「ユリカ、ほらおじさんも怒ってるよ」

ここはミスマル家のユリカの部屋の前
扉の前では、幼馴染でいとこ(ですよね?)のアオイ・ジュン (20) が待っていた。

「だって、この制服ってださださで着られ無いんだもん」

部屋の中からはユリカと呼ばれた女性の声
さっきからずいぶんとジュンを待たせているようだ

「気にしたってしょうがないよ」

どうやらジュン君このユリカという女性に苦労かけられているようだね・・・


「ねえジュン君、わざわざ連合軍やめて付きあってくれて本当に良かったの?」

「・・・ユリカ一人じゃ心配だから・・・・・・」

ミスマル・ユリカ (20)は、ネルガルのスカウトを受けて民間戦艦の艦長を引き受けたのだが
本来彼女は士官候補生の主席であり、連合軍の名門ミスマル家の令嬢である。
そんなもの受けなくとも軍の中での成功は約束されたようなものだったのだ

普通ならそんな野の物とも山の物とも知れないものを引き受けるのは酔狂ともいえる
そして、それはジュンにもいえることだったのだが・・・彼は彼にとって大事な人のために・・・・・・

「さすがジュン君、最高の友達だね」

「はいはい・・・」

さすがにがっくりしてますね、報われないなジュン君
と、そこへ・・・・・・

「ユリカッ、こらユリカ、学生気分もいい加減にしろ」

父親のミスマル・コウイチロウが怒鳴り込んでくる
ドアをあけようとしてそれを慌てて止めようとするジュンは、オヤジと一緒に勢いあまって部屋のなかに入ってしまった

・・・・・・どうやらまだ着替え中のようだ・・・って・・・

「きゃああああああ〜〜っ」

という悲鳴とともにバッグが飛んできて二人に命中した・・・痛いかな

まあ、ドタバタはあったものの無事ユリカとジュンは出発したようである

「わが娘、子供と思えばナイスバディ、ユリカ立派になったな、お勤め立派に果たせよ」

と、涙してお見送りする親ばかオヤジ・・・
もっとも翌日娘の船追撃する羽目になるとは、この時は夢にも思ってないだろうが

そして、出かけていった娘の方も死んだと思われていた幼馴染と出会うとは思わなかったろう
それが幸せな事かどうかは今はまだ誰にもわからないのだった

(ところで、ラピスとはまったく関係のないこのオープニングでいいのだろうか?・・・まあいいか)




機動戦艦ナデシコ

ラピスの想い



〜第三話「号砲一発!!機動戦艦ナデシコ始動」〜



By 三平






ワタシたちは、いま雪谷食堂にいます。

奥の部屋では、アキトとサイゾウさんが大事な話をするから
ワタシはそれがおわるまでここで待っているように言われている・・・ちょっとつまらないな
でも、仕方がナイよねアキトが決めたことだから・・・・・・


ワタシとアキトはここを出て行く
ワタシがいると昨日みたいな事があるから、お店に迷惑がかかるから・・・

アキトはなにも言わないけど、ワタシはアキトのお荷物なんだろうか?
ホントはワタシなんかがいないほうが、イインジャないだろうか?
でも、ワタシはアキトのそばに居たい・・・・・・アキトの役にたちたい・・・
・・・イマのワタシがアキトのために何がデキるんだろう・・・・・・



「不安なんですか、ラピスさん?」

そう聞いてきたのはプロスペクターさん
昨日の一件で、この人にもお世話になったとアキトが言っていた
アキトたちの話が終わるのをここでワタシと待っている

「顔に出てますよ、私でよろしければ相談にのりますが」

「・・・・・・」

ワタシは少しだけ迷ったけど話す事にした
何かそうさせる空気が、この人にはあったのかもしれない



「・・・なるほど、それは大変ですね・・・不安になるのもわかります」

ある意味プロスは、こういうことでは百戦錬磨かもしれない
巧みな話術でラピスの不安な心情を引き出し自分で語らせるのだから・・・そのうえ

「どうです、不安な気持ちはしゃべったら少しは楽になったのではないですか?」

と、いけしゃあしゃあと言ってのけるのだから・・・
図星をさされ、でもラピスはいつの間にかプロスの話に引き込まれかけている・・・そこへ

「・・・テンカワさんに役に立つ所を見せられれば良いのでしょう? ならば・・・」

と、そこで一旦言葉を切り、ラピスの注意を引き付けてから次の言葉を切り出す

「失礼ながら、ラピスさんはコンピューターのオペレーターができるのではないですか?」

「!!どうしてそれを・・・!?」

ラピスはすでにプロスの術中にはまっていたのかも知れない
してやったりのプロスは畳み掛ける

「テンカワさんとはすでに話はしてありますが、あなた方には今度わが社が建造した新鋭戦艦に乗ってもらう事になります
その、運用には新型のコンピューターが使用され、オペレーターが必要なのですよ・・・
あなたさえ良ければやってみませんか? テンカワさんに役に立つ所を見せられるかもしれませんよ・・・・・・」

この男、役者である。
本来ラピスにやらせたいことを、自分からやるようにしむけたのだから・・・それも恩を売る形で
案の定、ラピスはその提案に興味をしめし乗ってきたようである
なんと言っても自分のもっとも得意の分野なのだから・・・

人生経験の浅いラピスには、プロスの思惑など分かり様もなかったのだった

(ところでこの時、ラピスは条件のなかで重要な一点を認めさせたようだが、それは後の話・・・)





「さっきも言ったが、『問題がおきたらここをたたき出す』と言った通りにするだけだからな・・・」

そう言うのはサイゾウさん
ラピスを一緒にここに住まわせるときの約束ごとに、確かにそういうことも言っていた。

そして昨日の事件・・・でも本当のところはちがう

いまや、アキトもラピスもこの店ではカンバンのような存在だった。
急に辞められてはかえって迷惑なハズだったのだが
訳あって辞めなければならないアキトたちに心の負担がかからないようにこういう言い方をしたのだ

そんなサイゾウさんの心遣いがわかるだけに、アキトは却って済まなそうにしているのだった

「・・・まあ、そういう顔するな、遅かれ早かれお前達はどこかに行くと思ってはいたんだ、少し早まっただけだ・・・」

そう言うと、サイゾウさん今度はラピスに向き直り・・・

「嬢ちゃんも元気でな、あいつは保護者としては頼りないから嬢ちゃんがしっかり見てやってくれ・・・」

「アキトは頼りなくなんか無いよ・・・」

「そうだったな・・・」苦笑するサイゾウ

こと、アキトのことになったらしっかり言いたい事は主張するラピス・・・でも

「サイゾウさんも元気でね・・・・・・ラピスたちは大丈夫だから・・・」

さすがにラピスもさみしく感じるのかしんみりとしていた
ここに来たときは人見知りしてサイゾウの事も少し怖がっていたものだが

サイゾウは無愛想でぶっきらぼうだが、やがて実はやさしい人だとそのうち気が付いたのもあるが
ラピス自身も少し成長したのかもしれない・・・

また、アキトに向き直ってサイゾウが言う

「どこに行くのか知らないが、無事帰ってこいよ・・・」

「サイゾウさんも・・・いままでありがとうございました。お元気で・・・」

やがて、別れも済んでアキトたちはネルガルの用意した車で走り去っていった・・・・・・

「本当に無事帰って来いよ・・・」

遠ざかる車を見つめながらサイゾウはつぶやいた
なぜだかアキトたちの行くところは安全とは程遠い気がしたから・・・・・・







サセボドックにて・・・・・・

「どうです、これがわが社の最新鋭戦艦のナデシコです」

ナデシコをバックに堂々宣言するプロスペクター、営業スマイルも忘れていない

「どうでもいいですけど、変わった形をしているんですね」

「いやあ、これは手厳しい・・・ですが性能は保証しますよ」

アキトの感想にめげずに解説を続けるプロスペクター
実はこういう反応は珍しくないので彼も今では心得たものだった・・・(ナデSSでは定番だし)

ところで、感想において一番シビアかつ辛辣なことを言ったのは
普段は無口なくせに、こういう時は言いたい事をはっきりと言い『ばかばっか』『私少女ですし』が口癖の某オペレーターだったりする・・・


「これがナデシコA・・・・・・」

ラピスは少し反応が違うようだ・・・
まあ、ナデシコBやCなども見知っているし、今更珍しがるほどのことではないのだろう
ただ、かつてエリナからむかしのアキトの話を聞かされたりしたとき、ナデシコの話も聞いていたりしたのだ
だから少々ちがう感慨を持っていても珍しくないのかもしれない


「まあ、細かい事はおいおい説明するとして、まず艦内を案内しましょうか・・・」

「いえ、案内もいいですけど、先に荷物を部屋に運びたいんですが」

荷物と言ってもアキトのそれはたいしてあるわけじゃない
とはいえラピスの分(これも少ないが)もあるので、先に片付けておきたかったようだ

「なるほどそれもそうですな、では先にお二人の部屋に案内してそれから・・・」

「!!ちょっと待った!?お二人の部屋ってそう言えば・・・」

ふと、聞き捨てならないこと聞いた気がして聞き返すアキト
そう言えば今まで、部屋割りの話とかしていなかったような・・・迂闊なことに今気が付いたようだ

「ああ、その事ならラピスさんの希望を入れて二人部屋で同室としました・・・
本来なら風紀上望ましくないのですが、テンカワさんがラピスの保護者と言う事で特別に許可ということで・・・」

ラピスをオペレーターとしてスカウト(?)してた時、ラピスが条件として出してきたのがこれだった
さすがにしぶったプロスペクターだったが、この件でラピスが一歩も引かなかったので、彼の方が折れたのだった。
世間知らずの少女もこの件だけはしっかりしているようだ・・・・・・

「なんでも雪谷食堂では同室だったとか?・・・」

「まあ、それはそうですが・・・まさか認められるとは思いませんでしたから・・・・・・」

「あくまで特例です・・・」

アキトとしても苦笑せざるをえないようだ・・・ふと見るとラピスが不安そうに見上げている
しょうがないな、と思いつつもラピスを安心させてやるために一言二言声をかける・・・
嫌いになったわけでも同室がいやなわけでも無い、大丈夫だよ・・・と
なんだかんだ言いつつも、アキトはラピスに甘い保護者のようだった。





ブオオオォ〜〜〜ン

大型高級セダン(エンブレムからメルセデスベンツと思われる)がサセボドック目指して走っていく・・・
と、そこへ無理やりに詰め込んだトランクがひもがほどけて落下したようであった



「・・・ユリカ、今更だけど荷物減らそうよ」

トランクが落下したときあたりに散乱した荷物を拾い集めながら、ジュンはユリカに話しかける

「駄目、ユリカが三日かけて選んだお気に入りグッズばかりなんだもん、全部持ってくの」


という会話がなされていた・・・
どうでも良いが、ここでトランクの直撃くらうはずだった人物がいないせいで、かなり間抜けなシーンになってるかも(爆)


そうこうしている内に荷物が集め終わりトランクに詰めなおされた・・・

「この荷物は後部座席にね・・・・・・おや?」

ふと、ジュンは写真立てを拾い損ねている事に気が付いた・・・なんだろうこれは?
写真には子供の頃のユリカとジュンの知らない男の子・・・

「ねえユリカ、この写真は?・・・」

「!!ジュン君それは・・・!?」

あわててユリカが写真を手に取ると、大事そうにそれを胸に押し頂いた

「この子はユリカの大事な王子様だよ・・・」

「お、王子様〜〜ぁ・・・」

ジュンとしては、ユリカがこういう子供っぽい所があることは知っていたが、
そんな発言が出るとは思わなかったので、あっけにとられていた
それも、彼の知らない写真の子だとは・・・・・・

聞いてはいけない、と思いつつジュンは聞かずにはおれなかった

「その、写真の子って・・・いったいどこで・・・」

「火星でお隣だった子だよ・・・いつもいつもユリカ、ユリカって追いかけてきて・・・」

いけない、止めなきゃまたトリップモードに入ってしまう、ジュンはそう思ってユリカを止めようと・・・

ふと見ると、いつも明るく天真爛漫なユリカが泣きそうな、悲しそうな顔をしているのに気づき声をかけそびれた


なんでそんなに悲しそうな顔をするんだユリカ・・・火星でお隣・・・・・・!!そうかそうだったのか!
そう、火星は一年前の会戦で陥落し生存者がいるかどうかは不明だったのだ・・・
・・・ごめんよユリカ、事情はわからないけど、悲しい事思い出させてしまったんだね・・・


そんなわけで、あっちの世界に行き、たたずんでいるユリカが戻ってくるまでジュンはまっていたのだった

二人とも知る由も無い、その写真の男の子とこのすぐ後、行き先のサセボドックで、ナデシコで出会う事を・・・
(知ってたら行くのを急がせただろうなあ、ユリカは・・・・・・)





割り当てられた部屋に荷物をおいて、そのあとアキトたちは艦内をまわっていた

本当はプロスさんがアキトたちの紹介がてら案内してくれるはずだったのだが
急な仕事が入ったのと、なんでもまだ艦長が来ていないとかで対応に追われてそれ所でなくなったようだ
まあ、申し訳無さそうにプロスさんは、アキトたちの仕事は明日からなので紹介は明日改めてやるから・・・と言い
艦内の一部は見て回って良い、と言うことなので、アキトはラピスと艦内を見て回っているところだった。

食堂で夕食がてら、料理長のホウメイさんやウエイトレスの女の子達(後のホウメイガールズ)に自己紹介などもすませ
現在格納庫付近を探検中・・・もとい見学していた


「レッツゴーゲキガンガー」


まあ、少しばかりあつくるしい男がロボットを動かしているようだ

整備班の連中と少し揉めているようだが・・・

「諸君らだけにお見せしよう! 俺の超グレードな必殺技を!!」


『ガァイ・スゥーパー・ナッパーー』


と、掛け声とともにカッコだけ決めたのは良いが


ごがしゃ


着地に失敗してそのロボットを派手に転倒させたのだった


「・・・アキト、アレ何?」

ラピスはあきれているようだ
話を振られたアキトのほうも答えようがなくて苦笑いしてる

「ゲキガンガーか・・・・・・」

むかしそういうの見た覚えはあるが、さすがにラピスにそれを説明する気にはならないし・・・

そうこうしているうちに、そのパイロットはロボットのコクピットから運び出され・・・どうやら足の骨折っているようだ
整備員たちと押し問答している・・・

「おたく、ヤマダ・ジロウってなってるぞ?」

「ダイゴウジ・ガイだ〜〜ッ」


いや、ほんとにさわがしいやつである

それはともかく、そのヤマダくんがタンカで運ばれていくとき目に付いたアキトに声をかけてきた

「おーい、そこの少年、そのロボットのコクピットに俺の宝物があるんだ・・・」

さすがに声をかけられると思っていなかったアキト少し驚くが・・・

「・・・すまんがとってきてくれ」


そう言われればとりにいかない訳にもいくまい・・・

と、いうことでそのロボット、エステバリスの陸戦フレームのコクピットに乗り込んだ
ついでに、後についてきたラピスも一緒である

「・・・あいつ年いくつだ?・・・・・・」

そこにあったのはゲキガンガーの人形のようだ

「アキト、これなに?」

ラピスが質問してきたので答えようとしてふとわれに返る
いかん、ナゼだか知らないがラピスにこれは教えてはいけない・・・そんな気がした

さて、どう答えようか迷っていると・・・

急に艦内にエマージェンシーコールが鳴り響き、昨日あったあの大男、ゴートの声で艦内放送が響く

「現在、敵機動兵器と地上軍が交戦中、ブリッジ要員は戦闘艦橋に集合せよ、繰り返す・・・現在・・・・・・」



で、そのブリッジでは

「とにかく反撃よ反撃、わたしはこんな所で死ぬのなんてまっぴらごめんだわ・・・」

ナデシコに乗り込んできていた派遣軍人の副提督キノコ頭のムネタケはワメキまくっていた
そのため、本来の能力はともかく、戦争の素人ばかりで構成されたナデシコのブリッジ要員たちは浮き足立ってもおかしくないのだが
皮肉な事に、キノコがわめくものだからかえって落ち着いたものだった。

「無理です、マスターキーがありません。それがないとこの船は動かせません」

冷静に感情のこもらない声で突っ込みを入れるのは、メインオペレーターのホシノ・ルリ
正論なのだがかえってキノコをヒートアップさせてしまったようだ

「だったらぐずぐずしないで早くしなさい、わたしが死んだらどうするのよ・・・」

「いえ、ですから艦長がもっていますので、艦長が来ないことには・・・・・・」

プロスさんも弱りきった声で言った。敵襲がありなおかつ艦長が遅刻で来ないなど考えても見なかったのだから


と、そこへ・・・


ふたりの男女が慌てて入ってきてそのうちの女性の方が高らかに宣言した。


「私が艦長のミスマル・ユリカで〜す。ぶいっ」


「「「「ぶい〜〜っ!?」」」」 「・・・またバカ?」

さすがに皆さんあきれているが、あきれてばかりもいられない
プロスさん早速艦長のユリカに詰め寄り・・・・・・

「遅刻の言い訳は後でたっぷりと聞いて差し上げます。まずはマスターキーを使ってナデシコを起動させてください」

「は、はい・・・や、やだなあプロスさん・・・こわいですよぉ」

誰のせいだ誰の、と、だれもが心の中で突っ込む中、ナデシコは起動した。

「ともかく・・・・・・さっそく反撃よ」
ムネタケが吠える

「どうやって?」

「ナデシコの対空砲火を上に向けて下から焼き払うのよ・・・」

「うえにいる軍人さん達ふきとばすわけ〜?」

「それって、非人道的って言いません?」

ムネタケの発言にミナトやメグミなどブリッジ要員からたちまち非難の声があがる

「どうせ全滅してるわよ。いいから言われた通りにすればいいのよ」



・・・話の流れがまずいと思ったのだろう。ナデシコに顧問として乗り込んでいたフクベ提督(退役中将)は
艦長のユリカに意見を求める

「艦長は何か意見はあるかね?」

「海中ゲートをぬけていったん海中へ、そのあと浮上して背後より敵を殲滅します」

ユリカは何の迷いもなく言い切った

「そこで俺の出番さあ、おれのロボットが囮に出て敵を引き付けそのあいだにナデシコが発進、燃えるシチュエーションだあ」
「おたく骨折してるぞ」
「しまったあ」
せっかく気持ちが盛り上がっていたガイ(ヤマダ)だったがウリバタケの突っ込みにすぐ沈んだのだった


「おとりならでてます」

感情のあまりこもらない声でルリが冷静に報告する

「エレベーターでロボットが・・・」



そのロボット、エステバリスのコクピットではアキトがラピスに声をかけていた

「大丈夫かい?こわくない?」

「ウン、大丈夫だよ、アキトが一緒だから・・・」

そのラピスはアキトのひざの上に座る形で同乗していた



あのあとラピスと一緒にエステバリスに乗り込んだが、どうして良いかわからないうちに戦闘がはじまったらしい
そのときアキトの脳裏に浮かんだのはあの火星での光景
地下に閉じ込められ、逃げ場のないまま蹂躙される火星の人々
そして、アイちゃん・・・苦い思い出だった
もうあんな思いはごめんだ、そう思ったらこのままこのロボットで地上へ脱出しよう、と魔が差したのだった


「君は誰だ、所属と名前を言いたまえ」

白いひげの老人、フクベ提督が詰問する
問われてとっさにアキトは答えてしまう

「テンカワ・アキト、コックです」



「なんで、コックがおれのロボットに乗ってるんだ」

「彼は火星出身でね、コックとして採用したんだ」

ガイの疑問にプロスさんが答えている


と、そんな風景とは別に
艦長のミスマル・ユリカ

「テンカワ、テンカワ・・・・・アキト!!」
何かに気が付いたようです


「アキト、アキトだあ・・・アキトアキト、生きてたんだねアキト」


超音波攻撃でブリッジの中は混乱状態におちいった・・・味方に攻撃してどうする?
エステバリスの中ではあやうく意識を手放しかけたアキトは持ちこたえていたが、ラピスは意識がもうろうとしていた

「だ、だいじょうぶかラピス!?」

「・・・う、うん、ダ、大丈夫ダヨ・・・・・・」

なんとか持ち直したようだ(汗)


「ゆ、ユリカ、だれだよあいつは・・・」

思い切り不安になったジュンが聞く

「アキトはユリカの王子様なんだよ」

「王子様!?」 「バカ?」

「お、王子様って・・・」

「ほらジュン君、この写真の子だよ・・・アキトいきてたんだよ」

「そ、そそそんなあ・・・・・・」

何か知らないうちに何かが終わってるようですね、ジュン君



「ちょっとまて、一体いきなりなんだ? 王子様ってどういうことだ? それ以前にあんたは誰だ?」

アキト何が何だかわかりません・・・そりゃあ見知らぬ女にいきなり王子様よばわりされては・・・

「またまた、アキトったら照れ屋さんなんだから、子供の頃火星でお隣だったユリカだよ」

「ユリカ・・・ユリカって・・・・・・あっ」

どうやら思い出してしまったようである・・・

「ユリカ、あのミスマル・ユリカかあ・・・」

「思い出してくれたのねアキト、ユリカもう感激」

たしかに思い出した・・・いろんな複雑な思いはあるが・・・

「でも、アキトをおとりになんて出来ない危険すぎる・・・」

「お、おい何言ってるんだ?」

「わかってる、アキトの決意が固いこと、女の勝手でどうこう出来ないよね・・・わかった
ナデシコと私たちの命あなたに預ける・・・必ず生きて帰ってきてね」


「・・・・・・あのなあ・・・」

とまあ、緊張感もどこかに吹き飛ぶ展開で話が進み中
ラピスは少し複雑な心境だった・・・『ミスマル・ユリカ』
未来の世界で、アキトが闇に身を落としても助けようとした女性
ラピスはその時のアキトの想いを知っている・・・それだけに・・・・・・


「もうじき地上へ出ます」

そう銀の髪の少女が感情のあまりこもらない声でつげる

ふと、アキトは気が付いた・・・この子はどこかラピスに似ている・・・と

で、そのラピスだが、その少女ルリが映像に出たとたん睨み付けていた

『ホシノ・ルリ、アナタのせいでアキトは・・・・・・』

もちろんこの時代のルリに何の責任もないのである。ラピスもそれはわかっているが
感情がそれを許さないのだ・・・・・・



映像が切れた後もルリは落ち着かなかった・・・表面上は冷静をよそおっているが
なに?何故あの子は私をにらみつけたのか?
あの子もマシンチャイルドらしい(?)けどいったいどうして・・・

やがて、エステバリスは地上に現れゴートよりアキトに作戦が伝えられる

「作戦は十分間、とにかく敵を引き付けろ、健闘をいのる」



ともかくも作戦は開始された

出たその出入り口は、虫型の機動兵器にすっかり包囲されていた


「・・・みんな勝手なこと言いやがって・・・・・・」

「大丈夫ダヨアキト、アキトはラピスが守るから・・・」

その言葉にはっとするアキト・・・そうだ、ラピスはここにいる
おれがこの子を守らなくちゃいけないのに逆にこの子に守るといわれている
それじゃ駄目なんだ、俺が守ってあげなくっちゃ・・・俺自身強くならなくちゃ



「負けられない、負けられないんだ・・・」


戦いがはじまると意外な状況になりはじめていた

「奴らの動きがスローにみえるどういうことだ?」

数では圧倒的なはずのバッタもジョロたちもアキトの前ではとまった的状態だったのだ
的確にワイヤーフィストで敵を葬っていく・・・・・・

さらに冷静なナビゲートで状況をラピスがアキトに伝えアキトもそれに対応する
まるで、長年コンビを組んでいたかのような、完璧なコンビネーションだった

「それに、俺はこの感じを知っている、このコクピットも操縦する感覚も・・・」

それどころかエステの調整不足もあるかもしれないが、動きが鈍くてアキトの動きについてこれないような気もする



おどろいてるのはアキトだけではない、ナデシコのブリッジでも驚きでむかえられていた

「すごい、まるで流れるような動きですね」

おもわずその動きに見とれるメグミ・レイナード

「無駄な動きがほとんどありません、・・・ナビゲートとの連携も完璧です」

冷静に分析するホシノ・ルリ、素直に感嘆としているが
さっきの件もあるせいか、同時にナビゲートするラピスに複雑な感情を抱き始めていた

「いやあ、テンカワさんがこれほどやるとは・・・これはパイロットへの転向も考えてもらわないと」

うれしい誤算とでも言いたげなプロスペクター、でも同時にアキトに対して警戒も感じてはいるが・・・

「すごいすごい、さすがアキトは私の王子様だね」

ま、この人はこんなもんですね・・・


やってるうちに二百とも三百とも思われたバッタたちは百を割り込んでいた、と、そこへ・・・
ナデシコのより敵を海上へおびき寄せるように指示が来た

同時に付近の地図も表示され合流ポイントも指示される

「アキト、ワタシがここに誘導するヨ」

「・・・わかった、指示たのむ」

ともかくも、アキトはこの件でラピスのことをすっかり信頼しているようだ




海上の合流ポイントにやってきて、そこでナデシコと合流をはたし・・・
残った機動兵器たちはナデシコのグラビティブラストで殲滅された


「そんな、こんなの偶然よ・・・」

ムネタケ、目の前で起きた事なのに柔軟性の無さのため現実を認められないようだ

「認めざる終えまい、よくやった艦長・・・それにロボットのパイロット」

ムネタケよりよほど柔軟性のあるフクベはユリカ、そしてアキトの事を賞賛した

「まさに逸材ですな・・・」

プロスさんもどうにか初陣がうまくかざれてほっと余裕といったところでしょうか


そして・・・

「アキト、すごいすごい、やっぱりアキトはユリカの王子さまだね」


すっかりうれしそうな、艦長ミスマル・ユリカがはしゃいでいるのだった・・・


と、いうところで今回はこれでしめたいと思いますが、最後はこの人

「ほんと、ばかばっか・・・」






つづく






あとがき

よーし、どうにかナデシコ発進まで行けました・・・

本当は、アキトやラピスにもっとナデシコのクルーとの交流をしてもらうつもりだったのですが、次回に持ち越しです。

ところで、いままでラピスの感想でかわいいとかいう声が多かったですが、とうとう可愛くない部分が出てきましたね・・・

ラピスのルリに対する感情は、このシリーズ始めた時から考えていたことです。

自分で書いててこう言うのはどうかと思いますが、どうなるんだろう(オイ)

まあ、あまり深刻になりすぎないようにしたいですが、やっぱりまわりの大人しだいですかね

とりあえずミナトさんに期待してるのですが・・・

あと、Takuyaの戦いでは使わなかったユリカの超音波ボイスとか遅刻とかのネタ使ってみました・・・

これってナデSSで出てきた設定なんですよね・・・(ビデオ見たらそんな音波兵器使ってないし、ユリカは遅刻してません)

まあ、あまりうまく使えなかった気もしますが、まあいいでしょう(次回はミスマル提督か)

では、また次回をよろしく

 

代理人の感想

 

まぁ、ラピスからすれば当然の感情ではあるわけですが・・・・

和解(?)が成立するかどうかはかなり難しいでしょうねぇ。

それこそミナトさん次第?

 

 

あ、それとこの世界のラピスも

 

素質あり!

 

なんですね(爆)?

ウリピーやガイ、ヒカルから妙な影響を受けないことを祈るばかりです(笑)。

 

まぁ、イズミさんから影響を受けるよりはマシかもしれませんが(爆)。