「アキトさん!! ・・・もうすぐユリカさんが退院されるのですよ!!

 せめて、せめて顔を出すくらい・・・ いいじゃないですか!!」


「・・・ラピス、ジャンプの準備を頼む。」

「・・・うん、解ったアキト。」


ワタシはしばらくアキトの顔を見つめた後、ダッシュにジャンプフィールドの生成を命じた


「・・・俺とユリカの道が交わることはもうあり得ない

 そうルリ、君と同じ道を歩むこともない

 もし、全てが・・・

 よそう、それは言っても仕方がないことだ。」


『ジャンプフィールドが生成完了しました!!』


「アキト、ジャンプフィールドが生成終了したよ。」


「ああ、解った・・・何処に、行こうか。」


今度はどこにいくんだろう? でもどこでもいい・・・アキトが一緒なら

ワタシは、アキトの目、アキトの耳、アキトの手、アキトの・・・・・・







機動戦艦ナデシコ

ラピスの想い



〜プロローグ〜



By 三平

 

 

「よし、ジャンプ先は・・・」


「させません!! アキトさん!!」



ドガッッッンンン!!!!!




いきなり衝撃がユーチャリスにかかった



「くっ!! 何が起こったんだ!!」


『アンカーを打ち込まれたんだよ、アキト!!』



そこまでやるの、ホシノ・ルリ

アキトはただ、ダレもいない所で静かにしたいだけなのに・・・!!


「アキト!! ジャンプフィールドが暴走してる!!」


「くっ!!ジャンプフィールド緊急解除!!

 俺がブラックサレナでアンカーを断つ!!」


そう言うや否やアキトはサレナにジャンプした



『駄目だアキト!! フィールドの制御装置にアンカーが直撃してる!!』


「何!! このまま、暴走するしかないのか!!」


「アキト・・・ナデシコが。」


「間に合うのか・・・!!

 ルリちゃん、早く逃げるかアンカーを切り離せ!!

 このままだとナデシコCも、ユーチャリスのランダムジャンプに巻き込まれるぞ!!」



「し、しかし、アキトさんが!!」


「俺たちは何とでもなる!!

 ナデシコCの乗員全員が、ジャンパーの措置を受けているのか?

 このままジャンプに巻き込まれたら、措置をうけていないものが全員死ぬぞ!!」


「ハーリー君!! 急いでアンカーを切り離して!!

 ディストーションフィールド緊急展開!!」



『駄目だ!! ジャンプを開始したよ、アキト!!』



「・・・いや、せめてこうすれば・・・・・・すまないラピス・・・オレはもう・・・」



そのときアキトがとった行動は誰もが目を疑うものだった

いつの間にか発進させていたブラックサレナの体当たりで

アンカーを切断したのだ

その反動とサレナの爆発で、ナデシコCはかろうじて

ランダムジャンプから逃れたのだった・・・生き残った者の心に大きな衝撃を残して・・・





「そんな・・・アキトさん・・・イヤ・・・・・・」



「イヤァァァァァァ〜〜〜ッ」



ナデシコCのブリッジに、ホシノ・ルリの絶叫がこだました


そのあと、うずくまって泣きじゃくるルリに誰も声をかける事ができなかった・・・・・・










お手柄、ホシノ少佐正体不明艦撃破


コロニー襲撃犯撃沈、電子の妖精またもや・・・・・・


新聞の活字がおどる




ホシノ・ルリは今回の功績(それと前回の火星の後継者鎮圧の功績)により中佐に昇進した


だが、それによって彼女の心が晴れることはなかった


すべてはむなしい・・・


それでもルリは、いつか立ち直り


力強く生きてくれるだろう・・・・・・それが生き残ったものの責任であり


そして、今は亡き養父の望みなのだから・・・












「・・・ココは・・・・・・」


目を覚ましたラピス・ラズリは、あたりを見回した・・・

ここはどこだろう? どこかの草原?・・・・・・!?


ちがう、ワタシはユーチャリスのオペレーター席に居たはず!!


ここはドコ・・・あのとき何があったの? よく思い出せナイ


それに・・・


「アキト、アキトはドコにいるの?・・・・・・」


返事はない・・・リンクは切れているらしく、何も感じられない

何も感じられない!? ソンナ・・・


そこまで気づいたとき、強烈な喪失感と孤独感がラピスをおそった


「アキト、アキト返事をしてヨ、アキト〜ォ・・・・・・」

さみしいヨ・・・ 会いたいヨ・・・ アキト・・・・・・ドウシテ返事をしてくれないノ

アキトとリンクして以来、彼がそばにいるのは当たり前だった
彼の五感をラピスがサポートするのも当たり前だった

それが無くなったとき、ラピスは生まれて初めて?さみしいと感じていた
さみしさに押しつぶされそうになっていた・・・・・・

あるいは今まで感情を表に出すことを知らなかった少女が、初めて自分で表に出した感情かもしれない



気が付けば・・・ラピスは泣いていた・・・子供のように声をあげて

物心ついてから、初めて感情のこもった涙を流したのかもしれない・・・






「どうしたの? こんな所で泣いたりして・・・」

誰かがラピスに声をかけてきた

ラピスは、はっとして声の方に振り向いた

聞き覚えのあるその声は・・・


「アキト・・・アキト〜!!」


ラピスはその声の主に抱きついた・・・

ほんの少し会えなかっただけなのに、会いたくてしかたがなかったその人に・・・

そして、また泣いた・・・今度はうれしくて・・・・・・



「なんで俺の名前知ってるの・・・それに・・・」


その声の主、テンカワ・アキトはとまどっていた
自分にすがり付いて泣くこの桃色の髪の少女を
なぜか知っているような気がするから・・・

この子に会ったことはないはずなのに・・・・・・

それでもアキトは、泣いてるその子を邪険にあつかうことなどせず
安心させてやるように、やさしく頭をなでてやっていたのだった





つづく



あとがき


「ラピスの想い」 プロローグをおとどけします

僕は劇場版はあまり好きでなく、そのうえその出番も少なかったラピスには

あまり思い入れは無かったはずなんですけどね。なぜか書きたくなっちゃいました

でも、書き始めると興味がでてくるのが不思議です

オープニングはどこかで見たようなシーンをアレンジしてますが、気にしないでくださいね(笑)

ルリにはちょっと可哀想な話になってしまいましたが、こういうのもありかもしれません・・・

余裕は・・・あまりないですけど何とかがんばってみますか

星界の方はちゃんと書くので心配しないでくださいね

では、次は第一話「そして再び貴方と出会う」を送ります

(密かによそのHPに投稿計画していたイツキヒロインモノは延期だな・・・すまんふぇちさん・苦笑)

 

おまけ

三平:さて、あとがきも書いたし撤収するか・・・ん!?

ハーリー:僕のためにこんな話書いてくれてありがとうございます!!

三平:・・・いや、べつに君のために書いたわけじゃ・・・

ハーリー:いえ、言われなくてもわかります。 邪魔者がいなくなった今、傷心のルリさんを僕になぐさめろと言うのでしょう? まかせてください

三平:誰もそんな事言うとらん、悪いことは言わん、タイミングが悪いから・・・

ハーリー:ルリさーん、いまいきま〜す


三平:・・・・・・僕はことさら他のSS作家のようにハーリーいじめるつもりはないのだが・・・

あいつの敗因はせっかちな所と状況判断能力の甘さだな・・・もう少し落ち着いて行動すれば・・・

いや、意味無いかあれでは・・・ それでは眠れる妖精が怒れる妖精になってとばっちりが来る前に撤収とするか・・・


・・・その十数分後、怒れる妖精が無責任なSS作家にお仕置きに来るが、すでに撤収したあとらしい

ハーリーがどうなったかは・・・・・・ご想像におまかせします(汗)

 

 

代理人の感想

 

う〜む、可愛いラピスだ。

「時の流れに」とはまるで別人(爆)。

この後、可愛いままで進むかやっぱり壊れるか・・・・それは三平さんだけが知っている(笑)。