HappyBirthday For 『My Dearest』

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どうも。お久しぶりです。 ホシノ・ルリです。

私たちに関する詳しい説明は、まぁこの話を読んでる人はだいたい解ってるはずなので、小略させてもらうそうです。
どうして私がこんな説明を代弁しなくてはならないんでしょう? まぁ、いいです。

今、私たちは、地球のとあるドックにいます。ナデシコBの調整のためです。
もう時計は十一時を指しています。 他のオペレーターの方はもう部屋に戻っていますので、ブリッジの中は、私とハーリー君、それとオモイカネだけです。
ハーリー君は、何故か、私が仕事を終えるまで待っているそうです。
そういえば、さっきサブロウタさんが『怪談百選』という本を持ってましたけど。 ああ、サブロウタさんは先ほどから宇宙軍本部に出張で行っているので、今日は帰ってきません。
突然、オモイカネがウインドウを展開しました。

「決して、キャラが多いとゴチャゴチャしてめんどいからというわけではないですよ」

苦しい言い訳ですね。 それより、オモイカネをそんな風に使わないで下さい、誰かさん。


「くぁ〜んちょお〜」

ハーリー君の寝言が聞こえて来ました。 どうしましょう。
この仕事は今日中に片付けなくてはならないのですが、でも、ハーリー君はこれ以上起きているのは無理のようですし。先程からなんとか頑張って寝たり起きたりしてますが、そろそろ限界でしょう。
サブロウタさんがいないので、私ではハーリー君を部屋へ担いで行けないですし・・・。

『ピーピーピー』という音と共に、突然、私の目の前にウインドウが開きました。

「ホシノ少佐、お客様です」

ウインドウには、私たちのいるドックの受付のお姉さんが写っています。
受付のお姉さんも、少し眠たそうです。

「誰ですか?」

私は尋ねました。

「そのぉ、『出前』だそうですが・・・」

「『出前』・・・ですか?」

思わず、おうむ返しに聞き返してしまいました。
私は出前なんて頼んだ覚えはありませんし、かといって、ハーリー君が頼んだとも思えません。
サブロウタさんのさし入れでしょうか? 私が悩んでいると、急に

「ルリちゃ〜ん!」

という声が聞こえました。

「ユリカさん!?」

ついつい大きな声を出してしまいました。
見ると、ハーリー君が起きてしまいました。

「ふぇっ、あ、んあっ、う・・・、ああ、あ、かっ、かかか艦長、どどっ、どどどうしたんですくぁ!?」

寝起きなので、上手く舌が回らないようです。

「あ、ハーリー君、ちょっと待ってて」

我ながら全くフォローにならないフォローですが、とりあえず良しとして、ユリカさんに尋ねます。

「どうしたんですか、こんな夜遅くに?だいたい、どうして私たちがここにいるって知ってるんですか?」

ユリカさんは、屋台で働く時の格好をしています。右手には、よく出前でラーメン等を入れるケースみたいなのをもってます。

「だから、出前だよ出前。今日ちょうどルリちゃんたちが地球に来るってお父様が言ってたから、出前に来たの」

たったそれだけの理由で、出前に来るんでしょうか? ユリカさんが続けます。

「それにね、今日はさ・・・」

ふと見ると、受付のお姉さんがどうしたら良いのか解らない困った顔をしています。とりあえず、ユリカさんにここへ来てもらったほうが良さそうです。 ユリカさんの言葉を遮って、私は言います。

「ユリカさん、とりあえず、ここへ来て下さい。お話の続きはこっちで」

ユリカさんが、何かに気が付いたような顔をしました。

「あ、そっか。ラーメン冷めちゃうもんね。うん解った。今行くから」

相変わらず、周りの人の事に全然気づかない人です。 お姉さんが、まだ困った顔をしています。 ああ、そうか。通して良いのか解らないんでしょう。 慌ててフォローをします。

「あ、その人は怪しい人ではありませんから、通しても平気ですよ。ミスマル提督の娘さんですし」

「えっ、あっ、あはい、どうも。どっ、どうぞお通り下さい」

『ミスマル提督の娘』という言葉が効いたのでしょう。お姉さんが、助かったような顔をしてユリカさんを案内します。

「は〜いど〜も〜。おっじゃましま〜す」

ユリカさんが、とても夜とは思えないテンションでずんずん歩いて行きます。
さて、それではこちらも準備をしましょう。

「ハーリー君、起きてる?ちょっとこっちへ来て。ユリカさんが出前をもって来てくれましたよ」

私はイスから立ち上がって、ハーリー君に言いました。
ずっと何がなんだか解らない顔でこっちを見ていたハーリー君は、弾かれたようにイスから立ち上がりました。

「えっ、あはい!?」

事情が解らないハーリー君は、オロオロしながら言いました。

「え、それでユリカさんに出前が何をしたんですか?」

やはりまだ頭が回ってないようですが、ユリカさんが待ってくれるとも思えないので、
とりあえずこっちへ来てもらいます。

続く