< 時の流れに >

 

 

 

 

 

第七話.サイド・ストーリー

 

 

 

 

 

 ・・・僕はこの八ヶ月を振り返って、心に思う事はただ一つだけ。

 何処で洗濯を間違えたんだろう?

 

 あ、既に選択の漢字が間違ってるや。

 

 

 

 僕の名前はマキビ ハリ

 今は仮の親だけど、優しい両親の元で日々の生活をしている。

 初めて自分が過去に戻ってる、と知った時・・・

 僕は歓喜の涙を流した!!

 だって、今ならルリさんの心のスタートラインに、彼は存在しない!!

 なら僕が、その地点に立つ事も可能なはずだから!!

 

 僕は何も考えずに、ルリさんにコンタクトを取った。

 

「艦長・・・いえ、ルリさん!!

 僕の話しを聞いて下さい!!」

 

「煩いですよ、ハーリー君。」

 

 ・・・僕の野望は開始10分にして終った。

 

 

 

 

 で、今は何故かルリさんの頼みでラピスの手伝いをしている。

 ・・・しかし、ラピスと僕のやってる事って。

 

 

 バレたら、かなり危ない事じゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・

 

 

 でも!! 僕は頑張りますルリさん!!

 何時か胸を張って、貴方の待つナデシコに乗ってみせますからね!!

 

(ハーリー・・・煩い。)

 

(・・・ごめんなさい。)

 

 

 

 

 でも、近頃思うんだ。

 ルリさんはラピスは昔の自分だ、って言うけど。

 ・・・ラピスは本当に人形みたいに、僕の質問に受け答えをするだけ。

 僕には感情の存在を感じられない。

 それに僕と一緒に作業をするのも、例の彼に言われたからだ。

 彼の言葉が無ければ、僕の存在をラピスは無視するんだろうな・・・

 

 

 でも・・・それはそれで、ファイトが湧いてきたぞ!!

 例の彼は昔のルリさんに感情を教えたらしい。

 なら、僕はラピスに感情を教えて、彼に負けていない事をルリさんにアピールしてやる!!

 

 

 そして、僕の壮大なプロジェクトが始まった。

 

 

 

(ラピス、たまには研究所から出てみない?)

 

(ハーリー・・・煩い。)

 

(・・・ごめんさい。)

 

 ・・・サブロウタさんの嘘吐き

 女の子は遊びに誘われると喜ぶ、って言ったのに。

 

 

 

(ラピス、面白い話しがあるんだけど。)

 

(ハーリー・・・煩い。)

 

(・・・ごめんさい。)

 

 ・・・サブロウタさんの大嘘吐き

 付き合いの第一歩は会話から、って言ったのに。

 

 

 

(ラピス、あのね (ハーリー・・・煩い。)

 

(・・・ごめんなさい。)

 

『ハーリー、どうして笑いながら泣いてるの?』

 

(はっはっはっ・・・これは青春の涙なんだよ、ダッシュ。)

 

 僕の壮大なプロジェクトは開始一時間で終った。

 

 ・・・何が壮大だったんだろう?

 

 

 

 

 そして・・・最大の過ち・・・

 ルリさんの乗るナデシコが、火星から消えてから一ヶ月。

 ラピスの表情は常に暗いままだった。

 

(ラピス・・・)

 

(アキト・・・帰って来るよね。)

 

 独り言だけが僕への返事。

 ・・・ここまで、ルリさんやラピスに慕われてる彼。

 テンカワ アキト

 一度・・・会ってみたいな。

 

(ねえ、ラピス。

 昔、ナデシコCのオモイカネに聞いたんだけどね。

 この頃のテンカワさんは、良くアニメを見ていたそうだよ。

 ・・・気晴らしにダッシュに何か見せて貰ったら?

 今日の残りの作業は、僕がやっておくよ。)

 

 今にも消えてしまいそうなラピスが、僕には心配だった。

 この言葉は打算からでなく・・・

 僕の本当の心からの言葉。

 

(・・・うん。

 そうする・・・有難う、ハーリー。)

 

 だから届いた、ラピスの心に。

 ・・・そして、この事をキッカケに僕とラピスの関係が、少しだけ良くなったんだ。

 

 

 

 が!!

 

 

(・・・イデの意志が。)

 

(・・・ラピス、そのアニメは最後まで見ちゃ駄目だ!!

 

(・・・そうなの?)

 

 どうしていきなり『イデ○ン』なんだよ!!

 ・・・全滅モノじゃないか!!

 

 

 

(・・・悪しきオーラ力(ちから)が満ちる。)

 

(それも駄目!!)

 

(・・・そうなの?)

 

 だから『ダンバ○ン』も最後はアレなんだって!!

 ・・・ダッシュ、君はどんな選別をしてるんだい?

 と、言うか富○系の作品は、初心者にはキツイ!!

 

 

 

(ハーリー・・・逃げちゃ駄目、逃げちゃ駄目、逃げちゃ駄目。)

 

(・・・それも最後までは絶対に見ちゃ駄目。)

 

(私が何を見てるのか知ってるの?)

 

(・・・エヴァ○ゲリ○ン、でしょ?)

 

(・・・当り。)

 

 ・・・手を変えて来たなダッシュ。

 

 だ・か・ら!! ジェノサイド系から離れてよ!!

 君までが僕を苛めるんだな、ダッシュ!!

 僕の気持ちを裏切ったな!!

 誰か僕をかまってよ!!

 

 

 

『・・・ハーリーの方が精神不安定だと思う。』

 

(ダッシュ、私も同感。)

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・この頃、ラピスの勘がやたら鋭い。

 何があったんだろうか?

 

(ハーリー、そこ間違えてる。)

 

(あ、本当だ。

 ・・・見ていないのに良く解ったね?)

 

(私には見えるの。

 ・・・人は解り合えるの。)

 

(・・・ラピス、君はニュータイプにはなれないと思うよ。)

 

(・・・)

 

 ダッシュ・・・君って・・・

 無理に僕の予想から外してるのかい?

 もっと明るくて、楽しくて、勉強になる・・・

 そんなアニメを探してよ。

 

 

 

『・・・解ったよハーリー。』

 

 

 

 

 そして・・・惨劇。

 

(ラピス? ラピス?

 あれ、今日はネットに上がって無いのかな?)

 

 作業開始の定時はきてるのに。

 おかしいな?

 

 

『いくよラピス!!』

 

 

(おわ!!)

 

 

(うん、ダッシュ!!) 

 

 

(へ? へ? へ?)

 

 

『東方○敗は!!』

 

 

(王者の○よ!!) 

 

 

(ま、まさか・・・ダッシュの奴!!)

 

 

『全○!!』

 

 

(○列!!)

 

 

『天○!!』

 

 

(○乱!!)

 

 

(あ、あああああああああ・・・・・

 やっぱり。)

 

 

『(見よ!!

 東○は赤く燃えている〜〜〜〜〜〜!!)』

 

 

『ラピス〜〜〜〜〜〜!!!!!』

 

 

(ダッシュ〜〜〜〜〜!!!)

 

 

 

(・・・僕、今日は帰るね。)

 

(あ、今日は帰っちゃうの? サイ○イシー?)

 

 

(誰がサイ○イシーだよ!!)

 

 

『また明日、サイ○イシー』

 

 

(・・・お休み、ラピス、ダッシュ)

 

 

 

 

 

 

 確かにラピスは明るくなったよ。

 ・・・恐いほどにね。

 

 確かに僕との仲は良くなったよ。

 ・・・今じゃ遊ばれてるけどね。

 

 確かにダッシュに僕は言ったよ。

 明るくて、楽しくて、勉強になるってね。

 ・・・G○ンダムを持ってくるとは、ね。

 

 今はいいさ、僕が我慢すればね。

 ・・・ルリさんとテンカワさんに、何て言うのさ?

 ラピスにアニメを薦めたのは僕。

 それは事実だ。

 

「・・・もう直ぐ八ヶ月、か。」

 

 今、僕は痛切に願う。

 もう一度過去に戻れます様に、と。

 

 

 

 

「アキト〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

「ほ、本当にラピスなのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第八話に続く

 

 

 

 

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