いつか・・・信じあえる日まで
 
 
 第五話    それぞれの思い

 

 

 

 

 

 

 

 「イツキ・・・ごめん。オレ・・・行くことにしたよ。
 
 ついて来てくれって言いたいけど・・・無理だね・・・・・・だから・・・さよなら」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 油断すると吸い込まれてしまいそうな闇の中、
 
 ゆっくりと前を進んでいく少女、名をティナ。
 
 その雰囲気はとても異様なものでした。
 
 その方の容姿は、身長は150センチ程度、金色の目で、瑠璃色の髪が腰のあたりまで伸ばしていて
 
 服は飾り気のない白のドレスでした。
 
 しかしこの雰囲気を出しているのはそれではありませんでした。
 
 
 「あの・・・その包帯はいったい・・・・?」
 
 
 「さあ?なんでだろう?」
 
 
 少女は顔を包帯で覆っていました。
 
 ティナさんはそのせいで顔はほとんどわからず、
 
 その上、目に生気が無く、人形のような気がしてなりませんでした。
 
 二、三分歩いてようやく目的の場所に着き、ティナさんは大きな扉を片手でゆっくりと動かしました。
 
 
 「エルザ、連れて来たよ。
 
 このくらい自分で行ってくれないかな」

 「・・・・・・ありがとう・・・・・・もう・・・下がっていいわ・・・・・・・
 
 今度・・・・・・何か・・・ご馳走するわ・・・・・・いらっしゃい・・・・・・プロスさん・・・・・・」
 
 
 そう言われ、静かに下がるティナさん。
 
 そして一人部屋にしては広すぎる空間に二人の人間が残された。
 
 目の前には先天的な遺伝子構造の変化によって真っ白な髪をそのまま伸びっぱなしにしている。
 
 ・・・まるで部屋の薄暗さと相まって老婆に見えてしまう。確か今年で28歳だったと・・・・・・
 
 
 「・・・・・・で・・・・・どうしたの?急に・・・会いたいなんて・・・・・・
 
 ・・・・・・こうして・・・・・・会うなんて・・・・・・何年ぶりかしら・・・・・・」
 
 
 「そうですね・・・・・・あなたがネルガルをお辞めになってからですから・・・・・
 
 だいたい十年ぐらいですか。どうでしたか?エルザさん、この十年間は?」
 
 
 「・・・・・・・・・・・・・・」
 
 
 「本名エルザ・アークス  現在28歳  独身  性別 女性  身長 160センチ
 
 火星  ユートピアコロニー出身  生まれた時、遺伝子情報にいろいろな違いが見られました。
 
 身体的にはその白い髪と真紅の眼が目立つ。だがそれだけではありませんでした」
 
 
 「やめて・・・・・・」
 
 
 怒気を体中から出し、止めようとする。しかしわたしは喋り続けた。
 
 
 「驚くべきはその学習能力だった。IQは優に200を超え、
 
 八歳には大学の教授クラスの頭脳を持ち、九歳にはネルガルの研究チームの主任、そして所長まで上り詰めた。
 
 しかしそんなあなたにも足りないものがあった。それは学業しか習わなかったため、善悪の判断ができなかったこと。
 
 そのため十八年前に取り返しのつかない事件を起こしてしまった。それは・・・・・・」

 「もう止めてーーー!!!」
 
 
 はあはあと、息を切らして大声を上げるエルザさん。
 
 
 「しかし、それを持ち前の能力と人脈を使って切り抜けるが、そのことがきっかけで今まで自分がしてきたことに少しずつ疑問を持ち始めた。
 
 けれど研究がネルガル前会長に認められ、長い間プロジェクトに参加しつづけた。
 
 ようやく、十一年前に研究の第一段階が終了、他の研究者の引き継ぎも終わり、あなたは違約金を払い、十年前にネルガルを辞めた。
 
 まあ、前会長は秘密が漏れることを恐れ、監視をつけていましたが。
 
  ・・・エルザ・アークスさん、あなたに私たちが作った戦艦に乗ってもらいたいのです」
 
 
 「・・・・・・丁重に・・・お断りするわ・・・・・・」
 
 
 「そうですか、残念です。テンカワ・アキトさんもお乗りするのに・・・」
 
 
 エルザさんの赤い眼が不意にわたしを捕らえる。
 
 
 「どういう・・・・・・ことかしら・・・・・・彼は・・・火星にいた・・・
 
 電話で・・・そう言ったのは・・・あなた・・・だった筈よ・・・・・・・・・・・」
 
 
 「はい、ですが先日わたしがお会いしたのは、テンカワ・アキトさんでした。
 
 間違いありません。念のためその場でDNAも取らせて貰いましたし・・・ご覧になりますか?」
 
 
 「・・・結構だわ・・・あなたが・・・交渉事で・・・嘘を付く・・・・・・なんてことはなかったもの・・・・
 
 ・・・・・・いいわ・・・乗ってあげる・・・・・・ただし・・・娘も・・・一緒・・・・・・だけど・・・・いい・・・?」
 
 
 娘・・・ですか・・・・・・・さっきの方でしょうか?そういえば・・・確か・・・
 
 
 「あなたがお辞めになるとき、欠陥品を持っていった、そう聞きました。
 
 まさか・・・人間だったとは・・・・・・」
 
 
 金色の瞳は遺伝子をいじった証・・・・・・うかつでしたね・・・あの方のインパクトが強すぎて・・・忘れていました。
 
 
 「・・・そういうこと・・・・・・わたしは医療班・・・・・・あの子は・・・なんでもいいわ・・・・・・
 
 あなたなら・・・・・・なんとでも・・・できるでしょ・・・・・・よろしく・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 今日の朝もわたしはアキトを起こしに行った。
 
 いつもアキトを起こしに行くとき、わたしはうれしく思っていた。
 
 頑張っているアキトも好きだったが、子供みたいに無邪気に寝ているアキトも好きだった。
 
 
 「アキト、入るよ」
 
 
 小さな声でそう言って、襖を開いた。
 
 だがそこには一組の布団があっただけであった。
 
 
 「アキト?どこ?」
 
 
 愕然としながらしぼりだすようにわたしは言った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「・・・私はすぐに・・・・・・戦艦に乗ることが・・・・・・決まったわ。
 
 あなたは・・・どうしたいの?」
 
 
 わたしは血の繋がらない娘、ティナに話し掛けた。
 
 
 「行く気なし。勝手に一人で行けば?」
 
 
 十一年間わたしは間違っているのに気が付きながらここまで育ててきてしまった。
 
 今更遅いかも知れない。が、これをきっかけに変わっていきたい。
 
 この子も・・・・・・そしてわたしも・・・・・・・
 
 
 「ホシノ・ルリ・・・・・・彼女も乗っているわ。
 
 一度ぐらいは・・・・・・見ておきたいでしょ」
 
 
 「・・・・・・私に何をさせたいの?」
 
 
 包帯で表情はわからないが、明らかに警戒していた。
 
 
 「・・・あなたに普通の子になってほしい・・・・・・それだけよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「サイゾウさん!!アキトがいなくなって・・・荷物もなくて・・・」
 
 
 わたしはすぐにサイゾウさんがいる厨房へ駆け出していた。
 
 しかしサイゾウさんは驚きもせず、静かに厨房に立って包丁を研いでいる。
 
 
 「・・・知っていたんですか?もしかしてこの間の戦艦ですか!?
 
 知っていたなら・・・・・・どうして止めてくれなかったんですか!」
 
 
 「ごめんね、イツキちゃん。
 
 でもねあの人がアキトくんの話に感動しちゃってね・・・・・・」
 
 
 イスに座っていた奥さんがゆっくりと説明しようとした。
 
 するとサイゾウさんが研ぐのを止めて大きな音を立てて奥さんの向かい側に座った。

 
 「アキトのやつに頼まれたんだ、イツキには知らせないでくれってな」
 
 
 「ど、どうして・・・・・・」
 
 
 「記憶のためなんだと。けどそれにアキトはイツキを巻き込みたくないってよ。
 
 イツキがあの戦艦に乗ることになったら間違いなくパイロットとして雇われることになる。
 
 戦艦で一番危険な仕事をイツキにさしたくないんだと」
 
 
 アキト・・・そんな・・・・・・
 
 わたしは、アキトがいないと・・・・・・
 
 わたしは床にへたり込んでしまった。
 
 
 「悪いがアキトのいる所は俺達にもわからん。
 
 ・・・アキトの事はもう諦めろ」
 
 
 サイゾウさんが決定的な一言を口にする。
 
 もう・・・・・・会えないの?
 
 
 「これ、な〜んだ?」
 
 
 そう言った奥さんの方を見ると何かの書類だった。
 
 
 「アキトくんね、こんな大切な書類を忘れていったのよ。
 
 中にいろいろと書いてあったわ。例えば出港が何日か先だったりね。
 
 誰かがこれを持っていかないとね。誰か持って行って上げる人いないかなあ〜?」
 
 
 そう言って私にウインクをする。
 
 
 「あ、ありがとうございます」
 
 
 私はすぐに二階に駆け上がった。

 

 

 

 

 

 

 「バカヤロウ!!なんであんなもの渡したんだ!!
 
 しかもアキトは忘れ物なんて・・・・・あ、お前カバンから抜き取りやがったな!!」
 
 
 「あら、今頃気付いたの?遅いわね〜」
 
 
 「お前、アキトとの約束を破りやがって!!}
 
 
 ガミガミと怒鳴りつけるサイゾウ。
 
 しかしそれをさらりとかわしていく。
 
 
 「あ〜そんなものもあったような気が・・・・・・」
 
 
 「気がするって、お前なあ・・・・・・」
 
 
 サイゾウはがっくりとうなだれた。
 
 
 「・・・アキトくんさあ、成長したわね。
 
 最初の頃はあまり他人のことに気が回らなかったのに・・・
 
 最近イツキちゃんのことを一番に考えていたわよね。
 
 でもまだまだね。
 
 女心まったくわかってないんだから」
 
 
 「だからってそんなことしていいのかよ」
 
 
 「・・・アキトくん、決断する時本当につらそうだったでしょ。
 
 お互いが不幸になるような約束は破ってもいいのよ。
 
 愛しているなら・・・・・・信じあわなければいけないわ。

 アキトくんはそれを気付かなかった、いえ気付かないふりをしていたわ。
 
 イツキちゃんを危険な目に合わせないためにね。
 
 でもそんな不幸な関係を黙って見ていられるほど私はお人よしじゃないわ」
 
 
 「はあ、まったくお前には・・・・・・」
 
 
 サイゾウが降参と短く言うと、奥さんは穏やかな顔で笑っていた。
 
 
 「でもこれでイツキちゃんが不幸な目に会ったら・・・・・・アキトくんに恨まれるわね」
 
 
 「・・・大丈夫だよ。
 
 最初はそうかも知れねえが・・・・・・いつか・・・・・・きっと・・・な」

 

 

 

 

 

 

 「イツキ、今頃怒っているんだろうな・・・・・・
 
 でもイツキには幸せになってもらいたい。だから一人で行くんだ」
 
 
 プロスさんに書類に書いてあった場所に自転車のペダルをこぎ続けた。
 
 もうこれからはイツキはいない。
 
 そのことはもう覚悟していたことだ。
 
 後悔・・・・・・していないと言ったら嘘になるけど。
 
 そんなことを考えていると一台の車が通り過ぎていった。
 
 しかしその車のトランクからスーツケースが襲ってきた。
 
 
 「な、な、な、ぐぇ!!」
 
 
 あえなく激突してしまった。
 
 ちくしょー、誰だよ。
 
 
 「何なんだ!!まったく!!」
 
 
 「すみませーん!お怪我ありませんでしたかー?」
 
 
 車から白っぽい制服に身を包んだ髪の長い女性が声をかけてきた。
 
 それに続いて中性的な顔の・・・男性が降りてきた。
 
 
 「すみません。
 
 ユリカ〜、だから荷物減らそうっていったじゃないか」
 
 
 「だって〜ユリカが三日もかけて選んだものだもん。
 
 本当にすみませんでした」
 
 
 片付け始めた二人を見て
 
 しょうがないなあ、といった感じで手助けをする。
 
 するといきなり女の人が顔を近づけて、
 
 
 「あの〜不躾ですみませんが、どこかでお会いしませんでしたか?」
 
 
 「・・・・・・悪いけどオレはわからないよ」
 
 
 記憶がないことはややこしくなるので黙った。
 
 
 「そうですか・・・
 
 確かにどこかでお会いしたと・・・・・・」
 
 
 「ほらユリカもう行かなくちゃ。遅刻だよ」
 
 
 「あ、本当だ。
 
 それではご協力感謝します」
 
 
 そう言うと二人は車の方へ駆け出していった。
 
 するとすぐに車は発進した。
 
 
 「ったく、何だったんだ?
 
 ・・・・・・あれ、これは?」
 
 
 足元にあったものは・・・これは・・・フォトスタンド?
 
 写っているのは・・・・・・小さな男の子と女の子。
 
 女の子の方はさっきの女性かなあ?
 
 男の子の方は・・・・・・オレに似ている?
 
 まさか・・・・・・なあ?
 
 
 「どうしよう、これ?
 
 置いて行くのもなあ・・・・・・」
 
 
 ま、いいか。
 
 向こうに着いたら、警察にでも届けていくか。
 
 そう思うとそれをバックの中に詰め込んだ。
 
 
 「え〜と、まだまだだなあ。
 
 やっぱ自転車で行くの止めていた方がよかったかなあ?」
 
 
 少しだるさを感じている足を気にしながら、しぶしぶ目的地までの道のりを急いだ。

 

 

 

 

 

 

 「いやいや、お疲れのようで・・・・・・
 
 ささ、こちらの方へどうぞ」
 
 
 ようやく、ネルガルのサセボドックに着いたオレはすぐにプロスさんに案内されていた。
 
 すぐにでも休みたかった。
 
 
 「これが・・・・・・おれが乗る戦艦ですか?」
 
 
 「そうです。
 
 これが・・・・『機動戦艦ナデシコ』です」
 
 
 その外見は素人のオレから見ても普通の戦艦とは異なっていた。
 
 
 「ずいぶんと・・・・・・個性的な戦艦で」
 
 
 「いやはや、これは手厳しい。
 
 しかしこの戦艦は従来のものとは大きく性能がちがうんですよ」
 
 
 はあ、としか言いようがなかった。
 
 戦艦なんて興味のなかったのですぐに自分の部屋はどこかと訪ねた。
 
 
 「はあ、それもいいですがまずはこの中の案内をしませんと・・・・・・
 
 あ、それとこれはコミュニケです。付けておいてくださいね」
 
 
 腕時計のような形状のものを手渡される。
 
 しばらく観察した後、言われた通りにした。
 
 やっと戦艦の内部に入り、格納庫へと辿り着いた。
 
 するとそこにはスピーカーで怒鳴っている人と、
 
 めちゃくちゃに動いているロボットがいた。
 
 
 「こらーーー!!
 
 そのエステバリスはまだ整備中なんだ。
 
 それにパイロットはまだこの戦艦に乗っていないはずだぞ」
 
 
 しかしそれに乗っているはずのパイロットは応えずに
 
 訳のわからないことを言い、しまいにはロボットごと転倒してしまった。
 
 
 「あ〜あ、いわんこっちゃない」
 
 
 「いてて、失敗失敗。
 
 ・・・・・・あれ?立てないぞ?」
 
 
 「あ〜、お前さん足折ってるぞ」
 
 
 ロボット、エステバリスと言うそうだが、から出てきた暑苦しそうな男の足は
 
 曲がってはいけない方向へ曲がっていた。
 
 ・・・・・・見ている方が痛かった。
 
 
 「何ー!!
 
 痛てー!!早く医務室へ連れてってくれ。
 
 あ、そこのお前。中にオレの宝物が入っているんだ。取って来てくれ」
 
 
 オレを指名して頼み、そのまま担架で運ばれてしまった。
 
 
 「え〜と、あ、これか?
 
 しかしおもちゃが宝物ってあいついくつなんだ?」


 整備の人の許可を取ってハッチを開けてもらった。 
 
 ハッチの中で子供向けのロボットの人形を手に、
 
 疲れのためか動かずに席でくつろいでいた。
 
 ・・・・・・このまま出発すればイツキともう会うこともできないだろう。
 
 できれば挨拶ぐらいはしておきたかったな。
 
 けど絶対に引き止められるし・・・
 
 頭の中でイツキのことばかりが浮かんでくる。
 
 ・・・オレはイツキにばかり甘えていた気がする。
 
 あのままだったらイツキに負担ばかりかける。
 
 オレは自分のことばかり考え、行動し、そして失敗すればイツキに甘える。
 
 イツキと一緒にいると嫌でも自分が最低な人間だとわかってくる。
 
 イツキはとてもいい子だから。
 
 イツキはとても素直だから。
 
 イツキはとても人のことばかり思っててくれるから。
 
 自分の汚い所が浮き彫りになる。
 
 自分の心の醜い部分が染み出してくる。
 
 知られたくなかった。
 
 こんなオレのキタナイ部分を知られたくなかった。
 
 あんなに思ってくれているのに自分の過去が気になっている。
 
 イツキとの生活にいらないものなのに欲しがる。
 
 これはただのわがままだ。
 
 おれは人間で一番キタナイとまで思ってくる。
 
 いや、きっとキタナイのだろう。
 
 ・・・・・・いつの間にか涙が出ていた。
 
 
 「イツキ・・・・・・」
 
 
 突然エマージェンシーコールが鳴り響く。
 
 
 「な、なんなんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 「艦長はまだなの!?
 
 もうとっくに着いててもいいはずでしょ!?」
 
 
 男がキャンキャンとわめいていた。
 
 この男が副提督のムネタケ・サダアキだった。
 
 
 「おかしいですなあ、もうとっくに着いているはずなんですが・・・」
 
 
 プロスペクターはムネタケの相手をしていた。
 
 しかしブリッジにいるほかのメンバーは・・・・・・
 
 
 「ねえねえ、ミナトさん。
 
 艦長ってどんな人なんでしょうね?
 
 かっこいい人ならいいなあ」
 
 
 通信士のメグミ・レイナードだった。
 
 
 「でも意外とおじさんだったりして」
 
 
 答えたのは操舵手のハルカ・ミナトだった。
 
 期待していた答えと違って、メグミは不満顔をしている。
 
 
 「じゃあさ、ルリちゃんはどんな人だと思う?」
 
 
 「別に興味ありません」
 
 
 オペレーターのホシノ・ルリはそっけなく言った。
 
 
 「でもさすがにこの艦が動かないのはまずいわよね。
 
 上の人達大丈夫かなあ?」
 
 
 「そこの軍人さんもうるさいだけだし、
 
 この艦に乗ったの間違いだったかな?」
 
 
 二人が不満を言っていると
 
 不意にブリッジの扉が開いた。
 
 
 「すみませ〜ん、遅れちゃいました。
 
 私がこの艦の艦長、ミスマル・ユリカです。ぶいっ!!」
 
 
 にっこりと笑ってピースサインをする女性に
 
 一人を除いて一瞬時が止まった。
 
 
 「・・・バカ?」
 
 
 続いて息を切らせながらアオイ・ジュンが入ってくると
 
 ようやくみんなが始動していた。
 
 
 「遅刻のことは後でいいですから
 
 この状況を何とかしてください」
 
 プロスさんがそう言うのを聞きながら
 
 ユリカはマスターキーを差し込んでいた。
 
 
 「そんなの簡単よ。
 
 砲台を上に向けてぶっ放せばいいのよ」
 
 
 ムネタケが外道なことを言う。
 
 
 「それって上の人達見捨てるってことですか!」
 
 
 「非人道的だよね〜」
 
 
 「ど、どうせもう死んでるわよ」
 
 
 「艦長、君ならどうする?」
 
 
 フクベ提督が静かに述べた。
 
 
 「はい、それでは・・・・・・」
 
 
 しかしそれをルリが遮った。
 
 
 「エステバリスが地上に向かっています」
 
 
 「「「「「「「「え!?」」」」」」」」
 
 
 ブリッジにいた全員声を上げてしまった。
 
 
 「ル、ルリちゃん、回線開いて」
 
 
 はい、っと短く言うと
 
 すぐに若い男の姿が現れた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「くそ、どうなっているんだ?」
 
 
 急に動いて、地上に上がっているみたいだった。
 
 そんなことを思っているとウインドウが突然開いた。
 
 
 「君、名前と所属を言いたまえ」
 
 
 いきなりだったのでびっくりしたが
 
 
 「テンカワ・アキト。コックです」
 
 
 「なんでコックがオレのエステバリスに乗ってるんだ!!」
 
 
 またもう一つ新しいウインドウが開き、さっきのパイロットが映し出された。
 
 
 「いや・・・あの・・・その・・・」
 
 
 「あーー!!
 
 アキトだ、アキト!!」
 
 
 「え?え?え?
 
 だ、誰だよあんた?」
 
 
 大声を上げている女性、確かさっき会ったような・・・・・・
 
 
 「何言っているのよ、火星でお隣だったじゃない。
 
 それよりアキト、そのまま行くと危ないよ。
 
 ううん、そんなこと女の私が言える事じゃないわね。
 
 アキトが自ら囮になってくれるんだもの。
 
 じゃアキト頑張ってね」
 
 
 「囮ってなんだーー!!!」
 
 
 振動がオレに地上まできたことを告げる。
 
 そこには無数のバッタが軍と争っていたが、目標をすぐにこのロボットに変えた。
 
 
 「うわーーー!!
 
 なんなんだよこれーーー!!」
 
 
 たくさんのバッタがミサイルを降らせてくる。
 
 それを紙一重でかわすがすぐに別のバッタ達がミサイルが発射する。
 
 いくつかのミサイルが当たったがなんとか持ち堪える。
 
 だめだ、手が震えてくる。
 
 恐怖がこみ上げてくる。
 
 意識を手放しそうになる。
 
 けど、オレは一人でも頑張るんだ。
 
 イツキを頼りにしてはいけない。
 
 一人でもやっていかなくてはいけないんだ。
 
 そう自分で決意したんだ。
 
 そうやって自分を奮起させてやってきたがついに海際に追い詰められた。
 
 もうだめなのか?
 
 こんな所で死ぬのか?
 
 嫌だ、オレは・・・・・・
 
 
 「アキトーー!!
 
 海に飛び込んでーー!!」
 
 
 その言葉に反応してジャンプした。
 
 ナデシコがすでに現れていた。
 
 
 「なんで・・・?」
 
 
 「あなたのために急いできたの」
 
 
 それだけ言うとブリッジと合図して信じられないくらいの砲撃がバッタ達を消滅させた。
 
 
 「イツキ・・・・・・
 
 オレは・・・・・・お前を・・・・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 後書き
 
 どうも一ヶ月も待たせてしまった十二の翼です。
 
 この文を作るのに何回も書き直しました。
 
 まあもうオリキャラは難しいですし。
 
 エルザの特徴ははっきり言って大人版綾波〇イです。
 
 そこに白い髪と赤い眼を付け足せばもうオッケーです。
 
 あ、ちなみに親父は謎の腹痛で危篤状態です。
 
 なにか悪いものでも喰ったんでしょうか?(笑)
 
 追伸  イツキは前回で最後までいってません。
 
      アルファベットで言うとCの一歩手前です。
 
      ・・・いまどきアルファベットで言わないよな。
 

 

 

 

 

代理人の感想

 

エルザさん、はっきり言って不気味です(更爆)。

娘はミイラだし(汗)。

 

・・・・・ア○ムス・ファミリー(核爆)?