「プラネットマンとスニゲーターが帰ってきたが…あれではしばらくは動けないな。」

「グフォグフォグフォさすが人間最強の男、そうでないと面白くない。ここは我らが相手をしてやろうではないか。」

「まあな。もう一人の人類最強はサタン様に…そういえばこの残りカスはどうする?」

「捨てておけ、魂を抜かれた人間なぞに用は無い。」

「…そうだな。後で俺が綺麗にジャンクして、鮫の餌に作り変えてやろう。」


激闘!!超人大戦!!

〜古代遺跡死闘編〜


第一話



遺跡を下る闇へと続く長い階段、地獄への一本道のような階段を下った先には立ち回りが出来るくらいの不自然な空洞があった。

まさに空洞、現に行き止まりでもなく、先に進む道も見える。

奇妙な事にここには目立った灯りも無いのに光がある、明らかに不自然な光景だが、もはや奇妙な事には慣れてしまったのかアキトと大島、共にこれを見ての表情の変化は無い。

唯一つ二人の表情を変えるものがあるとすれば、空洞の中央にある巨大な長方形の大理石、その中央に書いてある『テンカワアキトの墓』、その悪意まみれる物体だった。

「お〜これはこれは。」

大島がその物体へと駆け寄り、興味深そうに叩いたり撫でたりして観察を始める。

「うーん、これ結構いい品だな。ちゃんと硬い石使ってるし…これさえあれば老後の心配は無いな。もって帰ったらどうだ?コレ。」

妙に縁起の悪い鑑定結果を出し、それを一歩引いたところで見ているアキトに伝える。

「そんな重そうな物もって帰れないって…」

アキトがバイザーの下から半眼の呆れた目で大島を見るが、急にその表情が真面目な物に一変した。

そして、なにかを察知したのか、大島もバックステップで一気に距離をとり、石から一気に離れる。

「ジャーンククラッシュ!!」

大島が離れたか否かのその時、音を立てて大理石製の墓石が粉砕された。

周りに粉塵が舞い、一瞬視界を奪われる。煙が晴れた後には、男が一人いた。

それは今までの非人間型の超人に比べれば、人間に近い姿だと言えただろう。

スキンヘッドのショートタイツの悪役プロレスラー、異様な一部が無ければそう判断できるはずだ。

その異様な一部とは―――両手の前で合わせている巨大な鉄板だった、理屈はわからないが手首からそれは生えている、いや同化してると言ったほうが正しいか。

「二ヒヒヒヒ…」

男が笑いと共に顔を上げ、合わせていた両手の鉄板を離す、両手の鉄板内側には針、血に染まった野太い針が幾本も生えていた。

それが男の笑いと共に赤く輝く、それにより異様なほどの狂気が男から滲み出ていた。

「俺は悪魔騎士の一人、ジャンクマン!!」

男が両手の鉄板を叩き、高らかな鉄硬音を響かせながら名乗りを上げる。

「戦神!!貴様の命もこの墓のように粉々に砕いてくれるわ!!」

咆哮をあげながら、自らが砕いた大理石の破片を鉄板の針で指差す。

大理石を易々と砕く、その行為がジャンクマンの一撃の必殺的な威力を明確に示していた。

「ま、また派手な奴がでたな〜」

大島が思わず後ずさりながら呟く、それを見たアキトが言いにくそうに口を開いた。

「ああ。ここは…」

「ヤダ。」

アキトのセリフが終わらないうちに大島が拒否の姿勢を見せる。

思わず二人が顔を見合わせあう…

「…まだ俺は何も言ってないが?」

「『ここは頼んでいいか?』か『ここは任せて先に行け』のどっちかだろ?

と言うか、大体パターン的に女を助けるのはお前と決まってるから『ここは頼んでいいか』的になるんだろ?」

「駄目か?」

「だって俺には昂氣なんて無いし、あんな人間圧搾機の一撃くらったら一発で肉片になるぞ?」

「いや根性で…」

「なるか!たまには人に女救う役譲れや!読者も違う展開をたまには…」

やけに砕けた表情で会話を続ける二人を見て、ジャンクマンの表情が怒りに染まる、そして怒りが最高潮になったとき、

「ごちゃごちゃとうるさい!ならば二人まとめてジャンクしてくれるわ!!」

怒号と共に両手の鉄板を広げたまま、ジャンクマンが二人めがけ突進してきた。

怒りのせいか凄まじいダッシュ力を誇り、怒涛の勢いで二人に向かい突進していく。

それを眼前に迎えながらも、アキトが冷静に口を開く。

「お約束を持ち出すなら、ここから先の敵のほうが展開的に強いと思うんだが?」

「だったらここの方が楽…ってことはやっぱり俺が残るのか?やっぱ主人公はいいなぁ…オイシイ役回りで。」

そう言うとアキトはその場に残り、大島はジャンクマンに向かって逆に逃げずに向かって行った。

正面からぶつかり合うと思ったその時、大島が走ったまま中腰になり、多少攻撃の隙があるジャンクマンの足めがけ低空ドロップキックを放つ。

「ぬおっ!?」

いきなりの変化球に防御が出来ず、ジャンクマンがそのまま前面に転ぶ。

うつ伏せに倒れるジャンクマンと、低空ドロップキックを撃ち倒れこんでいる大島の上を、アキトがダッシュジャンプで通過していく、

そのままアキトは綺麗に着地し、空洞の先の入り口へと駆け込んでいった。

「し、しまった!!」

策にはまったジャンクマンが悔恨の叫びを上げながら立ち上がり、アキトを追いかけようとするが、

「いかせるか!!」

大島が鎖を作り、ジャンクマンの足に引っ掛け、そのまま全力で引っ張った。

「うお!」

変なところでバランスを崩され、ジャンクマンが天を仰ぐ形で倒れる。

その隙にアキトは全力で暗闇の中に駆け込み、そのまま姿を消してしまった。

起き上がったジャンクマンが暗闇を睨むが、時間も大して経たぬうちに、鎖を握る大島へと視線を移す。

「邪魔しやがって…ならば貴様からジャンクしてくれる!」

そういうや否や、足に巻かれていた鎖を針で断ち切り、ジャンクマンは大島めがけ両手を広げ突撃してきた。

それを見た大島が、腰から鉄鋲を取り出し、ジャンクマンめがけ投げつける。

しかしジャンクマンはそのままスピードを緩めず、鉄板を楯のように前に突き出しそのまま突っ込んできた。

鉄鋲は鉄板に弾かれ、むなしく地面に落ちる。

「ってマジかよ!?」

慌てて大島が横に転がり、そのままの体勢のまま突撃して来るジャンクマンをぎりぎりのところで避けた。

今まで大島がいたところをばく進するジャンクマンが通過していく…

そのままジャンクマンは直進し、凄まじい衝突音と共に洞窟の岩壁へと衝突した。

「じ…自爆したのか?」

衝突の衝撃で起こった噴煙で姿が消えたジャンクマンを大島が凝視する。

しかし、噴煙が晴れた先には無傷のジャンクマンが堂々と立っていた。

その後ろには、トラックが衝突したかのような跡を残したような岩壁の破壊跡が見える―――

「…貴様には二つの選択肢がある。」

噴煙の中のジャンクマンが重々しく口を開く。

「圧死か轢死、好きなほうを選べ!!」

そしてそのまま鉄板を突き立てた体勢で再び大島めがけダッシュしてきた。

「うわ…帰りてえ……どっちもゴメンに決まってんだろうが!俺は生き残る!」

弱気を払う咆哮一発、大島も先程の下半身を狙ったときのように体勢の低いダッシュで迎え撃つ、

が、それを察知したのかジャンクマンも身をかがめ、低い体勢のダッシュに切り替える。

全身が鉄板に隠れる様な体勢になり、ジャンクマンの下半身の隙が無くなった。

ぶつかり合う二人、大島の肉の砕ける音が聞こえるかと思った刹那、大島が急に体勢を切り替え、上空へと跳んだ。

そのまま空中で反転し、ジャンクマンの背後を取る形で着地する。

「前面が強い奴は後ろが弱いってお約束なんだろ!!」

背後を取り有利な体勢になった大島が、拳に鎖を巻きつけなにかの技をかけようとする。

しかしジャンクマンは防御体制をとろうともせず、

「ダブルフェイス!!」

ただ一言、それだけを叫んだ。

間もないうちに、髪も何も無いジャンクマンの後頭部に、目…口…前面そのままの二つ目の顔が出て来た。

「あにぃ!?お約束無視か!?」

驚く大島を尻目に、ジャンクマンは腕を苦も無く180度曲げ、背後の大島を腕の鉄板で思い切り挟み込む。

凄まじい炸裂音が辺りに響き、直後ジャンクマンの二つの顔が同時に笑い出した。

「カカカ…甘く見たな!悪魔に弱点など無いわ!!」

「カカカ…仕方ない事。人間と言う範疇の知識ではここまでの予想は出来ないだろう。」

高らかに二つの顔が勝利の笑いをあげるが、

「い〜や、ぎりぎり予想はついたぞ。この万国ビックリ人間どもが!」

「「!?」」

勝利の栄光を消す、潰されたはずの大島の声が上から聞こえてきた。

思わずジャンクマンの顔の一つが上を見上げる。

すると、鎖を天井に突き刺し、ジャンクマンを見下ろしている上半身裸の大島がいた。

「馬鹿な!確かに潰したはず…」

驚いて合わさった鉄板を離すと、中からボロボロになった大島のシャツが出てきた。

「お前の仲間の変態野郎の脱皮を参考にさせてもらったんだよ!」

直後、大島は鎖から手を離し落下し、上を見上げるジャンクマンの顔の一つに飛び降りた。

「ぐべは!」

顔を潰されたジャンクマンが悲鳴をあげる。

そのまま大島はジャンクマンの顔を踏み台とし、ジャンプ、そのまま一端距離をとって再びジャンクマンと対峙した。

そして、落ち着いた一瞬に大島は思考の世界に入りジャンクマンの打開策を考えるが…

(前後に完璧、死角なし。横も…ダメだ。あの棘つきの両手を振り回せばどんな方向からにも対応できる…)

大島が軽い冷や汗を掻きながらジャンクマンを見つめる。

「ん?どうした?顔色が悪いぞ?」

大島の視線を感じたジャンクマンがからかう様に口を開く。

「ククク…悪魔騎士は情け深い。逃げるのなら今のうち、たとえ貴様が逃げても誰もとがめんぞ?」

そう言うとジャンクマンは体をずらし、入り口への一本道となるスペースを作る。

まさに退却路となるべきルート。

それを見た大島は深く溜息をつき呟いた。

「はあ…逃げたいのは山々なんだけどな。今、あいつ等見捨てて帰ったら帰還早々撲殺されるんで…引けないんだよ。」

大島の頭の中には帰った早々、某女性の釘バットに襲われる自分の姿が克明に映っていた。

尤も、北斗が危険にさらされているといった時点で、もはや将来的に避けられない運命なのかもしれないが。

すると覚悟を決めたかのように大島は両手にそれぞれ一本ずつ、計2本の長い鎖を作った。

かなりのリーチがあり、振り回しただけでジャンクマンの所へそのままとどきそうな代物だ。

「めんどくせえ!来な!勝負つけるぞ!!」

鎖を作った大島は、いきなり強気になりジャンクマンを手招きで挑発する。

いきなりのテンションの移り変わりにジャンクマンが少し立ち止まるが、長い鎖を見て安心した様に鼻で笑った。

「フン!…どんなはったりかしらんが、時間が無いのは同じ事。この後、戦神のほうも片付けなければならないしな!」

叫ぶや否や、ジャンクマンが先程と同じように、いや先程よりも凄まじい勢いで大島めがけ突っ込んできた。

その足取りに大島への持っている鎖への警戒心は無い。

それを見た大島は、長めの鎖を振り回し、駆け始めのジャンクマンめがけ打ち込む。

長い鎖は慣性と重力を味方につけ凄まじい勢いで唸りをあげ、ジャンクマンに襲い掛かるが、難なく両手の鉄板を楯にしジャンクマンは鎖を弾いた。

鎖はむなしく宙に舞う、ジャンクマンの目の前には鎖を弾かれ無防備になった大島がいた。

「はははー!!そんな長い鎖を使えば懐は無防備!!もらったぁーーー!!」

楯の体勢から、両手を全開に広げ、ジャンククラッシュの体勢になりスピードを上げる。

大島はそれを見て、両手を十字を切るような構えに体勢を変え、

「そんなに甘くないんだよ!!」

一喝し、両手を一気に引き戻した。同時に宙を浮いていた二本の鎖の先頭が反転、背後からジャンクマンに襲い掛かった。

「止まれー!!鎖が来ているぞ!!」

ジャンクマンの背後の顔が大声で注意を呼びかけた瞬間、鎖はそれぞれジャンクマンの左右の腕に絡みつき、

同時に大島が自分が手にしている側の二本の鎖の先を天井の岩壁へと打ち込んだ。

二本の鎖に繋がれる形となってジャンクマンが拘束され、そのダッシュに急激なストップがかかった。

しかも天井に打ち込まれたため、両手が万歳の体勢となり、鋼鉄の向こうの人間に近い生身の体がさらされる。

それを見た大島は自分の右拳に複雑怪奇な形に鎖を巻きつけ、ジャンクマンに向かい走り出した。

「超人だろうとなんだろうと急所は一緒!くらえ!!魔鎖抜魂!!」

技名を叫び、無防備なジャンクマンの前面に殴りかかる。

次の瞬間、鮮血があたりに飛び散った。



大島とジャンクマンの決戦場の近く、血の臭いが漂う空間。

闇の中に人が一人倒れていた。

まったく動かない、遠目で見れば死体と間違ってもおかしくないだろう。

しかしそれに反論するかのごとく、人影は右手をわずかに動かす。

続いて左手、右足、左足…感触を確かめるかのように徐々に動いていく。

そして影はゆっくりと立ち上がった。

そしてうごめくように口を開く。

「この感じは…あー君が来ている…助けに来てくれたのかな…でも駄目。北ちゃんも負けた…あいつには誰も勝てない。止めなきゃ…」

そう呟くと、さっきまでの緩やかな動きが嘘のように人影は暗闇の中走り出した。

近くで聞こえる、水音を頼りに――――




「うわ!!マジかよ!!」

大島の右手についた細かい傷から、傷に合わない量の血が噴出する。

短めの鎖を作り、右腕の付け根に巻き血管を押さえるが、それでも一向に止まる気配が無い。

「はっはっはー!!そんな物では止まらん。俺様の攻撃を受けた奴は体中の血と言う血、全てを抜き取られる!!」

胸から極太の針を数本はやしたジャンクマンが、両手の鎖を力任せに引きちぎる。

拘束が解けたジャンクマンが傷口を押さえうずくまる大島を見下ろしながら言葉を続ける。

「そしてその血はやがて地面を血の海へと変える……これが我が地獄、血の池地獄だーーー!!」

「ちっ…まさか体から針がいきなり飛び出すなんて思わなかったぜ…」

大島が悔恨の笑みを浮かべ、精一杯に強がる。

それを見たジャンクマンは誇らしげに胸を張り、

「ふん、それに気付き済んでの所で手を引いた貴様もたいした物だ。あのまま技を撃っていれば今頃右手はズタズタ。貴様は今頃失血死してた。

せめてもの情けだ!」

ガンガンと力強くジャンクマンが両手を鳴らす。

「失血死ではなく、この手でジャンクしてくれるわ!!」

そしてジャンクマンが再びジャンククラッシュの体勢でうずくまる大島に向かい駆け出してきた。

「そんな事…させて…たまる…か…よ…」

声が弱まり、体も動かない。すでに貧血を起こしているのだろう。

(血が足りないのか…死ぬかなこりゃ…)

大島の意識は闇の中へと消えようとしていた。

その直後、血が大地を染めあげた――――ジャンクマンの血によって。


「ギャァァァァァァァァァァ!!」

(ん?なんであいつが叫んでるんだ?死ぬのは俺じゃなかったのか?)

不思議なことへの興味が生を繋ぎ、大島が目を開ける。

そこには、首筋の頚動脈から面白いほどの血を噴出させたジャンクマンがいた。

「あ!?」

思わず勢いで起き上がり、回りを確認する。

「馬鹿な!!貴様は魂を抜かれたはずだ!動けるはずが無い!」

傷口を押さえ、あさっての方向に訳の分からない事を叫ぶジャンクマン。

下には鋭角的な石が転がっている、ジャンクマンが破壊した壁の残骸だろうか?血に染まっているところから見て、この石で何者かに首筋を掻っ切られたらしい。

ふと自分の右手を見ると血の噴出が緩やかになっている。

(まだ生きてるって事は、俺の血が切れたわけじゃないよな…もしかして、あいつの魔力かなんかが弱まって噴出が弱くなってるのか?)

そこから出た結論は一つ、その結論に気付いた大島は、左手に再び複雑怪奇な形で巻きつけ、ジャンクマン向かい走り出した。

ジャンクマンが気付く前に大島はジャンクマンの懐一寸のところに潜り込む。

「このタイミングじゃ針も間に合わないだろ!!くらえ!魔鎖抜魂!!」

ジャンクマンが大島に気付いた瞬間、鎖が巻きついた大島の逆手の拳がジャンクマンの鳩尾にめり込んだ。

「ぐ・ぐ・ぐ・…」

ジャンクマンの苦悶の吐息が大島に降りかかるが、大島はかまわず左腕を上部に向かって差し上げた。

骨折の音、内臓が裂ける音…様々な破砕音が静寂の空間に響き渡る。

「うおおおおお!!」

しかし大島はためらわず、咆哮一閃、左手を無理やり引き抜いた。

ジャンクマンの体内から出された左手は本来の肌色を忘れたかのように真紅に染まっている。

それと同時に大島の右手の出血の勢いが目に見えて落ちてきた。

そのまま腕を上空高く持ち上げる大島、すると左手についた鎖に引きずられる様にして、ジャンクマンの心臓らしき器官が引きずり出された。

同時に傷口から、またも血が噴出する。大島の体がペンキをかぶったかのように赤く染まる。

しかし大島はそれにこだわらず、鎖に縛られた心臓を右手でキャッチした。

「ち、血の池地獄が、と、突破されるとは…」

息も絶え絶えにジャンクマンが呟く。

「血の池地獄は凄かった。でもな、制覇したのは俺だ!!」

大島はためらわずに、そのまま右手でジャンクマンの心臓らしき物を握りつぶした。

グシャ!!

破滅の肉音が辺りに響くと同時にジャンクマンが目の光を失い、血だまりの地面に着水の音を立て力無くうつ伏せに倒れた。

同時に大島の右腕の出血も止まる。

そしてジャンクマンはカーメンやアトランティスのように炎を上げ、死体も残さずこの世から燃え尽きてしまった。

それを確認した大島は、ふと自分の体を見つめる。

返り血を浴び、紺色だったGパンが血と混ざりどす黒くなっている、それ以上に上半身が裸のまま血に塗れ食事後の吸血鬼のような風貌となっていた。

「まさに出血大サービス…二度とやんねえ、こんな試合。それはそうと、ありがとな北斗。おかげで何とか生き残れたぜ。」

大島が、ジャンクマンが混乱しながら見つめていた方向に向かい礼を言う。

それと同時に影の中から一人の赤髪の少女が出て来た。

男物のジーンズにノースリーブのウェアといった行方不明になったときのままの格好をしているが、所々擦り切れ、汚れている。

しかし、それ以上に注目を引くのは目、実に悲しそうに今にも泣き出しそうな目をしている。

「あ、もしかして枝織の方だったか!悪い悪い…ついいなくなったとき北斗だったから―――

「!」

大島の北斗と言う言葉を聞いた瞬間、北斗…いやもう一つの人格『枝織』は目に涙をにじませる。

「え!?いや、あの…考えてみたら首を掻っ切るってやり方は枝織の方だもんな。北斗だったら体ごと吹っ飛ばすよなぁ?アハハハ…」

いきなりの涙に大島が動揺し、訳の分からないことを口走る。しかし枝織はそれを無視して、静かに口を開いた。

「あのね…北ちゃんがいなくなっちゃったの…」

「あん?」

理解しにくい一言に大島の目が点になる。だが枝織はかまわず言葉を続ける。

「あいつは悪魔…アー君でも勝てない…止めな…きゃ…」

その瞬間、枝織の方を涙が伝わる、そして糸の切れたマリオネットのように枝織は崩れ落ちてしまった。

慌てて大島が駆け寄り、枝織を抱きかかえるが、枝織はピクリとも動かなかった。

「おい!?枝織?くそ!起きねえ!一体なんなんだ!?北斗がいなくなったぁ?アキトが勝てない?本気でワケわかんねえよ!!」

大島が思わず叫ぶがそれに答える者は誰もいない。静寂が場を包む。

しかしその直後、

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

静寂を切り裂く、アキトの叫び声が洞窟の先から聞こえてきた――――



〜続く〜



次回予告

洞窟を駆け抜けるアキト!その前に立ちふさがるは砂地獄!!

「ここで貴様を殺す、この悪魔騎士首領サンシャインがな!!」

しかしあくまで砂地獄は序章でしかなかった!

真の恐怖、捨てたはずの過去から、そして地獄からの怨霊がアキトに襲い掛かる!!

急転直下の次回、お楽しみに!!

「久しぶりだな…復讐人よ。」





あとがき

少し趣向を変えて新章です。

近頃、酒量が増えたせいか超人大戦進む進む(注・この作品は軽く酔わないと書けません)

三軍神のほうも仕上げないとなぁ…と言う事で(何が?)いつもの超人図鑑をば


ジャンクマン            必殺技   ジャンククラッシュ

多分、外見的には一番残虐な超人。生活に不便そうな鉄板の両手は伊達じゃなく、公式設定ではダイヤモンドも砕く。

少し話がずれるが、ウォーズマン体内五重のリングにおけるジャンクマン対ロビンマスクの一戦のロビンマスクの一言

「こ…こいつはもう、ウォーズマンを助けるためだけの戦いじゃあねえ………正義超人と悪魔超人、どちらが生き残るかの戦争なんだ!!」

は個人的にめちゃくちゃ好きなシーンである。


……今回の図鑑完全に趣味入ってるな(自爆)

次回辺り、『まさかこいつが出るとは…』的なキャラが大量に登場いたします。少し間が空くかもしれませんが、それまで見捨てないでください(弱気)

では、また次回お会いしましょう。

 

 

代理人の感想

ちょっと待て! いつサンシャインが悪魔騎士の首領になったんだっ!?(爆)

それとも黄金のマスク編限定でサンシャインが筆頭でしたっけ?

次のタッグトーナメント編だと明らかにアシュラマンが格上っぽいんですけどねー。

 

本編ですけど・・・・大島、「ちょっと強いウソップ」という位置が丁度いいかもしれませんね〜(笑)。

或いはジョセフ・ジョースターか。要はトリックタイプ(だったか?)って事ですけど。

 

ところでジャンクマン、ダイヤモンドも砕けるということは

超人硬度10の悪魔将軍も傷つけられるということなんでしょうか(笑)。

もしそうだとしたら破壊力では確かに悪魔超人No.1ですな。

 

 

後「詩織」じゃなくて「枝織」です。置換かけておきました。