「「恭也!!」」


 「恭ちゃん!!」


 「「(お)師匠!!」」


 「おにーちゃん!!」



 ズドン!!と、凄まじいまでの音を立てて病室のドアが開いた。

 入ってきたのは、フィアッセを除いた高町家の面々+美沙斗。

 フィリスがこの病室を出てから、わずか三十分しか経っていない。

 いくらこの病院が近場に有るとはいえ、それでも片道三十分以上は掛かる。

 よほどの無理をしてきたのだろう。

 皆揃って、肩で息をしていた。


 しかしその心配の原因たる青年は、病院の個室のベットの上。

 上体を起こした体勢で、むしろどこか呆れを滲ませながらそんな一同を眺めていた。



 「おまえら、一応常識を教えておく」



 そして、溜め息をついて彼女たちを迎えたのだった。




 

「病院内では静かに、だ」














とらいあんぐるハート    〜 天の空座 〜 





  

<第零章 / 第六夜> Dear Family家族













 「……まったく、美沙斗さんまで一緒になって」


 「あ、す、すまない恭也」



 恭也の呆れた声に、美沙斗が反射的に謝る。

 復讐に執り憑かれていた間ならともかく、本来は割りと素直な性格なのだ。


 しかし、そんな二人のやり取りに桃子がキレた。



 「って、そうじゃないでしょう、美沙斗さん!!

  恭也も!なに冷静に突っ込み入れてるのよ!!」


 「そうだよ、恭ちゃん!!

  わたし達がどれだけ心配したか分かってるの!?」


 「「(お)師匠〜!!」」


 「おに〜ぢゃんのばか〜!」



 桃子だけでなく、他の面々も恭也の言いようにキレた。

 良く見れば、桃子や美由希の目も潤んでいる。

 あと少しのきっかけで決壊するだろう。

 というか、怒鳴っている間にすでに決壊していた。

 なのは、レン、晶の三人にいたってはもう盛大に泣き出している。


 流石にこれは悪いと思ったのか、恭也も素直に頭を下げて降参した。



 「……分かった。すまない、己が悪かった。

  だから皆、泣くな。

  ほら、かーさんに美由希、ティッシュ」



 そう言って、枕元に有ったティッシュを箱ごと二人に渡す。



 「うぅ……ひっく、恭也のバカ〜」


 「ぐずっ……恭ちゃんの若年寄〜―――って、アイタッ!!」



 美由希にデコピンを喰らわせる。

 ティッシュでほんの一瞬、視界を隠している間の無駄に高度な早業だった。



 「一言余計だ、馬鹿弟子が。

  ふぅ……ほら、おまえ達も」



 今度は盛大に泣いているなのは達に、同じく枕元に置いてあったタオルを渡す。



 「う”ぅ〜、しじょ〜!!」


 「う、ウチら、ホンマに心配じだんでずからね”ぇ〜〜!!」


 「分かった、分かった」



 言いながら、なのはの顔を鼻水ごと器用に拭いていく。

 その手際は、ひどく手馴れていた。



 「おにぃ〜ぢゃぁ〜ん!!」



 その手を押しのけるように、なのはが恭也の身体に抱きつく。

 顔が丁度、恭也の胸板に押し付けられた感じだ。


 薄緑色の病院服に、湿った温もりが広がる。

 だが恭也は嫌な顔一つせず、そっとその頭を撫でた。



 「なのは、心配掛けたか?

  だが兄はこの通り大丈夫だ。

  ………だから、泣くな。な?」


 「う”ぅ〜〜〜、おにーちゃんが死んじゃうんじゃないかって、みんな心配してたんだよ〜!?」



 恭也に顔を押し付けたまま言う。

 恭也は中々泣き止まない、なのはの様子に困った顔をするが、

 その言葉に、小さく、優しい笑みが零れた。


 ちなみに、それを見た女性陣は例外なく顔を赤くして、なのはを羨ましそうに見ていた。



 「………そうだ、かーさん。フィアッセはどうした?」


 「え?……あ、フィアッセなら後から来るわ。

  実は、フィリス先生からあんたが目を覚まさないって聞かされて。

  その後ショックで倒れちゃったのよ」


 「た、倒れた!?」



 それは予想外だったのか、珍しく驚きを顕にする。

 桃子は、そんな義息に笑みを浮べて言う。



 「大丈夫よ。あの後、ティオレさんがホテルまで連れ帰ってね。

  そのまま二人で泊まったらしいわ。

  出てくる前に連絡を入れてきたから、多分すぐに来るわよ」


 「………そうか、良かった。

  二人とも、無事だったか」



 桃子の言葉に、心底安堵する恭也。

 そのまま今度は、なのはを抱くのとは違う手を伸ばし、美由希の頭を撫でた。



 「ふ、ふぇ!?きょ、恭ちゃん!?」



 恭也の突然の行動に、美由希は顔を耳まで赤くして慌てる。

 しかしその表情は、まんざらでもなさそうだった。


 周りの皆の背後に、少しだけ嫉妬の炎が上がる。

 しかし恭也はそれらに一切気付かず、一言だけを美由希に言った。



 「……よくやった」



 その一言に、美由希は一瞬完全に硬直する。

 その一言が、滅多に褒めてくれない恭也の最上級の褒め言葉だと知っているから。


 だから、美由希の返事も言葉は多くいらなかった。



 「うん!!」



 満面の笑みを浮べたその顔は、誇らしさに輝いていた。


 美沙斗は自分の娘のそんな表情を、嬉しげな、しかしどこか淋しげな表情で見ていた。

 と、そこで彼女は気付いた。

 この中で一番、冷静で、かつ洞察力が恭也並に優れていた彼女だったから気付いた。

 美由希の頭を撫でるその右手。

 その手は、確か―――



 「なぁ……、恭也?」


 「何です美沙斗さん?」



 美沙斗は何か考えるように、美由希の頭に置かれた手となのはを抱いている恭也の手を見て。



 「………恭也、わたしの思い違いなら良いんだが―――」



 美沙斗は少し間を取るように息を吸い、



 「君の手は、確かどちらかが消し飛んでいなかったかい?」



 その言葉に恭也の表情が凍りつき、なのはも含めた全員が恭也の両手を見る。

 その手は作り物などではなく、間違いなく本物だった。



 「あ、〜その、これは………って、美由希!何している!?」


 「お、おねーちゃん!?」



 突然、美由希はなのはを少し横に押しのけ、恭也の患者服の前を開いた。

 他の面々(特に、年少組みのレン、晶)は顔を真っ赤にして、恭也の鍛えられた胸板を注視した。

 しかし、美由希は強張った真剣な表情でそこを見ていた。

 胸元から肩、腹、腕までをじっと見て、小さく漏らす。



 「恭ちゃんの身体の傷、全部無くなってる………」


 「う、ウソォ!?」


   「えっと、ほ、ホンマや……」


 「恭也、あんたどうしたのそれ?

  フィリス先生の話だと、身体中大ヤケドだったらしいけど……」



 皆の本気の不審気な表情に、全く顔色を変えないまま内心冷や汗をかく。

 高町家の人間だけならば、誤魔化すのもそれほど難しくは無い。

 しかし、この場には美沙斗も居た。

 下手な嘘は一瞬で見抜かれるだろう。



 (むぅ……さて、どう言ったものか)



 考えるが、中々上手い言い訳が浮かばない。

 チラッと、自分を見つめる家族を見遣る。



 (素直に話した方が得策、か……)


 「……実はな―――」



 驚くだろうが、この程度の事では案外簡単に受け入れてくれるかもしれないと考え、正直に話す事にした。










 「へ〜、そやったんですか〜」


 「不思議な事も有るもんね〜」


 「でも、さすがです、師匠!!」


 「おにーちゃん、すごいです!」


 「う〜、恭ちゃんがどんどん人間離れしていくよ〜―――フギュ!!」


 「……いや、おまえたち。

  己が言うのも何だが、感想はそれだけか?」



 取りあえず不穏当な事を言う美由希を沈め、恭也は呆れたように言う。

 内心は気味悪がられ無かった事に一安心しているのだが、ここまで反応が薄いと逆に悲しいものが有る。

 しかし、恭也の声には満場一致(美沙斗を除く)で「「「「だって(恭也、恭ちゃん、おにーちゃん、(お)師匠)だもん、今さらだし」」」」と言われ、かなり本気で落ち込んだ。


 流石に見かねたのか、桃子が恭也に囁くように言う。



 「まぁ、まぁ、落ち込まないの。

  皆それだけ恭也を信頼してるって事だよ。

  どうあっても恭也あんた恭也あんたってね?」



 恭也は少しだけ憮然としたようにそっぽを向き、こちらもまた囁くような声で言った。



 「……ありがたい事だ」



 それが最愛の息子の照れ隠しだと気付いている桃子は、満足げに頷き、



 「うん、よろしい♪」



 と笑った。








 思っていた以上に元気な恭也に、皆余裕が出来たのか色々な話が飛び交う。



 「………む?」



 と、恭也が会話を打ち切り、ドアの外に視線を向ける。

 皆も何事か?とドアに顔を向けると、


 ――― ドカン!!


 と、爆発したような音を立てて、ドアが横に開いた。



 「恭也!!」



 と、同時に飛び込んできたのは、いささか艶を失ったような金髪。

 そして本来なら美しい海色の瞳を真っ赤にし、憔悴した様子の女性――フィアッセ・クリステラだった。



 「恭也!恭也!!恭也!!!

  良かった!夢じゃない!ホントに恭也だ〜!!」



 そのまま泣きはらした顔を、埋めるように恭也に押し付ける。

 その事に、僅かに照れたような、困ったような顔をする恭也。

 体勢的にはなのはの時と変わらないのだが、いかんせん彼女は体型的に大人の女性。

 つまり何が言いたいかというと、……二つの大きなのが当たるのだ。

 しかも今彼女が着ているのは、薄手のワンピース。

 感触的にはダイレクトだったりする。



 「………ふぅ、フィアッセまで。

  ……ほら、もう泣き止んで、これで鼻をかめ」


 「ン〜、グシュ……チーンッ!!」



 が、それも一瞬の事。

 恭也はその感覚と意識を思考から締め出すと、なのはにしたのと同じように、

 備え付けのタオルでフィアッセの顔をぬぐい、ティッシュで鼻をかませる。

 と、突然ドアの外から、ひどく穏やかな声が聞こえてきた。



 「あらあら、ごめんなさいね恭也。

  でもこの娘ったら、昨夜から夢の中でも泣いていてね。

  恭也が目を覚ましたって聞いたときは、すごい騒ぎだったのよ?」



 続くようにドアから現れたのは、髪の殆んどが白くなった高齢の女性。

 ただその目元の笑い皺が、彼女の穏やかさと包容力を如実に現していた。

 その瞳の色は、フィアッセと同じ海色。



 「ま、ママー。

  余計な事言わないでよ〜」



 いまだに目元を赤くしたまま、拗ねたように抗議するフィアッセ。

 祖母と孫ほども歳が離れているが、彼女がフィアッセの実の母親にして、『世紀の歌姫』の名を欲しい儘にしている女性。

 ティオレ・クリステラ、その人であった。



 「ティオレさん……そうでしたか。

  でも二人とも無事で何より―――― ッ!?」



 恭也は二人を視界に収めた瞬間から脳内に流れ込んでくる【情報】を捌き、その中の【情報】の一つに顔を強張らせる。

 先ずティオレの身体の状態が流れ込んできた。

 見た目にはそうは思わせないが、その中身は既にボロボロと言って良い状態だった。


 しかし、それは恭也とて覚悟していた事だ。

 まだ恭也しか知らされていないが、彼女は余命数年と宣告されており、その事実を恭也にだけは話した。

 今回のコンサートを、危険と知りながらも強行した理由にはこれが有ったからだ。

 「フィアッセと同じ舞台で歌いたい」。

 それは、奇しくもフィアッセと同じ願いであった。

 だからこそ、恭也は“護った”のだ、命を賭けて。


 だがら、恭也が真に驚愕したのはそこではない。

 驚愕に強張った理由は―――



 「フィアッセ!!」


 「ふ、ふぇ!?」



 恭也の突然の大声に、フィアッセだけでなくその場の全員が驚いて目を見開く。

 しかし恭也はそんな周りに気を回す事無く、フィアッセを睨みつけている。



 「“フィン”を使っただろう!?

 おまえのアレ・・は命に係わると、あれほど言われていただろう!!」




 その言葉に皆が目を見開いて恭也を見る。

 あの場に居なかったはずの恭也が、何故知っているのか。

 特にフィアッセの反応は大きかった。

 愕然としたように目を見開き、身体を震わせている。



 「恭也?な、何で知って……」


 「何ででも構わん!それよりも、何故使った!?」



 フィアッセの震える声を一喝で押さえ、尋ねる恭也。

 フィアッセを視たとき、【情報】でフィアッセが憔悴していた理由が、泣き疲れていただけで無い事が解った。

 彼女はかつて、その“フィン”を発動させた事で歌えなくなったことがあった。

 その時の彼女の姿を恭也は今も覚えている。

 だからこそ、今ここでこんなにも怒っているのだった。



 「え、えっと……あの、それは、その」



 恭也が本気で怒っている事を知り、半ば泣きそうな表情で視線を彷徨わす。

 しかし恭也の鋭い視線は、全く外れる事無くフィアッセを見ていた。

 重い雰囲気が部屋の中を支配する中で、その声はいやに明るく響いた。



 「その理由、ボクが教えてあげようか?」



 声のするほうを見ると、何時の間にか部屋の窓際に銀色の髪をした女性が寄りかかっていた。

 髪が短いが、フィリスが成長したらこうなるのでは、と思うほど良く似ている。



 「リスティさん……いつの間に。

  ………そうか、テレポートを使いましたね?」



 恭也でも全く気配に気付かなかった理由を探り、すぐに思いつく。

 H・G・S患者には、その特殊能力に『テレポート』が有る。

 特に彼女は(主にイタズラのために)、その能力を良く多用する。


 恭也が険しい視線のままリスティを見ると、彼女もさすがに焦ったような笑みを浮べる。



 「はは、アッタリー。

  っていうか恭也、そんな顔で睨まないでよ。

  フィアッセが“フィン”を開放した理由、ちゃんとおしえるからさ」


 「り、リスティ!!」



 フィアッセが焦ったような声を出すが、これはリスティも無視。

 恭也に表情を真剣なものに変え、顔を近づけて言った。



 「……どう、聞く?」


 「…………………」



 恭也は黙ったまま、表情の窺えない顔でフィアッセとリスティを見比べ、

 やがて、小さく一つ頷いた。










 「…………………」


 「………………」



 事情を恭也が聞いた後からは、誰も一言も話さない。

 恭也は普段よりは幾許か厳しい無表情のままフィアッセを見つめている。

 フィアッセはフィアッセで、まるでこれから怒られる子供のように身体を強張らせている。

 昨夜の事を知っている他の皆も、何も言えずに立ち尽くしたまま二人を見ていた。



 「本気で……」



 やがて恭也が口を開いた。

 さほど大きいわけでもないのに良く通るその声に、フィアッセの肩が跳ねる。



 「本気で、そんな事を思っていたのか?フィアッセ……」



 恭也の問いに、フィアッセは項垂れるように頭を縦に動かした。

 それは、ずっと彼女を縛っていた枷の一つだった。



 「今でも、か?」



 その問いに、フィアッセは沈黙する。

 そして、今はどうなのだろうと考える。

 昨夜リスティに言われた事は、間違いなく彼女の胸に響いた。

 それでも自分のこの黒い羽が、不幸を呼ぶのではないかと考えてしまう。

 結局のところ、この“フィン”は人を簡単に傷付けるだけの力を持っているのだから。


 そんな彼女の思考を見透かしたように、恭也はフィアッセを見つめたまま言った。



 「フィアッセ、確かにフィアッセ達H・G・Sの“力”は、普通の人間には脅威かもしれない。

  その力を使えば簡単に人を不幸にする事も、傷付ける事も出来る。

  そんな力を怖れる事は、別に間違いじゃない」



 そんな恭也の言葉に、フィアッセだけでなくリスティも驚いたように恭也を見た。

 フィンの力を「恐怖」する事が間違いではない、などと言うとは思わなかったのだろう。

 だが恭也は彼女が何かを言う前に、「しかし、」と恭也は続ける。



 「結局は、それだけの話だろう?」



 一瞬、その場の全員が、恭也の言った言葉を理解できなかった。

 フィアッセは両目を見開き、呆然としたように恭也を見つめる。

 リスティも、何か言おうとしたままの間の抜けた表情で固まっていた。



 「フィアッセ、……己や父さんの使う御神流は、結局のところ殺人術だ。

  『誰かを護る』というお題目を掲げても、それが真実。

  いや、そもそも武器なんて使わなくても、この手一本だけでも己は人を殺せる。

  人を傷付け、不幸にする事もできる。

  人なんて、簡単に殺せるんだ………。

  だからこそ、己は己の持つあの二振りの刀が恐かった。

  いつ、自分が“奪う側”に回るんじゃないかと、そしてその因果として、“奪われる側”に成るんじゃないかと」



 それは、皆が強いと言っていた一人の青年の『自分への恐怖』。

 決して涙を見せない、優しすぎるほどに優しい青年の、己への慟哭。

 それを始めて聴く皆は、恭也の無表情の中に何を見たのだろうか。



 「それでもな、己は御神の剣を振り続ける。

  ………何故だか判るか?」



 問いかけてくる恭也の姿に、フィアッセは呆然としたまま首を横に振った。

 恭也は、そんな彼女に幼い子供に言い聞かせるように言った。



 「“護る”ためだ」





 あるいは祈るように、願うように、恭也は言った。



 「大切な何かを“護る”ために、失わないために己はこの剣を振り続ける。

  かーさんを、美由希を、なのはを、晶を、レンを。

  もちろんフィアッセ、おまえもだ。

  家族だけじゃない、己を取り巻く全ての人を己は護りたいから。

  たとえ傲慢だと分かっていても、それでも己は皆が居るこの幸福を手放したくないんだ」



 それが、恭也の願い。

 あの己の“死”を覚悟した中での後悔と、理解できた事。

 それこそが、恭也にとっての何物にも換えがたい想い。


 フィアッセはそんな恭也の言葉を呆然と聴いていた。

 恭也の事を彼女は本心から想っていた。

 それは“家族”へ向けるものではなく、はっきりと思慕の想いとして。

 だが、それでも弟のように思っていたのも確かだった。

 しかし目の前の青年は、ずっと前からこれほどの覚悟を持って生きていたのだ。

 どちらが幼いかなど、比べるまでも無い事だった。


 そして、その感想はこの場に居る全員が感じた事。



   「だからな、フィアッセ。

  自分を、……“フィン”を嫌いになるな。

  己が振るう御神流がすでに己の一部になっているように、

  その“フィン”も“力”もおまえの一部………」



 恭也の言葉が終わる前に、フィアッセは恭也に抱きついた。

 その目に、一杯の涙を浮かべて。



 「うん、……うん、……ごめんね、恭也。

  ううん、違うね………ありがとう、恭也」



 恭也は何も言わず、優しくフィアッセの髪を撫でていた。


 それを見ていたリスティは、誰にも聞かれないくらい小さく、呟いた。

 胸一杯の感謝を込めて。



 「ボクからも、ありがとう、恭也。

  ボクたちの“力”を受け止めてくれて」



 その瞳には、ほんの少し小さな涙が光っていた。
















 

...... to be continue 







あとがき


 はい、というわけで国広です。

 今回のお話は、前回までで紹介しきれなかったキャラを掘り下げるのが目的です。

 ちなみのこの一話で出し切るはずだったんですが、それは次回に持越しです。

 この章も、もう一話追加されてしまいますが、そこは出来れば気にしないでくれると幸いです。

 恭也くんがとある人と出会うことで、この零章は終わる予定なんですが、中々出しづらい。

 では、また次回。







感想代理人プロフィール

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代理人の感想

感動の再会ってとこですな。

まぁそれでもないようですが・・・・というところで続きは次に。