彼女は夜の町にいた。

彼女はビルの上にいた。

彼女は町を眺めていた。

彼女は黒いマントと身に着けていた。

彼女は斧の様な杖を持っていた。

彼女は石を探していた。

彼女は母親の役に立ちたかった。











今、なのは、ユーノ、恭也は月村家の玄関前にいる。

なのはは、すずかとアリサとのお茶会のため。

恭也は恋人の忍に会うためだ。

「いらっしゃいませ、なのは様。恭也様」

豪勢な家の、壮大な扉から、清楚なメイドが出迎える。

名前はノエル。女性にしては身長が高く、表情はキリッとしている。

仕事が出来るため、周りからカッコいいという評価を受ける。

「こんにちはノエルさん。」「お邪魔するよノエル。」

「お嬢様方は奥でお待ちです。どうぞこちらへ」

「ノエルさん、アリサちゃんはもう来てるんですか?」

「はい。十分ほど前にご到着になりました。」

なのは達は歩きながら廊下を移動する。月村家はお金持ちであり、家もそれに見合うだけの大きさである。

廊下は幅広く、横に三人並んでも苦にならない広さ。

壁には品のよい調度品が置かれ、上品な雰囲気をかもし出している。

長い廊下を直進し、一回右に曲がる。二つ目の扉に入ると部屋には女の子が四人いた。

すずか、アリサ、忍、ファリンの四人だ。

すずかとアリサはなのはの友達。

忍は恭也の恋人。恭也とは高校時代からの付き合い。

髪は紫の長髪で、細身の体系は風がふけば折れてしまいそう。見た目はすずかの未来図といったところだ。

ファリンはノエルの妹で月村家に仕えるメイドの一人。

見た目はノエルの幼き日といった感じだが、おっちょこちょいな性格から、姉とは違い可愛い印象を受ける。

「なのはちゃん、恭也さんいらっしゃい。」

「ユーノも来たんだ。」

「キュキュ」

ユーノは定位置(なのはの肩)から応える。

「なのはちゃんとユーノ君て、最近よく一緒だよね。」

「そういえば、学校と塾以外はいつも肩に乗ってるわね」

「にゃはは。確かに外出るときよく一緒かも。」

「なのは恋人いないんだから、ユーノと付き合っちゃえば。」

「それいいかも。きっとお似合いだよなのはちゃん。」

「う〜ん。確かにユーノ君とはよく一緒にいるし、性別はオスだけど。フェレットじゃん。エベレストクラスの障害があるよ。」

「冗談よ。冗談だからなのは。」

「年齢の差を越えたカップルはいても、生物の差を越えたカップルはいないか〜」

肩に乗っているフェレットは少女達の一言一言に動揺する。

そういうのを期待して、なのはと一緒にいるのではない。だが。なんとも言えない寂しさを感じるお年頃なのだ。

「恭也。子供達は子供達。私達は私達でお話しましょう。」

「そうだな。そっちのほうがいいかもしれない。」

忍は恭也の腕を抱きしめ、ストロベリー状態へ移行する。

半径二メートル圏内にストロベリー場を展開したまま、二人は部屋から退室する。

「でしたら、私達はお茶の用意をしなければなりませんね。ファリン、行くわよ」

「はいは〜い。なのはちゃん、アリサちゃん、ゆっくりしちゃってね。」

ノエルは慇懃は礼をし、ファリンは気さくな感じの礼をし退室する。

「なのはのお兄ちゃんと、すずかのお姉ちゃんて本当に仲いいよね。」

「お姉ちゃんは、恭也さんと出会ってから、凄く幸せそう」

「お兄ちゃんはどうだろ。前よりかは嬉しそうかな」

「あの二人はお似合いのカップルだもんね。見ていてこっちまで嬉しくなるわ。半径二メートルの外から見てる場合はね」

「そうだね。半径二メートル圏内は、空気が甘くなってもんね」

「にゃはは。小学三年生には刺激が強すぎるかな」

少女達の会話は必然的に恋愛話に変わっていく。

男の子のユーノには面白くない話だった。

「キュゥゥゥ」

この場にいてもしかたがないので、定位置から降りる。時間を潰せる場所を探すためだ。

正面にはなのは。左はついさっき通ってきた扉。右には森が見える。個人の宅に森がある時点で月村家の豪華さがうかがえる。

背面には猫。姿勢を低くし、気配を殺している。目には獰猛な色がやどり、人間の愛玩動物とはとても思えない雰囲気。

「キュキュゥキュ?」

何故猫がいるかというと、月村家は猫御殿だからだ。猫のための猫による猫の家といったところだろうか。

そのうちの一匹が美味しそうな獲物をみつけて、凶暴な猫科の本性を表したとしても不思議ではない。

「キュゥゥゥゥ!!!!!!!!!!」

逃げるユーノ。追う猫。傍目から見たら可愛い動物達のおにごっこだが、当獣達にとっては生き死にのかけっこ。

ユーノが捕まったら、そこで終わり。人類初の猫の餌称号を授与されることになるだろう。

「わわ。どうしたのユーノ君。」

猫パンチ。猫タックル。猫が踏んじゃった式ジャンピングアタックを際どいタイミングで交わしたユーノは定位置に逃げ込む。

女の子に猫の脅威から護ってもらうのは男の子としてどうなのだろう?

「猫にとってはここは天国みたいなもんでも、ユーノにとっては刑務所って所か。」

「けど、その場合はユーノが罪人になるのよね。何をしたのユーノ?」

「キュキュ」(僕は何もしてない!!)

「なのはと同じ家なんだから覗きとかじゃない?」

「キュ!!?」(いや、あれは不可抗力で)

「あらら。ユーノの顔赤い。このフェレット言葉分かるんじゃない?」

「キュウキュキュキュ、キュウウ」(僕は無実だ。僕は無実だ。僕は無実だ。あれは事故で、偶然で、運がよかっただけで、って違う!!!)

「なのはちゃん。ユーノを訴える?」

「キュキュキュ!!!」(なのは。なのはは味方だよね。こんな根と葉はあるかもしれないけど、仲間の僕を売ったりしないよね!!)

「う〜ん。確かに一理あるかも。そうだね、ユーノ君。がんばってお勤めして真人間、じゃなくて真フェレットになって帰ってきてね。」

「キュウウウウウウウ」

不本意ながら変態フェレットの二つ名を手にしたフェレットは、落ち込む。

そしてすぐ、気持ちを困惑にうつした。

[なのは。今ジュエルシードの気配を感じなかった?]

[私も感じた。すぐ近く。たぶんすずかちゃん家の森らへんから。]

魔法を媒介に二人は無音で言葉を交わす。

[けど、どうしよう?すずかちゃん達にジュエルシード探しますとも言えないし。]

[じゃあ、こうしよう。僕が逃げ出すから、なのはは僕を探すフリをして森にきて。]

ユーノは定位置から飛び降り、芝生を駆け巡る。

なのはの方は自然とは言いがたい動作であたりを見回す。

「あれれ?ユーノ君がどっかいっちゃた。」

「そういば、なのはちゃんの肩にいないね。」

「覗きの罪で刑務所行くのが嫌で、逃げ出しちゃったんじゃないの?」

「にゃはは。そうかもしれない。私、再逮捕に行くね。」

「私達も手伝うよ?」

「うう。大丈夫。一人でみつけてくるよ」

「もし一人で探すのがきつくなったら呼びなさいよ。」

すずか達から離れたなのはは歩を森にむけた。



















森に入ったユーノはすぐさま結界をはった。ある一定区域内の時間進行をずらす事によって、周りとの世界を切り取る。

「これで、周りの人たちには何が起きたか分からないよ」

「ありがとうユーノ君。」

なのはは、すずかとアリサに危害が加わる事、魔法の事がばれる心配がなくなりほっとする。

「たぶん、この辺だよね。」

「うん。だいぶ近くまで来てるはずだから発動する前に捕獲しよう。」

爆弾も点火しなけりゃ怖くない。ユーノは厄介な事になる前に回収したかった。

したい ではなく したかった。思ったけれど、出来なかった。

なぜなら目の前でジュエルシードが発動したからだ。

「にゃあああああ」

青白い光が目の前を支配すること数秒。視界が慣れるまでには少々時間がかかった。

今回のジュエルシードも現地の生物を取り込んだタイプだった。ただ一つ違う点は、姿見がそのままであったことだろう。

可愛らしい目、ぴんと張った髭、くねくね軌道する尻尾に、キュートな鈴付きの首輪。

見た目だけは、どこからどうみても、純度100%、完全無欠の猫だった。

ただ、大きさが酷い。とても家で飼っておきたいとは思えないサイズだ。

猫の大きさは樹齢何十年の木々より大きい。ハリウッドの過剰演出でも、これはない、と思わせるくらいの大きさだ。

「・・・・ユーノ君。これってどういうこと?」

「たぶん・・・・あの猫の大きくなりたいという願いが、そのまま反映されたんだと思う。」

なのはとユーノは、肩透かしを食らったというか、期待はずれというか、前評判の割りにつまらなかった映画を見た後みたいな気分で会話する。

「とりあえず、封印しとこうか。」

「そうだね。あの大きさじゃあ餌の量とか凄そうだし、すずかちゃんも大変だもんね」

レイジングハートを展開し、杖と防護服を装着する。

特に慌てるでもなく、特に急ごうとも思わず、気楽な気持ちで杖を差し向ける。

後は封印と思った矢先。黄色の球体が走った。

球体は猫のわき腹に直撃、転倒を避けるためたたらを踏む。

「なに、なんなの?」

「なのは、次がきてる!!!!」

黄色の球体が迫る。今度は三発。どの球も猫に直撃コースだ。

なのはは地面を蹴り飛翔。ねこの背中に乗り、防御魔法を展開する。

幸い迫ってくる球体はまとまって来たので、なのは一人で対応ができた。

「気をつけてなのは。何かが来る。」

ユーノの声は若干裏返っている。予期せぬ事態にとまどっているからだ。

なのはは猫の背からおり、杖を正眼に構える。どんな事態にも素早く対応するためだ。

焦るユーノと構えるなのはのすぐ近く、細い木の枝に、黒い少女が降り立った。

















なのはは最初に驚き、後にとまどってしまった。

見た目は同い年くらいの女の子。頭の両側で結ばれた髪はツインテールをなしており、色は美しい金色。

枝毛など無く、文字どうりに流れるようなストレートは一種の極致に至っているようだ。

服装は黒いマントに、肩から先のない黒い上着。体の各所には赤いベルトらしきものがついている。

そして何よりも特徴的だったのが透き通った湖のような瞳。

全身の黒い格好とは対照的に、瞳は恐ろしいほど透き通っている。それは、全ての善意の結晶のようだ。

「同系の魔導師。ロストロギアの探索者か。」

甲高いソプラノの声。年齢にしては声に落ち着きがあり、同時に強い意志力を感じられる。

「バルディッシュと同系のインテリジェントデバイスか。」

なのはの杖を一望し、形式を口にする。それは、質問というより確認作業のよう。

「ロストロギア。ジュエルシード。申し訳ないけど」

黒い少女は杖を水平に構える。途端、杖の先がスライドし金色の鎌が出現する。

「いただいていきます。」

言葉にするのが先立ったか、動いたのが先立ったか分からない。

ただ、一瞬の間に木の枝から飛び降り、なのはに向かって横なぎの一撃を放つ。

なのはは、黒い少女の動きは見えてなかった。木の上を見ていたぶん、地面すれすれを移動して来る、少女の動きに着いていけなかったからだ。

だから、なのはが避けれたのは運がよかっただけ。カンにまかせて空中に飛んだのが功を奏した。

「今のを避けた。だったら」

黒い少女は腰を落とし、地面にしっかり足をつける。杖は体に垂直に、腰を半分回転させる。

「アークセイバー。はっ!!」

テニスのドライブの要領で杖を振りぬく。先端に展開されていた鎌は、遠心力で杖から離れ、なのはに向かって放たれる。

鎌が当たる直前、なのはは防御魔法を展開。それと同時に上空へ移動し威力を受け流そうとする。

だが、さらに上空から別の鎌が振り下ろされた。先回りした少女が追撃をかけたのだった。

予想外の攻撃になのはは杖を盾代わりにする事で難を逃れる。

「なんで。なんでこんな事するの?」

いきなりの荒事にていてなのは相手に質問を浴びせる。

「たぶん・・・・話しても分からない。」

しかし黒い少女は短く拒絶の言葉をはくだけ。

数秒。二人の視線はお互いの目を捕らえる。

なのはは黒い少女の内に迫ろうとした。が、その前に杖を弾かれ、距離を取られる。

黒い少女は最初にいた木の枝に、なのはは地面に降り立つ。

それからお互い杖を構え最初の場面の焼きまわしのような状態になる。

ただ、一つ違う事は、黄色い球体によってダメージを受けていた猫が起き上がろうとしていたことだ。

「にゃああああ」

一瞬だった。たったの一瞬だけなのはは猫の状態を確認しようとした。

首を少し動かし、目の端で猫の姿をみようとしただけ。

それは大きな隙ではなかったが、黒い少女相手には小さな隙でもなかった。

視線を黒い少女に戻したときには、目の前に黄色い球体があった。

防御魔法なんて展開するひまなどなく、避けることもできないタイミング。

その球体はなんの苦労もなくなのはに直撃し、なのはの意識を容易く刈り取った。

吹っ飛ばされて、気を失う寸前。なのはは、とてもか細く、聞き間違いかもしれないが、誰かの謝る声が聞こえたような気がした。

















なのはが意識を取り戻したのは日も沈みかけ、夕方から夜へと変わる時間帯だった。

ユーノが屋敷に戻り、気絶しているなのはを月村家のひとに助けてもらった。

周りの人にはユーノを探している間にこけて、気を失ったと言った。

心配してくれた人たちに本当の事をいえない事が、なのはの心を ごめんなさい の気持ちで一杯にした。

「傷の具合はどう?」

「うん。もう大丈夫だと思う。」

ユーノの気遣いにも元気に応える余裕も無かった。

「あの杖、あの衣装。魔法の使い方。たぶん・・・。いや、きっと僕のいた世界と同じ住人だ」

ユーノの言葉を聴き、なのはは昼間の黒い少女を思い出す。

(ジュエルシードを集めていれば、またあの子と戦わないといけないのかな。)

なのはにとっては、とても気がかりなことだった。また、戦う。

傷つくことが怖い訳ではなかった。あの女の子と戦うのが嫌だった。

初めて見た瞬間。木の枝の上に立っていた少女に強く引かれた。

時間が過ぎた今でも、あの子の事が気になる。

(ジュエルシード集めは続ける。けれどあの子とは争いたくない)

なのはは新しい悩みに取り付かれていた。
























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代理人の感想

・・・・うーん。本当に、原作とどこが違うのか分からないんですが。

丁寧な再構成や解釈があればともかく、ねぇ。