はじめに

残虐な表現が一部混じっているところがあります。一般にはそこまで不快を抱くレベルではありませんが、そういった事が嫌いな方は御注意ください。

なお、このSSは人物ごとの視点がころころと入れ替わります。<人名>といった表現がありますので、それを参考にしてくださればと思います。

では、いざ作り物の世界へ・・・・・・




長い旅路の果て



プロローグ (1)







戦いはあっけなく終わった。少なくとも当時生きていた人間のうち、どちらかといえば平穏な方の空間に生きる人々―――俗に一般人と呼ばれる―――はそう感じたに違いない。彼らにとって一連の事態、『火星の後継者事件』はあまり代わり映えしない日常に驚愕と興味というエキスを加えた、そんな程度にしか感じようが無かったのだ。事態はまさに映像の中、モニターの向こう側で起きたものに過ぎない、手に取りようが無いものだった。

だが―――全人類より見ればほとんど無視できる程しかいない少数の当事者達にとっては、この事件はあまりに重すぎた。特に事態を解決させたナデシコCのメインクルー及び大企業ネルガルの上層部―――暗部、裏の顔とでも言い換えた方が良いだろうか、その人間達にとってはこの事件の解決はまだ全ての終わりを決して意味する事ではなかったのだ。

Prince of Darkness―――闇の王子様。ネルガルの秘匿戦艦ユーチャリス艦長兼機動兵器『ブラックサレナ』パイロット、テンカワ・アキト。彼は北辰を撃破するとユーチャリスと共にいずこへかと消え去った。傍らに”電子の魔女”ホシノ・ルリを伴って―――


火星遺跡直上での決戦。遺跡より切り離されたミスマル・ユリカを待っていたのは自身が遺跡と融合、利用されている間に起きた悲劇の事実。「アキトはどこ?」と呟いた彼女はその後収容されたナデシコCの医務室でイネス・フレサンジュより十時間にも及ぶ説明を受けたのだ。それはあまりに彼女にとっては哀しすぎる事実だった―――




<ミスマル・ユリカ>

溜息をつく。説明を受けている間に流した涙の量はあまりに多く、もはや枯れ果てていた。イネスさんの去った病室で私は今までの事を振り返る事にした。心は痛い、泣きたいのにもはや泣けないぐらい泣いてしまったのだから。こんなに泣いた事は人生で一度も無かった。だが、私が今傷ついた2人の為に出来る事はこのくらいなのかもしれない。

イネスさんも最終的に私の事を思ってこんな事を説明してくれたのに違いない。彼女にとってもアキトは大事な人であるはずだ、こんな事を告げたいはずも無いのだ。病室を去る時、彼女の目には堪え切れない涙の跡があった。あれほど説明好きのイネスさんでも、今日のような説明―――アキトとルリちゃんの身に起きた事をずっと話していく事は辛かったのだ。

だから。私も今出来る事をする。本当に2人に会いたいから―――



「アキトは私の王子様」

そう言って、私はいつもアキトを追いかけてきた。私にとっては紛れも無くそれは真実だったつもり。王子様だったのだ、アキトは私にとってかけがえの無い存在。だけど・・・・・・

「アキトは私が好き」

私はそれを疑いもしなかった。アキトの気持ちを考えた事が無かった。いや、彼は確かに私を好いてくれた。だけど、それだけだ。最も大事な事がそこには欠けていた。

そう。私はアキトを見ていなかった。私が見ていたのは王子様。私が勝手に押し付けた幻影だけを追いかけていた。

愛される事を知って愛する事を知らなかった私。身勝手すぎた。

こうして彼がいなくなって、初めてその事に気付いた私。艦の指揮は出来ても、誰にも考え付かない作戦を組み立てられても―――無意味だった。愛する事を知らなかった女なんて。楽しいようで、無駄な人生を今まで生きていたのかもしれない。


それでもアキトは私を愛してくれた。王子様でいつづけてくれた。私を『ミスマル・コウイチロウの娘』ではなく、『ミスマル・ユリカ』として見てくれた。


とてもやさしくて、そのやさしさで自分を傷つけてしまう人。今になってやっと良くわかる・・・・・・



ルリちゃん。私の妹―――少なくとも、火星の後継者達に拉致されるまでは、そんな関係のはずだった。私はそう思い込んでいた、利己的に、一方的に。

人形のような彼女。はじめて会ったときの印象。感情を表さない、人よりもずっと機械に近い、無機質な外見、そして心。名前に相応しく、瑠璃色の髪と金色の瞳を持った、物を言う人形。

だけど彼女は、だんだんと変わっていった。しだいに感情を表すようになったルリちゃんはすごく可愛らしかった。ナデシコの風、多数の大人達に囲まれて、ルリちゃんは人間としてはじめて生まれたのかも知れない。

そして、アキト。何よりアキトがルリちゃんを変えたのだろう。アキトは、優しいから・・・・・・


アキトはいつもルリちゃんを気にかけていた。ルリちゃんはそんなアキトに惹かれていった。考えてみれば当然のその流れも、私には見えなかった。

思い返してみれば、私とアキトの結婚が決まった時、ルリちゃんの様子がほんの少しおかしかった。自分の好きな人が他の女と結婚するのだから、そうあって当然だった。

でも、ルリちゃんは、『お幸せに』といって微笑んでいた。『大切な人が幸せなら』そう思っていたのだろう。そんなルリちゃんを私は無邪気すぎた笑みで傷つけていた。


そんな私を『大切な人』だと言ってくれたルリちゃん。痛む心を決して私に見せずに、祝福してくれたルリちゃん。アキトと同じ、あの娘も自分のことより相手のことを想ってしまう人。



そんな2人。身を、そして心を省みずに私の為に戦ってくれた。私の為に第一の犠牲者になってくれた。目的の為に何万人もの人の血で手を染めて、それでも私を助けてくれた。

2人に比べて私はどうだろう。相手に愛することを要求するだけで、相手の重荷になるだけで。当然のように愛を求めて、見返りを求めずに私に尽くしてくれたアキト。心を置き去りにして、私の妹であってくれたルリちゃん。

これでは、私は二人の重荷でしかない。



夜が明ける。ナデシコCはボソンジャンプで地球に戻ってきていた。壁面のモニターを通して光が私の病室に差し込んでくる。画面越しのその光―――だけど、私には温かかった。

気付く事が出来てよかったと思う。何も出来ない私、でも2人の為に出来る事がある。

2人の全てを受け入れよう。そして抱きしめよう。

実際には難しい事だった、2人は大量殺人者、今も逃亡中の身なのだ。だけど、諦めてはいけないと思う。何かが、私の中の何かがそうすべきだと囁いていた。




喪われた楽園は決して元には戻せない。アキトもルリちゃんも、そして私も変わってしまったから。でも、今の私には決意があった。少しだけだけど、大人になれた。

新しく3人で楽園を築き上げる。どんな方法でも、たとえ皆から非難されようとも。私の手は2人に対してあまりに綺麗過ぎた、一緒に生きていく為にはそのくらいの非難は受けなければならないと思う。

きっとこの想いすら、決意すら身勝手なもの。でも、初めて私は女になれそうなのだ。人を愛する事が出来るかもしれないのだ。お父様や仲間たちに迷惑をかけるだろう、いや悲しませることになるかもしれない―――それでも、今度こそ自発的に身勝手に生きる事に私は決めた。だから・・・・・・


「私がナデシコC新艦長、ミスマル ・ユリカです。ぶいっ!!」









<ルリ>

黒いコート。それをハンガーに掛けると、私はそのまま倒れるようにベッドの上に横たわりました。昔ならどんなに疲れていても、きちんと身の回りを整えてから寝たに違いないのに。でも、それはもう遠い昔の事でした。

目を閉じる。すぐに睡魔は襲ってきました。睡魔の見せる夢は―――いつもは悪夢。でも、今日は少し違いました。過去の出来事、それが夢の見せたもの・・・・・・


私は実験体でした。

コンピューターを扱う為に、いえコンピューター自身の端末になる為だけに教育を受けた私。そこにあったのは、無機質的な、冷たいものでした。

楽しみも悲しみも知らない。人の心を理解しようという意識すらない。周りの人間を醒めた―――いえ、冷めた目で見ていた、有機質で出来たコンピューター。

そんな私を変えてくれたのはナデシコのみんな。でも、そのうちでもアキトさんは特別でした。アキトさんのおかげで、私は人形から人間になることができました。アキトさんがいなければ、今でもただの人形だったでしょう。


ナデシコを降りてから、アキトさんとユリカさんと三人で暮らしていた頃。それは私のもっとも幸せな日々でした。楽しそうに屋台を出していたアキトさん。はしゃいでいたユリカさん。そして手伝っていた私。笑いあっていたあの頃。自然な日常は私に誤解を与えました―――曰く、この幸せがいつまでも続くと。



けれどもその幸せは突然終わりを告げました。

アキトさんとユリカさんが新婚旅行に出発する日。アキトさんを知らないうちに愛していた私は、ほんの少しだけ複雑なものを抱えたまま2人を見送っていました。でも、その時はよかった。2人はまだ幸せで、私には救いがあったから。でも・・・・・・

爆発。私の目の前の、シャトル。アキトさんとユリカさんの乗るものでした。私は何も考えられずただ立ち尽くしていました。


私は泣きませんでした。いえ、人形に戻ってしまいました。葬式の後私を引き取ってくれたミナトさんの家で、私はミナトさん達の気遣いを一切拒絶して、ただこの世に存在するだけでした。



3ヵ月後。私の姿は宇宙軍の最新鋭実験戦艦ナデシコBの艦長席にありました。

どうでもよくなった私。ミナトさん達の反対を押し切って艦長の職を引き受けたのは、あるいは死にたかったからかもしれません。戦場が、私を殺してくれると。

ナデシコBの皆はいい人ばかりでした。小娘の私の命令を受けて、2、3の事件の解決に付き合ってくれました。私と同じIFS強化体質の子や元木連優人部隊の人は私をいろいろと気遣ってくれました。でも、私は相変わらず艦長という名の、人形でした。



その生活すら、私には長く続きませんでした。きっと神様に恨まれているんですね、可愛げの無い私を最大限傷つけようと、4ヶ月後にそれは起きました。

編み笠を被った7人。爬虫類の目をした男。私の意識はそこまででした。



目を覚ました時。私の視界はぼやけていました。いえ、色もありません。

そんな無力な私に話しかけてきたのは、事故で死んだはずのイネスさんでした。最初「ああ、ここが天国なんだなぁ」と思ったくらいです。でも、哀しい事に現実でした。

私は火星の後継者という名の組織に誘拐され実験体にされていた所をネルガルシークレットサービスに救出されたと教えてくれました。私が誘拐されてから一ヶ月たっているとも。私はずっと眠らされていたようです。

“奴ら”の実験のため、私の視覚に障害が出ていました。色覚を完全に失い視力そのものも衰えていました。それだけじゃなく、身体全体がどこか重い気もします。

私は自分の身体についての説明を聞き流していました。自分の身体についてまるっきり無関心でした。世界そのものが無意味でした。生きている意味が無かったから。

そう、次の一言を聞くまでは・・・・・・・。

「アキト君は生きているわ」



アキトさんと私の救出は同時だったそうです。でも、アキトさんの方がずっと容態が重かった―――五感をほとんど喪い、その為自分の身体で立つ事も叶わないと。薬で眠らされているから、まだアキトさんが気付いていないのは幸いでしたが。

そんな私への提案。アキトさんを助ける方法。それは感覚を補う為のリンクでした。

「でも、欠点もある。成功するかどうかもわからないし、第一あなたの精神が耐えられないかもしれない。相手の感情や記憶も感覚と一緒に流れ込んでくるから」

でも、どうでもよかった。アキトさんしか、私にはいなかったから・・・・・・



リンク処理を受けた後、目を覚ました瞬間―――私の中に膨大な情報が流れ込んできました。アキトさんに関する全て、実験で受けた苦痛も、張り裂けそうな感情も私は受けました。一身に、発狂しそうなぐらい。


私が押しつぶされなかった理由。心が壊れなかったのは、ただアキトさんの事を思っていたから。私が発狂したら、アキトさんは自分を責めたでしょう。

ただでさえ絶望で一杯なアキトさんの心。だから、壊れるわけにはいきませんでした。アキトさんを壊す事なんて出来なかったから。

アキトさんを護らなければならない。私は心の鎧となる事を決意しました。



そんな私の決意が試される日は、唐突に訪れました。

私の部屋に押しかけたアキトさん。私を乱暴に拘束すると、無理やり唇を奪いました。腕に食い込んだアキトさんの爪。全てが終わった時、私は文字通りボロボロでした。

でも、私はアキトさんを恨めなかった。憎めなかった。心に流れ込んでくるアキトさんの感情を知ってしまったから。

私を抱いているときアキトさんはずっと自分を責めていました。全部自分のせいだと。こんな自分など無くなってしまえと。初めて経験する痛みの中で、私はアキトさんの心の声を聞いていました。

私にはわかりました。アキトさんは自分を壊そうとしている。私に憎まれれば、アキトさんには何も残りません。だから、それだからこそ私は嫌いにはなれませんでした。

それはロマンスからは遠いもの。だけど、それで私はよかった。獣じみた2人の行為は、それからも何度も行われたけど―――段々とアキトさんは落ち着いていきました。そして2週間後、私に言ってくれた―――「ルリちゃんのお陰だよ」と。嬉しかった。


私は何があってもアキトさんと歩みます。なぜなら

私はアキトさんの目

アキトさんの耳

アキトさんの手

アキトさんの足

アキトさんと私は一心同体

アキトさんが私のすべて

私はアキトさんの鎧、そして剣




私たちは戦う事にしました。ユリカさんを取り戻す為、そして復讐の為。

アカツキさん達は色々と私に言ってきました。でも、私は押し通しました。結局ネルガルは持てる限りの力を使って私たちを応援してくれました。感謝しています。

がむしゃらな特訓。私は吐血すらしました。でも、得なければならない力は大きく、魅力的に映りました。その為だったら何でも出来ました。CQB(室内近接戦闘)を中心とする戦闘技術、諜報技術、そしてエステバリスの操縦。

アキトさんは木連式柔や抜刀術を月臣さんより学び、私は名すら知らぬ師匠より暗殺術を学びました。毎日熾烈を極める鍛錬。師匠は決して私を容赦しませんでした。道場で気を喪うまで、寝る時を惜しんで行われた鍛錬の日々。成果はありました。今では寝ていても、人を殺せる事でしょう。

2人とも素質があったらしく、僅か1年でどちらも皆伝を受け取りました。でも、私にとって、これは複雑でした―――こんな事件が無ければ、開花しなかった才能だから。



それから、一体どれほど戦い続けたのか。殺し続けたのか。

ネルガルで極秘開発された追加装甲ブラックサレナ。そして戦艦ユーチャリス。私たちのために作られた武器でした。これらを駆って私達はコロニーを襲撃し続けました。


私もアキトさんも身体能力が格段に向上していました。どうやら実験の際に打ち込まれたナノマシンの数々が原因だったようです。アキトさんと私のリンクが深くなってしまったのもナノマシンが原因のようなのですが・・・・・・イネスさんを以ってしても解明できなかったみたいです。

更に驚くべき事に私は単独ボソンジャンプが出来るようになっていました。一体どうしてなのか、よくわかりませんが・・・・・・やっぱりナノマシンのせいなのでしょうか。



襲撃した火星の後継者の研究所。計画の妨害の為に何度も襲いました。執拗なまでに。

警備兵、そして愚かな研究者を殺す時、それは私にとって単なる作業に過ぎませんでした。教えられたままに、身体が覚えているままにただ刃を振るいます。1個小隊で私を囲んでも無意味でした。直接この両手で殺した人間だけでも千人を下らないでしょう。


殺気すら消し去った私。その私が殺気を露にした時が一度だけありました。

ヤマサキ・ヨシオ。ジャンパー実験を指揮していた男、そしてアキトさんを傷つけた男。

生まれてはじめての憎悪という感情。必死に命乞いする男を前に私は言いました。

「五感があるだけ感謝して欲しいです」

誰もいなくなった研究所に響く絶叫。私は人をどうすれば殺せるか熟知していました。逆に言えばどうやれば人を死なせずに傷つけるかも、当然のように。空気を吸うかのように。

私はその男をゆっくりと切り刻んでいきました。鼻を削ぎ落とし、両手両足の指を間接ごとに切断し。皮膚を浅くナイフで切り裂き、剥ぎ取り。目を抉って耳を切り落とし。

まるで料理をしているようでした。憎悪という感情さえ抜きにすれば。何度もヤマサキを覚醒させて、生きたまま四肢を切断して、最後に研究所に置いてあった強烈な酸を振り掛けました。

気付いた時、目の前にあったのはかつて人間だった、肉片にまで解体された何か。

泣き喚き命乞いする様を嘲笑っていた自分。激痛に苦悶する様を、愉悦を浮かべて見ていた自分。私は確信しました。もう戻れない、昔の自分は死んでしまったと。昔の自分を知る人ほど私がこんな事をするとは想像どころか、理解も出来ないだろう。


でも、怖かったのは自分が変わってしまったことではなく、こんな自分を知られてアキトさんに嫌われること。リンクのため考えたことはすべて伝わる。血に狂っていた自分がどう思われるかが不安でした。だけど、アキトさんは私を抱きしめてくれた―――けして嫌いになったりしないと・・・・・・私はアキトさんの胸で泣きました。あの時以来、はじめて。



ナデシコC、そしてユーチャリスによる電子制圧によって火星の後継者は降伏しました。そしてアキトさんは北辰との決着をつけました。火星を去った私たち。

それからも残党を狩り続けました。そして、地球圏を混乱の中に陥れもしました。クリムゾングループを叩き、繋がっていた政治家を、軍人を失脚させました。その中でも何人かは直接私が殺しました。話されては困る事があったからです。決して私達も正義ではなかった。裏の世界に染まりすぎていたのです、私達は。

クリムゾングループは消滅しました。総帥ロバート・クリムゾンを中心とする親族や重役達は襲撃して全員消しました。中には子供もいましたが、私の心は揺るがなかった。



火星の後継者とその協力者は一人残らず破滅し、私達の復讐も終わりました。

でも、私達は戻りませんでした。理由はあります。私達は、皆の近くにいるべきじゃ無いから。


私たちがコロニー襲撃犯として指名手配されていると言う事が表立っての理由でした。コロニー ・アマテラスの襲撃と火星での戦闘で、私達の名と姿が表に出ました。マスコミはこれを大々的に取り上げ、世界中で私達の事を知らない人間はもはやいなくなりました。

ヒトラー以来の大量無差別殺人者。死神、黒い悪魔、闇の王子(prince of darkness)。電子の魔女、血塗られた妖精、黒の堕天使、23世紀のシャルロット・コルデー(暗殺の天使)。私達に与えられた呼び名でした。他にも様々な表現が新聞の数面に渡って書き続けられています。

かつて僅かな期間とはいえ『史上最年少の美少女艦長』であった私。そしてピースランド王の遺伝上の娘でもある私。それだけに特に私に対する報道が過熱していました。「行方不明の『電子の妖精』、魔女となるまでの軌跡」「復讐の美姫、華麗な狂気」「クリムゾングループの壊滅の影、蠢く黒の2人」

一方的に悪く言われているわけではありませんでした。すべての情報が公開されているから―――むしろ同情的な記事が多いぐらい。でも、そのかなりが「テンカワ・アキトが電子の妖精を誑かせた」といった論調―――心苦しい限りです。

もし捕まったら、良くて死刑、悪ければ死刑になったように見せかけられて実験体。私なんかは特にそうでしょう。大人たちの考えている事はよくわかりますから。一生抑留されて、復讐に滾る統合軍上がりの兵士達によって盥回しにされるかもしれません。

そんな私達です。皆はかくまおうとするでしょう。それが発覚すれば処罰、いえ社会的に抹殺されてしまいます。



でも、本当の理由は・・・・・・とにかくユリカさんと会う事は出来ません。3人で暮らした幸せはもう、戻らないから。








あとがき


こんにちは、はじめまして。旧式攻城砲です。

最初に言い訳をば。ナデシコに知り合って僅か1ヶ月でSSを書こうというのは相当に危険な奴かもしれません。

更にSSはまだ2作品目であり、文章力も発想力も不足しているような・・・・・・まあ、稚拙な文章ですが、よかったら読み続けてくださいませ。

あと、非常に他人様のSSの影響を受けているかもしれませんが、それは仕様です。たぶん、きっと。オリジナル要素も頑張って入れていきますが、さてさてどうなる事か自分でも不安ではあります。まあ、きっとどうにかしていくつもりなので、見捨てないで下さい。お願いします(土下座)

劇場版から受け継いだ逆行物の連載小説ですが、ルリの設定が特に変わっています。方針としてユリカもルリも幸せにする予定ですので、こういう形をとらさせていただきましたが・・・・・・プロローグから危険な匂いがしますね。下手をすると壊れかけるヒロイン2人。お気に入るか心配ですが(むしろ御不興を持つかもしれませんが)どうか広く温かい目で見てくださいませ。本編はきっともっとほんわかする予定です。

では、今後もよろしくお願いします。