時を翔け抜く双天使


第1章 第1話 the view of AKITO



























「・・・・ト、・・・キト。」



優しい声だ・・



「・・・キト、アキト。」



いい匂いだ・・・



「アキト、アキトッたら!」



その声で、意識が瞬時に覚醒し飛び起きる。



「やっと起きたの?もう8時よ。ご飯ができてるからすぐに降りてらっしゃい。」



タンタンタンタン・・・・



母さん!?なぜ母さんが?俺は死んでしまったのか?


いやそんなはずはない。体も触れるし、目も見える・・・


何ッ、感覚が戻っている!?それに体も縮んでいる!?もしかして過去に跳んだのか!?


今は何年なんだ?


・・・2186年O月X日・・・


やはり、時間が戻っている・・


言葉にできないような歓喜の衝動が込み上げてくる。


未来を変えられる・・・


絶対にあんな未来にはさせない。


ユリカを・・・ガイを・・・みんなを絶対に助けてみせる・・・












タンタンタンタン・・・・


階段を下りながら考える。そういえば、今日はO月X日、過去で父さんと母さんが殺されたのは3日後か・・・


今度は絶対に殺させない・・・しかし、どうしようか・・・・


・・・・・そうだ!!この時は確かプロスさんがネルガル研究所火星支部の司令代行をしていたはずだ。


あの人の助けを借りて父さんたちを助けてもらおう。まず、父さんたちに全てを教えておかなければ・・・












ダイニングに入ると父さんと母さんが既に座っていた。



「父さん、母さん、おはよう。」


「ああ、おはよう、アキト。」


「お寝坊ね、アキト。さあ、ご飯を食べるわよ。座りなさい。」



懐かしさが込み上げる。もう少し浸っていたいが、話さなければな・・・


俺は真面目な顔になり、2人に話し掛けた。



「父さん、母さん、話があるんだ。とんでもない話だけど、真剣に聞いて欲しいんだ。」


「なんだいアキト。言ってみなさい。」



2人の顔が引き締まる。



「俺は・・・16年後の未来から跳んできたんだ。」


「・・・うん・・・突拍子もない話だな・・・しかし、嘘をついているようには見えないな。何か証拠は有るかい?」



こんな子供の姿をしているのに真剣に話を聞いてくれる両親に感謝をし、俺は次の言葉を紡いだ。



「ボソンジャンプ。」



母さんが驚愕の表情を浮かべ叫ぶ。



「何でその言葉を知っているの!?」


「落ち着きなさい、母さん。さあアキト続けて。」


「俺はボソンジャンプができるんだ。父さんCCを貸してくれないかな。」


「ああ・・・」



父さんからCCを受け取る。



「ありがとう。じゃあ今からジャンプするから、ちょっと離れてて。」



目を瞑り、イメージを始めると体が光り輝く。



「ジャンプ。」



2人の前から俺の姿が掻き消える。












目をあけるとそこはキッチンだった。


よし、イメージどおりだ。


ダイニングに戻ると、両親の呆気にとられている姿が目に入った。そして・・・



「・・・お前を信じるよ、アキト。」


「・・・これを見せられては信じるしかないわね。」


「・・ありがとう、父さん、母さん。」


俺は2人に頭を下げた。


「じゃあ、話すね・・・」












「・・・これが、未来で起きたことなんだ。俺はこの未来を変えたい。父さんたちにも協力して欲しいんだ。」



話し終えた後、父さんは顔を歪め、母さんは泣いていた。



「・・・わかった協力しよう。しかし3日後に私たちが死ぬことになるとはね・・・」


「そこは俺にまかせてよ。絶対に助けてみせる。たぶん地球に行ってもらうことになると思うんだ。それと進めて欲しい計画があるからお願い。」



そう言った直後、母さんに抱きしめられた。



「アキト、つらかったでしょう・・・ごめんね、母さんたち先に死んじゃって・・・あなたを守れなくて・・・ごめんね。ごめんね・・・」



暖かい・・・


涙を、こらえきれなかった・・・



「・・・母さん、泣かないで。俺はもう大丈夫だから。それにこれからそんな未来を変えるんだから。」



そういって母さんから体を離す。



「それじゃあ俺はやらなきゃいけないことがあるからちょっと出かけてくるよ。」



そういって俺は家から出ていった。心に灯った暖かい何かを感じながら・・・






「シズカ、あの子はとんでもない経験をしたんだな。正直私は無力感を感じたよ。とっとと殺された未来の自分にね。」


「私もよ、キョウヤさん。でもこれからはあの子の手助けをしていける。未来を変えるために・・・」


「・・・そうだな。よし!!やれるとこまでやってみるか。なあ、シズカ?」


「ええ、そうね。」



2人は微笑みあった。












ここはネルガル研究所火星支部、その司令室の中だ。



「・・・どなたですかな?」



プロスさんがこちらに気付く。



「失礼しますよ、プロスペクターさん。」


「・・・ふむ、子供ですか。どうやってここまで?シークレットサービスが10人程いたはずですが?」


「邪魔されたんで、ちょっとおねんねしてもらいました。」


「ほう・・・」



プロスさんの目が、鋭くなる。



「そう殺気立たないでください。ここに来たのはあなたにお願いがあったからです。」



俺は苦笑しながら言った。



「失礼ですが、あなたのお名前は?」


「あ、すいません。俺はテンカワ アキトです。」


「テンカワ・・・ということはテンカワ博士の息子さんで?」


「はい。で、お願いというのは3日後に殺されることになっている両親を助けてもらいたいんです。」


「なっ・・・テンカワ博士が3日後に殺されるとはどういうことですかな?何を根拠に?詳しく聞かせてもらいましょう。」



よし、のってくれた!



「そうですね。では、まずこれを。」



そう言って、書類を渡す。



「これは、ネルガルのホストコンピューターにハッキングして調べました。ネルガル会長の決定はテンカワ夫妻の暗殺。理由はあくまでCC(チューリップクリスタル)の公表にこだわったから。会社の不利益になると判断したんでしょう。」


「ふむ・・・で彼らを助けることで私になにか利益はあるのですかな。こちらとしては損はしたくありませんからな。」


「そうですね、初めから取引するつもりで来たんですよ。こちらの報酬は・・・そうですね、未来における、あなたがあなたらしくいられる場所の情報と手助けではどうでしょう?」



俺はそう言いながら微笑んだ。












次の日、俺はユリカと会った。



・・・抱きしめたい・・・


・・・もう一度、もう一度だけ・・・


そんな思いを抑えるのは罪の意識・・・


何千何万という命を奪った俺の・・・俺の手は汚れすぎている・・・


俺は求めてはいけない。護りたい、護るべき人たちが安心して暮らせる未来を与えるだけ・・・


けして同じ様な未来にはさせない。


そのためになら俺は修羅にもなろう・・・




ユリカは無邪気に俺に話し掛けてくる。


俺はそんなユリカにぶっきらぼうな態度をとる。


今にも爆発しそうな自分の感情を必死に抑えながら・・・


そして、瞬く間に時は過ぎ・・・












2日後、両親と別れをすませ、過去の通りに空港にユリカとミスマルおじさんを見送りに行った。その後起きるテロ事件、その中では・・・



「お久しぶりですな。キョウヤ博士、シズカ博士。」


「ええ本当に、プロスペクタ−さん。」


「どうぞ、これが地球への切符とパスポートです。・・・よい息子をもたれましたな。」


「ええ、あなたも息子を助けてくれてありがとう。」


「いえいえ、こちらも報酬をもらえましたからな。さあ、急いで行ってください。後は私が何とかしますので。」


「ええ、また会いましょう。お元気で。」


「それでは、失礼します。」



走り去っていく2人を見送りながら、プロスペクタ−は思索にふけった。


あのテンカワ夫妻の息子のアキトという少年・・・


彼の目には何かを期待させられるような輝きがありましたな。


それに、自分が自分らしくいられる場所ですか。年甲斐もなく胸が高鳴りますな・・・












テロ事件がおさまって数時間後、俺がスーパーで買い物を終えると出口にプロスさんが立っていた。



「ご両親は、無事に地球に渡りましたよ。」


「ありがとうございます。」


「いえいえ、こちらも充分な報酬をいただきましたからな。」


「そういってもらえると嬉しいです。では、また10年後に・・・」


「ええ、今度は自分らしくいられる場所で、ですな。」



そう言って笑いながらプロスさんは去っていった。


プロスさん、本当にありがとうございます・・・












家に帰り、晩ご飯を作りながら今後のことを考える。まず体を鍛え直そう。未来での俺以上に強くならなければ。


そう思う一方で、不安が重くのしかかる。未来での1件以来、俺は心に闇を抱えている。


戦闘の時、全てを壊したいという衝動が湧き上がる。


そんな感情を抑えきれる自信が俺には、無い・・・



ピンポーン、ピンポーン



チャイムの音によって俺は思考の世界から現実に引き戻された。



「はいはい、今出ますよっと。」



誰だ?とりあえず気配を探ってみる。


1人か、殺気や敵意は感じられないから大丈夫だな。



ガチャッ



ドアを開け相手を見てみる。どこかで見たことのあるような同い年くらいの美人な女の子。何故か服は男物だ。


「あの・・どちらさまでしょうか?」


「テンカワ、僕だよ、僕。わかるかい?」



幼い感じだが聞き覚えのある声。この声は・・・



「もしかしてジュンか?」


「ああ、そうだ。」



ほっ、としたように微笑む突然の来訪者は、女の子ではなく男の子、しかもジュンだった。









・・・・to be continued








後書き



こんにちは、こんばんは。暁の明星です。


やっと書きあがりました、第1話。


感想のメールもらっちゃいました。すごく嬉しかったです。


メールでも指摘されたのですが、色々おかしな点が見られると思います。


おかしいと思ったらぜひ指摘のメールをください。でも、あんまり深く突っ込まないで(泣)


質問にもある程度答えます。


感想文はぜひ!ぜひ!!ぜひ!!!


さて、この話ですが3章構成とさせてもらいます。


第1章がナデシコに乗るまで、第2章がTV版にそって、第3章はオリジナルです。


この話では、アキトのパパさんママさん助かっちゃいました。


しかも、勝手に名前付けちゃうし。


ナデシコに乗せるかどうかは現在思案中です。


ちなみに作者は、ジュン1番お気に入りです。アキトもいいんですが・・・


やっとジュンが書けます。もう気分はノリノリ!!


皆さん見ていて下さい、私はジュンをにしてみせます!!


そんな誓いはさておき、ぜひ次も見てください。では・・・

 

 

 

代理人の感想

 

おお、なんと言う男らしい宣言でしょうか(爆)!

そうすると最終回は

 

「俺はようやくのぼりはじめたばかりだからな

この果てしなく遠い男坂を・・・・」

 

と言うジュンのモノローグと

 

未完

 

の大書でラストになるわけですね(核爆)?