<たまには・・・ね>



第一章.疑惑

 あたしとゼルはマジックショップからの帰り路だった。
 今、あたしはガウリイとゼルとアメリアの四人で旅をしている。
 ・・・アメリアの言葉を借りるなら、仲良し四人組みというやつだ。
 まあ、これはゼルじゃなくてもさすがに嫌がるわよね・・・
 ガウリイくらいじゃないの?
 嫌がってないのってさ・・・(と言うより理解してないんじゃ)
 まあ今日はガウリイはアメリアのお供をしている。
 なんせマジックショップにガウリイを連れて行っても、ろくな事は無い。
 今までも、盛大に品物を引っ繰り返したり。
 立ったまま居眠りをかましてくれた事もある。
 あたしは冷静な判断の元・・・ゼルを相棒に選び。
 アメリアにガウリイの監視を命じた(笑)
 でも・・・案外似合ってるかもねあの二人って。
 ・・・な、何を想像してるんだろ!! あたしは!!
 自分の馬鹿な考えを振り払っている時、隣を歩いていたゼルの足が止まる。
 どうしたんだろう?
「どうしたのよゼル・・・こんな所で立ち止まっちゃって。」
 この辺りは如何わしい宿屋が立ち並ぶ外れへの入り口だった。
 そしてゼルが注目している物は・・・
「ア、アメリアとガウリイ!!」
 そう今しも妖しい宿屋に入ろうとしている二人だったのだ!!
 二人は腕を組み、どうみても恋人同士にしか見えなかった・・・
 あたしとゼルは、呆然とした表情で二人が入った宿屋を眺めていたのだった。

 あれからどうやって宿に帰ったのか記憶に無い。
 ・・・ただ気が付けば宿屋の自分の部屋にいた。
 それから朧気に覚えている事は、あたしに絡んできたチンピラがいたので・・・
 ゼルと二人で手加減無しで血祭りにした事位だ。
「関係無いじゃない、ガウリイが誰と付き合おうとあたしには・・・」
 そう無意識に呟く自分が嫌だった。
 いっその事、ガウリイを泣いて責めれば楽になれるかも・・・
 止め様、こんな考えあたしらしくない。
「何か食べたら気が紛れるかもね。」
 そう思いあたしは一階の食堂に向った。

 時間は夕食時を少し過ぎた位らしい。
 だが、あたし達のテーブルには先客がいた。
「ゼル・・・幾らなんでも飲み過ぎよ。」
 テーブルに乱立する酒瓶を見てあたしは呆れる。
「・・・ほっといてくれ、幾ら飲もうが俺の勝手だろうが。」
 そう言いながら更に酒をグラスに注ぐゼル。
 まあ、ゼルの気持ちが解るだけにあたしも強く注意は出来なかった。
 あたしも何か飲むか・・・と思い座席に腰を降ろす。
 その時だ・・・ガウリイ達が食堂に現れたのは。

「ようリナ!! 今から夕食か?
 俺も一緒に食べるよ。」
 ・・・何時ものガウリイの態度に、あたしは何故か悲しくなった。
 ガウリイはあたしよりアメリアを・・・
「・・・アメリアと一緒に食べれば!!
 行きましょ!! ゼル!!」
「ああ、そうだな・・・俺は自分の部屋で飲み直すか。」
 少しふら付きながら自分の部屋に向うゼル。
 あたしはゼルに肩を貸しながらゼルを部屋へと導く。
 その時、今まで黙っていたアメリアがあたしに声をかけてきた。
「リナさん・・・今日はゼルガディスさんと何処に行ってられたんですか?」
 アメリアらしくない弱々しい声だった。
 だが、あたしはそんな事に気を使う余裕が無かった。
「・・・何処に行こうとあたしとゼルの勝手でしょう。」
 その言葉を聞いたアメリアの目に何故か涙が溜まる。
「じゃあ、じゃあ、あれは本当にリナさんとゼルガディスさん・・・」
 あたしにはその呟きの意味が解らなかった・・・
 だが、もうどうでもいい事なのだろう。
 後には事態に付いていけず、呆然とするガウリイだけが残っていた。



第二章.罠

 朝から気分は最悪だった・・・
 珍しく朝の食卓に最後に付いたのはゼルだった。
 まあゼルの気持ちを考えれば、今現在この場にいるだけでもあたしは驚いたが。
 実際あたしもガウリイに会わずに旅立つつもりだった。
 ・・・何故か今朝は早起きなガウリイに食堂で見つかり、現在ここにいるけど。
 話しをする事なく座っているとアメリアが現れた。
 だが・・・何故かアメリアの視線が痛いぞ。
 あたしに何か言いたい事があるのかな?
 今はアメリアに優しく接する自信が・・・あたしは無い。
 そして気まずい雰囲気の中での食事。
 この食事はあたしの歴代の中でワースト3に入る不味さだった。
 それでも一応味が解らないでも食べる。
 自棄になって食べる。
 ガウリイが驚きに目を広げてるが無視する。
 ちょっと目に涙が出ていたと思う。
「リナ・・・何があったが知らんが、ちょっと無茶のしすぎだぞ。」
 その言葉に・・・キレる。
「うっさいわね!! ガウリイはアメリアの心配してればいいじゃない!!」
 その言葉にガウリイとアメリアとゼルが反応する。
 しかし全員が微妙に意見が異なる。
「・・・どういう事だリナ?」
「・・・リナさんこそゼルガディスさんと一緒にゴニョゴニュ・・・」
「・・・同感だな俺は出発するぞ。」
 それぞれが頭を抱えながら宿を出る。
 そして自然とあたしとゼル、ガウリイとアメリアのペアで街道を行く。
 暫く行くと分岐路にさしかかった。
 当初の予定では右の街道を行く予定だったが。
 あたしは左を選ぶ。
「あたしここでアメリアと別れるから・・・」
「そうか、じゃあ俺ともさよならだなアメリア。」
 あたしに付いて来る気なのガウリイ!!
 当然の様にアメリアに別れを告げるガウリイに・・・
 遂にあたしとゼルの怒りが爆発する!!
「な、何考えてるのよ!! ガウリイ!!」
「旦那・・・一度はっきり決着を付けようか。」
 あたしとゼルの本気の殺気にガウリイが一歩後退する。
「な、何だよ二人して・・・俺なんかやったか?」
 更にあたし達を煽るわけね・・・
「いいわよ、ガウリイがその気ならこっちも覚悟があるわよ。」
「俺も同感だ。」
 最早あたし達は鬼気さえも放っていた。
 その鬼気を感じながらも、なお解らぬ振りをするガウリイ。
 どういうつもりなのよガウリイ!!
 アメリアと深い仲になっておきながら、あたしとまだ旅を続けるなんて!!
 あたしとゼルの気持ちを弄ぶ気なの!!
 その時今まで黙っていたアメリアが急に叫ぶ。
「・・・リナさんだって、私の気持ちを知ってるくせに!!
 どうしてゼルガディスさんとあんな妖しい宿屋に行ったんですか!!」
「「「・・・は?」」」
 アメリアの一言にあたし達の緊張は霧散した。
 


第三章.真実

「あちゃ〜、ここまでですかね?
 駄目じゃないですかアメリアさん。
 もう少し引っ掻き回してくれないと。」
 ・・・人の神経を逆撫でするような台詞で登場をしたのはゼロスだった。
 いろいろな疑問が今更ながらに起こる。
 何故ガウリイはあそこまで知らない振りをしたのか。
 それはそうだ知らなかった・・・と言うより事態を解って無い。
 アメリアも・・・多分あたしとゼルと同じ。
 幻影か何かを見せられたのだろう。
 多分ガウリイには通じないだろうから、ガウリイには見せてない筈。
 だからガウリイ一人が、あたし達の争いの外にいたわけだ。
 もっともそれも計算の内という事かゼロス・・・
「・・・最初から全部貴方が後ろで糸を引いてたのね、ゼロス。」
 あたしの搾り出す様な声を聞いて嬉しげに微笑むゼロス。
「ええ、そうですよ。
 いや〜、皆さん面白いくらい僕の思い道理に踊ってくれましたね。
 久しぶりに高密度で美味しい食事でしたよ。」
 プチッ
「ガウリイ!! ゼル!! アメリア!! ちょっと来て。」
 三人を集めて小声である提案をする。
「・・・で、・・・して、・・・わけ!!」
「・・・そっ!! それは・・・ゼルガディスさん。」
「・・・今回は俺も付き会うぞ。」
「ガウリイは・・・確認の必要もなさそうね。」
「ああ、賛成だ。」
 あたし達の会議が終わるのを律儀に待っているゼロス。
 横目でそのゼロスを確認しながら・・・あたし達の心は一つになった。
「ゼロス!! よくもあそこまでコケにしてくれたわね!!」
「私達の怒りを思い知りなさい!!」
「・・・今回は俺も乗り気だからな。」
「俺は・・・なんだか蚊帳の外のような気がするが。」
 それぞれの台詞を聞いてからゼロスが言い返す。
「で? 何をされるんですか?」
 私達の攻撃なんて効かないと思い、隙だらけの格好で肩をすくめるゼロス。
 その余裕が命取りよゼロス!!
「散開!!」
 バッ!!
 あたしとガウリイがゼロスの前に位置し。
 ゼルとアメリアがゼロスの後ろに陣取る。
「ゼル!! これから先の事は他言無用だからね!!
 わたし達の仲間内でもよ!!」
「当たり前だ!! 誰が素面でこんな事話すか!!」
「????」
 あたしとゼルの会話を聞いて、頭にクエスチョンマークを多発するゼロス。
 そして・・・あたし達の反撃が始まる。
「覚悟はいいわね・・・ゼルGO!!」
「アメリア・・・」
「ゼルガディスさん・・・」
 お互いの目をだけを見詰め合い。
 周りの景色すらその目には写っていない二人・・・
「俺は馬鹿だった。
 今まで自分に嘘をついていたんだ・・・
 昨日アメリアとガウリイが二人で、例の宿屋に入るのを見て気付いたんだ。」
「ううん、ゼルガディスさんの気持ち解ります。
 私も・・・リナさんとゼルガディスさんが例の宿屋に入ったと思ってました。
 始めはリナさんを恨みました・・・けど真実を知った今は・・・」
「アメリア・・・俺を許してくれるのか?」
「ゼルガディスさん!! 私は自分の気持ちに嘘は付きません!!」
「アメリア!!」
「ゼルガディスさん!!」
 お互いを強く抱きしめる二人・・・
 そして・・・早くも石化状態に陥っているゼロス。
 よくやった!! ゼル、アメリア!!
 ・・・次は、あたし達の番よね。
「ガウリイ・・・」
「リナ・・・」
 あたしはガウリイの青い瞳を凝視する。
「ごめんね、今朝から勘違いで変な事ばっかり言って。」
「気にして無いさ・・・俺はリナのする事なら全て受けとめてみせる。」
 そして、あたしの頬を優しく撫でる。
「俺の方こそリナの苛立ちに気付いてやれなくて、ごめんな。」
 あたしは頬に当てられた手を自分の手で上から握る。
 そして首を振りながらガウリイに告げる。
「いいのよ、あたしも何も言わなかったし・・・
 それにあたしはガウリイの口から、本当の事を聞くのが怖かったのよ。」
「馬鹿だなリナは・・・俺がリナ以外の女性と一緒になる訳ないだろう。」
 そして優しい微笑みで私を見詰めるガウリイ。
「ガウリイ・・・」
「リナ・・・」
 そしてお互いに強く抱きしめあう・・・
 その頃のゼロスは・・・地面に両膝を付いて自分の存在を懸命に保っていた。
 しかし逃げ様にも前後をラブラブ結界で閉ざされ、動きを完全に封じられていたのだ。
「な、なんのこれしき・・・見事な連携です皆さん。
 し、しかし、僕も獣神官です!! まだ滅びません!!」
 そこにさらなる一撃がふり注ぐ。
「愛してるよアメリア・・・世界中の誰よりも・・・」
「大好きですゼルガディスさん・・・私は貴方の物です・・・」
 そして二人の唇が重なる・・・
「ぐはっ!!」
 何だか右半身を消失して倒れるゼロス。
「・・・しゃ、しゃれにならなくなってきましたね・・・これは・・・」
 存在を薄れさせながらも必死に己の意識を保つゼロス。
 しかし、止めの一撃がゼロスを襲う。
「ガウリイ・・・あたしなんかで本当にいいの?」
 ガウリイの胸に顔を埋めながらあたしは囁く。
「何を言ってるんだリナ・・・俺にはお前しかいない。」
 胸元にあるあたしの頭を右手で抱きかかえながら、ガウリイが答える。
「嬉しい・・・あたしもガウリイが居てくれればそれでいい・・・」
 あたしはガウリイの顔を下から見上げながら答える。
「俺は一生リナの隣のいるさ・・・世界中で一番大切な女性なんだからな。」
 そんなあたしの髪を優しく撫でながらガウリイが返事を返す。
「ガウリイ・・・」
「リナ・・・」
 そして二人の唇が重なる・・・
「・・・」
 最早ゼロスの存在は砂となり、アストラルサイドにその身を還元していた。
 そして、そよ風がその砂さえも空中に運び去る・・・
「・・・終わったわね。」
「ああ、そうだな。」
「だったら離しなさいよ!!」
「いいじゃないか別に。
 少なくともあっちは当分帰ってこないぜ。」
「へ?」
 あたしとガウリイの視線の先には・・・完全に別世界にイッちゃってる二人がいた。
「・・・どうしよう。」
「止めるだけ野暮さ・・・それにあの二人に負けたくないからな。」
「・・・ま、たまには・・・ね。」
「そう、たまにはだ。」
 そうしてあたしは体の力を抜いてガウリイに寄り添った。
 たまには素直になってもいいものだ・・・と、思いながら。

 ちなみにゼルとアメリアがコッチの世界に帰ってきたきっかけは・・・
 お互いの子供の数を二人か三人かでもめたからだった。
 ・・・気が早いってあんた達。



<たまには・・・ね>      END
								1999.8.5
								 By  Ben

後書き・・・

ごろごろごろごろごろ・・・・

「またやってるわよあの作者。」

「懲りない奴だよな本当に。」

「だいたい例の投稿小説の勢いのまま書くから、こうなるんですよ。」

「なんだ内容に不満があるのか?」

「不満は有りませんけど・・・私達の描写が少なくありませんか?」

「そう言うけど・・・貴方の相方は向こうで血液沸騰させてるわよ。」

「あ〜〜〜!! ○○○○○さん!! 大丈夫ですか!!」

 ごろごろごろごろごろごろ・・・・

「どうする? あの作者・・・

 俺はもう金輪際この手の小説は書かない!!

 って断言してたよな。」

「まあ、その内熱が下がったら懲りずに書き出すわよ。

 なんせ基本的に軽い奴だから。」

 ごろごろごろごろごろ・・・・

「そうだな、だけど今回後書き中ずっと転がってるな・・・」

「なんたってニ連撃だったからね。」

「じゃあほっとくか。」

「そうね・・・○○!! ○○○○!! 御飯でも食べに行くわよ!!」

「はい!! ○○さん!!」

 そして4人は去って行きましたとさ・・・

 ごろごろごろごろごろごろ・・・・・

 

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