第十五話 決断




「ガンダル!! 貴様、俺を様子見に使ったな!?」

命からがら月基地に帰還したゴーマンは、基地司令のガンダルに怒鳴りかかった。

「その通りですが、何か?」

「! 貴様・・・!!」

ガンダルのあっさりとした返答に拳を振るわせるゴーマン。

「誤解しないで頂きたい。私はゴーマン大尉だからこそ、あの情報を教えたのですぞ? あの部隊と戦ってみてどう思いましたか?」

ガンダルは冷静に問いかけてくる。

「・・・今まで戦ってきたどの星の連中よりも手強かったが・・・」

ゴーマンの返答に満足した様に頷き、

「でしょうな。あの部隊は、この星最強の部隊ですし、なにより過去にバルマー艦隊、宇宙怪獣等の勢力と戦い、打ち破ってきています。
ゴーマン大尉以外の者が行けば、全滅は必至・・・そう判断したものですから」

「むう・・・」

そこまで言われて、ゴーマンは反論出来ずに声をもらす。

「それに、今回の事はベガ大王様からの指示でもありましたし」

「なに!? 本当か!?」

「そうだ」

ゴーマンに答える様に、背後から声が発せられた。

「無事帰還できて何よりだ、ゴーマン」

「ベガ大王様・・・!」

部屋に入って来たベガ大王に、2人とも頭を下げる。

「様子見の様な真似をさせてすまなんだな。相手が相手だけに、こちらも最大の手で打って出る必要があったものでな」

「はっ・・・! 滅相もございません。しかし、デューク・フリードを討ち果たせませんでした・・・・」

恐縮しながら、ゴーマンは戦果を報告する。

「構わん。今回はあくまで様子見だったのだしな。討てればそれはそれで構わなかったが・・・連中の実力は貴様が予想した通りか?」

ゴーマンに返しながら、ガンダルに問いかける。

「いえ・・・予想よりも少々上回っておりました。まさか、円盤獣が全滅するとは思ってませんでしたので・・・」

「むう・・・伊達にバルマー等を打ち破ってきた訳ではないか・・・・今の我々の戦力で事を構えるのは少々不利、か」

唸りながら、ベガ大王は現在の戦力を計算する。

本星から多少の円盤獣を持って来てはいるが、それも限りがある。

円盤獣等の生産プラントを兼ね、地球侵略の本拠地とも言えるこの基地の建設もまだ終わってはいない。

この状況で他の勢力等に、基地の場所を悟られない為に大事を取って、目と鼻の先にある月面基地への攻撃も行っていないのだ。

「それに、ペンタゴナのポセイダルも地球に宣戦布告しておるしな・・・連中に我等の存在が知れたら厄介だな」

この前入って来た通信を思い出し、苦い顔をする。

過去にポセイダルと一度戦った事があるのだが、その時は決着はつかず両者の痛み分けで終わった。

あの時は今一歩の所まで追い詰めたのだが、ポセイダルが直接駆るHM『オージ』に全戦力の7割が倒され、
母艦であるマザーバーンも撃沈寸前まで追い詰められた。

(あの時、ヤーマンとかいう連中が乱を起こさなかったら・・・)

当時の事を思い出し、ベガ大王は歯軋りをすると、今後の方針を決めた。

「しばらく我等は高みの見物をする。基地の建設を最優先にしろ」

「はっ! しかし、それではあのロンド・ベル隊が力を増す可能性も・・・」

「それも考えておる。ジグラを地上に派遣し、地球にいる地下勢力を利用し、連中に協力しそうな組織を叩かせるのだ」

「はっ! かしこまりました!!」

ベガ大王の指令に、ゴーマンが敬礼をした。




「180度回頭、減速、相対速度合わせ」

「しかし、いいんですかね? 旗艦『メネラオス』の横っ面につけて」

操舵士のノイマンが冗談交じりに懸念を口にする。

「ハルバートン提督が艦を良くご覧になりたいんでしょ。自らもこちらにおいでになるみたいだし」

微笑みながら返すマリューにアムロが問いかける。

「そうか、確かハルバートン提督は、この艦とXナンバー開発計画を強く後押ししていたんだったな」

「ええ。私とラミアス艦長、直属の上司とも言える方です」

マリューの代わりにナタルが返す。

「じゃあ、ちょっとお願い。私達は提督をお迎えに行くから」

マリューがノイマンに言い置くと、アムロ達と共にブリッジを出る。

3人がエレベーターに乗り込むと、ナタルが切り出す。

「艦長、アムロ少佐、ストライクの事はどうなさるおつもりですか?」

「『どう』とは・・?」

「・・・キラを降ろすな、そう言いたいのか?」

訳がわからず聞き返すマリューに、アムロが説明する様に聞き返す。

「はい。あの性能は、彼が乗っての事です。これから更に激化していく戦闘において、あの力は我々にとっては貴重です」

「でも、キラ君とは友達と一緒に降りられる所まで力を貸してもらう、というのが約束よ。それに、彼は軍の人間ではないわ」

「ですが! あれだけの力を持っていながら、みすみす・・・!」

「力があるからと言って、彼を強制的に徴兵は出来ないさ。そんな事をすれば、かつてのティターンズと同じになってしまう。
それに、俺としても彼には軍と関わらせたくはないしな」

「何故ですか!?」

アムロの言葉にナタルが不満そうに問いかける。

「・・・キラは昔の俺の境遇に似ているからさ。俺も初めてガンダムで戦った理由はキラと同じだったしな。
そのまま一年戦争を戦い抜いて、軍から抜けようと思っても、俺の力を危険視した上層部がそれを許さなかった。
キラ程の力を上層部の連中が見逃す筈はない・・・このままキラには俺の二の舞を踏ませたくはないんだ」

一年戦争後のアムロの境遇を知っているナタルとマリューは押し黙った。

確かにキラ程の力は前線だけでなく、後方・・・技術開発等にも利用されるだろう。

そうなったら彼は自由な身になる事が出来るだろうか・・・?

考えずとも答えが判りきっているので2人は何も言えなかった。

それでも、ナタルの目には多少の不満の色が残っていた。




「艦隊と合流したのに、何でこんな事をしなくちゃいけないんです?」

「しゃーねーだろっ! 整備班が新しい機体の受け取りに狩り出されてんだから!! それに、坊主はどの道、暇なんだろ!?」

ゼロのハッチから首を出し、不満をもらすキラにフラガが憮然と答えた。

確かにアストナージやマードック等は、次々と運び込まれてくるコンテナの確認をしており、キャオ達もそれに狩り出されている。

「でも、これだけの規模の艦隊ですよ? そうそう敵も仕掛けては・・・」

「今は兎も角、連中がこのまま仕掛けてこないとは限らん」

キラの言葉を遮り、フラガが返す。

断固として聞かないフラガに、やや呆れながらため息をつき、キラはふとストライクの方を見る。

「そういえば、ストライクは? 本当にあのままでいいんですか?」

彼がカスタマイズしたOSは、ナチュラルの手に余る代物とはいえ、全員が元に戻すのを躊躇っていた。

フラガは難しい顔をしつつ、

「うーん・・・わかっちゃいるけどさ。元に戻してスペックを下げるのは・・・」

「出来れば、あのまま誰かが使えないかな〜って思っちゃいますね」

上から涼やかな声が応じたので、一同が見上げるとマリューがキャットウォークから飛び降りてきた。

「艦長?」

「あらら、こんなむさ苦しい所へ」

マリューは彼等に頷いて見せた後、キラを見た。

「ちょっと、話せる?」

「え?」

思わず尻込みするキラに、マリューは少し苦笑いし、

「そんなに警戒しないで・・・まあ、無理もない事だけど・・・アムロ少佐! 先に行っていてください!!」

キャットウォークでこちらを見ているアムロ達に告げ、マリューは場所を移す事にした。




「了解した」

アムロは応え、先にランチの発着口へ向かおうとすると、下から聞きなれた女性の声に呼び止められた。

「アムロ少佐!!」

「! チェーン!? なんで此処に!?」

アムロは驚いて聞き返している内に、チェーンは床を蹴りアムロに抱きついてきた。

「お久しぶりです! アムロ少佐!!」

「よ、よせっ、チェーン・・・! こんな所で!」

「ゴホン・・・! 私は先に向かってますので」

一つ咳払いし、ナタルはその場を後にする。

ナタルを見送り、アムロは一つため息をつくと、

「まったく・・・でもチェーン、どうしてアークエンジェルに?」

「はい。月でのνガンダムの調整と『例の装置』の取り付けが終わったので、輸送しにきました」

「νガンダムが!? ありがとうチェーン。助かるよ」

「いえ。まだ、Hi-νガンダムの調整等は終わってないですが・・・」

すまなそうに告げるチェーンにアムロは首を振り、

「いや、νガンダムで大抵の敵には勝てるさ。そうだ、チェーン、カミーユ・・・いや、ゼータについて相談に乗ってはくれないか?」

「Ζガンダムの? 何かあったんですか?」

「直接話した方が手っ取り早いな・・・カミーユ!! ちょっと来てくれ!!」

下でΖガンダムの整備をしていたカミーユに呼びかける。

「なんですか・・・って、チェーンさん!? 第八艦隊と一緒だったんですか!?」

「ええ、そうよ。で、Ζガンダム、どうしたの? 昔のアムロ少佐みたいに、機体の反応が遅れるとか・・・?」

少し驚くカミーユに、チェーンは頷き返しながら問いかける。

「いえ、ゼータはスムーズに反応してくれてますよ。ただ、敵の投入してきた新型機との性能差が・・・」

そのカミーユの言葉に、チェーンは難しい顔をする。

「そうか・・・何気にΖガンダムとかって、バルマー戦役時にロールアウトした機体だったわね・・・シャア以外の相手に、
互角以上に戦っていたから忘れてたけど・・・機体そのものに、強化、改修出来る箇所は?」

カミーユは首を振り、返す。

「いえ・・・アストナージさんも考えてくれてるんですが、ゼータの設計は俺がやりましたからね。そういった所は見当たりません」

「となると、機体を乗り換えるしか方法はないか・・・でも、Ζガンダム以上のMSって、そうそう無いわよ・・・?」

眉を顰めて、アナハイムに置いてある機体を片っ端から思い出していく。

「そういえば、何機かΖガンダムの発展機がなかったか? あれらもΖ計画の機体だった筈だが・・・?」

アムロが思い出しチェーンに聞くが、彼女は首を振り、

「以前はあったんですが、現在は2機を残して解体されてしまいました。残っている2機も凍結状態ですし・・・でも、その2機なら・・・?」

チェーンは最後に一言呟くと、頷き、

「取り合えず、可能性がある機体を今度、Hi-νと一緒に持ってきます。その時に、乗り換えるのか決めるというのは?」

「ええ、それでお願いします」

問いかえるチェーンに、カミーユは頷いた。




自習室での仮謹慎処分を終えたキョウスケ達も、補給作業に狩り出されていた。

「あらら、ゲシュちゃんが4機も・・・太っ腹ね、マオ社のシャチョーさん」

「しかし、数が多くないか?」

「だな。アタイは前にお前が乗っていたのを使ってんだし・・・」

キョウスケの言葉にカチーナが頷く。

すると、目録に目を通していたタスクが1機の相違点に気付き、ブリットに問いかけた。

「なあ、1機だけゲシュペンストTTっていうだけど・・・これって新型なのか? 聞いた事ないし、『T-LINKリッパー』って装備をしてるんだけどよ?」

「! T-LINKだって!? 貸してくれ!!」

ブリットが驚き、目録に目を通す。

「このゲシュペンスト・・・T-LINKシステムを標準装備している・・・サイコドライバー用の新型機か?」

「残念だけど、半分はずれよ」

ブリットの言葉に、女性が歩み寄りながら答えた。

「・・・ん・・・? あなたは?」

「私はラーダ・バイラバン・・・マオ社でマン・マシン・インターフェイスの開発に携わっている者です」

「となると、ユウ達と?」

ブリットの問いかけにラーダは頷き、

「ええ、同僚よ。『彼女』もこっちに来たがってたけど」

「で、半分ってどういう事だ?」

カチーナが急かすように本題を尋ねる。

「あれは、新型機ではないの。元々、バルマー戦役時にロールアウトしたヒュッケバインMK-UのT-LINKシステムのデータ収集用に造られた機体よ。 でも、スペックは通常のゲシュペンストと大差はないから普通に使える筈だけど」

「誰が乗るんです? 今この艦にはオレ以外念動力者はいませし・・・ラーダさんが?」

「いいえ。私にはその力はないわ・・・取り合えず、あなた用の予備の機体ですって」

「俺が乗るってのはダメっすかね?」

タスクが自分を指差して名乗り出るが、カチーナに横から小突かれる。

「お前な、話聞いてなかったのか? 普通の人間は動かせないんだよ」

「動かせない事もないけど、T-LINKリッパーとか使えないわよ?」

ラーダが助け舟を出すかの様に応えると、タスクが目を輝かせる。

「マジっすか!? なら、俺が乗っても問題は・・・」

だが、カチーナが短く呆れた様にため息を吐き、

「お前、PTの適性検査落ちたんだろ?」

「いや、あれは過去の事だし・・・」

「はいはい、タスク君。そこまで」

尚も食い下がるタスクを、エクセレンが首根っこを掴んで待ったをかける。

「あんまりしつこいと、アルトのヒートホーンに括りつけられるわよ?」

にこやかな笑顔で言うが、エクセレンの目はどこか真剣味を帯びており、タスクは冷汗を流しながら、

「・・・そりゃ熱そうだ。じゃない、エクセ姐さんからも戦力が増えれば、楽になるって言って下さいよ!」

「まあねえ。でも私は、戦力もいいけど、いい男が増える方が嬉しいけどね」

エクセレンの言葉に、タスクはしめたとばかりに指を鳴らす。

「ビンゴ! じゃあ完ペキじゃん! いい男、かつ戦力になるってことで俺をパイロットに!」

「ヒートホーン行き決定ね」

「同感だ」

「あ、あらら・・・」

エクセレンだけでなく、カチーナからも斬って捨てられその場でこけるタスク。

そこでキョウスケがもっと根本的な所に気付き、タスクに問いかけた。

「・・・タスク、お前達はここで艦から降りれるんじゃないのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだった」

かなり間が空いていた事もあり、今度はエクセレンがこける。

「手前の事忘れるか!! 普通よぉ!?」

「いや、何かキョウスケさん達やマードックのおっさ・・・軍曹と馴染み過ぎちまって」

カチーナの完璧に呆れが入った怒鳴りに、タスクは頭をかきながら答えた。




キラとマリューは、作業中のクルーから少し離れたストライクの前に来た。

「私自身とても余裕が無くて、これまであなたとゆっくり話す機会も作れなかったわね」

「はあ・・・」

何を話されるのかを警戒しつつ、キラは返事をする。

そんな彼に向き合い、マリューは微笑んだ。

「その、ちゃんとお礼を言いたかったのよ」

「え・・・?」

「あなたにはヘリオポリスから大変な思いをさせたわ・・・ここまで、ありがとう」

深く頭を下げるマリューに、キラは一気に動転した。

この艦に残るように言われる可能性を少し警戒してたので、彼女の行動に咄嗟に返せなかった。

「いやっ、その、艦長・・・」

どうにか返そうとするが、赤くなってしどろもどろしてしまう。

顔を上げたマリューがにっこりを笑いかけ、

「口に出さなくとも、みんな、ロンド・ベル隊の人達もあなたに感謝してるのよ。こんな状況だから、地球に降りてからも大変だろうけど・・・」

彼女は片手を差し出し、キラはまだ戸惑いながらもその手を握った。

「・・・がんばって」




「いや、ヘリオポリス崩壊の報せを受けた時はもう駄目かと思ったよ! まさか、ここで諸君と会えるとは・・・」

「ありがとうございます、閣下。お久しぶりです」

大声で話しながらランチを降りてきたハルバートンに、マリューが嬉しそうに挨拶をする。

「ナタル・バジルールであります」

「第7機動艦隊所属ムウ・ラ・フラガであります」

「おお、君がいてくれて幸いだった」

ハルバートンが労うと、フラガは苦笑いをした。

「いえ、さして役にも立ちませんでしたし、途中でアムロ少佐達が加わってくれたので」

「そうか。アムロ少佐、ガルシアの件すまなんだな。奴は後日引き渡され、正式な場で処分を受ける事になった」

その言葉にアムロが頷くのを確認すると、今度は後ろで整列しているキラ達に目を向けた。

「ああ、彼等がそうかね?」

自分達の方にハルバートンが真っ直ぐ向かってくるので、キラ達は驚き、慌てて背筋を伸ばした。

「はい、操艦を手伝ってくれたヘリオポリスの学生達です」

「きみたちのご両親の消息を確認してきたぞ。みなさん、ご無事だ」

キラ達の顔がぱっと明るくなり、歓声が上がった。

「―――提督、お時間が。これでは、搬入作業を先にやっている意味が・・・」

背後で忠告する部下の言葉に、ハルバートンは少しムッとし、

「判っておる。―――とんでもない状況の中、かつてのホワイトベースのクルーの様に良く頑張ってくれた。私からも礼を言う。
・・・後でゆっくり話をしたいものだな」

最後の言葉はその場を離れながらだったが、含まれている感情は優しかった。

「・・・なんか、陽気で人の良いおっさんだったな・・・」

「ああ・・・」

ナタル辺りが聞いていたら、特大の雷が落ちるであろう言葉をタスクが発し、甲児もそれに同意した。




「ガモフ、ツィーグラー、合流しました」

「発見はされてないな?」

アデスの報告にクルーゼが念を押す。

「あの位置なら大丈夫でしょう。艦隊はだいぶ降りてますから」

クルーゼは顎に手をやり、小さく息をついた。

「月本部へと向かうと思っていたのだが・・・やつら、足つきをそのまま地球へ降ろすつもりとはな」

「目標は、アラスカですか?」

アデスの言葉にクルーゼは頷き、

「おそらくな。あそこは、かつてのジャブローと同じく天然自然の要塞でもある・・・逃げ込まれたら、少々厄介だ・・・
こちらの庭にいる内に沈めたいものだが・・・」

その言葉にアデスは少し難しい顔をして応える。

「ツィーグラーにジンUが8機、こちらにイージスを含めて11機、ガモフは出撃可能なのは8機、それにブリッツ、バスターもでれますが・・・」

「やはり、鍵はロンド・ベル隊か・・・これだけの戦力でも少々不安になるとはな」

呟き、クルーゼは相手の戦力に見合う、又は届きそうな手段を探し、思いついた様に一つ頷く。

「・・・よし。私も出よう」

「なっ!? 隊長!?」

その発言にアデスが驚き目をむく。

「そう驚く事ではあるまい? いま宇宙で奴等を討てる最後のチャンスだ。こちらが現在持っているカードで、それに届きそう―――
いくらかマシな手はこれしかないぞ。この場に北斗殿達が入るならば、話は別だがな・・・」

そして、クルーゼは底冷えする笑みを漏らし、小声で最後に呟いた。

「それに、アムロ・レイに挨拶をしなければな・・・」




「提督、お話の前に報告する事が・・・」

ハルバートンが席につくと、アムロはロンデニオンで襲ってきたベガ星宇宙軍について報告をする。

「・・・ふむ。月周辺に連中の基地がある・・・と?」

ハルバートンの問いかけに、アムロは頷く。

「ええ。撤退していった方向、それにあの周囲の現状から考えると、その可能性が」

少し考えた後に、ハルバートンは頷き、

「解った、君が言うんだ。あながち、無いとも言い切れん。ホフマン大佐、月基地へ伝令をだしておいてくれ。
月周辺を広範囲で捜査する様にな」

「解りました・・・しかし、この艦一つとGの為に、ヘリオポリスを崩壊させるとは・・・『V作戦』の時の比ではないな?
あの時は、コロニーは崩壊しなかったしな」

ハルバートンの部下であるホフマンが、アムロをちらりと見てから苦々しい口調で言った。

「やめんか、ホフマン! すまんな、アムロ少佐」

ホフマンを叱責してから、ハルバートンはアムロに詫びる。

「いえ・・・状況があの時と類似しているのは確かですし・・・」

「うむ。彼女等がこの艦とストライクだけでもを守った事は、一年戦争の時の様に必ず我等の利となる」

アムロの言葉にハルバートンが頷くが、ホフマンが冷ややかに切り返した。

「アラスカの連中はそう思ってないようですが?」

その言葉に全員が少し首を傾げた。

(現状で稼動できるMSがロンド・ベル隊以外いないのに・・・?)

地球連邦で始めてバッテリー式で稼動可能なMSのデータは現段階では重要な筈だ。

それなのに、何故・・・?

マリュー達は疑問に思うが、それに気付かず彼等は言葉を続ける。

「ふん! 奴等に宇宙での戦いの何が判る! ラミアス大尉は私の意志を理解してくれていたのだ。問題にせねばならぬ事は何も無い!」

ハルバートンはきっぱりと言い切った。

「では、コーディネーターの子供の件、これも不問ですかな?」

ホフマンが含むところがある調子で言い、マリューが決然と口を開いた。

「キラ・ヤマトは友人達を守りたい―――ただ、その一心でストライクに乗ってくれたのです。
我々は彼の力がなくば、ロンデニオンに辿り着けず、ここで閣下と合流も出来なかったでしょう・・・」

「しかし、成り行きとはいえ自分の同胞達と戦わなくてはならなくなった事に、キラはロンデニオンで苦しんでました」

アムロがロンデニオンでの事件の後のキラを思い出しながら、マリューの後を受けてしめる。

「誠実で、優しい子です。彼には信頼で応えるべきと、私は考えます」

アムロの証言もあり、マリューは一歩も引かぬつもりで主張した。

「しかし、このまま解放するには・・・」

ホフマンの反論にかぶせる様に、ナタルが一歩出た。

「僭越でありますが、私はホフマン大佐と同じ考えです!」

マリューとフラガは不意打ちをくらった様に彼女を見やるが、アムロはそういう可能性も予想しており、苦い顔でナタルを見た。

(あの時の表情からして、納得していないと思ってたが・・・!)

アムロは胸中で苦々しく呟くが、彼女は気付きもせず、彼等を見ずに言葉を続けた。

「彼の能力には目を見張るものがあります。恐らく、ロンド・ベル隊のメンバーに匹敵するかと思います。
それに、『G』の機密を知り尽くした彼をこのまま解放するなど・・・」

「ふん、既にザフトに4機も渡っているのだ。今更機密もない。それに、ブライト大佐も同じ事を言った筈だ」

それが口実に過ぎない事を、ハルバートンは一瞬で看破し指摘した。

ナタルは動揺するが、何とか言葉を継ぐ。

「しかし! 彼の力は貴重です! 出来ればこのまま我が軍の力にすべきです!!」

「だが、ラミアス大尉、アムロ少佐の話だと本人にその意志はなさそうだが?」

「彼の両親はナチュラルで、ヘリオポリス崩壊時に脱出し、現在地球にいます。彼等を我々が保護する事が出来るのでは・・・」

淡々と話続けるナタルに、マリューは戦慄をおぼえ、止めようとした瞬間、

「ふざけるなっ!!」

アムロがナタルに怒声を放った。

その体から放たれる怒気に、ナタルだけでなくマリューやホフマンもすくみあがる。

「バジルール少尉、自分が何を言っているのか判っているのか!? キミが言っている事は、彼の両親を人質にして、
キラに戦いを無理強いする事なんだぞ!! 年端の行かない少年から両親を取り上げ、その命を盾に、
死ぬかもしれない戦場に送り込み、同胞を殺させる事が正しいと思っているのか!? それではティターンズと何も変わらないぞ!!」

「アムロ少佐の言うとおりだ! そんな兵が何の役に立つ!!」

アムロの言葉に続いて、ハルバートンも厳しい口調と顔つきでナタルを冷たく射る。

「も、申し訳ありません!!」

2人の放たれる怒気に気圧され、ナタルは引き下がる。

「間違っても、甲児やカミーユ、ジュドー達の前でそんな事を言わないでくれよ・・・どうなっても、俺だけじゃ止められないからな」

アムロの止めの様な呟きにナタルは背中に冷たい汗をかく。

「過去の事はもういい。問題はこれからだ・・・」

ハルバートンは沈痛な面持ちで、厳粛な声を発した。

「アークエンジェルは現状の人員編成のまま、アラスカ本部に降りてもらう」

「現状のまま・・・ですか?」

幾らかの補充要員があるかと思っていたマリューは思わず聞き返す。

「機動兵器のパイロット―――といっても、マオ社からの派遣社員だが―――が1名補充出来るだけだ。
補充要員を乗せた先遣隊が沈んでしまった以上、今の我々に貴艦に割ける人員がないのだ」

ホフマンの補足を、ハルバートンはしばし沈んだ顔で聞きながらマリュー達を見つめていたが、ふと目に猛々しい光を宿す。

「だが! ヘリオポリスが崩壊し、全てのデータが失われた今、この艦と『G』は何としてでもアラスカへ送らなければならん!!
ザフトは次々と新しい機体を投入しており、新たな異星人達が攻めてきておるのに、馬鹿な連中は利権がらみで、
役にも立たん事ばかりに予算をつぎ込んでおる! 奴らは戦場でどれだけの兵が死んでいるか、数字でしか知らん!!」

(場所が変わっても、本部の内情はジャブローの時から変化はしないか・・・)

アムロだけでなく、マリューやフラガも同じ様に胸中で呟いた。

「解りました―――閣下のお心、しかとアラスカへ届けます」

「まあ、乗りかかった船です。最後まで付き合いますよ」

「元々、ブライトからもそう頼まれてますし、ロンド・ベル隊全員が協力しますよ」

「すまん・・・!」

敬礼するマリューとフラガ、アムロにハルバートンは深く頭を下げた。




「・・・除隊許可証?」

差し出された書類を見て、トールが狐に摘まれた様な顔になる。

「・・・私達、何時の間にか軍人だったの・・・?」

「いや、そんな事ないから」

ミリアリアの的の外れた呟きに、サイがつっこむ。

書類を配っていたナタルは、彼女等の質問に答えず書類を配る。

「・・・キラ・ヤマトは?」

キラの書類を持ち、イライラした調子で彼等を見回す。

「そういえば、まだ戻ってきてないな」

「・・・まあいい、後で渡してやれ」

答えたタスクに、キラの分の許可証を渡す。

彼女の横にいたホフマンが、不審そうな顔をしている彼等に説明する。

「例え非常事態でも、民間人が戦闘行為を行えば、それは犯罪となる。それを回避する為に、日にちを遡り諸君等がそれ以前から
志願兵として入隊してた事にしたのだ・・・失くすなよ?」

「あれ・・・? でも、ロンド・ベル隊の人達は? 甲児さんとか・・・」

「・・・そういや、アムロさんもガンダムに乗った時は民間人だったよな・・・・?」

タスクが疑問に気付き声に出すと、トールも同じ様に首を傾げる。

「・・・兜甲児達の様な者は、研究所所属として特例で認めているんだ。ブリックリン・ラックフィールドもな。
それに、アムロ少佐の父親は軍の研究者だった。お前達とは状況が違うんだ」

「・・・面倒だな」

トールの呟きを聞いて、ナタルはコメカミを引きつらせ、『誰の所為だと思ってるっ!!』と叫びたい衝動に駆られるが、何とか抑える。

「それと、解っていると思うが軍務中・・・つまりこの艦に乗ってから知りえた情報は、例え除隊後であっても・・・」

「あの・・・」

ホフマンの説明を遠慮がちに発せられたフレイの声が遮る。

「君は戦ってないだろう。彼等と同じ措置は必要ないぞ」

ナタルが不審げな表情を浮かべて言うと、フレイは俯き加減で前に出て、覚悟を決めた様に顔を上げる。

「・・・私、軍に志願したいんです」

「――――ええっ!?」「なっ!?」

みなが同時に―――ナタルまで―――声を上げた。

サイも同じ顔をしており、彼も聞かされて―――相談すらされてなかったのだろう。

全員が驚くのも無理はなく、フレイほど軍にそぐわない者はそうそういない、とこの場に入る誰もがそう思ってたからだ。

「何を馬鹿な・・・遊びじゃないんだぞ? 本気で・・・」

「いい加減な気持ちで言ってるんじゃありません!!」

眉を顰めながらも、説得をしようとするナタルにフレイが必至で食い下がる。

「先遣隊と一緒に父を殺されて、私・・・いろいろ考えたんです」

「・・・そうか、では君がアルスター事務次官の・・・」

ホフマンの問いかけに、フレイは両手を握りあわせて頷き、続けた。

「父が討たれた時、ショックでこんな所にもう居たくない―――そんな思いばっかりでした・・・でも! 艦隊と合流できて、地球に降りられるって
思ったら・・・気付いたんです。 ここで逃げても終わりじゃない。今、地球にはザフトだけじゃない、新たな異星人まで攻めてきていて、
戦争は続いていくんだって・・・私、今まで中立の国にいて全然気付かなかった・・・父は戦争を、地球圏での戦争を終らせようと
必死で働いてたのに・・・私は何も出来なかったから・・・」

フレイの言葉を聞いて、トール達は自分達もそうだったという事に気付いた。

自分達だけが平和の中にいて、それがどれ程幸福かという事を知らなかった。

そして、ここで艦を降りれば平和が手に入ると、心の何処かで思ってもいた。

彼女の言うとおりだ。ここで降りても世界が、地球圏が戦争している事には変わりはない。

「本当の平和が・・・戦う事でしか得られないのなら・・・私も戦う・・・ロンド・ベル隊の様に・・・大きな力にはならないでしょうけど・・・」

「・・・わかった。彼女を医務室に連れて行く・・・お前達は艦を降りる準備をしろ」

ナタルは泣きじゃくるフレイを肩に抱き、退出際トール達にそう言い残し部屋を出た。



トールは俯いた。何も考えてそうにないフレイがそこまで考えており、自分が地球に降りる事しか考えてなかった事が恥ずかしくなったのだ。

不意に、サイがじっと見つめていた除隊許可証を勢い良く引き裂いた。

「サイ!」

彼はトールを見ると、せいせいした様に笑い、

「・・・フレイの言ってた事は俺も感じてた事だ。―――それに、彼女だけ置いていくなんて出来ないしな」

「オイオイ、婚約者としてか?」

「茶化すなよ、タスク。それに、俺は・・・保護者の延長線としか考えてないよ。今はな」

タスクの冷やかしに肩をすくめて返すと、タスクも同じ様に除隊許可証を破り捨てる。

「なるほどね。なら、トトカルチョの結果を見極める意味を兼ねて・・・俺も残るかね」

「トトカルチョって・・・?」

「わっ! バカ!! なんでもない!! って、いいのか!?」

聞き返すサイを誤魔化すように、トールがタスクの口を塞ぎ、問いかける。

「まあな。本音を言うと・・・俺も同じ意見なんだよ。ここで降りても、世界は変わらないだろう? なら、ロンド・ベル隊に力を貸そうってな」

珍しく真剣な顔で言うタスクをを見て、トールも覚悟を決め、書類を破り捨てる。

「アークエンジェルは・・・っていうか、ロンド・ベル隊って何時でも人手不足らしいからな。俺が降りた後で、過労死者とか出るかもしれないし」

「いや、そこまで人使い荒かねえだろ・・・」

胸中で、『マードックのおっさんならありえる』と呟きながらつっこむタスク。

すると、ミリアリアも書類を破り捨て、

「トールが残るって言うんなら、私も、ね」

「やれやれ・・・結局全員、か」

ミリアリアを見て、サイが少し嬉しそうな顔をして息をつく。

そんな彼を見て、全員が―――悪戯を仕掛けたように―――笑った。

「でも、さ。降りるよな・・・あいつは」

トールはタスクが持っている、キラの許可証を見て呟いた。




「降りるとなると、名残惜しいのかね?」

不意に背後から声をかけられ、キラは振り返ると、キャットウォークの上にハルバートンが佇んでいた。

キラは既に私服に着替えていたのだが、見納めの様にストライクの前で漂っていたのだ。

「キラ・ヤマト君だな?」

ハルバートンは優しい声音で尋ねた。

名前を呼ばれると思っていなかったキラは、少し硬くなって頷く。

「そう硬くならんでくれ、報告書を見てるんでね―――しかし、改めて驚かされたよ。君たちコーディネーターの力という物に」

コーディネーターの力・・・その言葉を言われた時、キラは更に硬くなったが、ハルバートンはごく普通の少年を見る様な目で話し続ける。

「せめて、大戦前のMSと同程度の性能を―――と造ったものだというのに、君らが扱うとそのレベルを遥かに凌駕するようだな、こいつは」

「ええと・・・」

どう返せばいいのか判らず、キラは返答に詰まる。

そんな彼をあたたかい目で見つめ、ハルバートンはふと言った。

「君の両親はナチュラルだそうだが?」

「え、あ・・・はい」

「どんな夢を託して、いや、どんな未来を見せたくて君をコーディネーターとしたのか・・・」

キラはどきっとした。ハルバートンに言われるまで、一度も両親に聞いてみようとは思わず、不思議にも思わなかったからだ。

「・・・地球圏での戦争は、シャアとの戦いで終ったと思ったのだが・・・早く終らせたいものだな。地球圏同士での戦争は」

その時、キャットウォークの向こうから1人の士官がハルバートンに声をかけた。

「閣下、メネラオスから至急お戻りいただきたいと・・・!」

「やれやれ、君らとゆっくり話す間もないわ。君の友人とも話してみたかったのだがね」

ハルバートンは広い肩をすくめた後、真っ直ぐキラを見た。

「ここまでアークエンジェルを守る手助け、そしてストライクを守ってもらって感謝している―――いい時代が来るまで、死ぬなよ」

そのまま身を返して行こうとする所を、キラは慌てて呼び止めた。

「あのっ、アークエンジェル・・・ラミアス大尉達とロンド・ベル隊は、これから・・・?」

「アークエンジェルはロンド・ベル隊と共に地球へ降りる。彼女達はまた戦場だ」

足を止めたハルバートンが当たり前の様に答えた。

いや、当たり前なのだ。彼女達は軍人で、アークエンジェルは戦艦。

そして、ロンド・ベル隊は地球圏最強の部隊であり、地上は―――少し前にニュースで見たが―――ザフトだけでなく
木星蜥蜴、地下勢力に攻められている。彼等の力を必要とする戦場もあるだろう。

しかし、自分はここで降りてもいいのか? ここで艦を降りても、地球圏が戦争をしている事には変わりないのに?

それに、ストライクは? 自分が降りた後、一体誰が乗るのだろう?

キラは何時の間にか、この艦に―――クルーに、そしてストライクにも愛着を感じている自分に気がついた。

彼の迷いを見てとったハルバートンが口を開いた。

「君が何を悩むのかは判る―――確かに君の力は魅力だ・・・軍にとってはな」

キラは彼の意図を読み取ろうと、その表情を探ったが、言葉と裏腹の物欲しそうな様子は全く窺えなかった。

「だが、君1人が加わるから勝てるものではない。戦争はそんな甘いものではな・・・自惚れるな」

「で、でも・・・僕は戦えるだけの力を持っています」

最初にストライクに乗ろうと決意した時の言葉を、口にするとハルバートンは口の端を少し上げた。

「本当に、意思があるなら―――だ」

ハルバートンの言葉にキラは息をのむ。

「戦おうと、戦い抜こうとする意思がない者は戦場で生き残れん。それは他の事でも同じだ。意思のない者に、何もやりぬく事は出来んよ」

そういった男の目には、ロンド・ベル隊と同じ強固な意志の存在をうかがわせる光があった。




メネラオスの管制から敵艦発見の報告が届く頃には、アークエンジェルでもその動きを捉えていた。

「これだけの艦隊相手に仕掛けるというの!?」

マリューは声を上げて驚くが、すぐさま命令を出す。

「搬入作業はもう終わってるわね!? メネラオスへのランチは!?」

「まだです! 後、1便残ってます!!」

「発進を急がせて! 総員第一戦闘配備!!」




カタパルトデッキに着いたキラは、辺りを見渡した。

ヘリオポリスからの避難民はここからメネラオスへと移り、そこからシャトルで地球に降りる手筈になっているのだが、友人達の姿が見えない。

自分を待たずにランチへ乗り込んでしまった訳はないと思ったが、念の為ハッチの方を覗き見るがやはり姿は確認できない。

取り合えず、通路で待とうと背を向けた時、背後から高い声が響き振り返った。

「あー! お兄ちゃん」

この間ぶつかった女の子がキラを見つけて飛び出すが、勢いが付き過ぎたのか不器用に宙に浮かび上がった。

キラは彼女を受け止め、自分の前に下ろすと、女の子は頬を赤くしてニッコリと笑い、

「お兄ちゃん、これっ!」

舌足らずな調子で言うと、片手をキラに差し出す。

その手には折り紙の花が握られていおり、キラは目を瞬かせる。

「・・・僕、に?」

「うん。今まで守ってくれて、ありがと」

キラがその小さな手から、花を受け取ると、女の子はバイバイと手を振りながら、母親に連れられてランチへと乗り込んでいった。

じっと、花を見つめていると背後からヘッドロックをかけられた。

(なっ!? こんな事をするのは・・・)

「や、止めろよトール!!」

「うるさいぞー。お前年下が好みだからって、あの子は犯罪だぞー」

「誤解だ!! そんなんじゃ、ないって!!」

からかうトールのヘッドロックを無理矢理外し、笑いながら振り返るとキラは言葉を失くした。

友人達全員―――タスクの姿は何故かなかった―――が軍服を着ているからだ。

キラの表情に気付き、トールは一枚の書類を手渡した。

「これ、持ってけって、除隊許可証」

「えっ?」

受け取りながら、訳がわからないと言う顔をしているキラにサイが説明する。

「オレ達、残る事にしたから。軍に・・・アークエンジェルに」

キラは目を見開き、仲間たちの顔をまじまじと見つめた。

「ど、どういう・・・事? なんで・・・? それに、タスクは・・・?」

「フレイが志願したんだ。それで、オレ達も」

「タスクもよ。まあ、残る事がマードック軍曹の耳に入ってすぐに、拉致されちゃったから・・・」

サイとミリアリアが答え、キラは更に驚愕した。

彼もフレイが軍に入るなんて予想もつかなかったのだ。

事情を細かく聞こうとした時、艦内に警報が鳴り響いた。

『総員第一戦闘配備、繰り返す総員第一戦闘配備』

みんな反射的に持ち場へ急ごうとすると、背後から声がかかった。

「オイ、兄ちゃん! 乗らんのか!? 出すぞ!!」

ランチの搭乗員だとトールが気付くと、振り返ったキラを前へ押し出す。

「待ってください。こいつも乗ります!」

「トール!?」

トールはキラの肩を掴み、しばしその顔を見つめたが、やがてニッと笑い片目を閉じた。

「これも運命だ! じゃあな! 無事に地球に降りろよ!!」

「元気でね! キラ! タスクが『戦争が終わったらまた会おう』って!!」

「生きてろよ!!」

みながそれぞれ別れの言葉を口にし、手を振りながらその場を後にする。

キラは呆然と立ち尽くし、不意に取り残される不安感、そして先程考えた事が再び頭を過ぎり、敵襲を知らせる警報がもう一つの事を考えさせた。

アスランの事はどうなる?と。

彼と戦うのはずっと嫌だと思ってきた。確かに戦場を離れれば彼と戦わなくて済むかもしれないが、彼とこれっきりなってしまうかもしれない。

こんな中途半端な所で逃げてしまっていいのか・・・?

右手の除隊許可証と左手の折り紙の花を交互に見て、キラはぎゅっと目を閉じる。

これ以上同胞達と戦わなくて済む―――この苦しみから逃げ出せる・・・けど、友達を守ると一度決めた。

「オイ! 早く乗れ!! 他の人も乗ってんだぞ!!」

その言葉に急かされるように、キラは決断すると床を蹴った・・・通路側の方へと。

「オイ、何処へ・・・!?」

「―――行って下さい!!」

肩越しに搭乗員へと叫び返し、書類を丸めて近くのダストシュートへと投げ捨てた。

(あの時、決めたんだ・・・! 友達を守る・・・その手助けをするって・・・!! みんなが残るこの艦を
守るって決めた自分が、ここで逃げる訳にはいかない・・・!!)




ガモフの艦内に戦闘が近づくアナウンスが流れると、イザークは荒々しく医務室から飛び出した。

その顔は半ばまで包帯に包まれている。

「駄目ですよ! まだ安静に・・・!!」

「うるさい!! 傷の手当ては終ってるんだっ!! 出る!!」

追いすがってくる衛生兵の手を振り払い、イザークはMSデッキへと急いだ。

顔の傷は未だに痛むが、それ以上に深く傷ついているのは彼の戦士としてのプライドだった。

前回の戦いで負った傷は、バイザーがなければ命に関わる箇所だっただけでなく、もしコックピットにも亀裂が生じていても
命に関わる事態になっていたからだ。

だが、イザークは生還出来た事を喜ぶ気持ちは欠片もなかった。

彼にはエースとしての自負があり、伊達にアムロを目標に掲げている訳ではない。

始めあの機体を落とせなかったのは、アスランの邪魔があったからだと思ってた。

しかし、邪魔するアスランがいない前回の戦い―――ストライクは自分の攻撃を尽くかわし、実質ブリッツとの2対1だったのにも関わらず、
デュエルを中破させ、自分の顔にも傷をつけたのだ。

あの時のストライクの動きは異常だったが、MSのパイロットとしては驚愕を覚えるのみで、憎しみとかは浮かんでこない。

一般のコーディネーターのパイロットならば、自分よりも本来劣った種に負けた事は恥辱にも繋がるだろうが、イザークは最初の一戦で理解した。

ロンド・ベル隊の様に、ナチュラルでも自分達に匹敵する実力の者がいる可能性があるという事に。

今彼が怒っているのは、アムロ・レイでは―――ロンド・ベル隊ではないという理由で、相手を甘く見ていた自分に対してだった。

(借りは返す―――!! こんな相手にもたついてる様では、何時まで経ってもアムロ・レイに追いつけない!!)

イザークはパイロットスーツに着替えると、アサルトシュラウドを装備したデュエルへと乗り込んだ。

『よせ! イザーク、お前はまだ・・・!!』

「平気だ!! さっさと誘導してくれ!!」

驚いた管制官の制止を叫んではねつけ、彼はデュエルを発進させた。

『目標は足つきだ! 他の艦は邪魔な分だけ排除しろ!! 時間がないからな!!』




『アークエンジェルは動くな!! そのまま本艦につけ!!』

ハルバートンの命令を聞きながら、アークエンジェルのブリッジでは重苦しい空気を感じながら、全員がモニターを見つめた。

数だけならば、第八艦隊の方が上ではあるが、主戦力の性能とパイロットの錬度、腕が違いすぎた。

第八艦隊の主力機動兵器は、メビウスとデルフィニウムであり、性能が既にジンU以下だけでなく、パイロットも殆ど新兵であった為、
次々とジンUや艦砲射撃の餌食へとなっていく。

「くっ! 対空砲火! 何時でも撃てる様に準備をしろ!!」

「ちょ、ちょっと待ってください!!」

ナタルの命令に士官が準備を進めるが、人手が足りず何時もの様にすぐに準備が終らない。

「すいません! 遅れました!!」

その時扉が開き、トール達の明るい声が響くと、マリューは驚き振り返った。

「なっ―――!? あなた達!?」

「志願兵です。ホフマン大佐が受領し、私が承認しました」

呆然と呟くマリューに、事態を知っていたナタルが短く説明する。

「あ、キラは降ろしましたから」

マリューの困惑に気付いたサイが言う。

「俺達じゃあ、あいつみたいな活躍は出来ないけど、いないよりはマシでしょ?」

コパイ席に着いたトールがノイマンに言うと、彼はサイ達の方にも少し目をやってから苦笑いを浮かべた。

他のクルー達も最初は呆気にとられていたが、今は嬉しそうに彼等の存在を受け入れた。

だが、マリューの胸中は複雑だった。

彼等の決意は正直ありがたいと思うが、それはあまりにも幼く、甘いものだ。

今後の彼等の人生に、この決意が影を落とさなければいいが―――マリューはそう思わずにはいられなかった。




キラがパイロットルームへ駆け込むと、既にロンド・ベル隊の姿はなかったが、1人この場に似合わない人物がいた。

「フレイ・・・!?」

キラが声を上げると、彼が使っていたロッカーの前に佇んでいた少女が弾かれた様に振り向いた。

「キラ・・・」

次の瞬間、その体が彼の胸へと飛び込んできて、柔らかく温かい質感にキラは戸惑った。

「フ・・・フレイ・・・なんで・・・?」

やっと言葉を発すると、フレイは潤んだ目で見上げた。

「あなた、行っちゃったと思ってた・・・」

以前から憧れていた少女に至近距離から見つめられ、更に抱き付かれているのでキラの頭は加熱状態だ。

そんな彼の様子に気付いているのかいないのか、フレイは言葉を続ける。

「私・・・みんな残って戦ってるのに・・・最初に言い出した私だけが・・・何も・・・出来ないから・・・だから」

「まさか―――!?」

キラはようやく自分のロッカーから、ノーマルスーツが見えているのに気付き、フレイの意図に気付くと、彼女の肩を掴んでその体を引き離した。

「フレイ・・・そんな事・・・」

キラは胸が詰まった。自分の代わりにフレイがストライクに乗ろうと―――そこまで決意していたなんて・・・。

「無理だよ・・・きみには・・・」

「でも・・・!!」

必死で訴えるフレイに、キラは優しく微笑み、

「大丈夫、ストライクには・・・僕が乗る。フレイの―――」

フレイの為に―――と危うく言いかけ、サイの顔が浮かぶと軽く頭を振り、

「フレイの思い―――決意の分まで戦うから・・・もう、逃げない。決めたんだ」

戦争を少しでも早く終らせる為に、ロンド・ベル隊の力になる―――自分には多少なりの力がある。

フレイは俯いたまま肩を震わせていた。それで、キラからは見えなかった―――僅かに口の端に笑みを浮かべている事に―――。

彼女は顔を上げ、キラを見つめるとついと体をすりよせた。

「なら・・・」

涙を浮かべているその顔が近づき、唇に触れる。

「私の思いは、あなたを守るわ・・・」

唇に熱く触れた吐息に、その言葉に、キラは酔った。




マリュー達は苦い顔で次々と落とされていく味方艦、味方機をモニターで見つめていた。

そこに格納庫から通信が入る。

『ラミアス艦長! 全機発進準備が出来た!! 許可を頼む!!』

アムロの言葉にマリューは驚き、答えた。

「本艦への出撃命令はまだありません!! そのまま・・・」

『しかし、このままでは艦隊は全滅するぞ!? 大丈夫だ、俺達は大気圏ギリギリでの戦闘には慣れている。突入ギリギリで戻る!!』

マリューの言葉を遮り、アムロが言葉を返す。

アムロの言葉にマリューは思い悩むが、すぐに決断に至った。

「メネラオスに繋いで!!」

モニターに慌し気なハルバートンが映り、その背後では色んな指示が怒声で飛び交っている。

『なんだ!?』

「本艦は艦隊を離脱し、直ちに降下に入ります! 許可を!!」

『なに!?』

ハルバートンの表情から片手間の調子が消え、驚愕に置き換わる。

『自分達だけとっとと逃げ出す気か!?』

ホフマンが隣りから通信に割り込んでくるが、マリューは首を振り返す。

「いえ。閣下たちもこの戦場を離脱してもらいます。敵部隊は、アムロ少佐達・・・ロンド・ベル隊が引き受けます」

その言葉にハルバートンだけでなく、ホフマンも耳を疑った。

『正気か!? それでは降下途中で砲撃されるぞ!?』

「残念ですが正気です。ザフト艦、MSには大気圏突入能力はありません。このままアークエンジェルが高度を下げ続け、射程外に逃れれば・・・」

『・・・敵は追撃を諦めざらなくなる、か』

ホフマンの言葉にマリューが答え、後をハルバートンが受ける。

「ええ。この位置からなら、アラスカは無理だとしても連邦の勢力範囲―――大体、極東方面には降りられます」

マリューは懸命に訴えた。もし許可がされなくとも、無理矢理降下する覚悟だったが―――。

ハルバートンはその覚悟も見抜いたのか、苦笑いを浮かべ、

『・・・相変わらず、無茶な奴だ。マリュー・ラミアス。ロンド・ベル隊に影響を受け、拍車がかかったのか?』

「私は元々、ですよ。なにせ、上官を見習ってますからね」

マリューが笑って答えると、ハルバートンは頷き、

『よし解った!! アークエンジェルは降下に入れ!! 我々はロンド・ベル隊を援護、後に突破口を開いてこの場を離脱するぞ!!』




「降りる!? しかもこのタイミングで出るって言うんですか!?」

「ああ。このタイミングの出撃や迎撃は、ロンド・ベルではよくある事だ」

フラガの信じられないと言う様な問いかけに、アムロは平然と答えながらνガンダムの最終調整をする。

「―――でも、大気圏突入能力がない機体にとっては、嫌な状況下での戦闘ですよね」

突如、会話に割り込んできた声にアムロだけではなく、その場に居る全員が驚いた。

「―――坊主!?」

『キラ!?』

パイロットスーツを着込んだキラが、何時もと変わらない様子でやってくる。

全員がその場で唖然とし、艦を降りた筈の幼いパイロットはあっさりと言いながらストライクへと歩みを進めた。

「ストライクで出ます。出撃するんですよね?」

「―――待て」「ちょっと、ストップだ」

しかしキラの前に、キョウスケとタスクが立ち塞がる。

「何故降りなかった? ここに残ったという事は、軍に入隊したと同じだぞ? 前に話した事・・・忘れた訳ではないな?」

キョウスケは真っ直ぐキラを見つめ、問いかける。

「・・・はい。でも、この艦を降りても戦いそのものは終ってません。地球にまた新しい異星人達が攻めて来てるますし、
少しでもロンド・ベル隊の力になって、戦争が早く終るのなら・・・僕は戦います」

「でもよ。軍に入るって事は、今までみたく、コーディネーターだって隠す事は出来なくなるぞ? 過去の経歴とか全部送られるらしいし・・・
そうなったら、軍内部のブルーコスモスに・・・」

タスクが最後の抵抗じみた説得をするが、キラは首を振り、

「それも・・・覚悟の上だ」

ハッキリと返すと、二人の間を無理矢理通り抜ける。

「キラッ!!」

「タスク、気持ちは解るが・・・ここで説得出来ても、既にランチは行ってしまったんだ。彼を艦から降ろす事は無理だ」

後を追って説得しようとするタスクに、アムロが声かけ制止する。

「でも、このまま軍に入隊させる訳には・・・!」

「だが、この場に残ったという事は、除隊許可書を処分してしまったんだろう・・・こうなっては、岡長官クラスの権限を持っていなければ
どうすることも出来ないんだ・・・」

「ですが、このままでは上層部に・・・」

苦々しく応えるアムロに、キョウスケが懸念を口にする。

「ああ。俺の時の様に、利用され都合が悪くなれば排除・・・軟禁ぐらいはしてくるだろうな・・・だが、俺の時と違って、力を貸してくれる人達が
上層部にも何人もいるんだ。その人達の力を信じよう」

「・・・それしかないか・・・タスク」

キョウスケが頷くと、タスクも不承不承に頷き、

「アムロさ・・・っと、少佐が言うんなら、了解っす・・・キラの事、頼んます」

タスクがアムロに頭を下げながら言うと、2人はそれぞれの持ち場に戻る。

フラガはキラの後ろ姿を見ながら低く呟いた。

「あんま若い頃から、戦場や戦争なんかに浮かされちまうと、後の人生がキツイぜ・・・」

「全くだな・・・」

フラガの声には何時もの飄然とした調子はなく、何処か寂しげな響きがあり、その言葉の具現でもあるアムロが苦々しく同意する。

(キラの優しさが悪い方へ働いてしまったか・・・)

アムロは胸中で自分の判断の甘さを後悔しながらも、ブリッジに通信を繋ぐ。

「ラミアス艦長、出るぞ!!」




発進していく機体の中に、ストライクが入っているのを確認し、ブリッジの全員が驚いた。

「なっ!? ストライク!? 一体誰が乗ってるの!?」

あの機体のOSは結局元に戻してはいないので、操縦出来るのはキラだけの筈だ。

ブリッジの誰もがその事に気付き、ナタルが最初にストライクへと通信を繋いだ。

「ストライク、応答しろ!! パイロットは誰だ!?」

『あっ、はい。キラ・ヤマトです』

「―――キラくん・・・!?」

キラの通信を聞き、マリューが息をのみ、トール達も複雑な表情をする。

こんな筈ではなかったという当惑と、友と離れずに済んだという喜びが幼い顔の上でせめぎあっている。

「キラくん、どうしてあなた・・・そこに!?」

呆然としたマリューの声に、叱るような調子が加わる。

解放したつもりだったのに、何故戻ってきたのだ・・・マリューは苦い思いを噛み締める。

しかし、それは直ぐに合点がいった―――それは、この艦に残った仲間たちの為だと。

優しすぎる子だ・・・戦場ではその優しさが命取りになりかねない。

マリューは艦に戻るよう命令しようとするが、それはナタルによって断念させられた。

「いいか!? フェイズスリーまでに戻れ」

ナタルは何時の様に、冷静な口調で言った。

「この状況下での戦闘はお前は初めてなんだ。高度とタイムに常に注意し、アムロ少佐達の指示に従うんだ。
いくらストライクでも、単独では大気圏で燃え尽きるぞ!!」

『はい!』

キラの声と共に通信が切れると、マリューは立ち上がった。

「―――バジルール少尉!!」

ナタルはうろたえ一つせず、彼女の憤怒を真っ向から受け止める。

「この状況です!! 第八艦隊も救うには1機でも数が必要です!!」

2人はしばし睨みあい、ブリッジは険悪な空気に包まれた。




イザークはデルフィニウムのライフルを回避しながら、ビームライフルを撃ち返し撃墜する。

死角を突いてメビウスが攻撃を仕掛けてくるが、あっさりと回避し、そのまま接近するとビームサーベルで二つに断つ。

「雑魚共が・・・!! ロンド・ベル隊は、ストライクは何処だ!?」

吐き捨てながら、イザークは周囲を見渡す。

その瞬間、高出力のビームが飛来し慌てて回避行動を取るが、回避した所を狙った様に2射目が飛んでくる。

イザークは何とかシールドで防ぐが、近くにいたジンU4機が今の攻撃で撃墜された。

「何っ!? この正確な射撃・・・まさか!?」

僅かな期待と嫌な予感を感じながら、ビームが飛来した方を見ると、白い機体がこちらに接近してきていた。

「あれは・・・νガンダムだとっ!? アムロ・レイか!!」

イザークが驚いている間にも、名誉欲にかられた連中が3機、νガンダムに攻撃を仕掛けるが、一斉に放たれるビームライフルを
アムロはあっさりと回避しながら、ビームライフルを3連射する。

3機のジンUは回避運動を取る事も出来ずに、撃ち抜かれ爆発する。

「くっ! 本来の機体に乗り換えた所為か、動きが前回よりも鋭い・・・!?」

イザークは苦い顔をしながらも、νガンダムへと攻撃を仕掛ける。

「勝負だ!! アムロ・レイ!!」




「あれは・・・デュエル!?」

接近しながら放ってきたビームライフルを回避し、アムロはビームキャノンを撃ち返した。

「かわせっ!!」

アサルトシュラウドを装備し、機動性が上がっているおかげもあり、イザークは紙一重で回避に成功する。

「かわしたっ!?」

アムロは僅かに驚きながらも、ビームサーベルを抜き放ち、接近したデュエルに斬りかかる。

イザークもビームサーベルを抜き、受け止めると、機体を回転させ遠心力のかかった一撃を放つ。

しかし、アムロはそれを読み、機体を半身下がらせるとメインカメラに目掛けてバルカン砲を放つ。

前にストライクに同じ事をされた事もあり、イザークは一旦機体を下がらせ回避するが、それを狙いアムロはハイパーバズーカを撃った。

「くっ!!」

回避が間に合わないと判断し、シールドで防御するが爆発の威力に押され機体が吹っ飛ばされる。

「いけっ!! フィンファンネル!!」

その間にアムロはフィンファンネルを射出し、近くで艦隊に攻撃を仕掛けていた2機のジンUを攻撃する。

自分達に攻撃が来るとは思っていなかったのか、慌てて回避行動を取ろうとするが、動きを読まれなす術もなく撃墜される。

「このーーーっ!!」

イザークはこれならどうだ、とばかりにグレネードランチャーを一斉に放つ。

「ちぃ!! 子供に付き合っていられるか!!」

アムロは吐き捨て、命中しそうな物だけをバルカンで撃ち落すが、爆炎をつっきてビームライフルが飛んできた。

イザークはグレネードランチャーが全て撃ち落されると予想し、爆炎をカモフラージュにしてビームライフルを連射したのだ。

しかし、飛来したビームをアムロはビームサーベルで切り払った。

「なっ!? 嘘だろっ!?」

目の前の光景を信じられず、イザークは目をむいて声を上げた。

驚くイザークにアムロは斬りかかろうと接近するが、その瞬間、上から嫌なプレッシャーを感じた。

「このプレッシャーは・・・あの時の!?」

アムロが進路を変えると同時に、先程までの進路方向にマシンガンが通り過ぎ、更にνガンダムを狙って弾が飛んでくる。

「ちぃ!! やらせるかっ!!」

回避をしながらアムロはビームライフルで反撃するが、マシンガンを放ってきた機体―――シグーは旧式とは思えない機動性で回避する。

「ぬうっ!! ムウの攻撃よりもやはり鋭いか!!」

険しい顔をしながらも、クルーゼはマシンガンを放ちながらνガンダムへと接近していく。

アムロも回避行動を取りつつも反撃しながら接近し、敵影を確認する。

「シグーだと!? 旧式でこの動きという事は・・・こいつ・・・ラウ・ル・クルーゼ!? プレッシャーをかけて来たのもこいつか!?」

牽制のビームキャノンを放ち、ビームサーベルを抜き放つとそのままシグーへと斬りかかる。

「どうやら、私に気付いたようだなアムロ・レイ!! イザーク、アムロ・レイは私が抑える。足つきへ攻撃をしろ!!」

後半の言葉を通信で送ると、すぐさま切り、サーベルを抜き放った。

ビームキャノンを回避すると、そこを読んだかのようにビームサーベルが振るわれるが、クルーゼもそれを読みサーベルで受け止めた。




「くっ・・・重力に引かれているのか!?」

ジンUを撃墜しながら、出撃した時に微調整した操縦系をもう一度しなおし、バーニアを吹かした。

ロンド・ベル隊はこんな状況下でも、攻撃してきたジンUを撃墜しながら進んでいく。

遅れながらも後に続こうと、火線の入り乱れる戦場に向かおうとした時、警告音が鳴り響いた。

「―――デュエル!? でも、装備が!?」

デュエルの表示がモニターに出るが、目視した機体は記憶と外見、装備が異なっており一瞬、違う機体だと疑ってしまった。

ライフルで狙撃するが、デュエルの機動性が上がっており、あっさりと回避されあっという間に迫られた。

「この前の借りだ!! 受けとれっ!!」

「くうっ・・・!!」

振り下ろされるビームサーベルをすんでの所で避け、キラはビームライフルを連射しながら後退した。




高インパルス砲を構え、遠距離からメネラオスを狙撃しようとした時、警告音が鳴り響いた。

「ちっ、またあいつか!?」

ウンザリしながら回避行動を取ると、高出力のビームが通り過ぎた。

「違う!? あれは・・・」

「うふふ〜、攻め攻めで行くわよ?」

エクセレンは軽い調子で言いながら、3連ビームキャノンを放つ。

「見た所、高機動、遠距離攻撃を得意とした機体か・・・バスターと共通する所もある・・・おもしれぇ!!」

ディアッカは口端をつりあげると、高インパルス砲を散弾型に切り替え発射する。

しかし、ヴァイスはそれをあっさり回避し、オクスタンランチャーを構える。

「返しは痛いわよぉ〜・・・!」

高出力のビームが放たれ、ディアッカは慌てて回避するが、たまたま射線上にいた3機のジンUが撃墜される。

「マジか!? 出力ならバスターより上じゃねえか!?」

その光景と相手の機動力で、一撃勝負は不利と判断すると、ディアッカは高インパルス砲を2つに分けた。

「あら? 便利でいいわね〜」

「下手な鉄砲なんとやらってな!!」

感心するエクセレンにディアッカは吼えながら、2つに分離させたインパルス砲を連射した。




「あの機体は・・・イージス!? キラの親友か・・・!」

キョウスケはイージスを確認すると、苦い顔をする。

事情を知っているだけに戦う事に多少抵抗を感じるが、そうも言ってられる状況ではない。

イージスは接近しながらビームライフルを連射するが、キョウスケは構わず機体を前進させる。

ビームコートに尽く弾かれ、この出力では通用しないと判断すると、一転して接近戦を仕掛けてきた。

振り下ろされるビームサーベルをステークで受け止め、そのまま弾きステークを叩き込む。

前にこれを食らって、デュエルの肩から先が吹き飛んだ事を知っているアスランは慌てて回避する。

そこを狙ってアルトは3連マシンキャノンを発射した。

「一発でも多くあたれば・・・それでいい・・・!!」

回避に間に合わず命中するが、PS装甲で機体にダメージはなく、バッテリーが削られる。

「ちぃ・・・!」

ここまで艦を撃墜したり、多くの機動兵器を落とすのにスキュラを多用した所為で心許ないバッテリーが更に減っていく。

この機体の前で行動不能に陥れば、一撃で撃ち抜かれる・・・アスランはそう判断し、次の一撃で決める覚悟をした。




ニコルはΖガンダムのビームライフルをかわしながら、ランサーダートを撃ち返す。

カミーユはそれをあっさり回避するが、リムがそこを狙ってビームライフルを放った。

「なんのっ!!」

「って、かわすの!? あれを!?」

並みの、否、並以上のパイロットでも被弾するだろう一撃をカミーユは機体をバレルロールさせ回避し、リムが信じられないと声を上げる。

「・・・人型機動兵器のバレルロール・・・初めて見ましたよ・・・」

ニコルも唖然とした声をあげ、僅かに呆然とするが警告音で意識が現実へと戻される。

「あれは・・・他の星の機体!?」

「HM(ヘビーメタル)って言うらしいわよ? 本国でそう呼称されてるって」

リムがラコーニから聞いた話をニコルに伝えると、接近してきたエルガイムにビームライフルを放つ。

しかしビームコートで弾かれ、エルガイムはパワーランチャーを放ってくるが、リム達は咄嗟に散開する。

「本国では・・・!? じゃあ、既に・・・」

「ええ。地上の一部の地域、この宇宙でもあの勢力との戦闘が何回かあったらしいわ・・・っと。話は後でね」

ニコルにそう返すと、リムはビームサーベルを抜き放ちエルガイムへと斬りかかっていく。

「この間のラクスの件は感謝してるけど・・・今はそういう間柄じゃないしね!!」

「あの時のパイロットか!?」

ダバはランサーで受け止めると、反対側にも刃を発生させ切り返す。

「このっ!!」

リムはもう一本のビームサーベルを手に取り、発生した刃を受け止め一度距離を取る。

「厄介ね・・・ジンUの武装じゃ、通用するのがサーベルのみだし・・・宇宙で苦戦するのも無理はないか・・・」

息を吐くと気合を入れなおし、再度エルガイムへと斬りかかって行った。




ロンド・ベル隊が戦場に登場した時点で、不利だった戦況に光明が見えてきた。

このままならば、シャトルを脱出させた後に自分達もこの戦場を無事離脱できるだろう。

しかし、ハルバートンはロンド・ベルと共に戦っているストライクに気がついた。

あの機体には誰が乗っているのか―――? ふとそんな事を思うが、ハルバートンは直ぐに首を振り、思い至った。

(考えるまでもないな。キラ・ヤマト君か・・・あの機体の動き・・・従来のOSでは無理だ)

ハルバートンの胸に痛ましい思いがあふれる。

(結局、君は戦う道を選んだというのか・・・かつてのアムロ少佐の様に・・・軍はアムロ少佐の時同様、君を利用する事しかしないというのに・・・
聡い彼には解っている筈だ・・・)

軍は決して『利用』と言う言葉は使わないだろうが、どんな言葉を使ってもその事実は変わらない。

そこまで考えを巡らせた時、レーダー士が悲鳴をあげる。

「提督! 所属不明の艦が高速でこちらに接近してきます!!」

「なにっ!?」




少し時間が戻り、メネラオスが不明艦を捉える少し前・・・

「ガモフ、出過ぎだぞ!!―――ゼルマン艦長!!」

ヴェサリウスのブリッジで、アデスが身を乗り出して叫んだ。

射程がヴェサリウスよりも短いガモフは、元々、前線気味に置いていたのだが、今はどう見ても出すぎている。

このままでは敵艦の射程に入りかねないので、下がる様に指示しようとアデスが通信を開く。

『アデス艦長。このままでは足つきが降りてしまう! 我が艦で突撃をかけ、足つきまでの進路を確保する!!』

「死ぬ気か!? 特攻などと・・・!!」

アデスが正気を問う様に声を上げるが、ゼルマンは覚悟を決めた表情で答える。

『ここまで奴等を生き延びらせたのは、私の責任だ。これ位の覚悟をしなくては、死んで逝った者達へ申し訳がたたん・・・!!
済まないが、これからクルーを脱出させる。回収を頼む!!』

通信が切れると、ガモフから脱出シャトルが発進して行く。

アデスは苦い顔をしながら、脱出シャトルの回収を命じる。

幾度も機会を得ながら、ここまでアークエンジェルを逃げ延びさせたのは確かに失策だが、それはゼルマンの責任ではない。

原因を突き詰めれば、ヘリオポリスでの最初の戦闘で指揮を執っていたクルーゼや自分にも責があるはずだ。

「―――くそっ!!」

やり切れない気分を抑えきれず、アデスは拳をパネルへと叩き付けた。

その時、レーダー士が報告を上げてきた。

「!? 艦長、不明艦がこちらに・・・いえ、判明しました。ベガ星宇宙軍の母艦がこちらに接近してきます!!」

「なにっ!?」

「更に高エネルギー反応感知!! 標的は・・・ガモフです!!」

アデスは既に加速し、敵戦列の内側に入り込もうとしているガモフに目を向けると思わず叫んだ。

「ゼルマン艦長!!」

それと同時に、動力部付近に高出力のベガトロンビーム砲が直撃し、爆発が起こった。




その頃、戦場ではそれぞれの戦いに決着が着こうとしていた。

νガンダム、シグーのバーニアが光の軌跡を描きながら攻防を繰り広げる。

ジンUやメビウス、デルフィニウムが援護に入ろうとしたが、援護に入った瞬間にジンUはアムロにメビウス達はクルーゼに
あっさり回避しながら放たれた反撃に落とされ、手出し無用の状態になっていた。

しかし、この均衡も遂に破られた。元々機体の性能差があり過ぎており、本来ならここまで勝負が出来る訳がないのだ。

それでもここまで持ったのは、クルーゼのパイロットとしての能力もあるのだが、アムロがシグーを相手しながらも
他の機体、艦隊の援護にも回っていたからであった。

戦況が落ち着き、アムロがシグーの相手に集中していられるだけの余裕が出た今、勝敗は火を見るよりも明らかだった。

「くっ!! あれだけいたジンUがほぼ全滅だと!? この部隊は本当に化け物か!?」

「お前の力は邪悪すぎる! フィンファンネル!!」

舌打ちするクルーゼに、アムロはフィンファンネルを放つ。

「ちっ、サイコミュか!!」

舌打ちをすると回避運動を取りながら、フィンファンネルを撃ち落そうとするが当たらずライフルに被弾する。

ライフルを放り投げながら、背後からの1射を回避するがそこを狙い、別のフィンファンネルがビームを放つ。

バーニアを全開にして回避しようとするが、間に合わず左脚に被弾し破壊される。

体勢が崩れた所を更に狙われ、回避しようとしても完全には出来ずに右肩から先を撃ち落される。

「く・・・シグーでは・・・!!」

クルーゼが苦々しく言葉を発した時、2機の間に動力部から煙を上げているガモフが割り込んできた。

そしてその後を離れずに、マザーバーンが続いて2機の間を横切る。

「マザーバーンと共にメネラオスに向かっている!? させるかっ!!」

アムロはνガンダムを反転させ、2艦の後を追いかけた。




イージスはMAに変形すると、高速でアルトに接近する。

「来るか・・・!」

キョウスケは身構え、自分の間合いに入ると同時にステークを叩き込もうとする。

しかし、アスランはアルトの間合いに入ると同時にスキュラを発射した。

「なにっ!?」

咄嗟に回避しようとしたが、アルトのスピードでは間に合わず、ビームコートが多少威力を殺いでくれたが損傷を受けてしまう。

そのまま、イージスは上昇して変形するとビームサーベルを振り下ろした。

「くらえーーー!!」

どう見ても、回避できないタイミングであると判断すると、キョウスケはアルトをイージスに向かって上昇させた。

「持ってくれ、アルト・・・!!」

首を上に向けさせ、赤熱したヒートホーンでビームサーベルを受け止めた。

「なっ!? 正気か!? このパイロット!?」

その行動にアスランは目を疑うが、キョウスケは不敵に笑い、

「今回の賭けは俺の勝ちだ・・・! この距離でクレイモア・・・かわせるかっ!!」

その状態のまま、キョウスケはクレイモアを発射する。

アスランは咄嗟に下がりながら、シールドで防御するが肩や脚にベアリング弾が命中し、シールドも穴だらけになる。

「バッテリーが!?」

今の攻撃でバッテリーがイエローからあっという間にレッドゾーンに変わり、ギリギリ起動可能な所までおちる。

その時、ヴェサリウスから帰艦の命令が入った。




左のビームサーベルでランサーを受け止め、右のビームサーベルでエルガイムの胴を狙う。

しかし、ダバは受け止められたサーベルを弾き、切り返しで胴に振るわれたサーベルを受け止めるとそのまま体当たりをする。

「きゃっ!!」

「もらった!!」

距離が離れた所を狙い、エルガイムはSマインを投げつけた。

「甘いわっ!!」

Sマインを切り払い、爆炎が生じるが、それをパワーランチャーが切り裂いた。

「しまった!?」

回避しようにも間に合わず、頭部を撃ち抜かれた。

「リム!?」

Ζガンダムのビームライフルを何とか回避し、牽制のランサーダートを放つとニコルがリムのジンUに接触する。

「大丈夫ですか!? リムッ!!」

「何とかね。まったく、ロンド・ベル隊が良心的な部隊で良かったわ・・・普通ならここでトドメの一撃が飛んでくるのに」

リムの無事を確認し、ニコルは胸をなで下ろすとジンUを牽引し、ビームライフルを連射しながら後退を始める。

「一度戻りましょう。その損傷じゃあ・・・」

ニコルの言葉が途中で切れたのを、リムは不思議に思ったが、その理由は直ぐに解った、否、見えた。

「あれは・・・ガモフ・・・よね?」

ガモフが煙を、炎を上げながら第八艦隊の旗艦に向かっていくのがリムにも確認できた。

「ゼルマン艦長ーーー!!」

そちらに向かおうとしているニコルに気付き、リムは制止の声を上げた。

「待ちなさい、ニコル君!! 今から行っても何も出来ないわ!!」

「でも!!」

ニコルは感情に任せて反論するが、リムの言葉を指示するかの様に帰艦命令が入った。




爆発が起こったガモフでは、ゼルマンが弾幕をオートに切り替え、自らが艦の操艦を行っていた。

「くっ・・・! この損傷では突破口を開くのは無理か・・・」

悔しげに呟くと、忌々しげにガモフを砲撃し、この艦を盾にしてこの戦線を突破しようとしている艦・・・マザーバーンを睨みつけた。

「とんだ邪魔をしてくれたな・・・!! だが、ただでは死なん。 このまま利用されはせん・・・!!」

ゼルマンはそのまま艦を第八艦隊の旗艦、メネラオスへと向けた。




ガモフを盾にしながら、戦線を突破しているマザーバーンをマジンガーZとゼロが追いかける。

「どうします? 円盤獣を全機発進させて・・・」

「いや。この艦に搭載されている円盤獣は数が少ない。2、3機を足止めに発進させろ! 地球への降下を優先させる!! 目標・・・」

ジグラは言葉を切り、地球の一点をモニターに表示する。

「日本、極東と呼ばれる島国だ!!」




「くそっ!! セコイ手を使いやがって!!」

足止め用に発進された円盤獣デキデキのシールドブーメランを回避しながら甲児は毒つく。

「邪魔だ、このーっ!!」

フラガがガンバレルを展開し、攻撃するがデキデキはシールドで防御した為、致命傷を与えられない。

デキデキは攻撃が止むと、ベガトロンビームをゼロに向かって放つが、フラガはあっさりと回避する。

「ちぃ! 他の連中はまだか!?」

フラガが苛立ちながら、他の機体の到着を期待した時、1機のデキデキがフィンファンネルで破壊された。

「アムロ少佐!! 他の連中は!?」

「無理だ! この位置じゃあ、俺達以外は間に合わない!! 俺達だけでやるしかない!!」

しかし、無情にもアークエンジェルから帰艦の通信が入った。




「不明艦、ナスカ級を盾にしてこちらに突っ込んで来ます!!」

「違う! ナスカ級は元々特攻するつもりだ!! あの艦はそれを利用してるだけにすぎん!!」

「まさか、刺し違える気か!?」

ハルバートンの訂正の言葉を聞き、ホフマンは信じられないという顔をする。

その時、メネラオスにガモフの放った砲弾が着弾し、ブリッジが大きく揺れる。

ハルバートンは一度歯を食いしばってから、命令を出した。

「すぐに避難民のシャトルを脱出させろ」

虚を突かれたホフマンが、命令の意味する所を悟り顔色を失くす。

ハルバートンはそんな彼を叱咤する様に叫んだ。

「ここまで来て、あれに落とさせてたまるか!!」

そのままハルバートンは通信回線を開き、全艦隊に最後の命令を出した。

「全艦隊に告ぐ! 無事な艦はこれより戦闘宙域を離脱し、月基地へ帰還しろ!! 以後の命令、行動はそれぞれの艦長に委ねる!!
これが第八艦隊提督、ハルバートンの最後の命令だ!! 総員、生き残れよ・・・!!」

通信を終えると、ブリッジから見える一杯にガモフが迫ってくるのが見えた。

メネラオスから1隻のシャトルが発進し、姿勢を制御しながら艦を離れていくのを認めると、ハルバートンの目に僅かな安堵が表われた。

(後は、アークエンジェルが無事に目的地へ着くだけだな・・・)

そう思った時、ガモフがメネラオスへと接触し、各所で大規模な爆発が発生する。

(ロンド・ベル隊・・・地球圏を・・・)

その思考を最後に、ハルバートンの意識と身体は炎と爆発に包まれた。




メネラオスに接触する寸前で、マザーバーンは進路を変えそのまま加速していく。

ガモフとメネラオスの爆発に巻き込んで、沈めるつもりだったがそれはあっさりと読まれていたのだ。

「くそ・・・! 足つきどころか、横槍を入れた艦も沈められず・・・」

ゼルマンは加速して大気圏へ突入していくマザーバーン、アークエンジェルを見ながら拳を叩きつけるとそのまま意識を失った。

その僅か一瞬後、ブリッジは炎に包まれ、艦は爆発しながら、地球の重力に引かれ落ちていった。




「艦長、フェイズスリー、突入限界点まで2分を切ります! 融除剤ジェル、展開用意!!」

ノイマンの声に、マリューより早くナタルが反応する。

「ロンド・ベル隊を呼び戻せ!!  ベガ星宇宙軍は放っておいていい! あちらもこの状況では手出しは出来ん!!」

マリューは凍りついた様にモニターを見つめていた。

ぶつかり合った2つの艦は、装甲を大気との摩擦に灼かれながら爆発を起こしていた。

ふいに、メネラオスが大規模の爆発を起こし、それがガモフにも伝わり2艦揃って爆発四散する。

「ハルバートン提督・・・!」

灼かれ落ちていくメネラオスの破片を見ながら、マリューは立ち上がりゆっくりと敬礼をし、ナタル達もそれに倣う。

(閣下の遺志・・・しかと届けます)




帰艦の通信を聞いたエクセレンは、アークエンジェルに戻ろうとするが、バスターがさせじとしつこくミサイルを発射してきた。

「んっもう!! しつこいと女の子に嫌われるわよっ!?」

「大きなお世話だ!!」

ミサイルを全て回避したところを狙い、高インパルス砲を放つが紙一重で避けられ、3連ビームキャノンで反撃される。

「くっ、キツイ所を・・・」

左肩にかするが、ディアッカは何とか回避に成功し、今度は散弾型に切り替え発射する。

「あまい!! でも、埒がないわね・・・なら!!」

エクセレンは回避すると、そのまま機体をバスターへと接近させる。

「接近戦を仕掛ける気か!?」

ディアッカは予想し身構えるが、ヴァイスはなんとオクスタンランチャーでバスターを殴りつけた。

「なっ! 銃で殴るか!? 普通!?」

「オクスタンは槍って意味なの。槍なら殴ったり突いたりするもんでしょ?」

殴り飛ばされたバスターはバーニアを吹かして体勢を整えるが、エクセレンはそこを狙ってオクスタンランチャーを構え、

「あんま飛ばないけど、威力はあるわよ?」

実弾タイプのBモードに切り替え発射する。

PS装甲でダメージこそないが、着弾時の威力に負け更に吹き飛ばされた。

バスターとの距離が充分に離れた事を確認すると、エクセレンは急いでアークエンジェルへと向かう。

しかし、途中でストライクがまだ大気圏ギリギリでデュエルと戦っているのが目に入った。

「まだ戦ってるの!? キラくん、戻りなさい!!」

しかし、通信は繋がらずノイズしか聞こえて来ない。

自ら行って連れ戻そうとも考えたが、そうすると艦に戻るまで両者の機体が持たない。

どうするべきかと考えを巡らせている時、ウェブライダーがヴァイスの横を通り過ぎていった。

「キラは俺が回収する! エクセレン少尉は帰艦してください!!」

「大丈夫なの!? このタイミングじゃ、帰艦は難しいわよ?」

エクセレンはカミーユに心配しながら問いかける。

「平気です。ウェブライダーならMSを乗せて大気圏突入も可能ですから、ストライクを乗せて直接降ります!」

「了解。無茶はしないようにね」

エクセレンはそう返し、今度こそアークエンジェルへと帰艦していった。




次々と機体がアークエンジェルへ帰艦してくる。

フラガは帰艦した時、まだストライクが戻って来てないのに気付くと全機に問いかけた。

「オイ、坊主は!?」

「なに!? まだ戻ってないのか!? ブリッジ!!」

フラガの言葉に驚き、キョウスケがブリッジに通信を繋ぐ。



ブリッジでは降下シーエンスが最終過程を迎えていた。

「フェイズスリー! 融除剤ジェル展開!」

「なんだ―――ストライクがまだ戻ってこない!? どうなっている!?」

格納庫からの通信をナタルが取り、ミリアリアに確認を取る様に声をかける。

「まだ、デュエルと戦闘中です!! キラ、キラ! 戻って!!」

ミリアリアが泣きそうな声を出しながら応え、再度キラに呼びかけるが、通信機からは雑音しか聞こえて来ない。



「まだ、デュエルと戦闘中―――だそうだ」

キョウスケが通信を切りながら、全機に知らせるように声を出した。

「そんな・・・ストライクにRX-78ガンダムみたいな、単独での大気圏突入は?」

ブリットがマードックに問いかけるが、険しい顔で首を振り、

「・・・その機能はない。角度が良くても、途中で燃え尽きるのがオチだ・・・」

「あら? 平気よ、多分」

暗くなるマードック達に、先程戻ったエクセレンが答える。

「どうしてだ・・・ああ、そういう事か」

アムロが問い返すが、まだΖガンダム、カミーユが戻ってないのに気付き察しがつき頷いた。

「・・・どういう事ですか、アムロ少佐?」

「カミーユのゼータ・・・ウェブライダーはMSを乗せて大気圏突入が可能なんだ。カミーユも戻ってないという事は、
そういう事なんだろ? エクセレン少尉?」

問い返すフラガに答え、アムロは確認の様にエクセレンに振る。

エクセレンは肯定するように頷いた。




「ええいっ!」

「このっ!!」

打ち込んできたデュエルのビームサーベルを、キラはシールドで受け、弾き返すとビームサーベルを横薙ぎに振るう。

後ろに下がりながら、デュエルはビームライフルを連射し、キラも回避運動を取りながら撃ち返す。

「いい加減に!!」

「こんな、所でっ!!」

埒がないと判断したキラは、シールドを構えたままデュエルへと全速で接近する。

「なに!? この戦い方は・・・!?」

前の戦闘で、自分の取ったものと同じだと驚き、イザークは一瞬反応が遅れた。

ストライクはデュエルのライフルを持った腕を蹴り上げ、そのまま体勢をずらして蹴りの軌道を変えると顔面部を蹴り飛ばした。

「なっ、貴様はガンダムファイターかーーーっ!?」

蹴りの勢いで大きく後方に飛ばされながら、イザークは毒つく。

この隙にキラは離脱しようとするが、デュエルは素早く体勢を整え、ライフルを構える。

その時、偶然、両者の間をメネラオスから発進したシャトルが横切った。

「この・・・! 邪魔を・・・」

イザークはシャトルを見ながら毒つき、シャトルを避けて撃とうかと思った時、レーダーがもう一つの物体、巨大な艦を捉えた。

「なんだ・・・?」

「あれは・・・ベガ星宇宙軍の母艦!?」

キラもそれに気付き、モニターに映った大型艦を見て声を上げた。



進路を塞ぐ様に降下しているシャトルを、ジグラは邪魔そうに見た。

「ふん、戦場から逃げ出した臆病者どもが・・・目障りだ、撃ち落せ! 破壊後加速して大気圏を突っ切るぞ!!」



「まさか・・・撃ち落す気か!?」

相手の意図に気付いたキラは、バーニアを吹かしてシャトルへと向かう。

イザークは迷っていた。今、背後から撃てばストライクは落とせるかもしれない。

だが、こんな勝ち方でいいのか? そんな戦いでアムロ・レイを超えられるのか? それ以前に、無防備な者を見捨てるような真似を
恥ずかしくなのか? だが、ストライクには傷の借りがある・・・コーディネーターの自分がナチュラルを守る道理も義理も無い・・・

イザークの中で戦士としてのプライド、ザフトの兵士としての自覚、復讐心が対立する。

しばらく迷った挙句、

「ええいっ!! 今回だけだ!! ゼルマン艦長の仇でもあるしな!!」

自分なりの妥協の意思に辿り着き、シャトルへと向かった。

マザーバーンから発射されたミサイルを、キラはシャトルへと向かいながら撃ち落すが、4発撃ちもらし、シャトルへと接近していく。

「やめろーーーっ!!」

キラは叫び、着弾すると思えたミサイルを目で追った。

その時、後方からもビームライフルが飛来し、残った4発を撃ち落した。

「なに・・・? デュエル・・・!?」

撃ち落したのがデュエルだと分かると、キラは意外そうに呟いた。

「ちっ! なにをぼさっとしている!? 守るならさっさと、行かないか!!」

イザークはストライクを罵倒すると、そのまま加速してマザーバーンの目の前・・・シャトルを守る様に立ち塞がる。

シャトルに乗っている避難民、キラは不思議そうにその光景を見ていた。

何故、ザフトが自分達を守る様に立ち塞がるのか、と。

イザークは残ったグレネードランチャーを全弾発射し、マザーバーンに攻撃を仕掛ける。

しかし、大した損傷はなく、マザーバーンはそのまま砲撃を仕掛けてきた。

「ふん、死にに来たか。撃ち落せ!!」

ジグラの号令で膨大なミサイルがデュエルへと放たれた。

後ろにシャトルがある以上回避する訳にも行かず、イザークはビームライフル、レールガンで極力撃ち落そうとするが、数が多すぎた。

何発もの撃ち落せなかったミサイルがデュエルに迫る。

その時、横から散弾が飛来し、撃ちもらしたミサイルが全て破壊される。

「・・・ディアッカ!? 戻ってなかったのか!?」

「ったく、何時からボランティア精神に目覚めたんだよ、お前?」

驚くイザークに、ディアッカは呆れた様に返し、高インパルス砲を構え発射する。

放たれた高出力のビームは、ミサイル砲台の一つを破壊した。

続けざま、ストライク、デュエルがビームライフルを放ち、残ったミサイル砲台を破壊する。



「ミサイル砲台、破壊されました!! 大気圏突入まで後、1分です!!」

兵士の報告に、ジグラは歯軋りをした。

「おのれ、邪魔をしおって・・・! 残った全ミサイルを発射しろ!!」

「ベガトロンビーム砲を使わないのですか?」

思わず聞き返した兵士の頭を殴り、ジグラは答える。

「馬鹿者!! ミサイル砲台はパージ出来るが、ベガトロンビーム砲はパージ出来ないのだぞ!?
この状況でビーム砲が破壊されでもしたら、この艦といえど大気圏で爆発するわ!!」



マザーバーンの残った砲台から、先程までとは比にならない程の量のミサイルが発射された。

デュエル、バスター、ストライクが何とか撃ち落そうとするがどう見ても手が足りない。

「ちぃ、数が多すぎる!!」

「くそっ! リムが居ないのに、貧乏くじ引いたか!?」

イザーク、ディアッカは毒つきながらも最後まで足掻こうとする。

(このままだと、シャトルが・・・なら!)

キラは覚悟を決めると、シールドを前に出し、ビームライフルを連射しながらミサイルへと向かって行く。

「何をするつもりだ!? ストライク!?」

イザークはキラが何を考えて行動したのか理解できなかったが、それは直ぐに解った。

大量のミサイルが通るコース上にシールドを構えて立ち塞がり、機体ごとシャトルの盾になったのだ。

ミサイルが着弾するたびに、機体が後ろに吹き飛ばされるが、その度にバーニアを吹かしてストライクはその場に止まり続ける。

「正気か!? いくらPS装甲があるとはいえ、バッテリーが持たんぞ!?」

ストライクの行動が信じられないイザークは、迫ってきたミサイルを撃ち落しながら叫ぶ。

「ぐうっ・・・!!」

機体に振動が走るたびに、バッテリーがどんどん減っていく。

その振動の中で、女の子に貰った折り紙の花がキラの視界に入った。

それは彼の人生の中での初めての勲章、誰かを守りきれたという証拠だ。

(だから、あのシャトルは最後まで守り抜いてみせる・・・!!)

しかし、無情にもストライクのバッテリーがレッドゾーンへと差し掛かっていた。




「! 後方より、高エネルギー反応!!」

「なんだとっ!?」

「いっけぇー!!」

ジグラが問い返した瞬間、ウェブライダーのハイパーメガランチャーがミサイル砲台の一つを貫いた。

「なっ!? 例の部隊の機体か!?」

「更に、もう一撃来ます!! 直撃コースです!!」

兵士が悲鳴じみた報告を上げると同時に、ジグラは指示を出した。

「ちぃ、機関最大、進路変更!! 目標地点の近くの海に降りれればいい、回避して見せろ!!」

装甲にかするが、ハイパーメガランチャーをどうにか回避し、進路を変えながらマザーバーンは加速して大気圏に突入していく。

「くっ、落とせなかったか・・・」

カミーユは加速して降下していくマザーバーンを見て、苦々しく呟いた。




マザーバーンが離脱する際に放ったミサイルにより、ストライクは後ろに吹き飛ばされる。

そんな状態の中、キラはシャトルの無事を確認すると安心した様に息をついた。

だが、バーニアを吹かして艦に戻ろうとするが一向に機体が進まないのに気がついた。

「なっ!? 戻れない!?」

地球に近づきすぎた事にキラは気付き、バーニアを全開にするが落ちる速度が遅くなるだけで、前に進む事が出来なかった。

降下速度、機体の温度が上がり、コックピットの温度も上昇する。

その時、機体に振動が走り温度の上昇が止まった。

『キラ! 大丈夫か!?』

接触回線でストライクを乗せているウェブライダーから通信が入る。

「カミーユ・・・さん・・・」

助けが来た事にキラは安心すると、緊張の糸が切れ意識を失った。

「キラ!?」

キラからの返答がない事に、カミーユは焦りながら降下予想地点を算出する。

「くそ、このままだとアークエンジェルの降下地点から大きく離れるぞ・・・」

機体の進路を変えようにも、今からではそれも無理であった。



一方、イザーク達も戻る事が出来ず地球へと落ちていっていた。

「どうするんだ、イザーク!?」

「考えはある! 俺の後ろに付いてろ!!」

イザークはそう返すと、シールドを構えてシャトルの後ろに回り、バスターもその後ろに回る。

その方法に気付いたディアッカは思わず問いかけた。

「オイ、これって・・・?」

「そうだ、一年戦争のアムロ・レイに倣う! 冷却システムを最大にしろ!! これならスペック上、何とか持つ筈だ」




「本艦とストライク、ウェブライダーとの突入角に差異! このままでは降下地点が大きくずれます!!」

「ウェブライダーでも戻れないのか!? 艦長!!」

サイの報告に、ナタルはマリューに呼びかけると彼女も即座に頷き、

「ええ! 艦を寄せて! アークエンジェルのスラスターなら、まだ使える!」

「しかし、それでは艦の降下地点も・・・!」

ノイマンが抗議する様に聞き返すが、ナタルが封じ込める様に返しながら指示を出した。

「ストライクを見失って、本艦だけアラスカに降りても意味はないだろう!! 降下予測地点の割り出し、急げ!!」

指示され、士官達が慌てて計算し、その間にアークエンジェルがゆっくりとストライク達へと近づいてゆく。

「出ました・・・これは!? アフリカ北部!!」

「確かそこって・・・?」

マリューの言葉にナタルは頷き、緊張したように応える。

「ええ・・・完全にザフトの勢力圏です」




一方その頃、プラントでは舞歌が草壁からの通信を受けていた。

「正気ですか!? たったそれだけの戦力で、ロンデニオンを襲撃するんなんて!!」

『言葉を慎みたまえ、東舞歌少将。これは正式決定した命令だ。繰り返すぞ、
白鳥九十九少佐を、直ちにアルテミスの攻略を終えた秋山源八郎、月臣元一郎達と合流させ、ロンデニオンに向かわせろ。
優華隊全員はクルーゼ隊に協力、彼の指示に従うように・・・以上だ』

草壁はそれ告げると、一方的に通信を切った。

「はあ・・・何を考えてる、草壁は・・・?」

舞歌は息を吐いて、呟き、舞歌の隣りで聞いていた千沙は何かに気付いて問いかけた。

「まさか、舞歌様の暗殺を狙っているのでは・・・?」

今回の命令により、舞歌の部下の全員が彼女の元を離れる事になる。

事あるごとに対立し、和平派の中心である舞歌は徹底抗戦、タカ派の草壁にとっては邪魔な存在でしかない。

暗殺するならばこれ程整った舞台はないだろう。

だが、舞歌は首を振り千沙に応える。

「それは・・・今の状況ではないわ。今の木連の和平派と抗戦派の比率は4:6・・・抗戦派が多いけど圧倒的とは言えない差よ。
抗戦派の中には、今の状態ではと条件付で草壁を支持してる人間も多いしね。
もし、この状況で私が病死、事故死とかで不審な形で死んだら最初に多くの人間が暗殺と疑うわ。
そうなったら、最初に疑いがかかるのは草壁と北辰達よ。木連内で草壁への疑惑が高まれば、市民達は草壁を支持しなくなり
必然的に和平派への支持へと回る事を予測できない連中じゃないわ」

「・・・つまり、現状では草壁達が舞歌様の命を守る、と?」

「そう。本当に事故死とかしても、現状ではそう考える人間が木連内では多くいるって言うのがポイントね。
軍内部の和平派を抑え、市民達の多くからも支持を受けるまでは私を暗殺するような事はしないわ」

舞歌の返答に、千沙は納得するが直ぐに不思議な顔になる。

「では、今回の命令の真意は・・・?」

「・・・それが判らないから悩んでるのよ。私の暗殺は今はまだ出来ないし、和平派の排除を目的なら私は邪魔になるはずだし・・・」

難しい顔をしながら、舞歌は悩むと息を吐き、

「あっちが階級が上な以上、命令には従うしかないわね・・・千沙、あなたもみんなと一緒に地球に降りてもらうわ」

「なっ!? 私もですか!?」

舞歌の言葉に千沙は思わず聞き返す。

「ええ・・・それであなたに頼みがあるのよ」

舞歌の目の色が何時もに増して真剣味を帯びている事に気付き、千沙は表情を引き締める。

「機会があれば・・・いえ、どうにかクルーゼの目を盗んで連邦の和平派の中心人物、世界に大きく影響を与えられる人物、組織
―――例えば、ロンド・ベル隊とか、その関係者ね―――に接触して伝えて欲しいの。木連は和平を望んでいるって」

「しかし、その事はリリーナ・ドーリアンを通じて連邦に伝わってる筈なのでは?」

千沙は今回はいなかったが、前回シーゲルとの会議に出席していたリリーナの事を思い出し聞き返した。

「その筈なんだけど・・・シーゲル議長の話だと地球の一般レベルではその話は出回っていない様なのよ・・・
彼女が嘘をついてるとは思えない以上、軍が情報管制を布いていると考えるのが妥当ね。
なら、上からじゃなくて下から・・・市民、一般レベルから和平に動かすしか方法がないわ」




第十六話へ続く



あとがき

作:ようやく、地上編へ移ります・・・が、次回からではありません・・・多分。
なんか『ナデシコは?』というメールが届いてるので、ロンデニオンに着くまでの話をやろうかなーと考えてたりもします・・・
まあ、結果は次回をお楽しみにという事で(汗)
今回、かなり原作からの変更点がありました。まずは、原作終盤の影の主役、イザーク君。
原作では復讐心のみで動いていた様ですが、この世界ではちょっと違います。
原作だと、自分が一番じゃなければ嫌だというみたいな自己中ぶりを発揮してましたが、この世界では自分より上の連中がナチュラル、
コーディネーター問わずごろごろ存在しており、アムロ・レイという明確な目標があるので、早い段階で戦士として自覚するのではと思い、
こんな展開になりました・・・私なりの解釈です。文句はお手柔らかにお願いします。(大汗)
次に、シャトルとXナンバーのスペックについてですが・・・まずはXナンバーのスペック。
あのシーンを何度見ても思います。嘘だろ、あの突入の仕方、つーか性能的にと。
まあ、ガンダニュウム合金で出来ているのならまだ納得は出来ますが、PS装甲のみですし・・・
ストライクはウェブライダーがあるから良いとして、デュエル達は・・・と考えた結果、シャトルが生存する事になりました。
ガンダムエースでは、あの方法ならTV版より機体に負荷が掛からないと書いてありましたので、採用させて貰いました。
それに、本当は死ぬ者が生き残るのは、スパロボのお約束でもありますし。


イネス博士のなぜなにスパロボ


イ:今回、ツッコミが多そうな事が多いわね・・・まあ、苦労するのは作者だし。

『ビームライフル切り払いって・・・』

イ:無茶と思うかもしれないけど、アムロ少佐は逆襲のシャアで実際やってるのよね・・・なんでゲームではしないのかしら?

『キラって年下好み?』

イ:トールのからかいネタよ。真に受けないように。

 

 

管理人の感想

コワレ1号さんからの投稿です。

ハルバートン提督はお亡くなりになりましたが、民間シャトルは無事でしたね。

・・・・・・・・・・・・・・・キラのトラウマが一つ減りましたな(苦笑)

ま、この面子が揃っていて、シャトルが撃墜される事があるとは思いませんでしたがw

フレイ嬢が刻一刻と黒くなっていかれる姿が、何とも頼もしいです。

でも今回の話は、SEED関連だけでしたねぇ

 

 

>しかし、飛来したビームをアムロはビームサーベルで切り払った。

>「なっ!? 嘘だろっ!?」

 

いや、そりゃ驚くだろ(爆笑)