私がブリッジに付いたとき、過去の2度とは違ってそこは落ち着いていました。

「エステバリスを出して、攻撃もしくは囮にさせてその間に艦を出港させるのよ」

ユリカさんと同じ様な作戦を立て、指示を出しているのは・・・キノコです。

(キノコがまともなことを言うなんて)

正直信じられないような状況ですが、私は職務に戻ることにしました。

どうせ、キノコがまともなのも一時的なものでしょう。

「パイロットの乗艦は1週間後の予定です」

ほら、この一言で馬脚を現すはずです。

「パイロット用のIFSを持っている人は艦内にいないの?」

まだ、まともなことを言ってます。

「現在艦内でIFSを持っている人は各務 千沙さん、御剣 万葉さんと先ほど格納庫で足を捻挫されたヤマダ=ジ・・・」

そこで私の発言に割ってはいるヤマダさん。

「俺の名前はダイゴウジ=ガイだ」

「でも、乗艦者名簿ではヤマダ=ジロウになってますよ?」

「ヤマダ=ジロウは世を忍ぶ仮の名前、魂の名前はダイゴウジ=ガイ・・なんだよ。分かるかい、お嬢ちゃん?」

分かりません、分かりたくないですが・・・今度は簡単に死なないでくださいね。

アキトさんが悲しみますから。

               「私が艦長のミスマル=ユリカでぇ〜す・・ブイッ」

                             「あうぅ、誰も気が付いてくれないぃ」

そんな私の思考を邪魔したのはやっぱりキノコでした。

「各務でも御剣でもいいから、出撃しなさい」

少し余裕がなくなってきたのでしょうか?

そんなキノコに返したのは以外にも、ヤマダさんでした。

「ヘッ、慌てなさんな司令、じゃなくて今は副提督だったか?

 今1人、最高の奴が出撃したぜ?囮なんかやらせるのが惜しいほどの、あんたの知る最高のパイロットがよ」

ヤマダさんの言葉がさしているのはアキトさんの事だと思いますが、アキトさん貴男は何をしたんです?

「いったい誰が居るっていうのよ、あんた。

 いい加減なこと言ってると、承知しないわよ?」

「いい加減な事なんていわねぇよ。あんたを含めて、此処に居るエステバリス関係者が知る最高のパイロットが出撃するんだ。

 おい、通信士の姉ちゃん、出撃のためにエレベーターに乗ってるエステバリスに通信繋げられるかい?」

「正通信士のメグミ=レイナードです。・・・通信繋げます」

メグミさんの操作によって映し出されたのは・・・コロニー襲撃犯と呼ばれていた頃、そのままのアキトさんでした。

その途端、キノコと各務さんの表情が劇的に変化していきました。そう、驚愕の表情へと。

それはそうと、ヤマダさんを支えている御剣さんと副操舵士の各務さん、前のナデシコには乗っていませんでした。

いったい何者なんでしょうか?

「テ、テンカワ?」

「た、隊長!本当にご無事だったんですね?」

私の思考に上った2人の声がシンクロしています。

「お久しぶりですね副提督。

 ネルガル重工テストパイロット、テンカワ=アキト。

 機動戦艦ナデシコの出港までの時間を稼ぐため、囮として、出撃します。

 ・・・それより千沙ちゃん。あいつ、俺のこと何か言ってなかった?」

「無事だって言うのは聞いてましたが、詳しいことは何も。

 ほんっっっっっっっっとうにあの人ってば極楽トンボですよね(怒)」

「・・・(冷汗)落ち着こうよ、千沙ちゃん。

 あいつもそれなりに頑張ってるんだからさ」

「それは分かってるんです・・・分かってるんですけど」

「じゃあ、そろそろエレベーターが地上に着くから」

そう言ったアキトさんにキノコが声をかけました。

「テンカワ、あんたが出撃するんなら、作戦なんか破棄よ、破棄。

 囮なんて言わずに殲滅しなさい!」

「副提督ゥ、この一戦は戦艦ナデシコの初陣ですよ?

 いくら戦艦所有の戦力とは言え、機動兵器が敵を殲滅するわけにはいかないと思うんですけど」

そんなことを話している間に、エレベーターが地上に到着しました。

前回同様、一面見渡す限りのジョロとバッタ。

アキトさんで無ければ腰を抜かしても誰も攻めることが出来ないような光景です。

「アキトさん、ナデシコ出港までおよそ10分かかります。

 アキトさんの思ったように動いてください」

私はそれだけ言って、コミュニケのウィンドウを閉じました。

これ以上の通信はアキトさんの邪魔になりかねません。

 

機動戦艦ナデシコ『時の流れに』

『Dream』第1話 後編

 

「綺麗な機動ですな。流石はテンカワさん」

「・・・うむ」

アキトさんの機体はブラックサレナより一回りほど大きな機体でした。

それを華麗なと言っていい機動で敵の攻撃をかわし偶に撃墜しながら、アキトさんは動き回っています。

ただ、それを見つめるキノコとヤマダさんたちは落ち着いています。

そんなときでした。

絶望的な報告がオモイカネからあがってきたのは。

「艦長!大変です。相転移エンジンに異常発生。過負荷によりエンジンが停止します。

 それと・・・それにより重力波ビームが照射できません。

 エステバリスは軍の中継ポイントを会して重力波ビームを照射しているので

 ・・・・・・このままでは約3分で行動停止に陥ります」

絶望的です。いくらアキトさんと言えど、3分で全機を撃破できるはずもありません。

3分が過ぎて行動が停止すれば・・・。

「テンカワ、テンカワ、テンカワ、テンカワ、テンカワ、テンカワ、テンカワ」

ダメですね。ユリカさんはアキトさんの名前を聞いて記憶に検索をかけてます。

「メグミさん、パイロットのアキトさんに連絡をとってください」

「了解・・・テンカワさん、ナデシコで異常発生。相転移エンジンが停止しましたので出港できません。

 このままでは行動不能になってしまいます。退避してください」

それに返ってきたアキトさんの反応はブリッジにいたクルーの一部を驚愕させるものでした。

「この機体は小型ながら、相転移エンジンを搭載している。

 しかし、ナデシコが動けないとなると・・・少々心配だな。

 ・・・ん!?ナデシコが動けないって事はブリッジクルーは取り敢えずやることがないんだな?

 千沙ちゃん、万葉ちゃん出撃してくれないか?」

それを聞いた瞬間、当の2人が出口に向かって走り出します。

いつの間にか、ヤマダさんはブリッジ前部にある椅子に腰掛けられています。

 

エレベーターに私が乗り込むやその横に滑り込んでくる万葉。

「ふふっ、久々の出撃ね?万葉」

「火星でも見せなかった元優華部隊としての実力、見せて上げるとしますか?」

「いえ、今日の所はあくまで隊長、テンカワさんのサポートよ」

「それにしても、彼のことを隊長って呼ぶようになる日が来るとはね?」

「あの日、火星で決めたことでしょ?

 前回より上手に和平への道を進むために」

「そうだが、このままいくと私達が優人部隊と闘うことになるやも」

「その事は後で彼と話し合って決めましょう?今は・・・無人機を倒すのみ」

そして、格納庫に着いた私達を待っていたのはここがナデシコ?

と、我が耳を疑いたくなるような喧噪でした。

「更に2機、エステバリスの発進だぁ!カスタムフレームにレールカノンとラビットライフル。

 ナデシコが動けない以上、エステバリスが全戦力だぁ。

 野郎どもぉ。キリキリ動けぇ」

「「「うィ〜す!!」」」

「ウリバタケさぁん!エステバリス、準備できましたかぁ?」

万葉が掛けた声に返ってきたウリバタケさんは疑問符付きでした。

「なんでぇ、あんたらブリッジクルーじゃないのか?」

「元火星試験エステバリス隊所属、各務 千沙、副操舵士兼パイロットです」

「同隊所属、御剣 万葉、副通信士兼パイロット、よろしくお願いします」

「本当かよ?よぉ〜し、てめぇら、この2人がパイロットだそうだぁ。

 15秒でセットアップしろぉ!!」

「「うぃーす」」

 

私と千沙のエステバリス、火星で使用していた支援型のバージョンアップ型は今現在エレベータを使って地上に上昇中だ。

ガイの足の捻挫はそれほど酷いものではないとはいえ、今は大事をとって休ませている。

しかし、このころのガイはあれほど不死身ではなかったんだな。

いったい何があいつをあそこまでにしたのか。・・・まぁ、そんなことはもうどうでもいい。

今私はナデシコの乗組員として此処に居る。

そして、ガイがいて、ヒカルがいる。それだけでいい。

そしてこの機体も、嘗て乗っていた『風神皇』よりも既に長く乗っている。

 

ガコォォォン

 

エレベーターで上がってきたのは千沙ちゃんと万葉ちゃんの2機のエステバリス支援型カスタム。

しかも只のエステバリスじゃない。既にディアのプログラミングにより、バーストモード組み込み済みの逸品だ。

『隊長!お待たせしました。ナデシコは現在、オペレーターのルリちゃんの活躍によりなんとか復旧しましたが、

 当初の計画通りに海中へ抜けることが出来ません。

 垂直上昇するには此処に居る無人兵器が邪魔になります。

 副提督からの指示は私達だけでの敵機乙型、丙型の殲滅です』

「了解、だけどね千沙ちゃん、あいつらの正式名称はバッタとジョロだよ?」

『あ!すいません、つい昔の癖で』

昔の癖ね。

「よし、2人はこの場で全周囲のバッタ、ジョロを撃破してくれ!」

『隊長はどうされるんです?』

「俺は飛行形態で周囲にチューリップがないか見てくるよ!」

『了解です。隊長?リミッターはどうしますか?』

「まだ、見せるには早いと思うよ」

まだ、バーストモードを公開するには早すぎる。

「じゃあ、行ってくるから」

俺はそれだけ言い残して、その場を飛び立った。

無人兵器250機は元優華部隊の2人によって殲滅され、付近にあったチューリップは俺のブローディアによって殲滅された。

そして、俺達は垂直上昇してきたナデシコに帰艦した。

 

 

 

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<あとがき>

アキト:やっと終わったな第1話。

    このころは原作『時の流れに』すら短かったというのに。

ルリ :今書いたらどうなるか分かりませんよ?

アキト:まぁ、それはおいといて、どうだった?第1話。

ルリ :信じられません。まともなキノコなんて。

アキト:火星でエステバリスの試験部隊にいたようだよ。

    そこで、多くのパイロットに出会って変わったみたいなんだ。

ルリ :それにしても信じられないんです。

    それにこの話はどのように進んで行くんです?

アキト:基本的にはアキト×ルリだそうだけど。

    他の3人がどう絡んでいくのかは不明。

    ただ、『時の流れに』の様な状態にはならないらしい。

    っていうかそんなに多くのキャラクターを作者が書き分けられない。

ルリ :それが過去の2作を放っておいてこの作品を書き始めた理由ですからね。

アキト:ルリちゃん、結構きついこと言うね?

ルリ :事実じゃないですか。

アキト:このままいくと、収拾がつかなくなるのでここら辺でお開きにぃ。

 

 

 

代理人の感想

いきなりブローディアかい(笑)。

さらなるパワーゲームの予感ですなこりは。