<真実への路>


第一部 第二話「それぞれの理由(わけ)」

(6)

「はじめまして、私の名前はアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンと言います。
 このセイルーン王家の第二王女に位置する者です。
 今回は私の父、フィリオネル=エル=ディ=セイルーンの命で赴きました。
 後ろに控えている供の者は、シルフィール=ネレス=ラーダという名前です。
 私が全幅の信頼を寄せている者ですので、同席を認めて頂きたいです。」
 そう挨拶を切り出し、私は相手の反応を覗う。
 ここは私が指定した会談のの場である。
 今この部屋にいるのは私とシルフィールさん、そして問題の彼のみ。
 同席者の話しはしていない・・・さて、どういった反応をしめすのか。
「ああ、これはお美しい同席者ですね。
 全然構いませんよ、美人が増える分には何も文句などありませんよ。」
 にこやかに笑いながらそう言い返してきた・・・本心か?それとも虚勢なのか?
 目の前の男性は茶色の短い髪と目を持つ人だった。
 年齢は見た感じは若い・・・多分20代前半だろう。
 しかし、この船の船員は全員彼に誠意を持って従っている。
 彼にかける船員の言葉が敬語という事から、その事が推測できた。
 背は少し高め位、細身ながらしっかりした体つきからして腕も立つのだろう。
「シルフィールさんには俺の名前を名乗ってませんよね?
 改めて自己紹介しますね。
 俺の名前はエイジと言います。
 一応ですがこの船団の代表者です、以後宜しく。」
 茶色の目を細めにこやかにシルフィールに話しかける。
「エイジ? だけなのですかその続きの名前などは・・・」
「う〜ん、今は無いんですよ。
 結構不便なんですよね。」
 そう言いながら笑い出すエイジ・・・
 その言動はかなり怪しいと思える。
 しかし彼の言葉には嫌みというか、悪意という物は感じられない。
 私も王家の第二王女という身分である。
 いろいろな人間を見てきた分、観察眼はあるつもりだった。
 しかし・・・エイジの底というか本心がまるで見えなかった。
 この人物の鑑定も、父さんから頼まれている事の一つだというのに。
 そこで、まず私の方から話しを切り出す事にする。
「さて・・・単刀直入の聞きますが。
 何故この港に一ヶ月もの間滞在されているのですか?
 それにこの船団・・・ここ周辺の王国には無い形式の船ですよね?」
 たたみかける様にエイジに質問を投げかける。
「これは・・・本当に単刀直入ですね。
 手紙で説明しませんでしたか、俺達はただの商船でたまたまこの港に寄っただけですよ。
 期間が長引いているのは、望みの品がまだ手に入ってないからです。
 船の形式・・・まあこの船は俺の知り合いのオリジナルの船ですから。」
 それを信じろと?
「・・・ならば所属している国は何処なのですか?」
 その質問にエイジは頬をかきながら答える。
「・・・それは企業秘密って事では駄目ですかね?
 誓ってこの国にも港町の人にも、俺達は危害を加える気も無いですし。」
 そう、だから対処に困るのだ。
 エイジ達はただ港に滞在しているだけ。
 食料その他の雑貨も、ちゃんとした標準価格で港町の人達と取引をしている。
 それどころかこの港町を襲った海賊達を撃退さえしてくれたのだ。
 今では彼等は港町の警備隊より人気があった。
 その事を考えれば彼等に確かに害意は無いのだろう。
 だが、余りに目的が曖昧すぎるのが不気味だった。
「その事についてですが・・・どうして父からの召還に応じて頂けないのですか?」
 海賊の撃退・・・この事実の確認とねぎらいの為、父さんはエイジに召喚状を出した。
 しかし、エイジはその召喚を丁寧に断ったのだった。
「その事はすまないと思ってます。
 仮にも一国の王子の召還をお断りしたのですからね。
 しかし、俺としてもこの場を離れる訳にはいかないんですよ。」
 一瞬、エイジの茶色い目に鋭い光が宿るのが見えた。
 その光には、他人の命令に易々と従わないという強い意思が覗える。
 このエイジという人は・・・私の直感だと何よりも自由が好きな人なのだろう。
 ならば・・・そのエイジをすらこの港町に縛り付ける用事とは何か?
「・・・貴方の言い分は解りました。
 最後に一つだけお聞きしてもよろしいですか?」
 私の問いかけにエイジは元の柔和な笑顔で答える。
「何ですか? あまりプライベートな事でなければお答しますよ。」
 そう言って微笑みながら私の顔を見つめる。
 しかし、エイジの目には油断の色は無かった。
「貴方が待っているのは本当に品物ですか? もしかして・・・人物ではないのですか?」
 瞬間!! エイジの気配が激変する!!
 滅多に感じる事の無い程のプレッシャーが私に襲いかかる!!
 後ろではシルフィールさんが胸を押さえてうずくまっていた。
「・・・何故そう思いました?」
 エイジが一歩一歩私に近づく。
 違う!! 何かが普通の人間と根本的に違っている!!
 私の中の巫女の直感が悲鳴を上げている。
 人が触れてはいけない者に触れてしまった、っと。
「・・・王女様は巫女ですか・・・ならば直感?
 いや・・・それだけとは考えられない・・・ならば。」
 一歩も動けないプレッシャーの中で、私は打開策を必死に考えていた。
 しかし、思わぬ所から助けは現れたのだった。
「エイジさん!! 大変です!! また海賊が現れました!!」
 一瞬にしてプレッシャーが消え去る。
「解った!! 直ぐに迎撃に移る!!
 皆を船に至急集めてくれ!!」
 伝達に現れた船員にそう伝えるエイジ・・・
 そして私の方を向いて呟く。
「残念ですがお答え出来ません、貴方には知らなくていい事です。」
 そう言い残し会談の場から飛び出していったのだった。

 

 

(7)へ続く

 

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