(ササミの航海日誌「第三話」)

「ちょっとそれどう言う事!! フクベ提督を呼んでおいてわたし達は要らない〜ぃ!!」

ナデシコのブリッジでは、連合軍人ムネタケ・サダアキ氏がキーキーうるさくサワイでいた

その相手をせにゃならんゴートも大変である

本来ネルガルが呼んだのは、フクベ提督(退役中将)だけであり、ムネタケとその部下はお呼びでないのであるが

とはいえ、ネルガルとしても地球連合のお目付け役として彼らをナデシコに受け入れざるをえないだろう

たとえ招かれざる客であったとしても・・・・・・



で、そんな派遣軍人達(主にムネタケ)を少し離れた位置でブリッジ要員の女性クルーたちが冷ややかに見ながら会話していた


「あの人たちですよね? 火星でコロニーに戦艦落としたの」

そう言うのは、通信士のメグミ・レイナード (17)
三つ編みのどちらかというとかわいい系の普通の女の子であるが
ここに来る前は、声優をやっていたという前歴の持ち主である


「まあ、きゃんきゃん吠えたくなるのもわかるけど」

はちきれんばかりのナイスバディ、大人の魅力のこの女性はハルカ・ミナトさん (22)
社長秘書という前歴をもつ躁舵手であり
その色気たっぷりの外見とはうらはらに、かなりしっかりした女性である


ふと、ミナトはこの場にルリがいないのに気が付いた

「ねえメグちゃん、ルリルリどこいったのかな?」

「えっ? ああそう言えば?・・・・・・」

少し前まで一緒にここにいたのに、いつの間にかどこかに行ったようだ

「心配なんですかミナトさん? そのうち戻ってきますよ」

メグミはミナトを安心させるように言う
ミナトがルリの事を何かと気にかけていることにメグミも気が付いていたので、そんな様子に微笑ましく思う

まるで妹の心配するお姉さんみたいだな、というのがメグミの感想である

「最近、特に今日なんかは様子がおかしかったからちょっと気になるのよね・・・」

ミナトさん心配性ですね、メグミは苦笑しつつ

「あの子はああ見えてしっかりしてるんだから、子供あつかいしたら怒られますよ、もっと信用してあげないと・・・」

「・・・そうよね、あの子結構しっかりしているし・・・・・・」

苦笑しつつミナトも同意する・・・だが、それでも感じるこの言いし得ぬ不安は何なのだろう?
ミナトはその不安を振り払うように頭を振った

と、そのとき


「みなさーん私が艦長のミスマルユリカで〜す。ぶいっ」

「「「ぶい〜〜っ!?」」」

場の空気をかき回す、ナデシコ艦長、ミスマル・ユリカ (20)


明るく場違いな登場であった

あ、ついでに影の薄い副長もね(涙)









機動戦艦ナデシコ

砂沙美の航海日誌



〜第三話「ナデシコ発進!! それぞれの初陣」〜



By 三平






話を少しだけ巻き戻す

「ねえ、アキト兄ちゃん、テンカワって何? ササミよくわかんないんだけど・・・?」

ササミがそんな事を聞いてきた・・・あれ? ササミは知らなかったっけ?


といっても無理ないか、カワイ家では僕は実子と養子の区別なく同じ家族として暮らしてきたし
ササミも僕が血のつながりのない養子だと知ってるはずだけど、今ではそんな事気にしていないし聞こうともしないから

『テンカワ』を名乗らなくなってから、もう十年だから・・・今ではカワイ・アキトの名のほうが自然に感じるからなあ
十年か、あの頃赤ん坊だったササミにわかるわけないよな


・・・・・・ん、だとしたらそのササミと年恰好の近いあの子がなぜテンカワの名を知っていたんだろう?

まあいいか、今はササミの疑問に答えてやるか


「ああ、テンカワと言うのはね、お兄ちゃんの昔の姓なんだ・・・それでね・・・・・・」





何がまずかったんだろう? プロスさん尋問の邪魔されたと怒っている・・・そんなつもりじゃ無かったんだけどなあ

悪気は無かったんだからそんなに怒らないでくださいよ・・・・・・と、思っていたその時


急に目の前が真っ暗になり、自分の中に何かが入ってくる不快な感覚が・・・・・・



ああっ・・・うああああああっ〜〜!!




僕はたまらず声を上げる・・・いや、あげたつもりがほとんど声になってなかったらしい




体中の感覚が消えて行き、代わりに絶対零度の液体が体中に染み渡っていくような不快な感覚・・・
それに比例するかのように僕のすべてが消えていく・・・意識も何もかも・・・・・・



何故だか理由はわからないけど理解した、何者かが僕の中に入り込んで来たのだと・・・

薄れていく意識の中で誰かの声を聞いたような気がする



「お兄ちゃん、アキトお兄ちゃん、しっかりして」

「お兄ちゃん、ササミはここにいるよ、お兄ちゃん」


『!!ササミ、そうだササミ・・・!!!』


この理不尽な状況の理屈はわからない・・・だけど


ササミを、僕が居なくなってしまったら、たった一人取り残されてしまうササミをおいてどこにもいけない

僕が消えてしまったら、ササミの側に居てやれない、守ってもやれない・・・・・・



イヤだっ!! 僕はこのまま消えられない! どこにも行けない!!



お前が誰かは知らないけど



お前がいなくなれえ〜〜っっっ!!!





不快な感覚が急速に引いていくのを感じる・・・僕は生き残れたのかな?



ササミの声が聞こえる・・・感覚が戻ってきて誰かが手を握ってくれているのがわかる

この手はササミかな?

そう思うと急に安心してしまい・・・ごめんササミ、心配かけて悪いけど少しだけ眠らせて・・・くれ・・・・・・

僕の意識はまた遠のいていった・・・今度はゆっくり穏やかに・・・・・・





アキトが次に目を覚ました時に目に入ったのはどこかの白い天井

医務室だろうか? (知らない天井だ、は無しね、笑)



「良かった、お兄ちゃん気が付いたんだね」

「アキトさん、あなたはアキトさんなんですか?」



声のした方を見ると、そこにいるのはササミともう一人、ルリとかいう女の子

ササミはその金瞳を濡らして泣きはらしていた・・・心配かけちゃったようだね

まだ頭が重いし気分も良くない、だけど早くササミを安心させてあげないとな、礼も言いたいし



「ありがとうササミ・・・」



「えっ?」

「!?・・・!」



「あの時、何かが僕の中に入ってきたんだ、僕はそいつに乗っ取られて消えそうになっていたんだ・・・」



「消えるって? 何言ってるのお兄ちゃん、それにササミ、お兄ちゃんが居なくなるのは嫌だよ」



「わかってる、その時、聞こえたんだ、ササミの声が・・・感じたんだササミの事を

 このままササミの事おいてどこにも行けない

 そう思ったら頑張れた、そいつも追い出す事が出来た、だからありがとう、ササミ・・・・・・」


そう言って僕はササミに笑いかけた、ササミはどこか照れくさそうだった


「ありがとうなんて、そんな・・・ササミはただ・・・・・・」



「・・・にを・・・何を言ってるんですか、なんで、なんであなたが残ったんですか?」


!!何言ってるんだこの子は!??


「あなたがいなくなれば私の知っているアキトさんが帰って来れたんです・・・

 返して、返してください私のアキトさんを・・・・・・」



そう言ってその子、ルリとか言う子は僕に詰め寄ってきた
どうも正気を失って取り乱しているらしい

初めは唖然と聞いていた僕だったが、だんだんその理不尽な主張に怒りが込み上げて来た
僕だって死ぬかと思う目にあって、やっとの思いで生き残れたのにその事を真っ向から否定されれば


何より、僕自身の存在を否定されれば



「勝手なこと言うな、君がどんな想いでいるかなんて僕は知らない、だけど
 そっちの都合で僕が消えなきゃならない言われはない、勝手な事言うな」




気が付いたら僕の手ははその子を締め上げていた


「お兄ちゃん、だめだよ女の子に乱暴な事をしちゃあ、お兄ちゃんらしくないよ」


ササミの言葉にアキトははっとして手を緩めた・・・たしかにらしくないかもな

普段は基本的におとなしく人のいいアキトだが
今は気が立っていたうえに自身の存在を否定されたせいもある・・・だからだろうか


力なく崩れ落ちるルリ、その目からは涙があふれ・・・
意識が朦朧と薄れ行くなか、ルリはこんな事を想っていた


『アキトさん・・・私の知っているあなたはもうどこにもいないのですか?アキト・・・さん・・・・・・私は・・・もう一度・・・』



「ルリちゃん、ルリちゃん、しっかりして・・・駄目だ、完全に気を失っちゃったよ・・・」

ササミは倒れたルリの介抱をしていたのだが、どうやらしばらく目を覚ましそうにない

「お兄ちゃん手を貸して、とにかくこのままにしておけないよ」

「あ、ああ、わかった・・・」

とにかく意識を失ったルリをこのまま置いておく訳にも行かず、二人はルリをベットに寝かしつけた
さらに、この子が気絶したことを誰かに知らせない訳にも行かず、とりあえずプロスぺクターに連絡した
何故だかプロスは大慌てしたようだが・・・まあそれは今はおくとして





「ねえアキト兄ちゃん、まだルリちゃんのこと怒っている?」

「!?何でそんな事聞くんだ・・・まあ、怒っていないと言えばウソになるけど・・・」


さすがにあの時はカッとしたのでああいうことしたが、冷静になってみればやりすぎたかな?とも思い少し気まずい

だが、それでも気分のいい話ではない・・・


「お兄ちゃんルリちゃんのこと、許してあげて・・・」

「!?なんだってそんなこと・・・ササミだってあの子の言ってること聞いただろう?」


さすがにアキトもササミの言いたい事がわかりかねた、なぜ?


「うん、正直ルリちゃんの事情まではササミにも分からないよ
 だけどルリちゃんにも譲れない想いが何かあったんだと思う・・・ルリちゃんの大切な何かが・・・」

「・・・・・・・・・」

「あんなにも取り乱すほどに・・・あの言葉は本当に悪気があって言ったんじゃないと思うから、だから・・・」

「許してやれって・・・?」


こくんとうなずくササミ


「はあ〜っ、僕もよく人がいいなんて言われるけど、ササミも随分とお人好しなんだな」

「えへへ、兄妹だからね」

血のつながりは無いけどね、などとは言わない
そんなもの問題でないくらい強い絆がこの家族にはあるのだから
そもそも、そういう事言ったらカワイ家の両親からしてお人好し夫婦だったのだし・・・



「わかったよ、ルリちゃんのことは許すよ、ササミがそう言ったからじゃなく僕がそう決めたから、うんそう決めた」

「ありがとうお兄ちゃん」

「おいおい、それはこの子が目を覚まして仲直り出来てから言ってくれよ、まだ何もしてないぞ」



それに肝心のルリが僕のことどう思っているかという問題もあるけどね
カッときたとはいえ、ひどい事したし逆にこっちが許して貰えるかな? こっちも謝っておかないとな



「うんそうだね、早く仲直り出きるといいね・・・」

ササミはにっこりと笑ってそう言った



まったくわだかまりが無いと言えばウソになるが、アキトはササミの説得を受け入れ、ルリの事を許す事にした
だが、二人はまだ知らない・・・眠りに入ったルリが次に目を覚ますのは随分先のことになるという事を・・・・・・





ヴーーッ ヴーーッ ヴーーッ ヴーーッ


突然艦内にエマージェンシーコールが鳴り響き、緊急の艦内放送が流れた

「現在、敵機動兵器と地上軍が交戦中、ブリッジ要員は直ちに戦闘艦橋に集合せよ、繰り返す、現在敵・・・・・・」



当然、医務室でもこの艦内放送は流れており、カワイ兄妹を不安がらせていた

「お、お兄ちゃん・・・」

「だ、大丈夫だよ、ここは軍の施設だしそのうちヤツラを追っ払うさ・・・多分」



まあ、そう言うほどアキトは軍を信用などしていない
そもそも火星にチュ−リップ落としたあげく民間人見捨てて逃げた軍のことを嫌っていたが
ここはササミを安心させる意味もあり、そういう風に言ったのだが・・・



だが、アキト達の知らない所で事態は迷走しつづけていたのだった





「ちょっと、この船が動かないなんてどういう事よ!!」

これまたお約束だが、キノコ、もといムネタケがブリッジで騒いでいた



「いえ、そう言われましても、オペレーターのホシノ・ルリさんは現在意識不明でして、医務室で寝ておりまして、はい」

プロスペクター、ハンカチで汗を拭き拭き答えていた

「だったらさっさとたたき起こしなさいよ、このままだとやられちゃうでしょうが!!

 私が死んだらどうするのよ!!!」



ムネタケの非情な発言にたちまち非難の声があがる

「何言ってるの!! ルリルリはまだ子供なのよ、よくそんな酷い事言えるわね!!!」

何かとルリのこと気にかけていただけに、ミナトはムネタケに激しく食って掛かる

「ミナトさん落ち着いて、落ち着いてください・・・・・・だけど私もそんなこと言うのはあんまりだと思います」

ミナトのことをなだめつつも、メグミもムネタケの言い様に反論した。
何も言わなかったらあのキノコだったら本当にルリのことたたき起こしかねないという気もしたし


「うきーっ、だったらどうするのよ? 私はこんな所で死ぬのなんてまっぴらごめんだわ

 だいたいそれなら何で代わりのオペレーターくらい用意しておかないのよ、常識でしょうが!!」


ムネタケに常識うんぬん言われたら人間おしまいだろうか(苦笑)
だがこの場合正論かもしれない(こまったことにまったくその通りだし)


「代わりのオペレーターと言われましても、ナデシコのメインコンピューターは特別でして

 普通の人にはあつかいづらいモノでルリさんみたいな特別なIFSが必要なのでして、はい」


そう言いながらもプロスペクターは必死に次善の策がないか考えていた

ナデシコの新型のメインコンピューター『オモイカネ』は、艦内のありとあらゆるモノを管理しており
これあるからこそ、通常の軍艦にくらべ少人数で効率よく艦を運用できるのだが・・・
やや特殊な為に、あつかえる人間が限定されるのである

仮にオペレーター用のIFSもっていたとしても、気難しい(?)オモイカネ相手にそれを運用するとなると・・・

とにもかくにも、代わりのオペレーター用意したかったができなかったというのが本当のところである


「はあ〜っ、だいたいルリさんの代わりになる人材なんてそう簡単には・・・・・・! あっ!!」

「なにか思いついたのですかプロスさん?」

その様子に気が付いたメグミが聞いてきた
他のブリッジ要員も注目する


そのプロスペクターだが、いまルリが寝ている医務室にいるもう一人の少女のことを思い出していた

あの後のごたごたや敵襲などですっかり失念していたが、あの子もマシンチャイルドなのだ
そもそもルリの補佐役が出来るのではないかと期待して連れてきたのではなかったのか?

(もちろん、そういう下心もあったが、知らない仲でもないカワイ夫妻の子供たちということで保護したかったのもあるよ)

もっとも、実力のほうは未知数だし、ぶっつけ本番になるので不安がないと言えばウソになるが・・・



「一人だけ代わりのオペレーターに心当たりがあります。すぐ連れてきますので少しお待ちを・・・」

「まて、なら俺も行く、こんな所でじっとなんかしてられるか」

そう言ってプロスはブリッジを飛び出し、医務室に走っていき
あとを追うようにウリバタケも続いた


その直後のブリッジでは何とも言えない空気が漂ったのだが・・・・・・



「どうやらこの艦も動くようだし最悪の事態は避けられそうだな。

 ところで艦長、艦が起動した後の作戦はどうするのかね?」



さすがに年の功と言うべきだろうか?
たんたんとした口調ながらも、フクベ提督が口を開き、それをきっかけに再び事が動き始めたのであった



「海中ゲートを抜けて一旦海中へ、そこから浮上して敵を背後より殲滅します」

艦長のミスマル・ユリカははっきりとそう言い切った

『ふむ、流石はミスマルの娘、わかっているようだな・・・いや、そんな言い草はかえって失礼かな』

フクベは言葉に出さずにそう評し、満足そうにうなずいた・・・・・・のだが、直後にバカが騒いでた


「そこで俺の出番さあ、俺のロボットが囮になって敵を引き付けナデシコで敵を殲滅、くう〜っ燃えるシチュエーションだあ!!」

「お前、足を折ったのではなかったのか?」

戦闘責任者、ごつい大男のゴート・ホーリーが突っ込む

「しまったあ〜っ」

・・・・・・この騒がしいバカはヤマダ・ジロウ『ダイゴウジ・ガイだあ〜っ』
早く来てロボットの試し乗りしていたのはいいとして、その時こけて足骨折したのだった・・・まあいいか


何にせよ、ブリッジの沈滞ムードはこんな感じで払拭されていったのだった
さて、あとはオペレーターが来るのを待つだけだが・・・・・・





そんなわけで、ここは医務室

「えええっ!! いきなりオペレーターと言われたってササミ困るよお」

プロスのいきなりの申し出に困惑のササミ・・・何より自信がない


「・・・プロスさん、何だかんだうまい事言って最初からそのつもりだったんじゃないんですか? だとしたら・・・」

アキトなど不信感あらわにそう切り出す。返答しだいでは考えがあるぞと言わんばかりである


「いやこれは手厳しい、ですがそんなつもりはありませんでしたよ、ええ、実は事情が変わりまして・・・」


冷や汗ながしながら説明のプロスペクター、実は下心おおありだったが、そんな事バカ正直に言うものでもないだろう


「本来オペレーターをするはずだったルリさんが何故か意識不明でどうにもならず

 代わりが務まる方はササミさんくらいしか居ないのが現状でして・・・そこを曲げてお願いしたいのです」



「え〜っと・・・」(汗)

「そ、そうなんですか・・・」(大汗)


二人ともたちまち大人しくなるのだった・・・さすがにまじいと思うのだろうか(苦笑)


「それに、このままですとナデシコは発進することも出来ずに落とされてしまいます、ここにいる全員の命にも関わるのです」


「!!全員の命・・・!」


この言葉にササミは反応した・・・あの日の火星でのこと・・・・・・
忘れよう忘れようとしてもなかなか忘れられず苦しめられてきたあの光景が思い出される

ササミは決意した、静かに宣言

「うまくいくかわからないけど、ササミやってみるよ・・・」

「!! それでは・・・!!!」

「! いいのかササミ !?」

喜色を現すプロスペクターと心配そうなアキト


「お兄ちゃんも覚えているよねあの日のあの光景・・・

 ササミここにそれを再現するのは嫌だよ、だったらやらずに後悔するよりやって後悔したい・・・怖いけど」


そうまで言われたらアキトも何も言えない・・・ただ一言


「わかった、ササミがそう言うのならやってみればいい、お兄ちゃんがついているから怖くないよ・・・」

「うん、ありがとうお兄ちゃん・・・」


何はともあれ決まったようだ・・・あとは一分一秒でも貴重な時間


「それでは、時間がありません・・・早速ブリッジへ」

「ちょっとまったあーっ」


プロスの言をさえぎり意見を入れるのはウリバタケ・セイヤ (29) 整備班長


「オペレーターだけじゃ駄目だ、パイロットがいる・・・あのバカ肝心な時骨折して使えないし他に代えもいない」


「そ、そう言えば・・・」(汗)


そう言われればプロスも納得いく、考えてみればこのせっぱつまった時に
パイロットもオペレーターも使えないと言うのは本当に困りものである・・・代えのいない少数精鋭も考え物かも


「だが、そいつならIFSもっている、おたくパイロットなんだろ?」

といってウリバタケ、アキトの手をみる


「!!こ、これは違う、僕はパイロットじゃない、これは・・・」


「パイロット以外にこんな物付けるか?

 それにそうでなくともあんたにやってもらわないとここに居る全員死んでしまうんだ、あんたの妹もふくめてな・・・」


「!!・・・言い方がずるい、そんなこと言われたら断れないじゃないか・・・・・・わかったよやってやるよ!!」


「お兄ちゃん・・・」

「心配するなよササミ、お兄ちゃんはササミを置いていくもんか、絶対帰ってくる」

「・・・がんばるから、ササミがんばるから、アキト兄ちゃんも絶対絶対帰ってきてよ・・・・・・」

「ああ・・・」



「話が決まったようですな、申し訳ありませんが我々にも余裕がないのです、この通りお願いします」


この場はプロスペクターのこの発言で締めくくった・・・後は行動あるのみ





ナデシコのブリッジにて

プロスにつれられてササミはブリッジに入った、今頃はお兄ちゃん達もロボットの方にいっているだろう


「こ、こんなチンクシャな子が代えのオペレーター? いったい何考えてるのよ」


第一声は・・・誰か言わずもがなかな? さすがにカチンときたササミだが今はだまっている事にした
実際そんな暇もおしいし・・・


本来ルリが座っていたはずのオペレーター席にササミは座る

緊張する・・・落ち着け落ち着け・・・怖い逃げ出したい・・・理由のわからない圧迫感を感じる
だけど逃げるわけにはいかない・・・ここに居る人たちやお兄ちゃんの命がかかってる・・・

ササミの手にコンピューター用のIFSが浮かび、メインコンピューターにアクセスした・・・だけど

『どうすれば良い、ササミやっぱり出来ないよ・・・どうすれば・・・・・・』

『大丈夫だよ、僕の言う通りにすれば・・・』

『あなたはだれなの?』

『僕はオモイカネこのナデシコのAIだよ、あなたはルリじゃないね、あなたはだれ?』

『ササミ、私はカワイ・ササミだよ』

『うんわかったよろしくね、ササミ』

『よろしくねオモイカネくん』


ササミは緊張が解けていくのを感じる・・・

できるかもしれない、何とかなるかもしれない
少なくともオモイカネくんはササミのこと助けてくれるようだし・・・

ササミは知らない、本来オモイカネは気難しいということ、で、ササミはそのオモイカネに気に入られたようだ


とにかく今頃お兄ちゃんも頑張ってる・・・だからササミも頑張らなきゃ


「大丈夫? 緊張してたみたいだけど?」

隣の大人っぽい女性が心配して声をかけてきた

「はい、大丈夫です、なんとかなりそうです・・・ええっと」

「ミナト、ハルカミナトよ、よろしくね・・・えっと・・・」

「ササミです、カワイササミ、よろしくミナトお姉ちゃん」


ミナトは苦笑した、ルリとはちがって元気の良い子のようだ
もっとも、そう考えたあと、ミナトは少し暗い気分になる・・・ルリはいったいどうしたんだろう?


やがて、ドックの注水も終わり、いつでも出られる体勢になった

「準備できました、いつでもいけます」

ササミの元気な声が響く

「エンジン、いいわよ」

ミナトからも報告があがり・・・艦長ミスマル・ユリカが発進の号令を掛ける


「機動戦艦ナデシコ、発進します」



かくて、ナデシコは手間取りながらも発進した



またもや時間を少しさかのぼる

何はともあれ、ウリバタケに連れられて
格納庫にてエステバリス陸戦フレームに乗せられたカワイ・アキト

今、このロボットはエレベーターに乗せられて地上に向かっていた



そこへ・・・

「君は誰だ!! 所属と名前を言いたまえ!!」


と、いきなり通信で詰問され、さすがにアキトはカチンと来たのだった・・・



「何言ってるんだ、人を無理やりロボットに乗せといて、誰だは無いだろう」


あわててすかさずフォローするプロス


「カワイさんは今日やとったばかりのコックさんでして・・・」


「何でコックが俺のロボットに乗ってるんだ!!?」


フォローの最中に割り込んでくるバカ一人、プロスあわててもう一度


「ですから、他にロボットを任せられる人が居ない物でして・・・」


「俺がいるだろうが、エースパイロットのこのガイ様が・・・」


「勝手に骨を折ったくせにえらそうな事を言うな」


「うぐっ」


ゴートに突っ込まれ、さすがに口ごもるヤマダ『ダイゴウジ・ガイだあっ』



「お兄ちゃん、もうすぐそのロボット地上に出るけど、無事に帰ってきてよ、絶対だよ・・・」


ササミはモニターごしにそう話しかけた・・・
不安そうな顔は隠しようはないが、でも明るく振舞おうとしているのが見える


「ああ、帰ってくるよ、ササミを置いてどこにもいくもんか・・・」


やがて、アキトの乗ったエステバリスは地上に現れた

そこは、多数の機動兵器に囲まれた戦場だった


「作戦は十分間、とにかく敵を引き付けろ、健闘を祈る」



「う、うわあああああぁぁぁぁ〜〜っ」


アキトは機動兵器を前に叫んでしまった
もう、やつらを見ても平気だったはずなのに・・・だが、実際目の前にやつらを見たら・・・・・・
なぜか身体が動かない・・・・・・


「お兄ちゃん、しっかりしてお兄ちゃん!!」


「さ、ササミ・・・」



そうだった、このままじゃ・・・・・・帰るんだ、僕はササミを一人置いてはいけないんだ


「お前達なんかに負けられるか、負けられない・・・」



アキトの操縦するエステバリス陸戦フレームは、とっさにジャンプして敵の攻撃をかわし、逃走を開始した・・・



「逃げてばかりいないで戦え、反撃しろ!!」

熱血男はかってなこと言ってます



「いえいえ、彼はよくやってます、りっぱな囮ぶりです・・・」


プロスはそう評価してますが、現在戦闘中のアキトには意味の無い事だったりする

実質初めての戦闘で余裕の無いアキトには状況を客観的に判断することもできないのだから・・・


食らい付いて来る敵機動兵器に対し、ワイヤーフィスト(ワイヤーつきのロケットパンチみたいなもの)で反撃もするが
圧倒的に数の多い敵に、やがて海岸線に追い詰められてしまったのであった



と、そこへ・・・



「お兄ちゃん、ここにジャンプして・・・」


ササミから合流地点の指示が来て、モニターを見ると、そこは海のど真ん中・・・
大丈夫なのか? だが、アキトは躊躇せず飛んだ・・・ササミのこと微塵も疑わずに・・・・・・




そこに現れたのは、あの白い戦艦ナデシコ


そして、アキトの集めた敵機動兵器はいい具合に一箇所に集まっていた



「敵の機動兵器は主砲の有効射程にほとんど入ってます」

ササミの報告を受け、艦長のミスマル・ユリカは号令した


「敵、まとめて全〜部てーっ!!」


ナデシコの発射した主砲、グラビティーブラストが敵を残らず殲滅して戦闘はおわった


「・・・すごい、あいつらがこんな簡単に・・・・・・」

アキトはナデシコの主砲のその威力にあっけにとられたようだ





「よかった、無事に帰ってこれたねお兄ちゃん・・・」


「ああ、なんとかね・・・・・・ただいま」


「おかえりなさい・・・・・・お兄ちゃん」





つづく





あとがき

えーっと、まずはじめにこのSSは瑞白さんのSS、『夢見ぬ星々の創世曲』からネタもらってます

実は前からたのんであったのがやっとそこまで行ったというわけなのですが・・・(瑞白さん許可ありがとうございます)

瑞白さんじゃないけど、ルリファンのみなさんごめんなさい、瑞白さんのSS見たらルリの眠り姫やってみたくなったんだい

結局、アキトは河合アキトくんが自分を守りきりましたが、これは前から決めていたんです

とはいえ、黒アキトの力や記憶など受け継ぐかどうか少し迷ったのですが・・・やめときました、きれいに削除と

僕としては、はじめは弱いアキト君がだんだん成長していく話かきたかったですし・・・強さを受け継ぐのはラピスの所の

アキト君でやりましたしね



あと、少し気が早いですが、ラピスのあつかいどうするかで少し悩んでます。

ハーリーはこれまた瑞白さんのネタですが、サツキミドリで合流させることに決めましたが(あっちはラピスだったが)

ラピスはどうしようかなあ、下手すれば『ラピスの想い』とネタかぶるかもしれないしなあ・・・早めに合流させるか?

よければ意見プリーズ

と言った所で、今回はこの辺で、次回もよろしくおねがいします


 

 

代理人の感想

ま、こうでないとね(苦笑)。

ここで黒アキトが出てきたら砂沙美が出てくる意味が全くありませんから。

 

まぁ、黒アキトにしろこのまま消えてしまうんじゃなくて、同時代軸の誰かの精神を乗っ取って復活する、

というのもそれはそれでありでしょう・・・・・・・・例えば北辰とか(核爆)。