<真実への路>


第一部 第三話「あの丘へ至る路」

(2)

「ふ〜ん、それで結局逃げられたのか。
 まあ、お前さんらしい振られ方だな。」
 エイジが笑いながらルークの話しを聞いている。
 酒が入っているため、何時もより更に陽気になっているみたいだ。
 今俺達はエイジの部屋・・・船長室で酒盛りをしていた。
 俺とゼルとルーク、そしてエイジの4人だけでだが。
 天上に吊るされたカンテラの灯りが、船の揺れにあわせて揺れている。
 その揺れに伴って室内の壁に俺達の影が踊りを舞う。
 目的地に着くまでは順調に行って半月かかる。
 10年の月日を言葉で埋める時間は十分にあるわけだ。
 しかし、その話題がルークの失恋に集中するのは・・・自明の理だった。
「うるせい!!
 俺とミリーナの仲の深さがお前に解るもんか!!
 あの時逃げたのは理由があるんだよ!!」
 こちらもかなり酔っているらしい、言葉使いがかなり荒っぽい。
「・・・どんな理由だそれは?」
 ゼルの突っ込みに黙り込むルーク。
「・・・嬉しさの余り言葉が出なかった、とかさ。」
 小声でゼルの問に答えるルークに・・・
「それは無い。」
 全員が否定の返事を返す。
 その後、かなりの間ルークは壁と同化していた。
「しかし、ルークが女に惚れるとはね〜〜
 知ってるか? こいつ故郷じゃ無愛想な奴で通ってるんだぜ。」
 ゼルとの会話を弾ませるエイジ。
「そうなのか?
 俺が出会った時には、臆面もなくミリーナに求愛していたぞ。」
「それが信じられないんだよな〜〜
 実はこいつさ・・・」
 エイジがルークの過去をばらしているのを聞きながら、俺はあの大陸での事を思い出す。
 俺があの大陸にいた期間は約8年ほどだった。
 その内の3年をリナと共に過ごしたわけだ。
 もし今回の事件が無ければ・・・
「だがガウリイも雰囲気が変わったな。
 これも例の彼女の効果なのか?」
「ああ、そうだろうな。
 俺もかなりの影響をリナから受けたからな。」
 何時の間にか話題がルークから俺に変わっていた。
 ・・・エイジを迎えによこしたのは、あいつの嫌がらせか?
「俺の事はどうでもいいさ・・・
 それよりあの二人は元気なのか?」
 俺の質問にお手上げの格好をしながらエイジが答える。
「もう元気過ぎてこっちが降りまわされてるよ。
 ・・・言っておくけど二人とも代変わりしたからな。」
「!! 誰が名を継いだんだ。」
 予想はしていた・・・二人共にかなりの年齢だったのだから。
「俺とルークの幼馴染と剣の師匠さ。」
 それは要するに俺の幼馴染と剣の師匠という事だった。
「ノアとジークがか?
 しかしノアは・・・」
「・・・それは本人に直接聞いてくれ。
 少なくとも俺がガウリイに言える事は何も無いさ。」
 お前が一番反対したんだろうなエイジ。
 自分の腰にある例の剣を弄びながら、エイジは黙って酒を呑んだ。
「そりゃ反対はしたさ・・・だけど俺の意見なんて聞きやしない。
 近くにいたかったんだろうな、あいつは。」
 俺は返す言葉が無かった。
「ルーク・・・お前この事を知っていたのか?」
 壁との同化を続けているルークをこっちに連れ戻す。
「・・・知らん、少なくとも一年前はまだあの爺さん達は元気だったからな。」
 さすがに真剣な表情で俺に答えを返すルーク。
「だが・・・ノアの気持ちが解らない事もないぞ。
 取り残されるのが嫌なのは誰でも一緒だ・・・」
 ルークのさり気ない反撃の言葉に黙り込む俺とゼル。
 取り残される・・・リナとアメリアの事を言っているのだ。
「そうだぞゼル、あんな良い子をほおって行くなんて。
 何て罰当たりな奴なんだあんたは。」
 酔いがかなりまわって来たのか、口調がますます軽くなるエイジ。
「・・・ちょっとまて、エイジお前アメリアに会ったのか?」
 口調を質問というより糾弾する勢いでエイジに詳細を聞くゼル。
「ああ、港町で会ったぞ・・・いい王族だなあの子は。
 あんな子を置いて来るなんて、あんたも罪作りな男だな・・・」
 そのままエイジは眠ってしまった。
 普段からこんなに酒を飲むのかいつは?
「・・・ガウリイに会って気が緩んだんだよ。
 実際エイジは普段酒なんて全然呑まないからな。」
 俺が呆れた顔をしているのを見て、ルークが呟く。
「そんなに酷いのか・・・現状は。」
「ああ、幾ら凄い力を持っていても使うのは人間だからな。
 それに自分に課した制約もあるしな。
 後はガウリイが俺達の期待に応えてくれるのを期待するぜ。」
 そう言い残してルークも自分の船室に引き上げて行った。
「・・・まだ色々と事情がありそうだな。
 まあ、退屈な船旅にだけはなりそうにないな。
 それじゃあ俺も寝るか。」
 そしてゼルも部屋から立ち去って行った。
「期待・・・か。
 重い言葉だな。」
 こんな時に隣に・・・今はいない人の事を考える。
 これから先の判断は自分で下さなければならない。
 昔の様にただ彼女の後ろを付いて行くだけでは、駄目なのだから。
「やり遂げてみせるさ・・・」
 エイジの肩にベットの上の毛布を掛けてやり俺も自分の船室に向かう。
 明日もまたいろいろな事が起きるだろうな・・・と思いながら。

 

 

 

(3)へ続く

 

<真実への路>トップに戻る