時の流れに after story

 

『ダブル』とは関係ありません。

 

「ルリちゃん、宙域を走査するんだ!なるべく早く!」

俺達ナデシコはボソンアウトした。しかし、何かが変だ。

前方に、アマリリスや木連ゆめみづき級戦闘艦が混在し、砲撃をしている。

「アキトさん、宙域が分かりました。こ、ここはターミナルコロニー『アマテラス』です」

「アマテラス?ということは?」

俺はなんとか口を開いた。

「ええ、前方にナデシコBとブラックサレナを確認しました」

なんてこった。艦長代理になったことで、ユーチャリスを思いだしはしたが、なんてところにボソンアウトしてしまったんだ。

「テンカワさん、後方に戦艦1隻、ジャンプアウトしてきます」

「サブロウタ、ユーチャリスの下側に回り込むんだ。このままでは拡散型グラヴィティブラストに巻き込まれるぞ」

「了解」

ブリッジでどうにか行動できるのは俺達だけのようだ。

多くのクルーは事態の急変に付いていけず思考停止になっている。

「アキトさん!いっそのことナデシコBに接触しましょう」

それはまた大胆だねルリちゃん。しかし、それが1番いいのかもしれない。

「サブロウタ、操舵士をミナトさんと交代。ルリちゃん、一時、艦の制御を任せる。サブロウタ、出撃するぞ」

『出撃』この言葉に反応し再起動を果たした人間がいた。

北斗と枝織ちゃんの2人だ。

「アキト!お前が出るなら俺も出るぞ」

「アー君と北ちゃんが出るなら、枝織も出るよ!」

「そうか、俺達はあのコロニーに用事がある。2人にはナデシコの警護と援護を頼む」

「「了解(した)」」

北斗と枝織ちゃんの2人にナデシコを任せ、俺とサブロウタはアマテラスに向けて発進した。

 

「こちらは連合宇宙軍第4艦隊所属試験戦艦ナデシコB艦長のホシノ=ルリ少佐です。

 そこの戦艦、応答願います」

失敗しました。ウィンドウ通信を着信拒否にしておくのを忘れてました。

ナデシコBに近づいて、開いたウィンドウに映っていたのは私でした。

私は予想の範囲内でしたが、向こうの私は驚いています。

少し表情の変化が乏しい気がしますが見逃しません。私ですから。

「こちらは連合宇宙軍第13独立機動艦隊旗艦ナデシコです。

 ボソンジャンプの事故でここに出てしまいました。これから、そちらの指揮下に入りますのでよろしくお願いします」

隠してもいつかはばれてしまいます。正直にありのままを話しました。

「分かりました。本艦は現在、負傷者の救出をしています。手伝って下さい」

「了解しました。ハーリー君、ミナトさんナデシコはナデシコBの斜め後方に位置してBを支援します」

アキトさんが出撃する以上ユリカさんが指揮すべきなんですが未だに思考停止状態です。

仕方がありません、私がオペレーター兼艦長でやるしかありませんね。

「ルリ、あたしがオペレーター席に座るから、ルリは艦長に専念して」

「ありがとう、ラピス」

ラピスにオペレーターを任せ私はオペレーターの制服のまま、艦長席の前に立ちました。

 

「こちら格納庫、ルリちゃん!ブローディア以下4機発進準備完了した。発進するぞ?」

「了解しましたアキトさん、ブラックサレナを追ってリョーコさんがアマテラスに進入しました」

ナデシコからブローディア、ダリア、ダリアU、『焔』が出撃しました。

そして、ほぼ同時にナデシコBからサブロウタさんのスーパーエステバリスが出撃します。

ダリアとダリアUは2隻の防衛に残り、3機がアマテラスに向かいました。

「アキトさん、無茶なことはしないで下さいね?」

私は叶わぬ願いをしました。

自分の名前が会話に上ったことで再起動を果たしたリョーコさんが私に詰め寄ってきました。

「おい、ルリ。ここは一体何処なんだ?」

「リョーコさん、落ち着いて聞いて下さい。

 ここは私たちとは別の世界です。時間でいえば未来ということになるのでしょう。

 ここでは地球木連の敵として、『火星の後継者』という謎の軍隊との戦いが起こっています。

 そしてそのほかに、漆黒の謎の機動兵器とボソンジャンプが可能な戦艦が両軍に対して、奇襲戦法による戦いを仕掛けています。

 つまり、この世界はあのアキトさんの記憶にあったあの世界です」

「それは違うよ、ルリ。アキトが戦いを仕掛けているのは遺跡に関係のあるところだけだよ?」

「それは分かっていますよ、ラピス。でも、この状況を客観的に判断すればそう言わざるを得ません」

「あの、すみません。そこにいらっしゃるのはリョーコさんですよね。それにミナトさんもメグミさんも……

 後ろにいるのは……ユリカさん?」

ナデシコB艦長の私が話しかけてきました。

「少佐、私たちはあなた達の過去の世界、それもこことは違う世界から来た人間です」

少しは嘘を交えて話さないと、私のことが彼女にばれてしまっては事態は一層深刻化します。

 

「よーし、そのまま、そのままぁ」

リョーコさんが乗るエステバリスカスタムが漆黒の機動兵器に接触しました。

「俺は頼まれただけでね。この子が話をしたいんだとさ」

そう言ってリョーコさんは接触回線用のワイヤーを機動兵器に向かって射出しました。

事情は既に過去から来たという私に聞きました。

しかしこの私、過去から来たという割には事情を知っているようです。一体何者なんでしょうか。

「すみません、あなたがウィンドウ通信の送受信にプロテクトを掛けているのでリョーコさんに中継を頼んだんです。

 ……教えて下さい、アキトさん、貴方は一体何を考えているのですか?」

「!?」

「おい!ルリ!今、お前なんて言った?!」

お二人ともかなり動揺されているようですね。

しかし、アキトさんは自分のペースを取り戻すと

「時間がない。見るのは勝手だ」

ゲートが開きます。細く長く延びる通路の突き当たりには、あの『遺跡』がありました。

「おいルリ!見てるか?なんだよ、こりゃ。……なんなんだよ、ありゃ」

激昂したリョーコさんが遺跡に向けてエステを飛ばします。

「リョーコさん、落ち着いて下さい。形は変わっていますがあの遺跡です。

 この間の戦争で地球と木連が奪い合った火星の遺跡。ボソンジャンプのブラックボックス」

「なんでこいつがここにあるんだよ?これじゃあ、あいつらが浮かばれねぇよ」

リョーコさんの言うあいつらとは誰のことを指すのでしょうか。

 

『それは人類の未来のため』

リョーコさんの足下に大写しになるウィンドウ。

「草壁…中将!」

『アマテラスは我々、火星の後継者が占拠する。占拠早々申し訳ないが我々はアマテラスを放棄、爆破する』

「律儀な人たちだなぁ」

私の横でデータの収集をしていたはずのハーリー君が呟きました。

「ハーリー君、データは取れた?」

「あ!ハイ」

仕事はしっかりこなさなくてはいけませんからね。

 

「くそ!間に合うか?」

俺の背後にはサブロウタ専用エステバリス『焔』さらにかなり後方に同じくサブロウタのスーパーエステバリスが飛んでいる。

「テンカワさん、スーパーエステがかなり遅れてますがどうします?」

「今は時間がない。俺は全速で行く。あいつが気になるなら、お前が引っ張ってこい。話したいこともあるだろう?」

俺は意地悪く笑いながら言った。

「何を話せって言うんです?」

「あるだろう?リョーコちゃんのことや三姫ちゃんとのことも。忘れてるんだろ?」

指摘した俺にサブロウタは笑って

「それはあっちが解決すべきことです。俺がどうこう言えることじゃないっすよ」

返してきた。その間にも俺達とスーパーエステバリスとの距離は離れていく。

しかも、俺達はウィンドウ通信を着信拒否にしてある。

そして俺達はアマテラスに到着した。

コロニー内に進入すると、既に北辰達の手によってリョーコちゃんのエステバリスはボロボロだった。

『一夜にて天津國まで伸びゆくは瓢の如き宇宙の螺旋…女の前で死ぬか?』

まるで北辰の声に反応するかのように遺跡が花びらを開いていく。

そこにいるのはやはり、遺跡に融合させられたユリカだ。

たとえ頭で分かっていても、いい気分はしない。

それは俺の横に立つブラックサレナなら尚更のことだ。

『……滅!』

六連が襲いかかってくる。まさしく問答無用、被弾し動けなくなっているリョーコちゃんの機体にも襲いかかる。

「サブロウタ!お前はスーパーエステが来るまでリョーコちゃんの機体を守れよ」

「了解!んでレベルは?」

「無論、問答無用のレベルS!」

俺はそれだけ伝えると、戦闘に突入する。

しかし、俺が北辰を倒すのは簡単なことだがそれを行うわけにはいかない。

北辰を倒すのはあくまでここのテンカワ=アキトでなくてはならない。

俺達に出来ることはそれをサポートし、その後に起こるであろう悲劇を防ぐことだ。

しかし、歴史通りに起こったアマテラスの爆発で、この場での戦闘が中止になる。

「テンカワさん、スーパーエステが中尉のアサルトピットを持って脱出しました。

 時間がありません。俺達も脱出しないと爆発に巻き込まれますよ?」

「分かった。サブロウタ!お前はスーパーエステを追って脱出しろ。俺はこいつに話がある」

「分かりました。俺は先に脱出しますがあまり艦長に心配を掛けないようにして下さいよ」

サブロウタの『焔』が脱出したのを見送った俺はブラックサレナに相対した。

「通信を開け、テンカワ=アキト!」

リョーコちゃんを見習って接触回線用のワイヤーをつなげた俺にあいつがウィンドウを開いた。

「お前は何者だ?」

「またこれはご挨拶だな。最近は鏡を見ていないのか?あっ!そうか、視力も殆ど無いんだったな」

「何故それを知っている?貴様も奴らの仲間か?」

「おっとバイザーを外すのを忘れていたな。……どうだ?これなら分かるか?」

「…!?何故?」

「俺はお前だよ。ルリちゃんから、ユリカから逃げ、ラピスを巻き込んで、ジャンプ事故で過去に跳び人生をやり直したのがこの俺だ。

 しかし、今俺の周りにはみんながいる。みんなの元に戻ればやり直せる。俺に言えるのはそれだけだ」

「しかし、俺の手は血にまみれている。この手であいつを抱くことは……」

「そうやってみんなを拒否して逃げたお前の末路が俺さ。大丈夫だよ、ナデシコはそれほどヤワじゃない」

「かもしれない。例えそうだとしても、この決着だけは俺の手で付ける」

「それでお前の気が済むのなら、そうすればいい。俺達はそれをサポートする

 ……さて、爆発の間隔が速くなってきたな。俺達も脱出するか?」

 

ボソンジャンプで俺達はそれぞれの艦に帰艦した。

至る所で爆発していくアマテラス。

また、ユリカの居場所が分からなくなったな。

居住ブロックまで戻った俺にラピスが話しかけてきた。

「アキト、さっき過去の私って名乗る人からメールをもらったの。開けていい?」

「そうだな、俺も興味がある。一緒に見るか?」

「うん!」

『ユーチャリスのラピスへ

 私は過去の貴女。本当はちょっと違うけど、これ以上はルリが話しちゃいけないって。

 これだけは覚えておいてね。

 あなた達は2人だけじゃない。ルリもユリカもみんな家族なんだって。

 また、この戦争が終わったら、ゆっくりお話しようね。

 ナデシコのラピスより』

「アキト、この私、楽しそうだね?」

「そうだな、ラピスは会ってみたいか?」

ラピスは答えない。しかし、俺はラピス達を会わせることを決意した。

何時までもこの生活が続く訳じゃない。

過去の俺と名乗る奴が言ってたように。

「さて、ラピス!脱出するぞ!?」

ネルガル月工場に向けてジャンプした。

 

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ジャンプアウトした先が未来。

これからどうするナデシコクルー