紅の軌跡 第36話

 

 

 

 

 薄暗くした執務室内に間接照明が作り出す幻想的な雰囲気の中、パトリック・ザラはとりとめもなく考える。

 今日のなすべき書類仕事はすでに片付けてしまった。有能な部下たちがテキパキと業務を片付けていることもあって、彼が直接決済しなければならない書類の量は、戦争中という非常時にありながら多すぎるということはない。おかげで、一国の指導者でありながら激務から開放されることが度々ある。

 もうまもなく、ザフト地上軍がオーブ攻防戦への介入を開始することは知っている。

 しばらく前にその旨の連絡は受けていたし、必要な許可も与えている。つまりは、オーブ攻防戦に関しては既にパトリックの手を離れ、現場の人間に成否が委ねられている状態にある。さらに、介入の成果の度合いによってどのような提案をオーブ連合首長国に行うかの素案も既に最高評議会で決定し、現在部下たちが細部の調整を行っている。

 従って、介入の結果の報告を受けるまではオーブ攻防戦に関してパトリックに出来ることは何もない。実際に介入を開始したら、その旨の連絡は入ってくる予定だが、特別に何かをするということはない。

 次の書類が回ってくるまでにしばらく時間が掛かる。

 こうした政務の切れ目に、パトリックは思考の赴くまま思索にふける。

 あるいはそれは人格融合した彼ら自身の安定のために身体が求めている儀式なのかもしれない。

 ちなみに、思索の対象は特に定まっていない。この戦争の行く末と戦後のプラントの位置付け、月面都市や地上の友好国との外交関係、将来の太陽系の資源地帯となる火星からアステロイドベルト地帯への影響力の増大などといった役職がらみのことに思考が飛ぶことが多いが、それ以外のことに思索が及ぶことも決して少なくない。

 

 今回、まず思索が進んだ先はコーディネイターの未来についての考察であった。

 

 コーディネイターにとってもっとも解決しなければならない問題。それは何といっても出生率の向上だろう。

 それを考察する上で、興味深い論文がプラント内で発表されている。それは、コーディネイターの出生率が低いのは寿命の問題が絡んでいるかもしれないというものだ。

 一般に自然界では長寿命の生命体ほど個体数が少なく、寿命の長短と個体数を並べてみればピラミッド型を形成することはよく知られている。これは世界の持つバランス調整機能の賜物だが、論文ではその調整機能がコーディネイターにも適用されているのだと語っている。

 いわゆる長寿遺伝子や不老遺伝子と呼ばれる遺伝子は旧世紀時代から活発に研究が行われてきた。

 地位、名誉、金。

 それらを手にした権力者たちが次に欲するものは不老長生であることは秦の始皇帝から数えても数千年前から変わっていない。

 ただ、数千年前と異なるのは、膨大な資金と資源、そして人員が投入された研究は、旧世紀の時点で様々な成果を残してきたことである。

 それらの研究成果の一部はC.E.の時代には普遍的に広まっており、薬による一定の老化防止などはごく普通に行われている。

 しかしながら、投薬などで後天的に調整するよりも事前にそれもより適合した形で調整するほうが効果が高いであろうことは簡単に予想が付く。

 事実、コーディネイターの遺伝子調整の際には、寿命の長生化は容姿の調整と合わせて真っ先に調整される項目である。

 そのため、コーディネイターの寿命はナチュラルのそれよりも長い。未だ実際に設定された年齢まで生きたコーディネイターは実際にいないが、理論上はナチュラルの2倍〜4倍の寿命を得られることが分かっている。

 プラント最高評議会議員たちがその年齢に比して若々しい容姿を持っているのも不老遺伝子調整のおかげといえる。

 だが、その事実はナチュラルのコーディネイターに対する嫉妬を一段と高める主因のひとつともなっている。特に女性のそれは激しく、コーディネイターのモデルが悲惨な目にあった事例は膨大な数に上る。

 能力、容姿、寿命。

 いずれにおいても自らを凌ぐ存在が目の前に存在する事実は、醜い感情を育むのに格好の苗床となるのであろう。

 逆に、理不尽な感情をぶつけられるコーディネイターはたまったものではない。

 第一世代であろうと第二世代以降であろうと、自らが望んでコーディネイターとして生まれてきたわけではない。にもかかわらず、ナチュラルはコーディネイターとして生まれてきたこと自体を責める。

 コーディネイターとナチュラルの個々人が友誼を結ぶことは可能だろう。生まれがどうであろうと気の合う友人は自然とできるものだ。

 だが、種としてみた場合、それは絶望的なほどに難しい。はっきり言えば、ほとんど不可能といっていいだろう。

 そして、悲しいことに個人の友誼は集団に飲み込まれるとほとんどの場合消滅してしまう。過去の数多の差別の事例がそれを物語っている。仲の良かった家族同士が民族浄化という人種差別の波に飲まれ、最後には殺しあったという例は珍しいものではない。

 C.E.の時代に入って人種差別があまり表に出てこなくなったのは、混血が進み人種というくくりにかつてほどの強制力がなくなったのと、コーディネイターという共通する差別対象が存在するからに過ぎない。

 この大戦でプラントが勝利を収め、独立を勝ち取ったとしても人々から差別がなくなるわけではない。むしろ、敗戦という力によって押さえつけられたナチュラルの差別意識は、圧力を増し、より強固な憎しみとなってコーディネイターに向けられることになるだろう。

 

 ならば、この2つの種の行く末は如何なる結末を迎えるのか。

 

 現時点において、パトリック自身は、将来のコーディネイターの行く末は大きく分けて2つに大別されると考えている。

 

 1つ目は、このまま出生率の向上が見込めないことによるコーディネイターの消滅である。

 2つ目は、コーディネイターがマイノリティから脱出し、人類の主流になるというものである。

 

 1つ目に挙げたコーディネイターの消滅という言葉はコーディネイターが虐殺されるということではない。コーディネイターとナチュラルの混血が進み、コーディネイターがナチュラルへ回帰するという意味である。

 コーディネイターであっても、一人前になる、いわゆる成人と見なされるには15年の時を必要とする。

 これは失われた人口は、最低でも15年経過しないと回復しないことを意味する。

 現在行っている戦争中は戦力の回復を重視すべきだが、長期的には人口の回復あるいは増加力を重視しなければならない。しかしながら、出生率の面においてナチュラルに対し圧倒的に劣勢にあるコーディネイターは、人口の回復に非常に時間が掛かる。

 戦後を見据えた場合、これはきわめて重大な問題となる。

 戦争後、人口の回復あるいは増加に失敗し、国際的な発言力の低下、ひいては国力の低下を招いた事例は決して少なくない。もって他山の石としなければ、プラントも同様の事態に陥る可能性がある。いや、出生率の低下という要因を背負っている以上、その可能性は相当に高いといえる。現在行っている婚姻統制も出生率向上の決定打には程遠く、また市民の間でも潜在的に不満がある政策なので、統治者としてはかなうことならば可能な限り中止したい政策である。

 

 コーディネイターとナチュラルのハーフあるいはクォーターの積極的な受け入れ。

 友好勢力における第一世代コーディネイター出生への援助の強化。

 

 当面打てるコーディネイターの人口増加の手段はこれくらいしかなく、そしてその内容は根本的な解決方法には程遠い。こういった点からも、コーディネイターがナチュラルに飲み込まれ消え去るという未来は、決して絵空事ではないことが理解してもらえることだろう。

 ただ、パトリックが人口増加策として力を入れている研究はもうひとつある。

 それは、キラ・ヤマトを生み出した人口子宮の研究の促進である。

 これは、2つ目の予測に直結する研究でもあり、人口増加の根本的な解決策であるがもっとも困難で3つの手段の中で一番遅れているのも確かだ。テロにあったコロニー・メンデルから得た資料は決して少なくなく、研究を進めるに当たって貴重な指針となってくれたが研究を加速するには十全と呼ぶには程遠い。

 完全なる実用化には最低でも3年〜5年は必要となると予測されているし、下手をすれば10年単位の時間が必要となるだろう。

 そして、仮に早期に実用化に成功し、人類のコーディネイター化を推し進めたとしても、別の危険を惹起する可能性もある。

 そもそもコーディネイターという存在は人類の進化ではなく、特化であると今のパトリックは判断している。人類そのものの持つ可能性を能力全体の強化という方向に用いた存在であると。

 さすがにこれはプラント内部に喧々諤々たる物議をかもし出す考えなので口外したことはない。しかし、特化した種が外的・内的を問わず、何らかの理由により一気に衰退・滅亡に至った生物学上の事例は少なくなく、コーディネイターという種がこれらの事例と同じ道をなぞらないとは誰も断言できない。

 つまりはコーディネイターという種の未来はあまり芳しいものとはいえないという結論が浮かび上がってくる。

 まあもっとも、それに対しては全てはこの大戦に勝利を収めてからの話だという面もある。パトリックが注力しているとはいえ、現在のプラントは戦争を遂行中なのである。戦後を睨んで動かせる人材・資源はそれだけ大きな制限を受けている。その戦争に振り向けているマンパワーや資材を問題解決に向ければ、あるいは短期間で別の解決方法が見つかる可能性も決して小さなものではない。

 実際のところ、パトリックはコーディネイターの未来に絶望はしていない。

 人類の大半をコーディネイター化するという行動に出なければ人工子宮によるコーディネイターの人口増加は決して悪いことではないし、そもそもここ一年のプラント市民の死因のトップは戦死なのである。

 種の存続も確かに重要ではあるが、まずはコーディネイターが減り続けている状況を改善するほうが優先されるべきだろう。

 

 そう考えた時点で、パトリックの思索は大戦の行く末を決めるマイルストーンのひとつ、オーブ攻防戦への考察に跳んだ。

 

 オーブ攻防戦の天秤は、ゆらゆらと揺れながらもその傾きを未だ決していない。

 ザフト上層部はこれまでに最悪の展開を中心に幾通りものケースを想定したシミュレーション結果を提示してきているが、悲観的なシナリオばかりでは少々味気ないものがある。

 ならばここは、もっとも楽観的な連合軍のオーブ侵攻が失敗に終わった場合を考えてみるとしよう。

 連合軍のオーブ侵攻が失敗に終わった場合、ザフトにとって様々な恩恵がもたらされる。その恩恵の中でも、オーブ連合首長国が健在である限り、大西洋連邦が大洋州連合へ侵攻することは極めて困難になることが何より素晴らしい。

 自然環境の問題から大洋州連合の南にあたる南極からの侵攻は事実上不可能なので、実際に侵攻するとしたら東西か北の3方向のいずれかからということになる。

 そしてオーブは、大洋州連合への東からの侵攻ルートを厄す位置にある。

 史実では、連合軍は衛星軌道からの強襲降下と占領したオーブからの洋上戦力によって侵攻を成し得た。その時点で、ザフト地上軍・宇宙軍ともにアラスカとパナマの大規模戦闘で戦力を消耗し尽くしていたため、効果的な迎撃が不可能な状態にあったということは無視できない要因だが、同時に制圧したオーブが大洋州連合に侵攻する軍に対する巨大な兵站拠点、中継ポイントとしての役目を果たしていたことも欠くことのできない要因のひとつだろう。

 過去の戦史を紐解くまでもなく、敵地への侵攻の際に、その近くに策源地となりうる拠点があるか否かで侵攻作戦の難易度は劇的に違ってくることは自明の理。史実ではオーブがそれになり得た。だからこそ大洋州連合への侵攻が可能となった。

 だが、オーブが連合に敵対したままとなれば、策源地どころの話ではなくなる。兵站拠点が得られなければ、仮に衛星軌道からの降下を行っても補給が続かず、ジリ貧に陥ることは目に見えている。さらにその上、ザフトの地上軍・宇宙軍ともに健在である以上、連合軍の侵攻を易々と許すはずない。現実的に考えて、侵攻は自殺行為と判断すべきだろう。

 東からの侵攻がほぼ不可能であれば、目線を変えて別の方向を見てみればどうなるだろう。

 大洋州連合の北には今のところ中立を維持している赤道連合が健在である。

 中立国とは言え東アジア共和国と水面下で睨み合っている状態であり、へたに軍を進めれば地球連合にとっての新たな敵国を生み出すことになってしまう。何よりかつてと違い、プラントの支援が行われている赤道連合軍は鎧袖一触というわけにはいかなくなっていることを地球連合も承知している。忌々しく思っていることは間違いないが、国の中枢が余程の大馬鹿者揃いでない限り、この時点で戦端を開くようなことはないと見ていいだろう。

 逆方向の西は、インド洋に面しており侵攻を遮る勢力こそないものの、ザフトの陸上戦力のもう一方の主力がいるアフリカ大陸を経ることになる。いつ横槍が入るか分からない状態で侵攻作戦を実施するなど机上の空論でも困難だろう。

 こうしてみると、いずれのルートを用いても現状では大洋州連合への侵攻は現実的ではないことが分かる。

 そして大洋州連合もそのことは理解している。従って、現在の状況を維持あるいは強化するためオーブ及び赤道連合と友好関係を結ぶことに注力しており、有形無形の便宜を両国に図っている。プラントもまたその行動を後押ししていることは言うまでもない。

 一方、下心付きとはいえ、物心両面で支援を受ければ国民感情を含めた政府の考えも軟化するのが当たり前。ましてや両国とも自国を上回る戦力を保有する国と対峙している状態だ。背面を安定化しておきたいという気持ちは人一倍強いと言っていい。

 双方の利害が一致するのであれば、国の関係は急速に縮まっていくことは珍しくない。

 オーブ連合首長国、赤道連合、そして大洋州連合。

 この三国の結びつきは世界情勢に小さくない影響を及ぼす。

 圧倒的な人口を有する赤道連合、枯渇した資源もあるとはいえ未だ豊富な埋蔵資源を有する大洋州連合、そして一部ではプラントに匹敵する先端技術を有するオーブ連合首長国。この三国が有機的に結びついた時、インド洋から太平洋にまたがって巨大な影響力を発揮する一大勢力が生まれることになる。

 この事実は、ある意味プラントが理事国から独立することよりも世界情勢に与える影響は大きいかもしれない。

 実際にプラントが独立に至った場合、その影響は決して小さなものではないが、極端な言い方をすればプラント理事国が暴利を貪れなくなるというだけだ。プラント自身が他国への産物の輸出を止めるわけではない。むしろ、戦略環境を自国に優位に持ち込むためにも良心的な価格での輸出は間違いなく行うであろう。

 それに対し三国による第三勢力の勃興は、これまでユーラシア連邦と大西洋連邦の二極によって動いていた地上の覇権が、三本柱によって動くようになることを意味する。

 2と3。

 その差はわずかにひとつだが、それがどれほどの影響をもたらすかは実際に三極となってみなければ正確なところは誰にも分かるまい。

 おそらく両国において先の見える有能な政治家は、戦後環境の激変を憂慮していることだろう。逆にプラントにとっては自らに友好的な巨大勢力が三方の一として地上に生まれ出ることは、計り知れないメリットもたらす。経済的な観点から見て工業生産物の輸出先、食料や資源の輸入先としても有望の上、安全保障上の観点からも得がたいパートナーとなる可能性を秘めている。

 当然このことはプラント最高評議会議員各位も認識しており、三国への働きかけを強化することを満場一致で合意している。

 未だ戦争の終わりは見えないものの、戦後を見据えた政策は決しておろそかにはできるものではない。最高評議会議員に選ばれるだけの見識を備えた人物が、そのことで認識を違えるようなことはあり得なかった。

 当然、評議員を代表する最高評議会議長パトリック・ザラも例外ではない。

 既に三国に対し、表側からは協力関係の強化とその後の同盟関係の樹立に向けた外交的アプローチを、裏側からは強化中の諜報機関による活発な情報の交換、相手先企業へのプラントの技術支援を餌とした政府への働きかけを行っている。

 中心となって動いているのはアイリーン・カナーバだが、その行動にはもちろん議長であるパトリック・ザラの全面的なバックアップがある。

 

 そこまで思索が進み、アイリーン・カナーバの名が脳裏に思い浮かんだ瞬間に、パトリックの思索は今度は中立国そのものの考察へと跳んだ。

 

 通常、中立国は敵対する双方の陣営に等しく利益を与えることで己が立場を守る。

 いわゆる平和主義者から見れば、戦争当事国との取引はある意味において戦争行為に加担するものに思えるだろう。しかしながら、現実問題として戦争当事国に対して金融凍結あるいは禁輸などの具体的な措置に出れば、戦争当事国は中立国に対しその刃を向ける可能性が高くなる。もし地政学的に戦争当事国に隣接する状態であったなら、その危険はさらに高くなる。

 一般にあまり理解されていないことが多いが、そもそも中立を宣言しそれを守ろうとするのは極めて微妙なバランスの上でしか成り立たない、ある意味政治上の綱渡りにも等しい行為なのである。

 ただし困難が予想される中立を宣言することで得られるメリットも当然のことだが存在する。

 中立国は、基本的に戦火を免れるばかりでなく、戦争による大量破壊、大量消費で生じた膨大な需要に応じること、すなわち「死の商人」としての経済活動を行うことで、莫大な利益を得る機会が与えられるのだ。

 むろん戦争行為を行っている当事国がそのような中立による利益を許すのは、その見返りとして十分な利便を期待できる相手に対してのみであることは忘れてはならない。そして、その利便以上の利益が見込まれる場合、戦争当事国は躊躇なく中立国に対し攻撃を決断する可能性があることも忘れてはならない。

 中立が政治上の綱渡りであると表現したのは伊達ではないのだ。過去、名の知れた中立国のほとんどが重武装中立であった事実は、そのような背景をもとにしているからなのである。

 それ以外の点で中立という面を考えた場合、オーブがつい先日まで中立を維持できた要因のひとつとして、地球連合諸国の財界の師弟が数多く留学していたことも忘れてはならないだろう。

 その最たる例がフレイ・アルスターである。大西洋連邦の高官の娘が、中立国のコロニーで勉学に勤めていたというその事実が、抑止力としての面を持っていたであろうことは想像に難くない。

 また、地球連合は多くの食料を輸出していた大洋州連合と明確な敵対関係になり、その輸入がストップしたため食糧不足を招いた地域が発生していたことで、早急な代替輸入先を必要としたであろうことも要因のひとつに上げられるだろう。

 Nジャマーによる原子力発電所停止から発生した電力不足は、物流においても深刻な影響を及ぼしたことは間違いない。迅速な食料の確保を目指した地球連合が、豊富な海産物とそれを輸送する手段を有するオーブに多大なる利便性を見出したであろうことは容易に予想できる。

 一方で月面都市群に目を向けると、地球連合の直接統治下にはないものの複数の巨大な軍事基地の影響によって地球連合軍への協力を強いられている状態にあるため純粋な中立国とはいえない。

 だが、水面下ではプラントとの交渉ラインは途切れてはおらず、外交交渉が必要な存在であることに違いはない。

 そして、万が一だが月面都市が地球連合に対して叛旗ののろしを上げた場合は、速やかに同盟交渉を行うべき理由がある。

 それは月面に設けられた資材搬出用のマスドライバーである。

 もし、月面に設けられたマスドライバーによる地上への質量攻撃が可能となれば、戦局に甚大な影響を及ぼすことは間違いない。あるいは、その場で停戦交渉が始まってもおかしくはないほどのインパクトを有していると言っても過言ではないほどだ。

 もともとラグランジュポイントへの建設資材を送り出すため、月面には多くのマスドライバーが設けられている。世界樹や新型コロニーの建設が一段落した頃からは、プラントへの資源の輸出が都市経済の重要な柱となっていたくらいなのである。

 一部の月面都市は地球の約六分の一という低重力によって必要とされる射出速度が地上に比べて著しく低くて済むという利点を生かしたマスドライバーを中心とした街づくりが行われたくらいである。

 だが、今次大戦開戦以降はプラントへのマスドライバーによる輸出は当然のことながら地球連合によって差し止められ、戦局が劣勢に陥った地球連合軍による物資の徴発も度々繰り返されており、月面都市経済全般で相当の悪化を見せていた。

 ゆえに、先にも述べたようにプラントからの外交交渉という干渉の余地が生じている。

 ギルバート・デュランダル特使がひそかに月面都市群を回って歩けた背景には、宇宙市民としての共感とは別に悪化した月面都市経済を何とかしたいという即物的なものも絡んでいたのである。

 ザフトが月面に再進駐してくれば、ザフトに強制されたという名目でプラントへのマスドライバーによる資源の輸出が再び行える可能性もある。

 そうなれば、強大な軍事力を背景とした強制に逆らえなかったという免罪符の下で、月面都市経済は回復していくことだろう。

 

 パトリックの思索は、経済について思考が届いた時点で、こんどは経済と密接に絡んでいる流通・情報に関しての考察へと跳んだ。

 

 古来より流通と情報を制するものが世界を制すると言われてきたが、C.E.の時代においてもその原則に変化はない。

 ただし、C.E.時代における流通とはもっぱら宇宙におけるそれを指すようになっている。むろん、地上における海運も決して蔑ろに出来るものではない。地球圏の覇を競った大西洋連邦とユーラシア連邦の双方が巨大な海上商船団を有していたのもそれを踏まえてのことである。

 しかしながら、無重力下における産業が次第に発達し、環境問題や資源不足などから各種工業に携わる企業もこぞって月面やラグランジュポイントに工業施設を建造していくと、重要度は徐々に比重を宇宙のそれへと移していくようになる。

 月面都市やコロニーの生産設備から生み出された各種製品は、最終的に消費者に回らなければ利益を生み出すことはない。そして、それには運び出す船が必要となる。まあ、ちょっとやそっとでは壊れない頑丈な代物であれば、マスドライバーで打ち出すという手法も使えるが、そうそう頑丈なものだけではなく、むしろそうでないものの方が多い。

 また、プラント理事国にとって富を生み出す源泉であったプラントもラグランジュポイントに存在したため、プラントの産物を運び出すためにも航宙輸送船が、それも大量に必要となっていた。

 人の欲望には限界はない。ゆえに、更なる富の蓄積を目指した大西洋連邦とユーラシア連邦は航宙用の大型輸送船を大量に用立てた。それも自らの懐を痛めないよう、プラントに建造させることで。

 大量の航宙輸送艦を建造するには、大規模な無重力ドックが多数必要となる。建造後のメンテナンスを行うことも考えれば、より多くのドッグが必要となる。

 プラント理事国は必要なドックを全て造らせた。その数は空恐ろしいものになったであろう。

 大量に造られたドックから次々と生み出された無尽蔵というべき航宙輸送船は、月と地球、地球と各ラグランジュポイント、月と各ラグランジュポイントを繋ぐ、一大航宙ネットワークを形成し、プラント理事国、中でも大西洋連邦とユーラシア連邦の思惑通り更なる莫大な富をもたらした。

 おそらく、両国の政府高官は笑いが止まらなかったことだろう。

 だが、搾取される一方のプラントがいつまでもその立場に甘んじているはずがないということに、彼らの想像の翼は至らなかったのだろうか?

 後年、プラントが独立を宣言し、連合宇宙軍のナンバーフリートに対抗できるだけの戦力を揃えることができた理由に、かつて自分たちの輸送船を建造させるための多数の無重力ドックから生み出される戦闘艦艇の存在があったことを知った政府高官たちの顔は見ものであったことだろう。

 まさに、因果応報。むろん、プラント側に独立の準備に役立ったなどという感謝の気持ちなど欠片もあろうはずもないことは言うまでもない。

 ただ、宇宙艦艇の造船施設は月面上の連合軍基地に多く設けられていたということを付け加えておかなければならない。

 プラント理事国もさすがに自らの力の源泉となる軍事力を構成する宇宙戦闘艦の製造までプラントに委ねるほど愚かではなかったということだ。

 実際、叩きのめしたはずの連合宇宙軍ナンバーフリートが、勢力を回復していることを諜報部が掴んでいる。

 実際、月面の軍事基地に設けられた造船施設は、ここまで今次大戦を長引かせた原因のひとつでもある。

 もし仮に、プラント理事国にそこまでの艦艇造船施設がなければ、ザフト宇宙軍によって被った甚大な損害を補充できず、戦闘継続不能により当の昔に決着がついていたはずだ。

 だが、現状はそうはなってはいない。周辺都市からの徴発も含めて、資材や資源の蓄積はかなりのものがあり、艦艇や軍需物資の生産が全力で行われている。ザフトの通商破壊によって、一部に不足が発生してはいるものの、生産を止めるまでには至っていない。

 また、もともと蓄積された物資の量が並ではない上に、エンデュミオン・クレーターの鉱山を失っているものの、その他の鉱山での採掘が戦時下ということもあって採算を度外視して行われていることも大きい。

 大西洋連邦とユーラシア連邦が地球圏の双璧と呼ばれる至った源泉のひとつに、プラントからの収奪だけでなく月面での鉱山開発もあげられることは間違いない。

 C.E.時代の資源供給の双璧は、アステロイドベルトから運ばれてきた資源用小惑星と月面鉱山である。その両者をがっちりと握り続けていたプラント理事国、わけても大西洋連邦とユーラシア連邦がどれほど莫大な資源を得たのか正確に知るものはおそらくいないだろう。

 その膨大な資源の多くがプラントとの戦争に費やされている。それだけの資源が外宇宙探査に振り向けられていたらどれほどの成果が上がったことだろうか?

 

 パトリックの思索がコーディネイターが本来向かうべき場所へと至ったところで、その思考を遮るように卓上のアラームが鳴った。その瞬間、脳裏での思索により茫洋としていた視線が瞬時に目前に合うと同時に思考を指導者としてのものに切り替える。

 そのまますっと腕を伸ばしスイッチを押す。モニターが点き、議長補佐官の姿が現れる。

 「地上の件か?」

 「はい。衛星軌道上の部隊から連絡です。つい先ほど介入を開始したと」

 「そうか、始まったか。

  以後の情報収集を厳に。いかなる取りこぼしも許されんぞ」

 「承知しております。人員は既に配置しました。連絡は所定の計画通りに行います」

 「うむ」

 こしてパトリックにとってつかの間の思索の時間は終わりを告げ、一国の指導者へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太陽光がきらめく南国の空の下、中高度を地球連合軍に向かって侵攻するミサイル群とそれに続くMS部隊のはるか高空に陽光を鈍く反射する光点が浮かんでいる。

 その光点は緩やかな楕円軌道を描きながら刻々と地球連合の艦隊に近づいており、そしてその光点であるMSが両腕部で支えている大型のディッシュ・アンテナで地球連合艦隊から押し寄せる電波の洪水を分類している。

 

 AME−WAC01 早期警戒・空中指揮型ディン特殊電子戦仕様

 

 それが、遥か上空に位置するMSの名称であった。

 この機体は、飛行時の視認性を低下させるためのロービジ塗色が施され、かつその塗料には電磁波を吸収する素材が含まれており、また発熱量を低減させる機構も組み込まれ、あらゆる面で極めて発見しにくく仕上げられている。

 原型機となったディンが昆虫の羽根を思わせる主翼を備えているのに対し、航続性能を重視した巨大な一枚翼に見える高揚力装置を背負っている本機は、その性能及びコスト的に見て極めて貴重な機体であったが、今回の戦闘介入のために、カーペンタリア基地に所属する機体のおおよそ3分の2が駆り出されており、広い範囲に分散して行動している。全機でないのは、連合軍による大規模な反攻が行われている中東・アフリカ方面へ一部の機体を手当てせざるを得ないという事情からである。

 この機体は、もともと極めて発見しにくい上に、中高度に多数のディンが進行しておりかつ高空低空からのミサイル飽和攻撃が行われようとしている状態では、連合軍がこの厄介な機体の接近を予測していながら、未だ発見していなくとも無理はなかった。

 そもそも、知っての通りレーダーとは電波を放射し、その電波が何らかの物体にぶつかって戻ってきた反射波をキャッチして存在を把握する装置である。レーダーを使用している方は、直接反射波を捕らえなければ敵を探知できない。それに対し、受信するだけのこちらは輻射波でもよいわけである。

 つまり、理論上レーダー波は、発射した艦なり飛行機なり基地なりが存在を把握できる最低限2倍の距離を飛ぶのである(往復するか真っ直ぐ進むかの違いだ)

 ホークアイのコードネームを与えられたザフト地上軍の耳目となるべきこれらの機体は、これまでの戦いで培ってきた戦闘経験と蓄積してきた膨大な情報に基づき、地球連合艦隊の有効レーダー圏を正確に把握し、自分たちがその内に入らないよう十分に安全係数をとった慎重な飛行を続けてきたことも未だ探知されない大きな理由のひとつでもあった。

 だが、そのある種芸術にまで昇華された秘匿性を自ら破る時が今まさに訪れようとしている。

 オーブ連合首長国と地球連合が戦端を開いてからずっと、辛抱強くESMに徹し、此度の侵攻に出た地球連合軍が放つ電磁パルス(電子情報(Elint)、通信情報(Comint)、信号情報(Sigint))の分析を続けてきた胸部のバルジが大きくせり出したコックピットに座乗する3人のパイロットたちは、これまでの苦労を攻撃任務に転じる機会を嬉々として待ち受けていた。

 

 もっとも、タイムスケジュールどおりであれば、攻撃の手は既に放たれているはずである。

 実際に見えることはないが、ボズゴロフ級で構成された部隊から発射された数千本の魚雷が、眼下の海を連合軍目指して突き進んでいるはずだ。

 未曾有の規模の飽和魚雷攻撃。その攻撃力は押して知るべし。

 外洋における機動戦であればとても実行できる作戦ではないが、相手が揚陸作戦を実施中で特定の海域に縛り付けられているという状況と、対戦相手が別で横合いから突如として殴りかかることが可能だという極めて特殊な状態だからこそ実施に移すことが可能となった、おそらくは空前にして絶後の攻撃だろう。

 しかしながら、問題点がないわけではない。

 超長距離攻撃であるため、今回の作戦に参加したボズゴロフ級が搭載している魚雷の多くが、炸薬部ユニットを小型のものに変え、燃料部ユニットを大きめのものを組み込んだ射程を限界まで伸ばした魚雷となっている。そのため、破壊力は弱く、たとえ商船構造の支援艦艇であっても1発の命中では沈めることはできない。撃沈するには最低2発、おそらくは3発は必要と見られている。

 唯一良かった点は、魚雷の巡航速度を射程距離が最長になるように遅く調整したことで、放射雑音の低減による被探知の低下という当初予想していなかったメリットも享受できることだろうか。

 また、超長距離からの攻撃による海流などの誤差、敵艦の回避運動及び迎撃などを考慮すると最終的な命中率は10%切ると見られている。

 この数字は魚雷による決して高いものではなく、むしろ低いと断言できる値だ。

 だが、ザフトは命中率の低さは発射本数の増大でカバーするという力技にでることで作戦を実行に移した。たとえ、物資の残量に一時的に問題が生じるとしても、ここで連合軍艦艇を削っておくことは結果としてザフトに利するとの判断が下されたためである。

 

 それに、オーブ攻防戦に介入するザフト本隊からの攻撃はミサイルと魚雷だけではない。ボズゴロフ級部隊とは別に、アスラン率いる別働隊同様の改装が施された輸送艦と大洋州連合軍艦艇で構成された部隊もおり、その艦隊から発進したディン部隊がすぐそこまで来ている。

 ただ、括り上は同じザフト本隊だが、両者の距離は恐ろしく開いている。

 連合軍艦隊からの距離で見ると、ボズゴロフ級部隊までは150〜200キロメートル。一方、改装艦部隊までは最低でも1200キロメートルはあり、とても同一の部隊と呼べる距離ではなかった。

 だが、それも無理はない。そもそも部隊として同列に括ろうとすること自体に無理がある。

 改装艦の母体は当然のことながら商船構造であり、被弾にはすこぶる耐久力がない。へたをすれば、ミサイルが1、2発命中しただけで沈没してしまうほど脆いのだ。アスラン率いる別働隊が徹底的に偽装に拘っていたのはそれが理由である。

 しかも、本隊の改装艦部隊は、別働隊の行動を間接的に支援すべく、一切の偽装を行わず、ミサイル及びMSを剥き出しのまま艦隊をいったりきたりさせて連合軍に圧力を掛けていた。

 これほどおおっぴらに行動させれば、まず間違いない連合軍側に改装艦特有の弱装甲、弱耐久性という欠点も気づかれている。危険を避けるためにも不用意に敵艦隊に近づくわけにはいかない。

 また、改装艦部隊と行動を共にしている大洋州連合軍も、数はともかくその質と規模は、とても正面から連合軍と戦えるだけの力は持っていない。実際のところ今回ここまで出張ってきているのは、地球連合に対する大洋州連合とプラントの関係を見せ付ける見せ金としての意味が大きい。そのついでに改装艦部隊の護衛もつとめているという感じだ。

 そんな艦隊構成のため、タイミングを見計らって一気に攻撃可能圏内に突っ込み、MS部隊を発進させるという乱暴な運用が行われた。

 衛星軌道上の制宙権を押さえ、敵艦隊の動静をほぼリアルタイムで把握できるからこその運用であり、そうでなければ危険を承知の上で敵艦隊に接近するより方法はなかっただろう。

 それでも、数は数。

 別働隊同様に大量に発射されたミサイルは連合軍に対応を強い、後に続く魚雷攻撃、MS部隊の強襲への対処を遅らせることになる。

 

 さらにそれをより確実にするために、彼らがここまで出張り、敵艦隊に対しジャミングを掛けようとしている。

 

 「機長、地球連合艦隊の電磁パルスの分析結果の再チェック、終了しました。

  収集した敵レーダー波の本戦用波長および各無線交信の派生バンドは事前の予測範囲に収まっています」

 流れ込んでくる最新の情報分析を目にも留まらぬ素晴らしい速度で実行していたサブオペレーターが、念のために行っていた結果に問題がなかったことを告げる。

 「わかった。時間の方は?」

 「まもなく予定時刻です」

 「よろしい。ではECMスタンバイ」

 「スタンバイします」

 ほぼ同時刻、海域各所に展開しているホークアイのコールサインを持つ機体が、地球連合軍が使用している全周波数帯に対しての妨害電波照射準備を行っていた。入念に準備されたこともあってタイムスケジュールには寸分の狂いもない。

 準備が整った後は、発動の時をただじっと待つ。

 「まもなく予定時刻です」

 「10秒前よりカウント開始」

 「了解、カウント入ります。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0」

 「ジャミング開始」

 「ジャミング開始します」

 命令と同時にサブオペレーターがスイッチを押す。

 その瞬間、地球連合艦隊のレーダー波、主通話周波数及び予備周波数と思われる帯域を中心として、腰部の可動バルジに格納されたECMポッドから最大出力で妨害電波が放射された。

 もしも、電波を目にする存在がいたとしたら連合の艦隊に向けて瞬時に広がった扇状の連なりを目にすることができたろう。

 「ECMポッド順調に可動中」

 「了解。敵部隊の様子はどうか?」

 「明らかに混乱が見られます。」

 その報告通り、整然と編隊を組んでディン部隊に立ち向かおうとしていた連合の迎撃機部隊に迷っている様子が伺える。与えられた命令に従って行動すべきか、それとも状況の変化に合わせて対応も変化させるべきか、パイロットの練度によって判断に差が出ている様子が長距離センサーの映像からも簡単に見て取れる。

 「よし。どうやら最低限の仕事はこなせたようだな。

  このまま敵レーダー圏外ぎりぎりを飛行しつつ任務を継続する。

  その間に捕捉した新たな周波数については情報を集めておけ。連合との戦いはまだまだ続くのだからな」

 「はっ!」

 きびきびとした動作で再びモニターとキーボードに向き直るサブオペレーターを余所に機長兼メインオペレーターを勤める彼は、眼下を突進するディン部隊に視線を飛ばした。

 「俺たちにできる仕事は果たしつづける。後は頼んだぞ」

 口の中だけで呟かれた言葉は、コックピット内の空気を震わせることなく消え去ったが、機長の想いは間違いなくディン部隊に届いていた。

 

 

 

 

 

 

 ヤラファス島周辺海域への大規模電子妨害と未確認戦力の登場に喧騒に包まれていた総司令部内では、いまだざわめきが収まらないもののようやくのことで落ち着きが取り戻しつつあった。

 「どうやら始まったようですな」

 「ああ。間違いないだろう」

 ソガ一佐の動揺の片鱗も伺えない静かな一言に、カガリも平静を保ったまま応じる。

 既に司令部内の全員がこの度の現象、すなわちザフトによる連合軍への攻撃が開始されたことを理解している。

 ザフトによる電子妨害は主に連合軍を標的として行われているが、幅広い周波数帯に電子妨害が行われているためオーブ側にも影響が出ている。そのため、これまで以上に敵情把握が困難になっていた。

 だが電子妨害は遥か天空からの眼を遮ることはできない。光学による索敵を妨害するにしても、これほど広範囲に敵艦隊が展開していてはそれもままならない。そのため、アメノミハシラが捕らえた映像はレーザー直通回線で確実に情報を送り続けてきている。

 その成果が、正面スクリーンには模式化された連合の艦隊の動きとしてしっかりと描き出されている。

 それを見ていれば、複数に分かれて行動していた敵艦隊のいずれもが、ザフトの攻撃に対応するため慌しく動いている様子が十二分に読み取れる。

 「南西方面の敵艦隊が海岸線から離れ始めているか」

 やはり第8艦隊のことが意識に残っているのか、真っ先にカガリの視線は南西部へと向かい、そこから見て取った情報を口にする。

 それに対し参謀の一人がもっとも確度の高い推測を述べる。

 「ヤラファス島からの攻撃とザフトとの挟撃を恐れたのでしょう。

  地対艦ミサイル部隊は戦前では予想できなかったほどの戦果を上げましたから」

 「確かにな。だが、その地対艦ミサイル部隊も弾切れで開店休業状態だ。

  残された我が陸軍に戦力に敵艦隊を叩くだけの力は残されていない」

 「はい。おっしゃる通りです。ですが連合はそれを知りません」

 「その通りだ。だが、連合の注意がザフトを向いているこの好機をむざむざ逃がすほど我らはお人よしではない。

  確かに陸軍は攻撃の手段を失っているが、我らは敵へ向ける牙を全て失ったわけではない」

 「はい」

 「よろしい。トダカ一佐へかねてよりの計画を直ちに実行に移すよう伝達せよ。

  オーブ主力艦隊は直ちに出撃。南西方面を避退中の連合軍艦隊を攻撃、これに可能な限りの損害を与えよ。

  敵艦隊が退避し続けた場合は目標を南西部に上陸した連合軍部隊に変更しこれを撃滅せよ、とな」

 「はっ。命令を伝達します!」

 厳然と戦果の拡大を命じるカガリに連合軍に対する一片の慈悲もない。

 敵の苦境は味方のチャンス。戦争はスポーツと違う。相手が弱みを見せたのなら徹底的にそこを突かなくてはならないということを、カガリはこれまでの一連の戦いを経てしっかりと学んでいた。たとえ彼女の心の奥底に講和への飽くなき希望があるにせよ、それは今表に出すべきものではなく、むしろ今後の交渉のきっかけを作るためにもがつんと一発、連合のむこうずねを思い切り蹴り倒すことが必要だということも。

 新たな命令を下しつつカガリは思う。

 これで桂馬で飛車角取り、には少し遠いか。それでも飛車か金を取れるぐらいの効果はあるはず。

 飛車に当たる南西方面の敵分艦隊は弾薬が欠乏しつつあることは既にこちらも把握している。オーブ主力艦隊が真正面から攻撃を仕掛けても2:8あるいは3:7ぐらいの比率で勝利を収める可能性が高い。

 一方の金にあたる上陸部隊を海岸から艦砲射撃でなぎ払うことができれば、首都オロファトの安全を確保でき、かつ陸上戦力を北東と南西の二正面作戦から開放することが可能となる。

 分艦隊を撃破するにせよ、上陸部隊を戦闘不能状態に陥れるにせよ、連合軍に突きつける戦果としてはそれなりのものになるはず。

 一軍を率いる者として甘い予測は可能な限り排除すべきだが、もし最良の結果を引き当てることができた場合、両方の果実を得ることができるかもしれない。まあ、それはいくらなんでも楽観的に過ぎると指摘されるだろうが。

 

 実のところ、これがかなりの危険を孕んだ賭けであることはカガリも理解している。

 

 もし現在行われているザフトの攻撃がこちらの予想以上に小規模なもので終わってしまった場合、攻勢に出たオーブ主力艦隊は混乱を収拾した連合軍艦隊の反撃によって大打撃を受ける恐れがある。また、如何に消耗しているとはいえ、未だ残存する艦艇の数は連合側がオーブ側を圧倒している。そして、海上戦闘は陸上戦闘とは異なり地形効果が少ない。

 このような条件での攻撃に危険がないわけがない。

 だが、もともと劣勢の自分たちが何ら危険を犯すことなく有利になれる方法などないということを今のカガリは理解している。

 虎穴に入らずんば、虎子を得ず。

 そして、指導者の重大な役割のひとつが、いつどこの虎穴に入るのかを決めるということだろう。

 カガリは今このタイミングで連合軍艦隊への攻撃を行うという虎穴に入ることを決めた。一度決断を下した以上、迷いなどもっての外。そのようなものは無用であるばかりか、場合によっては有害にすらなりかねない。

 唯一つ許されるのは、自身の下した命令がもたらすであろう結果を如何に受け入れ、そして有効活用すべきか、だけである。

 そんな黙考するカガリに、一人の参謀が一歩進み出て彼女にとっての予想外の進言を行う。

 「カガリ様、艦隊の攻撃に合わせて航空戦力も全て振り向けたいと思います」

 「何?そんなことをして大丈夫なのか?」

 たちまち思考の渦から飛び出して、視線を戦力分布が示されているサブスクリーンに向けながら心配そうに言う。

 自分では果断な決断を下すくせに、他の人間が同様の行動を起こすとやはり驚くものらしい。そのあたりにはまだまだ今後の成長が期待されるということだろう。

 それはともかく、カガリは作戦参謀の進言に驚きの表情を見せながらもすぐに判断を下すようなことはせず続きを促す。今はわずかながらもそれを可能とする時間があることが無性に嬉しい。

 「航空戦力をスイングすることで確かに北東方面に問題は生じます。

  しかしながら、連合もザフトの攻勢に対応するために航空戦力を再配置せざるを得ません。事実、こちらへの攻撃の手は緩みつつあります。

  今の状態が続くと仮定するならば、北東方面の部隊には完全な防御体勢に移行することで、仮に連合が支援がない状態で攻勢に出てきたとしても防衛線が抜かれることはまずないと思われます」

 「なるほど。シミュレーション結果は?当然実施したのだろう?」

 ここまで明言するということは、おそらくこの考えはこの参謀だけのものではない。間違いなく、何人もの協力者がいるはずだ。そして、そんな彼らが事前にシミュレートを怠るはずがない。案の定、

 「はい。確認済みです。結果はこのように」

 そういってサブスクリーンにシミュレーション結果を表示する。

 むろん、シミュレーションの結果は絶対ではない。前提条件の有無やその数、設定するパラメータのさじ加減によってシミュレータは千差万別の結果をはじき出すことはよく知られている通りである。

 だが、全く当てにならないか?というと、そういうわけでもない。

 ようはシミュレータもまた道具のひとつでしかないということを常に念頭においておけば、一定の指針を得るのに十分に役立つ。

 そして、カガリは部下たちがこのシミュレーション結果を提示できるようにするまでに何度も条件を見直し、シミュレーションを繰り返したであろうことを信じて止まない。

 その結果の概要にざっと目を通し、十分に成算が伺えることを確認する。

 「わかった。全航空戦力を振り向けることを許可する。投入のタイミングは全て任せよう」

 「はっ。ありがとうございます。ご期待に沿えるよう全力を尽くします」

 「ああ。直ちに作業に取り掛かれ」

 「はい」

 幾人かの参謀たちが、カガリの命令を受けた参謀とともに下段へと降りていく。

 その様子を見ながら、ふっとカガリは皆に見えないように息を吐く。

 

 正直なところ自分の両肩に祖国の命運が掛かっている事態、こんな状況からはなるべく早く脱したいものだ。と、誰にも言うことの出来ない愚痴を内心で呟く。

 むろん、アスハの名を継ぐものとして統治者としての責務から逃れるつもりは毛頭ない。それは、自分たちを信じて死んでいったものたちに対する裏切りであり、そのような行為をするような自分を彼女自身が決して許しはしないだろう。

 だが、だがである。ひとつ選択を間違えただけで祖国滅亡という状態はつくづく心臓によろしくない。そのこともまたれっきとした事実だ。

 じんわり身体の奥深くまで染み込んだ疲労と共にしみじみとそう思う。

 ここに至り、実際の戦闘が交わされていなかったとはいえ、プラントと連合の戦争の合間を一年以上に渡って潜り抜け続けてきた父ウズミの凄さが文字通りに肌身に実感として理解させられた。

 そして、かつての自分が如何にものを見ていなかったかも。

 

 こういうのを確か若さゆえの過ちとか黒歴史とか言うのだったか?

 

 まあ、それはともかく。このオーブ攻防戦が終わりを迎えたとしても、オーブと地球連合の間にいったん開かれた戦端は決して閉じられるわけではない。

 最終的な双方の損害の度合いにもよるが、今後も継続して連合とは干戈を交え続けることになる可能性は高い。何より、オーブを放っておいた状態では、連合軍は大洋州連合に手を出すことができない。カーペンタリア基地を好きに振舞わせる状態では、十分な戦力を宇宙にシフトできず、結果としてこの戦争をいつまでたっても終わらすことができなくなる。

 もっとも今後しばらくの間は小競り合いですむだろうとオーブ軍中枢は予測しており、カガリもその見解に賛意を表している。

 如何に超大国の大西洋連邦とはいえ、その戦力は無限ではない。ましてや宇宙でも攻勢に出ているザフトに被害が続出していると報告が上がっている。

 連合軍が地上軍と宇宙軍、その双方を大幅に増強するのには相当な時間が掛かる。

 もっとも、それはオーブ軍とて同じこと。そしてその戦力を揃えるまでに掛かる時間こそが、今後のオーブの行く末を左右する鍵となるはずだ。

 と、そこまで考えたところでさすがに先走り過ぎだとの考えが脳裏を走った。

 その思考を是とし、意識を目の前のことに戻す。もっともこんなことを考えられるのも、このオーブ攻防戦が終幕に差し掛かっていると感じられるからだろう。

 その想いがふと言葉となって口から零れた。

 「長きに渡ったこの戦いも終わりが見えてきた。

  だが、夜明けの直前こそがもっとも暗いという。

  だからこそ、ここが最後の正念場ということだな」

 「はい」

 正面スクリーンをじっと見つめたまま静かに独白するように言葉を紡ぐカガリの傍らで、ソガをはじめとする参謀陣がじっとその思いのたけを聞いている。

 「祖国を守るために多くのものが自らの命を投げ出していった。

  陸海空を問わず、本当に多くのものたちが祖国に準じた。そんな散っていったものたちの想いを無駄にしないためには、彼らの墓前に勝利の報告を捧げるしかない」

 そこにいたってカガリは振り向き、その視線をひたと参謀陣へと向ける。

 「私はアスハの名を背負っているとはいえ、一人では何も出来ない唯の小娘に過ぎない。

  だが、私は彼らの墓前に何としても立ちたい。そのために今一度、皆の力を貸して欲しい」

 そういってカガリは深々と頭を下げる。

 「カガリ様、どうか頭をお上げください。

  散っていった同胞たちに報いたいと思っているのは我ら全員も同じです」

 ソガの言葉を聞いていた全員が頷く。

 その様子を背に

 「カガリ様。どうか我らの力、存分にお使い下さい」

 とソガ一佐が皆の思いを代弁する。

 「ありがとう」

 もう一度深々と頭を下げた後、カガリの表情にためらいの色は欠片も残されていなかった。

 そこにあるのはただ祖国を何としても守りぬくという覚悟を決めた一人の指導者がいるのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠距離からのミサイル戦闘を皮切りに激突した連合の戦闘機部隊とザフト主力部隊から出撃したディン部隊は、瞬く間にその距離を縮め、激戦を繰り広げていた。

 迎撃を素早く行った連合側だったが、実際に行われた攻撃はお世辞にも統制されたものとはいえなかった。迎撃直前に行われたザフトの電子妨害によって、部隊間交信を切断された連合軍部隊は、その復旧にライムラグが生じた。そのため、各個にミサイルを発射せざるを得ず、戦訓として得ていたはずのディン部隊と戦う際の必須要件である飽和攻撃を満たすことが出来なかった。

 結果、極少数の運の悪いディンを除き、大半のMSがミサイル迎撃または回避に成功。

 唯一の機会を失った彼らに第二射を行う余裕は与えられず、ディンの得意とする距離まで一気に踏み込まれていた。

 光り輝く南洋の大空いっぱいに展開した数多くの戦闘機とMSが、旋回し、急降下し、急上昇し、交差する。無数の射線が大空に朱を描き、その線に捉われたものは傷を負い、あるいは炎に包まれて海面へと死のダイブを行う。

 当初は一定の秩序を持って開始された空中戦は、戦闘が進むにつれてたえず相手を変えての喰うか喰われるかの至近距離からの乱戦へと突入していく。

 イーゲルシュテルンで落とした敵機が黒煙を引いて海面へと落下し始めたのと同時に、後方から落とした敵とペアを組んでいたもう一機の敵機がこちらを射界に捕らえようとしている。

 100トンを超える機体を載せたグゥルの運動性は、元の出力が高いとはいえお世辞にも敏捷とはいえない。だが

 「狙いは悪くない。だが、甘い!」

 全く慌てることなくフットペダルを踏み込む。その操作に機敏に反応し、デュエルはグゥルを思い切り蹴りつけて自身を上空に浮かす。

 その瞬間、イザークの身体に下向けに凄まじいGが掛かるが鍛え抜かれた肉体は難なくその加重に耐えてみせる。それでも、足元に向けて体の中を血液が滝のように流れていく。スーツの耐G機能が働き、血流の移動を抑えるべく身体がぎゅっと締め付けられる。

 そして、肉体を苛めた目的は果たされる。

 僚機の仇をとろうと5時の方向から突っ込んできたF−7Dは、狙った獲物が突然上下に分かれてしまったことで目標のロックオンに失敗。一瞬の躊躇の後、やむを得ずそのまま急速離脱を図る。

 その決断は間違っていない。だが、相手が悪かった。一連のアークエンジェル追撃の戦いの中で矜持を傷つけられ、そしてそこから自力で這い上がり、それでも戦友を失い、自らの力不足を嘆き、研鑽を積んだイザーク・ジュールという傑出したコーディネイターがそのような隙を見逃すはずもない。

 「落ちろ」

 トリガーを引くと同時に右肩部装甲に設置された115ミリレールガン「シヴァ」が間髪をいれずに火を噴く。

 速射性に優れたレールガンは過つことなく照準をつけた周辺へと集弾。回避行動すらも織り込んだ読みに何発もの直撃が発生する。

 「ふん。精鋭といえどこの程度か」

 口では敵を切って捨てているが、その瞳には欠片の油断もない。自身を狙っていた2機の敵機を片付けたイザークは、慎重に周囲の状況を探り、合わせてすぐそばで戦っているはずの部下の様子を把握しようとする。

 サブモニターはすぐに彼の部下の奮戦を映し出した。

 

 

 「そこ!」

 身体を押さえつけるGに耐えて、シホ・ハーネンフースは自機を左バレルロールに入れる。

 「はあぁ!」

 ロールの頂点で姿勢を戻すと正面モニター上のレティクルのやや下にクリームイエローの機体が収まった。

 距離が若干遠いが、シホは既に構えていたマシンガンを1秒ほど発射する。

 曳光弾がオレンジ色の光の矢となって連合のF−7Dスピアヘッドの鼻先を掠めた。

 死神の鎌が自らの首筋に掛かっていることに強制的に気づかされた連合のパイロットは、反射的に機を左に滑らせた。同時にフラップを半分開き、機速を落とす。敵は彼の右前方に飛び出してくるはず・・・・・彼の計算は地球連合軍内の訓練であれば大正解であった。

 だが、パイロットの耳にマシンガンの銃弾の着弾音が聞こえたと同時に、彼の意識は闇の中へと消えた。

 一瞬のうちに機首を失った戦闘機はそのまま、まっさかさまに海面に向かって落ちていく。

 相手の手に乗ったように見せかけ、敵機を追い抜く寸前に機体の手首を返し機首を切り落とすという妙技を見せたシホは隊長であるイザークが機体を寄せてくるのに気づく。

 「ハーネンフース。大丈夫か?」

 「はい、隊長!」

 それまで彼女を撃墜しようとまとわりついていた戦闘機を排除した安堵と想いを寄せている隊長の気遣いに、彼女の声音が弾む。

 まだ、名前で呼んでもらえないという少しばかりの残念さがあるものの、今はまだそれでいいと思っている。

 一方、想いを寄せられているほうのイザークは、そんなことは露知らず、部下の機体に注意を集中している。

 隊長に抜擢されてから日が浅く、実力的には十分とはいえ、未だ至らぬ箇所があることを自覚させられている彼は、以前よりもはるかに成長し、男ぶりを上げている。

 実際、イザークに想いを寄せているのはシホだけではなく、彼女のほかにも何人もの女性兵士がイザークに好意を持っているのは、隊内の暗黙の了解であった。

 気づいていないのはただ隊長であるイザークのみ。このあたり、心身ともに優秀なはずのコーディネイターも鈍感というスキルからは逃れないのかは今後の研究の余地があるだろうが、それは置いておく。

 彼らと正対した敵機3機が全て排除され、さすがに彼女の声音に安堵の色が見える。いかに優秀とはいえ、実戦経験はまだそれほど多くない以上、それも当然のことだろう。コーディネイターであろうとナチュラルであろうとそのあたりの心情に違いはない。

 「被弾箇所は?」

 「はい。脚部装甲に若干の損傷がありますが許容範囲内です」

 極度の緊張にさらされた兵士が、通常ならば考えられないようなポカをすることを念頭におきながらイザークは質問を重ねる。

 それを受けてサブモニターが表示するダメージレポートを確認し、シホが返答する。

 「ならば、戦闘続行に問題はないな?」

 「ありません」

 「よし。では付いて来い!」

 「はい!」

 編隊を組み直したイザークとシホの操るディンは、激戦の続く大空の闘技場に再び進入する。

 新たな獲物あるいは新たな狩人の登場に気づいた連合軍機が、やられる前にやるとばかりに牙を剥いて襲い掛かってくる。

 「おおおおおぉ!

  貴様らごときにやられる俺ではない!出直して来い、未熟者どもがあ!」

 デュエルの武装を的確に用い、集まりくる敵を見事な射撃で蹴散らしていく。

 (イザーク隊長、その猛々しい姿がとっても素敵です♪)

 若干一名、不安な心構えの部下を率いたイザーク無双が南洋の大空に繰り広げられていく。

 

 

 

 地球連合艦隊はその全力をあげてザフトという名の降りかかった災厄を振り払おうとしていた。

 戦術単位に分かれた艦隊は押し寄せるザフトに対し対空砲火の壁を作り、退避した早期警戒機は味方を支援し敵の行動を妨害しようとしている。

 さらに戦いは物理的なものだけでなく、電子上でも行われており、介入直前より始まった電子妨害の対応のため艦隊の目たるピケット艦の戦闘情報室も対応に追われ喧騒に包まれていた。

 「レーダー反応が虚探知(ゴースト)で埋め尽くされています!」

 「駄目です。予備周波数も妨害を受けています!」

 「そうか。やはり抜かりはないか」

 沈痛な表情でオペレータからの報告を受けたイージス艦の艦長が言う。

 通信及びデータリンクについてこれまでメインで使用していた帯域を切り替えたが、そちらの帯域でも妨害を受けていることが判明したためである。

 「早急に対処せねばならん。

  対電子妨害(ECCM)の準備はどうか?」

 「準備完了しています」

 電子戦担当の参謀が振り返りながら言う。敵の電子戦機の情報を探るためにあえて今まで対抗処置を控えていたが、それもいいかげん頃合になっている。

 ゆえに、即座に発動を命じる。

 「直ちに対応を開始せよ!」

 「はっ!」

 スイッチが押された瞬間、艦から放たれるレーダー波の出力が一気に上昇する。

 電子妨害(ECM)や対電子妨害(ECCM)は、極端な言い方をすれば電波のぶつけ合いである。そして、勝利を収めるのはより大量に電波を飛ばした方、ようするに出力のでかい方が勝つのだ。

 そして、航空機と艦船では搭載できる動力炉の出力の差から必ずといっていいほど艦船が勝利を収める。

 ザフトの電子妨害を受けた数十秒後に始まった地球連合艦隊の対電子妨害は、出力の法則どおりににザフトの電子妨害をある程度はね退けることに成功する。

 

 そう、ある程度である。全てではない。

 

 電子妨害がかけられる前より明らかにレーダーの探知距離は短くなっており、同時に虚探知も完全に消え去ったわけではなく、また、通信回線も何とか言葉が通じるもののノイズが除去されたわけではなかった。

 もともと電子戦は通常の戦闘と違って、もっぱら双方が互いの手の内を読んだ上で行われるといってよい。

 直接武器を持って渡り合うことがないため、そこには臨機応変という言葉が必要とされることは滅多になく、ほとんど全てがロジカルに対応される。

 電子妨害、対電子妨害、その後に取られる一連の対応は、ほぼ双方の予測の範囲内に収まる。

 今回の電子戦も例外ではない。

 もっとも、だからこそ電子戦担当はより一層歯痒い思いをすることが多い。

 「駄目です。撹乱粒子の散布は広範囲に行われていいます。

  ザフトは相当の数の電子戦機を投入したようです」

 「そうか。どうやら連中も相当気合を入れているようだな」

 そう応じつつも脳内では凄まじい勢いで考えが走り回っている。

 状況は芳しくない。双方の電子戦のやり取りは連合軍艦隊の即応体制を阻害し、迅速な戦力の投入を妨げる。それは連合軍に取って不利に働く。

 なぜなら、MSディンと地球連合軍の主力戦闘機F−7Dスピアヘッドでは単機の持つ戦闘力が違いすぎるため、数で対抗する必要があるからだ。だが、その数もとある要素によって見えざる戦力の低下を強いられている。

 プラントが地球上にばら撒いた多数のNジャマー。

 これがなければ、いま少し楽に戦うこともできたろう。

 なぜなら、その最大の効果である核分裂反応を押さえ込んだこともさることながら、副次的な影響としての電磁波阻害効果が予想以上に連合軍の戦力を低下させていたからである。

 何しろ旧世紀以来脈々と発展させてきた統合管制戦闘が砂上の楼閣のように崩壊してしまうという状況を招いているのだからその効果のほどは計り知れない。

 海上の艦隊、地上の機甲師団、大空の編隊といった集団をひとつの生き物のように動かすために必要な神経にあたる部分。それがNジャマーの副次的な効果によって阻害されてしまったことによって、結合する術を失った個々の集団に戻されてしまっている。

 有機的に結びついた戦力と、ばらばらにされた戦力とでは、発揮できる能力に雲泥の差が存在している。

 つまり、今の連合軍は戦前に想定されていた戦闘力の数分の一以下の能力しか発揮できていないといっても過言ではない。

 「当分の間、敵の妨害を除去することはできなさそうだ。

  だが、連中の出す波の解析だけは怠るなよ。機会さえあれば一発ぶちかますからな」

 「はっ。了解です」

 「当面は、ノイズだらけのこの状況で本隊が如何にしてザフトの攻撃をしのぐか、か」

 自分でも実現は無理そうだなあと思うようなことを口にする。

 当初の予想以上に損害を被ったオーブ攻防戦だが、戦い続けてきた期間も当初の予測を遥かに超えている。

 そして当然のことながら、軍隊は戦えば戦うほど消耗していく。

 現状、額面上で生き残っている戦力から何割か引いた値が実際に発揮できる戦力だと考えるべきだろう。

 長期間にわたって戦い続け、戦力も消耗した状態で、出番を待ちに待っていた新鮮なザフトの精鋭の攻撃をしのぐ。それもこちらの耳目を塞がれた状態で。

 頭の中で全員が無理無理と全速力で首を左右に振るか目の前で手をぱたぱたと振る姿が幻視できそうだ。

 「とはいえ、何もしないというわけにもいかんな。

  可能な限りの情報を集め旗艦に回せ。ダーレス提督なら少なくとも無駄死にせずに済む方法を見つけ出してくれるかもしれん」

 「了解!」

 信じられる指揮官が率いる部隊は強い。それを如実に表すかのような状況だった。

 

 

 

 個々の艦艇や戦闘機が奮戦しようとも、介入する戦場とタイミングを選ぶ権利を有していたザフトが少なくとも戦闘初期の主導権を握るのは、戦術的にみて至極当然のことだった。

 しかも連合軍の航空戦力の一部は、ヤラファス島北東方面の支援に出ており、また更に一部は支援から帰ってきたばかりであるのだ(ザフトの介入のタイミングが不明な以上、通常の航空支援を途切れさせるわけにはいかない)

 オーブ攻防戦開始後、繰り返し行われてきた母艦を離れた艦載機がヤラファス島で支援を行ってから帰艦するまでの任務の飛行時間にそれほど大きな違いはない。それは、航空機の飛んでいられる時簡に限りがある以上、どうにもならない。

 そして連合軍にとってもっとも攻撃されたくない時こそが、ザフトが攻撃すべき時である。

 ならば、これまでずっと連合軍の様子を伺っていたザフトからすれば、航空戦力の運用が最も混雑していると予測される時間帯を突くのは当然の帰結である。

 運用が窮屈であれば、それだけ咄嗟の迎撃に回せる戦力は減る。いかに介入に備えていようとも、進展しない戦線を抱えていては確保し続けるられる限界もある。

 さらに先行したミサイルによって撒かれた撹乱粒子が戦場に滞留することで双方の索敵能力は確実に低下する。また、大量に散布された撹乱粒子だけでなく、被弾した艦艇や機体から噴き出す金属粒子を含む様々な煙によってレーダーや赤外線、レーザーなどを用いた手段は戦闘が進むにつれ効率が低下し続けると言っていい。

 ただし、効率が低下すると言っても防御側と攻撃側では索敵対象の大きさがまるで違う。

 直径数十センチ、全長数メートルのミサイルと全長200メートルを超える艦艇。どちらが見つけやすいかは言うまでもないだろう。しかもミサイルは正面投影面積が小さい。標的に向かって直進していた場合、正面の数十センチの部分を探知しなければならない。

 むろん、艦艇のほうはミサイルとは段違いの精度の観測手段を有しているため、単純な比較はできない。それでも攻撃側であるミサイルのほうが有利なのは簡単に把握できることだろう。

 従って、ザフトが第一陣に撹乱粒子を積んだミサイルを大量に用意したのは、戦術のセオリーとして当然のことといえた。

 撹乱粒子で索敵効率を低下させ、続くミサイルで防空網を構成する兵器を消耗させ、最後に有人兵器を投入する。

 

 ザフトは攻撃にあたって王道中の王道を選択したのだ。

 

 そして、防御側である連合軍はザフトの狙いが分かっていてもミサイルを撃破せざるを得ない。

 なぜなら炸薬を積んでいないミサイルでも、その速度と質量で船体に十分すぎるほどのダメージを与えることが可能な上、通常の対艦ミサイルも含まれているからだ。

 そうして戦場のそこかしこで似たような状況が発生していく。

 

 迫る対艦ミサイル。

 迎撃する対空ミサイル。

 撃破され、撹乱粒子がばらまかれる。

 撹乱され、ミスが増加する迎撃。

 ミスの増加で撃破される場所が敵艦隊に近づき、より広く撹乱粒子が戦場に滞留する。

 ついに、迎撃をかいくぐり命中するミサイルが出始める。

 被弾により、迎撃の火線が減少する。

 さらに、命中するミサイルが増えていく。

 

 ひたひたと押し寄せるザフトの攻撃が連合軍の防御を侵食していくその様は、ウイルスが寄生してくような何か生物的なものを感じさせるものがあるが、被害を出す・出させるの立場の違いはあれ、おおよそザフト・連合の双方の事前予想からそう外れることなく状況は推移していく。

 

 「味方航空部隊、苦戦中。戦線が後退しつつあります」

 「ソーフレイ、ウォーラーが敵ミサイルに被弾。両艦は速度を落としながら戦列より落伍します」

 オペレーターたちの極力感情を排除した声が室内に走り、次から次へと集まっていく戦闘情報が目まぐるしくスクリーンの情報を書き変えていく。

 現時点では、敵味方の航空戦力のぶつかり合いとザフトのミサイル迎撃情報が主となっているが、始まってよりわずか数分ですでに損害が積み上がり始めている。

 「最良のタイミングを計っていただけのことはあるか。

  効率的に容赦なくこちらの戦力を削ぎ落としに掛かっている」

 累積の損害を示すスクリーンを見ながら、誰に言うともなしにダーレスがごちる。

 「おそらく、パナマ攻略に使用した戦力を転用しているのでしょう。

  如何にザフトとはいえ、これほどの戦力を短期間に何度も動かすのは至難の業のはずです」

 参謀の一人がザフトの内情を推理してみせる。大規模な戦力を動かすためには戦力と物資の集積が不可欠であり、それらは一朝一夕に集められるものではないため、その推測が正しいであろうことがこの場にいるもの全員が賛同できる。

 だが、それを聞いたダーレスは深くため息を吐くと重い声音で告げる。

 「ならばなおのこと恐ろしいものがある。

  ザフトは我々のオーブ侵攻を予測し、用意した戦力を分散させることなく留めておいたということを意味するのだからな」

 ダーレスの言葉に推測を述べた参謀の表情に愕然としたものが浮かぶ。

 「確かにおっしゃる通りです。

  考えてみれば、このところのプラント側の戦略は的確にこちらの要所を打ち抜いてきております。

  ザフトがこちらの行動を予測していた可能性は十分にあり得ると推察せざるを得ません。

  あるいは、プラントの指導者が変わったことと何か関係があるのかもしれません」

 別の参謀がダーレスの発言に対し賛意を述べつつ、自らの意見を表明する。それに対し、すぐさま別の参謀が意見を追加する。

 「確かに、パナマ攻略は新しい議長が強く推進していたとの情報があります」

 「そのパナマで受けた被害、

  そしてここオーブで受けた被害。

  それ以前からも積み重なった被害を累計すれば、我らが洋上艦隊の戦力は文字通り半減したという言葉が似合うことになりそうだな」

 「縁起でもない話ですが・・・的確な表現ですな」

 ダーレスの容赦ない予測に、苦々しい表情を浮かべながらもベイスが同意する。

 本来、上に立つものが不吉な予想や暗い未来を明言するのはほめられたことではない。だが、その発言に誰も異を唱えない。それだけ現場では上層部に対する不満が鬱積しているということなのだろう。

 実際のところ、これまでに被った損害とこれから受けるであろう被害を合わせれば、大西洋連邦の洋上艦隊はこれから先、最低でも3ヶ月、一番可能性の高いのはおよそ半年ほど、損害の補充と再編成で機動戦力としての価値を丸々失うことになることは確実と見られている。。

 (そして、これが私の最後の任務になるだろうしな)

 決して言葉には出さず、ダーレスはそう一人考える。

 既に述べたように、このオーブ侵攻作戦では既に当初の予測を大幅に超える損害が出ている。その上、ザフトの介入が開始されたのだ。仮にザフトの介入を何とかしのげたとしても、受ける損害は甚大なものになることは間違いない。おそらくは損害大につきオーブ侵攻作戦続行は不可能な状態まで追い込まれることになるだろう。

 さらに今後もザフトの攻勢が考えられる情勢で、これほどの被害を出した司令官が何のお咎めもなく職務を続けられると考えるほどダーレスはおめでたくはない。たとえその大半が彼の責任ではなく政府の横槍のせいだったとしても、司令官とは決断し、責任を取るために存在するのだから。

 予想される中で最良の結果となったとしても、艦隊司令官としての任を失いどこかの基地司令官へ左遷されるだろうし、もっとも可能性が高いのは予備役への編入あたりだろう。

 

 つまり、ザフトの介入が開始される前にオーブを陥落させることが出来なかった時点で、ダーレスの軍人としてのキャリアは既に終わっているに等しいと言えるだろう。

 

 正直、そのことに一片の悔いもないといえば嘘になる。ひとたび軍人となったならば、よほどのことがなければ栄達の道を夢見るのは至極当然の感情だ。

 だが、この戦争が始まってからダーレスの意識は大きく変更を余儀なくされた。それまでも軍需産業企業と政界の癒着はかなりのものがあった。プラントからもたらされる莫大な富が国家財政の規律を緩め、必要以上の軍備への資金の投入がなされていたことがその背景にはある。

 だが、開戦後は開戦前の行為が児戯に思えるほど一気に癒着の度合いは深まっていった。

 その主たる要因には、予想外の連合軍の劣勢という戦況が大きく影響している。大方の識者による開戦時の予想では、その数量において比較にならない勢力から旧世紀の湾岸戦争のような備蓄弾薬の一掃とその補充関連あたりで終わると見なされていた軍需が、おお外れとなったからである。それまでの既存兵種がザフトの用いたMSに完敗を喫したことにより、軍需産業企業が新たな金の匂いを嗅ぎ付けたのだ。

 

 敵が持っているものは味方も持たねばならない。

 

 古今東西の歴史は軍というものがそういう風に動くものだということを明確に告げている。

 そして、いつの時代も新しい兵種の導入には莫大な費用が必要とされる。それに例外はなく、そしてそのことに反応しない軍需産業企業もまた存在しない。

 MSという新たな兵種はそれまでの主力であったMAよりも機体を構成する部品点数が多く、また汎用性の高さの一因となっている携行武器が多種に渡っていることも軍需産業企業にとっては福音にしか見えなかったろう。。

 さらにブルーコスモスという一種の宗教じみた考えが軍内部に浸透していたことも腐敗の進行に一役買っていた。その役割をごく簡単にまとめると、コーディネイターを滅ぼすために強力な兵器を多数欲したといえば理解してもらえるだろうか。

 戦線が拡大し、月や地上も戦場になると必要とされるものもより一層増大する。それ以外にもNジャマーによる電子兵装に頼った既存兵器の価値の低下など様々な要因が絡み合い、結果として連合軍内部と軍需産業企業の癒着を伴う腐敗は相当な勢いで進行していった。

 これまでは、その腐敗にまみれず、かといって孤高を保つというわけでもなく、あらゆる局面で優れた能力を発揮する軍人として誠実に軍務を勤め上げてきたダーレスであったが、その経歴を買われて今回の作戦の前線指揮官に任じられたことが、軍歴に止めを刺すことになってしまったのは皮肉としかいいようがない。

 ただ、彼の軍歴は何らかの奇跡が起こらない限りほぼ終わりを告げられたようなものであるが、それでもダーレスの己が軍人としての責務を果たすという意志は消えたりしない。彼はプロフェッショナルとしての軍人としての己を是としている。ゆえに、己の手の内にあるものは全て使い尽くすことに躊躇は全く覚えない。

 「ベイス、特務MS小隊を準備してくれないか」

 「彼らは艦隊に到着したばかりですが、それでも使われるのですか?」

 「せっかくのロバート大将からの心遣いだ。

  それにザフトの水中用MS部隊が襲い掛かってくるのも時間の問題だろう」

 「確かに。この状況でザフトがディン部隊だけを投入するはずはありません。

  確実に水中用MS部隊も投入してくると思われます」

 「無為無策のまま連中を迎え撃つわけにはいかん。そういうことだ」

 「了解しました。直ちに準備を整えさせます」

 そんな彼らの会話を計っていたかのように、恐怖を含有したオペレータの報告の声が上がる。

 「ソナーに反応あり!ザフトの魚雷攻撃と思われます!反応数、さらに増大!」

 「全艦に警報を出せ!対潜防御準備いいか!」

 「敵魚雷、多数接近中。警戒せよ。繰り返す、敵魚雷、多数接近中。警戒せよ」

 室内の喧騒がさらに一段レベルが上がる。

 「やれやれ、ザフトの将兵はこちらが思う以上に働き者らしい」

 「我らの敵は、何しろコーディネイターですからな」

 ダーレスのぼやきにブラックジョークで応じるベイス。新たな敵を迎えようとするこの場で、プラントが理事国によって扱き使われていた過去を捻ったユーモアを表せるベイスの胆力は尋常のものではない。

 そんな彼の様子にダーレスにも苦笑が浮かぶが、それは一時のこと。すぐに表情を引き締めると

 「ベイス、特務MS小隊については任せる。

  こちらに到着早々に働かせることになるパイロットたちには申し訳ないが、うまく取り計らってくれ」

 「わかりました。彼らも状況は理解しているでしょう。お任せ下さい」

 「頼む」

 戦況が刻一刻と推移していく中、襲い掛かられた連合は取りうる全ての方法を持ってザフトに抗していく。

 だが、そんな彼らに更なる凶報が届く。

 「ピケット艦より警報!新たなミサイル群を探知!

  更に後方に敵部隊あり!」

 「なんだと!?」

 

 ザフトのターンはまだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき

 

 

 

 さて、久しぶりの主人公の登場です。

 作者すら主人公のことを忘れかけていたため、慌てて無理やり登場シーンを追加したわけではないです。

 ええ。ないったら、ないんです。

 そこの所、くれぐれも勘違いしないように。いいですね?

 また、一部キャラが壊れているように見えるかもしれませんが、それは単なる錯覚です。

 錯覚だといったら、錯覚なんです。

 決して、口調が分からないから壊れキャラにしちゃえと投げ出したわけではないんです。

 ええ。ないったら、ないんです。

 そこの所、くれぐれも間違えないように。いいですね?

 

 内容としてはザフト介入開始の序盤です。

 その割にはいつものようにぐだぐだと余計な情報が詰め込まれていますが(汗)

 実はこの後もいろいろとかなりの量を書いていたんですが、切れ目が悪くてこのままだといつまでたっても投稿できそうにないので強引に話を切って投稿することにしました。

 次回は、今回ほど期間をあけずに投稿できるはず・・・・・・だといいなあ。

 文章はあるんだけど、うまくまとまってないんだな、これが。

 世の中には連日投稿とか二日や三日ごとに投稿などという荒業を長期間にわたってする猛者がいますが、本当にうらやましい限りです。

 まあ、読者の立場としてはありがたいことなんですけどね(苦笑)

 そこ!人の振り見て我が振り直せなんて言わない!

 

 

 







感想代理人プロフィール

戻る





代理人の感想
ああ、何かチクチクと刺さるw
まー、書けない時はどうしても書けませんからねー。


> 口調がわからないから〜
まぁ、喋らないキャラなんでしょうが無いですよね。人気はあるのに・・・。
壊れはどうかと思いますけど!(ぉ


※この感想フォームは感想掲示板への直通投稿フォームです。メールフォームではありませんのでご注意下さい。

おなまえ
Eメール
作者名
作品名(話数)
コメント
URL