《再会の刻》


−プロローグ−

  どおしてこんなことになってしまったんだろう。


  彼女はほんの少し前まで相棒であったはずの剣士と対峙しながら、魔力弾を無数に
  剣士に向かって放っていた………。




−第一章−

  ここは、ティーレールの街。
  時間はもう真夜中といっても良い時間。
  この街のある宿屋の裏庭(宿屋の荷物置き場になっているような場所)に一人の小
  柄な女性が宿屋のほうから歩いてきた。
  燃えるような紅い瞳と、満月の光を照り返す鮮やかな栗色の髪をした少女である。
  その少女が裏庭の中央まで来ると虚空に向かって声を掛ける。
  「いるんでしょ、ゼロス。」
  やがて虚空より黒い神官服を纏った男が現れる。
  「いやあ、ばれちゃいましたか。」
  「当たり前でしょ、人間はともかくあたしに分からない訳ないじゃない。」
  「さすがですね、目の前に出るまで分からない輩もいるというのに。」
  ゼロスは笑みを浮かべたままそう答えた。
  「で、何の用なの。 まさか『秘密です』何て言わないわよね。」
  その問いかけにゼロスは意外そうに答える。
  「それこそまさかですよ。 僕はそんなにひまじゃありませんから。」
  「じゃあ、何の用なのよ。」
  そこでゼロスは姿勢を正し、答えた。
  「あの方からのご命令できました。」
  その言葉に、ビクッっと怯えたように体を震わせる少女。
  彼女の反応を楽しむかの様に笑みを浮かべているゼロス。
  「そう、やはりそのことなのね。」
  答えながら彼女は二階のある一室のほうを見上げる。
  そこには、少女の相棒が眠っているはずなのだ。
  「ええ。 何でしたら僕が…」
  「まって。」
  そう言い掛けたゼロスに彼女は小さいながらも鋭く言い放つ。
  「あたしがやるわ。」
  「ではお手並み拝見といきましょう。」
  答えながらゼロスはふわりと飛ぶ。
  「なるべく早くして下さいよ、あまり時間もありませんから。」
  虚空に消えながら言葉を残す。
  「ちょっと、どういう意味よ、ゼロス。」
  ゼロスが消えた虚空に少女が声を掛けると彼女の耳元に
  「それは、秘密です。」
  と、いつもの言葉を残してゼロスの気配は完全に消えた。
  暫く少女はゼロスの消えた虚空を睨むように見つめていたが、やがて一つため息を
  つくと宿屋の方に歩いていった。

  満月は何も無かったかのように冴え冴えとあたりを照らしていた。




−第二章−

 街道を男女二人組が歩いている。
  一人は出で立ちから剣士だと思われる金髪碧眼をした超絶美形(主人公ではない)
  の背の高い男。
  そしてもう一人はティーレールの宿屋でゼロスと話をしていた少女であった。
  ゼロスとの会話からすでに一ヶ月の時が過ぎ去っていた。
  彼女は、結局最後の踏ん切りをつけられないまま、ずるずると先延ばしばしにして
  いたのだ。
  やがて、彼女たちは森の中に入っていく。
  いや、正確に言うならば街道の方が森を突っ切っているのだ。
  暫く森の中を歩いていると、周囲に異様な気配が現れた。
  生きとし生ける者ならば嫌悪する気配。
  即ち、『瘴気』。
  思わず顔を見合わせた二人だったが、お互いにうなずきあうと森の出口に向かって
  走り始めた。
  森を抜けた後も暫く走り続け、ある程度離れたところで立ち止まり森の方を振り向
  くと森の中より何かが複数出てくるところであった。
  遠目には解らないが、異様に目のいい相棒の剣士は少し驚いていた。
  「何であんな数のレッサーデーモンが……。」
  相棒の呟きを聞いた彼女は何かブツブツとつぶやいていたが、やがて両手の間に現
  れた光を森に向かって解放する。
  彼女の手より放たれた赤光が森を直撃すると着点を中心にして大爆発が起こり、残
  ったのは穿かれた大地とわずかに残った森の残滓であった。
  「やったな。」
  剣士は相棒の頭の上に手を置きながらウインクをし、極上の笑みをうかべる。
  彼女もそれに答えるかのように笑みを浮かべながら相棒の剣士の方を向くが、その
  顔がいきなり驚愕の色を帯びる。
  相棒の少女のいきなりの変化に、剣士は戦士としての感を働かせる。
  やがて、その感に何かが引っかかる。
  そちらの方を向きつつ剣に手を掛けながら隣の少女を向くと既に彼女はそちらの方
  を向いていた。
  自分より早く気づいていた彼女を不思議に思いながら(普通は自分の方が早く敵の
  気配に気づくはずだからだが)剣士はそちらの方に声を掛ける。
  「だれだ!!」
  その声に答える様に何もない空間から一人の男が現れる。
  現れた男は、剣士の方など目もくれずに少女の方を向いて、
  「何をするんですが、人がせっかくあなたにとって都合のいい状況を作ってさしあ
    げようとしたのに。」
  「ゼロス…。」
  少女は驚愕の表情を張り付けたままそう呟いた。
  剣士は更に語気を強めながらゼロスに再び誰何する。
  「何者だ、貴様。」
  ゼロスはさも今気づいたかのように剣士に向かって笑みを浮かべたまま優雅にお辞
  儀をする。
  「これは失礼しました、あなたとは初対面でしたね。  僕の名はゼロス謎のプリー
    スト ゼロスとお呼び下さい。」
  人を喰った様な物言いに呆れながらも剣士は、
  「その謎のプリーストさんが何の用だい?  どうやら俺だけが初対面である様に聞
    とれるんだが?」
  そういいながらも剣士は警戒を解こうとしない。
  「おや、なかなか鋭いですね。」
  「そいつはどうも、じゃあ正解のご褒美に俺の質問にに答えてくれないか?  そ
    れに、どうもおまえさん人間って感じじゃないしな。」
  「おや、たいしたものですね〜。」
  相変わらず人を喰った様な態度のゼロスに少し苛つきながら剣士は、
  「当たり前だ、どこの世界に空間からいきなりにじみ出てくる人間がいる。」
  そうゼロスに答える。
  「ではお答えしましょう、あなたが疑っている通り僕は人間ではありません。」
  「つまり魔族か。」
  「ええ、その通りです。そしてあなたの隣にいる彼女も」
  ゼロスのあまりの爆弾発言に、今度は剣士の方が驚愕の表情を浮かべる。
  「どういうことだ。」
  剣士の当たり前といってしまえば当たり前の質問にゼロスは、
  「文字通りの意味ですよ。」
  と笑みを絶やさぬままに答える。
  剣士は首を少女の方へ巡らし「どういうことだ」と質問をする。
  彼女はその質問に答えずに射抜く様にゼロスを睨み続けていた。




−第三章−

  幾ら質問をしても答え様としない少女に業を煮やした剣士はゼロスに向かい、
  「どういうことだ。」
  と再び質問、いや詰問をした。
  剣士と少女が放つ負の感情を食していたゼロスは、
  「良い食事をさせていただいたお礼にお教えしましょう、彼女はあるお方の命によ
    りあなたに近づいたのですよ。  あなたが腰に佩いているその剣、人間が言うと
    ころの光の剣『ゴルンノヴァ』をいただくために、ね。」
  その言葉に剣士は自分の愛刀の柄を握りしめる。
  「ところが彼女はいつまでたっても剣をもってこようとしない。  そこで僕も派遣
    されてきたと、こういう訳ですよ。」
  「ふざけるなっ!!」
  剣士は怒鳴る。
  その声は、隣でいまだにゼロスを睨み続けていた少女すらも反応させるほどだった。
  「貴様の言っていることが仮に本当であったとしても、この剣を渡す訳にはいかな
    いっっ!!」
  剣士は光で形成された刃を持つ剣、すなわち光の剣を抜く。
  だが、ゼロスは
  「もちろんそういうと思ってましたよ、よって僕はあの方にこう明言されています。
    『もし抵抗するのであれば殺してでも持ってきなさい』と。」
  「貴っ様ー!!!」
  その言葉を挑発ととった剣士は、ゼロスに斬りかかろうとした。
  が、その時
  「まって。」
  暫く黙っていた隣の少女が声をあげた。
  表情のないままに。
  「あたしがやるわ。」
  その言葉を剣士は信じられぬまま、ゼロスはいつもの変わらぬ笑みをたたえたまま
  きいた。
  思わず剣士は少女の方を振り向く。
  【この剣を誰の手にも渡す訳にはいかない、だがもし……】
  そして覚悟を決める。
  「たとえおまえであったとしても、死んでもこの剣を渡すわけにはいかない、もし
    欲しければ腕ずくでとってみるんだな。」
  そしてゼロスに向けていた光の剣を彼女に向けつつ間合いをとる。
  ゼロスは〈巻き添えはごめんだ〉とばかりにその場所より少し離れた岩の上に座る。

    そして闘いは始まった。………




−第四章−

  暫く対峙していた二人だったが、先に少女の方が動く。
  いくつもの魔力弾を生み、全てを剣士に向かって解き放つ。
  端から見ていたゼロスは彼女が何を考えているのかを悟った。
  つまり、彼女は死なない程度に剣士を気絶させ『ゴルンノヴァ』を持っていこうと
  考えているのだ。
  「そううまくいきますかね〜。」
  ゼロスの言葉通り、その考えは甘かった。
  剣士は自分に向かって放たれた魔力弾をある時は光の剣で、またある時はフットワ
  ークで全てかわしているのだ。
  だがゼロス、はこのままであるならば、いずれ彼女の勝ちになることも解っていた。
  あの魔力弾の嵐を人間がいつまでもかわせわしないということも解っていたからだ。
  しかし、ゼロスの考えも甘かった。
  暫くその場にとどまって魔力弾をかわしていた剣士がいきなり反撃に移ったのだ。
  自分に飛来してくる全ての魔力弾をわずかのフットワークと見切りでかわしながら。
  思わずゼロスは「ほう」と感嘆の声をあげる。
  この反撃には少女の方も驚いた。
  暫く相棒として連れ添っていた少女は剣士の動きを見切ったつもりでいたのだ。
  これだけ魔力弾を放てば最悪でもあたしに近づけないだろうと。
  あわてて間合いを取る少女。
  だが、ついに剣士に肉薄される。
  そして、自分に振り下ろされた剣を空間を渡って逃げる。
  だが剣士は剣の勢いを殺さずに大きく弧を描きながら体勢を整えつつ目を閉じる。
  その行動をゼロスは不思議そうに、そして楽しそうに見ていた。
  わずかな、刹那の瞬間目を閉じていた剣士は、
  「そこかっ!」
  と言い放ち、ある一点に向かって切り込んでいった。
  この行動にはさすがのゼロスも少し驚く。
  剣士が切り込んだその先は、彼女がまさに現れ様としているところだったのだ。
  通常空間に出たらすぐ魔力弾を解き放とうとしていた少女は、突っ込んでくる剣士
  に驚きながらも急いで魔力障壁を自分の前に展開した。
  とっさに何かを張られたことを感じ取った剣士は、その場所に向かって光の剣を振
  り下ろす。
  お互いの力を削りあいながら障壁と光の剣がぶつかる。
  「これは少し人間について少々認識を改めないといけませんかね〜。」
  そうのほほんとゼロスがつぶやいた瞬間、光の剣が障壁を破る。
  少女は手に作った小さい魔力障壁を使って光の剣を止める。
  動きが止まったその瞬間を見越したかの様に剣士は嵐の様な乱撃を少女に向かって
  振り始める。
  何とか、それこそ神業的な動き(魔族に神業的な動き?)で乱撃を凌いでいた少女
  だったが、何かに気を取られたのか反応が少し鈍る。
  そしてその僅かな隙を見逃す筈もなく剣士は
  「もらったー。」
  と、大きく振りかぶった。
  だが、まさにその瞬間こそ少女に現れた最後のチャンスであった。
  少女は思わずありったけの力を込めた(かなり力を殺がれてはいたが)魔力弾を剣
  士にむかって解き放った。
  その時、剣士は不可解な行動にでる。
  僅かに体をずらし、剣を振り上げたままの体勢で全身の力を抜く。
  そう、まるで甘んじて彼女から放たれた魔力弾を受けるかの様に……。
  剣士と少女の体は、少女のはなった魔力弾の光が覆い隠した。
  瞬間、剣士の体が大きくはじき飛ばされる。
  衝撃で剣士の手より離れる『ゴルンノヴァ』。
  思わず少女もゼロスも『ゴルンノヴァ』を目で追いかける。
  そして、「ずざあ」という音と共に大地に倒れる剣士。
  闘いは、少女が勝ったのだ。




−第五章−

  剣士が手放した『ゴルンノヴァ』を拾って少女は剣士に近づく。
  あの時、ありったけの力を集めたとはいえ、それまでの戦闘による消耗とチャージ
  時間がなかった為、力を完全には集約できなかったのだ。
  まあ、悪くすれば骨の一本でも折れているかもしれないが、死ぬ様なことなどまず
  ない筈だった。
  だが、少女は剣士に近づくにつれ違和感を感じ始める。
  幾ら気絶ぐらいはしているだろうとは言え、剣士の体から命の脈動をまるっきり感
  じないのだ。
  不安に駆られて少女は手にしていた『ゴルンノヴァ』を放り投げ剣士の方へ駆け寄
  り体を抱きかかえる。
  抱き上げられた剣士の口から流れ出る一条の紅い光。
  剣士は、胸に穴を穿ち絶命していた。
  彼女の後ろからこの闘いを傍観していたゼロスが、『ゴルンノヴァ』を手に近づい
  てきた。
  彼女の抱えている剣士の亡骸を見て、ゼロスは納得する。
  何故あの時、それまで慎重かつ大胆に攻め込んでいたこの男が剣を振り上げたのか。
  そう、この男は初めから死ぬつもりだったのだ。
  この男は、剣は死んでも渡せないと言っていた。
  だが逆に言えば、死ねば渡せると言うことだ。
  死んでしまえば文句や抵抗など出来ないのだから。
  彼女の後ろに立ったゼロスは彼女に声を掛ける。
  「どうやら旨くいった様ですね〜。」
  と、いつもの様に声を掛ける。
  彼女の反応を楽しみにしながら。
  だが、彼女は反応しなかった。
  不審そうに彼女を見ると彼女は肩をふるわせながら何かブツブツと言っていた。
  やがて、彼女の声が大きくなっていく。
  「あたしが……、あたしが……。」

  「いやあーーー。」

  彼女の絶叫が草原に響きわたる。
  「くふうう。」
  思わず歓喜の声をあげるゼロス。
  と、いきなり彼女の絶叫がやむ。
  【どうやら自分の手でこの男を殺したと言う現実に耐えきれなかった様ですね〜】
  そう、彼女は人間で言うところの精神崩壊を起こしていた。
  (ここで補足:魔族の精神崩壊=己の存在そのものの崩壊と位置づけてます)
  「このままほおっておいても滅びるでしょうが魔族がこんな理由で滅んだとあって
    は魔族全体の恥ですね。 ここは一つ私が滅ぼして差し上げましょう。」
  そう言って、いまだに剣士の亡骸を抱えている彼女に向かい魔力弾を放つ。
  ゼロスの放った魔力弾が彼女に当たるか当たらないかという瞬間、魔力弾がいきな
  り消える。
  「えっ?」
  ゼロスが、彼にしては間抜けな声をあげた時、今までぴくりとも動かなかった彼女
  が剣士の亡骸を抱えて立ち上がった。
  「馬鹿なっ、どうしてその状態で動けるんです。」
  その言葉にゴーレムの様な表情をした彼女が
  「ゼロス、『ゴルンノヴァ』をもってあの方…『ゼラス様』の元に帰りなさい。」
  「あなたはどうするつもりなんです?」
  「あたしはもう……。」
  「その様なこと、この僕が許すと思うんですか、あなたは。」
  「…………。」
  「先ほどはちょっとあなたのことを見損なっていた様です。  今度は本気ですよ。」
    そう言うと、ゼロスは精神世界と物質世界の両方から攻撃をしかける。
  だが、その攻撃も彼女によってはじかれる。
  あまりのことに何も言えなくなっているゼロスに向かって
  「もう一度言うわゼロス、『ゴルンノヴァ』をもってあの方の元に返りなさい。」
    彼女は静かに言い放つ。
  暫く憎々しげにゼロスは彼女をにらみつけていたが、
  「まあ、これ以上のことはゼラス様からも命令を受けておりませんし、ここはひき
    ましょうか。」
  そう言い残し、ゼロスは虚空に消える。
  その直後、彼女もまた自分の相棒であった剣士の亡骸を抱えたまま何処かにきえた。

  ゼロスは『ゴルンノヴァ』を持ってゼラスの居城、群狼の島へ帰ってきていた。
  「ゼラス様、ただいま戻りました。」
  「ご苦労でしたゼロス、してあの子は?」
  「それが……。」
  ゼロスが言葉を濁しているとゼラスの方から声が掛かる。
  「仕方ありませんね、あの子は創った時からかなり変わり者でしたから。」
  「はあ……。」
  「それでゼロス、首尾の方は?」
  「『ゴルンノヴァ』の方は確かに回収して参りました、この様に。」
  自分の手の中にある『ゴルンノヴァ』己が主人に見せる。
  「今回はこれが回収できただけで良しとしましょう。  それにあの子一人ぐらい
    ほおっておいても問題はないでしょう。」
  自分の主人にそう言われてはゼロスとしては最早逆らいようがく、不承不承うなず
  いた。
  「では…。」
  そう言ってゼロスはゼラスに渡そうとしたその瞬間『ゴルンノヴァ』がいきなり消
  える。
  「「なにっ!」」
  思わず主従そろって綺麗に声がハモる。
  「ばかな。」
  「いったい何が…。」
  訳の分からぬまま群狼の島に一組の主従がただずんでいた。




−第六章−

  花の咲き乱れる丘の上に一人の少女が座りこんでいた。
  よく見ると、彼女は素手で地面を掘り続けていた。
  やがて人一人、いや、かなり背丈の高い人間でも寝て入れるぐらいの穴を掘ると、
  傍らにある亡骸を抱え上げ穴の中に静かに寝かせた。
  そして、剣士の死に顔を綺麗にすると、冷たい唇に静かに自分の唇を重ねた。
  生まれて初めてのキスは、死の味がした。
  穴から出ると剣士の亡骸の上に土をかける。
  完全に埋めてしまうと、そこに金属で十字に組んだ墓標を立てる。
  彼女は、自分が立てた墓標にしがみつき嗚咽を漏らし始めた。
  嗚咽を漏らしていた少女は、やがて墓標に話しかける。
  「ここならよく眠れるでしょう、あなたがいつか話していた故郷のこの丘の上なら
    ………。」
  もっともこの話には続きがあり、剣士は彼女に一緒に行こうとも続けていたのだが。
  そして彼女は傍らに置いていたもう一つのもの、光の剣を手に取り刃を形成し、静
  かに自分の胸の前に持っていった。
  「叶うことなら、人間に生まれ変わってもう一度あの人と旅をしてみたい、一生を
    かけて……。」
  そう呟くと彼女は自分の胸に静かに光の剣の刃を埋めていった。
  最後の力を使い、光の剣をある場所に転送する。
  転送したことを確認すると、彼女は目を閉じる。
  彼女の遺体は大地の上に倒れることはなく、風が静かに塵となる少女の亡骸を運ん
  でいき、彼女の意識は混沌の中に沈み込むと思われた。
  が、まさにその寸前に彼女の意識に直接語り掛けてきた者がいた。
  「そなたの願い確かに聞き届けた、そなただけではなくそなたの傍らにある者もそ
    う願っておる。  だが今は眠れ、我が腕の中で、そなたの愛する者と共に。」
  彼女の意識は、隣に暖かい存在を感じながら静かに深淵の中に沈んでいった。



   そして、幾星霜の刻が流れる。




−エピローグ−

  2・3分も歩くと森の中を突っ切るように伸びていく街道を一人の男が歩いている。
  金髪碧眼の背の高い剣士で、名をガウリイ=ガブリエフと言った。
  容姿に関しては、まあよほどの変な趣味を持った女性でない限り、10人中間違い
  なく10人振り向くであろうと言うほどの美形であった。(くそ、うらやましい)
  ガウリイは街道の先にある森の中におかしな気配を感じる。
  複数の人間が動いている様なそんな感じであった。
  「盗賊でもいるのか?」
  もしそうならば、誰か狙われているということになる。
  「ま、ここであったのも何かの縁だ助けてみるか。  もしかしたらいい女かも知れ
    ないしな?」
  多少?邪な考えを持ったようだが、生来人のいいガウリイ君は剣を抜きつつ走り出
  した。
  何故か顔に微笑みを浮かべながら。
  やがて現場にたどり着くと栗色をした小柄な女性と十数人の雑魚とが対峙している
  ところだった。

  「少ないわね。」
  「−ハ、ハン!もちろんこれだけじゃねえぜ。  森の中じゃあ俺達の仲間が、今も
    弓矢でお前を狙っているんだ。  俺の掛け声一つで、お前の体はぼろくずみたい
    にズタズタさ。  手ェついて謝るっていうのなら、命だけは助けてやってもいい
    んだぜ。  え?」
  盗賊のご口上に思わず吹き出しそうになったガウリイだったが、気を取り直し盗賊
  達に声をかける。


  「それぐらいにしておくんだな。」

 

 

 

 

管理人の感想。

ブルーナイトさんから投稿作品をいただきました!!

ブルーナイトさん有難う!!

しかし、見事に名前が出ていませんでしたね(笑)

始めから読まれた方は結構騙されたのでは?

Benもブルーナイトさんのメールがなければ、悩んでいたと思います。

さて、素敵な小説を投稿してくれたブルーナイトさんに。

是非、感想のメールを送って下さいね!!

メールアドレスはこちらです!!

 

ブルーナイトさんへのメール

 

では、ブルーナイトさん本当に有難うございました!!

 

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