紅の軌跡 第9話

 

 

 

 

 

 漆黒の宇宙の中を2隻のナスカ級高速戦闘艦が静かに進んでゆく。

 オペレーション・スピットブレイク成功後に始まった、地球連合の月−地球間の補給線遮断を目的として繰り出された多数のハンター部隊のひとつである。

 なお、ハンター部隊はナスカ級のみで構成されている。これは、その俊足を生かした多方面での襲撃が予定されているからであり、また、圧倒的多数の敵にぶつかった場合、速やかに退却するためでもある。

 現時点においてナスカ級を上回る速度を持つ戦闘艦は連合には存在しない。かろうじて、アークエンジェル級が肩を並べるくらいだろう。

 そして、そのナスカ級の一隻ファロビウスの艦橋では襲い掛かるべき獲物を発見したことが首脳部に伝えられていた。

 「間違いありません、地球連合の輸送船団です。地球から月面に向かうものでしょう。

  船団は250m級戦艦2、護衛艦8、コンテナ船20で構成されています。

  今までと比べて、護衛戦力がかなり充実していますな。」

 それを聞いた指揮官は念のため周囲を確認する。

 「索敵班、周囲に他の敵影はあるか?」

 「戦闘可能圏内に敵影ありません。」

 間髪いれずに返答が返る。

 返答を聞き、指揮官は少しの間考え込む。

 敵艦隊を発見してから、別シフトの人間まで投入して索敵を実施しているため監視密度が上がっている。熱放射や電波放射をぎりぎりまで低下させたステルス航行をしている艦隊でもなければ見落としはありえない。

 逆に、ステルス航行をしている艦隊がいるとすれば、この輸送船団は囮で、それに食いついたハンター部隊は間抜けな狼ということになる。

 どちらの結果が出るかは、よっぽどの僥倖に恵まれて伏兵を発見できた時以外は、賭けと同様やってみなければわからない。

 「指揮官殿、どうされます?」

 「いささか敵戦力が想定よりも大きいかもしれんが、新しい戦力を確認するのにはちょうどよい相手かもしれん。仮に伏兵がいたとしても、本艦とガレノスで十分叩けるだろう。」

 「確かにこれほどの獲物を見逃すのは癪ですからな。

  よし管制、聞いての通りだ。MS部隊の発進準備。3分後に出せ。」

 艦長の指示に通信士がMS発着デッキに連絡をつなぐ。

 「MS部隊、発進準備。各機システムチェックを開始して下さい。3分後に発進します。」

 とたんに喧騒に包まれるMS発着デッキ。ノーマルスーツを着た整備兵達が最終確認のため無重力空間を飛び回る。

 ブリーフィングルームに集まっていたパイロット達がコックピットに搭乗し、つかの間の眠りから覚めた巨人たちが、管制の指示に従いカタパルトに進む。

 「ゲイツ、リニアカタパルトに乗りました。スタンバイOK。」

 「よーし、出せ!」

 グリーンシグナルが点灯し、管制の掛け声とともに白基調のMSが打ち出される。

 ハンター部隊を構成する2隻のナスカ級高速戦闘艦ガレノス及びファロビウスには、これまでのザフトの主力MSであるジンが3機と最近配備が始まったばかりの新型MSゲイツが3機、それぞれ搭載されている。

 ファロビウス搭載のゲイツの1機は隊長用としてカスタマイズが施された白基調の機体で、残り5機が一般用のグリーン系統のものとなっている。

 これほど早く、次世代量産型MSであるゲイツが前線に配備されたのは、最高評議会議長パトリック・ザラの強い指導によるものであった。

 

 プラント防衛用に新型MSを配置したならば、それと同数の新型MSを前線に配備せよ。

 

 ザフト宇宙軍の兵士達は、このザラ議長の宣言による新型MSの前線配備優先の姿勢を高く評価している。

 むろん、開発途中のMSを配備されるのは困りものだが、一通りのテストも完了し、後は実戦で問題点を洗い出すだけとなった段階であれば、喜んで受け入れようという考えだった。

 仮に何か問題が発生したとしても、何とかできるだけの能力を持っているからできることかもしれないが、実際、ヘリオポリスで奪ったばかりのGシリーズを直ぐに戦闘に投入できたことがコーディネイターの持つ能力の高さを示している。

 次々とゲイツとジンが発進し、念のため残されたゲイツ2機以外全ての発進が完了する。

 その間もファロビウスとガレノスは加速を続けたため、地球連合の輸送船団も自らに襲い掛からんとする狼の存在に気づき、戦闘態勢を取りつつあった。

 

 

 戦闘前の前奏曲として、静まり返った宇宙空間に対し戦闘出力のジャマーが双方のレーダーと電波通信に干渉を掛ける。

 とは言え、ザフト艦隊と地球連合輸送船団の距離は共に主砲を正確に命中させられる範囲に至っていない。普通なら、あと暫くの接近が必要だ。・・・・だが下された命令は、

 「全艦主砲三斉射、斉射後は再度命令があるまで発砲を中止。敵艦隊の観測に集中せよ。」

 艦長による先制攻撃命令であった。

 一部乗員が首を傾げたが、軍隊において上官の命令は絶対である。そのまま、ナスカ級の主砲が火を噴いた。

 星の光が照らし出す黒いキャンバスを、2隻のナスカ級から発した主砲三斉射の光条が敵艦隊まで伸び、そして新たな光が生まれた。

 運悪く1隻の護衛艦がミサイル格納庫に直撃弾を受けミサイルが誘爆、船体がちぎれて大破、戦闘続行不可能となったのだ。

 主砲の有効射程距離外からの砲撃によって護衛艦の1隻が戦闘不能となったことは地球連合軍に衝撃を与えた。

 指揮官または艦長が冷静ならば、これを偶然あるいはラッキーヒットと判断し落ち着いて対処するだろうが、目の前での僚艦の撃沈により軽いパニック状態になってしまった護衛艦隊は、艦長が各個の判断で応戦を開始してしまう。

 「よし!、観測班、現在弾幕を張ってない艦をマークしろ。

  砲撃手、弾幕を張ってない艦を重点的に狙え。弾幕を張ってる艦はまだ戦闘に慣れてない。だが弾幕を張ってない艦は、恐らく戦闘に慣れた手練れだ。敵の反撃の起点になる可能性がある。最初に沈めろ!」

 艦長は手早く指示を送る。

 戦場において武器弾薬は有限である。それを理解している将は可能な限り無駄玉を減らそうとする。

 最初の射程外からの斉射は、敵を「ふるい」にかけるのが目的だったのだ。

 統制のとれていない地球連合軍からの砲撃が続く中、やがて両艦隊の速度の違いから有効射程にまで近づく。

 その時点で艦に随伴していたジン6機とゲイツ4機がスラスターの噴射とともに突撃を開始する。

 それとともにファロビウスとガレノスは加速を停止。それまでの速度の違いに従って、徐々に相対速度を同調させつつ、有効射程ぎりぎりでの援護射撃を始めた。むろん狙いは先ほどふるいに掛けられた艦である。

 ザフトのMS部隊の展開をみて地球連合のMAメビウスも展開を始める。さらに250m級戦艦からはMSがそれぞれ2機づつ、合計4機発進してくるのが確認された。

 「地球連合のMSか。」

 「パナマで確認されたものと同一の機体のようですな。開発番号GAT−01、機体名はストライクダガーというそうです。 」

 指揮官のつぶやきに艦長が答える。

 「護衛部隊で、実戦運用の動作テストをしていたといったところか。」

 「おそらくそうでしょう。これで、護衛部隊の規模が大きかった理由がつきます。」

 「ふん。これまでのような楽な戦闘は終わりにきているのかも知れんな。」

 「ですが、MSを手に入れたばかりの地球連合に満足な運用ノウハウがあるとも思えませんが?」

 「だが、足つきの戦闘記録ぐらいは手に入れているだろう。優秀な軍人にとってはそれでも十分な参考になるはずだ。」

 「確かに、おっしゃるとおりかもしれませんが、知将ハルバートンを失った後の地球連合に有能な将官が残っているでしょうか?」

 艦長の言う通りであった。ザフトをてこずらせた地球連合の有能な将官達は、かなりの数が月面のグリマルディ戦線やL4での激戦で戦死している。

 彼ら、国家に忠節を尽くし死んでいったものたちがいたればこそ、ザフトの勢いを食い止め膠着状態に持ち込むことができたといっても過言ではない。

 「むろん、私の考えすぎならばそれに越したことはない。今しばらくは楽ができるということだからな。」

 今後の戦闘についての考察が行えるのは後方にいるものの特権だろう。そのような先のことは、今まさに突撃中のMSパイロットにとってはどうでもいいことだった。

 「全機突撃速度を上げろ。ヒヨッコは、敵艦隊までは絶対止まるな。

  相手のMSとMAは俺たちに任せて、とにかく突っ切って母艦を沈めろ。」

 「「了解しました!」」

 

 

 地球連合のMS4機、MA8機とザフトのMS10機がぶつかりあう。

 そのうちジン2機が先の隊長の指示に従い、応戦することなしに回避行動のみで迎撃を高速度で突破する。

 あわてて、ストライクダガーのうちの1機が追いすがろうとするが隊長の操るゲイツのビームライフルに貫かれあっけなく爆発する。

 「敵に後ろをあっさり取らせるとは、なっちゃいないな連合のMSパイロットは。」

 新型MSゲイツの性能を実戦で確認し、その能力が想定どおりであることに満足しつつ、MS部隊の隊長が苦笑する。

 俺の部下だったらあんな無様な操縦をするような奴は格納庫掃除の刑だな。

 そんならちもないことを頭の片隅に思い浮かべながら、機体をさっと左に流す。

 「おっと。」

 つい先ほどまで機体のあった空間を白光が貫く。僚機をやられ怒り狂ったストライクダガーが、ビームライフルを乱射しつつ突進してきているのだ。

 「甘いな、連合のルーキー君。」

 なおも続く攻撃を滑るようにかわすと、狙い済ました一撃をみまう。

 怒りに我を忘れていたのか、そのストライクダガーはひたすら攻撃に集中していたため回避運動が遅れる。ゲイツの一撃は、ビームライフルを持った腕を吹き飛ばし、続いての一撃が頭部を吹き飛ばす。

 質量の急激な変化に対応が間に合わなかったのだろう、続けざまの衝撃に胴体部をさらけ出す形になったストライクダガーを最後の一撃が打ち抜き、ひとつの命がまた新たな閃光と化す。

 「こんなものか?」

 隊長がつまらなそうにつぶやくが、それは連合のパイロットにとって酷であろう。

 機体制御の大半をOSに任せ、かつパイロットが行うべき事柄をパターン化、極限化することでナチュラルにもMS戦闘が可能となったが、MSの高機動性の根幹をなしているAMBAC(アンバック)−能動的質量移動による姿勢制御−をOSが自動制御してくれるとはいえ、それはあくまで”使う”レベル、基本動作でしかない。AMBACを”使いこなす”にはパイロット側にもそれ相応の経験と腕前が必要なのだ。そして、その両方を兼ね備えたパイロットなど地球連合には極々少数しか存在していない。

 そんな隊長の贅沢ともいうべき不満をよそに戦闘は継続していた。

 「よし。あちらのほうも取り付いたか。」

 望遠モニターに爆沈しつつある連合の護衛艦をとらえ、満足そうにつぶやく。

 先ほど迎撃網を突破した隊長いわくヒヨッコが操る2機のジンが連合の艦隊に取り付き、護衛艦を沈めたのである。

 期待の新型MSが早くも半分撃墜され、艦隊も次々と沈んでいく。

 この状態で連合軍が浮き足立っても非難はできないだろう。恐怖は伝染するものだし、その速度は勇気が伝染するよりも圧倒的に速い。

 そして、浮き足立った状態でただでさえ劣勢の戦闘を維持することなどできはしない。

 さらに、1機のメビウスがゲイツに撃墜されたのをきっかけとして連合軍は一斉に退却に移った。誰もが第8艦隊の将兵のように踏みとどまって戦えるわけではないとはいえ、練度と戦意の低さは悲しいものがある。

 だが、ザフトも逃げる敵をそのまま見逃すほどお人よしではない。

 「ゲイツ全機、およびジン2機は敵機動兵器部隊を追撃する。残りのジン4機は輸送船団を叩け。」

 「了解。」

 指示に従い、鈍重な船体をそれでも精一杯の加速で四方八方に分散して生存確率を上げようとしているコンテナ船達にジンが襲い掛かる。

 絶望的な状況だが、コンテナ船は最後まで抵抗をやめない。自分達が一分でも一秒でも多く敵をひきつけることで、残りの味方が逃げ延びる可能性が上がることを承知しているからだ。蹴散らされた護衛の機動兵器部隊に見習わせてやりたいほどの覚悟である。

 しかしながら、鈍重なコンテナ船と機動性に優れるMSではできることにあまりにも差がありすぎる。2機のジンによって船首と船尾を破壊されるとほとんどできることはなくなった。

 ジンはさらにコンテナ部分にも銃撃を加え、無傷なコンテナがないように満遍なく破壊する。

 とうのも、地球上では船体さえ破壊すれば、後は海の中に沈むためわざわざ中身を破壊する必要はないが、宇宙の場合、破壊された時点の慣性に従ってコンテナは移動し続けるため、場合によっては後日の回収が可能なのだ。

 それでは、輸送船団を襲った意味が薄れてしまうのでジンはコンテナも破壊しているのである。

 後部から破壊していたジンであったが、真ん中あたりのコンテナを撃ち抜くと閃光とともに巨大な爆発が発生した。

 どうやら、このコンテナ船は武器弾薬を輸送していたらしい。誘爆したコンテナにより全てのコンテナが破壊されていた。

 破壊を確認したジン2機は、続いて次のコンテナ船に向かう。可能な限り迅速に行動しないと取り逃がすコンテナ船が出てくる可能性がそれだけ高くなるからだ。

 

 

 その後も宇宙に光の花が次々と咲き続けた。

 

 

 

 襲撃後、速やかに戦域から離脱するナスカ級のブリッジにて戦果と損害の集計が行われていた。

 「撃ち漏らしたのは、護衛艦2、コンテナ船4の合計6隻ですな。」

 「護衛艦隊にMSまで配属されている輸送船団を、短時間で全滅させるというわけにはいかなかったか。」

 「しかし、敵の機動兵器は全機撃墜しました。これだけでもかなりの戦果です。」

 「確かにな。こちらはジン1機が損傷しただけだ。」

 これまでの経験からすると、もう少し損害が大きくても不思議ではなかった。ましてや、今回は連合にもMSがいたのだから。

 「ゲイツ部隊には一切損害がなかったようで。」

 「ああ。さすがは新型といったところか。これほどのMSを速やかに前線に回るよう手はずを整えてくれたザラ議長閣下には感謝しておかないとな。」

 「まったくです。」

 連合の輸送船団もストライクダガーの運用テストを実施していたようだが、ザフトもまた新型MSゲイツの実戦テストを行っていたようなものである。

 その結果が満足のいくものであったので、艦橋の雰囲気は先ほどの戦果とあわせて非常に明るいものだった。

 「次の作戦ポイントは?」

 「巡航速度で2日といったところですね。」

 宙域図を見ながら確認する。

 「よし、あと一時間たったら戦闘態勢を警戒態勢に移行しよう。それまでは今しばらく乗組員には我慢してもらわねばな。」

 「輸送船団の救難信号をキャッチした連合の艦隊が駆けつけてくることを考えれば当然ですな。」

 「うむ。後はよろしく頼む。」

 「了解しました。」

 

 

 

 

 

 「通商破壊は順調に進展しています。」

 「そのようだな。」

 補給線遮断のために出撃しているハンター部隊の報告書に目をやりながらパトリックは言葉に出す。彼の前の報告書には、これまでのハンター部隊の赫々たる戦果が記載されていた。

 「損害も極めて少なく地球連合軍護衛部隊の練度の低下が著しいことは明白です。」

 モニターの向こうで、同じ報告書をみているエザリア・ジュールが地球連合の陥っている状況を説明する。

 地球連合軍は緒戦の大敗北による人的被害を埋めるため、護衛部隊や後方の部隊から人員を大量に引き抜き前線の部隊を再編成した。

 兵士の養成にはナチュラルの場合、最低でも半年は必要となる。陸軍の単なる歩兵としてならば更なる訓練期間短縮は可能だが、空軍や海軍、そして宇宙軍の兵士としてはそれなりの技能を身に付けなければならないため、、その期間を少しでも短縮するために既にある程度の訓練が行われている人員を掻き集めるしかなかったのだ。

 それにより前線の崩壊こそ免れることができたが、その後も前線では大量の出血が続いたため、再訓練を施された予備役兵はそちらに吸い取られ、その結果として護衛部隊には訓練不十分な人員しか回されず、練度が低下したまま回復していないのである。

 「これだけの被害だ、地球連合も輸送計画の再建に頭をひねっているだろう。」

 「そうですね。被害を抑える方法は現時点では3つしかありません。

  これまでとはまったく別の遠距離航路を選ぶか、護衛部隊を強化するか、あるいはこちらのハンター部隊を潰すか、つまり、逃げる、守る、戦うのいずれかしかありません。」

 「その通りだ。だが、連合がどの手段をとってくるにせよ対応策はある。」

 「はい。ただ、本土爆撃の方ですが・・・」

 「それについても聞いている。

  完全な成果とはいえないが、一応の目的は達している。」

 衛星軌道からの本土爆撃に対し、大西洋連邦は選挙民の声を無視できず、各都市にMS部隊を配備した。その数は合計すると100機をゆうに超える。

 これまでザフトしか所有していなかったMSの目に見える形での実戦配備。これは、当初の予想をはるかに超える効果をもたらした。

 ザフトの勝利は常にMSにもたらされ、そして連合の敗北もまたMSによってもたらされてきた。MSとはナチュラルがコーディネイターに抱く畏怖や恐怖、そういった形のない恐れの具象化した存在だったのだ。

 そのMSが自分達の手にも存在し守ってくれる、その事実は爆発的に士気を鼓舞し、政府や軍に対する反感を押さえ込むことに成功したのだ。

 その他にも対空ミサイル部隊やそれに付随する歩兵部隊などが多数配置され、恐怖の連鎖による治安の悪化も食い止められた。

 この結果、地球連合の正面戦力を削るという目的は確かに達成されたが、人心の動揺という点では不十分な結果しか得られていない。また、大西洋連邦は各地に駐屯しているMS部隊を教育部隊として活用することで可能な限り、戦争資源の有効活用も図っていた。

 「確かに大西洋連邦は、市民の不安を押さえ込むことに成功した。」

 

 ギイ・・・

 

 椅子をきしませながら会話を交わす。

 「だが、押さえ込んだだけだ。消すことができたわけではない。

  今後、何をきっかけに爆発するかわからない爆弾を抱え込んだようなものだ。」

 「はい。」

 「通商破壊と軌道爆撃はこのまま継続する。統合作戦本部にもそのむね通達しておいてくれ。」

 「わかりました。」

 エザリアはそのまま手元を操作し必要な事項を送付する。

 「地上でも、パナマでの戦力再編も問題なく進んでおり、カーペンタリアとジブラルタルの戦力蓄積も順調です。ハンター部隊からの報告をもとに若干の改修を施したゲイツも一部の部隊を地上に派遣しています。」

 「了解した。」

 「それで、今後の行動についてですが・・・」

 そのエザリアの言葉を聞いた司は、わずかに言葉に詰まる。

 「・・・そうだな。対外的には極めて順調に事態は推移しているといっていいだろう。

  ならば、今のうちに内部の懸案事項を片付けるべきかもしれん。」

 「とおっしゃいますと、彼らに対する対処ですか?」

 「そうだ。」

 決断を迷うように目をつぶるパトリックこと司。

 その様子をモニター越しに見つめるエザリア。

 しばらくそのまま考え込んでいたが、ようやく目を開いた時には既に覚悟は定まっていた。

 「やはり、早めに手を打つべきだな。」

 「強攻策を取られるのでしょうか?」

 多少心配気に確認してくる。

 だが、司にその気はない。

 「いや、できれば穏便に済まそうと思っている。」

 「・・・・・以前と変わられましたか、議長?」

 思わずといった風にエザリアから言葉がこぼれる。

 「・・・自分ではそれほど変わったつもりはない。

  だが、コーディネイターという新たな種全体の未来がこの私の双肩にかかっている。

  その重圧が知らぬうちに私を変えたのかも知れんな。」

 「そうですか・・・」

 ある程度腑に落ちたという感じで頷いている彼女をよそに、特に慌てることもなく対応できた司は内心ほっとため息をついていた。

 だが、司はあまりにも自然に対応できたことを不思議に思うべきだったのかもしれない。後から思えば、この時には彼の変化は既に始まっていたのだろう。

 まあ、気づいたからといってどうにかできるようなことではなく、不幸なことでもなかったので、後日の彼は特に反省することもなかったが。

 

 

 

 

 

 あとがき

 

 話が進んでいないな〜。こんなに寄り道の誘惑が強いなんて、連載って難しいですね<それは違う

 まあ、それはそれとして、地球連合の戦艦ってMA何機搭載可能なのか教えてくれ〜。

 いや、調べても載ってないんですよ、アガメムノン級も250m級も。

 書いてあっても数機とかかなりの数という表現なので(苦笑)

 第八艦隊先遣隊が、それなりの数のMAを発進させていたので今回は250m級は8機搭載可能と推定して地球連合側の戦力を決定しています(MSは1機でMA2機分の容積とカウント)。

 今回は、イメージ的には高速装甲空母を用いたヒットエンドランによる通商破壊でしょうか(例えばRSBCのグラーフ・ツェッペリンとか)。

 少なくともUボートによる狼群戦法風ではないな(爆)

 ちなみに、今回のテレビ本編からの登場はイザークの母親エザリアさんでした。

 ・・・主役級が出てきません。

 本当に出す気あるんでしょうか?<マテ

 

 

 >戦いは数だよ、アニキ!(違)

 だから、性能は二の次三の次なのさ!(違)

 まあ、数を揃えるのは戦闘の王道だからなあ。

 #ギレンの野望ではハマーンのキュベレイとかシロッコのメッサーラとかは1機でも手強いぞと。EN切れを起こしてから本番さ(爆)

 #スパロボでは、敵の大将を囲んでタコ殴りするからこれは王道だね!(核爆)

 

 >ナチュラル用OS

 というわけで深く考えるのは止めて適当に設定しました(笑)

 

 

 

 

代理人の感想

現場のワンショットといった感じですが・・・・Uボート(違)の艦長と副長の会話とか、

流石にセリフが説明口調過ぎますかねぇ(苦笑)。

説明臭いセリフは地の文で表現することをおすすめします。