(月の女神「プロローグ」)

西暦2201年8月

御統家の墓の前一人の厳つい男性が墓参りをしていた

地球連合宇宙軍総司令、ミスマル・コウイチロウであった

「・・・それじゃそろそろ行くよ、ユリカ・・・アキト君やルリちゃんと仲良くやってるかい?」

ミスマル総司令のつぶやきに・・・だが墓石は何も答えてはくれなかった

「・・・ユリカ」







第八番ターミナルコロニー「シラヒメ」

シラヒメの防衛ラインは正体不明の謎の敵の攻撃を受け次々突破されていた

敵の動きが早すぎるのか防衛艦隊もステルンクーゲル隊もなすすべも無く翻弄されていく

「第一第二小隊全滅!!」

「くそうっ!」

「オレンジ、バーミリオンはそのまま、レッドはポイントRまで後退!!」

戦況は防衛側が不利どころの話ではなく、すでにジリ貧であった





と、そのころシラヒメ内部にある秘密研究所では・・・

「ひ、ひいいいい・・・」

「ま、待ってくれ、我々が居なければ研究が・・・」

理由はよく判らないが、科学者や研究者らしい人物達が命乞いしているらしい

「機密保持だ」

編み笠にマントといういかにも怪しい集団のリーダーらしい男が一言だけ言い放った

彼らはあとは何のためらいも無く科学者達を射殺していった



すべてが終わった頃、防衛線を突破してきた謎の機動兵器が壁を破って侵入してきた
それは白と黒の二機の機動兵器

「遅かりし復讐人、未熟者よ。

集団のリーダー、北辰はそれだけ言い放つとその場から姿を消した
部下達ともども光に包まれて・・・それはボソンジャンプとよばれる現象の放つものであった


直後、その一帯は爆発の炎に包まれて消滅した





連合宇宙軍第三艦隊所属、戦艦アマリリス

「シラヒメ、シラヒメ、応答してください、シラヒメ、シラヒメ、応答してください」

アマリリスの通信士が呼びかけるが応答がなかった
すでに指揮系統も麻痺し、それどころではないのだろうか?
そんな状況下、艦長のアオイ・ジュン少佐は矢継ぎ早に指示を出す


「負傷者の救護が最優先、フィールドを展開しつつ接近!!」


と、そこに報告が入る


「ボース粒子増大」

「何!?」

「スクリーン拡大」


何者かがジャンプアウトしてきたらしい・・・反応は二つ

それは識別信号を発しておらずモニターでの確認も不可能だった

艦長のジュンはすぐに指示をだした

「センサー切り替え!」

「了解」


センサーの切り替えのあとモニターに映ったその影は・・・


「えっ!? 何だ、何だあれは・・・・・・!?」


それはまるで人型の機動兵器のような


「あれは一体!?」


ジュンのその疑問に答える者はその場には居なかったのだった





砂沙美の航海日誌(正史バージョン)

月の女神



〜プロローグ〜



By 三平







新聞、TV、ネット・・・あらゆるメディアでなぞの幽霊ロボットのニュース、あるいは噂が流れた

『姿なき敵ボソンジャンプするロボット』

『ヒサゴプランに暗雲か?』

『コロニー大惨事、テロリストの犯行説流れる』



もっとも、公式に発表される情報は限られており、多くは噂話や流言の域を出なかったが・・・

その中に真実も含まれているのであった・・・今はまだそれは闇の中であるが



そんな中、対策のため地球連合臨時会議が開かれていた

「宇宙をめぐる大螺旋ヒサゴプラン、そのうち四つのコロニーが連続して破壊されました。四つです

 何のために!? 誰が!? これは断じて許されない!!」


「今度は土星トカゲなんてのは無しですぞ」

「!?何だ? それはどういう意味だ!!」

「さる筋によれば、某国の陰謀という説もあるが?」

「取り消せ」

「何を言うか木星人」

「釈明しろ!!」

「それはこっちの言う事だ、黙れトカゲ野郎!!」

「何い、表に出ろ!!」

「静粛に、皆さん静粛に!!」



「以上、地球連合総会よりの映像でした」





場所は変わって事故調査委員会では

「私は見ました、確かにボソンジャンプです!!」

アマリリス艦長、アオイ・ジュンが証言をしていた

「コロニー爆発の影響で付近の艦、センサーの乱れ著しいとの報告もあるが・・・」

「誤認だというのですか?」

「その通り」

「考えてみたまえ、第一ボソンジャンプの可能な全高八メートルのロボットなど、地球も木連も現時点では作れんのだ」





証言がおわり宇宙軍本部に戻ってきたジュンは荒れていた

「くそっ」


怒りをぶつけるように壁を殴りつけてたりする


「こらこらいかんよ」

のんびりコーヒー(?)を飲みながらムネタケ・ヨシサダ参謀はジュンをたしなめる


「あいつら、ハナッからやる気が無いんだ。何が事故調査委員会だ!!」


「かくして連合宇宙軍は蚊帳の外、事件は調査委員会と統合軍の合同調査と相成り・・・・・・」


「参謀!!」


「はっはっはっ、まあ、確かに黙って見ている手はないからね、だから早速行って貰ったよ、ナデシコにね」


「ナデシコ?」







連合宇宙軍所属、機動戦艦ナデシコB



『今日は、初めまして、私がナデシコB艦長のカワイ・ササミです。

 えっ? 始めましてじゃない? 別のシリーズで見かけた? そんなはずはないんだけど・・・

 ともかく私は初めましてです。みなさんよろしくお願いしますね』



そういうササミはこの年十六歳

水色の髪をした金色の瞳を持っている、年齢の割には落ち着いた大人びた印象を与える少女であります

外見のイメージは、天○無用、あるいは魔法○女プリ○ィサミーに出て来る津名魅(つなみ)様を少しだけ幼くした感じであります。

年のわりに大人びた落ち着いた印象を受けるのは、この少女が成長期に経験したことのせいでありましょう

その心の内に秘めているのはどんな想いであるのでしょうか?

それは、おいおい語られるかもしれませんが、しばらくお付き合いしてくれると筆者としてはありがたく思います



『作者のせつめ・・・失礼、お話は終わったようですね

 ナデシコBは一路ターミナルコロニーアマテラスに向かっています

 先のシラヒメ襲撃事件の調査の一環なのですが、

 統合軍が非協力的なことも予想されますし、さてどうなりますか・・・

 えっ、私がなぜナデシコBの艦長をやっているかですって?

 ・・・そうですね、私はあまり話したくはないのですが・・・あれは・・・・・・』





つづく





あとがき

そんなわけで、新連載の『月の女神』送ります

タイトルの意味は・・・アララギ氏のセリフがどうなるかで想像してください(爆)

ところで、このシリーズは砂沙美の航海日誌の世界とはパラレルワールドだと思ってください

あのシリーズは何だかんだ言っても逆行者がいるのでそのまま劇場版にはつながらないんですよ

他にもわけがあるんですが、とりあえずこの世界は逆行者のいないノーマルな世界ということで

第一話、および第二話は、砂沙美がナデシコB艦長になるまでの話を書きたいと思います。

少女に一体何があったのだろうか?



あと、真面目な話、僕は劇場版あまり好きではありません(おいおい)

でも、だからといって目を背けてばかりもいられないだろうなあ・・・と

いつか劇場版と向かい合ってみなければとおもっていてとうとうこのシリーズ始めました

次回は幸せな河合一家がどん底に叩き落されて、砂沙美も打ちのめされる予定です

はっきり言って痛い話になると思います。でも、よければお付き合いいただきたいと思います

それでは今回はこの辺で・・・これからこのシリーズもよろしく