<真実への路>


第一部 第三話「あの丘へ至る路」

(8)

 今私の目の前で十年前の光景が再現されつつある。
 忌々しい思い出と・・・
 忘れる事の出来ない思慕の念・・・
 ガウリイ様は帰って来た。

『もう・・・二度と会わない。
 父上の事は済まなかった。』

 私にかけてくれた最後の言葉。
 別れの言葉だったはず・・・なのに。
 ガウリイ様が力を求めて帰って来た?
 違う・・・ガウリイ様自身は力を欲してはいない。
 じゃあその決断をさせたのは誰?

「・・・周りの国の動きが気になるな。」

 ルークが私に話しかけてくる。
 私の気を紛らわせようとしてる?
 違うルークも昔を思い出して不安なんだ。

「相変らず牽制の応酬よ。
 遥か昔はこの大陸が統一されてたなんて夢物語みたいね。」

 私が統治をしている大陸中央の国ラ・ロード。
 ガウリイ様の国は大陸の東一帯に位置する国ライト。
 そして西北に広がる国コルデ。
 最後に南一帯に広がる群雄割拠状態の国アーダ。

 実際の所私の国ラ・ロードは、人口・国力どれを比べても他の三国には足元にも及ばない。
 しかし私の国には神器を保管している。
 いや神器がある為に独立した国なのだ。
 そう・・・かつてこの大陸を統一していた伝説の帝王が使ったとされる神器。
 だがその神器を扱える者はここ三千年の間誰もいなかった。
 資格無き者が手にすれば・・・一瞬の内に廃人と化す。
 ではその資格の有無を誰が決めるのか?
 それは神器自身が決める。
 そうガウリイ様が生誕した時にあの託宣はなされた・・・

「彼の者は光の竜の化身なり、『光を導く者』としてこの世に生まれん」

 ガウリイ様の身内・・・王家は湧いた。
 古の帝王、彼もまた光の竜の化身『光を導く者』と言う二つ名を持っていたから。
 しかしガウリイ様の兄リューン様と、ガウリイ様を擁護する親蔟は別の一派だった。
 必然的におこる権力争い・・・
 仲が良かったお二人も次第に疎遠になっていった。
 そしてリューン様の一派は強引にリューン様を皇太子の位につけた。
 国内は託宣の為にガウリイ様を皇太子に推薦する声が高まっていたから。
 その声に焦りを覚えた前宰相の独断に近かった・・・

 ガウリイ様を擁護する一派は慌てた。
 そこで確固たる証拠の品・・・神器を思い出したのだ。
 余計な事だけは覚えているのね・・・
 でも彼等が来なければ・・・ガウリイ様と出会う事も無かった。
 それだけは感謝してもいい。
 彼等はガウリイ様を連れてこの神殿に乗り込んで来た。
 そこで私とガウリイ様は出会ったのだ。
 
 最初から父さんはその無謀な賭けを拒んだ。
 実は父さんにはガウリイ様の正体を正確に把握していた。
 だからこそ時期が早過ぎる事も理解していたのだ。
 今神器に接触すれば大変な事になると解っていたから・・・
 二ヶ月の間私とガウリイ様、そしてルーク達は一緒に過ごした。
 初めての同年代の子供達との遊び。
 それは私には新鮮な喜びだった。
 何よりガウリイ様と私が、実は許婚だと知った時は天にも昇る気持ちだった。
 それが・・・ガウリイ様の親戚達の策略でも良かった。
 
 至福の時間の終わりは絶望だった。
 一向に許可を出さない父さんに焦りを覚えた親戚達は、父さんを神殿から連れ出した。
 いきなりの神事に父さんは危ぶみながらも出かけて行った。
 小さいながら国を治めている身分なのに・・・変に腰が軽い父だったのを覚えている。
 あのガウリイ様が張り詰めた表情で神殿に入って行く姿は、今でも鮮明に思い出せる。
 そして遂にガウリイ様と神器は相対した。

 父さんに予想されていた暴走・・・

 四聖の将軍による結界に守られながら見た、変わってしまったガウリイ様。

 辺りから動物達の気配が消えて行く。

 ガウリイ様の腕の一振り毎に大地が裂け、衝撃波が辺りを飛び交う。

 異変を感じ駆け付けた父さんがガウリイ様に向かって何か叫んでいた。

 そして・・・自分の身体を使ってガウリイ様の暴走を押さえ込む。

 私が最後に見た光景は・・・

 四聖の攻撃を受け動きを止めるガウリイ様と手から滑り落ちる神器。

 そして崩れ落ちる父さんの姿だった。




 唐突に青い光は収まっていた。
 不審な顔でルークは結界を解き・・・しかし、剣は手に持ったままでいる。

「終わったのか?」

「・・・解らない・・・でも嫌な感じはしない。」

 私とルークはお互いに目で確認をし、神殿に向かって歩き出す。
 だが神殿の入り口には既にガウリイ様がいた。
 緊張する私達に・・・ガウリイ様は笑って話しかける。

「ただいま。」

「・・・おかえりなさい。
 ご苦労様でした。」

 万感の想いを込めて私はそう返事を返した。
 そして、父さんに心の中で報告をする。
 父さん・・・ガウリイ様は見事に試練を乗り越えたよ安心してね。
 笑っている父さんの顔が目に浮かんだ気がした・・・

 

 

 

(9)へ続く

 

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