紅の軌跡 第5話




イザーク・ジュールの目の前に人類の作り出した巨大な建築物、宇宙への回廊がそびえ立っている。

これこそがオペレーションスピットブレイクに参加した全ザフト兵の最優先目標、マスドライバーである。
グゥルによる低空飛行で途中の防衛陣地を突破し、その後は的確に相手陣地の隙間を縫い、防衛のために現れる敵を巧みな操縦で次から次へと排除してきた結果、彼の率いる部隊はその並外れた突進力によりマスドライバーへの一番乗りを果たしたのである。

当初の計画では占領が予定されていたが、北米大陸に存在する連合地上軍の圧力を受けつづけること、またザフトの地上における主要拠点、ジブラルタル及びカーペンタリアからの距離が大きいこと、また、これ以上の兵力分散を避けるために占領ではなく破壊が命ぜられた代物である。

イザークにとっては占領などまだるっこしいと感じられていたので、作戦目的の変更は非常に歓迎できるものだった。

さっと周囲の状況を確認し、差し迫った脅威がないことを確認したイザークはマスドライバーの破壊を開始する。

「よし、再建不可能なまで、跡形もなく破壊する!」
「「「了解!」」」

イザークの命令に部下のジンが一斉にマシンガンを発砲する。

イザーク自身もデュエルガンダムの全火力、頭部75ミリ対空自動バルカン砲(イーゲルシュテルン)、175ミリグレネードランチャー、57ミリ高エネルギービームライフル、アサルトシュラウド追加武装220ミリ径5連装ミサイルポッド、115ミリ電磁レールガン(シヴァ)をマスドライバーに叩きつける。
まるで、武装を残したまま戦闘が終わってしまっては戦士として恥となるといわんばかりに・・・

イザークの部隊以外にも、連合軍の防衛ラインを突破してきたジンが同様に持てる火力を片っ端からマスドライバーにぶつけている。同様にバクゥもその背の砲やミサイルランチャーを撃ちまくっている。

「ナチュラルは、重力の井戸の底で大人しく這いつくばっていろ!」

全力射撃の凄まじい反動に震えながら、イザークが吼える!

そんな彼のMSに、連合の最後の希望を守らんと生き残っていたストライクダガーがビームサーベルを手に襲い掛かる。周りのジンとは明らかに異なる機体に、指揮官と判断したのだろうか。あるいは、奪われたガンダムだとわかっていたのかもしれない。
だが、たった1機のストライクダガーでしかも近距離用兵器を手にデュエルガンダムに立ち向かうのは、勇気を通り越して単なる無謀な行為でしかなかった。

「雑魚が俺の邪魔をするな!」

遮蔽物から出てきた時点でセンサーにより敵MSを認識していたイザークは、マスドライバーへの射撃を一旦停止すると、ストライクダガーの攻撃を片腕でいなし、そのまま引き抜いたビームサーベルで相手MS腰部のあたりを抉り抜き、上下に分断する。

「ふん。その程度の腕で俺の相手が務まるか!」

足元に無残な状態で横たわる両断されたMSを一瞥しただけで、マスドライバーへの射撃を再開する。

巨大質量を宇宙に飛ばすために尋常でない耐久力を持つ構造材も、許容量をはるかにオーバーし、次々と加えられる衝撃と熱量にやがて限界を迎え、マスドライバーを支える橋脚が破断する。
一箇所が破断し、更に次々と破断する箇所が発生すると、それまで自身に与えられていた尋常でない耐久力を保証するマスドライバー自身の構成材が、自重により自壊が始める。
次から次へと構造材がまるで飴のように曲がり、それでも最後の意地とばかりに抗ってそびえ立っていたマスドライバーが雪崩を打つような崩壊の時を迎える。

軋むような音と共にその存在を別のものに変えてゆくマスドライバーを見ながら、イザークは任務達成を喜ぶ部下たちの声を未だ響く銃声と共に聞いている。
生き残りがいないか付近の警戒を続けながら、彼の脳裏にはこの戦闘で撃破してきた敵MSが思い返されていた。

先ほどの戦闘も含め、イザークは連合軍の最終防衛ラインでこれまで見たことのなかった連合のMSを撃破した。
足つきに搭載されていたストライクとは明らかに異なるフォルム。何より換装システムを搭載しておらず武装も同一。
それでいて、数量だけはそれなりにそろっている。

こいつらは、ヘリオポリスから奪取したガンダムとはコンセプトが違う。おそらくは別系統で開発されていたモビルスーツに違いない。

イザークの考えはあたっている。
ヘリオポリスで作られていた5機のガンダムは、MSの持つポテンシャルを調べるためのワンオフものだ。これでもかといわんばかりに盛り込まれた数々の新機軸とそれぞれにあまりにも特化した能力を持っていることもそれを証明している。
ただ、他のガンダムのベースとなったデュエルガンダムはその限りではなかったが、今のイザークにそこまでわかるはずもない。

ワンオフあるいはスペシャル機であるガンダムシリーズに対し、ストライクダガーは一般のパイロットが操縦することを念頭に作られており、ビームライフル及びビームサーベルの搭載により武装こそジンを上回っているものの、その能力は無難にまとめられている。
以前はナチュラル用OSに問題を抱えており、戦闘機動など夢のまた夢であった。
だが、第八艦隊経由でストライクガンダムの戦闘情報及び改変されたOSを手にいれることが出来たことから、この問題を解決に導く事に成功し、はれて連合の量産型MSとして初陣を迎えたのである。
もっとも、その結果は不本意にも無残な敗北となってしまったが。
だが、ランチェスターモデルを用いるまでもなく、練度及び数量において劣る部隊が勝利を収められるはずもない。
敗北は当然の結果だ。

防衛ラインを突破した後続部隊が、既に断末魔の悲鳴をあげているマスドライバーの攻撃に加わるのを見て、イザークは自機の射撃を停止した。
同時に隊長機の射撃停止を見て、彼の部下たちもマシンガンの発砲を停止する。

「よし、後の破壊は後続部隊に任せて俺たちは周囲に残っている部隊の掃討戦に移る。いいな。」
「「「わかりました。」」」

鉄骨の巨竜の亡骸を見やったイザークは、いまだ戦場音楽の鳴っている方向に愛機を歩ませ始めた。その様子は部下たちから見て歴戦の戦士を思わせた。




ザフトの地球侵攻作戦「オペレーション・ウロボロス」。

それは最終章たるパナマ侵攻作戦「オペレーション・スピットブレイク」の成功によって当初の作戦目的を達成した。
赤道を中心とする低緯度地域の宇宙港は全てザフトの占領下に置かれるか、あるいは再建に数年を要するほど徹底的に破壊された。
ザフトが放ったウロボロスは、パナマにてその尾を飲み込み円環を完成させたのである。


プラント最高評議会議長パトリック・ザラは、オペレーション・ウロボロスの完遂をもって地球連合に対し停戦と講和の会談を呼びかけるが、連合側はこれを即日拒否。

戦争の季節はまだ終わらない。










あとがき

なんかイザークが格好いいなあ?
別にイザークをよいしょするつもりはないのに?

まあそれはともかく、これにてオペレーション・スピットブレイク編終了です。
読んでいただき、ありがとうございました。

連作短編もどきとはいえ、続き物を書いたのは初めてなので楽しめました。
でも、読み切りは投稿したらそれで終わりですけど、長編は続きを書かねばというプレッシャーって皆さん感じないのでしょうか?
そのあたりを考えて、第5話でかなりきれいな切り方にしています。
このまま、続きを思いつけずに失踪しても大丈夫なようにと(笑)


私信:
本家たるearthさん、とりあえず「紅の軌跡」はこんな感じになりました。
アズラエルを描写しないで済むように、あえてザフト側しか書いていません(笑)
読んでそして楽しんで頂ければ幸いです。



 

 

代理人の感想

うーん・・・正直戦記物の一話分の量しかない上に、実質作戦一つを書いてるだけなので、喰い足りないですねぇ。

仮想戦記は言わば戦略級の小説であり、作戦はその一部でしかないんですね。

今回、パトリックの中の人が戦略を練るシーンが全くなかったのも仮想戦記としては大欠点かと。

作戦一つだけで話を進めるなら、作戦の中でドラマを起こし、それを完結させなければいけないと思います。

 

 

> 原作の中でも評価の高かった戦闘シーン

えーと、あそこ以外で評価できる戦闘シーンって種にありましたっけ(爆死)。

> #にしても感染するのか、あれ?
> #もしそうだったら・・・すんごく恐ろしいぞ、おい?
> #とすれば、感染者の筆頭は・・・代理人!?!?

待てそこ。