聖杯。
 全ての願いをかなえる神秘の秘宝。真偽を別とするならば、聖杯と呼称されるほどの力を備えた品は世界中に存在する。
 だが、その力は邪悪なる者どもさえも呼び寄せた。
 事態を重く見た各国首脳部は連携し、国際的な聖杯守護組織を発足させるで事態を収拾する決議を下す。
 そして作られた組織こそが『国際秘密防衛組織サーヴァント』である。

 日本の地方都市の一つ、冬木市。
 其処には、究極の秘宝の一つ人造聖杯があるとされた。
 聖杯ほどの秘宝を人の手によって製造する事が出来るのなら、それはどれほどの力を生み出す物だろうか。
 そのため、世界各国から選りすぐりの戦士……組織の名を冠するほどの戦士『サーヴァント』が送り込まれる事になった。

 これは暗黒神『この世全ての悪アンリ・マユ』を信奉する邪教崇拝者『マキリ一族』と、七人の戦士『サーヴァント』の戦いの物語である――!!


Fate偽伝/Another if/『英霊戦隊フェイトマン(仮題)第一話風読みきり』


 新都。
 10年前の火災を契機に、それまでの住宅街から高度な都市へと生まれ変わった街である。
 新しい街並みは美しく、機能に優れ、店舗は充足し、人を呼び寄せる。

 そんな新都の街に空港からの直通バスが止まった。
 ドアが開き、下りてくる人々の中に一際目を引く、大き目のスーツケースを押して出てくる姿があった。
「ここが冬木市、キリツグの住んでいる街なのですね――」
 そう言いながらバスから降りたのは、一人の美しい少女。
 金色の髪、そして聖碧の瞳、ピンと張った凛々しさ。
 年は15,6というところか。身長は150少々という所だが、何かの運動をやっているのだろう、引き締まった体は少女らしい柔らかさを失わず、その存在感を増している。肩まで伸びた髪は風になびく柔らかさを伴い、陽光を受けて透き通る絹糸のようだ。
 何かの制服にも見える、白いブラウスと青いスカートにはリボンがあしらわれていて、シンプルであるが故に彼女の魅力を損なう事無く強調する。

 ホウ、と誰かが息を飲む音が聞こえる。
 彼女に目を引かれたのか、何人かが声をかけようと(ナンパしようと)して……挫折した。日本人の外国人コンプレックス以上に厄介な、外国語コミュニケーションの難易度の高さによって。

 彼女はそんな物に気を止める事は無く、手にした古い封筒の中にある走り書き――もう見る必要も無いほどに何度も読んだ――を見て、新都の橋向こうにある深山町へのバスを探すことにした。
 バスターミナルの看板を見て『深山町』という文字を探す。

 そして、必然を無視して唐突に――幾つもの――悲鳴が聞こえた。

「何事です!」
 彼女が振り向いた時、其処には常識の枠外の出来事が発生していた。
 昆虫。
 おそらくは蟻だろう。それが人と似たプロポーションを持ち、人と同じくらいの大きさで、人を襲っていた。

「な…?!」
 困惑より恐怖より先に、生理的嫌悪が全身を襲う。
 黒字に赤の縦線が入ったワンピースを着た女が、申し訳程度に顔を隠して中心にいる。そう、中心……怪物たちの中心にいるのだ。しかもそれはどうやら被害者ではなく加害者……怪物達の指揮官として堂々と立っている。
 覗く手足からは、生物的な禍々しさを感じさせずにはいられないタトゥが見える。
 ばさりと、魔法使いでもなければ持ちようの無い、ねじくれた杖を振りかざしながら、少女然とした声を張り上げる。
「やりなさい昆虫人間たち。マキリ一族の力を持って、人間どもを駆逐するのです」

 理性はこれが”ジャパーニズ・トクサツ”の屋外ロケであると言っている。
 本能はこれがジョークの入りようの無い、真実であるといっている。
 そして眼前では昆虫人間とやらに殴られ、弾き飛ばされ、血を流して倒れる人たちがいる。
 それは何処から見ても、人の手の入れようの無い本物の怪我だ。
 警官が発砲する。
 日本の警察官の持つ拳銃は一発目が空砲であるはずだが、それを差し引いても五発全弾を命中させたのに怪物には何ら痛痒が無い。
 昆虫の外骨格はあの巨体になればそれだけで、これほどまでの強度を手に入れるのか。

 其処まで考えた時だった。
 ガクンと引っ張られる感触に意識を取り戻すと、其処には彼女以外にもう一人だけ人が居た。
「何やってる、逃げるんだ!」
「え―?」
 少女の手を掴むのは、同じ年頃の赤い髪をした少年の手。少年は意外と力強く、スーツケースを持った少女を半ば引きずるようにして怪物たちから遠ざかっていく。
「でも、怪我している人が――」
「分かってる!」
 逃げることに抵抗を感じ、戻ろうとする彼女を遮る、苦痛に満ちた声。
 少年がどれほど苦悩し、少女を助ける事を選んだか…それが理解できた。
「何も出来ないのは悔しいけれど――」
「――だったら!」
「あいつらに任せるしかないんだ!」
「―え―?」

 途端。少女が先程まで立っていた辺り、そのアスファルトに亀裂が入り、真っ二つに割れた。
 其処は通路になっていたのかグォンと音を上げ、青い突風が吹き荒れた。
 突風は真っ直ぐに昆虫人間の群れに突き刺さり、激しく吹き荒れた。
 赤い風。
 それは振り回される何かだったのか、それとも昆虫人間たちの血飛沫だったのか。
 だが分かるのは、其処から現れたのは、青いボディスーツを着た若者であり、武器らしき物は手にした赤い槍一つだけ。

「どぉきやがれ雑兵(ザコ)どもがぁ!」

 赤い槍は昆虫人間達を容赦なく切り、突き刺し、絶命させていく。
 少女がヒィと息を飲む音を聞き、少年は告げる。
「…気にしちゃ駄目だ、あいつらは人間じゃないんだから」
「え、ですが?!」
 指差した先、死んだ昆虫人間が血によく似た何かを吐き出しつつ萎んでいく。げふりごほりと吐き出した何か、それは昆虫の血液では無い。あの赤い色はもしや人間の血液では――其処まで連想した時、吐き気が襲ってきた。
 何でそんな物を連想したのかと。
 その吐き気を抑えつつ、気丈にも目の前の光景を見ていた時、大きな変化が起こった。
 人間のプロポーションが崩れ、其処には大きさ以外蟻そのものの死骸が転がっている。大きさ以外……つまり形状は蟻そのものなのに、大きさだけが1メートル近くある。
「?!」
「詳しい事は分からないんだけど、あの昆虫人間は間違い無く怪物で、あの青いボディスーツの……あいつらしか倒せないらしいんだ」


 突き、斬り、バイクで蹴散らしながら青い槍兵は戦場を駆け巡って怪物の命を的確に刈り取っていく。
 昆虫人間たちが元の半分以下に減った頃、青い槍兵はバイクを止め、一人の少女に向き直った。それは昆虫人間達を率いる黒衣の女だ。
「来ましたね、フェイトブルー『ランサー』」
「よぉ、嬢ちゃん。あのジジイはどうしたよ。まさか怖気づいたんじゃ―」
「ゾーケン様ならば新たな暗黒騎士の召還を行っているわ。この子達は貴方を呼び出す為の囮、生贄の命を集める為だけの道具にしか過ぎないもの」
 僅かにたわみ、動き、それがただの『影』ではない事を知らせる……『黒衣の巫女・チェリー』の影。
「ぎゅぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」
 触れた昆虫人間は、一瞬のうちに喰い尽くされる。
「ゾッとしねえな、アンタのその影」
「うふふふふふふふ…我らが暗黒神『この世全ての悪アンリ・マユ』の御力の一つ……貴方も味わってみますか」
 そう言って笑う黒衣の巫女には、邪気が見えない。だがそれこそが危険な笑みである事を誰もが納得させられていた。

「まずい…」
 少年の顔色が変わる。
 それは何を予感したからか、それとも何かを知っているからゆえか。
「…君は逃げるんだ。俺は、逃げる前にやる事が出来たから」
「それは…」
 どういうことなのですか、そう聞こうとして聞く事は出来なかった。
 少年は繋いでいた手を離し、何を考えているのか真っ直ぐに『影』へと向かって走り出した。

 影はオートで攻防を行うのか、少年の突撃に気付き、その触腕を伸ばす。
 ついで、僅かに遅れた青い槍兵が『来るな』と叫び、黒衣の巫女は昆虫人間に『その男を捕らえろ』と叫ぶ。
 しかしそれらの全てを、少年は手足を振り回し触腕を潜り抜け、昆虫人間の手を振りほどき、傷ついた手足から血を流して駆け抜け――地面に横たわる子供を、ひったくるように抱きかかえ――そのまま反対方向に走り去った。
 最後に声を大にして――
「そいつらをやっつけてくれ!!」
 そう叫んで。

 ランサーはその無謀さと鮮やかさに「ヒュウ」と賞賛の口笛を吹く。
 黒衣の巫女は何か言いたげに、しかしその無謀な行為に驚きを隠せていない。
 少女などは、自分に無謀な行為を咎めておきながら、自身の身を無視した行動に憤りを感じていた。

 ランサーはその顔に笑みを浮かべ、この状況が生み出した真実を告げる。
「これで『相棒』を使うのに何の問題もなくなったって訳だ」
 ランサーの相棒、それはランサーの名の由来である『槍』に他ならない。
 さりとて黒衣の巫女は動揺した色も見せず、
「暗黒騎士も居ないこの状況、戦う意味も無いでしょう」
「無くもないぜ、幹部クラスのアンタを殺れるんだ。この機会を逃す手は無い」
 影が巫女を覆いだす。
 ランサーは手にある槍に、真の力を引き出させる為の真名を叫ぶ!
刺し貫くゲイ――」
 そして、距離がゼロになる瞬間!!
「――さようなら、ランサー」
「――死刺の槍ボルク!!」
 影を貫くランサーの槍『ゲイボルク』。だが既に、中身は存在していなかった。
「まーた逃げられたか。…しゃあねぇ」
 これっぽっちも残念さの見えないランサー。だがそれもその時まで。
 表情を一変させて、笑みには見えない笑みを浮かべる。
「気晴らしをさせてもらうぜ、雑魚ども」
 そして再び突風が巻き上がった。

 再び舞い上がる血煙。
 逃げ惑う昆虫人間。
 逃げきることなど出来ず、ランサーの槍の餌食になっていく。
 もしこの昆虫人間が真実邪悪な存在であったとしても、哀れさを感じずに入られないほどに無残な屍をさらしている。
 考えられたのは、その時までだった。
 真っ直ぐに少女を目指して走ってくる昆虫人間、その姿を目にした時まで。
 ランサーはそれに気づき、未だに逃げていない人間がいたことに驚き、倒すべき敵の優先順位を間違えていた事に気づき――叫んだ。
「逃げろ、嬢ちゃん!!」
 この反応の遅れは、身構えたものの…まさに手遅れ。

 だが――、

 そして、鮮烈なる赤は現れる。
 全てを薙ぎ払う獰猛なそれは、1秒すらも其処にはいなかった。

 後に残るのは、全身を切り裂かれ貫かれ既に原型を取り留めることさえ出来なかった昆虫人間の残骸だけ。
 ランサーは吼え猛る。
「どういうつもりだ、アーチャーーーーーーっ!!!」
 だが、答える者など存在しない。
 現れた時が唐突なら消え去る時も唐突。
 ただ、真実脅威の疾風であった。





 その凄惨なまでの状況に、意識が飛んでいたのはせいぜい数秒だったろう。そして呆然としたまま立ち尽くしていた彼女は、あの事件からたった数十分で元の喧騒を取り戻した街並みに、いかぶしまずにはいられなかった。
 だが疑問を解決するのが彼女の仕事では無い。
 彼女がすべき事は、ある人物に会う事なのだから。
 そうして彼女は歩き始める。
 どうせなら街を見ながら歩こうと、交通標記を見て深山町へと繋がる橋を目指して。

 着いた先は、深山町の住宅街にある、古風な武家屋敷を思わせる邸宅。表札にある『衛宮』の文字を苦労して読み取り――非常に達筆である為、日本人でも読みにくい――、ここが衛宮切嗣の家であると判別できた。
 門扉のところにドアホンの類は無い。また門は開かれたままになっており、無用心だと思いつつも彼女は敷地内に入って玄関へと歩いていく。
 ぴん、ぽーん♪
 玄関先にあるチャイムを押すと、僅かに遅れて「どなたー?」という声が帰ってきた。
 幼い感じのする少女の声だが、どこか幼さ以外にも違和感を感じる。日本語のイントネーションとは僅かに異なる違和感であるが、彼女にはそれ以上の判別はつかなかった。
 がらりがらりと音を立てて開いた扉の向こうに居たのは、おそらくはアーリア系の少女。10歳少々といった所か。赤い瞳と白い髪が少女に雪の妖精のような印象を抱かせる。
 何故日本の切嗣の家に他国の人間が居るのかを考えて、自分のことに想像が及び詮索するのを止めた。
「私はアルトリア・ペンドラゴンといいます。エミヤキリツグ氏はご在宅でしょうか」
「いないよ」
「では、何時お戻りになるのでしょう」
「戻らないよ。もう死んじゃったし」
「――え?」
「5年前に、ぽっくり。それより、そんな事も知らないでなんでここに来たのよ。ここは私とシロウの家なんだからね!」
 そう言いきる少女。その言葉には一片の嘘もないように思えた。
 けれど、ここまできて帰る事は出来ない。
 せめて事情だけでも聞きたいと思った時に―
「あれ、お客さんですか」
 と、緊張感を根底から突き崩してなかった事にするような声が聞こえてきた。
 聞き覚えのある声に後ろを振り向くと、其処には先ほど見た赤い髪の少年が立っていた。
 体のあちこちに包帯を巻きつけている所を見ると、病院にでも行っていたのだろうか。
「シロウ、キリツグに用があるんだって、このお姉ちゃん」
「そう、ですか。すみませんがオヤジはもう――」
「大丈夫だったのですか?」
 士郎の声を遮るアルトリアの声。
 そこで、今更ながらに士郎はその少女が先程新都で会った少女と同一であると気付いた。
「あ、うん。幸い軽い切り傷だけ。君も無事みたいで良かった。……オヤジに用があったんだろ、とりあえず上がりなよ。少し休んでいった方が良い」
 それは、どこか旅疲れを見せるアルトリアに対する士郎の思いやりから出た言葉だった。
 けれどその態度は、白い少女に苛立ち…嫉妬を抱かせてしまった。
「―シロウ、その女、誰?」
「さっき新都で会ったんだ。そう言えば名前も聞かなかったけど…」
 言われアルトリアは、再び名を告げる。
「アルトリア・ペンドラゴンです。かねてよりの約束を果たす為にキリツグに会いに来たのですが…」
「そうですか、オヤジに…」
「では貴方は」
「衛宮士郎。切嗣の息子……正確には養子だけど」
 養子、という言葉には驚かされたが、彼はそれを卑屈に思ってはおらず、むしろ誇らしげに語った。
「で、そっちの子が」
「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。キリツグの娘よ」
 義理の息子に実の娘が二人きり、複雑な家庭環境なんですね、そう思ったが流石に口には出来なかった。

 かつて切嗣が書いたという手紙は非常に簡潔な物だった。
『後を頼む。士郎を一人前に鍛えてやってくれ。何しろ俺より無鉄砲だから。
    ――追伸。俺よりは劣るが、いい男になる素質は持っている。好きにしていいぞ』

 とだけ。
「間違いない、オヤジの字だ」
「間違いないわね、キリツグの言いそうなことだもの」
 非常に痛い沈黙が下りるが、士郎もイリヤも、生前の切嗣の人となりを思い出し……重い溜め息を吐きながら納得してしまった。
「それで…アルトリアさん、君はどうする気だい? オヤジはもう居ないし、こんな約束に振り回される必要なんて――」
「誓約です。私は士郎、あなたを一人前の剣士にする為に来ました。それ以上の事は不要です」
「ケンシ?」
「はい。私に教えられるのはせいぜい語学と剣術くらいの物ですから」
 そういわれても、士郎にもイリヤにも、アルトリアの細腕で剣が振り回せるのかと疑問に思うしかない。
「こう見えても昔は男として育てられて来ました。その時実戦を想定した剣術を学び――未だに不敗を誇っています」
 言葉には嘘は感じられない。
 そしてただ居るだけで、威圧感を全く感じさせずに隙を消している。
 真実だと感じさせる真摯さを帯びている。
「それで―アルトリアさん、君はどこに住むんだい」
「出来るなら此処に」

「うえぇぇぇぇ?!」
「なんでぇええ!」

 うろたえる士郎と、本気で嫌がっているイリヤ。
 士郎は家に年頃の女の子が住み着くことに対する驚きで、イリヤは士郎と二人の生活に闖入者が加わる事に対する嫉妬で。
「残念ですが、私にはこの国に身寄りはいませんし、高校へ通う時間を考えると長時間の仕事につくことも出来ませんし――」
「高校?」
「はい。この街にある穂群原学園に通う事になっています」
「えーと…?」
 それなら以前にもここに来た事があった筈、その時にオヤジが死んでいる事も分かったはずでは。そう言おうとした。けれどアルトリアの言葉のほうが早かった。
「遠隔地受験、というのでしょうか。都合よく姉妹校があり、地元で転入試験を受けることが出来たもので」
「…どうしようか」
「シロウの好きにすれば? 可愛い子が増えて嬉しいんでしょ、けど……エッチなのは駄目ですからねー」
 そんなイリヤを見て、士郎はいきなり涙を流すふりをしつつ……
「すまないオヤジ、イリヤが藤ねえにどんどん汚染されていくのを止められない、不甲斐ない俺を許してくれ――」

 どこかついていけない。
 日本人というのはこう言う人種なのだろうか。
 かつて見たキリツグとは随分違うのだと、シロウを見て不安なる。
 けれど。
『何も出来ないのは悔しいけれど――あいつらに任せるしかないんだ!』
 そう言って、何も出来ない自分に苛立っていた。
『…君は逃げるんだ。俺は、逃げる前にやる事が出来たから』
 そう言って、何の躊躇も無く子供を助けに行く無謀さ。
 無茶すぎる。
 けれど、好感の持てる無鉄砲さだ。
 切嗣が、彼のことを危惧した理由が理解できる。この少年はきっと、将来誰にとっても必要な人間になるだろう。
(確かに、彼が生き延びられるように鍛えたくなりました)
「では私の事はアルトリアと。さん、は要りませんから」


 その日の夕飯に、事件は起こった。
 おそらく衛宮士郎はそれを予測できる位置に居たが、現実逃避によって想像することを避けていたと思われる。

 はもはもと食べるイリヤ。
 こくこくと頷きながら口に運ぶアルトリア。
 ぱくぱくぱくと、上品かつ大量に静かに食べる間桐桜。
 どばばーと、男であってもしないような豪快な食べ方の藤村大河。
「そうそう、藤ねえ。このアルトリアだけどさ、今度から家に住むことになったから」
「ふーん」
「そうですか」
 何事も無かったように桜と大河が――
「それってどういう事ですか先輩ー!」
「なによそれ士郎ぅぅぅううう?!」

 その迫力は既に物理的な破壊力を伴っているのか、藤村大河の叫びと共に食卓――正確には、被害者の士郎と初対面のアルトリアだけ――がタイガー大爆発に巻き込まれた。

 タイガー大爆発。
 それは正式名称ではなく、ごくごく僅かな地域で使われる隠語に過ぎない。藤村一族が代々継承すると言われ、怒号と共に『虎』の幻覚が見える、敵を一瞬でパニックに陥れる必殺技だ。
 一説によれば、藤村組はこれで勢力を拡大させこの辺りを統括する極道の大親分になったという。……ただの噂であるのだが、それを否定する事実が無いのが困り物だ。


「何をそんなに驚く事があるのですか」
「何をって……あなたみたいな年頃の女の子が士郎と一緒にすんでどうするのよ! 士郎だって年頃の男の子なのよ、ケダモノなのよ、野獣なのよ、もしトチ狂って『へっへっへ、良いではないか、良いではないか』とかなっちゃったら、切嗣さんにどう申し開きすればいいのよー!」
「藤ねえは俺をそう思っていたのか……!!」
 悔しげにつぶやく士郎をよそに、年誤魔化してるだろ、そう言いたくなる達観した表情でイリヤは零した。
「キリツグならきっと誉めるわね。『よくやった、さすが俺の息子だ』って。大体キリツグって、子供が私しか居ないのが不思議なくらい恋人が居たんだから。契約愛人も居たんじゃない? アインツベルンからキリツグに渡した資金からすれば……10人くらい?」
「う、ありえるかも……」
 その言葉に何か思うところがあるのか、大河は顔を青くする。
 日本語にはこのような物がある。
『朱に交われば赤くなる』
『類は友を呼ぶ』

 其処まで思い至った時、大河はぐわしぃと士郎の肩を掴み、どこか異常な雰囲気をかもし出しながら―
「日本は一夫一婦制なの。明治以降に西洋から入ってきた価値観はそう言ってるの。良い? 間違っても愛人だの二股だのしちゃ駄目なんだからね。夜這いとかそーゆーのはもう、犯罪なんだから!」
「そうですよ先輩、もし何かその『よっきゅーふまん』とかだったら、私先輩になら―!」
 口々に危険な事を口走る二人に対して、士郎はちゃぶ台に頭をぶつけたまま、
「……ちょっとは信用してくれ……」
 蚊の鳴くような声を上げるしかなかった。



 殆ど身一つで来日したアルトリア。
 そのため、食器などはともかくとして細々とした生活用品を買い出しに行く羽目になった。無論細々な物などを買うといっても、人一人分の生活雑貨だ、荷物持ちとして男手は必要になる。
 となれば士郎に白羽の矢が立つのは必然だったろう。
 食器売り場で可愛い柄をした子供用お茶碗に動きを止め、ぬいぐるみ売り場で彷徨うその姿。
 それは道場で午前中、士郎を死体寸前に変えた少女のものではなかった。
『ふむ、シロウの剣筋は悪くない。才能に頼らず、経験・戦闘思考をもって真価を発揮するタイプのようですね。その代わり、初めて戦う相手には脆い』
 ぺしぺしぺしぺし、それはもう遠慮なく叩いて叩いて叩きまくられた士郎。内心『アルトリアって実はS?』などと思ったほど。
「むむむむむ、シロウ、これとこれ……どちらが可愛いでしょうか」
 そう言いながら、ライオンと赤いドラゴンのぬいぐるみだか抱き枕だかよく分からない物を必死になって選んでいる。
 そんな事を思い返しながら、アルトリアの様子を微笑ましいと眺めているその姿は、彼を知る人物なら妹のイリヤを見ている目と同じだと分かったろう。

 だがそんな士郎でも流石に『らんじぇりーしょっぷ』なる亜空間に入ることは躊躇する。
 たまーに食事の支度中、シロウの背後で桜や大河やイリヤが通販雑誌や広告、果ては現品を持ち込んで会話する光景は、忘れ去りたい事実である。ただ…その時の桜の視線が、サスペンスドラマで女優がやっていたものとよく似ている、とはイリヤの談である。

 店の前でぽつねんとしている彼に声をかけるツワモノは居なかった。余りにも哀れすぎて、かつ怪し過ぎて。
「なぁにやってるのよ士郎、こんなところで」
 けれどそんな事は彼女に関係ない。
 天上天下唯我独尊を地で行くといわれる…遠坂凛には。
「…遠坂。いや、買い物の荷物持ちだよ。その、オヤジを頼って家に住み込むって子が居て…」
 その言葉を聞き、この店が女性用下着の店である事から、一つしかない答えを簡単に導き出した。
「……士郎が女の子と同居? へぇ、ふぅん、そぉう」
 絶対に納得していない。
 むしろ敵に回ると言いかねない声色だ。
「いや、今はイリヤも居るんだから、そんな事はなり得ないって。それにアルトリアの部屋は離れにする予定だし」
「そんな事って何? アルトリアって事は外人ね? 離れって事は何かあってもイリヤに気づかれずに済むって事?」
 士郎は劣勢に追いやられた。
 赤いあくまめ、そう思わずにはいられなかった。
 何とかやり返そうと、既に死に体の自分を奮い立たせて言葉を捜し――
「遅くなりましたシロウ、さあ次へ行きましょう」
 そう言いながら、どう考えても『謀っていた』としか思えないタイミングでアルトリアが出てきた。

「へぇ、ふぅん、そぉう。士郎の趣味って、そうなんだ」
「いやだからその遠坂、だから話を」
「シロウ、そちらの方は?」
「―遠坂凛よ。士郎の友達の」
「そうでしたか。私は昨日からシロウの家で居候する事になったアルトリア・ペンドラゴンといいます」
 士郎もアルトリアも見逃した変化。
 それは凛が『ペンドラゴン』の姓を聞いた時に、表情を僅かに歪めた事だ。
 しかし気づかれなかったのは幸か不幸か。それは何れ結論が出るだろうけれど――今は別の事に論点が移る。
「そうですか、リンはシロウの友人でしたか。私はてっきり恋人かと思いました」
 アルトリアの声にどこか憮然とした響きが混じっていたのはさて置くが、その言葉に士郎と凛は同時に顔全てを高潮させた。擬音を表すなら『ぼぼっ』だろう。
「いやだから待てアルトリア、そんな事言ったら遠坂に失礼じゃないか!」
「そうでしょうか。まるで屈託無く会話する二人には、恋人…いえ、長年連れ添った夫婦にも似た感じを受けたのですが」
「な――」
「う――」
 二人は同時に悟る。
 拙い、これ以上言われたら何か大切な『一線』がぶち壊される――!!
「そっ、そうだ遠坂、アルトリアに店を案内してくれないか?! 男の俺じゃ詳しくない所も有るし――」
「そっ、そうね士郎、ほらアルトリア、何か買いたい物はある―?」

 慌てていたからだろう、二人はアルトリアの変化を見逃した。
 だから続けて彼女が言った言葉を、ごく自然に受け入れてしまっていた。
「すみません。お二人を見て思い出したのですが、この付近にかつての知人が居る事を思い出しました。一度行ってみようと思ったのですが……リン、シロウを任せても宜しいでしょうか」
「え? え―あ、そう、そうね。任されたわ」
「アルトリア? 遠坂? 一体―?」
 とりあえず理解してくれた遠坂はさて置き、どこか混乱の続く士郎にはすれ違いざまに声をかけていく。
 心の隙間に刺さった、小骨のようなちくりとした痛みに目を背けて。
「…リンと二人きりになりなさいといっているのですよ」
「あ、―!」
 押し黙らざるを得ない二人に背を向けて、アルトリアは街並みに消えていった。



 そしてアルトリアは声をかける。
 誰も居ないはずの、街の裏で。
「尾行者、出てきなさい。拒むなら敵対者とみなし、ペンドラゴンの名の下に鉄槌を下します」

「おーやまあ。ばれちまってたのね」
 砕けた口調で現れたのは、青を基調に白と赤でアクセントを加えたストリートファッションに身を固めた青年だった。短く切り揃えた髪は後ろだけを伸ばし、特徴的な耳飾をつけているその顔には見覚えがあった。

「そうか、貴方はあの時のランサーか」
「そう言うこと。分かったろ、ブリテンの『ペンドラゴン』さんよ。…全く、偽装とか囮とか考えていたってのに、まさか本名で来日するとは思わなかったぜ」
「隠す必要などありませんでしたから」
「チ…諜報活動の専門家、ランサーたるこのクー・フーリン様の名が廃るってもんだ」

 クス、と笑うとアルトリアは全てを観念し、ペンドラゴンの一族に伝わる力を解放する。
 イメージするのは赤い竜。
 血の中に眠る竜種の因子を活性化させ、呼吸一つ、巡る血潮、生きる為に必要な動作そのものから力を生み出していく。その様はまさに『炉心』と呼ぶに相応しいほどのエネルギー発生機関が人になったかのよう。
 グ…と力を込め、単純にして明快、イメージのし易さを念頭においたキーワードを持って開放する。
「変身!!」
 爆発的なエネルギーの流れが生み出す、光の乱舞。
 それはアルトリアを、アルトリアのまま別の存在に組み変える矛盾した秩序。
 衣装はドレスへと変化し、腰の両脇に足を護るアーマースカート、両腕にそれぞれ形の違うガントレット、胴を護る銀の鎧が現れ、髪は結い上げられたまさに騎士の如き精悍な姿へ変貌する。

 自身さえ超える圧倒的な力の奔流に、俺とコイツ、どちらのほうが強いかなどと思わずにいられないランサーは、その思いを逸らす為に全く別の事を口にしなければならなかった。
「それがブリテン最強のサーヴァントと名高い…」
「セイバーのサーヴァント。これが私です」

 マンホールに偽装されたシークレットドア。
 その上でランサーは掌を見せつけるようにかざす。するとポーンと軽い音がしてマンホールの中から機械の音がする。それはほんの2,3秒の出来事で、それが終わった途端、マンホールの蓋は蝶番が着いているかのように開いた。
「着いて来な、案内するぜ」
 そう言ってランサーは何の躊躇も無く飛び込んだ。
 アルトリア…いや今はセイバーか。彼女もそれに続いて飛び込む。
 マンホールから横道へといざなう斜路はそのままシューターとなり、二人をある場所へと運びつづける。彼女はまだ知らないが、不正規の手段で此処へ飛び込んだ人間が居た場合、何時までたっても目的地には行けず、記憶操作のための部屋に直行する羽目になる。
 だが二人は此処に来るべくしてきた人間であり、その様な事は無い。
 シューターの途中に備えられたセンサーが感知し、降り立った途端に眼前のドアが開く。万が一を考えているのだろう、オペレータールームに至るドアは二重になっており、一つ目のドアと二つめのドアの間の通路には加圧が施されていた。

 そして二つめのドアの開いたその先に、神父服を着た男が立っていた。
「良くぞ来た、アルトリア・ペンドラゴン。これからの君に『国際秘密防衛組織サーヴァント日本支部』の戦闘要員フェイトブルー…いや、フェイトシルバー・コード『セイバー』としての活躍を期待する」
 ランサーの目が心底自分を馬鹿にしているものだと気づいた神父服の男は、一度言葉を切ってアルトリアの姿を見、鎧に目を停めてからブルーではなくシルバーと言いなおした。

 だがそんな事は関係ない。
 アルトリアは理解した。
 この目の前に立つ男、コイツがすべての黒幕だ。

 セイバーの任務と共に与えられた宝具『風王結界(インビジブル・エア)』に力を込め――覆い隠す鞘たる風を開放し、その真なる力を呼び覚まそうとして――ランサーに止められた。
「気持ちはわかる、痛いほどに。けれどこいつは一応正義の味方の司令官なんだ」
 沈痛な面持ちで言われては、さすがにこれ以上は出来ない。
 セイバーが押し黙ったのを見ると、片手を後ろに、片手を掲げるような姿勢をとりながら――黒服の男の身長はセイバーより遥かに高く、見下すようになるのは否めない――語った。
「私がサーヴァント全てを統括する長官、言峰綺礼だ。日本支部支部長である葛木が所用で外している為私が話をしよう」
 …と。
 セイバーは突然、
(長官、これが? 悪の組織の大幹部か、サーヴァントを内部から攪乱し壊滅させる為に送り込まれた特殊工作員では無いのか?!)
 組織に配属された人間が必ず思う事を想像せずにはいられなかった。
「見たまえ、これが今の街の状況だ」

 冬木市の地図が巨大モニターに映し出され、その上に定点カメラの映像が重なりだす。
 逃げ惑う人々、破壊される街並み、雑兵らしき虫に似た怪物達と、それとは明らかに格の違う怪物が一体。

「奴らは暗黒神『この世全ての悪アンリ・マユ』を崇拝する、暗黒大神官ゾーケン率いる昆虫人間『マキリ一族』だ」
「……は?」
「わかる、わかるぞセイバー。俺も最初に聞いた時は長官の気が触れたと思った。けどマジなんだよな、これが」
「ランサー、今の言葉は聞き流しておこう。これから出撃する隊員を拘束し、反省房に押し込むなど無駄だからな」
「へっ、そうかい。ならもっと言っておけば良かったぜ」
 ランサーに再び一瞥を与え、言峰はセイバーに向き直る。
「奴らの教義は単純だ。人類抹殺。そして人ならざる者の理想郷を作る。そのための破壊活動、その為の聖杯探索だ」
 淡々と語るその様は、冷静に事態を語り、冷静に事態に当たる為の物であるのだろう。
 だがどこか、嬉しさを感じているのでは無いだろうか。
 そう思わせる何かが言峰長官にはある。
 そのセイバーの視線を感じたのか、言峰はつまらなそうに、
「私の根底にあるのが破壊願望だと言う事を否定はしない。だがこの街をマキリ一族に破壊させる気も無い」
 我が宿敵と戦った場所だからな、そう続ける。
 その宿敵が一体何者であったのか、それをセイバーに推し量る術はない。だがそれを語るときに言峰長官の目に浮かんだ、深い絶望と憎悪、それと同じくらいに強い羨望の色を忘れるのは難しいだろう。

「現在サーヴァント日本支部に所属する戦士はランサーとセイバー以外に4人いる。だが他のメンバーは日本内外に散り、世界各国のサーヴァントと連携行動を取っているために、残念ながら現在この街にいるのは君たちを含め三人だけだ」
「三人? ではあの赤騎士は…」
「赤騎士ではない。もう一人のクラスはキャスター。しかし彼女は来月下旬まで産休だ」 
「……は?」
 世界を護るサーヴァント、その一人が激戦地の最中に産休?
 セイバーの頭の中に、この状況に対するなんとも言えない気まずさだけが生まれていく。
キャスターは葛木支部長の奥方だ。新婚一年目だから仕方あるまい。私とて神職にある身、生まれいづる命を堕胎させる気など無かったのだ」
「そ、それは……その、おめでとう御座います……では、あの赤騎士は…?」
「わっかんねーんだよなー。あいつの能力はまず間違い無くサーヴァントなのに、何処の国のサーヴァントでもねえ。俺達は『アーチャー』って呼んでるけど、それだって『便宜上』だしな」

 サーヴァントである彼女になら分かる。
 あの赤い騎士は大した力を持っていない、むしろ自分と比べてさえ弱すぎる。

 だが、あれは近付いてはならない、殺しの鬼札ジョーカーだ。
 名前通りあの存在は、勝利をもたらす『ジョーカー』でありながら、同時に敗北をもたらす『ババ』に他ならない。

 言峰は考えに没頭し始めるセイバーに『ついて来い』、そう言うと背を向け歩き始める。
 ランサーはこれから何処に行くのかを察すると、彼もまた歩き始めた。
 セイバーは仕方なし、といった感じに着いていく。
「敵の狙いは聖杯。しかしその位置は極秘であり、奴らは探す為だろうが冬木市全域で暴れつづけている。その為、我々は高速移動を可能とする大規模通路を冬木の町全体に張り巡らせた」
「俺が最初に嬢ちゃんに会った時、乗ってたバイクの出入り口もその一つって訳だ」

 作戦司令室のすぐ近くにそれはあった。武器や防具、そして移動用のものだろう、バイクまでもが設置されている。
 壁際にある風除けのゴーグルを二人に投げかけ、言峰は言葉を紡ぎだす。
「君たちのマシンは、サーヴァントドイツ支部のリズライヒ・ユスティーツァ・フォン・アインツベルン技師長が『ドイツの科学力は世界一ィィィ!』と叫びながら設計・開発・試験運用した物の最終モデルだ。実用に問題は無いはずだがセイバー」
 そう言った言峰長官の視線は、鎧下の『ドレス』に目を向け、
「バイクのように跨る物は無理か……では、このモンスタースクーター『ひき逃げ君1号』を…」
 チャリ。
 その不穏当なネーミングに、セイバーの風王結界とランサーのゲイボルクが同時に言峰の首と心臓にそれぞれ狙いを定める。
「訂正だ。モンスタースクーター『月光仮め』…」
 チクリ。
「……長官。今は一分一秒でも時間が惜しい」
「後一押しするのを、今度は我慢できるか怪しいぜぇ?」
「血が出ているがまあ良い。呼び名は三日以内にセイバー、君が決めたまえ。その後、整備課とオペレーティングルームに名称決定の通知を出すのを忘れるな」
「…了解」

 ブゥオン!!
 ドッドッドッドッドッド……
 モンスターマシン。そう呼ぶに相応しい怪物だ。F3クラスのエンジンを、戦闘を視野に入れた単車に組み込んだ馬鹿らしい発想。それを成し遂げる技術。
 まさに獰猛、猛禽の猛り。
 シールドは殆ど役に立たず、サーヴァントに変身していなければ風圧で首を破壊されているに違いない。
 可動式の天井が床へと落ち、地上までの通路を獲得した事を、バイクのメーター付近に設置された液晶モニタが知らせてくれる。此処から行け、と。
 スロープを登る瞬間もパワーの減少は全く無い。
 空へとそのまま駆け上るような跳躍を見せ、ランサーとセイバーは現場へと着地した。サスペンションは着地の衝撃をほぼ完璧に吸収し、アインツベルン技師長の技術力の高さを知らしめた。



 そして二人はバイクを降り、素早く構え――
「フェイトブルー・ランサー!!」
「フェイトシルバー・セイバー!!」
『英霊戦隊フェイトマン、参上!!』
 ドドン!!
 ポージングする二人の後ろで、青と銀色の爆発が上がる。

 しかし二人の顔色は共通して赤かった。
「……なんで私がこのような事を……屈辱を…」
「言峰長官の指示だ……ガキの頃、正義を理解するためにずっと見ていたとか、正義は理解できないが面白さは理解したとか言って……
これやらないと、給料下がるんだよ……昨日やらなかったから、一ヶ月10%カットされて……うう……」

 その言葉は、世界の時間を止める作用を持っていたのか。爆発の煙がすべて風に吹き飛ばされるまで、誰も話さない、一歩も動かない、異次元空間を作る事に成功したのだった。

 …彼らが到着した其処に居たのは、黒衣の巫女。そして蟻を思わせる昆虫人間の群れ。
 だが今回は決定的に違う物が居た。
 おそらくは、クワガタムシの昆虫人間だろう、それは既に人間の外見と遜色なく、また古風な侍の鎧兜を身に着けている。だが虫には無い、人の憎悪が渦巻いている。
 黒衣の巫女は淡々と言葉を口にする。
「コホン。英霊の魂を受け継ぐサーヴァントの皆さん、あなた方の力に敬意を表し、我々もまたサーヴァントで対抗しましょう」
「え? ―サーヴァント、ですって?」
「何言ってやがる、そんなバケモノがサーヴァントであるはずが―」
「行きなさい、暗黒騎士として再び生まれ出でた者よ、怨念ゆえに人である事を捨てた反英霊アヴェンジャー『マサカド』よ!」
「な――」
「――に」

 少なく見積もっても300キロはあろうという、3メートル近い巨大な怪物『マサカド』。かつて史実に存在した物とは全く別物であるはずだが、その動きは旧時代の日本の侍に酷似していた。
 ごうん!!
 叩き斬るための西洋剣術。
 切り裂く為の日本の剣術。
 突き刺しいなす槍の動き。
 その動きは余りに違いすぎて噛み合わず、剣と剣をあわせるのが精一杯だった。

「うふふふふふ。どうですかランサー、セイバー、怨霊として存在する事のみを許され、蓄積された怨念の味は……ですが何時までも味わってもらうのも、私が楽しくありませんから…」
 パンパンと拍手を、殊更可愛らしく叩いて見せる。
 ばん、と昆虫人間たちが蜘蛛の子を散らすように走り出した。
 その意味を理解しかねたセイバーとランサーの為に、黒衣の巫女は言葉を発する。
「蟻さんたち、ご飯の時間ですよ」
「――!! 貴様ァ!!」
 走り出そうとするランサー、しかし一瞬にして回り込むマサカド。鈍重そうな外見とは違い素早いマサカド、その人間――内骨格の生物の動き――と昆虫――外骨格の生物の動き――を同時に、別々に行うその動作を読みきれない。
 横から突然現れたマサカド、その刀に狙われた首を守ることの出来ないランサーは、セイバーの剣のあげる悲鳴を聞いた。

 ギャン、ギキィ、ガァン、ギャギャ、ガィン!

 散る火花、巻き上がる剣風、音楽の如き打合い、そのすべてが必殺の一撃。
 ほんの僅かでも流れが傾けば、それはそのまま死に直結する。

「『この子達』は宝具を持ちえませんが、その力だけで反英霊アヴェンジャーの座に上り詰めたほどの力を持っています。楽しく闘ってあげてくださいね」
「いい加減、出てきて俺と戦いやがれ!!」
「お断りさせていただきますわ、ランサー…」
 ランサーは身をよじりながら、既に消えていた黒衣の巫女を追い求め、槍を構える。
「…くっそぉ! セイバーそいつの相手を頼む、俺は雑魚を先に倒す!!」
 その無意味さを知るや否や、雑兵を切り始めた。


 ドォン。
 人では倒せないはずの昆虫人間、それが既に四体、人の手によって滅ぼされていた。
 それを為したのは二人の男女。
 一人は赤い髪の少年、衛宮士郎。
 一人は黒髪の少女、遠坂凛。
 二人は多少息を荒げながらも、その場に居た。
「遠坂…無事か…」
「あったりまえじゃない! …綺礼に教えてもらった空手モドキがこう役に立つなんて癪だけどね」
 ただの人には見えない力、俗に魔力とも呼ばれる生命の力、それは東洋思想においては「気」とも呼ばれる。二人は『気』を纏い、人にはありえない力で昆虫人間の殻を破壊する。
英霊を宿した人間(サーヴァント)と、反英霊を宿した怪物(アヴェンジャー)……士郎、逃げる?」
 その声には、学校帰りにどこかに寄ろうか、そう尋ねるくらいの気楽さでかけられた……ように聞こえる。だがその中には、彼の身を案じる声が含まれていた。
 今はまだ未熟でしかありえない。だが最強になりうる可能性を持つ、一人の少年。
 彼はその力を、惜しげも無く振るうだろう。
 それが彼の強さであると同時に、隠しようの無い弱さ。
 だから彼の答えは分かっている。
「逃げない。10年前この街を守った…オヤジ達のためにも」
 その一言は、凛の胸にも突き刺さる。
 卑怯だ、そう言いたかった。けれど言えなかった。その言葉は、呪いにも似た物を彼女に与える。
 だから彼女は、彼の思うままにさせる。絶対に死なせない、彼が戦う者なら、自分は守る者だと決意を固めるだけ。


 シュクォン…。
 風を斬る音が有ったからだろう、避ける事が出来たのは。
 セイバーの鎧に大きな傷をつけたのは、超長距離射撃。
 数百メートルの先、高層ビルの屋上にて弓を構えたカブトムシの昆虫人間、いや暗黒騎士として再び生まれ出た弓使いの反英霊アヴェンジャー『ノブナガ』だ。
 本能寺に攻め込む雑兵を次々と弓で迎え撃ったとされるだけ有り、その弓の動きは長距離射撃であるにも関わらずセイバーの動きを読みきり、その上でマサカドに有利な攻撃をさせるものだった。

 人々を守るために、雑兵を一人で倒していくランサー。
 互角から互角以下に陥ったセイバー。

 背後からの一矢に倒れこむセイバー、それを知り救援に駆け出そうとして阻まれるランサー。
 状況は絶望的。
 勝ち目など無い。
 後は死にゆくだけ、殺されるだけだ。
 だけど。
 彼女は折れない。
 その信念ゆえに。
「私は、人々を守るために剣を取ると誓った!!」
 真っ直ぐな瞳で剣を取り、膝をつきながらも叫んだ。

 そして結末を見届けようとしていた少年は、決意をする。
「待って、まさか―!」
 ただ一度、自らの決意の強さをゆらがしかねない彼女の泣きそうな顔を見てしまい……それを振り切るためにもと、脆弱な自分、それを信念で強化して――紡ぐ。世界と自分を変容させる言葉を。
「――I am the bone of my sword.」
 溢れる力は彼を別の姿に、戦う為の姿に変身させる――!!

「逃げろセイバー!!」
 叫び声はランサーの物だったか。
 振り下ろされる剣を見ながら、何故か、たった一日しか一緒に居れなかった、お人好しの少年の顔が浮かんだ。
 そして、ただ、死にたくないと思った。
 夢や理想ではなく、自分のために。もう一度会いたいと思ったがゆえに。

 ギィン。
 甲高い音がして、暗黒騎士マサカドの持つ剣が折れた。
 違う。
 斬られた、だ。
 それは赤の男。白き髪、褐色の肌、黒い鎧と赤い外套を身に纏った長身の戦士。
 セイバーは目をみはり声を出す。
「あなたは…!」
「新顔か。その剣…そうか、セイバーだな」
 赤い騎士は、暗黒騎士の剣に自らの剣、干将莫耶を当てて跳ね返す。
 その動作は才能あるものの物ではない。
 才能の無い人間が、愚鈍なまでに反復練習を行い身に付けた、相応しい努力さえあれば誰にでも到達できる剣。だが、その練度は一体どうした物か。人間ではない怪物――人間を遥かに超えた怪物――を相手に、一歩も退かずに対等以上の戦闘を行っている。
 それどころかマサカドを誘導し、ノブナガの射線を遮ってさえいる。

「君には私には無い才能がある。だが、それに溺れてはならない。――戦局を覆すなど簡単な事だ」
 干将莫耶の圧倒的に小さな間合いは、巨体を誇り敵を寄せ付けなかったマサカドに肉薄した途端、竜巻と化した。
 切る、斬る、切り刻む。
 昆虫人間……その構造上の弱点である関節を。マサカドの、最も優位な点である巨体を生かさせず、むしろ弱点として責める。
 邪剣と呼ぶに相応しい、汚れた剣筋。その剣には騎士の誇りは無く、必死に誰かを護ろうとする意思だけが見える。セイバーとは対極に位置する剣。だからこそ、醜くありながらも美しい。
「ギリャァァァァァァァ」
 金属を擦り合わせるような異音が鳴り響く。
 それがマサカドのあげた悲鳴だと気づく前に、干将と莫耶がマサカドの腹部、鎧の隙間から突き刺さっていた。
 アーチャーは悲鳴をあげるマサカドを蹴り倒し、その向こう側に居るノブナガに身をさらす。
 矢の雨、それを防ごうと立ち上がるセイバーを制したのは、矢の雨を遮る醜く異様な剣だった。

 在り方そのものを捻れ狂わされた一本の剣、偽・螺旋剣カラドボルグ
 それを矢に見立て、弓をつがえた赤い騎士『アーチャー』の姿。
「―偽物の螺旋剣(カラドボルグ)こそ、存在を狂わされたお前に相応しい……逝け、冥府魔道へと!!」
 その真名を呼ぶ事こそが、宝具の力を解放させる鍵となる。
 それをセイバーもランサーも理解していた。
「――偽・螺旋剣カラドボルグ
 捻れ狂う。
 その言葉にこそ、これは相応しい。
 世界を捩れさせ、狂わせるその力は地上を掠め、ビルの上で狙撃をしていたノブナガに、逃げる暇など与えずに死を、空間ごと捻じ切られるという、無残な死を与えた。

「セイバー」
「―?!」
「君は私などより遥かに強い。だが騎士の誇りを振りかざす限り、私が君に負ける事など無い」
 それは挑発だったのか、それとも忠告だったのか。どちらとも取れ、どちらとも取れない言葉。
「ランサー」
「んだよ」
「そう不貞腐れるな。―後は頼む」
「何?!」
 言葉と共に跳躍し、姿を消すアーチャー。
 だが彼の立っていた場所、其処に二人は大量の血を見つける。
 あれだけの力の解放、その反動がどれほどのものか。それを為しうる決意の深さを思い知らされる。
 言葉が消える、その瞬間に。

「キュゴォォォォォォ!!!」
 腹に干将莫耶を刺したまま、マサカドは立ち上がる。
 鎧は内側から吹き飛ばされ、無傷の腕――昆虫ならではの中段の腕――があった。それどころか、切り裂かれた腕までも再生を始めている。だが、鎧が吹き飛ばされた事により、柔らかい腹が露呈してしまっている!!
「なっ、まさか―」
「チ、避けろセイバー!」
 一瞬で力を練り上げ、跳躍。そして真名を開放する。
 音は同じ。だが言葉の中に潜む意味は異なる。ゲイボルク、その真なる力を発揮させる。
刺し貫くゲイ――」
 跳躍の頂点に達し、自らを弓と弦として引き絞りー
「――死翔の槍ボルク―!!」
 投擲する!!
「ギュゴォォォォォ!!!」
 ギリギリで範囲外に逃げ出せたセイバーとは違う。
 マサカドは、ゲイボルクの力など知らない。ただ単純にその力を打ち砕く為に刀を振りかぶり叩き落す事だけを実行する。

 ギリキリギャリキャリギュギュギュグギュ……

 金属の拮抗する音が聞こえたのは、せいぜい1秒にも満たなかっただろう。今まで割れずに居た窓ガラスが一斉に割れ、マサカドの足元に亀裂が入り、
 ぱきんと、呆気無い音がしてマサカドの体をゲイボルクが貫いた。
 先程の偽螺旋剣に劣るとも勝らない、対象物を消滅させるほどの威力。残る手足は四散し、首も吹き飛んで――
「―首?!」
 それに気づいたのはセイバーのほうだった。
 伝説に曰く。
 首を刎ねられた将門は、首だけになり宙を飛び、呪いの言葉を吐いたという。今まさに宙を飛ぶマサカドの首、それの吐く呪いの言葉がただの戯言であるはずが無い。

「逃がさん!」
 セイバーは剣を構える。
 生み出される風、ほどけていく風王結界、それはまさに嵐の如く、逃げ去ろうとするマサカドの首を絡めとる。
 風王結界により隠されていた、セイバーたる彼女の真なる宝具が開放されていく。
 すぐ近くから息を飲む声が聞こえた。
 そんな物を聞く事が出来るほど弱々しい風ではないが、風の守護を受ける彼女だからこそ聞こえたのかもしれない。
「『約束されたエクス――」
 それを半ば背負うようにして――彼女は黄金の装飾が為された剣を――真名を開放――振り下ろす!!
「――勝利の剣カリバー』――!!」

 轟!!!

 溢れた光は全てを薙ぎ払う純粋な力の奔流となり、全ての邪悪を切り裂き焼き尽くす。
 マサカドは断末魔の叫びをあげる事さえ許されず、焼き尽くされてこの世より消え去る。
 その力は、人間に許されるモノではない。
 だが此処に存在する。
 その矛盾たるや、如何なる歪を生み出すものか。
 その恐怖を感じさせずにはいられない光景だった。



 サーヴァント長官・言峰綺礼は一人呟く。
「ランサーとセイバー、共に一対一に特化した槍術・剣術を持つが、切り札として敵を一掃する宝具を持つ、か。……だが反動が大きすぎる」
 野球に例えるなら、4番バッターだけ。これでは柔軟に戦局に対応など出来ない、という所か。
「戦力不足は否めぬか……ならば他のサーヴァントも呼び寄せねばならない――しかし、彼らを呼ぶとなると――」
 協調性がマイナスの面々を想像して、起こされる騒動と苦悩する部下を想像して、それを見ている自分を想像して――
「それも面白いかも知れんな」
 そう締めくくるのだった。


 衛宮邸に戻ってきたアルトリアを待っていたのは、居間のちゃぶ台に寄りかかってテレビを見ているイリヤの不機嫌な姿だった。
「遅いよアルトリア。…シロウと一緒じゃなかったんだ」
「い、いえ! 途中までは一緒だったんですがそのあのええと!」
「ふーん、そうなんだ、アルトリア、そうなんだ」
 不機嫌に傾いた顔が、不意ににやりと変わる。その表情は、猫が獲物を捕まえていたぶっている時の表情によく似ている。
(ああそうか、シロウの言っていた『イリヤがタイガに汚染される』とはこう言う意味なのか―)
 圧倒的に不利に陥ったアルトリアは、無理やり話題を変えようとして――
「シロウ、遅いですね」
 そう言ってしまった。
「リンのところでしょ」
「リン? 遠坂凛の事ですか」
「そうよ」
 ぶすっとなるイリヤ。
 その表情を見て、リンとシロウの関係を想像する。
 何故だろう、と。
 アルトリアは理由も無く、ぶすっとしている自分が居る事に気づいてしまった。



 街の片隅、誰も居ない場所、其処は山の上の洋館の庭。
 其処にアーチャーは片膝をつく。
 セイバーを庇って受けた傷からは容赦なく血が流れ、体力…いや命そのものを流しつづけている。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ――」
「無茶しすぎよアーチャー!」
「凛、か――」
 今にも泣き出しそうな表情の凛を見て、アーチャーは無理やり立ち上がる。
 その顔には、このざまを彼女に見せた失態に対する自責の念が渦巻くばかり。
「変身を解いて。治療をしなくちゃ―」
「ああ……そう、だな…」
 そしてアーチャーの言葉と共に一瞬だけ光が体を覆った後、其処には赤い髪の少年――士郎――が倒れているだけだった。
 凛は掻き抱くように士郎を助け起こし、涙を流す。
「無茶よ、士郎――貴方が傷つく事なんて無いのに!」
「それでも……やらなくちゃならないんだ。死んだオヤジのために、イリヤのために、俺の夢のために。……何より遠坂の為に――」





 其処は深い深い地の底、陽光の届かぬ場所、闇の世界に他ならない。
「ぐるぅぅぉぉぉ」
「キシャァァァ」
 人間には理解できない、一定のリズムを持つ何かの会話のような音。
 昆虫人間たちが、自らの肉体を真っ二つに砕き、黒い泥の中に投げ落とす。同士討ち、もしくは共食いを思わせる光景であるが、その破片から新たな固体を切り裂いた体の数だけ増やしていくのは、多細胞生物の常識を破壊するような光景だった。

 暗黒神『この世全ての悪アンリ・マユ』の祭壇を背に、老人が立っている。
 その老人の顔色は悪く、骨格は既に人間の物と異なりつつある。バキンと音を上げて、固い石の床に叩きつけられた杖が折れ、欠片は飛んでいく。
「ええい、あの忌々しい赤騎士め!!」

『ゾーケンよ』

 向き直り、そのまま床に頭を擦りつけんばかりに叩頭する。
 その祭壇に居たのは黒衣の巫女チェリーでは無い。彼女の体を借りた、暗黒神『この世全ての悪アンリ・マユ』に他ならない。
『暗黒騎士の召還を成し遂げながら、この醜態。どう申し開きするつもりか』
「申し訳ありませぬ。まさか奴ら街中において『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』までも持ち出すとは――」
『人間は勝利の為なら同族を幾らでも巻き添えにしよう。それを忘れたはゾーケン、汝の罪なり』
「……!!」
『見つけるのだ、聖杯を。人類全て根絶やしにし、我らの理想郷を作る為に』
「ははぁーっ!」
『新たなる命令を下す……赤騎士を捕らえよ』
「…何と?! 殺してはならぬのですか!」
『次善の策として殺害を許可する。だが奴の力『無限の剣製』は惜しい。あの力を我々が手にすれば、聖杯に頼らずとも人類を容易に滅ぼせよう』
 ゾーケンは理解した。
 あの強大な力、サーヴァントとしての能力は低いアーチャーの、絶望的なまでの破壊力。その根源を手にした時の此方の利益を理解した。
「我らが神『この世全ての悪アンリ・マユ』の御心のままに……」




>続かない。


あとがき

 士郎の一人称から、いつも通りの三人称に戻した。
 個人的には此方のほうが書き易いと思いました。何せ、好きなように場面転換できますから。
 でも、個人の内心を書くのは難しくなるし、書く事が増えて容量も跳ね上がる。
 上手くいかない物ですねぇ。

 さて。
 敵ボス(中ボス)は大神官とか将軍とか大元帥とか、けれんの過ぎる称号に暗黒とか邪悪とかをくっつける決まりがある。
 こんな素敵な戦隊物。
 やらない手は無い、……って所でしょうか。

 今回のこれは『第一話』を想定して書いた物ですが、流石に続きを書くのはつらい……。
 正直、誰か続きを書いてーとか思ってる有り様です。
 実際、続きを書くとしたら『いきなり最終回』以外は不可能っすよー。

 でもやりたいのといったら、
 アーチャー(赤)がアンリ・マユに洗脳されて、アーチャー(金)になって敵に回るとか。…変身、というプロセスを経るからやれる代物だけど。
 言峰と切嗣の確執(シリアスなバトル一辺倒になりそう)とか。
 穂群原学園に転入してきたアルトリアの日常(慎二がギャグキャラ以下の扱いを受けるだけ?)とか。
 アルトリアVS凛VS桜の士郎争奪戦とか。

 ……駄目だ、やっぱり書けそうに無いや。

 追記。連続投稿はこれで一旦休憩に入りまーす。……流石に疲れたし。

考察:変身ヒーローに必要な要素。

 1.主人公は巻き込まれる。もしくは最初から事態の中心にいる。
 2.敵は分かり易い位に悪党なほうが良い。世界征服とか人類抹殺とか、無茶な理想を抱えている。
 3.敵か味方かわからない、謎の強い戦士がいる。
 4.街の住民は敵が来るのが分かっているのに、何故か其処に住みつづける。
 5.合体ロボは、戦隊物においてのみ登場を許される。
 6.仲間の増える時があるが、一人もしくは二人まで。
 7.なぜばれないのか首を捻りたくなる、そんな不思議な人間関係がある。

 3補足.一度敵に回って、苦闘の末に正式に仲間になる。

簡易設定

 聖杯を狙う悪の組織と、守るための組織の戦い。
 悪に奪われる事を防ぐ為だとしても、聖杯を破壊する事による力の流れの変動は大規模災害をもたらすと推測される為、隔離、封印するしか手段は無い。
 サーヴァントは英霊・守護者の力を宿す事が出来る人間を意味する。基本的には血縁である、など。
 悪も正義も、偽装のために日常生活を当たり前に過ごしている。
 悪の切り札『暗黒騎士』は、神話や伝承で無念の死を迎えた、または悪党としての側面が強い、もしくは悪党とされてしまった者。

参考資料
 スーパー戦隊シリーズ 東映
 仮面ライダーシリーズ 東映
 ゲートキーパーズ GONZO
 ゲートキーパーズ21 GONZO
 ...etc,etc


 

 

代理人の感想

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ま、そーゆーことで。(爆)

ちなみに私は書けません。

考えるだけなら楽しそうだけどw