<真実への路>

 

 

第一部 第四話「再会」

 

(5)

 

 

「う、あ・・・」

 

 ベットの上で、微かな声が聞こえました。

 

 気付かれた様ですね。

 

 私は、もぞもぞと動き出しているリナさんに近づき。

 その額に手を当てます。

 

 どうやら・・・熱も下がったみたいですね。

 

「こ、ここは?

 ミリーナ?」

 

 隣にいる私を見て、リナさんが驚いた顔をされます。

 取り敢えずは、安心して貰うために私は未だ捕まっていない事を話します。

 

「宿屋の一室ですよ。

 リナさんは、酷い風邪をひかれたんです。」

 

 私の返事を聞いて・・・悔しそうな表情をするリナさん。

 

「いきなり、氷細工だったもんね・・・

 呪文の詠唱も無しに、人一人凍らすなんてね。」

 

「そうですね・・・」

 

 あのノーフィス将軍との戦闘・・・

 最後の勝負に出たリナさんの、フェイントのファイヤーボールがノーフィス将軍の足元で炸裂し。

 

 

 ドガァァァァァァァンン!!

 

 

『貰ったわ!!』

 

 背中に背負っていたブラスト・ソードを構え、正面からノーフィス将軍に斬りかかるリナさん。

 ファイヤーボールの爆発のせいで起こった煙を隠れ蓑にし。

 ブラスト・ソードの一撃に全力をかける!!

 この一撃を防げるモノは、事実上無いはず。

 それ程に、桁外れの切れ味を誇っているのだ、このブラスト・ソードは!!

 

 

 ギィィィィィンン!!

 

 

 それは予想外の音だった。

 

 煙が晴れた後には・・・

 リナさんの繰り出したブラスト・ソードの一撃を受け止めている、ノーフィス将軍の姿があった。

 

 そして、その瞳には怒りの感情が・・・

 

『・・・やってくれますね。

 この子も痛がってますし、仕返しはちょっとキツイですよ。』

 

『くっ!! まさかブラスト・ソードの一撃を受け止めるなんて!!』

 

 慌てて、ノーフィス将軍から距離を取ろうとするリナさん。

 

『少し、頭を冷やしなさい!!

 ・・・フェンリル!! コールド・ブレス!!』

 

 オオォォォォォォォォォンンン・・・

 

 

 ヒョォォォォォォォォォ!!

 

 

 ノーフィス将軍の声と共に、構えている剣から吼え声が聞こえ?

 そして・・・吹雪が発生する!!

 

『きゅあ!!』

 

『リナさん!! ・・・ダークミスト!!』

 

 ブワッ!!

 

 私は、万が一の為に唱えておいた呪文を使い。

 リナさんを中心に暗闇を作り出す。

 

『リナさん、リナさん!!』

 

 リナさんの身体は、急激な体温の低下に凍傷になりかけていた。

 ・・・このまま、この場にいるのは不味いですね。

 

 私はリナさんを自分のマントで包むと、急いでその場を後にしました。

 何故か、ノーフィス将軍は追撃をかけてきませんでした。

 ・・・多分、彼女にとっては本当にお仕置きくらいにしか、考えていなかったのでしょう。

 

 私はそう判断すると、リナさんを近くの宿屋に運び。

 宿の主人にお湯を運んで貰い、一晩中看病をしてました。

 しかし、不運な事に凍傷はヒーリングで治療が出来ましたが。

 リナさんは、寒さから風邪をひかれ寝込んでしまったのです。

 

「そう、そうなんだ・・・御免ね迷惑かけちゃって。」

 

「別にそんな事を気にしてません。

 それより、あのノーフィス将軍が私達を探しに来ない事の方が不思議です。」

 

 私の意見を聞くと、リナさんは頬を掻きながら・・・

 

「多分・・・害がないと判断されたのね、私の実力なら。」

 

「そんな!!」

 

「事実よ・・・私はノーフィス将軍に手も足も出せなかった。」

 

 そして、何かを考え込むリナさん。

 

「では・・・アメリアさんの所に戻りますか?」

 

「はっ!! それこそ冗談じゃないわよ!!

 こうなったら、意地でもこの港町を抜け出してやるわ!!

 このリナ=インバース!! 見下されたまま終わってたまりますか!!」 

 

 元気にそう宣言をするリナさん。

 それでこそ、リナさんですね。

 

「じゃあ、最新の情報です。

 ガウリイさんの居場所が解りました。」

 

「え? だって王城にいるんじゃないの?」

 

 王様でしょう?

 と、視線で私に問うリナさん。

 残念ながら、ガウリイさんは王城ではなく・・・

 

「ガウリイさんが、今おられるのは・・・戦場です。」

 

 私の一言に、リナさんは黙り込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

(6)に続く

 

<真実への路>トップに戻る