時の流れに after story
 
『ダブル』とは関係ありません。
 
私達、独立ナデシコ部隊(同窓会部隊)は数名の欠席者こそ出しましたが、ネルガル重工の偽装シャトルで大気圏を脱出しました。
「護衛艦隊……いや、護衛艦と合流するぜ!」
オペレーターシートに座っていたリョーコさんが訂正しながら言いました。
変ですね、予定では確かアララギさんの率いる艦隊が護衛艦隊として合流するはずでしたが。
『当艦提督のオオサキ=シュンです』
「こんにちは、予定では護衛の艦隊と合流する予定だったハズですが?」
『アララギ艦隊は地球防衛に専念されているので、急遽我々が護衛の任につきました』
「そうですか、では月までの護衛、よろしくお願いします」
通信が切れました。私と違って、名前も顔も典型的な日系人のようですね。
でも、オオサキ提督の背後に、ここにいない懐かしい人の姿を見たような気がしたのは気のせいでしょうか。
 
「さてと、こんなもんでいいのかな?」
「ありがとうございます、シュン隊長。
 それにしてもネルガルも太っ腹だよな。
 突然押し掛けた俺達に戦艦1隻くれるんだからな」
プロトタイプ・ナデシコC
それが今の俺達の戦艦だ。
同窓会部隊の護衛にナデシコは刺激が強すぎると判断したネルガルが俺達に提供した新造戦艦だ。
しかし、この艦1隻でシャトルの護衛をしなければならないとは。
「ボソン反応多数、前方5000km」
「さて、ここからが正念場だ。シャトルの護衛に、『ジャッジ』と『雷』。
 他のみんなは自由戦闘で敵機を撃破。ただし可能な限りパイロットは殺さないように
 それと、ナデシコ先任パイロットは名前を向こうに聞かれると非常にまずい。お互いのコールは機体名でするように」
「「…「了解(した)」…」」
『シャトル、先行します』
「待った!ホシノ少佐、前方に展開している部隊のさらに向こうに増援の反応がある。
 ここはおとなしく、我が部隊の戦いを御覧いただこう」
『分かりました』
シュン隊長が通信を切ると、俺達に向き直った。
「今回は無理を言って、シャトルは先行をさせない。火星の後継者とか言うちんけな部隊に勝つには俺達がここで負けるわけにはいかんぞ」
その後ユリカ達の方を向くと、
「俺はシャトルとの通信を担当する。戦闘指揮は艦長に一任するぞ」
と言い提督席に座ってしまった。
ところで、フクベ提督は何処へ?(フクベ提督は食堂でホウメイさんとお茶を飲まれています。)
 
「これよりPナデシコCは戦闘形態に移行します。
 その後、全エステバリスは出撃。エステの指揮は『ブローディア』に一任します」
「了解した。テンカワ=アキト専用機『ブローディア』発進よろし。
 ブロスはガイアで『ジャッジ』をサポート」
『了解、アキト兄』
「ナデシコ所属の全エステバリスは発進して、奴らの足を止めろ!
 こんな形になりはしたが、これが俺達の初陣だ。気合い、入れていけよ!」
「「…「了解(した)」…」」
 
護衛艦から発進したエステバリス隊を見ていたリョーコさんとサブロウタさんが驚きの声を上げました。
「お、おいサブ。あいつら、この間アマテラスに現れた部隊じゃねぇか?」
「あ!やっぱり中尉もそう思います?俺もそう思うんですけど。
 右翼に展開している部隊、機体色といい動きといい似てると思いません?俺達に」
サブロウタさんの言う通りでした。2機、余分な機体(『ガンガー』と『白百合』)がいるように見えますが、その動きパーソナルカラーはナデシコ所属のエステバリス隊そのものでした。
 
「『ジャッジ』より『ブローディア』。羊はそれほど愚かじゃない。牧羊犬の正体に気が付いた」
僕は暗号を交えた通信を『ブローディア』に送る。
事前に打ち合わせていない暗号ではあるが、彼なら気が付くだろう。
「『ブローディア』より『ジャッジ』。別にばらしてしまってもいいぞ」
僕は本当にシャトルに通信を開くつもりだったのに、
「苦労を無にされた『妖精』に殺されたければな」
なんて言われたら、喋れ無いじゃないか。
しかし、なんで彼は某同盟のコードネームを知ってるんだろうね。
「流石の貴男もあの人には勝てないのですね。フフフフフフフッ」
「珍しいね千紗くんの方から話しかけてくれるなんて。彼は僕の師匠だからね。以前は口なら勝てたのに、今は勝てないさ」
『あの〜、ウィンドウ通信、こちらにも開いてるんですが』
え?ま、マジですか?僕、生きて自室に帰れるのだろうか。
本気で命の心配をしたよ。
 
「ボソン反応、本艦周囲におよそ300」
メグミさんの悲鳴のような報告にユリカさんの顔が蒼くなります。
「『三つ編』さん!エステバリス隊、どちらか片方でも呼び戻せませんか?」
「無理です、『天真爛漫』さん!全パイロットが手一杯の状態です。この状態で艦の防衛に回れるのは『ジャッジ』か『雷』のどちらか1機だけです」
「このままでは併走されつつタコ殴りに会います」
『やはりシャトルが先行しましょう。エステバリス隊にシャトルの通路を開けるように伝えて下さい』
シャトルが私達の返事を聞く前に急加速していきました。
「全パイロットへ、シャトルが先行します。道をあけて下さい」
 
「『ブローディア』より全員へ。いかなる手段を用いてもシャトルの道をあけろ!」
「「…「最終解除コード(『ジャッジ』『マルス』『ルナ』『ガンガー』『煌』『鯖』『白百合』『雷』『風』『竜』『炎』『氷』『闇』『光』『焔』)」…」」
「お、おい待てよ。みんなでバーストモードになったら……」
「テンカワくん、時計を見てみなよ。後4分30秒でナデシコCとの合流ポイントだよ。
 つまり今からバーストモードを使ってもエネルギー切れになる前にケリが付けられるってことをみんなわかってるのさ。」
「そうか、そういうことなら俺も遠慮はいらないわけだ……北斗、枝織ちゃん、いくぞ!」
「アキト、あれをやる気なんだな?」
「ああ、いきなり大きな敵に対してやるほど俺も愚かじゃないからな……バーストモード」
「「羅刹招来!」」
流石だねこの2人はって見とれてる場合じゃないよ。
「3人とも…一体なにをやるつもりなんだい?」
「ま、黙って見てろよ」
「流派合体、最大奥義」
「「「トリプル・ドラゴニック・ウェーブ」」」
テンカワくんの飛竜翼斬の周囲を螺旋を描くように北斗くんと枝織ちゃんの蛇王双牙斬が飛んでいく。
3人で放った割には威力は10倍くらいかな。
やっぱりこの3人は強さの次元が違うね。
あーあ、敵さんも可哀想に。シャトルの護衛は戦艦1隻、シャトルを破壊して任務完了だったはずなのに。
ま、戦った相手が悪いよね。『戦神』と2人の『羅刹』誰が戦っても彼等の勝つことは夢のまた夢さ。
 
「「ボソン反応、前方50km!」」
奇しくも、メグミさんとシャトルのサブロウタさんの声が重なりました。
『でかいぞ、これは』
『うわー、まずさの2乗倍』
シャトルは大慌ての様子ですが私達はホッとしました。
『グラヴィティブラスト、行っきまーす』
脳天気な声と共に、ウィンドウ通信にハーリーくんが現れました。
「『ミナトさん、前方の不明艦の右(左)側に脱出して下さい』」
シャトルは歴史通り左側に、そして私達プロトタイプナデシコCは右側に脱出しました。
グラヴィティブラストが発射され、交戦中だった機動兵器群が巻き込まれました。
「あ、危なかったね、バーストモードで光翼を展開してなかったら僕らも巻き込まれてたよ」
コードネーム『ジャッジ』ことアカツキさんが抗議の声を挙げて、出現した戦艦(言わずと知れたナデシコC)に詰め寄りました。
「「…「……………」…」」
そして、それに合わせて他の方々も詰め寄っていきます。

「な、なんなんですかー?僕が一体なにをしたって言うんですかー?」
「お、落ち着けハーリー。俺達はなにも悪いことはしてないハズだ」
慌てながらも俺はこいつを落ち着けるために口を開く。
しかし、俺の声が届いていないのかハーリーは混乱状態のままだ。
『マキビ少尉、何か俺達に恨みでもあるのか?』
真ん中にいた漆黒の機動兵器がウィンドウ通信を開いたが、そこに映っていた顔を見て俺は腰が抜けるほど驚いた。
「テ、テンカワ?お前、死んだハズじゃなかったのか?」
「アキト君、あなた月にいるはず……」
ブリッジ前方で待機していたイネスも驚いてるが、彼女はあいつが生きてることを知ってたのか。
『こんにちは、イネスさん、セイヤさん。でも、俺達はあなた方が知っている俺達じゃないですよ』
「達?お前がアキトじゃないなら、誰がテンカワ=アキトなんだよ?」
俺がそう言ったとき、俺達の周りに多数のウィンドウが開きやがった。
緑色の髪をしたリョーコちゃん、その他多数のナデシコ時代に出会ったパイロット達。
それにあれは、
「ヤマダ?それとも白鳥?」
顔が似ずぎて見分けがつかんがどちらかだろう。俺は素直に口にしただけだ。
『俺の名前はダイゴウジ=ガイだっつうの』
「しかし、お前は死んだハズじゃなかったのか?それに後ろにいるイツキ=カザマちゃんだったっけ?きみも。
 そうすると、お前ら幽霊か?誰かおバカな俺にも分かるように説明してくれー」
そう口にしてから後悔した。俺の横には長い説明大好きのイネスがいたんだ。
しかし、それに答えたのは違う人物だった。
『えーと、説明おばさんが機能停止中のようなので、私が説明します。
 でもその前に、シャトルの乗員を収容して下さいね?』
ルリルリだ。しかし、後ろには信じられないメンバーがいる。
ミスマル=ユリカを筆頭にナデシコに乗っていたときのメンバーが勢揃いしている上に、見たことのない薄桃色の髪の女の子とハーリーがいた。
 
 
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ヤバッ最終章おわらんかった。
よって、続きます。