<真実への路>


第一部 第一話「始まりの別れ」

(6)

 


 三人が散開しつつ、それぞれの攻撃を始める!!
 ルークとゼルが呪文を唱えだし。
 ガウリイがエウーカに突撃する。
「そんな見え見えの攻撃。
 私が食らうと思っているのですか?」
 そして、エウーカが炎で全身を包み込み。
 ガウリイに向って飛び出す!!
「こっちもその攻撃は予想済みだ!!」
 素早くサイドステップで、身体の進行方向をずらし。
 エウーカの突進をかわす、ガウリイ!!
 そしてガウリイの横を通り抜けた、エウーカに・・・
「エルメキア・ランス!!」
「フェルザレード!!」
 ルークとゼルの呪文が時間差で襲い掛かる!!
「こしゃくな!!」
 エウーカは一旦体制を整え。
 炎に包まれた両手を使って、その呪文を叩き落す。
 うーん、やっぱり半端な呪文は効かないか。
「まだまだ!!」
 そしてガウリイの斬撃が、エウーカに襲い掛かる!!
「ふん!! また私の炎に焼かれたいのですか。
 ならばご期待通り、焼いて差し上げましょう!!」
 ・・・駄目だガウリイの斬撃は、間に合わない!!
 ルークとゼルのフォローも、期待できないタイミングだ!!
 そしてガウリイの目の前に、炎の渦が迫る!!
 勝利を確信し、顔を歪ませるエウーカ。
 しかし・・・
「フレア・シール!!」
 アメリアの防御呪文が、エウーカの攻撃を全て無効にする!!
「何!! まだ仲間がいたのか!!」
 洞窟の入り口には、何時の間にかアメリアがいたのだ。
 始めから、ルークとゼルは囮だったのだ。
「人質を取るような魔蔟に、そんな正直に取引に応じるものか!!」
 そして、間合いを一気に詰めたガウリイの斬撃が、エウーカを切り裂く!!
「ぎゅぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 たまらず後退するエウーカ!!
 さらに、ルークとゼルの呪文が続く!!
「エルメキア・フレイム!!」
「ダルフ・ストラッシュ!!」
「がっぁぁぁぁぁぁぁぁ!! おのれ人間風情が!!
 こうなれば、せめてあの小娘だけでも!!」
 あたしに向け、炎を放とうとするエウーカ。
 だが、その視線の先にあたしはいなかった。
「何故だ!! 呪文を唱える暇も、自力で解く事も出来なかった筈!!」
 最早、滅び行くだけの自分の身体を、懸命に保持しつつ・・・
「残念ね、ご苦労様エウーカ。」
 エウーカの横に歩み寄りながら、あたしは声をかける。
 そんなあたしを睨みながら、エウーカが問う。
「どうやってあの戒めを解いた・・・」
「・・・だから、人間を侮りすぎよあんた達魔族は。
 ガウリイ達が戦闘を始めて直ぐに、ベフィス・ブリングを使って。
 ミリーナがあたしを助けに来てくれたのよ。」
 隣にいるミリーナに、目線で礼を言いながらエウーカに種明かしをする。
 そう、本当の意味でガウリイ達は囮だったのだ。
「ふ、ふはははは!!
 まさかこの私が、人間如きに遅れをとるとは・・・
 だが、一つ良い事を教えて差し上げましょうか、ガウリイ=ガブリエフ・・・」
 身体の半分を塵に変えながらも、ガウリイを睨み続けるエウーカ。
「何だよ、俺に教えたい事とは。」
「知って苦しみなさい・・・そう『光を守る者』は滅びましたよ・・・
 もちろん人間達の手によってね。くくくくく」
 その言葉を聞き、ガウリイの身体が硬直するのが感じられた。
 一体何の事なんだろう、あのガウリイが緊張している・・・
「それに、貴方もそう・・・」
「ルビーアイ・ブレード!!」
 いきなりのルークの大技に、続く言葉を喋る暇も無く滅び去るエウーカ・・・
「・・・ちょっとルーク!!
 貴重な情報源を、どうして倒しちゃったのよ!!」
 あたしの詰問に、ルークは不機嫌な声で答えを返す。
「魔蔟の言う事なんか信用出来るか。
 それに、意味の解らん事を言われても、確かめる術も無いしな。」
 そう言って洞窟の出口に向うルーク。
 不思議そうな顔をしつつも、そのルークに続くミリーナ。
「そうだな、ここにいても仕方あるまい。
 出るぞ旦那、リナ、アメリア。」
 それにゼルが続く。
「解りましたゼルガディスさん。」
 アメリアも、釈然としない表情をしながらも洞窟を出て行く。
「・・・ああ、そうだな気にしてもしょうがない事だ。
 行こうぜリナ。」
 ガウリイが動き出し。
「解ったわよ!! 何よみんなして・・・」
 あたしが不貞腐れていると。
「まあそう言うなよ、皆お前の事を心配して、手伝ってくれたんだからさ。」
 あたしの頭を撫でながら、ガウリイがそう言った。
「後でちゃんとお礼を言っとけよ。」
「ふんっだ!! 一応感謝しといてあげるわよ!!
 でも、ルークの態度だけわ許せないわ!!」
 顔を赤くしてあたしが怒鳴ると、ガウリイはちょっと苦しそうな顔をした・・・
「・・・どうしたのよ?
 何処か怪我でもしてるの?」
「いや・・・ちょっとな。
 ルークが斬らなくても、多分俺があの魔蔟を斬ってた・・・」
 そう言いながら、ガウリイはあたしの手を引いて洞窟の出口に向う。
 その横顔は、あたしには泣いている様に見えた・・・
 一体エウーカの最後の言葉には、どんな意味があったのだろう?

 

 

(7)へ続く

 

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