時の流れに another
最強艦隊設立

 

 

 

 

 

アキトが格納庫で北斗に詰め寄られていた丁度そんな頃、
白鳥ツクモは妹のユキナと一緒にブリッジにつながる廊下を歩いていた。

 

「あ〜〜〜、お兄ちゃ〜〜ん(涙涙涙涙)」

 

そんな絶叫と共に後ろから抱きつかれたのだ。

 

「こら、ユキナ突然抱きつくなッ」

 

言ったはいいが当のユキナは自分の前に立ち、睨んでいる。

 

「お兄ちゃん後ろの女性2人はいったい何者?」(怒)

 

ツクモが後ろを向くとナデシコオペレーター特有のオレンジ色の服を着た高校生くらいの女の子と、
ナデシコ艦長同様の白い制服に身を包んだ人物が立っていた。

 

「あの〜すみませんあなた達がいったい誰なのか教えていただけませんでしょうか?」

 

そこまで言い終えると、後ろに抱きついていた女性はツクモの首から離れるとユキナの後ろに回り込んだ。

 

「これで判るよね?お兄ちゃん」

 

女性に鈍感なツクモもさすがに判った。
身長は頭一つ分位違うが、似ている顔。姉妹それも一卵性双生児でなければここまでは似ないだろう。

 

「ユ、ユキナなのか?」

 

「そうよ、お兄ちゃん。」

 

そう一人はユキナだった。
そして、もう一人は?ユリカ以外の女性で白の制服を着ることができる人物がいるだろうか?

 

答えはいない。

 

では?

 

「宇宙軍中佐アオイ=ジュンです。もっともこの世界での話ではありませんが」

 

「はぁ〜?ジュン君てあの暗くなりかけの?」

 

ユキナ(小)が口を開いた。
真面目な彼はこの非常事態にもシュミレーションルームでエステバリスの特訓中だった。
そんなことを聞いてしまっては放っておけないジュンは勝手知ったる何とやら、一目散に走っていってしまった。

 

「あぁ〜あ、ジュンちゃんったら本来の目的も忘れてェ」

 

ユキナ(大)のぼやきにユキナ(小)が答える。

 

「本来の目的って?」

 

「ん、そんなことより、あんたはどうなのよ?ジュンちゃんのところに行かないの?」

 

「つい今さっきまで一緒に朝食とってたし、後5分もすればブリッジに上がるはずだけど」

 

「じゃあ、今ジュンちゃんが走っていったのって……」

 

「すれ違いにならなければ、いいけど」

 

すれ違いになる危険をはらみつつもジュンを追いかけて歩き出す三人だった。
彼らはすれ違いになることなくシュミレーションルームで会話をしていた。

 

「何があったんだ?ここまで暗くなるなんて」

 

「え〜、でも影のあるジュンちゃんもいいかも」

 

ユキナ(大)の発言はあくまで冗談なのだが生真面目なジュンは見るも無惨なまでに慌てていた。

 

「な、何を言い出すんだよユキナ」

 

「ダ〜メ、これは、あたしのなの」

 

ユキナ(小)が咄嗟に言い出してしまうがユキナ(大)はこの発言を待っていたのだ。
自分の脱ブラコン計画、自分の場合は悲劇によって強制的に成されてしまったそれを、平和的に行うこと。

 

10分後

 

すべての事情を聞かされたジュン(大)はジュン(暗)に怒鳴りつけていた。

 

「馬鹿野郎、そんなこと考えなくてもテンカワが悪くないことぐらい判るだろう。
 結局お前は、自分にのし掛かってくるプレッシャーが重すぎると思いこんでるだけなんだよ。
 ナデシコはみんなで家族なんだ。ユリカもテンカワもルリちゃんも…みんなで家族なんだよ。
 なんかあったなら、相談すればよかったじゃないか」

 

「相談できると思うか?あんなこと。普通なら誰も体験しないことなんだぞ。
 俺がテンカワの過去のことを知ったのはつい最近のことだ。
 テンカワは今もクルーのみんなに正式に話した訳じゃあない。
 テンカワの記憶をかいま見た人間は今回のことで思い出した奴もいるみたいだけどな。」

 

「だったら、今からでもテンカワに相談しろよ。一人で話しにくいなら、僕が一緒に行ってやるよ。
 テンカワには言いたいこともあるしな。」

 

「いや、もういいんだ、そのことは。
 今、こうやって訓練してるのは、万が一の時に出撃しなくてはいけないときのためさ。」

 

「もうそれも必要ないだろうな、それも。予備に置いてあったみたいなエステバリスもタカスギ君が乗ってたし。」

 

「は?何故高杉がナデシコの機動兵器なんかにのっているんだ?」

 

今まで黙って話を聞いていたツクモが話に割り込んできた。

 

「あれ?彼は何も話していなかったんですか?彼もテンカワ達と同様に過去へのボソンジャンプをした人間ですよ」

 

「なに、そうかそれであいつ、いきなり性格が軽くなったり、ナデシコとの戦闘を回避していたのか」

 

過去を知る者としてのやり方。しかし、今のナデシコには彼の自由に扱える機動兵器はない。
当然のことだ。彼はまがりなりにも敵側の人間なのだ。

 

「こんなところで話してるのも何だし、そろそろテンカワの説明の一つも聞けるんじゃないかな。
 ブリッジに行こうか?」

 

ジュン(大)は呼びかけるとジュン(暗)と共に歩き出した。
すぐさまジュン(大)の脇にユキナ(大)が追いつき腕を組む。ジュン(大)もそれを受け入れている。
アキト達がボソンジャンプで過去に跳んでからどのくらい月日がたったのだろう。
それなりに二人の仲は進展していたようだ。

 

ブリッジにて

 

木連側のメンバー、ブリッジクルー、パイロットが勢揃いとウリバタケ、
主要なクルーが勢揃いしたブリッジの彼らの反対側に、ナデシコBのクルーが勢揃いしていた。

 

「テンカワ、説明してもらえるかな?」

 

ジュン(大)が発言したが

 

「説明?それは俺の方が聞きたいな、どうやってここにジャンプしたのかを」

 

「は〜い、それはこの私、テンカワ・ユリカがご説明しま〜す。」

 

「「待ちなさい」」

 

説明と聞いて黙っていられない人物イネス・フレサンジュ×2が飛び出してきたが、
イネスBのみが説明の内容を知っていた。

 

「アキト君達が消えた時、私は丁度火星の遺跡にいたのよ、偶然にも。
 そこで遺跡の演算を再検証。長い演算だったわよ。
 そして、再検証に1年も掛かってしまったの。
 アキト君達がついた時に跳んでもよかったんだけど、それじゃあ面白くないでしょ。
 それで、私たちの時のナデシコを跳ばしたときの時間、位置を追いかけてジャンプしたら、
 ナデシコが戦闘中だったというわけ。」

 

「そうですか。ここは、あのときのあの場所だったんですね。」

 

ルリは悲しそうにもらした。
しかし、彼らにはそれを懐かしく重い悲しんでいる暇はなかった。

 

「アカツキさん」

 

「「なんだい?」」

 

ユリカ(未来ver.)の問いかけに帰ってきた声はステレオ音声だった。

 

「この時代のアカツキさん。
 実は新しい戦艦の設計図を持参したんですが建造していただけます?この状況からすると大急ぎで」

 

「僕はいいんだけどねェ、実質的なオーナーの意見を聞いてみないとねェ。」

 

「なに?買収されたのか?ネルガル重工が?」

 

アカツキ(未来ver.)がアカツキ(過去ver.)に喰って掛かるが意外の他にこやかな笑顔の反撃を受けた。

 

「3人の少年少女が偽名を使って株の50%以上を買ってしまったんだよ。
 だから、今の僕は、名義上のオーナーというわけさ。」

 

「で?君は何の反撃手段も抗じないのかい?それに、一体どこの誰なんだい?ネルガル重工の今のオーナーは?」

 

「アカツキ、お前戦後の処理でぼけたのか?思い当たらないか?株の買収ができそうな3人の少年少女」

 

化かし合いが好きな二人の会話に業を煮やしたアキトが会話に割ってはいる。
その後ろでは、ルリ、ラピス、ハーリーのオペレータートリオが笑っていた。

 

「ま、まさかこの3人なのかい?ということは今のオーナーというのは?」

 

「そう、このテンカワ君が今のネルガル重工会長さ」

 

「そういうことだ、アカツキ」

 

ガックリ、音がたちそうなほどに項垂れながらも、どこか嬉しそうなアカツキ(未来ver.)。
会長職の実務は残っている訳だから損しか残っていないだろうに、それでも、重荷が外れたような清々しい笑顔だった。

 

「そ、それじゃあ、私の次期会長になるという夢は………」

 

エリナ(未来ver.)が項垂れているが、エリナ(過去ver.)の

 

「私は、別にぃ会長夫人になれればいいんだけど」

 

の一言に

 

「そうよ、その手があったのよ」

 

と、元気を取り戻す。

 

 

と、その時何故かナデシコBに残っていたメグミから

 

「本艦の前後に位置するチューリップから無人有人型木連戦艦多数出現します。
 それと、後方からクリムゾン製と思われる艦隊多数接近します。」

 

その総数350隻、クリムゾン製有人兵器200機、木連側無人兵器計数不明。
ナデシコ1隻なら苦戦もやむを得ない数の敵がその場にいるのだが。

 

「北斗以下の木連メンバーはクリムゾン製機動兵器を頼む。
 ナデシコ系パイロットは無人兵器を。ハーリー君はナデシコBに移ってオペレートしてくれ。
 その上でナデシコ2隻で、敵戦艦を殲滅、ナデシコBは木連側戦艦を叩いてくれ」

 

船頭多くして船は進まない。
ユリカ二人に任せると突拍子もない作戦しか出てこない。場をしめる意味でアキトが作戦を指示した。
ナデシコ、ナデシコBから出撃する機動兵器群、
しかし、時間が進んでいるはずのナデシコB所属のエステバリスの方が小型で速度も多少劣る。

 

「タカスギ君はナデシコB所属のエステバリス隊を率いて艦の防衛に当たってくれ。
 特に北辰のような輩が進入しないように。」

 

短時間になるだろうがナデシコを留守にしそうなアキトは留守居役を頼んでいた。
サブロウタは先程練習のためにシュミレーションルームでエステバリスに乗ったのだが
あまりの性能差にナデシコBが運んできてくれた自分の愛機(複製)で出撃した。

 

開戦

 

ナデシコ側の虚をつき包囲殲滅しようとした、木連、クリムゾン連合軍だった。
ある程度攻撃が当たった時点で特殊任務部隊(北辰たちや改造人間部隊)
を送り込みマシンチャイルド全員を奪取、その後証拠を全て殲滅するハズだった。
しかし、そんなことを考えていた彼らへの開戦の祝砲はナデシコとナデシコBの新装備、相転移砲だった。
木連側指揮官の南雲も、クリムゾン側指揮官のシャロン=ウィードリンも、
そしてナデシコの凶運の象徴北辰もいざとなったら北斗を味方に付けようと同行していた山崎すらも
最強兵器相転移砲の前では、ただ為す術もなく周囲の空間と共に相転移されてしまった。
残りは残敵掃討なのだが、木連側無人兵器は指揮を失い行動を停止している。

 

「アキト、ジョロとバッタの回収お願い。プログラム改修してナデシコで使うから」

 

ラピスからコミュニケでの通信が入る。
リンクは最近使っていない。必要ないのだ。今の二人には、会話で十分なのだ。

 

「ナデシコ所属のエステバリスに通達。
 ラピスからのお願いだ、両手に持てるだけのジョロとバッタを回収。帰還しろ。」

 

せっせとジョロとバッタを回収して帰還するナデシコパイロットに続いて、
北斗以下の木連パイロットもクリムゾン製機動兵器を殲滅、ジョロとバッタを回収して帰還した。

 

 

 

 

 

……………………………………………………………………………………………………………………………………
あとがき
最強艦隊設立をお届けいたしました。
最強ですね。相転移砲を装備した二隻のナデシコ。
乗員も増え、今後の展開は………考えていません。
今回、諸悪の元凶その1が死亡してしまいました。
悪人は向こうから仕掛けてきて、全滅するかも。
次回『ネルガル月面工場にて』をみんなで読もう。

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

紅い巨星さんからの投稿です!!

凄い事になっていますね〜(笑)

問答無用がうりの相転移砲ですが・・・

あの北辰から山崎にシャロン嬢に南雲まで一撃ですか?

う〜ん、短い出番だったな、南雲、シャロン(爆)

でも、ジュンの奴随分と目立っていますね〜

やはり、ダークな方が受けるのか?(苦笑)

 

では、紅い巨星さん!! 投稿有難うございました!!

 

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