──まずはお名前から教えていただけますか?

私の名前は藤井かすみです。職業は劇団の事務員をしています

 

 

 

 

──劇団の事務員さんでいらっしゃる。それではその関係で彼と知り合ったのですか?

いえ、私があの人と出会ったのは仕事絡みではないんです

 

 

 

 

──と、いうと?

旅行先のローマで助けてもらったんです

 

 

 

 

──ローマですか。というと観光旅行か何かですか? 羨ましいですねえ

それだけじゃないんです

この旅行は自分を見つめ直すための旅行でもありましたから

 

 

 

 

──それは一体どういうことです?

私は一人娘なんです

それも子供は無理だろうと思われていた頃に出来た

遅くにして出来た子供ですから、父の友人の子供とは年齢差があるんですけど

知人、友人、親類の方達に孫が出来るのを見ると気が気じゃないんでしょう

父はよく結婚するようにといい、実家に帰ると決まってお見合いを薦めるんです

 

 

 

 

──まだお若いのに結婚ですか

私も困ってしまって

でも。父にじゃあ心に決めた男がいるのか?

それとも何かしたい事でもあるのか?

そう聞かれたときに私は答えられなかったんです

 

 

 

 

──ではこの旅行はその答えを探すための旅でもあるんですね

結婚してもいいのか

お見合いを受けてもいいのか

自分が何をしたみたいと思っているのか

それらを知るきっかけになればいいと思っていました

 

 

 

 

──では次に出会ったときのことを教えていただけますか?

私はローマについてから引っ切り無しに動き回りました

初めての観光旅行でしたからはしゃいでいたんでしょうね

時が経つのを忘れていました

そして日が沈んだのに、外を出歩いてしまったんです

 

 

 

 

──なんて危険なことを・・・・

ええ。地元の人は危険だから夜は出来るだけ外出しないらしいですね

ましてや観光客なんていい獲物ですから・・・・・

行く前にはそのことを念頭においていたんですが、夕方にパブでアルコールを少し頂いたものですから

私ったらすっかり忘れてしまったんです

そしてフォロ ロマーノを見て回っていたときに引ったくりにあってしまったんです

 

 

 

 

──そのとき彼が颯爽と現れて取り返してくれたわけですか?

そうです

そのとき周りにほとんど人はいなかったものですから、自分で取り返そうと追いかけたんです

でも疲れていたのとアルコールのおかげで足がもつれて倒れてしまったんです

そしてもう駄目だと思ったときにあの人達が犯人を取り押さえてくれたんです

 

 

 

 

──危険なことをしますね。引ったくりを追いかけるなんて

大事なものをバッグの中に入れて持ち歩いていたものですから・・・・・

 

 

 

──大事なものとは一体なんですか?

パスポートにサイフ、そして母の形見です

 

 

 

 

──そうですか。話を戻しますが「あの人達」とおっしゃいましたが?

あの人ともう一人いたんです

ヤガミ ナオさんとおっしゃってましたけど

 

 

 

 

──ああ、彼のことですか

ご存知なんですか?

 

 

 

 

──ナデシコの取材を何度もしていますからね。それでその後どうなったんですか?

あの人がバッグを引ったくりから取り返してくれて

「大丈夫ですか?」

と微笑みながら私を立たせに来てくれたんです

そうしたらあの笑顔を見て安心してしまったんでしょうね

気が緩んでしまって気を失ってしまったんです

 

 

 

 

──気絶した後はどうなりました?

気がついたらあの人の顔が間近にあって

「気がついたみたいですね。気分はどうですか?」

と聞かれたんです

普通なら驚いたり、慌てたりする筈なのにそういうことは全くありませんでした

大丈夫ですと答えながら現状を確認したときに、ベンチの上に寝かせてもらっていて、その上膝枕をしてもらっていたのを知ったときには驚きましたけど

でもイヤな感じはありませんでした。むしろこのままでいたいなと思ったくらいですから

 

 

 

 

──何故そう思いました?

一目惚れです。最初に見たあの笑顔で私は恋に落ちたと思います

それまで恋愛経験は何度か経験してましたけどあんな気持ちになったのは初めてです

運命の出会いなんてあるわけがないと思っていたんですけどね

 

 

 

 

──その後どうなされました?

いつまでもそうしているわけにもいきませんから、体を起こしてお礼をいいました

そのときに自己紹介をすると彼もテンカワ アキトと名乗ってくれました

会話を途切れさせたくない。もっと話していたい

そう思った私は自分の職業や何故ローマに来たかなどを話していました

初対面の方に聞かせるような話ではないのに

でもテンカワさんはいやな顔をせずに私の話に耳を傾けてくれました

私の話が終わった後、テンカワさんは自分のことを話してくれました

働き過ぎだから休めと上司の方にいわれてローマに来たこと

ヤガミさんが休み中のお目付け役としてついて来ていること

明日は観光に出かける気であること

私は時間が経つのを忘れて話していました

 

 

 

 

──・・・ヤガミさんはそのときどうなさっていたんですか? 話に出てこないんですが・・・・

引ったくりを警察に届けに行かれてました

決して忘れてたり、見えていなかったわけじゃないですよ

テンカワさんと一通りの話をした後にヤガミさんは帰ってこられて

夜は物騒だから送ってあげようとテンカワさんにいってくれましたし

 

 

 

 

──・・・・・・ではその後ホテルへ帰ったわけですね?

これで終わりだというのは残念だったんですが無理はいえません

ホテルまでは送ってくれるのだからと自分に言い聞かせて、ホテルの名前と場所をいったんです

そうしたらテンカワさん達も同じホテルに泊まっていらっしゃって

 

 

 

 

──それは何か運命的なものを感じますね

ホテルへの道すがら色々話しました

会話に熱が篭る一方で私の頭の中ではどうしたらこの時間が続くだろうと考えていました

そしてホテルに着いたときに明日一緒に観光に行きませんかと誘ったんです

ヤガミさんが何かを言おうとしたんですけど、テンカワさんが先に了承してくれて

その後、三人で行くことになったんですが、一緒にいられると思うと全く気になりませんでした

ロビーでお別れした後の足取りがすごく軽かったのを覚えています

 

 

 

 

──ローマへは観光の予定を立てて来られたのですか?

予定は立てていましたけど、明日を素敵な日にするために

部屋に戻ってからはガイドブックと紙とペンを旅行カバンから取り出して

テレビをつけながら明日の予定を立て直してました

 

 

 

 

──色々と行きたい所があってお困りになったでしょうね

ええ、行きたいところ全部に行けたらいいんですけど、そういうことは出来ませんから

あそこがいいかしら、それともあっちの方が気に入ってくれるんじゃないかしら

ここに一緒に行けたら素敵だわ

そんな嬉しい悲鳴をあげていました

でも、つけていたテレビでMoon Nightのニュースが流れたとき気付いてしまったんです

彼があのテンカワ アキトじゃないかということに

 

 

 

 

──同姓同名だとは考えなかったんですか?

最初はそう思いました

あんな優しい目をした人が戦場に出て行くはずが無いと

でもMoon Nightが近くに来ているとニュースでいっていたこと

引ったくりを取り押さえたときの手際の良さ

そして普通、休暇を与えられた人間にお目付け役が付くわけ無いですから

ヤガミさんはきっとボディーガードなんじゃないかって

 

 

 

 

──あの英雄と観光なんて素晴らしいじゃないですか

私は英雄のテンカワさんと一緒にいたかったわけじゃないんです

それどころかそれを知ったことで彼が遠くなってしまって・・・・・

 

 

 

 

──遠く・・・・てすか?

あの人は日本人に見えましたから住所を聞いたらまた会えるかもしれないと思っていたんです

でも違った

日本には住んでいない

私と住んでいる世界が違う

世界的に有名なあの人の側に行けることはこんなことが無い限り不可能だと

それに彼の周りには美人が多いと噂で聞いていましたから、自分は近くにいられないだろうと

彼ならもてるのは当然だと思いましたし

 

 

 

 

──観光の予定はどうなさったんですか?

しばらく呆然とした後、テンカワさんがパイロットだといっていなかったことに気付いたんです

なら私は知らなかったことにしよう

明日はテンカワ アキトという偶然出会った人と観光するのだと自分に言い聞かせました

その後、色々と悩んだんですが良い案が思いついたのでそれにしました

次の日の朝にロビーで待ち合わせて出発しました

 

 

 

 

──どんなコースをまわったんですか?

まず最初にトレヴィの泉に行きました

その後スペイン広場に行ってアイスクリームを食べて

その近くにあるカフェ グレコというお店に行ってシャンパンを飲みました

有名なコロッセオを見て、ヴェネツィア広場を通ってサンタ マリア イン コスメディン教会へ行きました

 

 

 

 

──サンタ マリア イン コスメディン教会というと?

真実の口がある教会なんです

真実の口というのは大理石で出来た大きな丸い石の顔があって

嘘つきがその口の中に手を入れると噛み切られるっていう言い伝えがあるものなんですよ

 

 

 

 

──真実の口なら知ってます。でも教会の名前までは知りませんでした

仕方がないですよ

真実の口の名前は有名ですけど、教会の名前はあまり出てきませんから

 

 

 

 

──その後はどうしましたか?

祈りの壁に行きました

そこは壁に多くの花と小さな札がかけられた場所なんです

何故かけられているかというと、願い事をする人は願いを込めて花を壁にかけ

その願い事が叶ったらその願いを札に書いて壁にかけるからなんです

 

 

 

 

──何を祈りましたか?

内緒です

あのときは叶わないだろうと思いながら願ったんですけど、今は叶って欲しいんです

まだ叶っていない願いを口にすると叶わなくなりそうですから

 

 

 

 

──そういうことならかまいません。では彼は何かを祈っていましたか?

最初はお祈りをしようとしていませんでした

でも、お二人で何か話していていたんですけど「お仕置き」という言葉が出た後で真っ青になって

お二人で急いで花を買ってきて祈ってましたよ

よっぽど切実な願いだったんでしょうね

お二人して必死になって祈ってましたから

 

 

 

 

──彼が真っ青にですか。見てみたかったですね

どうしたんですかと聞いても無理矢理作った笑いを浮かべて大丈夫だというだけでした

それが少し悲しかったですね

 

 

 

 

──続きをお願いしていいですか?

そして最後にサンタンジェロ(聖天使)城に行きました

その外観を見てまわった後、近くの川に沿って歩いたんです

そのときヤガミさんは気を使ってくれて私と彼の二人でした

その頃には日は既に暮れていて、辺りは街灯が照らしているだけ

そして運良くまわりに人はいませんでした

私はこの場所が最後の場所だと決めていました

だからテンカワさんにここで一緒に踊ってくれないかとお願いしたんです

どこかきちんとした踊れるところに行けばよかったんでしょう

けど私はそこで踊りたかったんです

綺麗な衣装も素敵な伴奏も要りませんでした

ただ彼とあそこで踊りたかった

 

 

 

 

──彼は踊ってくれましたか?

ええ、俺でいいならといって

あの時間は私の一生の思い出です

短いようで長いような夢のような時間でした

踊り終えた後、私の旅行は終わったんだなと思いました

お礼をいってここで別れよう、もう会うこともないだろうから最後の挨拶をしよう

綺麗な笑顔でさよならを告げよう

そう心に決めて言葉を紡ごうとしたとき

涙が出てきて

泣かないと決めていたのに溢れてきて

気付いたらテンカワさんの胸の中で泣いてました

テンカワさんは何も聞かずにいてくれました

しばらくしたらようやく落ちつけて、テンカワさんから身を離して

「さよなら」

と、いいました。そうしたら

「さよなら。また会いましょうね」

とテンカワさんは微笑みながらそういったんです

ずるいですよね

別れ際にこんなことをいうなんて

もう会えないだろうから思い出にして生きていこうと思っていたのに

 

 

 

 

──その後のことをお願いします

その後、互いに一瞬だけ視線を絡めた後、私が先にその場から離れました

ホテルに戻った後、すぐに部屋に入り、旅支度を整えて、チケットを手配してから寝ました

そして次の日の朝早くにチェックアウトをして日本へ帰りました

父の元へ行ってお見合いを断り、結婚はしばらくしないことを話すために

 

 

 

 

──最後に彼に伝えたいことがあればどうぞ

私は自分のしたいことを見つけました

あの言葉がなかったら、私は思い出を胸にしまい込んで父の言葉に流されていったと思います

もう一度会って今の私のことをお話したいです

テンカワさんのご無事をお祈りしています

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在ブリッジには男しかおらず、その全てが仕事をしていた

ジュンはユリカ、ゴートがミナト達、プロスがメグミ達、ハーリーはルリ達の代理をし、シュンとカズシは本来の仕事をこなしていた

本来仕事をする人間は別の所で非生産的なことをやっているのだが、これがナデシコ内での男性の弱さを如実に表していた

時々お仕置きルームからブリッジまで叫び声や悲鳴が聞こえてくるあたり相当酷いお仕置きをしているようだ

する方もされる方も普通じゃないが、そんな絶叫を聞きながら仕事が出来るあたり彼らも普通じゃない

彼らはいつもの事と割り切って淡々と仕事をこなしていく

仕方がないなあという表情は隠せなかったが・・・・

 

 

 

 

しばらくすると何か考え事をしているようなミナトがやってきた

 

 

 

 

「おや? どうしたんだ?

まだ悲鳴が聞こえているから終わったわけじゃないだろうに」

 

 

 

 

とりあえず聞いておくかといった感じで尋ねるシュン

大体どんな答えが返ってくるか想像できているのであろう

 

 

 

 

「なんかどうやっても止められそうに無いから抜けてきちゃった」

「そうか・・・・・。まあ、内容が内容だからな。仕方がないな」

「アキトのやつこっちの世界に帰って来るのに今度はどれくらいかかるでしょうね」

「今回はナオさんもご一緒のようですから回復は遅くなるでしょうな」

「まあ、いつものことじゃないですか」

 

 

 

 

完全に人事だと割り切って話している年長者達

なんとも素晴らしい仲間達である

 

 

 

 

「ナオさんも災難ですね

一緒にいたというだけでお仕置きを受けるなんて」

「いや、実はあの時、サラ君やアリサ君、そしてレイナ君もアキトに付いて行こうとしたんだ

だが彼女達が一緒では休暇にならないからな

それでナオをお目付け役にするということで行かないように説得したんだ」

「それでヤガミさんもお仕置きですか」

「まあ、撮った写真を送ったりしたことも理由の一つだろうがな」

「俺や隊長もお仕置きを受ける可能性があったので冷や冷やものでしたよ

何せあのときの休暇はこちらが主体となって決めたものでしたからね

隊長の相手を上手く煙に巻く弁舌に乾杯ですな」

「・・・・・カズシ。お前もあいつらと一緒に地獄を見てくるか?」

「謹んで辞退しますよ」

 

 

 

 

ハーリーはずっとミナトを見ていた

戻ってきてからもずっと考えこんでいるため気になって仕方がなかったからだ

そして疑問を解くためにミナトに声をかける

 

 

 

 

「ミナトさんどうしたんですか? さっきから何か考えこんでますけど」

「何か引っかかるのよね」

「何かって・・・何が引っかかるんです?」

 

 

 

 

話ながら自分の中でまとめようと思ったのだろう

ハーリーとの会話に意識を向ける

 

 

 

 

「この本の内容がね、どうも引っかかるのよ」

「でも。これっていつものと大差ないですよ?」

「そうですな。基本的に何ら変わりはないと思いますが」

「違うところがあるとすれば一時のアバンチュールみたいなものだということだけだろう?」

「今までと違うのはナオのやつがアキトに巻き込まれたことだけだと思うが」

「それって女のカンですか?」

 

 

 

 

二人の会話にブリッジにいた他の面々も参加し始める

 

 

 

 

「そのアバンチュールっていうのがね、妙に引っかかるのよ」

 

 

 

 

まだ考え続けるミナト

それを何故そこまで引っかかるのかと思う男たち

そしてブリッジにいた最後の参加者が言葉を紡ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはきっとデジャヴだろう」

「「「「「デジャヴ?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声を揃えて尋ね返す各々の顔には何を言い出すんだろうと書いてあった

しかしそれを一向に気にせずゴートは続ける

 

 

 

 

「そう、デジャヴだ。」

「なんでデジャヴなんて起きるっていうの?

私はローマに行ったことは無いし、アキト君とデートしたことなんてないわよ?」

「もしかして今まで出た本にこんな話があったって言いたいんですか?

でも、これと同じケースはまだ無かった筈ですよ?」

 

 

 

 

ゴートの言葉に疑問をぶつけるハーリーとミナト

 

 

 

 

「テンカワと彼女が回った観光名所とその順番は新聞記者のジョー=ブラッドレーとアン王女が回ったものと同じだ」

「「「「?」」」」

「ああ! それってもしかして」

「ジョー=ブラッドレーとアン王女・・・・ですか・・・・

どかで聞いたことがあるような・・・・・・・・?」

 

 

 

 

ミナトはその言葉で気が付き、プロスは記憶に引っかかるものを感じる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、これは『ローマの休日』だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その名前が出て完全に思い出すプロス

 

 

 

 

「ああ、なるほど

言われてみれば確かに『ローマの休日』ですな」

「そっか。そうだったんだ

なんか引っかかると思ったら『ローマの休日』の中で彼らが通ったコースだったんだ」

 

 

 

 

二人は妙に納得している

 

 

 

 

「何ですか、その『ローマの休日』って?」

 

 

 

 

大人三人は顔を見合わせる中、質問をするハーリー

そしてその問いに少し嬉しそうに説明を始めるゴート

 

 

 

 

「『ローマの休日』とは20世紀に作られた映画だ」

「20世紀に作られた映画・・・・ですか?」

「そうだ。モノクロであるにもかかわらず今でも高い評価を受けている素晴らしい作品だ」

「モ、モノクロって・・・・・・そうとう初期の頃じゃないですか」

「モノクロであっても良い作品は永久に不滅だ

そして『ローマの休日』はそれを体現している作品と言っても良い」

 

 

 

 

ミナトやプロスも一緒になって説明しようとしたのだが、妙に力の入った説明をするゴートに気圧され会話には入れない

 

 

 

 

「つまりその映画の主人公とヒロインが通った道筋がテンカワさんのデートのコースと同じなんですね?

凄い偶然ですね。まあ、それに気付く方もすごいですけど」

 

 

 

 

この時のハーリーは実によい生徒であった

何故なら、他の人間が持った疑問とゴートが言いたいことを良いタイミングで全部尋ねてみせたからである

そしてゴートは説明を続ける

 

 

 

 

「確かに偶然なら凄い話だ。だが俺は意図的に狙ったものだと思う」

「じゃあ、この人はその映画のヒロインを演じたかったっていうんですか?」

「そうだ。フォロ ロマーノで出会ったのは偶然だ

だが次の日のデートを考えたのは彼女だ。偶然ではあるまい」

「なんかロマンチックですね。それって」

 

 

 

 

旅先で映画のヒロインのようにデート

確かに素敵な話だろう

その映画が一時の恋物語のお話でなければ・・・・・・

 

 

 

 

「僕もユリカと一緒に回ってみようかな・・・」

「いつか僕もルリさんと一緒に・・・・・・・・」

 

 

 

 

ジュンがユリカ、ハーリーがルリとのデートに思いをはせながら呟くと

 

 

 

 

「止めておいたほうがいい」

「そうね。止めておいた方がいいわ」

「そうですな。止めておいた方が無難だと思いますよ」

 

 

 

 

と真剣な表情をした三人に止められた

 

 

 

 

「何故なんだ? 同じコースを回るぐらい問題はないだろうに」

「ハーリー君ではダメなのか?」

「僕じゃルリさんの相手は勤まらないっていうんですか!?」

「やっぱりテンカワでないとダメなのか・・・・・・・・」

 

 

 

 

それに対して問い掛ける三人とうなだれるジュン

ハーリーは下手な答えを返したら暴発しそうな勢いだ

 

 

 

 

「これにはきちんとした理由がある」

「どんな理由があるっていうんです?!」

「問題はこの映画のストーリーだ

大まかにいうと、アン王女というのはとある国の王女だ

親善の為の欧州歴訪を行い、ローマにも訪れることになる

だが連日の公式行事に精神的に疲れた王女は耐えられなくなってしまい

そして平常心を失っていた王女は宮殿から抜け出してしまう

抜け出した後、ジョーと知り合いローマの観光をするというものだ」

「別に何も問題ないじゃないですか!」

 

 

 

 

ただの恋愛ものの映画だとしか思えない

そうハーリーとジュンの顔には書いてあった

 

 

 

 

「まあ、聞け

このジョーという男は最初はスクープのために彼女を連れまわす

カメラマンのアーヴィング=ラドビッチも巻き込んでだ

だが一緒に時間を過ごすにつれ、思いが募っていく

そしてその裏側では別の話が進行している

普通、一国の王女。しかも第一王位継承者が宮殿を抜け出すというのはスキャンダルだ

王女の体調不良のためと公式行事をキャンセルし、その裏で極秘に捜索が行われる

その努力は実を結び、王女がサンタンジェロ城の近くの川で行われる船上パーティーに出席することを掴む

捜索隊は船上パーティーで王女奪還作戦を敢行するものの失敗

上手く逃げ果せた王女達だが今日の終わりが近づくにつれ永遠の別れが近づいていることを感じ取る

そして残り少ない時間をたわいもない会話で使い

王女は二度とは会わない決意を胸に、自らの戻るべき場所へ 急ぎ帰っていくのだ」

 

 

 

 

ここでやっと一息つくゴート

人間は得意なこと、人の悪口、自分の趣味について話すとき最も饒舌になるというが・・・・・

あまりにも饒舌過ぎだ

今まで趣味について話すことが出来なかったのだろうか?

そして、そんなペラペラ喋るゴートに圧倒され聴衆と成り果てる他の面々

 

 

 

 

「一夜明けた後に王女の体調回復の報告を兼ねた記者会見が行われた

それにはジョーとアーヴィングも記者とカメラマンとして参加した

宮殿を抜け出す前の彼女は定められたことをこなす少女だったのに

そこにいたのは王家のものとしての自覚を感じさせる文字通りの王女だった

そして視線で会話をする二人

一人の女としての感情と王族としての立場に揺られながらも彼女は最後には王族として去っていく

この映画は結ばれることのない恋の物語なのだ」

 

 

 

 

満足そうに説明を終えるゴート

イネスが見たら本気で悔しがりそうだが、アキトのお仕置きで今はそれどころではないのだろう

 

 

 

 

「そういうことか。なら止めておいた方がよさそうだな」

「まあ、お二人に『ローマの休日』を見せてから回るというのなら問題はなくなりますが」

「でもゴートさんはどうしてそんなに詳しいんですか?」

「それはオールドムービーの鑑賞が趣味だからだ」

「へー、それじゃ今度見せてもらおうかしら」

「テンカワは彼女がそこまで考えてデートに誘ったのを知っていたのかな?」

「色恋沙汰に関しては恐竜並だから気付いていないだろうな

だが、彼女の決意は感じ取っていたと思うぞ」

「でなければ二人きりになんてらないでしょうな

ばれたら地獄という危険を冒したんですから」

 

 

 

 

納得した大人達は会話に花を咲かせる

だが

 

 

 

 

「ちょっと待ってくださいよ。じゃあかすみっていう人は・・・・・・」

「夢を見たいと思ったのだろう

そして、彼女は望んでいた通り思いでを手に入れた。アン王女と同じようにな」

「で、でも」

 

 

 

 

叶わない恋というところで妙に共感を覚えたのだろう

納得のいかないハーリーに優しく声をかけたのはミナトだった

 

 

 

 

「大丈夫よ、ハーリー君」

「ミナトさん?」

「あの映画ではね、身分の差が問題なの

でも、アキト君と彼女にそんなものはないわ

それに本の中でいってたでしょう?」

「何をです?」

「また会いたいですって

アン王女は永遠の別れを覚悟してそのままだったけど彼女は違うもの

あとは彼女次第よ」

 

 

 

 

 

何時の間にやら会話を止め、ハーリーとミナトの会話を見守る大人達

 

 

 

 

 

遠くから聞こえてくるアキトとナオの悲鳴や叫び声をBGMに今日もナデシコはよくある日常を謳歌していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

どうも2作目となります七つ星です

今回は28号さんの企画に参加し、かすみのアナザーを書いてみましたがいかがでしたか?

自分で書いておいてなんですがコレ本当にかすみでしょうか?

すごく不安です

あと、自分に文章を短くまとめる才能が無いことが今回のことでよくわかりました

無駄にダラダラ長いものを書いてしまったような気がします

 

 

かすみの両親のデータは持ってないため勝手に設定しました

ああでないと話がうまくまとまらないものですから・・・・・

俺はあの手のゲームにおいて通常攻略できないキャラを好きになる傾向があるようです

さくら大戦においてあやめとかすみがお気に入りなのがその証拠です

さくくら4で、もし攻略できるというのならDC買って必ずやるでしょうね

 

 

最近色々なところで壊れゴートが強いので通常版のゴートに頑張ってもらいました

まあ、ある意味壊れているような気もしますが・・・・・・・

ゴートの趣味がああなったのは角川書店から出ている小説版のナデシコの影響です

作中でルリが「思ったよりも赤くない」といったゴートを見てそういっていたことからそう決めました

実際のところどうなのかは知らないので、もし違っていても見逃してください(笑)

 

 

本作において出てくる『ローマの休日』は素晴らしい作品です

ほとんど映画を見ないし、恋愛ものは苦手な俺が、これは素晴らしいと思えますから

まあ、有名な作品ですから見たことのある方も多いでしょう

この作品が今回書けた要因となりました

この傑作映画には頭が上がりません

 

 

SS2作目でアナザーに手を出したのは無謀でした

キャラに違和感が付きまとい、えらい苦労しました

まあ、大変でしたが、みなさんが面白いと思っていただければ幸いです

最後にこの作品を読んで下さってどうもありがとうございました

次の作品でお会いしましょう

では、ごきげんよう

 

 

 

代理人の感想

 

む〜、いいですねぇ。

実に叙情的。

比較的ギャグの多い「戦神アナザー」の中では異色作といえるかもしれませんが、面白いです。

 

 

ちなみに最大の勝因はやはり「お仕置の具体的描写がなかった」ことですね。

あんなシーンを見てしまってはそれまでの雰囲気がブチ壊しですから(笑)。