・・!!)

ゴーマンはガンダルが情報を持ってきた真意に気付き怒りに震えた。




マザーバーンの撤退はガモフの方でも察知していた。

「不明艦、撤退していきます!」

「そうか・・・撤退信号を放て! MS隊を収容後、機関最大、この宙域を離れるぞ!」

ゼルマンの指示を受け、1人のブリッジ員が疑問の声を上げた。

「何故です? まだMS隊が健在ですし、艦を前進させれば・・・」

「戦略上の敗北が決定したのだ。今回の戦闘は第3勢力の存在、そして乱戦に持ち込むという大前提があったから仕掛けたものだ。
だが、第3勢力は撤退を開始した。このまま我々だけで戦闘を続けたとしたら、ロンド・ベルの全戦力が我が方に集中する事になる。
分かったかね? 第3勢力が撤退を開始した時点で我々は負けたのだよ」

その言葉に他のブリッジ員も納得したのか、指示どうりに動き始めた。




「・・・仕方が無い、退くぞ」

「今回は素直だな」

ディアッカのからかい混じりの言葉に何も返さずにデュエルを反転させる。

「ディアッカ、弾幕を!」

「分かってる!!」

ニコルに言われるまでも無く、バスターの全ミサイルを放出、爆発させアークエンジェル達の視界を妨げる。

そして弾幕が晴れた時、3機はかなり離れた所まで移動していた。

「アムロ少佐、追撃しますか?」

カミーユの問いかけに首を振る。

「いや、まだアークエンジェルの方に円盤獣が残っている。ウラキ少尉達だけでは少し大変だろうしな。そちらを優先させよう。
各機、残敵の掃討が終わりしだい帰艦するんだ。」

『了解』

アムロの指示に全機が答えた後、ブリットが通信を繋いで来た

「アムロさん、ちょっといいですか?」

「どうした?」

「カツの事なんですけど、なにか様子が変でした」

「カツが? どういう感じなんだ?」

ブリットは先程の様子をそのまま伝えると、アムロは少し考え込んだ。

「・・・そうか、わかった。エマ中尉かブライトに報告しておく」

「・・・お願いします」

通信を切ると、アムロは一つため息をつき、カミーユに話しかける。

「カミーユ、どう思う?」

「多分、焦っているんでしょうね・・・年下のパイロットが現れては自分をあっさりと超えていく事が今でもありましたけど・・・」

「今回、ブライトの指示でビーチャの指揮する所に配属された事で不満が出たんだろうな・・・」

「ジュドーの様に自分より明らかに実力が上だと思っている年下相手にだったら、自分を言い聞かす事が出来たんでしょうけど・・・」

「カツはビーチャ達を自分より下、もしくは同等の相手だと思っていた様だからな・・・
同等か下だと思っていた人間に、超えていかれる事に焦ってしまった訳か・・・早めに気付かせないと命に関わるな・・・」

そう言うと、アムロはブライトに通信を繋ぎ、カミーユは残っている円盤獣の掃討を始めた。




「円盤獣、残り2機です」

サイの報告を聞いて、マリューは息をついた。

「艦長、ブライト大佐から通信が入っています」

「正面に回して」

トールの報告に答え回線を開く。

『ご苦労でしたラミアス艦長』

「いえ。コロニーに被害はありませんか?」

『ああ、大丈夫だ。それと、先程月基地と連絡を取り君たちの事を話しておいた。それで、ハルバートン提督が先遣隊を出発させてくれるそうだ。
途中で合流して月基地へ向かうようにとのことだ』

「途中で合流ですか? 規模はどれ位なんですか?」

ナタルが疑問に思い口を出す。

『第8艦隊の中の1個艦隊が来るらしいが、開戦初期の戦闘でベテランが殆ど戦死してしまったからな・・・構成は新兵が殆どだろう』

「ちょっと待ってください。そんな部隊では1個艦隊でも・・・」

ナタルの心配にブライトも頷き続ける。

『そうだ。だから、出来るだけ早く先遣隊と合流をしてくれ。合流時間は34時間後、ポイントはここだ』

宙域地図上にブライトが送ってきた座標の所が光る。

「早くポイントに着いたら、先遣隊の移動コースを読んでこちらから向かわなければならないわね・・・」

「ええ、出来れば指定されたポイントでの合流は避けたいですし・・・」

マリューの言葉にナタルは頷くと、宙域地図を睨む。

合流ポイントのすぐ近くにチューリップが1つあるからだ。

「円盤獣全滅しました。周辺に敵反応ありません」

「MS隊、帰艦を開始しています」

サイとミリアリアの報告を聞いてマリューは頷き、

「ブライト大佐、我々は最大戦速で合流ポイントに向かいます」

『わかった。気を付けてな』

通信が切れるとマリューが指示を出す。

「全MS隊が帰艦後最大戦速! 合流ポイントへ向かいます!!」




出発していくアークエンジェルを見送り、ブライトは少し昔を思い出していた。

(一年戦争時もこんな事があったな・・・ガンダムを動かしたという少年・・・アムロの二の舞にならなければいいが・・・)

「ブライト艦長、MS隊が帰艦しました」

エマの報告を聞き意識を現代に戻すと、アムロからの報告を思い出した。

「カツをこちらに上げろ。修正と話がある」




評議会会議が終わり、アスランとリムが議場から出た所で呼び止められた。

「アスラン、リム」

声の主に気付いたアスランは反射的に敬礼の姿勢を取るが、リムは軽く会釈をするだけだった。

「クライン議長閣下」

「そう他人行儀な礼をしてくれるな。リムみたいに軽く会釈ぐらいしてくれればいい」

「いえ、これは・・・ええっと」

苦笑混じりに言われて初めて気付き、アスランは慌てて上げていた手を下ろした。

「・・・ひょっとして、毎回言われてる?」

「・・・ああ」

アスランの答えにリムは大きなため息をついた。

「まさかとは思うけど、貴方『あの子』の前でも他人行儀な事してないわよね?」

「してない・・・ちゃんと礼節を持って接してるさ」

リムに半眼で睨まれ、アスランは冷や汗をかきながら答える。

「リム、あまりいじめないでやってくれ。しかし、ようやく君が戻ったかと思えば今度は娘の方が仕事でおらん。
まったく、君らはいつ会う時間が取れるのだろうな・・・」

シーゲルは苦笑いしながらため息をついて見せた。

「はっ・・・申し訳ありません・・・」

また反射的に頭を下げると、シーゲルはまた笑う。

「いや、私に謝れてもな・・・」

「そうそう、それは『あの子』に言う事よ。本当に悪いと思うなら、3日くらい休暇を取って『あの子』のそばに居てあげなさい」

リムに言われて、アスランは言葉に詰まる。

アスランとしてもそうしたいのは山々であるが、父親が許しはしない事くらい容易く考え付いた。

パトリックはアスランのプライベートにまで口出しをし、その行動を制約しているからだ。

だが、もしそんな事をリムに言ったら彼女は確実にパトリックを殺しに行くだろう。

彼女はパトリックを嫌っている、憎んでいると言っても過言ではないのだから。

「・・・戦線が落ち着いたらな」

リムにそんな事をさせない為に、アスランは最もらしい理由を言い問題を先送りにした。

いつか2人が和解してくれると信じて・・・

シーゲルはふと、議場の方に目をやり笑いを消した。

「また、大変な事になりそうだ・・・君の父上の言う事もわかるのだがな・・・」

シーゲルの顔に皺がよる。

シーゲルは穏健派であり、パトリックの急進派とは対極の位置にある。

開戦から約一年、彼等穏健派は急進派に押し切られていた。

それ以前から地球との交渉につく機会が多かった彼だけに、気苦労が多いのだろう。

その時、シーゲルの秘書官が2人の女性を連れて近づいてきた。

「議長、木連から東舞歌少将と各務千沙様がお見えになっています」

秘書官の報告が済むと、舞歌が軽く会釈し話しかけてきた。

「どうも、シーゲル・クライン議長」

「遠路、ご苦労様です舞歌殿。今日は北斗殿・・・枝織殿と一緒ではないのですか?」

「ええ・・・少し用事があって・・・あら? そちらは・・・?」

舞歌がアスランとリムに気付き、シーゲルに問いかける。

「ああ、彼はアスラン・ザラ、彼女はリム・フィア、クルーゼ隊に所属している者達ですよ。
アスラン、リム、こちらは木連の東舞歌少将、各務千沙殿だ。名前位は聞いた事があるだろう?」

シーゲルに紹介されて、アスランとリムは敬礼をする。

「アスラン・ザラって・・・じゃあ、この子が議長の娘さんの婚約者の方ですか」

アスランの名前を聞いて、舞歌は少し驚くと何か面白い玩具を見つけた顔になる。

「アスラン君、詳しい話を聞かせてくれない?」

「・・・舞歌様、会議が先です」

アスランが舞歌の餌食になる前に、千沙が本題に話を戻した。

「おっと、そうでしたな。ではこちらへ、他のメンバー達も待っているでしょう」

千沙の本心や舞歌の悪戯心にも気付かず、シーゲルは2人を連れて行った。

「アスラン、リム。まだ、ここに居てくれたか」

議場から出てきたクルーゼが、アスラン達を見つけ歩み寄ってきた。

「あの新造艦とMSを追う。新たに2つの部隊が私の指揮下に入る。出発は48時間後だぞ。それまでは休暇だ。短いが楽しんでくれ」

「はっ!」

「わかりました」

アスランとリムは敬礼をし、並んでその場を後にする。

「・・・いつまであの『出来損ない』を部隊に置いておくつもりだ、クルーゼ?」

議場から出てきたパトリックが、リムの後ろ姿を見て吐き捨てるように言う。

「と、申しましても、彼女は部隊でも腕の立つパイロットですし、それに白兵戦ならプラントでは最強を誇りますから・・・」

「今手放すのは惜しい、と? ふん、貴様がそう言うのならば今は目を瞑ろう。だが!」

「わかっています。戦争が終わるか、こちらの優位が動かなくなれば国防委員長閣下にお任せします」

クルーゼの言葉に満足したのか、パトリックは一つ頷くとその場から立ち去っていく。

「出来損ない・・・か。・・・フッ

パトリックが発した言葉を、クルーゼは反芻すると小さく笑った。

だが、その笑みは誰にも気付かれず、自嘲気味の笑みであった。



アスランと別れたリムは一人で郊外の墓地に来ていた。

周りには綺麗な数多く墓石が並んでいるが、リムの目の前には何もなく、左右の墓石との間にぽっかりと空白が出来ていた。

その場所にリムは花を置き、小さな声で語り始めた。

「ただいま・・・父さん」

その場所にはリムの父親が眠っている。

昔は墓石もあったのだが、血のバレンタイン後、ある評議会議員の手の者、心無い人々によって破壊されてしまったのだ。

シーゲルは新しい墓石を用意しようとしたが、リムはやんわりとその申し出を断った。

もし、用意してもらってもまた破壊されるのは目に見えているし、何よりも幼馴染の父親の立場を悪くしたくなかった。

この状況下で、親交があったとはいえ、彼女の父親の墓石を最高評議会議長が用意するのはまずい。

「どうせ、明日にはこの花も燃やされるか捨てられるかされるだろうけど、無いよりはマシでしょ?」

事実、今までリムが供えた花は毎回何者かによって処分されている。

彼女は犯人―――実行犯ではなく黒幕―――の目星を付けてはいるがあえて手を出してはいない。

証拠が無いからではなく、これを理由に手を出す事が相手の思う壺だという事に気付いているからだ。

「・・・ミゲル君が死んだわ・・・父さんが『視た』時とは違う最後だったけど・・・」

リムが訥々と今までの事を話し始める。

「私も、父さんみたく『視る』事が出来ればいいんだけど・・・世の中上手くいかないから・・・」

弱く笑うとリムは表情を引き締め、最後にはっきりと言う。

「でも、安心してね? 父さんが『視た』未来は・・・地球とプラント・・・コロニーの共倒れは絶対に阻止してみせるから」




第八話に続く

あとがき

遂に舞歌さん達が登場しました。長かった・・・本当に・・・
今回1番困ったのが、ベガ星の連中です・・・なんせ、グレンダイザーのアニメを私は見た事が無いんですよ・・・
グレートマジンガーまでは近くのレンタル店にあるんですが、グレンダイザーが登場するのが一つも扱っていないという・・・
それで、連中の設定や円盤獣はスパロボインパクト、A、Dからのデータから流用して書いたものです・・・変でしたらすいません。
そしてリムですが、彼女の言葉と生い立ちは徐々に明らかになっていきますが、次回からいきなりとはいきません。
予定では、全て明らかになるのはキラの生い立ちと同じか、少し後になります・・・予定は未定とも言いますが・・・(爆)

イネス先生のなぜなにスパロボ

イ:今回は説明するものが多くていいわね。毎回こうだといいんだけど・・・

「ブリットのグルンガスト改って?」

イ:彼のグルンガスト改は、元々パルマー戦役時にイルム中尉が乗るはずだった物を改修したのよ。詳しい事はこっちね。

機体名:グルンガスト改(Verブリット)
武装:インフェリア・ジャベリン ソニック・トンファー×2 
備考:パーソナルカラーを黒ベースから、黒と白の半々に塗り替えられている。
これはブリットがかつての乗機、虎龍王との誓いを忘れない為の配慮である。
故に、本来装備されていたブーストナックル、ファイナルビーム、計都羅喉剣を外し、虎龍王の武装と類似した物を装備している。
右腕は取り外し可能になっており、プラスパーツでドリルを装着し攻撃する事が出来る。
ちなみに、発案者はロバート博士、カザハラ博士、極東基地所属、SRXチームのスーパーロボットマニアである。
尚、全ての動作がT-LINKシステムを介して行われるので、一定以上の念動力者、サイコドライバーしか扱う事が出来ない。

「イザークは何時の間にアムロのサインを入手していたの?」

イ:第二話でアムロとブライト大佐が前大戦の調査時にプラントに訪れていた事が書いてあったでしょ?
その時、たまたま軍港にいたイザークがアムロに気付いて秘密でサインをしてもらったのよ。
ちなみにこの事は、アスラン達4人と彼の母親しか知らない事よ。

「エマさんはなんで出撃しなかったの?」

イ:エマ中尉だけじゃないわ。ビルギット、イーノ、ケーラも出撃しなかったわよ。
理由は彼女達の機体は、まだ『作業』が終わってないからよ。
なんの?っていうのは今はまだ秘密よ。

 

 

 

 

代理人の感想

だからお前はアホなのだぁっ!

 

甲児くんはデューク・フリードのことを地球名で「大介さん」と呼ぶのだっ!

つーか、彼と親しい地球人で彼を「デューク」と呼ぶ人っていないのですよ。

ここ、試験に出るので覚えて置くように。w

 

だからお前はその2。

ブリッツが右腕落とされたあとランサーダート使ってますが、右腕が落とされた後に右腕に装備した武器が使えるわけがありません(爆)。

(は、まさかサイコミュ!?)

 

 

まぁ、それはさておき。

カツの話はスパロボ的にちょっと良かったですねー。

つーかもう、気の毒なくらい不快指数を上げてくれるキャラなんでこう言うのにはうってつけなんですが・・・・・・不幸?

 

 

>師匠

マードックってアストナージより年下だったのか(爆)。