時の流れに after story
 
『ダブル』とは関係ありません。
 
イネスさんの処置によって遺跡と融合されていたユリカさんが分離され、目を開けました。
「あれ?・・・みんなぁ・・・みんな、老けたね」
老けるなんて失礼な。私は成長してるんです。
しかし、ユリカさんの視界に私は入っていないようです。
「よかったぁ、いつものボケだ」
ミナトさんが呟きましたが、みんな同じ気持ちのようです。
「私、ずっと夢見てた・・・アキト・・・アキトは何処?」
ユリカさんの視界にアキトさんはいませんでした。
 
「おい!何処に行くつもりだ?」
「何処に行こうが俺の勝手だ」
「何度も言わせるな。俺達が今こうなったのは俺がユリカやルリちゃん達を避けていたせいで、
 俺達を追いかけてきたルリちゃんまで巻き込んでしまったんだぞ?
 今のルリちゃんの行動力は昔のユリカとは比べものにならないんだぞ?」
俺はDFSを構えながらあいつに交渉している。
第3者から見ればこれは交渉ではない。脅しだ。
しかし、これ以上不幸な人間を増やさないためにもこいつにはルリちゃん達のところに戻ってもらわなくてはならない。
幸いなことに、ラピスまで連れてきている。
「ルリちゃん!グラヴィティブラスト発射準備!目標、ユーチャリス!エネルギー充填でき次第発射!」
ルリちゃんに指示を出す。強引な方法であるがこれであいつは逃げる術を失う。
『了解しました。・・・・・・発射します』
プロトタイプナデシコCの秘密兵器『収束グラヴィティブラスト』がユーチャリスの相転移エンジンを消した。
「火星にいる戦艦の中でこの状況で動けるのはナデシコCと俺達のナデシコしかない。
 しかし、俺達の艦は既に許容量いっぱいの人員がいるんでな、悪いがお前とラピスを乗せる余裕がない。
 お前は、・・・ナデシコCに乗るしかないわけだ」
「お前にしては迂闊だな。俺にはまだブラックサレナがある。それに単独のジャンプも可能なんだぞ?」
「『ブロス』!ランチャー、スタンバイ!サレナの外装を吹き飛ばせ!」
『了解、アキト兄』
 
ズドオオオオオオオォォォォン
 
そんな音を残してブラックサレナは消え去った。
「・・・・・・『ブロス』?」
『ボ、ボクじゃないよ、アキト兄。『ディア』が・・・」
まあ、経過はどうあれあいつは帰るしかなくなったわけだ。
 
 
「ユリカさん、落ち着いて聞いて下さい。アキトさんは・・・」
「俺はここだ!」
「…「アキト(さん)(君)?!」…」
一斉に振り向いた私達の視線の先には視覚補助のゴーグルを外したアキトさんの姿が。
「アキトさん、どうして?」
「俺が帰るのがルリちゃんはそんなに意外かい?」
「・・・アキトさん、そんな言い方、酷いです」
「ゴメンね、ルリちゃん。でもね、この火星ってところは死んだハズの人間が再登場するところだからね。
 それにあいつらの仕業でサレナとユーチャリスが使えなくなってね。
 ・・・ユリカ、すまない。俺はいくらお前を助けるためとはいえ人を殺しすぎた。
 そんな俺にまだ皆の前に立つ資格があるのかどうか分からないが・・・」
「やっぱりアキトは私の王子様だね!!」
いったいこの発言はいくつの意味を持っていたのでしょうか。
嬉しさと懐かしさと呆れを伴った表情をしたアキトさんがユリカを抱き上げました。
俗に言う『お姫様抱っこ』です。・・・少し羨ましいですね。
「あっ!そうだ、一応あいつにお礼を言わなければな」
アキトさんが振り返りましたが・・・そこに彼のもう一人のアキトさんの姿はありませんでした。
ただ、火星大気圏を脱出するべく飛行するプロトタイプナデシコCの姿があるだけでした。
 
「各員、最終チェック、よろしく」
「光学障壁展開、通信回線閉鎖、生活ブロック準備完了」
「エネルギー系統,OK!」
「艦内警戒態勢、パターンBへ」
「フィールド出力も異常なし。そのほかまとめてオールOK!」
「フェルミオン=ボソン変換順調」
「艦内異常なし」
「レベル上昇中、6,7,8」
「ジャンプするぞ」
アキトさんの号令の元、ボソンジャンプに入ります。
プロトタイプナデシコCを返却するために地球ネルガル本社前に向けて。
 
 
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オリジナル戦艦解説
プロトタイプナデシコC
本来ユーチャリスから直接ナデシコCが開発されるはずであったが『極楽トンボ』会長のお遊びによって建造された特殊戦艦。
エンジンブロックが片側に2機つまり相転移エンジンを4機装備する。
また、試作兵器である収束グラヴィティブラストを装備する。
更に相転移砲も使用可能。
艦の形はナデシコCに類似する。
また、重力カタパルトはグラヴィティブラストの左右に1基ずつある。
居住ブロック等はブロック化されており、原型となったナデシコに酷似している。
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『近未来編』が終わりました。
またこれとは別の流れ『遠未来編』が存在します。