時の流れに after story

 

『ダブル』とは関係ありません。

 

引き金を引こうとした北辰に無数の赤い弾丸が襲いかかった。

 

ピッ

 

『単独起動シーケンス始めま〜す

 レーダー類 OK

 エネルギーパイパス OK

 各種、兵装 OK

 ジャンプシーケンス OK

 ・・・システム オールグリーン、と。

 ブロス、相転移エンジンの起動開始!!』

『OK!!』

『小型相転移エンジン・・・始動開始!!

 エネルギーバイパス、正常作動!!

 各種レーダー類、作動開始!!

 発進準備完了!!』

音声付きの通信が入った。

それにしてもあの2人、どうやって声を設定したんだ?

『ブローディア』『ダリア』、発進準備完了。行くよ!ブロス、四陣殿』

ディアのかけ声と共に奴らの上方から『ブローディア』『ダリア』が飛来した。

『アキト兄と北斗姉の周囲にジャンプフィールド形成完了。

 何時でものりうつれるよ?アキト兄、北斗姉』

ディアの言葉に互いに視線を交わした俺達はボロボロになったエステバリスから『ブローディア』『ダリア』に跳んだ。

ブローディアに乗り込んだ俺に、例のマントが降りてきた。

これで準備万端だと思うと、自然に笑みがもれてくる。通信ウィンドウの北斗も少し笑っている。

「北斗!こちらは準備OKだぞ」

俺は北斗に声をかけた。

「これまでの借りをすべてまとめて返してやれそうだぞ、アキト」

「そうだな、北斗。一気に決めるぞ……バーストモード!

「羅刹招来!」

俺にも北斗にも手加減をする必要は何処にもない。

それどころか俺にはみんなの敵を討つ必要がある。

奴らはこちらが非力だと分かると、まるでネコがネズミで遊ぶように俺達で遊びやがった。

目には目を、の考えでいけば今度はこちらの番なのだが、

「北斗、今までやられすぎたせいで、体の方の限界が近い。一撃で決めるぞ!」

「アキトにしては弱気なことをと言いたいところだが、俺も同じだ」

「テンカワ流奥義!飛竜翼斬!!」

「北斗流奥義!蛇王双牙斬!!」

二つの流儀の奥義が炸裂する寸前、

「テンカワ=アキト!また会おう!」

そう言い残して、北辰と六連はジャンプで姿を消した。

目標を見失った奥義はそのままアステロイドベルトを消していった。

 

「……うん?ここは……医務室か」

戦闘が終了してナデシコに帰艦したとき、俺と北斗は先を争うように気を失ったのだ。

「気が付かれましたか?アキトさん」

「ああ。ところでルリちゃん、あれからどのくらい時間が経った?」

よく見ればルリちゃんの目は真っ赤だ。ろくに睡眠もとらずに看病してくれたんだろうな。

ただ気を失っただけなんだからそこまでする必要もなかっただろうに。

「アキトさんと北斗さんが帰艦してから32時間経過しました。

 他のパイロットの方々は怪我をされましたが、リョーコさんの左腕打撲が最も重いものです」

ルリちゃんはパイロットの怪我の報告をしたが俺が今聞きたいのはルリちゃんの体のことだ。

「ルリちゃん、ほとんど寝てないんじゃないかい?」

「つい先ほどまで、艦長以下の皆さんがいましたが今は部屋の方に引き取られています。

 私はこの体質ですから多少睡眠時間が少なくても問題ありません」

「ダメだよ、……」

俺が言いかけたときだった。

「ホシノ=ルリ、これ以上アキトを心配させるな。

 本来なら腹に1発入れて無理矢理にでも休ませるところだがそれも出来ないようだしな」

「北斗!お前分かるのか?」

「アキト!俺を誰だと思っている?こいつの気の流れを読めばそのくらいのこと、自ずと分かる」

「だ、そうだ。ルリちゃん、北斗と俺が怒らない内に早く部屋に戻るんだ、いいね?」

「ハイ、分かりました」

ルリちゃんはそう言うとやっとおとなしく医務室を出ていった。

 

ルリちゃんが部屋に戻った後、俺と北斗は格納庫に来ていた。

「あ!アキトくん、体の方はもういいの?」

「ああ、レイナちゃん、すまないね。エステの修理もあるのにその上ブローディアにダリアまで」

「その事なんだけど、エステは基本的にアサルトピットを除いて修理はしないの。

 だから、アリサ機、リョーコ機とヒカル機のアサルトピットを修理してそっちは終わり。

 それより問題なのはブローディアとダリアの調整の方なのよ」

『問題って何よ、レイナ姉。私たちも四陣殿もやっとのことで、ナデシコ探してたんだからね』

「ディア、四陣殿ってのは誰のことだ?」

北斗がディアに訪ねた。

その瞬間だ。北斗の周囲をコミュニケのウィンドウが開いた。

『ひどいですぞ北斗殿』『あんまりです』『我々のことを忘れるとは』『これが我々の主とは』

四陣(氷雨、蒼天、暗尭、風魔)が口々に抗議の声を上げた。

「な、なんだ?これは!?」

突然のことに北斗が驚きの声を上げたときだ、

「こんにちは、四陣さん元気だッたー?」

北斗とまったく同じなのに底抜けに明るい声が響いた。

「枝織ちゃん?!な、なんで北斗がここにいて…枝織ちゃんがここにいて……」

俺の頭は一瞬にして混乱状態に陥ってしまった。

「テンカワさん、テンカワさんそれについては私から説明させてもらいます」

飛厘ちゃんがいつの間にか俺の背後に立っていた。

「過去の世界での終戦後、北ちゃんはテンカワさんと生活することで、自分が女性であることを部分的に認めました。

 元々、北ちゃんの自らを女性と認めないという意識から生まれたのが枝織ちゃんでした。

 ですが、北ちゃんがその事を認めてしまったとき枝織ちゃんは消える運命でしたが、

 既に1個の人格として確立していた枝織ちゃんは消えることに疑問を感じていました。

 そんなときに起こった時間逆行の折、北ちゃんの中から枝織ちゃんがはじき出されてしまったのです」

分かったような分からないような飛厘ちゃんの説明だったが、北斗と枝織ちゃんが分離したことは確かなようだ。

しかし、

「枝織ちゃん、四陣のこと知ってたのかい?」

「うん!北ちゃんのことは怖がってたけど枝織の前には以前から出てきてたよ」

枝織ちゃんの言葉に北斗の額に青筋が浮かんだ。

「枝織?お前の前にはこいつらは以前から姿を現していたんだな?」

「終戦後、しばらくしてからだったけどディアちゃんにウィンドウプログラムを組んでもらったからっていってたよ?」

「四陣!テメェらどういうつもりだ?!」

北斗が朱金の気を纏うにつれて、四陣は北斗を離れ、俺の後ろに回り込んだ。

当然、四陣を狙う北斗の正面にいるのは俺ということになる。

「ま、待て、北斗!落ち着け、落ち着いて話を聞こう、な?」

「いや、こればかりはいくらアキトの頼みでも聞くことはできん」

北斗は構えを取った。

「ダメだよ、北ちゃんが蒼天を蹴り飛ばしたりするから四陣さん怖がってたんだよ」

枝織ちゃん、この状況で君の姿が女神に見えるよ。

 

そんな格納庫での出来事があろうともナデシコは無事、ネルガル月工場に入港しました。

 

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やっと一区切りを迎えましたが物語は何処に向かうのでしょうか