(砂沙美の航海日誌「第十五話」)

ここはオリンポス山にあるネルガルの研究所

ナデシコから揚陸艇ヒナギクでやって来た調査隊は、ここの調査をしていたのだった。

もっとも・・・・・・


「駄目だなこりゃ、もう何ヶ月も人の気配が無いって感じだぜ・・・」

「やっぱ、とっくに逃げ出したんじゃないんですかあ?」


リョーコやヒカルの台詞にあるように、ここは何ヶ月も前から放棄されていたようで、
当のリョーコも失望しているようです。


『ここで、カワイの両親の手がかりでも見つけてやりたかったんだけどな・・・・・・』


何故かリョーコさん、個人的な感情も入って来ているようですが(苦笑)
手がかりどころか人っ子一人いませんし・・・まあ、しょうがないですけどね
リョーコに限ったことではなく、どうやらプロスペクターたちも望みのものが見つからずにやはり失望しているようです


「・・・だいたいこんな辺境で、一体何の研究をしていたんだ?」

「ナデシコです」


リョーコのぼやきにも似た台詞に、プロスははっきりと答えていたのだった『ナデシコ』と・・・


「ご覧になりますか? ナデシコの始まりを」







プロスに連れてこられてやって来たのは研究所の地下、そこのあったのは・・・


「さあどうぞ・・・」

「ああっ!!」


そこにあったのは奇妙な巨大建造物・・・それはまるで墜落した宇宙船のような(?)


「そうですねえ、今から三十年ほど前になりますか、これが発見されたのは・・・」


プロスの話は続く・・・
ナデシコの相転移エンジンやディストーションフィールドなどの先端技術は、この発見物の研究から得た物なのだと

リョーコ達はあまりの事に言葉も出ないようだが、そのせいかこの時点では気が付かなかった
ネルガルが軍と対立してまで、わざわざナデシコを火星に送り込んで来たその理由の一端を、これが表しているという事を・・・。











機動戦艦ナデシコ

砂沙美の航海日誌



〜第十五話「砂沙美、大地に立つ!!」〜



By 三平











さて一方、こちらはナデシコブリッジ
お留守番を余儀なくされたナデシコ艦長のミスマルユリカさんの場合は


「これって問題ですよね!!」

「いいんじゃない? 敵さん来ないし、今ならパイロットがいなくても」

「それはそうかもしれませんけど・・・」


ユリカの言葉に苦笑しつつ答えるミナトさん
確かにアキトを追いかけてイツキまでナデシコを離れてしまい、現在ナデシコにはエステのパイロットは一人もいない
それが問題だとユリカは言っているのだが、ここにはそれを、その言葉通りに受け取る者はいなかった。
この場合、ユリカの意図や思惑など、ブリッジに残っている皆にはバレバレだったから(苦笑)


「うう、ううううう・・・」


とはいえ、不機嫌そうにうなり声を上げるユリカさん・・・面白くない状態なのはわかりますけどね
よほどアキトの事や、それを追いかけていったイツキの事が気になるようであります。
そのうち何かを思いついたのか、ユリカさん急に立ち上がり、どこかに行こうとして・・・・・・


「どちらへ、艦長?・・・・・・」


そんなユリカの動きに声をかけるフクベ提督、結果的にユリカに釘を刺していたりして・・・


「えっ!、あのっ!・・・・・・そうだ!!、ジュン君艦長代理やっといてくんない!!」

「駄目だよそんなの!!」

「ちえっ!」


ちえっ!、じゃないでしょうが(苦笑)
一応あなたが艦長なのだから、その自覚とか大丈夫なんですか・・・・・・って!?


「じゃあ、そういう事で♪」


どういう事かというと、艦長代理としてゲキガンガーの人形を艦長席に置いていたりして(汗)


「駄ァ〜目ッ!!」


ジュン君にしては珍しく、強い調子でユリカさんの事を制止しているようです。

ちなみに、元々ヤマダさんの所有物だった各種ゲキガングッズは
このゲキガン人形を含め、現在はササミちゃんの所有物のようです。
この場合、それだけと言えばそれだけの話なのですけどね(苦笑)







しばらくして、ユリカさんまた別のことを思いついたようで


「そうだ、だったらナデシコごとアキトの事迎えに行けばいいんだ!!
 そうと決まれば針路変更、ナデシコはこれからユートピアコロニーへ向かってレッツゴー♪」

「ちょ、ちょっとユリカ!!、そんな事勝手に決めて・・・」


今度も制止しようとしたジュンだったが、今度ばかりはそうもいかなかったようだ


「いいからいいから、ミナトさん、ハーリー君、お願いね♪」

「いいけど・・・プロスさん達はまだ・・・」
「了解! ナデシコの進路をユートピアコロニーに設定します。」


ミナトさんはともかく、ハーリー君はどういう心境なのかユリカの命令を躊躇なくあっさり了承したのであった。


「は、ハーリー君、一体どうしたの?」

「艦長命令ですから・・・それにメインオペレーターが長時間艦を離れているのもマズイと思いますし」

「・・・・・・へえ〜っ、そういう事ね、・・・ハーリー君はササミちゃんの事が気になるんだ」

「そっ、そんなんじゃないです・・・僕はただ・・・・・・」


ミナトさん、ハーリー君との短い会話からあっさり答えを導き出したようで、
ハーリー君が図星を指されてうろたえまくったため、その通りだと認めたような形になってしまったのだった。
この件でこの後ハーリー君、しばしミナトさんのからかいの対象となり、ハーリー君もまた言い訳に忙しくなったようだが

この時のユートピアコロニーへの針路変更が、重大な意味を持つ事になるのだが
もし、せめてこの中で唯一未来からの帰還者(?)であるハーリー君が、そこで起きる出来事を知っていたならば、
違う展開もありえたかも知れない・・・・・・
いや、実はハーリー君は、向こうの世界で以前旧ナデシコAの航海記録を閲覧した事があり、
ここで起きる事の記録もその時見たはずだったのだが、どうやらこの時点では忘れてしまっているようだ。

結局、そのハーリー君を含め、この時点でブリッジに居る誰もがその事に気が付くことなどなかったのであった。









一方、そのユートピアコロニーに・・・・・・コロニーのあった場所に、二機のエステバリスとその搭乗者三名が到着していた
そこは・・・今更だが、チューリップの墜落で出来たクレーターと一部廃墟、それとチューリップの残骸が残っているだけで
・・・・・・かつてそこに人の生活していた痕跡も面影も、そこの風景から早くも風化して消え去ろうとしているのだった。



「何も無い・・・本当になにも無くなちゃてるね、お兄ちゃん・・・・・・」

「そうだな、この辺はコロニーでも外れの方なんだけどな・・・・・・」

「みゃあっ」

「でも、やっと帰って来れたんだよね」

「ああ、そうだな・・・」



アキトもササミも、降り立ったその場所で、ただじっと感傷に浸っていた
それでも、たとえこんなになってはいても、ここは二人にとっては生まれ育った故郷なのだから・・・

ちなみに、ササミちゃんの腕の中にはリョーちゃん事リョウオウキもいたりする
リョーちゃんにとっても火星は生まれ故郷なので、それを考慮してササミがここに連れてきたのだけれど、
初めは大人しくしていたリョーちゃんだったが、やがて飽きたのか、ササミの腕をすり抜けて地面に降り立った。


「あっ、リョーちゃん!!」

「みゃ〜っ♪」


久しぶりの大地だからだろうか?
リョウオウキは嬉しそうに辺りを駆け回り、ちょっとばかりササミを困らしたりして(苦笑)
ササミが駆けるリョーちゃんを追いかけて、アキトもそれにつられて追いかけて
と、そこで・・・


ひょい


そんな音が聞こえてきそうな感じで、イツキがリョウオウキを拾い上げて抱き上げた。


「はい、ササミちゃん」


「あっ、ありがとうイツキお姉ちゃん」


イツキはにこやかにリョウオウキをササミちゃんに手渡して・・・それにつられてササミも笑う
二人ともこの件で、微妙に空気が和んだように感じていて・・・・・
そして、そんな様子にアキトは明らかにホッとした表情を浮かべていたのだった。


イツキは、アキトに付いて来たのはいいけれど、
火星の大地に降り立った兄妹の、感慨深げな雰囲気に声をかけられずにいた
でも、そんな空気に疎外感を感じつつも、二人の邪魔をしないようにしていたイツキだが
どうやらこれを切っ掛けに、その空気の中に溶け込めはじめたようです・・・。





「・・・これは?」

ふと、アキトは気が付いた・・・リョウオウキが駆けてきたこの場所にある物に


「どうしたのお兄ちゃん?」

「アキトさん、どうかしたんですか?」


そんなアキトの様子に二人は声をかけ、その声にアキトは気を取り戻した。


「あ、ああっ、・・・二人とも心配かけてゴメン、ふとこれを見て昔の事を思い出してたんだ」


それは、すでにスクラップになった工作機械・・・土木作業用のパワーショベルだった。


「昔話って・・・ササミの知ってる話?」

「いや、ササミは知らないはずだよ。
 その・・・・・・お兄ちゃんがカワイ家に来る前、多分ササミが生まれて間の無い頃の事だから・・・」


そう言ってアキトは一旦言葉を切った。
ササミと出会う前の話という事を思い出し、話しづらく感じたのだろうか?


そう言われてササミも困惑した
アキト兄ちゃんがまだササミと出会う前・・・そんな事考えた事もなかったから
ササミにとって、物心ついてからお兄ちゃんが側にいる事は当たり前の事だったのだから・・・

この時、ふと、ササミは余計な事を考えてしまった。
もしアキト兄ちゃんとササミが出会う事がなかったらどうなっていたのだろうか?、と・・・・・・
ひょっとしたら、そういう可能性はあったかもしれない
兄妹どころかお互いの事を知らない赤の他人だったかもしれない

お兄ちゃんの本当の両親が事故で死んでなかったら?
お兄ちゃんが河合家に引き取られていなかったら?

もしそうなら、ササミがアキト兄ちゃんと、
どこかで顔をあわせても、どこかですれ違ったとしても、
お互いなんとも思わないで、ただすれ違うだけで・・・・・・


『嫌だそんな事!!、そんな事考えられないよ!!』


今のササミにとって、アキト兄ちゃんのいない世界なんて、考えられない事だったようだ・・・。







「砂沙美!! 砂沙美!! どうしたんだ? 急に黙り込んで!!?」


その声に、ササミはふと気を取り戻した
アキト兄ちゃんとイツキ姉ちゃんがササミの事を心配そうに見つめているのが見える


「何でもない、何でもないよ・・・・・・
 そだそだ!、お兄ちゃんの昔話ってどんななのかな? ササミ、凄く興味があるし話聞きたいな・・・」


ササミは・・・アキト兄ちゃんにこれ以上心配かけたくなかったのと、
自分が何を考えていたか知られるのが怖く感じられたから、話題転換の意味でそう話を振ってみた。
それに、自分の知らない昔のアキト兄ちゃんの話にも、確かに興味があったから。


ササミの少し不自然な態度と話題転換に、アキトはいぶかしく思ったが、深く追求はしない事にしたようだ
妹の事は心配ではあるが、触れて欲しくない事のようではあるし・・・まあ、この様子なら大丈夫だろう。





「きゃはははは・・・あきと〜っみてみてはっしん!」

「こらゆりか、いけないんだぞ! かってにのっちゃ!!」

「だいじょうぶだよ、いけ〜、はっし〜ん、きゃははは・・・・・・」


それは子供の他愛も無いいたずらだった。
幼いユリカが、作業用ショベルのスイッチやレバーを勝手にいじって遊び、そして・・・
さわり所が悪かったのだろう、ショベルはそのままユリカを乗せたまま暴走したのだった。


「うえぇ〜〜ん!!!」

「くそお〜っ!!」


その辺は、幼いとはいえアキトは男の子
暴走するショベルに乗り込んで暴走を止めようと、ユリカを助けようと、必死にレバーにしがみついていた
結局、大人たちが来て、助け出されたのであるが・・・・・・


パシッ!!! どさっ


呼び出されてきたアキトの父親は、息子に平手打ちをしてアキトは倒れた
直後、アキトにとリすがってユリカがまた泣き出し、アキトは悔し涙を流したのだった。


「その時、結局機械を動かしたのが僕のせいになったし、 そのせいで父親に平手打ちをされたけど、
 あの時はそんな事よりも何よりも、何も出来なかった自分が一番悔しかったんだ・・・だからかな?」


そう言って、アキトは右手のIFSをかざして見せて言った


「今にして思えば、こいつを付けようと思った訳は・・・」


アキトの話は段々と懐かしそうな色を帯びてきていた
ただ思い出すだけでなく、人に話す事によってだんだんその時の記憶が鮮明に思い出されたのだろう。


「まったく、・・・そう言えば今更だけど、ユリカはあの頃からちっとも変わってなかったんだな、
 そのまんま大きくなったというか・・・」


そして、ササミと一緒に話を聞いていたイツキは、ユリカの話がでて『マズイ!!』と、思い始めていた。
ナデシコでは、今までアキトはユリカに対しては、幼馴染とはいえ素っ気無い態度を取り続けていた、
おそらくアキトにとって、ユリカは過去の存在だったからだろう・・・だがこの時、明らかに変化がみられた
アキトの中で、過去と現在が繋がってその存在感が増したのだろう
ユリカの事を話す口ぶりは、今までとは違い熱を帯びはじめていたのだから・・・・・・。

ともかく話題転換を図る意味で、イツキは別の話を振ったのだった
それが別の効果を生み、別の側面を見せ付けられるとは知らずに・・・・・・。


「アキトさんのお父さんって厳しい人みたいですね」

「厳しい人か、確かにそうだったかもな・・・本当に
 少なくともギンジ父さんよりはずっと厳しかったよな
 でも、今改めて思い返してみて、厳しい人だったけど、それでも僕は父さんの事好きだったんだな・・・って」


今度はササミちゃんが反応する番であった。
懐かしそうに実の父親の話をするアキト兄ちゃん・・・
それをみていて、さっきの『赤の他人』の想像と合わせ、ササミの不安が再燃したのだった。







「どうしたんだ砂沙美!、やっぱり少し変だぞ!!」


再び、ササミの様子がおかしく感じられたアキトは、再びササミに声をかけたのだが
声をかけられたササミは、ぴくりと反応した・・・・・・思うことがあったのだろうか、聞かれてぽつりと話し始めた


「・・・お兄ちゃんゴメン・・・ササミは嫌な子だよね・・・だって・・・・・・」

「何を言ってるんだ? そんな事あるもんか!! ササミが嫌な子な訳が・・・」

「だって、ササミはアキト兄ちゃんが・・・お兄ちゃんの本当のパパの話を嬉しそうに話しているのに、
 それを素直に聞けなかったんだよ・・・お兄ちゃんはもしかしたら本当の家族の方がいいんじゃないかって・・・」

「!!?」


ササミの衝撃の告白に、アキトはショックを受け・・・ササミはうなだれたまま話を続けた


「お兄ちゃんの本当のパパやママが居なくなったから、お兄ちゃんはササミのお兄ちゃんになってくれたけど
 もし、そうでなかったら・・・お兄ちゃんがササミのお兄ちゃんになる事はなかったよね?
 もしかしたら、ササミとお兄ちゃんは赤の他人だったかもって・・・そう思ったらササミは・・・」


この時、ようやくアキトは気が付いた、ササミが何に対して不安を感じていたのかを、
そして、その不安に思っているササミにどうしてやるべきか・・・アキトはなんとなくわかったような気がした。
だから・・・・・・


「・・・そんな事言って・・・本当はササミの方がお兄ちゃんの事を嫌いになったんだろ? だからそんな事を・・・」


だから、アキトはわざと後ろお向いて、ササミの事を突き放すようなそんな事を言ってみた



「そんな事無いよ! 砂沙美はお兄ちゃんの事大好きだもん!!」



アキトにそう言われて、ササミはいささかムキになってそう言った。
それを聞いて、アキトはゆっくりと振り返った・・・その表情は、穏やかな笑顔で・・・・・・


「お兄ちゃんもササミの事、大好きだよ・・・だから、そんな事いいじゃないか
 それに、これだけははっきり言えるよ・・・何があってもササミはお兄ちゃんの大事な妹だよ」



「アキトお兄ちゃ〜ん」



ササミはアキトに駆け寄って、そのままアキトに抱きついて泣き出した
アキトはそんなササミをやさしく抱きとめて、やさしくその頭をなでてやっていたのだった。
ササミの不安を和らげるように・・・・・・
そして、それにより、ササミはやっと安心する事が出来たようであった。




ところで、そんなカワイ兄妹を見ていて、イツキは・・・


『本当に兄妹!? それにしてはこの二人の心の距離は近すぎる!!?』


傍から見ていてそう感じていた
そもそも義理の兄妹で、血のつながりがないという事は
ものの弾みで二人がその気になれば、そのままくっついてしまう事もあるのでは?
変な話だが、イツキはササミの存在に、危機感を感じずにはいられなかった。


『ひょっとしたら、ササミちゃんはユリカ先輩よりはるかに強敵(?)なのかも?』


イツキはその事に気づいて困惑していた
思いもよらない伏兵がいたのだから・・・・・・
しかもこの場合、アキトと親しくしようと思ったら、ササミの事は絶対敵にまわす訳には行かないのだから


『でも、まだこの二人はお互いに兄妹という意識が強いみたいだから、そこに付け込む隙が充分にあるわね・・・多分』


皮肉な事だが、この二人は兄妹の絆がとても強く、
それ故にかえってそれが足枷になって、それ以上の関係になるのを拒んでいるのかも知れない。

ともかくも、この件でイツキは静かに闘志を燃やしているのだった。







ところで、今までササミの側でおとなしくしていたリョーちゃんだが、
どうやら現状に飽きてきたのか、また再びササミ達の側を離れて、辺りの探索を始めたのであった。


「リョーちゃん!!」


それに気づいたササミちゃん
涙を拭きつつ、慌ててリョーちゃんの事追いかけて・・・アキトとイツキもそれに続いて追いかけて、
ともかく、またリョーちゃんとの追いかけっこが始まったようであった(笑)
と、思ったら・・・・・・

「みゃ!?」

リョウオウキは急に立ち止まった・・・
どうやら自分の立っている大地に異変を感じての事のようだが
そこにササミとアキトとイツキが殺到して来たからたまらない

「みゃみゃみゃあ〜〜っ!!」

リョーちゃん驚いて警戒の声を上げるが既に手遅れで(苦笑)


ぼこっっっ!!!!


軽快(?)な音と共に地面が陥没し、全員地中に落下したのであったった(合掌)





「いたたたた・・・・・・」


ササミちゃん、痛みを感じて思わず声をあげていた
落下の衝撃で身体のあちこちが痛いが、どうやら怪我はないようである。
ふと辺りを見回すと、そこはどこかの地下室のようであり・・・
でもって、お隣にはイツキお姉ちゃんがやっぱりどこか痛そうに身体をさすっていて
そのササミ達のお尻の下ではアキト兄ちゃんが押しつぶされてうめいていたりして・・・・・・。(苦笑)


「お、お兄ちゃんゴメン!! だ、大丈夫!!?」


ササミちゃん、兄ちゃんの上から慌てて飛び退き(汗)
イツキもそれに気づいてすぐ退いたのであった。


と、そこへ・・・・・・


「ようこそ火星へ、・・・歓迎すべきかせざるべきか、何はともあれコーヒーくらいはご馳走しよう」


妖しいフードとバイザーを被った人物が、地下に落ちてきたササミ達の前に現れたのであった。





のであったのだが・・・・・・


「・・・その声はイネスさん? イネスさんなの!? どうしてこんな所に!!? それとそのかっこうは?」


・・・・・・一発でササミちゃんに正体を見破られ、あまりの展開にその人物は固まっていたりして(大汗)
でもって、改めて自分の正体を見抜いた、自分の事を知っているその少女を見やり、その人物も驚いたようだ


「ササミちゃん・・・あなたこそどうして?
 いいえ、それより久しぶりね、よく生きていてくれたわ・・・今までいったいどこに!?」


とまあ、そんな訳で、ササミちゃんとその人物イネスさんは知り合いだったようで
イネスさん、ササミちゃんに話しかけながら、その顔に被っていたフードとバイザーを外してその素顔をさらしたのだった。
その素顔は金髪の美女・・・化粧っ気はないが、知的でととのった顔立ちをしていた


「・・・この人が以前からササミの話していたイネスさんなのか?」

「妖しいカッコはしてたけど、知的な人なんですね・・・」


とまあ、イネスさんとは初めて出会ったアキトやイツキはやや緊張の面持ちでこの美女を見つめていた・・・・・・
でも、ササミちゃんはそんな緊張とは無縁だったようで、知り合いに会えたせいか、逆にとても嬉しそうだったりする。


「あっ!、そういえば、リョ−ちゃんはどこ行ったのかなあ?」

「えっ、リョーちゃん!! リョウオウキちゃんも来てるの!!?」


おや? イネスさんササミちゃんに確認しながらも、何やら雰囲気が変わっちゃったような・・・


「うん、ササミ達と一緒に上から落っこってきたはずだけど、どうしたのかなあ?」と、そこへ・・・


「みゃみゃ〜っ」
タイミングよく、リョ−ちゃんが現れたのであった。(笑)



「リョーちゃん・・・・・・可愛い!! 相変わらず何て可愛いの♪



イネスさん、現れた黒っぽいウサギネコ(?)を素早く拾い上げて優しく抱きしめたのであった(爆)
当のリョーちゃんはイヤがる訳でもなく、イネスさんに甘えてみせたりしてるようですが・・・・・・(大汗)


「このコ、一年前はまだ小さな子ネコだったけど、大きくなったわね♪」

「うん、リョーちゃんあれから大きくなったよ・・・いい子にもしていたし」


と、イネスとササミが会話しているのをアキトとイツキは少し固まって見ていたりして
どうも、先ほどの妖しくもシリアスな登場をした時とのイメージのギャップを感じているようだ(苦笑)
ササミは、そんなイネスの様子にも慣れてるのか、まったく気にしていないようであったが・・・


さて、ともかくそんなアキト達の空気や視線に気づいたのか、
イネスさん咳払いを一つすると、再び先ほどのシリアスな雰囲気に戻して話を再開した。
まあ、今更取り繕っても手遅れかもしれないが・・・・・・その腕にはしっかりとリョーちゃん抱かれたままだし(汗)


「さて、ササミちゃん・・・改めて聞くけど、あなた達はどこから来たの?
 この辺には人が隠れ住める場所はここくらいしかないし、この近くの生存者は皆ここの地下に来ているはずだけど」


「生存者が、・・・ここに生存者がいるんですね!!」

「良かったですねアキトさん、まだ火星で生きている人たちがいたんですね!」


イネスの言葉に反応したのはアキトとイツキ、
でも、それに対するイネスさんの反応はどことなく冷ややで・・・・・・
ともかく、ササミちゃんの話を聞くのを優先するつもりのようだ。


「実はササミにもよくわかんないんだ・・・・・・一年前のあの日、
 気がついたらササミとアキト兄ちゃんは地球にいて、ナデシコに乗ってやっとここまで帰ってこれたんだから・・・」


「気が付いたら地球にいた? ナデシコに乗ってここまで来た!?」

「うん、そうだよイネスさん」


ササミちゃんのその言葉に、イネスは何やら考え込んだが、ふと気を取り直したようだ


「わかったわ、興味深い話だけど、その件はまた後で聞くとして、・・・それより先に
 ササミちゃんついて来て、あなたに会わせたい人が居る・・・ううん、あなたは会わなきゃいけないわ」

「ササミに会わせたい人って?・・・・・・」


イネスの口ぶりや雰囲気はただごとではなかった
そしてこんな時、イネスがいい加減な事を言う人でないことを、ササミはよく知っていた・・・だから聞いた
イネスは少しだけ言いにくそうだったが、口を開いてこう言った・・・・・・ササミ達にとって重要なことを


「会ってほしいのはカワイ・ホノカ・・・あなたのお母さん
 ・・・あの人は今、病気で弱ってる、何より心を病んでいる・・・全てに絶望して・・・・・・」

「ママが!! ママがここにいるの!! それに病気って!!」

「ホノカ母さんが!!?」

「・・・・・・ともかく私について来て・・・会えばわかるわ」


この件では、イネスさんにしては、珍しく説明なしである。
まだアキトやイツキはそれが珍しい事だとは知らないようですが(苦笑)
口で長々と説明するよりも、ここは早くササミちゃんに会わせるほうがいいと、イネスさんが判断したからなのだけど
その事を感じ取ったのか、ササミは逸る気持ちを抑えて黙ってイネスの後に付いて行ったのだった。


『・・・ママ、ホノカママ・・・今ササミが行くから待っててね・・・ママ・・・・・・』







つづく



あとがき

ほのかが生きていた!! その事を知らされて嬉しさ半分、ほのかが病気と知らされて、その心配事も半分でしょうか?

そんな訳で、次回は砂沙美とアキトはほのかママと再会する事になりますが、はたしてどうなりますやら・・・。

ところで、今回の話はこの後、ユリカがナデシコでユートピアコロニー後に乗り付けて

木星蜥蜴の襲撃を受けるまでを書くつもりでしたが、どうもエピソードとか、話の流れを考えたらまだ長くなりそうなので

一旦ここで話を切ることにしました。(TVのシナリオに、余計なエピソードを詰め込むような事してるからしょうがないかな)

今回書きたかったはずのエピソードは、そういう事で次回に持ち越しです。・・・・・・ちえっ

続きはすぐ書き始めるので、しばしお待ちくださいね。



話はかわりまして、このシリーズの砂沙美は、TV版魔法少女プリティサミーをベースにしていると何度か書きましたが

どうも最近、天地無用シリーズの砂沙美も混じっているなあと、書きながら感じていたりします。(苦笑)

たとえば砂沙美の家事技能は、天地無用やサミーでもOVAでの設定であり、TVシリーズになかったりするんですけどね

でも、航海日誌の砂沙美は持っていたりするのは、各シリーズのいい所を無意識につまみ食いしてるからかな?

と言う訳でもないですが、開き直ってOVAの天地無用を知ってる人がみたら呆れるシーン(?)を入れてみました(笑)

こういうのどうでせう? 節操なしかもしんないけど怒んないでね。(でもお遊びが過ぎたかなあ)

問題はあの場面で、果たしてアキトに阿重霞みたいな芸当出来るか?などと書いていて思ったりもしてましたけどね

妹にベタ甘なアキトが、あの場面で、たとえお芝居でも砂沙美を突き放せるだろうか? などと(苦笑) まあいいけどね

それと少し関連して・・・僕は天地無用シリーズでは元々『阿重霞』がもっとも好きなキャラだったんですよ

OVA第三話のしおらしい阿重霞が、天地といい雰囲気だった阿重霞がお気に入りだったんです。

まあ、そのうち魎呼と張り合ううちに染まっていきましたが(笑)

それがなぜ今は砂沙美にスッ転んでいるのか? それは、天地無用!OVAの第九話『砂沙美と津名魅』にて・・・

自分が阿重霞の本当の妹ではないのではないか? 本当の事を知られたらお姉さんに嫌われるのではないか?

不安に思っている砂沙美を、阿重霞が優しく受け入れます。「何があろうとあなたはわたしの大事な妹よ」と

その言葉に、砂沙美は泣きながら阿重霞お姉さんのもとに駆けて行き、そのままいけば姉妹で感動的だったんですが、

砂沙美ちゃんたら、そのまま阿重霞お姉さんを素通りしていき

「天地お兄ちゃ〜〜ん」

・・・・・・そのまま天地に抱きついちゃったんだよな、砂沙美ちゃん・・・・・・僕はこれ見て思ったんだよ

『ナイスだ砂沙美!!』(劇爆)

僕の中ではこの頃から砂沙美にシフトしていったと思う(苦笑)

阿重霞「砂沙美のバカぁ・・・」 鷲羽「女の子だねぇ砂沙美ちゃん」

後は、魔法少女プリティサミーでトドメでしたが、きっかけはそうだったと思います。





次回、砂沙美達はほのかママと再会します。 どんな再会になるのでしょうか?

ナデシコには乗らないと宣言するイネスさん。そこにアキトを追いかけてユリカがナデシコごとやってきて

だけどそれがナデシコと地下の避難民、ほのかママも危機に陥れる

木星蜥蜴の襲来!! はたしてどうなるのだろうか!!



さて、と言った所で今回はこの辺で、次回をお楽しみに・・・・・・。






コメント代理人 別人28号のコメント


「砂沙美ったら、私の事嫌いなのね」

とか言いつつ表情はいたずらっぽく、そして優しく微笑んで・・・

ってのが OVA天地無用における 阿重霞と砂沙美の名シーンなんですが

私、今日はじめて気付きました

あれは阿重霞だからいいんです

アキトがやってもまったく可愛くありません(断言)




何やらショックを受けてる女性が若干名いるようですが

確かに砂沙美とアキトの距離は近いですね、今にはじまった事でもないですが

何かキッカケでもあればすぐに行きつくとこまで行っちゃいそうです


砂沙美の方は 自分の知らない、兄ではないアキトに考えを巡らせているようで

これもキッカケの1つになるんでしょうか?




そんなこんなで 砂沙美とアキトが仲を深めている間にも不穏な空気が・・・

どーも 嫌な予感がしますね〜

ここのアキトって 砂沙美第一なとこありますから

砂沙美が落ち込んだりしたらどうなるか・・・


・・・誰かに八つ当たりって可能性も なきにしもあらず

時折ですが、砂沙美の方がお姉さんに見えるのは私だけでしょうか?