時の流れに番外編

 

 

 

ナデシコ的三国志

 

 

十一話、周瑜南郡制圧に成功する前編

 

 

 

前回までのあらすじ

 

 

 

魏と呉が南郡でにらみ合いをしている隙をついて劉備は南荊州四郡の接収にかかった。

これにより劉備はようやく本拠地を手にいれることができたのである。

しかし劉備の動きは呉に警戒心を抱かせる結果となった。

自分達が欲しかった領地が、自分達が手を差し伸べた女に横取りされることになったからだ。

呉陣営にとって劉備の存在が軽視できなくなってきた中、南郡では変事が起こっていた。

 

 

 

「敵の攻撃に勢いが無くなってきただと!?。」

 

曹操ユリカの一族で勇猛名高い曹仁九十九が、その報告を聞いて首をかしげた。

ユリカに江陵城の死守を厳命されてより数ヶ月、ネルガル(呉)の猛攻をなんとか凌いできた。

だが度重なるネルガルの攻撃を前に、正直限界が近い。

ところが、最近になって敵の動きが鈍くなってきていた。

それゆえか、以前に比べ敵に勢いが無いという報告が何度も九十九の所へきている。

本来なら喜ばしいところであるが、急に変化があるとかえって不安になるのが人間と言うものだ。

敵の新たな策略か、あるいは別の何かか、とにもかくにも九十九は事実関係をはっきりとさせることにした。

 

「よし、密偵を放ってくれ。

 この変化の理由が撤退であるならばそれでもいいが、なんらかの策であるならば捨て置くことはできないからな。」

 

「は!!。」

 

九十九の命令を受け、兵士が足早に宮殿から姿を消した。

九十九は軍議の間の上座に腰を下ろしう〜んとうなっていた。

 

「一体どういうことだ?。

 う〜む、どうも毎日毎日敵の猛攻に耐えることしかしなかったから、急な動きに思考がついていかん。

 何かの策略だろうか?。」

 

真剣に悩む九十九。

だが別のことにも頭を悩ませているらしい。

軍議の間に誰もいないからかため息をつくと、独白を始める。

 

「ふぅ、そう言えば許昌から離れてもう1年以上になるな。

 あぁ!!、ミ、ミナト殿は元気でやっておられるだろうか(顔真っ赤)!!。

 彼女のことだから心配はすることはないだろうが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハ!?、

 もしや俺がいないうちに軟弱な文官どもがミナト殿にちょっかいを!!。

 も、もちろんミナト殿ことだからそのような輩に心を許すようなことはないだろう、うんうん、そうに決まっている

 (勝手な解釈)。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ!?。」

 

気がつくと、軍議の間に二人の人間が来ていた。

一人はあきれた目で、もう一人は不信の目で。

前者は徐晃源八郎、後者は干禁元一朗である。

 

「ふ、二人とも声もかけずに入ってくるな!!。

 び、びっくりするだろう。

 な、なんだその目は?、二人して(汗)。」

 

今の独白を二人に聴かれたことを察した九十九は、大声でまくし立ててごまかそうとした。

だが余計に恥ずかしいだけである。

赤くなりながらだんだん声が小さくなっていく九十九に呆れながら、源八郎が切り出した。

 

「九十九、陳群ミナト殿のことを気にしている心の余裕があるなら現状を打開するてだてを考えてくれないか。

 敵に勢いがないのは確かだが楽観はできんのだぞ。」

 

「い、言われなくてもわかっている!!。

 だから密偵を放って敵の様子を探ってるのだろう。 

 な、なんだ元一朗。

 その目は?。」

 

「別に。

 たかが数ヶ月の篭城にまいってこの場にいない婦女子に助けを求めるようになってしまった親友が哀れでな。」

 

元一朗の強烈ないやみを受けて九十九はカチンときた。

 

「じ、自分はミナト殿に助けなど求めてない!!。

 たた彼女の身が心配なだけだ!!。」

 

「彼女は許昌にいるのだぞ、心配する必要などないではないか。

 そんな余裕があるなら士気が下がりつつある兵達を少しでも鼓舞をしろ。」

 

あくまで辛辣な元一朗の言葉に九十九は、上座から立ちあがり彼の前にせまった。

いよいよ険悪ムードが高まっていく。

 

「貴様!!、それが城主に向かって言う言葉か!!。

 謝罪しろ!!。」

 

「ふん!!、頼りにならん城主に活を入れて何が悪い!!。

 そっちこそ軟弱になったと認めてしまえ!!。」

 

「まだ言うか!!、表へ出ろ元一朗!!。

 その腐りきった性根を叩きなおしてくれる!!。」

 

「それはこっちの台詞だ!!。

 ネルガルの雑兵どもに無様に討たれる前に俺が引導を渡してやる!!。」

 

「ふ、二人ともやめんか。

 今後のことを話しあう「「止めるな源八郎!!、男の勝負に口出しは無用だ!!」」

 

そう言うなり二人は本当に宮殿を飛び出し、表で男の勝負・・・・・・・・・・ではなく、無意味など突き合いを始めた。

源八郎はあきれ果てて放っておくことにした。

 

「やれやれ、あれを見た兵士達の士気が上がればいいのだが・・・・・・・・・・ただの喧嘩では上がらないか(脱)。

 それにしてもネルガルの動きも気になるが、それ以上に劉備サラも軽視できなくなったようだ。

 彼女は南荊州を接収したそうだからな。

 だがこれは逆にチャンスかもしれん。

 ネルガルも劉備サラも荊州の支配者は自分だと思ってるだろう。

 お互いの正義が荊州の領有にある以上、利害をめぐって衝突するのは目に見えている。

 最悪南郡をネルガルに下げ渡して、領地を接近させてあい争わせるのも手かもしれん。

 そうすれば漁夫の利をもってつけいる隙もできよう。

 よし、敵の動きが鈍いうちに艦長殿に手紙を出しておくか。」

 

一人これからのことを考えている源八郎を尻目に、宮殿の外では例の二人が派手に騒いでいた。

こうして江陵城を守る将軍達はそれぞれの時間を過ごしていくのだった。

 

 

「元一朗、自分は軟弱ではない!!、撤回しろ!!。」

 

「ほざくな九十九!!、その程度の拳打しか放てないものの言う台詞ではないわ!!。」

 

「何を言う!!、そんな見え見えのフェイントに引っかかるとでも思っているのか!!。」

 

「何ーー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

ネルガルの前線駐屯地ではただならない事態が起こっていた。

数日前に何回目かの江陵城攻撃を指揮していた周瑜ラピスが流れ矢を受け負傷したのだ。

その上傷口からばい菌でも入ったか、熱まで出て非常に危険な状態が続いている。

赤壁の戦勝の勢いを活かせないのに加え大黒柱のラピスの負傷は、ネルガルを完全に浮き足立たせていた。

 

「おいプロスさんよ、ラピス嬢の容態はどうなんだよ!!。」

 

猛将として名高い呂蒙ガイが馬鹿でかい声を上げながらラピスの陣幕から出てきた魯粛プロスに彼女の状態を聞いた。

つばを目いっぱい顔に飛ばされて、プロスは少々不機嫌である。

 

「正直申し上げまして、あまりいいとは言えませんな。

 傷口は急所を外れてはおりますが、当たり所が悪く完治には時間がかかるでしょう。

 また熱が下がらないため軍の指揮も当分はできますまい。」

 

プロスの報告を聞いて、将軍達は皆ため息を漏らした。

ラピスの容態の変化次第では撤退も考えなければならない。

江陵城の手間取りが悪い形で出てしまったことに、皆少なからず無念を感じていた。

 

「熱のせいか、うなされていて寝言を言ってもいましたな。」

 

『寝言ってなに〜?。』

 

譜代の老将(?)、韓当ブロスの質問にプロスはなんとも言えない表情をで答えた。

 

アキトは私のもの、ルリなんかには渡さないんだから!!、とかなんとか・・・・・・・・・・(笑)。」

 

「寝言と言うより願望ではないのか。」

 

突然会話に入ってきた黄蓋ゴート

だが周りは変な目でゴートを見ている。

 

「あれぇ、たしかゴート将軍って・・・・・。」

 

「ああ、確か・・・・・。」

 

「でも健康そうだな。」

 

「幽霊か?。」

 

周りの反応にゴートは渋い表情を見せた(いつもだが)。

なぜ自分にそんな対応をするのか得心していないからだ。

ゴートはガイに質問してみた。

 

「ヤマダ、なぜ周りは私を見て不思議がるんだ?。」

 

「それは借りの名だ!!(怒)。

 それはそれとして、あんたって確か・・・・・・・・・・赤壁で便所に捨てられて死んだんじゃないの?。」

 

「か、勝手に殺すな(怒)。

 あの後ブロス君に助けてもらったのだ。

 最も、ろくに声もでなかったからやばかったんだが。」

 

まるで他人事のように珍妙な体験を語るゴート。

周りはどうでもいいことらしく、”ふ〜ん”程度の反応しか見せなかった。

ゴートはちょっとブルーになってテンションが下がってしまった。

 

「ま、まあまあ。

 それは作者の文章表現のなさのせいなのですから(作者苦笑)。

 それよりも今後のことを練らねば。」

 

そういいつつも、すでにプロスはラピスと江陵城撃破の次の策を話し合っていた。

軍議用の陣幕に武将達を集めて指示を出すことにした。

ラピス、プロス合作の案はというと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

「攻略すべき場所はすばり夷陵です。」

 

プロスはそう言い放った。

夷陵とは江陵よりやや北西に位置する場所を指す。

後に劉備が義弟関羽の復讐のために起こした大軍を名将陸遜が迎え撃った舞台として有名である。

 

「つまり夷陵を攻略し北西から圧力をかけるのです。

 長江を隔てた南からの攻撃よりはずっと効果的にことが運べるでしょう。

 もちろん敵は察知して江陵城の守備兵を多少減らしてでも迎撃してくるでしょうから、

 こちらも選りすぐりの武将を選抜いたします。」

 

プロスは選抜した武将達を名を読み上げ始めた。

 

「まずは当然ですが、呂蒙ガイ将軍。」

 

「おうよ!!。」

 

「次に甘寧千沙将軍。」

 

「はい!!、承知しました・・・・・って、ちょっと待ちなさい!!(怒)。」

 

長い緑色の髪を後ろで縛ったおっとり系の美女が怒りで顔を歪ませている。

甘寧千沙は元劉表フクベの家臣であったが、さまざまな事情があり現在はネルガルの社員、

ではなく武将として仕えている。

降将ではあるがその抜群の武勇はネルガル最強との呼び声が高かった。

 

「なぜ私が甘寧なのですか!!。

 甘寧って元海賊だとか、粗暴で手持ちの料理人を強引に殺したとか野蛮な話しか残ってない武将ですよ!!(怒)。

 時の流れにの中の数少ない常識人にして文武に優れてる私が甘寧なんて納得いたしかねます!!(怒)。」

 

怒り狂う千沙の剣幕に周りは少々引き気味であった。

まあお怒りもわからないではないと周りは思った。

甘寧に適役がないためパイロットの腕だけで作者に決められたのだから(作者苦笑)。

だが一方でこの場にいる全員がこうも思った。

 

 

「文武に優れるはともかく常識人ってのはちょっと(汗)」

                           ×ネルガル全員

 

 

周りの視線の意図を察したか、千沙はぎらりとプロスを睨んだ。

 

「プロス参謀、何か悪意を感じましたが(怒)。」

 

「あ〜、いやいや、そのようなことはございませんぞ。

 それはともかく、呉といったら甘寧ですからな、外すことはできません。

 その代わり、甘寧は死亡年が正確ではありませんからな、かなりのアレンジで活躍が期待できるというものです、はい。」

 

「そんなのでは納得できませんが・・・・・まあいいでしょう。」

 

納得したようである(笑)。

プロスは気を取り直して次の武将の名を告げた。

 

「次は凌統百華将軍。」

 

「はい!!。」

 

栗色の髪を後頭部で団子状している女の子がプロスに元気よく返事を返した。

凌統百華はネルガルの猛将の一人である。

孫権ナガレが会長の地位(?)を継いだ頃から苛烈な戦功を立てている。

忍耐強く礼儀正しい性格で、周りの信頼も厚かった。

 

「ねえ、プロス参謀?。

 ナオ様もネルガル所属ですよね(はぁと)。」

 

百華の顔を真っ赤にした質問にプロスは渋い顔をした。

 

「残念ですが、ヤガミさんは劉備サラに仕える猛将黄忠役です。

 そ、そんな怖い顔なさらないでください。

 決めたのは作者なんですから(汗)。」

 

百華がどんな顔をしていたか、それは恐ろしくてコメントできない(爆)。

だがすぐに残念そうな表情へと変わる。

 

「う〜、なんでナオ様と一緒じゃないの。

 愛し合うもの同士なのにー。」

 

「それは私も一緒です。

 ああ、九十九さん・・・・・・・・・・。」

 

しょげてテンションが下がっていく千沙と百華。

無神経なガイはそんな二人に禁句を告げた。

 

「でもあの二人はよー、恋人がいるんじゃねーの。

 ほらミリアさんとミナトさんがよー。」

 

 

ブチ!!×2

 

 

何かがキレタ音が陣幕に響き渡った。

そしてその音を誰が発したのかは、ガイ以外は皆察していた。

 

「な、なんだ?、今の音は。

 ん、なんだよ、二人して・・・・・・・・・・あ、こら、なんで武器を持ってるんだ!?。

 まだ戦は始まって・・・・・・・・・・うッぎゃーーーーー!!

 

ガイの悲鳴が駐屯地全域に響き渡った。

プロスは惨劇を見て頭を抱えてしまった。

 

「これから大事な戦だと言っているのに。

 はぁ、心配になって参りましたぞ。」

 

「私達は悪くありません。

 この方が無神経なのが悪いのです。」

 

「そうは申されましても・・・・・・・・・・、おお、そうだ!!。

 千沙さん、会長より貴方宛に手紙を戴いているのですが。」

 

そう言うなりプロスは封筒を千沙に渡した。

やたら派手な封筒である。

千沙は不審がりながら封筒から手紙を取り出して読んでみた。

 

『やぁ〜、マイハニー、調子の方はどうだい。

 僕も伴侶の君がいないと寂しくて仕方ないよ。

 でもこれも僕らの未来のためだからめげずにがんばってね(はぁと)。

 それとヤマダ君にだね、そろそろ重要な職に就く様になるんだから勉学に励むように言っといてくれる。

 僕も会長になってからは寝る間も惜しんで勉強したものだよと。

 役に立ってるかどうかは別としてね(爆)。           BY貴方が愛する孫権ナガレより』

 

読み終えた千沙はぶるぶると体を振るわせていた。

もちろん喜びではなく怒りである(笑)。

 

「なにが伴侶ですか!!(怒)。

 いつ私があなたと将来を誓い合ったと!!。

 僕らの未来!!(怒)、勝手に決めないでください!!。

 しかもこの無神経男のフォローまでしろ!?。

 冗談じゃありません!!。」

 

「千沙君、落着き給え。」

 

「これが落ち着いていられますか!!。

 私この任務降ろさせていただきます!!。」

 

ゴートの言葉を無視すると千沙は陣幕から出ようとした。

すると遅れてやってきた陸孫万葉と鉢合わせた。

 

「遅れて申し訳ありません。

 ん、千沙、どこへ行くの?。

 軍議はまだ終わってないのでは?。」

 

「やってられません!!。」

 

それだけ言うと千沙は出ていってしまった。

事情がよく飲み込めない万葉は首を傾げるばかりである。

 

「万葉さん、次の進攻予定地は夷陵です。

 陣頭指揮はラピスさんに代わって私がしますので、あなたは参謀代理として従軍してください。」

 

「は!!。」

 

「それとですねぇ、千沙さんは絶対に従軍してもらいますので説得しとしてください。

 事情は後で話しますので。」

 

「はぁ、了解しました。」

 

わけのわからない不協和音が鳴り響く中(爆)、3日後にネルガルは長江を渡り夷陵へと進攻を開始。

ラピスの負傷と夷陵への動きを掴んだ九十九も、源八郎に江陵の守備を任せ元一朗と共に迎撃に向かった。

 

 

 

 

 

 

プロスらが夷陵進攻を開始した頃、孫権ナガレは劉備サラと甘露寺で会見していた。

同盟を結んで初めての顔合わせとなる。

お互いの親睦を深めるためというのが表向きの目的だが、実際は当然違う。

劉備側は孫権のご機嫌とりであり、孫権側は劉備の懐柔が目的である。

劉備は当然として、孫権もまだ単独では曹操に太刀打ちできない。

そこで相手の思惑はあえて目をつぶって友好関係を深め、曹操に対抗しようとしていた。

 

「はー、いい所ね。

 長江が近いだけあってお魚もおいしいし、真珠ももらっちゃった。

 アキト、いっそのことでここでをあげようか(はぁと)。」

 

劉備サラにそう言われて護衛として随行してきた趙雲アキトは冷や汗を流した。

いくらアキトが鈍感でも式という単語を使われればなんのことか察しがつく。

へたに頷いたりすると後で諸葛亮ルリ達に何されるかわからないし、首を横に振ればサラは泣きじゃくって

”私のこと嫌いなの”を連呼してくるだろう。

 

「ね、ねえサラちゃん。

 そろそろ公安(荊州領有後の本拠地)に戻らない?。

 もう二週間以上ここにいるんだよ。

 ルリちゃん達も心配するだろうし、いくら同盟同士だからっていずれは・・・・・・・・・・。」

 

とりあえず真面目な話題で話をそらしたアキト。

サラは納得いかなかったようだが、確かに大切な話なので真面目に対応した。

 

「う〜ん、確かにそうだけどね(もう、すぐに話をそらんだから)。

 でも待遇もいいしね、もう少し楽しんでもいいんじゃないかって思うんだけど。」

 

「俺達は物見遊山に来たんじゃないんだよ(うまくいった)。

 それに主君がいつまでも本拠地にいないと兵達も民も不安になるよ。

 そろそろ頃合だよ。」

 

なおもアキトに説得されてサラは迷った。

だがアキトの物言いは、いつまでもここにいると命があぶない、という言葉が暗に含まれている。

確かに戻ったほうがいいかもしれないとサラは思った。

 

「わ、わかったわよ。

 じゃあ戻りましょう。

 期間はあさってにしましょう。

 今日言えば恐らく今夜か明日の晩に最後の宴があるだろうしね。」

 

ようやくサラが決断したのでアキトはほっとした。

ここの所の宴会でサラはぬるま湯につかりきっていた。

このまま遊興に溺れて骨抜きになってしまうのではないかと心配していたのだ。

またアキト自身もうんざりしていた。

街に出れば必ず女性に声をかけられるのだ(笑)。

おかげでサラにかなりイヤミを言われている。

いい加減ネルガルの領土から離れたかったようである。

 

「よかった。

 じゃあ早速帰還の支度を始めるよ。

 それと明後日帰ることもネルガルに伝えるから。」

 

「ええ、お願いね。

 でもちょっと残念かな、ふふ。」

 

贅沢な生活がちょっと恋しいサラであった。

翌日の晩になって、甘露寺で最後の宴が催された。

 

 

 

 

「いや〜、残念だな〜。

 もう帰ってしまうのかい。

 僕としてはまだいてもらっても構わないのに。」

 

孫権ナガレが宴の中で自らサラに酌をした。

サラはアカツキの言葉が本心かどうか測りかね、曖昧な返事を返した。

 

「ええ、いつまでもいてはご迷惑ですし。」

 

「とんでもない、美人な方にいてもらうのは願ったりだよ。」

 

アカツキの世辞にサラはまんざらでもない表情を見せた。

サラのうぶな反応に満足したアカツキは傍らで仏頂面しているアキトにも酒を進めた。

 

「やあテンカワ君。

 どうだい君も、宴の席でそんな顔してたら皆さめちゃうでしょ。」

 

「これが俺の仕事ですから。

 でも会長自らのお酌を断るほどの無礼はしません。

 いただきます。」

 

アカツキはアキトの杯に酒を並々と注いだ。

アキトはあまり酒は強くないし、護衛に支障が出るので少し口に入れるだけにした。

 

「お堅いねぇ〜。

 でもそれが護衛の条件かな。

 それはそれとして、テンカワくん。

 君の武勇はつとに聴いてるよ。

 赤壁の時もナデシコAの猛将名高い干禁元一朗将軍と夏候淵テツヤ将軍をあっさりと片付けたそうじゃないか。」

 

「二人とも手ごわかったですよ。

 それにあの時はこちらが追撃でしたし余裕もありました。

 逃げられましたしね。」

 

「謙虚だねぇ。

 もし思うことがあったらいつでもネルガルに来たまえ。

 いつでも歓迎するよ。」

 

「あり難いお言葉ですが気持ちだけに「こら〜、あらしのアキトをとっちゃだめ〜。」

 

 

突然サラが二人の会話に割り込んできた。

一目で酔っているのがわかる。

言葉もろれつが回ってないし、目がやばい(爆)。

サラはお酒に弱いのでなるべく飲ませないようにアキトは苦心してきたのだが、ほんの一瞬の会話に気をとられ、

サラにしてやられてようである。

 

「ねえ〜、あかつきさ〜ん。」

 

「な、なんだい?(すごい酒くさい)。」

 

「しゅ〜ゆらぴすちゅわ〜ん。

 すごい子だよね〜。

 なんていうかさ〜、もうねうがう(ネルガル)のだいこくばにらって感じで〜。」

 

「あ、ああそうだね。

 だいこくばしらだよ、サラ君。」

 

「いいの〜、そんなことわ〜。

 でもさ〜、あんなすごい子がさ〜、いつまでもひとのひた(下)にいられるのかな〜。

 あらしだったらこわくてついほーしちゃうかも〜。」

 

酔っているとはいえ、サラの発言は大変な問題発言だった。

サラの言葉が聞こえた者は一瞬動きが止まったのだ。

どう見ても酔っているのだろうが、それでもこの脅すような誉めるような物言いは穏やかではない。

 

「・・・・・・・・・・、いや〜手厳しいな。

 ラピス君は忠義な人だからねぇ。

 まずないよ、テンカワ君もそう思うだろ?。」

 

「え!?、ええ、もちろんですよ。

 ラピスは確かにすごいですが、それはそういう逸材を使いこなせるアカツキ会長あってのものですからね。」

 

「照れるじゃないか、はははははははははははは・・・・・・・・・・、サラ君聞いてる?。」

 

アキトやアカツキが一色即発になりかねない雰囲気に冷や汗を流しているのに、サラはすでに意識がなかった。

 

「すー、すー、すー、すー、・・・・・・・・・・。」

 

「す、すいません、彼女はあまりお酒に強くないんです。

 ではこれで。」

 

「そ、そうだね、明日には帰るんだからね。

 じゃあ皆、これでお開きといこうか。」

 

ぎこちのないままに宴は終了した。

アキトは彼女を背負ってあてがわれた客室へと向かった。

 

「参ったな。

 あの言葉は刺激が強過ぎるよ、ホント。」

 

「でも結構効果はあったようだけどね。」

 

「そうだね・・・・・って、サラちゃん!?。」

 

突然背負っていたサラが普通に話しかけてきたので、アキトはびっくりした。

確かに気は普通に保っているようで、ろれつもしかっりしている。

こんな急激に酔いが覚めるものなのだろうか。

酔っていた不利をしていた?。

 

「酔ったふりしてちょっと強烈なパンチを入れてみたけどかまし過ぎだったかしら。」

 

「ふ、ふりだったの?。」

 

アキトは思わずびっくりした。

あの時サラは酔っているようにしか見えなかったからだ。

 

「そうよ、しらふだったからこそ言える言葉じゃない?。」

 

「そうかもしれないけど(策士だったって話本当だったんだ)。

 ねえ、本当は酔ってたでしょ、だって目が尋常じゃなかったよ。」

 

「酔ってなかったって。

 ・・・・・・・・・・今何か失礼なこと考えたでしょ?(怒)。」

 

「か、考えてないよ。

 それよりなんであんなことを。」

 

最もな質問をアキトはサラにした。

サラ微笑して曰く、

 

「最初はさ、艦長と戦うことに対しては私の存在は重要だから下手にでるかなって思ってたの。

 だけど実際は懐柔しようとしてるんだってわかったの。

 だから私はあなた達の思い通りにはならないわよってのを回りくどく言ってみたわけ。」

 

サラの以外な度胸と知恵にアキトは正直舌を巻く想いだった。

一歩間違えれば親睦どころか険悪になりかねない言葉である。

アキトは人の上にたつ人間とはこうでなくてはと改めてサラに敬意を感じた。

 

「でも何度もやらないでよね。

 なんのうち合わせもないんだから肝が冷えたよ。」

 

「ごめんね、じゃあこのまま私の部屋に来る?。

 冷えた肝あっためてあげるけど(はぁと)。」

 

「サラちゃん、明日は昼前には出るからね。

 ちゃんと支度しといて。」

 

アキトは言うことだけ言うとサラを部屋の戸の前で降ろして自分の部屋へ戻っていった。

 

「もう!!、アキトったら!!(怒)。

 冗談通じないんだから(実はマジ)。」

 

 

 

 

 

翌日の昼、甘露寺でサラ達一行を見送りながらアカツキはラピスが駐屯先からよこして来た手紙を思い出していた。

 

『サラって陰険の・・・・・じゃなくて梟雄の相を持ってるわ。

 配下には関羽シュン提督や張飛アリサもいるし、いつまでも人の下にいたりはしないと思うの。

 だからサラをそのまま宮殿におしとどめて贅沢な生活で骨抜きにしちゃえばいいのよ。

 なんだったらいい男をあてがうのも手だね、ただしアキトは駄目!!(笑)。

 その上で提督やアリサと仲たがいさせて、二人をうまく部下にしちゃうの。

 アカツキさんはサラに甘過ぎるよ。

 このままサラの動きを黙認すれば近い将来きっと災いの種になるよ。」

 

アカツキはこのラピスの進言を却下した。

この時の彼の行動論理は魯粛プロスにそうものだった。

ナデシコAは強大で、単独での戦いは明らかに不利。

ならばあえて劉備サラの行動を黙認して、共に曹操ユリカにあたるべしというもの。

現にあれだけ優勢でありながら江陵城を落とせないでいるのだから。

だが昨日のサラの発言を聞いて、アカツキはラピスの言を飲むべきだったと後悔した。

だが一方で彼女を行動不能にして果たしてナデシコAを叩くことが本当に可能なのだろうかと強い不安を抱いていた。

結局アカツキはプロス案で行くことを決意した。

しかし、心の中ではいつか荊州をこの手にするという野望を胸に秘めてもいた。

その野望が現実となるのはこの時から約9年後のことである。

 

 

11話後編へ続く

 

 

皆さんこんにちは、ご存知イネス・フレサンジュです。

相変わらず出番が無い私、もう文句を言う気も失せてきたので愚痴は言いません。

それはおいとくとして、前回馬謖だけしか紹介しなかったので、今回は劉備に仕えた荊州人士達を語ろうと思うわ。

興味のある人は読んでいってね。

 

侮り難し、荊州人士

劉備という人の人材の好みは、才知と経験で分けるなら経験を好んだということができるわ。

その代表格がヤガミ君がふんする黄忠漢升、元々は劉表の部下だったらしくずっと荊州は長沙を守ってたわ。

演義のように韓玄に仕えたという記述はないけど劉備の南荊州接収の際降伏したと思われるわ。

彼の活躍が正確に残っているのは夏候淵を切り殺した定軍山の戦いのみ。けれどすでに蜀攻めの時点で重用され、

蜀攻略の時はその気勢は三軍にも匹敵すると賞賛されたそうよ。

劉備は黄忠を高く評価し、漢中王即位後は彼を前後左右将軍(最高将軍位)の一つに任命し、

その地位は蜀筆頭の関羽と同等だったの。

そのあまりの厚遇ぶりに諸葛亮は、

「張飛アリサさんや馬超北斗さんは真近でナオさんの活躍を見ているから納得するでしょうけど、

 遠くにいて気位の高い関羽シュン提督は納得しないと思いますよ(ナデ三的会話)。」

、と心配したそうなの。でも劉備は自分が説得するといって聞かなかったそうよ(でも自分で説得はしなかった。)。

黄忠は演義のような劇的な戦死ではなく220年頃に病死しているわ、享年も一切不明よ。

黄忠以上に劉備に重用されたのが高杉君がふんする魏延文長、私兵を率いての志願者だったそうよ。

蜀攻めで戦功を立て将軍に抜擢を受けたわ、演義のような反骨の相なんてエピソードもないし、

演義ほどに有名な武将ではなかったの。

後に劉備の漢中王即位後、攻め取ったばかりで魏との最前線となる漢中の太守に魏延が抜擢されたの。

漢中は誰もが、そして本人も思っていたらしいのだけど、義弟の張飛が任命されると思われてたわ。

劉備もいささかやりすぎたとおもったのか、それとも魏延の面目を保たせてあげようとおもったのか、

宴で彼に質問をしたそうよ。

「私が漢中王になるにあたって、最前線という重責を高杉さんに委ねるけど、心得の方はどう?。」、魏延曰く、

「もし艦長が天下の兵を上げて進攻してきたらサラちゃんのお出ましを願わねないとな、

 でもミスマル提督あたりが十万で攻めてきたなら一人で楽勝だよ。」

、魏延という人は実際に実力があり、兵を統率しかわいがり兵の心も掌握していたそうよ。

ただ強気過ぎて性格が悪く、同僚や上司、特に諸葛亮とは反りが合わなかったの。

演義にあるような野心的な側面は実際にはないと言っても差し障りが無いことから考えて、

どうも魏延は関羽に近いタイプの武将だったのではないかしら。

くせのある魏延は劉備あっての名将だったのでしょうね。

文官で劉備に重用されたのはレイナちゃんがふんする伊籍機伯とユキさんがふんする馬良季常ね。

伊籍が有名になったと言えば、使者いじめが大好きな孫権との宴席での出来事ね。

孫権は伊籍に、

「あんな陰険な人に仕えちゃって苦労するねぇ。」

、といきなりすさまじいイヤミを言われると、

「一度頭下げて立ちあがるだけじゃない、苦労じゃないわ。」

とやり込めたらしいわ。

後に諸葛亮達と蜀科と呼ばれる法律を造ったそうよ。

馬良は白眉のエピソードの他に馬氏の五常白眉最も良し

(五人の兄弟の中で馬良が一番優秀である)があるけど、これは正史にも記載があるわ。

ただし、伊籍の紹介はまったくのフィクション。

三国志の注釈に諸葛亮と馬良は義兄弟だったのではないかという記述があるため、

もしかしたら諸葛亮が推薦したのかもしれないわね。

彼は主に異民族の友好の使者として派遣されることが多かったわ。

夷陵の戦いの際、数多くの異民族が劉備の下についたのだけどいずれも馬良の求めに応じたものがほとんどよ。

唯一有名な蛮族の王沙摩柯も彼が口説き落としたのではと言われているわ。

それ以外にも孫権との国交もつつがなく行うなど、弟の馬謖が嫌われたことを考えると、非常に対照的な扱いになるわね。

馬良は演義では南蛮制圧の際、病死しているけど実際は夷陵のおり、呉軍との戦いで戦死しているわ。

最後にまだ出てきてないけど、ホウ統も紹介しておくわ。

ホウ統士元は鳳雛(鳳凰の雛)という異名を持っていたわ(正史に記載あり)。

正史には魏の荀ケの兄弟と言えようか(能力的に)という評価があるわ。

軍師肌が好きでなかった劉備が重用した蜀の数少ない軍師。

風采が悪く、劉備に仕えた当初は重用されなかったけど、魯粛らの仲介で軍師に任命されたわ

(一時期呉に仕えていたらしい)。

正直なところ、諸葛亮よりも重用され、蜀攻めでは全軍の知恵袋となって活躍したわ。

演義のように落鳳破で討ち死、ではなく流れ矢により陣没したの。

劉備は人間くさいホウ統がお気に入りで、死後彼の話が出るたび涙を流したといわれるわ。

 

長くなったのでここでやめるわ。

次回あたりラピスちゃんが退場することになりそうね、そして私の出番が・・・・・・・・・・期待しつつまたお会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

3104さんからの連載第十一話の投稿です!!

千紗と百華登場・・・

う〜ん、ネルガルに優華部隊が勢揃いしそうだな〜(笑)

アカツキは千紗にモーションかけてるし(苦笑)

それにしても、今回はサラちゃんも活躍しましたね。

今後も見せ場はあるのでしょうか?

 

最後にゴートさんの戦線復帰をお祝いします(核爆)

 

では3104さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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