(砂沙美の航海日誌「第六話」)

地球連合統合作戦本部ビル総司令部内大会議場では
今まさにナデシコに対する処遇について討議されており
今は総司令が演説を行っている最中であった。

ちなみに、総司令は大柄で壮年の黒人男性であり、態度も堂々たるものである


「ナデシコゆるすまじ!

 国家対国家の紛争が終わった今、地球人類は一致団結して木星蜥蜴と戦うときだ!!

 だが、ナデシコは火星に向かうと言う、こんな勝手を許していては地球はどうなる!?』


と、そこに緊急伝が入って演説は中断された


「総司令、緊急通信が!!」

「何だ?」


女性士官からの報告に何事かと聞き返す総司令
その女性士官は言いにくそうに報告する


「その・・・、ナデシコからです」

「ナデシコ!?」



その直後、会議場内の大スクリーンに映ったのは・・・



「あけまして、おめでとうございま〜す」



なぜか振袖姿のナデシコ艦長ミスマル・ユリカであった(汗)



「おおっ、フジヤマ!」

「ゲイシャ!!」

なぜか各国の高級軍人達から歓声が上がった

極東方面軍、日本代表の席では・・・

父親のミスマル提督が厳つい顔をにやけさせており、
隣の席では極東方面司令のタナカ・サブロウ提督が頭を抱えていたのであった(苦笑)
タナカ提督は、常識的な苦労人なんであろう・・・多分胃薬は手放せないのだろうなあ(涙)
(予断だが、まだ先の話だが、健康問題でタナカ提督が一線を退いた後、
 ミスマル提督が極東指令になるのだが・・・でもこのSSではタナカ提督にはもう少し出番が残っているのだった)



「私が変わる、艦長、君は緊張しているようだ・・・」


フクベ提督がその様子にあわてているが、ユリカは気にしていない


「外人さんには日本語わからないし、愛嬌出した方が・・・」


にこやかに、そうのたまうユリカ、本当に何を考えているのだろうね、この方?


「君はまず国際的なマナーを先に学ばれるべきだな」


総司令はあきれつつ嫌味まじりにそう言い放った


「えっ?、あらご挨拶どうも、折角ですが時間がありませんの・・・」


そう言いつつ、ユリカは交渉、というかお願いを始めた (英語でだけど、そんなん書けないので日本語でね)


「私たちは、三時間後に地球を出たいんですけど、このままだとバリア衛星を破壊しなくちゃいけないの

 ナデシコも傷ついちゃうしぃ、で、悪いけどビッグバリアを一時間開放してくれると、ユリカ感激ィ!」


そんな風にお願いをしたユリカだが、総司令のお気に召さなかったようだ (当たり前だって)


「ビッグバリアを開放しろだと? 盗人に追い銭か! ふざけるな!!」


「あ、そう、それじゃあ無理やり通っちゃうもんね」


「これでハッキリしたな、ナデシコは我々地球連合の敵だ!!」


「あらそう、ではお手柔らかに」


そう言うと、ユリカは不敵な笑みを浮かべてスクリーンから消えた。
なんでもいいが、振袖姿でそう言ってもなあ・・・・・・(苦笑)


「事はもはや極東方面軍だけの問題ではない、全軍あげてナデシコを撃沈せねば秩序はない!!」


総司令が怒気まじりにそう宣言する!!

あわてて極東方面軍司令のタナカ中将が意見を述べる


「しかし、アレを撃沈すれば我々は最新鋭の戦艦を失うことに・・・

 大体クルーの七割は日本国籍ですし・・・ミスマルくん、貴方からも何か・・・・・・」


「おほん、わが娘ながらとんでもない女ですな、

 振袖姿に色気がありすぎる・・・ムフ、ムフフ・・・


ミスマル提督はそうのたまって悦に入って不気味に笑っているのだった・・・この親バカ親父

それを聞いてタナカ司令は頭をかかえているのだった・・・胃がやられるのは時間の問題かな、この人





機動戦艦ナデシコ

砂沙美の航海日誌



〜第六話「それぞれの正義」〜



By 三平





連合軍はナデシコを捕捉するために各方面軍を出撃させたのだが・・・


「まとまった軍事行動は久しぶりのため、木星兵器が刺激され、現在各地でバッタと交戦中です」


女性士官のその報告に、総司令は怒りに打ち震える・・・


「ナデシコ、絶対に許さん!! 第三防衛ラインを呼べ!!」


何か知らんが、ナデシコは総司令の個人的な恨みも買いつつあるようだった・・・大丈夫かこんな調子で?







「現在地球は七段階の防衛ラインで守られている。我々は逆にそれらを一つづつ突破をしていかなければならない」


ゴートの声が重く響く
現在ナデシコではブリッジ要員が集められ状況説明と作戦会議の真っ最中であった


ゴートの言葉を引き取り、プロスが説明の補足をする


「スクラムジェット戦闘機の航続高度はすでに突破、

 空中艦隊はバッタと交戦中で、この二つはすでに無力化されていますから

 現在は地上からのミサイル攻撃、すなわち第四防衛ラインを突破している最中です」


「めんどくさいねえ、一気に宇宙までビューンと出られないの?」


「そう、それが出来ないんだなあ」


めんどくさいと言うメグミの発言に苦笑しつつミナトが答える
さらにそれを受けてササミが・・・・・・説明する番であった(笑)


「えーっと、地球の引力圏脱出速度は秒速11.2キロメートル

 そこまでの脱出速度を得るには、ナデシコの相転移エンジンを臨界までもって行かなきゃいけない。

 だけど、相転移エンジンは真空をより低位の真空と入れ替えることによってエネルギーを得るエンジンだし

 ここより真空に近い高度に行かないと臨界は来ないから・・・・・・えーっと(汗)」


どうやら、ササミちゃん説明に詰まっちゃったようです(苦笑)


ピッ『臨界高度は二万キロ、それまでに第三、第二防衛ライン突破が必要だよ』


オモイカネがウインドウ開いてササミに教えてくれたようです


「あ、そうだった。ありがとうオモイカネ君」


周りとすれば苦笑するしかない光景だった
でも、いつかあるいはこれがナデシコらしい光景という事になるのだろうか
少なくともこの時、そんなササミを咎めようなどという人はここにはいなかったし


と、その時



ズゥ〜ン



「きゃっ!」


地上からのミサイル攻撃の振動が伝わり、艦がゆれたようだ
艦長のミスマル・ユリカがバランスを崩して倒れ、そのまま尻餅をついた・・・って
ユリカさん、あなたまだ振袖姿だったのですか(苦笑)


「またフィールドが弱まったようだな・・・」


ゴートが呟きます
まあ、ナデシコのディストンションフィールドは対木星蜥蜴のビーム兵器用のモノであり
実体弾の攻撃には多少のダメージがあるのは仕方が無いのかもしれない
それはともかくとして


「おほん、艦長着替えてはどうかね?」


さすがにフクベ提督は困ったようにユリカに声をかけた
ユリカさんいまだ尻餅付いたままちょっとあられもない格好になってますし(しょうがないなあ)


「はーい、わっかりました〜っ」


元気に答えるユリカであった・・・でも本当、あなた年いくつ?


ふと、ブリッジを出たときユリカは気がついた・・・というか


『この振袖姿をカワイさんに見てほしい』


そう思ったのであった・・・


『なんで? どうして? どうして私はこんな事思ったんだろう?』


理由がわからなくて戸惑うユリカ・・・でも考え始めるとあの人の事が気になって仕方が無いのだ
自覚の無いうちに顔が熱くなりムネのドキドキも大きくなっているような・・・


『・・・迷ってもしょうがない、行動あるのみ』


そういう風に考える事出来るのは大したものかも
で、カワイさんの部屋の前に着いたユリカ、ノックしてチャイムならして部屋の扉を開けたのだが
そこには誰もいなかった・・・ユリカは知らない
現在、この部屋のヌシはヤマダを避けて逃亡中だという事を・・・・・・


いささか拍子抜けしたユリカ、カワイさんどこに行ったんだろう? と、ここまで考えてハタと気づく
そう言えば、私はカワイさんの事何も知らないんだ(お〜いおい)
なのになぜあの人の事がこんなにも気になって仕方が無いんだろう、と


ず〜〜ん


また艦が小さく揺れた・・・いつまでもこうしてはいられない
カワイさんの事は気になるが、艦長としての責を果たさないといけないのだし

ユリカは表情を引き締めなおすと自分の部屋に戻ってすぐ着替えたのだった
自分の果たすべき仕事をするために





「一体何時まで我々を軟禁するつもりか!!」

「この扱いは明らかに国際法に違反しているぞ!」


先のナデシコ占領に失敗した軍人達が抗議の声を上げてわめいていた


「ガタガタ言ってると脳みそだけ残して体改造しちまうぞ!、大人しくしててよねまったく・・・」


そんな軍人達相手にめんどくさそうにウリバタケがぼやく
実際めんどくさいのだろう・・・人手が足りないのだろうが、整備班長がやる仕事ではない
何にせよそれだけ言うと彼は営倉の扉を閉めていってしまった
これから戦闘なのだ、彼が面倒見なきゃならないかわいいメカ達が待っているのだから


「どう?」

「ちょろいもんですよ、今時縄なんて素人らしいですよまったく」


ウリバタケ達が行ってしまったのを確認して軍人達はあやしい動きを再開した
そのうち一人が自分の手を縛ってあった縄を解くことができたようだ
とすると、さっきの芝居はこれに気づかせないためのものであろうか・・・ともかく


「私はこのままナデシコと宇宙まで付き合う気分ではないわ、戦闘が始まったら脱出よ・・・」


ムネタケは部下達にそう言った・・・あとは気づかれないように脱出のタイミングをはかるだけであろう







第三防衛ラインでは

「やめたまえアオイ君、君は士官候補生なんだぞ」


ミスマル提督が通信でジュンの事を説得していた


「ナデシコを止めるのは僕の使命です」


別にユリカに置き去りにされたからどうという訳でもなかろうが・・・
ナデシコ副長(だった?)アオイ・ジュン君静かに燃えています


「だが、ナノマシン処理は・・・・・・」

「そうですよ、あなたがこれをやる必要は・・・・・・」


ミスマル提督やジュンの隣にいる技術官が説得を続けるが、かえってジュンを意地にさせているようだ


「なんて事ありませんよ、パイロットなら誰でもやっていることです・・・」

これが無いとIFSが使えず、この防衛ラインの機動兵器デルフィニウムを動かすのに支障があるらしい
(というより、パイロットとしては素人同然のジュンがコレ動かすには絶対必要であろう)

だが、地球ではIFSはあまり好まれてはいないようで、士官候補生の彼がコレをするのは異例とも言える


「私はもうユリカの事はスッパリあきらめた・・・だから、なあ」


なおも説得しようと試みるミスマル提督であったが、かえってユリカの名前を出したのが決定打になったようだ


「かせっ」


隣の技術官が持っていた無針注射をひったくり、ジュンは素早くそれを自分の首筋に打ち込んだのであった


ジュンの体の中をナノマシンが駆け巡り、やがて手の甲にIFSが浮かび上がる
その間、ジュンの脳裏に浮かんだのは、天真爛漫な少女の姿


『ユリカ・・・』





ナデシコの格納庫では出撃準備にあわただしかった

すでに第三防衛ラインの圏内にさしかかり接敵が予想される・・・というより間違いなく来るからである


すでにパイロット二名(ヤマダとカワイ)はエステのコクピットに乗り込み準備できているが・・・


「おらおらおらおら〜っダイゴウジ・ガイさまのお通りだあ〜っ」


約一名ハイテンションではりきっており、人の話をまるっきり聞いていないのであった(おいおい)

ちなみに、もう一人の方は命にも関わる事だし、根が真面目なのかしっかり聞いていたりする

ゴートはコミュニケなどの通信や機動戦の事を言っており最後に『質問は?』と問うている

ウリバタケは、重力波ビームの圏外に出たらエステが動かなくなるから気をつけろと警告していたのだが・・・

ヤマダ・・・人の話は聞こうね・・・・・・はあ〜っ





話どころか命令もろくに聞かずにヤマダ機は発進していった・・・ってヲイ(汗)

「アイツ何考えてんだ!! 敵のほうが数多いのに一人で出て行く奴あるか!」

ウリバタケさん激高しているようです


「カワイ機は?」

「すいません、調整に手間取ってまして・・・」

「ちっ」


整備員からの報告受けてウリバタケ舌打ちする

万全の体制で二機同時に送り出すべきなのに何も考えないでまったく・・・・・・

「いそいでやれ・・・いや俺も行く、少しでも早く送り出さないとな・・・」





「ナデシコの左三十度、デルフィニウム九機接近、プラス六十度距離は八千メートルです・・・」

ササミの報告を受けヤマダ(ガイ)さらにはりきります


「おお、束になって来やがったか、ナナコさん見ててくれよ、このガイさまの活躍を!!」


ナナコさんてだれの事だろう?

少なくともササミはこの件に関しては、今は深く考えない事にしたのだった

(ところでみなさん、ヤマダってロリコンのケってあると思います?)



「ヒーローの戦い方みせてやるぜ〜〜っ」



やる気まんまんのヤマダ(自称ガイ)デルフィニウム隊との間合いを詰めます

ジュン率いるデルフィニウム隊も応戦の構えのようだ



「アタック!!」



ヤマダ機とデルフィニウム隊が動き出したのはほぼ同時だった
もっとも作戦も何もあったものじゃなく、ヤマダ機はむやみに突っ込んでいったようにも見受けられるが・・・


「よ〜しついてきたついて来た、今だ! ウリバタケ、スペースガンガー重武装タイプを落とせ」


「あの〜、それって1のBタイプのことでしょうか?」


ウリバタケがカワイ機の方に行ってるので留守番の整備員が代わりに受け答える


「おお、それそれ、早くたのむぜ・・・」


とりあえず、彼に決定権はないのでブリッジにおうかがいを立てて許可をもらい1のBタイプを落としたのだが
(油断した敵を空中でそれ受け取って合体して倒す、名づけてガンガークロスオペレーション・・・らしいが)
敵はそれを見逃すはずは無く、あっさり作戦失敗したのであった


破壊された1のBをみて引きつるプロス・・・経費の事考えているのであろうか?
ササミなどついプロスさんの方を見て、見なきゃ良かったと後悔するのであった(苦笑)


ちなみに作戦失敗のガイことヤマダも引きつってたが、気を取り直して格闘戦に切り替えたのだが・・・



「ガアアイ・スウパア・ナッパァァァ〜〜ッ!!」



ともかくも敵一機倒したはいいが、ヤマダ機は残りのデルフィニウム隊に完全に包囲されたのであった


「・・・というわけだ、たのむぞカワイ」


ようやく準備がおわって出撃していくカワイ・アキト君にゴートが状況説明してそう締めくくった


「・・・しょうがないなあ」


ここはぼやくしかないカワイ・アキト君であった





「ユリカ、最後のチャンスだ、ナデシコを戻して」


「ジュン君・・・」


そのころ、ジュンは最後の説得を試みるべくナデシコと、ユリカと交信していた


「君の行動は契約違反だ・・・」


ゴートなどはそう指摘するが、今更ジュンはそんな事聞いちゃいないだろう


「力ずくでも君を連れて帰る、抵抗すればナデシコは第三防衛ラインの主力と戦うことになる・・・

 ユリカ・・・僕は君と戦いたくはない」



「相転移エンジンの臨界ポイントまで、あと19650キロメートルです」


二人の会話を聞きつつハラハラしながらもササミは報告をおこなう
『ひえええぇ、修羅場だよう、ど、どうなるのかなあ・・・』

結構余裕あるねきみも・・・だんだんナデシコに染まってきたのでないかいササミちゃん?


「艦長、どうしますか?」


ユリカの意思を確認するかのようにプロスが声をかける
その答えは決まっていた・・・


「ごめんジュン君、私ここから動けない」


「!!・・・僕と戦うというの・・・・・・」


「ここが私の場所なの、ミスマル家の長女でもお父様の娘でもない・・・

 私が私でいられるのはここだけなの・・・」


短い沈黙・・・やがてジュンは意を決したようだ


「わかったよユリカ・・・ではまずあのロボットを破壊する!!」



「やめろ〜っ!」



戦場に到着したカワイ機がヤマダ機を捕らえていたデルフィニウムを攻撃、解放することができたようだ


「僕にはあんたの事情はわからないけど・・・でもそれは間違っているよ」


「うるさい! 一体お前に何がわかる!!」


カワイ機とジュンの機体とが戦闘状態に入りかけたその時


「お願いカワイさん、ジュン君は大事な友達なの・・・だから・・・・・・」


『と、友達って・・・こんな時にそう言われても・・・・』


アキトは戸惑ったがジュンの方はもっと劇的に変化した


こいつは・・・このロボットのパイロットがカワイと言う奴か!!


ジュンはいつもユリカの事を見ていた・・・だからはっきりわかる
あの時、カワイと言う奴と初めて会ったときからユリカの様子がおかしかった
いや、おかしいというのとは違うだろう・・・あの時ユリカがアイツを見ていた時の目はまるで・・・



「君はカワイとか言ったな、僕と勝負だ! 僕と戦え!!

 僕と一対一の勝負だ、僕が負ければデルフィニウム部隊は撤退させる」


ちなみに、皆さんカワイという姓を知っていても、アキトという下の名前知らないらしい
そういや、まだそういう自己紹介してなかったっけ?
(まあ、ホウメイさんやホウメイガールズにはもう自己紹介しているけどね)

何でもいいが、ジュン君いいのかね? 君がそんな事勝手に決めて・・・だが


「ふむ、損な勝負ではありませんな」


電卓片手にそうつぶやくプロス・・・あんたはそういう発想から抜けられんのか?


「いけえカワイ!! それこそ男の戦いだあ!!!」


ヤマダはヤマダでこの通りであるし
二人の戦いに介入しようとする他のデルフィニウムの前にたちふさがり・・・


「お前達の相手はこの俺だ!! 男と男の戦いに水差しちゃあ野暮ってもんだぜ、ええっ!!」


涙だくだく流しながらガイが吠えた!!
いろいろ欠点もあるが熱い男であるね、ダイゴウジ・ガイ
そう言いつつまたデルフィニウムを落としたようだ・・・・・・


それとは対照的にアキトは引きまくっていた


「なんでこんな風に戦わなきゃなんないんだ?」と


そうこうしているうちにナデシコは第三防衛ラインを突破


「それにしても、何でジュン君カワイさんに突っかかっていったのかな?」


ユリカの疑問に『えっ!!』


ブリッジの皆さん固まってます


「それはお分かりでしょう、男の純情・・・」

「だって、ジュンさんは艦長の・・・」

プロスやメグミがその疑問に答えようとするが・・・


「大事なお友達よ」


とのユリカの答えにそれ以上何も言えないのだった・・・ジュン・・・(涙)





「なんでそんなに邪魔をするんだよ、僕たちが火星に行ったっていいじゃないか!!」


「ナデシコが火星に行けば、ナデシコは地球の敵になる

 それに、生きてる人間がいるかどうかわからないあんな所にユリカを行かせるわけにはいかない!!」


「・・・もう一度言ってみろ・・・あんな所だと!!」


空気が変わった・・・アキトの口調が怒気を含んだ物に変わる


「!?何が気に入らないか知らないけど言ってやる、

 ユリカをあんな無意味な所に行かせる訳にはいかないんだ!!」


ジュンはまだ気づかない、その言葉がアキトにとってクリティカルだったことを・・・


「・・・勝手な事言うな!、この馬鹿野郎!!」


アキトの怒りの一撃がジュンの乗るデルフィニウムを襲う


「な、何するんだ!!」


何するって・・・戦闘中でしょうジュン君、本来殺されても文句言えない状況でしょうが・・・


「あんな所だって? 無意味な所だってえっ!?

 火星を・・・僕達の生まれ育った故郷をそんな所にしたのは、あんた達軍人じゃないか!

 見捨てて逃げて知らん振りしてるのも軍じゃないか!!

 ・・・そのうえ僕達が火星に行く事まで邪魔されてたまるかっ!!

 それでも正義だとか何とか言うのだったら、そんな正義なんてくそ食らえだ!!」


それが、この時のカワイアキト君の偽らざる心境だった


「そ、それは・・・そんな事・・・・・・」


ジュンは明らかにうろたえていた
彼自身、今の連合宇宙軍が矛盾を抱えている事も知っているから
それをこんな形で指摘されるとは・・・・・・


「・・・それに好きな人と・・・大切な人とこんな形で戦う正義なんて・・・そんなの間違ってる・・・・・・」


「うるさいうるさい、お前なんかに言われたくない・・・

 好きな人だから地球の敵になるのが耐えられないんじゃないかっ!!」





「武装衛星、ナデシコを捉えました」


メグミが報告を入れる、もはやミサイル攻撃は避けられまい


「エンジン、臨界ポイントまであと15000キロメートルです」


ササミも報告を入れる
第二防衛ラインの武装衛星からミサイルの発射が確認されたようだ


「武装衛星からのミサイル三方向から接近中」

「エンジン、臨界ポイントまであと10000キロメートルです」


発射されたミサイルは途中で合流し、ナデシコに向かう

そしてその前に立ちふさがるのは・・・


「ジュン君!!」


「あの馬鹿・・・」



ジュンのデルフィニウムがナデシコの前に立ちふさがり、ミサイルの盾になろうとしていた



『そうさ、わかっていたさ、正義の味方になんてなれやしなかった・・・

 軍隊は戦争しているだけだ、そこに正義なんてありはしない

 ユリカ・・・僕は最初からこうなりたかったのかも知れない・・・君を守るためなら、ここが僕の居場所だったんだ・・・』





と、そこへ・・・ジュンのデルフィニウムに振動が伝わる、何者かに掴まれたようだ



「まったく、世話焼かすなよな・・・」


「あんたはいいかも知れないけど、自己満足で死なれたらあんたの大事な人はどうするんだよ?」



両サイドからジュンのデルフィニウムを抱えこんだのはガイとアキトのエステバリスだった



二人は間一髪ミサイル到達前に、ナデシコのフィールド内にジュンごと撤退することに成功したのであった

三機はナデシコ内の格納庫に収容された・・・







「相転移エンジン、臨界ポイントまであと300キロメートルです」


「きたきたきた、エンジン回ってきたあ!!」


「フィールド出力最大へ!」


「エンジン臨界点に到達しました」


上からササミ、ウリバタケ、メグミ、ササミと順にコメント
最後のササミの報告を合図にするかのように相転移エンジンの出力はマックスになり
ナデシコは建造されて初めてその実力を最大限に発揮したのだった


第二防衛ラインからのミサイル達は
最大出力まで上がったナデシコのディストーションフィールドを貫くことが出来ずに虚しく四散し爆発していく・・・





「バリア突破を許すな!! 核融合炉が壊れても構わん!!」



司令室にて総司令が仁王立ちして絶叫する!!
意地でもナデシコを宇宙にやるつもりが無いのだろう・・・だが



そのために、連合軍は引き際を誤ったと言えるかも知れない



ナデシコと接触したバリア衛星はその圧力に耐えられず爆発し



ナデシコはその勇壮な姿を宇宙に現したのであった





「今頃地球では核融合衛星の爆発による大規模なブラックアウトが起こっているでしょうな・・・まあ自業自得ですが」


プロスさんはそう評しています・・・もっとも、どっちもどっちと思うのは筆者だけでしょうか?


「ユリカ・・・ごめん・・・・・・」


ブリッジでは、帰ってきたジュンがユリカに謝ってます・・・彼なりに思う所があるのでしょうか


「謝る事なんてなーんも無い、

 ジュン君は友達として私の事心配してくれたんでしょう? ねっ」


あわれ、ジュン君、想い人にお友達呼ばわりされてだくだく涙を流すしかないのか?


「カワイさん、ありがとうございます。私の友達をキズつけないでくれていて」


「はあ・・・」


さすがにアキトはあの副長が気の毒になってきた・・・だからと言って何かしてやれる訳で無いが・・・


「まあまあまあ、気を落とすな、生きていればいい事もあるさたのむから俺より目立つ死に方しないでくれよ


そう言ってジュンを慰めるのはヤマダ(自称ガイ)である


「何ですか? それ・・・」


ジュンがヤマダのもっているシールに気が付き質問した


「ああ、これか? ゲキガンシールさ、六機も倒したんだぜ、俺のスペースガンガーに貼らなきゃ・・・」


どうやら、彼にとってはそれは撃墜マークになるらしい
嬉々として格納庫の方に向かって行き、ブリッジを後にした・・・





ササミはその後ろ姿を見送ってため息をついた


『ササミ、あとであの人のビデオに付き合わなきゃなんないかな? ビデオ一緒に見る約束したし・・・』


まあ、仕方ないか、悪い人では無さそうだし・・・







「さってと、どこに貼ろうかな〜っと、ん?」


格納庫に来たガイ(ヤマダ)は、そこで連絡艇に乗り込む人影(複数)を見かけたのだが・・・


「あれ、あんたたち〜」


ふと、目に付いた人影に声をかけたのだが・・・彼は声をかけるべきでは無かったのかもしれない



パァ〜ン・・・



乾いた拳銃の音が響き・・・直後彼は倒れた



そして・・・・・・



銃で撃たれて倒れたはずの彼の顔は、驚くほど穏やかだったのであった





「すまないナナコさん、・・・やっぱり海にはいけそうもないぜ・・・・・・」







つづく



あとがき



今回のラストはこうなりました・・・・・・

大蒲鉾菌に感染しただの何だの(月の女神一話代理人の感想)言われたりしましたが、僕はダークは好みません

だから、むやみやたらに人が死ぬSSは書かないつもりです

でも、必要とあらばそういうシーンは書くつもりでもあります

戦争とかやっていて人が死なない事のほうが不自然ですしね・・・

ヤマダ(ガイ)の場合、TVシリーズがまずこの展開でした・・・で、

その歴史を書き換える要素がどのくらいあるのか? 検討して、正直要素があまりなかったんです

(黒アキトは逆行失敗、逆行ルリは今だ寝ているし・・・) 何か理由をこじつければ生かすことできるけど・・・

ガイのあつかいどうするか少し迷いましたが、これもひとつの形かもしれません

(ちなみに、彼が生きていたら、妹にちょっかい出す濃い男とお兄ちゃんの対決? なんて展開もあったかもね・・・ギャグだな)



話は変わってユリカさん、何かもう少しで彼女の気になるカワイさんが、実は幼馴染の『テンカワ・アキト』であると

気が付かなきゃウソかな? という感じですね・・・・・・もう少し引っ張るつもりだったのになあ(引っ張ってはみるが)

何か書いてて恥ずかしいですが、ユリカが『気になるあの人』なんて言うシチュエーションはめずらしいのではないかな?

ユリカは恋を知らない女だとよく言われますが、そんな事無いだろう? とも思ったので(うまく書けてないけどね)

ちなみに、ユリカがカワイさんの正体(苦笑)に気づいたら例のハイテンションモードに移行するので、その後はどうなるか?

(ちなみに、幼馴染で王子さまのアキトが相手だからユリカは遠慮してなかったのだと僕は解釈しています)

何にせよ、テンカワ・アキトとは少し性格が違うカワイ・アキト君のナデシコでの恋愛模様はどうなるのか?

僕も楽しみかな・・・(女難なのはテンカワだろうがカワイだろうが変わらないようだけどね)

ちなみに、アキトとユリカがくっ付くかどうか(?)は、未定です。パーセンテージは高めに設定してますけどね

まだ、登場していないヒロイン候補もいますし、砂沙美とくっつけてほしいという希望者もいるくらいですからね・・・

で、ジュン君は・・・・・・ごめんよジュン、君の事はしばらく忘れない(爆)



と、言った所で今回はこの辺で、次回もよろしくお願いします



 

代理人の感想

やっぱりこうなりましたか・・・取合えずヤマダ・ジロウ(魂の名はダイゴウジ・ガイ)に黙祷。

 

ただ、一言言わせていただけるとダークの基準について

「人が死ぬからダーク」なのではなく、

「『やりきれない』からダーク」なのではないかと思っています。

 

要は、

露出度が高いからって
色気があるわけじゃない(核爆)

 

のと同じようなもんです(そうか?)。