紅の軌跡 第11話

 

 

 

 

 北太平洋の大海原を一隻の船が航行していた。

 白亜の艦体を太陽光の下でまるで白鳥が水と戯れるように優美に進めるのは、地球連合軍アークエンジェル級のネームシップ、アークエンジェルであった。

 「それにしても上層部は何を考えているんでしょうかね?」

 ぼやくようにつぶやいたのは主任管制官を務めるジャッキー・トノムラである。

 「まったくだ。アークエンジェルは航宙艦、それもザフトのナスカ級に匹敵する高速艦だぞ?

  それを、アラスカとはいえ地上基地の守備部隊に配属するなんて、猫に小判というか、豚に真珠というか・・・」

 心底あきれたような声音で同意したのは、アークエンジェルの操艦を一手に引き受けるアーノルド・ノイマンである。

 「しかも、パナマが陥落してから今日までの10日間、修理に補給ばかりで基地内への上陸も許可されない。

  ようやく修理と補給が完了したかと思えば、直ちに哨戒に出撃せよ、だもんなあ。」

 さらに別の愚痴がこぼれる。

 「御免なさい。それに関しては申し訳なく思っているわ。」

 それまで、黙ったまま二人のやり取りを聞いていた艦長のマリュー・ラミアスが本当に申し訳なさそうな表情を浮かべて会話に入ってきた。

 「艦長のせいじゃありませんよ。自分は艦長が何度も乗組員の上陸許可申請を上に提出していたのを見てますから!」

 「そうですよ。」

 あわてたようにトノムラとノイマンがマリューの責任ではないことをまくし立てる。

 「それでも、あの長く苦しい航海を終えた貴方達に休暇を取ることもできなかったのは事実ですから。」

 「「・・・・・」」

 さらに申し訳なさそうに言われると、言葉に詰まる二人であった。

 微妙な沈黙が場に漂う。

 「それにしてもフラガ少佐にバジルール中尉も転属させておきながら、補充要員もよこさないっていうのは変じゃないんですか?」

 そんな雰囲気を変えようと思ったのか、気配りの人、サイ・アーガイルがCICから別の話題を振ってくる。

 「そういえばそうね。」

 「物資の補給こそされたけど、人員の補充はまったくないもんな。」

 ミリアリアとカズイが、サイの疑問に便乗するように発言する。

 「その件に関しては、追って通達するの一点張りだよ。」

 トノムラが肩をすくめるように言う。

 「確かに、艦の熟練要員を引き抜いて同型艦の中枢要員として慣熟訓練の期間を短くすることは珍しいことではないけれど、こんな状態の本艦に補充人員や交代要員をよこさないのは変なのよ。」

 困ったような顔で意見を述べるマリュー。

 「さらに変なことといえばバスターをこの艦に放りっぱなしというのも変ですよね。」

 ミリアリアが、ここしばらくの間ずっと疑問に思っていたようにいう。

 アラスカ本部は、バスターの戦闘情報こそ洗いざらいもっていったものの、破損したバスターそのものには全く目をくれず、そのままアークエンジェルに搭載したままなのだ。まるで、このMSにはもう用はないとでもいうように。

 バスター同様に忘れられていた捕虜のディアッカ・エルスマンもまたアークエンジェルにい続けているのだが、今となっては誰も気にしてはいなかった。それだけ、不正規の乗組員が多いということだろう。

 そもそも、まともな教育も受けていないサイやミリアリア、カズイがブリッジ要員やCICの要員を未だに続けていることからも、そのあたりの相変わらずの人手不足というかアバウトさが伺える。

 「それに変といえば、最近のメディアも変じゃないですか?」

 「確かにあの、地球はひとつ!一丸となって苦難を切り抜けよう!ってプロパガンダ地味たCMは勘弁して欲しいよな。」

 「合言葉はワン・アースでしたよね。」

 苦笑を浮かべながらサイの疑問に応えるノイマン。

 それに応じるサイもまた笑いを浮かべている。

 

 だが、その様子を見ているマリューの表情は優れなかった。

 

 最近の一連の放送は、明らかに情報操作だわ。

 パナマを落とされ焦った連合が、一般市民レベルでの戦意高揚と自分達へ非難の矛先が向くことの回避をもくろんでいるのでしょうけど・・・・・これだけで終わらすはずがない。

 おそらく中立国に対しても、相当な圧力が掛けられている筈。

 

 何事もなければよいのだけど・・・

 

 サイ、ミリアリア、カズイのオーブを祖国とする三人を見ながら内心ため息をつく。

 艦長としては情に流されやすく決して優れた軍人とはいえないかもしれないが、若くして技術士官のエリートまで上り詰め、G開発プロジェクトの重要な地位についたのは伊達ではない。

 明確な論理展開と鋭い思考を持つ彼女の頭脳は、彼等の祖国を初めとする中立国に押し寄せているであろう苦難を察していた。

 

 

 

 

 

 

 「いまこそ、地球上の諸国家はワン・アースの理念の下に団結すべきなのです!」

 赤道連合の外務官僚達の前で、地球連合の特使団代表が吼える。

 2日前に到着した地球連合特使団は、実務担当者による予備交渉の後、赤道連合首脳との直接交渉を要求し、それに応じた赤道連合外務大臣の前で、長々と自説を披露している。

 「地球上から化け物どもを排除し、自らの分というものを思い知らせてやるべきなのです!」

 やれやれいってくれる。

 俺は画面に映る代表の言葉に苦笑いする。

 「・・・なるほど、使者殿のおっしゃりたいことはわかりました。」

 外務大臣がうなずく。

 「おおっ!では、地球連合に加盟していただけるのですな。」

 特使団代表が鼻息も荒く、机に身を乗り出さんばかりに身体を押し出す。

 「いえ、そういうわけではありません。

  貴国の主張する内容を理解したと申しておるのです。」

 「詭弁を弄さないで頂こう!」

 彼の予想に反し、威圧に屈することなく整然と交渉を進める赤道連合側の対応のため、長引く会議にとうとうしびれをきらしたのか、外務大臣の正面で代表が目をぎらぎらと光らせながら語気を荒くする。

 そしてついに彼にとって伝家の宝刀を抜くことを決めた。

 「・・・我が地球連合は実力をもって、貴国に加盟していただく用意もあるのですぞ!」

 「ほう。」

 その言葉にさすがに赤道連合の官僚達や通訳がざわめく。

 いかに地球連合からの特使団の目的が事前に把握できていたとはいえ、実際に特使団代表の口から言葉として聞かされると、また別のインパクトがあるのだ。

 「・・・実力をもってと申されるか?」

 「いかにも!」

 そんな中、伝家の宝刀を抜いたにもかかわらず、自らの前に座す赤道連合外務大臣のまったく動揺した様子のない回答に若干訝しげな表情を浮かべながらも身体を椅子に預け、胸を張りながら応える。

 「わが国はこの戦争の最初から中立を宣言しております。

  にもかかわらず、実力を行使するといわれるか。」

 「左様。我ら地球連合に加盟しない国家は、ザフト支援国家とみなすということです。」

 「・・・・・」

 あまりの無茶な言いように、さすがの外務大臣もあきれたのか言葉を止める。

 確かに外交の常識を完全に無視した台詞だ。

 自国の軍事力を過信し、それを自分の力と勘違いしている外交官の典型的なパターンだな。

 「使者殿。」

 「何ですかな?今ならまだ、私の一存で赤道連合は地球連合への加盟を快く承諾してくれたと報告できますぞ?」

 こちらが屈服するものと決めてかかっているのか、倣岸な口調で話す代表。

 だが、そんな彼の様子を歯牙にもかけず、淡々と大臣は言葉をつむぐ。

 「知ってのとおり、わが国はプラントとの通商が続いております。」

 「そのようですな。まあ、地球連合に加盟したなら即刻中止していただきますが。」

 何をいまさらという表情で答えを返す。

 「通商の交渉のために当然、プラントからも人が訪れております。」

 「?」

 話がどこへ向かうのか見当がつかなくなったのか、それまでの倣岸そうな表情が不思議そうな表情に変化する。

 「そのプラントから我が国を訪れる人の中に、プラントからの特使がおりましてな。」

 「!?」

 外務大臣の告げた言葉、その意味を理解した次の瞬間、愕然とした表情で絶句する。

 「彼らはわが国の責任あるものに面会を求め、我等はこれに応じました。」

 「なんですと!」

 激昂して立ち上がる代表。

 「まあ、お座りなさい。」

 涼しい表情で着席を促す外務大臣。

 「そんなことはどうでもいい!貴国は地球を裏切りプラントについたというのか!」

 テーブルを激しく叩きながら糾弾する。

 「はて、誰がそのようなことを申しました?」

 「な!?」

 とぼけた返答に絶句する。

 「どうも使者殿は早合点がお得意のようだ。話は最後まで聞いたほうがよろしいでしょう。」

 「くっ!?」

 口惜しがりながらもこのまま立っているわけにもいかず再び着席する。

 「プラントからの使者は、会談の場で面会した我々にこう申し出ました。

  貴国は、今後もこのまま中立を維持して頂きたい・・・と。」

 「?」

 顔を赤らめたままだった使者が再び怪訝そうな顔をする。

 彼にしてみれば、プラントの使者は自ら同様、赤道連合の自陣営への引き抜きが役目だとしか考えられなかったからだ。

 「はじめは我々も何をいっているのか戸惑いました。」

 確かに赤道連合は今回の戦争に中立を保っている。なのに何故わざわざ特使を派遣して改めて中立を維持するよう要求するのか?

 「そう問い返した我々に彼らはこう応えました。全ての大規模宇宙港を失った地球連合は、これまで失った戦力の増強もかねて、中立国の強制的な地球連合への加盟交渉を持ちかけてくるはずだとね。」

 「・・・・・」

 沈黙を保つ。

 まさに、予想された通りの行動をとっている以上、今は何も言わないほうが得策と考えたのであろう。

 「その時はまさかと思いました。

  しかし実際、あなた方はここにおり、そして脅迫を持ってわが国に加盟を迫っている。」

 「我々は脅迫など・・・」

 言葉を濁すように応える代表。

 しかし、さすがに言葉尻がすぼんでいる。

 「実力を持って加盟をさせるという、先ほどの言葉は脅迫でないとおっしゃるつもりか?」

 「・・・・・」

 「まあ良いでしょう。

  戸惑う我々に再度提示された彼らの要求は実にシンプルでした。

  プラントは赤道連合に中立のみを望む。

  また、もし中立を維持するのが困難になった場合、プラントの助力を求めるのであれば、これに応ずる用意があると。」

 「!?」

 苦い表情を浮かべていた使者が再び愕然とする。

 それも無理はない。これは、地球連合が武力を持って赤道連合に侵攻するのならば、プラントは赤道連合を支援すると言っているに等しいのだから。

 「また、プラントからの特使は誠意の証として様々なものをわが国に用意して来ました。

  資源の優先的輸出の用意はもちろんのこと、パナマで彼らが得た様々な情報をね。

  そうそう、その中にはMSの構造解析データもありましたな。」

 その言葉に使者はさらに顔面を蒼白にする。

 パナマで初めて実戦に投入された地球連合の量産型MS、ストライクダガーの詳細な情報が赤道連合に既にわたっていると彼らは言っているのだ。

 当然、入手した情報を解析し、効果的な戦法を探っているはずだ。主力兵器の情報が丸々相手方に渡ることがどれだけ不利な状態を招くか、軍人でない彼にもありありと想像できるのだろう。

 「よろしいか、使者殿。

  わが国がお約束できるのは、わが国はプラント、地球連合、どちらにも加担しないということだけです。」

 自らの反撃が十分に効果を発揮したのを確認した外務大臣はおもむろに結論を述べる。

 だが、追い込まれた使者にとってそんな結論は到底受け入れられない。

 「詭弁だ!あなた方はプラントと交渉し、既に約束を取り交わしているではないか!」

 「それは言いがかりというものです。

  彼らはわが国の中立方針を改めて支持すると表明しただけで、新しい同盟や条約などは一切結んでおりませんぞ。」

 「くっ!では、プラントからの資源の優先輸出はどうなのです!

  また、我が国のMSの情報をプラントから譲り受けておきながら中立を主張するつもりか!」

 刻々と悪化する自らの立場を何とかしようとあがき続ける使者。

 「資源の輸出は現在行われている通商の延長に過ぎません。今更そのことを非難されるいわれはありませんな。

  さらに、私はMSのデータと申しただけです。それが何故貴国のMSのデータと言えるのですかな?

  彼らは友好の証として、彼らの主力MSジンの情報を譲ってくれたのかもしれませんぞ?」

 口調はまじめだが、明らかにからかいが混じっている。

 「詭弁だ!」

 「貴方が詭弁と申されるのはかまいませんが、われ等はそれに付き合うつもりはありませんな。」

 冷然と使者の言葉を切り捨てる。

 さすがに言葉に詰まったのか、使者のほうもそのまま沈黙を保っている。

 しばし、帯電したような沈黙が続いたが、咳払いをして外務大臣が最後を締めくくった。

 「では、使者殿。せっかくのお申し出だが、我が国は中立を維持します。

  地球連合首脳にはよしなにお伝えください。」

 「・・・・・必ず伝えよう。

  そして後日、後悔するがいい。」

 吐き捨ているように応じた特使団代表は、荒々しく立ち上がると靴音も高らかに会議室から出て行った。その後を慌てたように随行員が追いかける。彼らの顔に浮かんでいる表情は、ありえない交渉結果への当惑だけであった。

 地球連合の代表団が退席するのを見守っていた赤道連合の外務大臣は、全員が退席したのを確認すると自らも立ち上がって控え室に向かう。

 それに伴い、官僚たちもまた次々と会議室を後にする。

 

 

 無言のまま控え室にたどり着いた外務大臣は、ソファに腰掛けると俺に視線を向けつぶやいた。

 「予想通りの展開でしたな。」

 「そうですね。」

 その言葉に俺もうなづく。

 「正直なところ、まさかここまで高圧的な申し入れはあり得ないと思っていたのですが・・・」

 「それだけ、地球連合に焦りがあるということです。」

 渋い表情になる外務大臣にしたり顔で返答を返す。

 「確かに、全ての大規模宇宙港を失った地球連合の焦りは相当のものがあることは十二分に予想できます。」

 「それゆえ、ここ赤道連合だけでなく、隣のオーブ連合首長国にはより高圧的な申し入れがされているでしょう。」

 実際、地球連合はスカンジナビア共和国、赤道連合、オーブ連合首長国のこれまで中立を維持してきた国家すべてに、地球連合に加盟するよう圧力を掛けている。

 もちろん、それまでも影に日向に加盟要請はあったのだが、パナマ陥落後にその要請はとんでもない圧力にまで跳ね上がり、最終的に今回の軍事的圧力を背景にした特使団派遣に至ったのである。

 「地球連合も見境がなくなったということですかな。」

 「いえ、どちらかといえばブルーコスモスに主導される大西洋連邦に見境がなくなってきたというところでしょう。駆除すべき化け物に押されている現状が我慢ならないのでしょうな。」

 そう平気な顔で言いつつも内心で吐き捨てる。

 「実際、ザフト軍の強さは大したものですな。」

 「地球連合が弱いという見方もできますがね。」

 「どちらにせよ同じことです。」

 その言葉に思わず苦笑する。

 「ところで、今後のプラント側の資源輸出についてですが・・・」

 「それについては、既にプラント側の準備は整っています。

  最初は、大洋州連合への輸出に上乗せする形で資源を運び、それを貴国に持ってくることになるでしょう。」

 「なるべく早い対応をお願いしますぞ。それと万一の場合の対応も。」

 「ご安心ください。プラントは貴国の誠意に必ずや応えて見せます。」

 「これは頼もしい。」

 満足そうに笑う外務大臣の顔を見つつ、今日の地球連合と赤道連合の会談決裂により、今回の任務の成功を改めて感じる。

 クライン前議長の部下だった彼が、現評議会議長パトリック・ザラと前評議会議長シーゲル・クラインの親書を持って赤道連合入りしたのが3日前。

 パナマ陥落直後から赤道連合に派遣されていた交渉団に合流した俺は、それまでに整えられていた条件の下、秘密裏に赤道連合首脳と交渉を実施し、交渉団の事前準備の優秀さもあって、あっさりとプラントと赤道連合の間では合意に達していたのだ。

 その後、地球連合の特使団が騒々しく赤道連合入りし、今日、こっそりと呼ばれていた俺は、地球連合との会談の様子を控え室のモニターで見せられたというわけだ。

 まあ、こちらはここまで毅然と対応したのだからしっかりと約束を果たしてもらうぞというパフォーマンスというわけだ。

 もっとも、今回、赤道連合が地球連合に加盟せず、プラント側の申し出を受け入れた理由はいくつかある。

 まず、中立の維持はもともと赤道連合の以前からの方針であり、現状を維持するだけで済むこと。仮にこれが地球連合の特使同様、プラント側への加入要請であったならばこのような結果になったかは微妙である。

 また、今、地球連合に加盟させられた場合、ザフトとの戦闘の矢面に立たされることが確実というものもある。強引に加盟させておきながら信用に値するか確認するのは大国の傲慢さを滲み出させたいかにも地球連合らしい行為といえる。

 次に、地球連合のうち、直接的な脅威となる東アジア共和国とユーラシア連邦の主力がアフリカ方面に移動しつつあるとの情報を得ていることがある。もっとも、この情報も最初はザフトからもたしたものだが、いまは赤道連合情報部によって確認が取られている。

 3つ目に、赤道連合を構成する各国が、過去、北方の大国であった中国、今は東アジア共和国の中枢を占める国にさんざん悩まされ、国家として無意識領域での反感を持っていることが上げられる。

 彼らは、出来ることならば膝下に下りたくないと考えており、それゆえ中立もザフト寄りなのだ。

 4つ目に、赤道連合は大洋州連合と隣り合っており、プラント側の申し出にあった助力が、ザフトの地上戦力の要であるカーペンタリア基地からすぐにでも受けられることがある。当然、ザフトの地上戦力が健在であることも強く影響している。

 5つ目に、プラントの申し出にあった資源の優先的輸出と技術供与が国益に直結している点だ。地球連合がこれほどまでに国力を高められたのは、プラント理事国としてプラントから搾取し続けたことによる。その一部でも得られれば、赤道連合にとって大いなる福音となることは自明の理だ。

 6つ目に、これは赤道連合の首脳にしか告げていないが、プラントがNジャマーキャンセラーを実用化したことがある。これは、一方的な核攻撃が可能なことを意味し、現在の政治・軍事情勢ではジョーカーとなりうるものなのだ。

 同時に、ストライクダガーの解析情報と現物の一部も渡されている。これは、先行投資であると同時に赤道連合軍部への賄賂のようなものだ。

 何も約束をしていない段階で一方的に贈り物をされると、その後の交渉で気持ちの上でどうしてもひるみが出てくるものだ。

 こちらとしてはパナマで拾っただけものであり、仮に赤道連合が地球連合に加盟すれば遅かれ早かれ、彼等の手に渡る情報だし、それほど惜しいものでもないので、今回の交渉で事前に大盤振る舞いし、交渉を有利にする材料としたわけだ。

 まあ、以上のような要件から赤道連合は中立を維持することを選択した。

 むろん、最悪の場合は閣僚の首を切って、地球連合に擦り寄ることも検討されているだろう。その程度のことができなければ国の舵取りをする資格はないからな。

 「ところで大臣。」

 「何かね。」

 「今後は、戦時体制の警戒レベルを上げることを考慮しておいたほうがよいでしょう。」

 「・・・どういうことかね?」

 鋭い光を浮かべた瞳を真正面から受け止める。

 「プラントでは地球連合の中立国への武力侵攻が実際にありうる可能性が高いと考えております。

  ただ、仮に武力侵攻が行われる場合、その矛先は宇宙港を持つオーブ連合首長国に真っ先に向かうであろうと見ていますが。」

 「それで?」

 「その際、側面の安全を確保するために東アジア共和国の軍が貴国の北方に圧力を加えてくる可能性があります。侵攻作戦の途中でイレギュラーが発生するのは避けたいでしょうからね。」

 「なるほど、確かにな。」

 納得したようにうなづく。

 おそらく、この後に首脳部との打ち合わせを実施することを考えているのだろう。

 そしてわずかな後、考えがまとまったのかこちらに視線を向ける。

 「それで、君は今後どうするのかね。」

 「当分は、今回の秘密交渉の窓口担当としてこちらに滞在します。」

 「そうかね。」

 「ええ、今後ともよろしくお願いします。」

 「こちらこそよろしく頼むよ。」

 そういって互いに固い握手を交わす赤道連合の要人とプラントの要人であった。

 

 

 

 

 

 

 「赤道連合の中立維持に成功したか。」

 「ああ。つい先ほど連絡があった。」

 モニターに映るシーゲルの顔を見やりながら確認する。

 「使者になったものは当分の間、赤道連合から戻ってこれない。手間を掛けるな。」

 「マコーウィンは私の部下の中でも切れ者だ。うまくやるだろう。

  それにしても、エクソダス計画を指揮させるだけかと思ったら、容赦なく仕事を押し付けおって。」

 「プラントは適材適所が徹底しているのでな。」

 そううそぶくパトリックに苦笑するシーゲル。

 「随分と性格が丸くなったものだな、パトリック?

  それで、スカンジナビア共和国はやはり駄目か?」

 パトリックの変化をシーゲルは好意的に受け入れているため、その口調に揶揄するような雰囲気はない。

 戦時下の国家元首にかかる重圧は経験したものにしかわからない。それゆえパトリックが述べた、変化の理由が評議会議長になった影響によるものというのはある程度納得のいくものだった。

 もっとも変化の原因がそれだけとも思ってはいないが・・・

 「あの国はまわりをユーラシア連邦に囲まれているからな。

  ザフトの影響力もほとんど及ばない。一応、中立維持の申し入れは行ったがおそらく無理だろう。」

 「そうか。まあやむを得ないところだろうな。

  ところでオーブの方からは連絡はないのか?」

 「ああ。」

 とたんに渋い表情を浮かべ一言で返事を返す。

 パトリックの短い返事に交渉が進展してないことを理解したのかこちらも苦い表情を浮かべるシーゲル。

 「むろん、交渉がうまくいかなかった場合のプランも統合作戦本部は構築している。

  だが、それでは被害が増大するのでな。できれば、オーブとは同盟を結びたかったのだが。」

 自分の返事がぶっきらぼう過ぎたと思い、説明を追加する。

 「赤道連合には中立維持の申し込み、オーブには攻守同盟の申し込みだ。

  それぞれの難易度が違う。それは最初からわかっていたことだろう。」

 「ああ。だからこそ急進派として知られた私ではなく、シーゲル、お前の部下にわざわざ地球に降りてもらったのだからな。」

 そう、中立国に特使として赴いたのは全て穏健派として知られているシーゲルの部下たちばかりであった。

 「それで、地球連合がオーブに侵攻するのは間違いないのか?」

 「報告はまわしているだろう?

  大西洋連邦の太平洋艦隊が一斉に港で補給作業にはいっている。遊びで動かすには少々規模が大きすぎるな。」

 「示威だけで済む可能性はないのか?」

 「それならば、揚陸部隊を伴う必要はない。明らかに侵攻を意図した艦隊編成だ。

  こちらも既に太平洋に存在する部隊には命令を下してある。太平洋艦隊の補給日数にもよるが、おそらく近日中に大規模な戦闘になる可能性が高い。」

 「・・・そうか。」

 そういってため息をつくシーゲル。

 わかっていたこととはいえ、戦火の拡大は彼の本意ではないのだから当然だろう。

 「既に動き始めたものを止めることは困難だ。

  となれば、後は、如何にわれ等にとって有利な状況に持っていくかだ。」

 「わかっている。」

 「ならばいい。戦闘に関してはこちらに任せておけ。」

 「ああ。任せる。」

 そういうとモニターからシーゲルの映像が消える。

 その消えたモニターをしばらく見つめていたパトリックであったが、おもむろにため息をつくと椅子に身体を沈めた。

 「一応、打てるだけの手はうったつもりだが・・・」

 そのまましばらく考え込んでいたパトリックだが、おもむろに身を起こすと、とある人物を自分の執務室によこすよう連絡する。

 「まあ、やってみて何か損があるわけでもなし、試してみるとしよう。」

 そういって再び椅子に身体を沈める。

 

 ギイ

 

 沈黙の部屋に椅子のきしむ音が響いた。

 

 

 しばしの時間が経過し、呼び出した人物が扉の開閉音とともに執務室に入ってくる。

 そのまま、正面まで歩み寄った赤い制服を着た男は正面に立つと流れるような敬礼とともに言葉を紡いだ。

 「アスラン・ザラ、出頭いたしました。」

 「うむ、ご苦労。」

 プラントにアスランが帰還した時以来、2回目の顔合わせになるザラ親子の対面であった。

 

 

 

 

 

 

 あとがき

 

 

 前回の内政に続いて外交の場面をお送りします。

 でも、実際の外交交渉は全然違う代物なんだろうなあ。

 まあ、そもそもこの物語自体が妄想の産物ですから、よしとしましょうか。

 とりあえず、外交によって戦略環境が一歩改善しました。

 NJCも、ただ持っているだけじゃもったいないですからね。

 きちんと外交の道具(脅迫材料(爆))として使わせて頂いています。

 このことだけでもNJCを開発したかいはあったはず。

 ところで・・・・テレビ本編の人間が何人か出てきました(爆)

 アークエンジェルの乗員にいたっては初登場です(核爆)

 

 ・・・本当にSEEDのSSか、これ?

 

 で、こんな状態でありながら、投稿はいったん中断します。

 勢いだけで書いてきたら、なんか先行きに詰まってしまいました。

 アイデアは出てこないし、文章はつながらないし・・・

 

 やはり行き当たりばったりで長編を書くのは無理があったようです(苦笑)

 

 一度、頭の中を掃除して考え直してみます。続きを書けるかは不明ですが<マテ

 なので、当分は本家の「青の軌跡」をお楽しみ下さいね(超新星爆)

 #このまま連載未完結者リストに載ったりして・・・

 #でも大丈夫!

 #Actionの投稿者のうち長編が完結している人のほうが圧倒的に少数派だから、赤信号、皆で渡れば怖くない♪(核爆)

 えっ、何か聞こえました?

 多分、そらみみですよ、空耳。

 

 

 

代理人の鉄拳

歯を食いしばれっ!

地雷作家の手先のおフェラ豚め!

ぶっ殺されたいか!?

よろしい上出来だ、頭が死ぬほどファックするまでシゴいてやる!

ケツの穴でミルクを飲むようになるまでシゴき倒す!

じっくりかわいがってやる!

泣いたり笑ったり出来なくしてやる!

 

 

と、ゆーわけで。可愛がってあげるからちょっとこっちに来なさい(爆)。