時を翔け抜く双天使


第1章 第5話 Jun meets Koya








はじめてあった時はただ完璧だと思った・・・

完成された動作、整った容姿、明晰な頭脳・・・

お前の腕を知りたくて手合わせを申し込んだこともある・・・

お互いの不満をぶつけ合ったりもした・・・

だが、だんだんとお前がわかっていって・・・

お前は完璧なわけじゃない。泣きもするし、悩みもする。

誰もが持っているそれを、俺は見落としていただけだった・・・

今ではお前は俺にとって親友であり、ライバルでもある・・・

これは生涯変わることはないだろう・・・

たとえ敵対したとしても憎しみの感情は抱かない・・・

俺はただ自分の信念にのみ従って生きているのだから・・・








地球についてから一週間入学手続きやら何やらでドタバタしていたけどそれもようやく落ち着きました。

まあ落ち着いたとしても明日は入学式なんですけどね。

県立海之瀬高等学校、それが明日から僕とアヤノさんが通うことになっている学校です。

アヤノさんはそこの制服がいたく気に入った様で制服を着たまま家の中を歩き回っているようです。

そんなことを言っているうちにアヤノさんが来たみたいです。

アヤノさんの身長は160cm程、確かに美人なのだが可愛さも併せ持つ顔。

栗色の髪に茶色の瞳。そして、今の服装は・・・

「ジュンちゃん、ジュンちゃん見て下さい。どうです、かわいいでしょ。このリボンがポイントなんですよ。」

胸元に大きなリボンのついた白いセーラー服を着たアヤノさんが、僕の目の前に来てクルッと一回転。

こっ、これはっ・・・

「似合ってます!似合いすぎです!!ちょっとお願いがあるのですが、かっ、髪をポニテに・・・」

「??・・・こうですか?」

そういうと首をかしげながら髪型をポニーテールに変える。

「ぐはっ!!」

ノックアウト!あまりの可愛さに(意識が)飛びます飛びます、飛ぶ飛ぶ〜〜〜

「ジュンちゃんっ!?ジュンちゃん、しっかりしてください!」

自分の体から血が抜けていくのが実感でき、徐々に意識が薄れていく。

しかし僕は大満足です、ここで死んでも後悔はしない・・・・



しばらくお待ちください。



・・・・お見苦しい所をお見せしました。

もう大丈夫です。今後こういうことが無い様気をつけます。

ではとっとと話を進めましょう。

「あの・・大丈夫ですか、ジュンちゃん?もう少し寝ていた方が・・・」

「いえいえ大丈夫です。僕の元気は百倍です。愛と勇気だけが友達なんです!」

「は!?はあ、そうですか・・・」

うほんっ!!気を取り直して・・・

では、ここからは僕の生涯の親友でありライバルである男の視点から・・・・









入学式が終わり、クラスが発表された。

一年D組、それが俺のクラスだ。学校として普通の儀礼にのっとって時間が進んでいく。

教室に入ると担任が入ってきて自己紹介を始める。

担任は40歳前後の恰幅のいい男性だ。髭面がむさい・・・

「あ〜私の名前はタニムラ・ショウジだ。とりあえず一年間よろしく頼む。

 月並みで悪いんだが皆初対面なんで一人ずつ自己紹介していってもらおうか。」

そんなこんなで自己紹介が始まる。

「じゃあ出席番号一番から教卓の前に出てきて自己紹介をしてくれ。」

すると身長170cm程の女性が教卓に出てくる。

すごい美人だな。凛とした雰囲気が彼女をさらに魅力的に仕立て上げている。

加えて驚くほど優雅な立ち振る舞い。自分の体を完璧にコントロールできるのであろうことが伺える。

「アオイ・ジュンです。これから一年よろしくお願いします。」

そういってニコッと笑う。こっ、これはやたら魅力的な笑顔だ。

くっ、長年の修行で培った自制心で防御だ!

「ぐはっ!!アオイさん俺と付き合ってください!!!」

「あんた何言ってるのよ!アオイさんは私と付き合うのよ。」

「・・・・・・・・・!!!?」

次々と陥落していくクラスメート、教室中大パニックだ。

だが、俺は耐えたぞ!・・・・・・・・・ふうっ、疲れた(汗)

しかしあれだな、なんかボーイッシュな声だ。ん!?制服がブレザー・・・ということは男か!?

くっ、不覚にも気付かなかった。

周りを見回すと今の爽やかな笑顔でクラスの半数以上がノックアウトされている・・・

しかも、男女関係なくか・・・恐ろしい・・・・・





順調にとはいかないものの(アオイのせい)俺の順番が回ってくる。

「ヒカミ・コウヤだ。よろしく頼む。」

まあ皆さん聞いているのやら聞いていないのやら・・・

少し寂しい・・・・





なんやかやで休み時間に入った。皆がアオイに近づこうと隙を伺いあっている。

皆が皆牽制しあっているな。んっ、先生、あんたまでもか・・・

このクラス、初っ端からぶっ飛びすぎだと俺は思う。

まあ仕方が無いのかもしれないが・・・

だが俺もアイツには興味がある。あの動作、なにか武術をしているはずだ。

どのくらいの強さかは測りきれないが、達人級であることは確かだ。

どれ試してみるか・・・

幸い今は皆が牽制しあっている最中で、アオイは一人席に座っている。

何気なく近寄っていきアオイに声を掛けようとする。

俺がアオイに近寄っているのに気がついたのか一斉に視線が集中する。

こっ、こわっ!!なんか視線に邪念がこもっている気がする。

き、気にせずに自己紹介を始めよう。

「どうも、ヒカミ・コウヤだ。よろしく。」

一瞬だけ殺気を放ってみたが何のリアクションも起こさず微笑みながら挨拶を返す。

「アオイ・ジュンです。よろしくお願いします。」

何の反応も無かったことに少しがっかりしながら話を続ける。

「とりあえずもう昼休みなんで飯でも一緒に食わないか?」

するとアオイは少し考えて応えた。

「ええと、もう一人僕の知り合いが一緒になるけどいいですか?」

「ああ、かまわない。どうせ入ったばかりで知り合いもいないしな。友達が増えるのはいいことだ。」

まあ俺は友達といえる友達はあまりいないんだがな。

「では・・・あっ、一つ言っておきますがこれから会う人の前では殺気をむやみに放たないで下さいね。

 僕だったら受け流しますけど、あの人は敵とみなしたら容赦しないんで。」

・・・・やはり気付いていたのか。まあこいつの実力を知りたかっただけだからな。そうそう殺気は放たないさ。

そんなことを考えていると、ガラガラという音と共に女性が入ってきた。

身長160cm程の美少女だ。靴の色から判断するに2年生らしい。もしや・・・・

「ジュンちゃん捜しましたよ。さあ、お昼にしましょう。」

「すいません、アヤノさん。あっ、こちらはヒカミ・コウヤ君。」

「どうも、よろしくお願いします。」

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。2年のクオン・アヤノです。」

ぺこりと会釈をしてきたのでこちらも会釈を返す。

「じゃ、とりあえず昼食にしましょうか。」

三人連れ立って中庭で自己紹介などを交えつつ食事をした。

なかなか楽しい時間を過ごせた。彼らについて色々わかったし、アオイも随分と打ち解けてくれた。

・・・ただ、教室を出る瞬間、教室廊下にいたほとんど全ての人間の殺気が俺に集中したのは気のせいではないはずだ。





「ではこれで今日のホームルームを終る。事故などに気をつけて帰れよ。」

ふう、やっと学校が終る。この学校なんかおかしい気がする。

入学式の日なのに5時まであってるし。まあそんなことはどうでもいい。

アオイに頼み事があるからな。アオイは何処だ?・・・・あ、いたいた。

「お疲れアオイ。ちょっと頼みがあるんだが・・・」

アオイは顔に?マークを浮かべて応える。

「この後お前と手合わせがしたいのだがいいかな?」

強い人間と戦える、俺の頭はこのことでいっぱいだった。

「・・・・ああ、いいよ。何処でやる?」

「うちに道場がある。そこでやろう。」





道場は静謐としている。が、そこには張り詰めた糸のような緊張が満ちていた。

道場の中央にはアオイ・ジュンとヒカミ・コウヤが対座している。

道場の端に座っているのはクオン・アヤノともう一人中学生程の女の子が一人。

審判をつとめるのはコウヤが近くの道場から引っ張ってきた50歳ほどの男だ。

「では手合わせを始める。武器の使用は許可しない。つまり素手で戦えと言うことだ。

 それ以外は禁じ手無しの一本勝負。それでは、始めぃぃぃ!!」



緋神流古武術、それが俺が子供の頃からやっている武術の名前だ。

人を殺す、もしくは完全に戦闘不能にすることを徹底追及した武術。

基本的には剣術、拳術、棒術からなっている。が、暗器を使用する戦闘法も伝えられている。

俺が得意とするのは剣術で小太刀を二刀使用する。

まあ今日のところは体術だけだが・・・

ちなみに道場の中にいる中学生くらいの女の子は、俺の妹でナツキ。

審判をしてくれている男性はハヤマ・リュウゾウという近くの空手道場の館長だ。

こちらの説明はこれくらいでいいだろう。試合に戻るぞ。

相対しているアオイはこちらが放っている殺気を全て受け流し、表情を変えない。

どうも先に動く気はないらしい・・・まあいい、ならばこちらから打って出るまでだ!

全速でアオイとの間合いを詰め右拳を突きだす。アオイはそれを半身になって避ける。

俺は素早く右拳を引き、続いて左拳を放つ、がアオイはそれを見越していたかのように後ろに跳び間合いを取ろうとする。

そうはさせない!右足で一歩踏み込みその足を軸に回し蹴りを放つ。

かわせないと悟ったのかアオイは左腕でガードして身を守る。

ゴスッ!!ん?おかしい、派手な音のわりに手応えが少ない。そしてアオイは予想外に吹っ飛んでいるし・・・

・・・自分から跳んだか。インパクトの瞬間、衝撃が来る方向に合わせて逆らわずに身を引く。

そうすることで回し蹴りの威力を半減させたみたいだな。これは一筋縄ではいかない相手だ。

「・・・どうした、これからだろ。まだお前の実力を見ていない。」

そう語りかけると、アオイは立ち上がりながら呟いた。

「そうだったね。全力で挑んでくる相手には全力でかからないといけないか。

 じゃあ行きますよ。とりあえず覚悟してください。」

瞬間殺気が膨れ上がりアオイが突っ込んでくる。繰り出そうとした右拳を見て俺は防御しようと身を固める。

しかし、攻撃が当たる一歩手前で急停止し、右足を軸に円を描くように左足を俺の左側に移動させる。

そして、間髪いれず左足に重心を移し体を入れ替え鋭い回転と共に裏拳を放った。

正面から来るものと思っていた俺は体を固めていたためにろくに反応できず、背中にもろに裏拳を喰らい吹っ飛ぶ。

ドゴッ!!半端じゃない衝撃が背中を襲う。

「グハッッ!?」

こ、これはきつい・・・まさか横からの攻撃に切り替えるとは・・・・

しかし、これくらいで倒れてはいられない!足を踏ん張り、倒れそうになるのをなんとかこらえる。

衝撃をやり過ごした後、左に向かって蹴りを放つがやはりそこにアオイはいなかった。

再び間合いが開く。今までの攻防から見て実力の差は明白。

ならば、次の一撃に全てを託す!そう決めた俺は、右手を頭上に大きく振りかぶり左手を添える構えをとる。

「・・・緋神流 雷閃」

呟くと同時に最大のスピードで一直線に駆けてアオイに近づく。

零距離になった瞬間、上から下へ打ち下ろすように手刀をくりだす。

やったか!?俺がそう思った瞬間、襲ってきたのは先程の攻撃に倍するかのような衝撃だった。

どうも腹部に掌底をくらったらしい。見事に吹っ飛ぶ俺。

「・・・・・・ッ!?」

ドガッ!壁に背中をしたたかに打ちつける。前と後ろの両方から襲ってくる痛みで意識がとびそうだ。

「ゲホッ!ゴホゴホッ!」

くっ、どうもしばらくは立てそうにない・・・悔しいが、これで終わりか・・

「・・・・降参だ・・」

「勝負あり!この勝負、アオイ殿の勝ちとする!」





久しぶりの敗北。だが不思議と悔しさはなかった。

もしかすると俺は理解していたのかもしれない。今日の試合が自分を高める糧となることを。

まあ、俺とジュンとの邂逅はこんな所だ・・・・












・・・・to be continued








<後書き>


すいません、お待たせしました。

前作から随分と時間が空いてしまいました。

何通か催促の手紙を頂いたんですが、何かと忙しくて書く時間が・・・

返事も返さず本当に申し訳ないです。

でもやはり感想メールが来ると嬉しいですよね。

後2、3話で第一章は終る予定だったんですがもうちょい長引きそうです。

ジュン君は原作とえらい変わりよう。何というか別人です。

そのことに関する苦情は受け付けませんのであしからず。

ちょっと前の話とは異なっている点がありますが、そこはさらっと読み流してください。

いつか改訂版をだしますので。

オリキャラのヒカミ・コウヤ君なんですがベースは某ゲームの主人公です。

たぶん、わかる人にはわかるはず。ポイントは小太刀の二刀流ってとこですか。

執筆ペースは遅いですが、これからも見放さずに見てくださいお願いします。

では、次のお話で・・・

 

 

代理人の感想

何と言わなくても別人です(爆)。

 

なんとゆーか、SSではキャラが有能になると美形に変身する事が多いですね〜。

アキトとかシンジとか、今回のジュンとか・・・・ある意味わかりやすくはありますが(笑)。

でも、別に有能な人間が美形である必要はないんですよね。

有能さは外見よりも実績で表現されるべき物ですから。

大体その線でいくと某氏の作品に登場するムネタケだって美形にならなくちゃいけませんし(爆)。