「―――――ジウ!!!!!!!!」

俺は死を覚悟した。

死にたくはなかったが、そこまで強い気持ちではなかった。本気で生きようと思えば、生きれたかもしれないが、そんな気にはなれなかった。

人を殺しすぎて、生への執着心がいつの間にか、希薄になっていたのかもしれない。

それなら、それでいい。

やるだけのことはやった。

実際、ここまで生きれただけ、マシな方なんだ。

それが運命ならば………これが人生ならば………仕方がない。

そんな強がりを………戯れに心の中で言ってみた。

死ぬ間際になって、俺は苦笑を浮かべていた。

魔物の爪は眼前に迫っていた。

その爪が目の前から何の前触れもなく、吹き飛ぶとは誰が予想していただろう?

大きな音を立てて魔物は吹き飛ばされたのだ。

―――助かる!!

その瞬間の俺の反応は速かった。

生きる希望を見つけた俺は残る魔物の攻撃を、転がるようにして逃れた。

視線を上げ、命の恩人の顔を見る。

あの正面にいた魔物を、吹き飛ばしたのは…………白い馬と―――。

「ジウさん!」

俺を拒絶したはずの、虹色の髪をカツラで隠した、あの少女だった。







ユニト……………?

何で、あいつがここに………?

俺の視線は、白い馬から不器用に降りようとするユニトに……あ、上手く降りられなくて、転げ落ちた。

「いたたたた………大丈夫、トル?」

そう言って、白い馬を撫でるユニト…………とりあえず、お前の方が大丈夫なのか?

この状況には不釣合いな光景を、俺は唖然として見ていた。

魔物も、いきなり現われた乱入者に、注意を逸らされたのか、攻撃の手を休めている。

そりゃ、そうだ。俺だっていきなりラドを横から吹き飛ばされれば、混乱するよ。少なくとも、俺も気配を読めなかったわけだし………。

おいおい、ラドまで混乱してるよ。

いや、そんなこと、言ってる場合じゃない。

俺は先程の魔物の死体に、そっと近付き、剣を抜こうとした。

だが、やはり、何かに絡みつかれたかのように、離れない。

俺が失敗を犯したわけじゃないだろう。剣が抜けなくなるような下手な刺し方はしない。

だとすれば、魔物が死ぬ間際に何かしたのだろうか?

まあ、この際、原因はどうでもいいとして、問題はこの剣抜きで、俺とユニトを守れるかどうかだ。

ユニトが、“あれ”をいくら使えようと、あのどんくさい動きじゃ生き伸びるのは、無理だろうな。

俺はナイフを逆手に持った。

本来は投擲用の武器だが、贅沢は言ってられない。

何か、状況が変わればユニトは間違い無く襲われる。相手は俺達を獲物だと思ってるからな。今は混乱しているのか、動きが止まっているが、ご馳走を目の前にしてその手を休めている時間がそう長いとは思えない。

下手に動けば、冗談じゃ済まされない。

そうなれば、一番最初に死ぬのはユニトだ。重大な責任が俺に圧し掛かる。

俺は声を張り上げた。

「ラドッ!!」

ラドにはそれだけで全て通じた。

笑みを浮かべ、近くにいた緑の怪物に向かう。

魔物は焦ったように腕を振り上げ、ラドを薙ごうとする。

しかし、ラドはその腕を避けるどころか………

「よっと」

踏み台にして、魔物の頭上を跳び越す。さらに手で着地すると、また手で地面を蹴って、宙に高く跳ぶ。あの軽やかな動きを、魔物といえど、捉えることはまず不可能だろう。

とはいえ。

………なんて無茶苦茶な……………魔物相手に………まだ、遊ぶか……。

少々、呆れも入ってるかもしれない。

そして、魔物はいきなり動き出した獲物に釣られ、4体がそれを追った。

残る1体は叫び声を上げた俺の元へと向かってくる。

―――よし!!ユニトには注意は行っていない!!

俺は迫る魔物と危険な踊りを舞いながら、後ろに下がり続ける。ユニトから離れるためだ。

正直、ユニトがどうしてここにいるのかは、気になるし、ユニトの“アレ”も使って欲しいと思う。だけど、あいつにはこの集団の相手は荷が重すぎる。

だから、俺が………!

俺は魔物の攻撃を躱しながら、近くにあった木の枝を折った。

人や獣のそれよりも遥かに固いと思われる皮膚に、こんな木の枝が通用するとは思ってないが、ナイフよりは長さがある。

そして、俺の狙う場所は、その緑の気持ち悪い肌じゃない............!!

俺はナイフで魔物の爪を流し…………。

「喰らえっ!」

俺はもう片方の手で掴んでいた枝の、丁度折れて尖った部分を、魔物の一つしかない眼に突き刺した。

白い破片が吹き飛ぶ。

青い血が零れる。

何か柔らかいものが潰れる嫌な感触が、俺の掌で少しずつ快感となる。

愉悦に笑みが浮かんだ。

唯一不満なことといえば、魔物が絶叫も痛がる様子も見せなかったことだが、俺を見失い、顔に枝を刺したまま、適当に腕を振り回す姿は、とても滑稽な風景だ。

まあ、嗅覚も聴覚も並じゃないみたいだからな、俺も危険から逃れたわけじゃないか.........。

だが、少なくとも攻撃の正確性は格段に減ったわけだ。

恐らく、この魔物に命を奪われることはもうない。

ラドと踊っている魔物の四体も、感覚の一部を奪ってしまえば、あるいは逃げられるか............?やってみなければ、分からないが、試してみる価値はある。

その時だった。

「………ジウさん?」

――――あの馬鹿!!

ただでさえ、視覚を失って聴覚と嗅覚に頼っている魔物だ。ユニトの声は小さかったが、獲物と認識されてもおかしくない。

案の定、魔物の動きに変化が見られた。

「ユニト、音を立てるな!!!」

俺はユニトを戒めるためと、魔物の注意をこちらに傾かせておくためという二重の意味を込めて、声を張り上げた。

一度はユニトに振り向きかけた魔物は、こちらの願い通り、俺に向かって跳ぶ。

俺はそれを避け、追い討ちをかけるその爪を受け流す。

―――クッ.........!!

魔物は、こちらの正確な位置を見失ったが、その尋常ならざる力は殆ど変わりがない。

俺は、その骸に突き刺さった自分の剣に、視線をやった。

―――ナイフじゃ、きついな.........。

元々投擲用のこのナイフは、刀身も柄も短く、魔物の攻撃を受け流しきれない。鋭利で固いもの同士がぶつかりあう衝撃を、掌の中で反響させざるを得ない。

肉を斬る感覚に比べ、なんと不快なことか………しかし、いくら不快でも、あの剣が使えない以上、我慢するしかない。

俺は次の攻撃に身構えて、ナイフを押し出した。





魔物を目の前にして、あそこまで戦えるあの二人は本当に凄いと思った。

すでに人間じゃないと言っても過言ではないほど、その戦い方は苛烈だった。二人ともまともな武器ではなく、ほんの僅かな刃しかないナイフで魔物と渡り合っている。

特にラドさんは同時に四匹の魔物と対峙している。

そのラドさんの戦い方は、まるで曲芸だった。

高く宙を舞い、地面を流れるように転び、あの魔物を翻弄している。よく見ると、動き自体は魔物の方が俊敏なのに、ラドさんの方が速く見える。

そうか、ラドさんと比べて魔物の反応が遅いんだ。

だから、あの人の方が速く見える。

ジウさんもラドさんと比べると、余裕はないみたいだけど、眼を潰したのが功を奏したのか、素人の私が見ただけでも善戦してると分かる。

“音を立てるな”とジウさんは言ったが、確かに私が横から余計な邪魔をする必要ないかもしれない。

私、ここに何しに来たんだろう.........?

自分の記憶が正しければ、確か、ジウさん達を助けに来たんだ。それなのに、私のしてることといえば、ただジウさん達の邪魔にならないように、こうしてボーッと立ってるだけ。

思わず溜息がつきたくなったのを、私は必死に堪えた。

その間にも、ジウさんは魔物の後ろに廻り込み、ナイフを突き立てようとする。

だけど………。

「ちっ」

ジウさんは背中に刃物を突き立てる前に、魔物から離れた。

牽制のつもりなのか、ジウさんは腰に手をやると、何か銀色に光る物を放った。

魔物にそれが突き刺さる。

しかし、それはあまり効いていないようで、反撃を行った。

――――何で、離れたの?

今、確実に一撃を加える隙はあったはずだ。にもかかわらず、離れたのは、何で?

私にはよく分からなかった。けれど、ジウさんが何の意味もなく、攻撃の機会をふいにしたとは思えない。

何か意味があるんだ。

ジウさんは、ナイフで体勢を整えたばかりの魔物の攻撃を凌いでいた。上手く避けたりもしてるけど、でも、確実に力は魔物の方が上だ。

少し押されたりもしてる。

でも、ジウさんは簡単にそれを捌いているように見えた………………その瞬間。

パキィィィンンッ!!!

ジウさんのナイフが粉々に砕け散った。

―――嘘............。

目の前の状況がにわかには信じられなかった。

魔物の爪が禍々しく輝く。

その光はまるで、不吉の予兆を表すかのように見えた。

――――ジウさんが死んじゃう…………。

私がこう思ったのも仕方がない。

私の視線は刃のない、ジウさんのナイフに注がれた。最早、ジウさんに生き残る術はない。

嫌だ…………ジウさんを死なすのは―――――――嫌だ!!!!

死の恐怖が、私の理性を吹き飛ばす。

そして、私は叫びだす声を喉で止めることはなかった。





俺の持つナイフはいとも簡単に砕け散った。

けど、予想はしていたので、それを“馬鹿な”とか叫んで、取り乱すことはさすがになかった。大体にして、こんなナイフで魔物と対抗できた方がおかしかったのだ。

魔物の動きを注意深く監察しつつ、腰に残る数本のナイフに手をやった。

こいつだけが相手なら、そこまで焦る必要もなかった。

今はただ、牽制でも何でもして、とにかく逃げておく。

しかし、横から叫び出す声が、俺の感情の動きを強引に方向転換させた。

「世界彩る、銀の弓よっ!!!」

―――まさか“アレ”をやる気か!?

ユニトの声に魔物は振り向き、新しい獲物を見つけたように涎を垂らす。

だが、俺は、そんなことよりも………とても、ユニトの行動が信じられなかった。

扉が開き始めていた。ユニトの取り返しのつかない道への扉が………。

「大罪裁くための蒼き矢をつがえ、今こそ邪なるもの――――」

ユニトのかざした右手に光が灯る。

眩しく、神々しく、かつ激しい蒼の光が、彼女の細い右腕の先に、小さな右手に宿る。

魔物はユニトに向かって走り出そうとしていたが………もう、この状況では無意味だ。

ユニトが最後の鍵を開けた。

「――――打ち払わんっ!!」

その蒼は、空よりも蒼く、その輝きは、月よりも神秘で、太陽よりも強い。

彼女の右腕から放たれた光は、粒子を周囲にばら撒きながら、突き進む。風を切る音さえ立てず、異常な速度で魔物に迫り、世界を、ここにいる全ての魂をも歪ませる。

光が魔物に激突する。

激突した瞬間、光はより明るさを増した。

何が起こったのか、それすらも分からない。

やがて光は消え、そして――――光をその身に浴びた魔物は下半身を唯一残し、上半身を跡形もなく吹き飛ばされた。いや、完全に消失したと言ったほうが正しいかもしれない。

ありえないその威力。

あまりにも一瞬で、あまりにも異常なその光景に………俺はしばし言葉を失った。あの時と全く同じ状況で、あの時と全く同じように。

しかし―――――何故?何で、あいつがそんなことをする?

このことを知ってる俺だけがこの場にいるのならともかく、何も知らないはずのラドがいるんだぞ?なのに、何故見せる?

大体、何であいつが俺みたいな最悪の人間を助ける?

何が、あいつを駆り立てた?

何故………何故だ!?

疑問は流れ出て止まらない。

だが………あいつが、あの力を、惜しげもなく使ったということだけは確かだった。

「“革導”…………?……まさか………“Bag”?」

沈黙の中、ラドが呟いた。

そして、それは…………その言葉は真実だ。

“革導”――――今のように言葉を紡ぎ、今のような超常現象を起こす技術………いや、“道具”としての概念を持つ、それらの総称。

主に人を殺すことを主目的とした―――つまり、武具としての扱われ方をなされるらしいが、それらを使う人間――――“Bag”と呼ばれる者たちの数がかなり少ないので、はっきりとしたことは多くを知られていない。

ただ――――あれが“革導”だということは、あいつが“Bag”だということは、確かなんだ。

俺はそれを知っていた。

そして、いくらでもユニトを止められた。ならば――――止めるべきだったのだ。

なのに………止められなかった。

ラドがあいつのような人間を利用する奴じゃないとはいえ、この“力”の異常さは――――常識では量れない。

だからこそ―――ユニトは………酷い目にあってきた。無論、最大の原因は虹色の髪にあるが………。

掌に残る、肉を斬った快感にも、強い衝撃を受けたの不快さにも、今は何も感じなかった。

だが、罪悪感は不思議とない。後悔も………。

ユニトの表情をチラリと見た。

脚や肩はわずかに震えているにも関わらず、その表情は喜色に染まっていた。

ユニト自身、自分が何をやったのか分かっていないだろう。

恐らくは魔物を倒した快感に………いや、それはないか。俺じゃあるまいし、あいつがそんなことで快感を得るとは思いにくい………思いたくない。

あの時――――ユニトを助けようとした俺の言葉が意味のないものだとは………思いたくない。

まあ、せいぜい“喰われなくてよかった”程度のものだろう。

しかし………ユニトが状況を完全にひっくり返したとは言いがたい。

魔物は残りまだ四体。知識も何もなさそうな魔物とはいえ、ユニトに対する危険意識は持ったかもしれない。となると………

―――ユニトに対して攻撃を仕掛けてくる可能性があるか.........。

守るしかないか.........!!

俺は新しいナイフを抜くと、ラドと未だに戦い続ける魔物の方に向けて視線を移した。

そして駆け出そうとしたその時………再び、ユニトの声が響いた。

「――――世界彩る――――」

まだ………やる気なのか……あいつは?

もう、いいだろうに.........。

少々の不安が、俺に圧し掛かる。

「軍神に仕えし赤き狼共よ………」

何処から現われたのか、ユニトの周りを、無数の不思議な赤い粉が飛び舞い始めた。恐らく、“革導”の前兆だろう。

それが、ユニトのこれから使う“力”の神秘さと恐怖を更に醸し出している。

伝説にも似た世界。神話にも出てきそうな所業。

まさしくそれは作り話か、詩にでも出てくるような光景だった。ただ、これは確然たる事実なのだ。

「爪立て、吠え、牙剥き、叫べ」

赤き不思議な粉は、やがていくつもの円を描き始める。

その円の中心に、赤い焔がそれぞれに並び立つ。

さっきの“革導”とは違い今度は何かが擦れるような音がする。

でも、どうする気だ?残った魔物はラドを囲むようにして、戦っている。ユニトはラドを巻き込むつもりか?

疑問を抜き言葉は流れる。

「その猛き群れ率いて、汝の獲物を………喰らい尽くせ」

ユニトは、先程とは打って変わって静かな声で言葉を紡ぐと、いくつもの円から堰を切ったように赤い焔が吐き出される。

それもただの焔ではない。

球の形に固められた不可思議な、普通ならありえない焔だ。

それが凄まじい音を立てながら、ラドを包囲する魔物の群れに、襲い掛かる。

ラドも見た限り反応こそ出来たようだが、その場から動くことは出来なかっただろう。

一瞬でその場が焔に包まれる。凄まじい熱が、光が空気を燃やす。

そこに慈悲というものは存在しない。

魔物は完全に焼け死ぬだろう。

これで、終わった。

だが………ラドはどうなった? まさかとは、思う。しかし、あれでは巻き添えになることは必至だ。

ユニトと至っては笑みこそ浮かべてないものの、その表情は“明るい”の部類に入るものだった。

こいつは―――ラドごと焼き尽くすつもりだったのか?こいつはっ!!

思わずユニトに近寄り、首根っこを掴んで揺さぶりたくなったが、その衝動を必死に押さえる。

ユニトが使ったのは“革導”だ。常識を超えた現象を作る“力”だ。………少なくとも、どうこうするのは、死んでいるにしろ、生きているにしろ、ラドを見てから決めればいい事だ。

焔が止み、白い煙が急激に立ち昇るのを俺は見ていた。

鶏や豚や牛などのような………肉の焦げる臭いが漂い始める。

ラドは死んだのだろうか?それとも生きているのだろうか?

多少の希望と不安――――が俺の目の前に横たわる。

だが、俺はここで予想を大きく裏切られた。

「え?」

風に暴かれつつある煙の隙間から見えるのは、四つの焦げた魔物の死体だけだった。

煙が完全に晴れ、どこをどう探しても、金髪の軽薄そうな笑みを浮かべる男の姿どころか、人間だったと思われる黒炭すら見当たらない。

………消えた?

それとも、あまりの熱に溶けたのか?

ユニトも明るい表情が引っ込み、不安そうな顔になっている。

一体、どうなっているのか………何が何だか…………。

「おいおい、ユニトちゃん。いくら直接当てないにしても、煙で死ぬことだってあるんだぞ。蒸し焼きになることもあるし」

は?

俺はその声に上を見上げた。

丁度、焼死体の後ろの木の頂上に、ラドが器用に座っていた。

生きてたか…………。

きっと、あの焔が魔物たちに直接当たった後にでも、飛び登ったりでもしたんだろう

当たる前に動いたら、それこそ巻き添えになる可能性だってある。

いつもと変わらない、その軽い姿勢に俺は思わず溜息をつきたくなった。まあ、少し安堵も入ってるかもしれない。

何だかんだ言っても、俺はこいつのことを信頼してるし、尊敬もしてるだろう。だからといって、こんな大人にはなりたくないが。

一番の問題が解決したわけではないが…………。

「ごめんなさい............」

その一番の問題が、しゅんとなってラドに謝るのを俺は横目で見ていた。

こいつに、“革導”を使わせた………問題はそれだった。

ユニト・ラストマジック。

俺はあいつをどうすればいい?そして、あいつをどう扱えばいい?



誰か、教えてくれ...............。



魔物の死体を見回しながら、俺は心の中で語りかけていた。







「二回か………」

あの娘が“革導”を使った回数。

何を、何処で、何故、使ったのかは知らないが、あの子にとって有意義なことに使ってくれていればいい。

それが、その“力”の使い道だから。

「貴様、話を聞いているのか?」

「ああ、すまないすまない」

黒いマントを羽織った数人の男を前に私は不敵な笑みを浮かべた。

あの娘を追っているのかな?と思って話し掛けたら、大当たり。本当に“先生”は人選を間違っている。

まあ、過保護な親でこの者達には申し訳ないが………。

「何がおかしい?」

いや、何でもないよ――――と言おうとして、私は止めた。顎に手をやり、少し考え込む仕草をわざと見せる。

「何がしたい?」

男の一人が苛立ちを隠さずに言う。

「いや、メ…………」

私の声は男達の放った刃によって途中で遮られた。

私はその刃を躱すと同時に、つい近くの民家を借りることにした………勿論、床として。

だが、彼等とて素人という訳ではない、近くの民家に飛び乗ると、じわじわと私を包囲していく。

「さすがに、動きは悪くないな」

さて、どうしたものか。負けるとは思えんが、この数だ………正直面倒臭い。

仕方ないから“革導”で一掃するか。うん、それがいい。

「世界彩る、白き衣来た虹色の天使よ.........」

今日は娘に会うことが出来たから………その記念ってことで、この“技”を使おう。

「創世の絵を滅ぼし、創世の詩を壊し、創世の曲を消し去れ………」

赤の光が、橙の光が、黄の光が、緑の光が、青の光が、藍の光が、紫の光が、周囲を飛び交い、拡散し、形を変え、また混ざり合う。

男達は一瞬で、その命を絶たれ、物言わぬ死体となる。

いや、その死体すら次第に消え去っていく。

数多くの“革導”の中でも威力の高い部類のものを使ったのだ。そうでなくては困るところだが。

やがて光が収まり始める。

私は空を見上げた。鳥が鳴き、風がそよぐ日常。

私は娘が、決して日常とはなりえないという不幸を与えてしまったのかもしれない。

だが、ユニト、決して道を、“力”を誤るな。



お前はその為に生まれてきたんじゃない。決して――――







後書き



ども、皆さん明けましておめでとうございます。あなたの知らない人です。

うーん、今回も全然駄目でした。このままだと少し危険かも。盛り上がりだけじゃなくて、行動描写が基本的に苦手なんでしょうか………かなり、苦しいです。

次回で挽回できれば、いいんですが、次回も駄目かも………頑張るしかないわけですが。

>どちらにしてもいろいろな文章を読んで………

ネット小説はいくつか読んでますけど、文学作品となると、全然………。休み明けに学校で借りますか.........。

では、ここまでお読みくださいまして、どうもありがとうございました。次回もお付き合い頂ければ幸いです。



 

 

感想代理人プロフィール



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代理人の感想

今回はメリハリがそれなりに利いていたかと。

なんでかっていうと「革導」のおかげですね。

今まで剣や鉤爪やらでチャンチャンバラバラやってたところにいきなり全く未知の要素が転がり込んできて、

そこでがらりと雰囲気が変わったと。

メリハリってのは誤解を恐れずに言えば「雰囲気に差がある」って事です。

異なる二つの雰囲気が存在してその前後で変化がおきる、「起承転結」の「転」があるって事ですね。

シーンの最初から最後まで同じ雰囲気で行くんじゃなくて、最初はゆっくりと、クライマックスで盛り上がるものなんです。

ですから、例えば盗賊相手の戦闘にしても「最初苦戦→その後逆転優勢に」とか、

「最初は気だるげに、無機質に盗賊を斃す→途中から熱狂して、殺人を楽しむような戦い方をする」などの

変化と変化するポイントを考えてみるのがよろしいかと。