時の流れに after story
 
『ダブル』とは関係ありません。
 
 
「…やっぱり、やるんですか?これ」
「やらなきゃダメだよ、ルリちゃん」
「アキトさん、代役お願いします。私は説明しなければなりませんので」
「この格好でどうしろっていうのさ」
俺の格好はいつも通りの戦闘服。この格好で『なぜなにナデシコ』なんて出来るわけがない。
「仕方ありませんね。ホシノ少佐、お姉さん役をお願いします」
「分かりました」
俺の目の前で、ルリちゃん’sが会話している。何度見ても異様な光景だな。
 
「3・2・1…ドカーン!」
今、ナデシコCの食堂にはナデシコCとナデシコの主要クルーが勢揃いしている。全く、珍妙な光景だ。
「『なぜなにナデシコ』こんにちは、お久しぶり、初めましてナデシコメインオペレーターのホシノ=ルリです。
 ここは本来、そこに居られるイネスさんのコーナーなのですが、戦艦1隻ジャンプさせてお疲れのようなので私が代役をします。
 まず、私達についてですが、時間軸から見れば過去、しかしこことは全く別の世界から来た人間です。
 まあ、元々はここと同じように火星の後継者の反乱が起きそれを集結させた後の世界から、私とハーリー君サブロウタさん、そして、
 アキトさんとラピスがボソンジャンプの事故で過去に跳んでしまったため、世界が分岐してしまったわけです。
 その世界でボソンジャンプを実行したらジャンプイメージの入力ミスによって、ここに出てしまったという訳なんです」
「質問、よろしいかしら?」
「なんですか?イネスさん」
「あなた達が私達に力を貸してくれるわけは何?」
「繰り返したくないんですよ。私達に起こった悲劇を。ここの世界は私達が現れるまで、私が体験した世界と全く同じように流れていました。
 そこに我々が介入することによってこの世界だけでも救えるのならと考えただけです」
「それによって、あなた達に変化が起きたらどうするの?」
「心配ありませんよ、過去を変えるならその可能性も考えなければなりませんが、私達が変えようとしているのは未来なんですから。
 それに過去、イネスさんは遺跡には時間と空間の区別がないといいましたよね?だとすれば、私達がここに来てしまったのは、遺跡の意志、
 すなわち遺跡と強制的に融合させられているユリカさんの意志だと考えることは出来ないでしょうか?」
「まあ、そういう考えも成立するわね」
「…あの、質問なんですが」
「なんですか?ホシノ少佐」
「イネスさんって死んだハズじゃなかったんですか?」
この質問はナデシコCのクルーにとって当然のことだった。
『それはボクが説明しよう』
楽屋でステージの準備に余念のないはずのネルガル会長アカツキ=ナガレがウィンドウに現れた。
「あっ、落ち目のスケコマシ」
『酷いね、いつものことながら。…いやぁ、艦長もテンカワくんもさらわれちゃったんでねぇ、最も有効な手段として戸籍上死んでもらったのさ』
このアカツキの説明にルリちゃん少佐の顔が険しくなる。
「いったい、アカツキさんって、良い者なんですか悪者なんですか?」
ルリちゃんから聞いていたとおり、アカツキを糾弾するルリちゃん少佐。
説明しようとしたアカツキに他のところから通信が入る。
『あ!キャッチが入った。んじゃ後はヨロシクー』
そう言い残して落ち目のスケコマシことアカツキ=ナガレは消えた。
「アカツキさん?あれはいったいどういうことです?」
千沙ちゃんが微笑を浮かべながらアカツキを問いただす。
「い、イヤだなー千沙くん、そりゃ昔はそんな風に呼ばれていた時期もあったけど今はそんなことはないよ。ボクには君一人さ」
「本当ですか?」
やっと素直になったなアカツキ。
食堂の一番後ろで話す彼等に注意を向けている人間はいなかった。
 
この話はナデシコクルーの視点で描かれていますので、メグミ=レイナード達が活躍するコンサートのシーンはありません。
ナデシコのクルーが絡まないシーンは劇場版と同じなので面白くありません。
 
プロトタイプナデシコC改め新ナデシコのブリッジに戻った私達にユリカさんから声が掛かりました。
「アキトをはじめとするパイロットの皆さんは格納庫のエステで待機。ブリッジクルーは総員持ち場について下さい。
 ナデシコCのジャンプに合わせてこちらもジャンプします。ジャンプアウト地点で接触しないように気を付けて下さい」
久々に見せるユリカさんの本気モードそれも全開です。そこで一呼吸置くと、
「ナデシコCのホシノ少佐に伝えておいて下さい」
そう言うと艦長席に着きました。
艦長の言葉をナデシコCに伝えるメグミさん。
それと平行して私とラピス、ハーリー君やサブロウタさんが最終チェックをしていきます。
「光学障壁展開、通信回線閉鎖、生活ブロック準備完了」
「エネルギー系統,OK!」
「艦内警戒態勢、パターンBへ」
「フィールド出力も異常なし。そのほかまとめてオールOK!」
「フェルミオン=ボソン変換順調」
「艦内異常なし」
「レベル上昇中、6,7,8」
私達は艦長の方を振り向きます。
「ジャンプします」
一足先にジャンプしているナデシコCに続いてジャンプしました。
 
「ルリちゃんとナデシコCが合流したそうよ」
「勝ったな」
「ええ、あの娘とオモイカネのシステムが一つになったらナデシコは無敵になる」
「俺達の実戦データが役に立ったか」
「やっぱり行くの?」
「ああ、この決着だけは俺が付ける。これ以上あいつらに手助けされてはたまらんからな」
ラピスちゃんがテンカワくんの方に顔を向けた。
「そうね、みんなも待ってるしね」
「補給、ありがとう」
「決着を付けたら、どうするの?」
私は堪らず口にした。
「これ以上、みんなに迷惑を掛けるつもりはない」
そう、行ってしまうのね。私には俯くことしかできなかった。
「行ってくる」
そう言い残してテンカワくんはラピスちゃんを伴ってユーチャリスに乗り込んだ。
…今、最後に『行ってくる』そう言ったわよね。
「テンカワくん、自分の言葉に責任、持ちなさいよ」
私はそう言い残してドックを出る。
 
この場面のみ『火星の後継者』の視点で描かれています。
ヒサゴプランセントラルポイント「イワト」つまり『火星の後継者』の本拠地
「もうすぐですな、閣下」
「うむ、新たなる秩序が…始まる」
やはり、組織のトップがどっしりとしていてくれると、従う側としては非常に助かる。
艦長の意見に従って統合軍から出奔した甲斐があったというものだ。
閣下からの指示で何故か機動兵器は無線を閉鎖してスタンドアローンだ。
現在、こちらからの指示は全て発光信号で行っている。
『我が基地上空にボソン反応。2つ』
戦場から帰還する兵士達なら、ジャンプルームにジャンプアウトするはず。
指令室全体に緊張が走った。
『哨戒機からの映像、ナデシコ級戦艦です』
ナデシコ:木連出身の軍人にとって最も忌み嫌われる戦艦。
あれさえいなければ、新たなる秩序は4年前に成立していたはずなのに。
 
「ターミナルコロニー「イワト」よりボソンアウト」
「相転移エンジン、異常なし」
「艦内警戒態勢パターンCに移行して下さい。ハーリーくん、ナデシコCに連絡、『これより火星の後継者に対してシステムのハッキングを仕掛けます』」
「了解」
ハーリーくんが連絡するや当のナデシコC、艦長自らから連絡が入ります。
「システムハッキング、サポートをお願いします」
その瞬間から始まるハッキング。しかし、サポートに回っているのはホシノ少佐、でもそれも当然のこと。
向こうは少佐一人がハッキング中、それに対してこちらは艦をハーリーくんに任せて私とラピスの2人掛かり。
しかし、
「ルリ、機動兵器がスタンドアローンでハッキングできない」
「分かりました。機動兵器はアキトさん達に任せましょう。ラピス、連絡を」
「うん」(アキト、機動兵器がスタンドアローンでハッキングできないから直接たたいて)
『エステバリス隊、発進するぞ!』
そう言い残してアキトさんを先頭にナデシコ所属のエステバリス隊18機が発進しました。
2度目ですが全機が発進するにはものすごい時間が掛かります。
 
テンカワくんに続いて2番目がボクの順番だ。
「こちらアカツキ!『ジャッジ』発進する!」
グラヴィティブラストの左右に作られたカタパルトデッキの右側から射出される。
左側からはほぼ同時に千沙くんが専用機『雷』で発進される。
互いに1番機ということになってしまった。
テンカワくんと北斗くんの闘いに誰も近づけなかったように、彼等の闘いは他人を寄せ付けない雰囲気がある。
だから、ボク達通常のエステバリス隊は彼等3人から離れたところで戦闘をすることになるわけだが、
敵も死ぬのはイヤなようで僕らの方に向かってくる。ボクと千沙くんは一応隊長なわけで、それぞれの部隊に指示を出しながらもボクは千沙くんに襲いかかる敵を排除している。
『アカツキさん、ボソン反応が7つ出ましたが、歴史通りあの人に任せて下さい』
「了解!でも、ルリくん『六連』も任せちゃっていいのかい?」
『それらはナデシコCのエステバリス隊に任せて下さい』
 
今、俺の目の前には北辰が駆る『夜天光』とその部下の乗る『六連』がならんでいる。
俺とユリカの旅行の邪魔をした上に、自己中心的な指導者のために世界に混乱を起こした『火星の後継者』のA級ジャンパー誘拐の実行部隊。
此奴らさえいなければ……。
そう考えただけで俺の顔にはナノマシンラインが浮かび上がっているだろう。
「ここで決着を付けてやる」
俺の実力と北辰の実力に大差はないはずだ。
『フッ、どんなに猛ろうとも所詮は試験体。再び戻るがよい』
奴の言葉に俺の方から仕掛ける。が、『夜天光』はおろか『六連』にすらかなわない。
(何故だ。ブラックサレナは整備されて調子は完璧。それなのに何故?)
『所詮は試験体、貴様の動きなどカメより遅いわ』
『夜天光』の放った錫杖の一撃がブラックサレナの動きを止めた。
 
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北辰にかなわないアキトのブラックサレナ。
今後の展開は未定。