機動戦艦ナデシコ『時の流れに』

『Dream』第七話.温めの「冷たい方程式」・・・覚醒

 

 

『汝、なんのために強くなる?

 何を望んで力を手に入れようとする?』

夢の中なのだろう俺の目の前には長い黒髪の男性が立っている。

「俺のいるべき場所を守るため。

 俺が守ると決めた人を守るためだ!

 そんなことより貴男は誰だ」

『私の名は夜叉。

 やはり、お前なのだな。

 我が魂を引き継いでくれる存在は。

 そのお前に更なる力を与えよう。

 さあ、この剣を取れ!』

俺の目の前に突如出現したのは刀身が僅かに反り返った漆黒の鞘を持った刀だった。

「この剣は?」

『夜摩刀。我が一族に代々伝わってきた刀であったが私の代で潰えてしまった。

 本来あり得ないことだが、私の魂を受け継ぐお前に受け取って欲しいのだ。

 それと同時に、私が守ろうとしていたものもお前に受け継いで貰いたいのだ』

「それはいったい何なんです?」

『私には阿修羅という名の守ると約束した子供がいた。

 その子は守り抜くことが出来たわけだが、その過程で多くの仲間を失ってしまった。

 そして、お前のいるこの世界に私の嘗ての仲間も、そして仇敵も転生してきた。

 仇敵であったその男は既に前世の力を失っているが、前世同様に四天王と呼ばれる配下を従えている。

 私の嘗ての仲間もお前と同様、そろそろ覚醒の時を迎えよう。

 最後に我が世界に与えられた星見・・・予言を伝えよう。

 六星流れ落つる

 そは天に背く闇星なり

 紡がれし運命のさきがけに

 汝、自ら育むべし

 絶えたる血族の指し示すままに

 汝、赤子と共に発ちゆかん

 善悪定まらずともその赤子

 天界の運命の輪を回す

 六星集うは、天の取極なり

 されど闇の身許

 舞い降りたる者あり

 掌中に星の軌道を治め

 闇星、天星ともに操る

 その者我が『星宿』にも

 見定めるはかなわず

 汝の育みし紅蓮の炎

 全ての邪悪を焼きつくし

 総じて六星あらゆる他を圧し

 制するはあたわず

 そして・・・

 汝ら天を滅ぼす『破』と成らん

 

 これが予言の全てだった。

 お前が我と同様、仲間を集めることが出来ればそれ以降は過去に準えることで事態は速やかに展開しよう。

 さて、そろそろ現実に目覚めるときが来たようだな。

 お前がこれからどう戦うのかお前の中からじっくりと見させて貰うことにしよう』

気が付けば・・・今回もやっぱり戦闘のまっただ中にいた。

俺は取りあえず頭を起こして周囲の状況を確認する。

俺の両脇にはイネスさんと万葉ちゃんが寝ている。

「万葉ちゃん、万葉ちゃん」

俺は取りあえず夢の内容を封印することにした。

「・・・あぁ、隊長?どうなったんです?私達」

「フィールドの出力不足のせいだと思うが多分艦内の殆ど全員が気絶しているはずだよ」

「そうですか・・・・・・隊長、ブリッジに向かいましょう。戦況を把握しないと」

「そうだね」

俺達は寝ているイネスさんをそのままにブリッジへと向かった。

 

「おはよう御座います、アキトさん、御剣さん」

「ああ、おはようルリちゃん」

「おはよう、ルリさん」

ナデシコは現在、フィールドを展開して戦線を後退中だ。

「ルリちゃん、艦内に非常警報を鳴らしてくれ。

 それと、ある程度の人員が起きたところでパイロットに出撃命令を。

 宇宙軍だけではこの数はきついだろうからね」

「了解しました」

「ジュンが起きるまでの指揮はルリちゃんに任せるよ。

 ・・・それじゃ、万葉ちゃん、俺達は格納庫に向かうとしようか」

「ハイ、隊長」

俺達が格納庫に向かう間中、艦内には非常警報が鳴り響いていた。

 

『アキト!作戦は?』

「敵機が多い上に戦線が広がりすぎている。各小隊散開して小隊ごとに迎撃に当たれ!」

『了解!』

俺とリョーコちゃん、イツキちゃんの第1小隊。

ガイとヒカルちゃん、万葉ちゃんの第2小隊。

イズミさんと千沙ちゃんの支援小隊以外は急増の小隊だ。

高杉と三姫ちゃんの突撃小隊。

京子ちゃん、飛厘ちゃん、零夜ちゃんと謎のパイロットによる遊撃小隊がいる。

「と、その前に、千沙ちゃん!9時の方向に向けてレールカノン3連射!!」

『了解・・・で?隊長、あっちに何がいたんです?』

レールカノンを撃った後で俺にそう聞く千沙ちゃん。

「ん?何時出てくるのが一番格好がいいのか見計らってた極楽トンボ」

『ええっ?!直撃したらマズイじゃないですか』

「大丈夫だよ。避けたみたいだから」

『そうですか』

「さ!攻撃攻撃!」

俺達は攻撃を再開した。

 

 

「後方よりエステバリスが一機接近中です。

 今から照合します。

 これは・・・連合軍の所属パイロットですね」

ホシノくんの言葉とほぼ同時にナデシコの脇を通過してエステバリス隊の方に向かう白銀のエステバリス。

「ま、まさか『白銀の戦乙女』なのか!!」

ボクの叫びに反応したのはムネタケ副提督だった。

「な、何者なのよ。

 その『白銀の戦乙女』っていうのは?」

「連合軍の西欧方面所属の凄腕パイロットですよ。

 年齢は・・・確かテンカワ達と変わらなかったはずです。

 一年ほど前に突如現れ、西欧方面においてエースの地位を手に入れた人物ですよ」

ボクの解説に応えた副提督の声は先ほどとは違って落ち着いたものだった。

「西欧方面軍?白銀の?・・・テンカワ、お姫様は待ちきれなくなったみたいよ」

通信も開いていない状態でテンカワに呼びかける副提督。

独り言が多くなるのは老化の現れですよ?

 

『だぁぁぁ、まどろっこしい。

 アキト!!作戦の変更を要求するぜ!!』

「了解、パイロットも増えたことだし、

 ナデシコ隊の復活を祝って派手に決めるとしますか!!」

『アキトくん?ナデシコ隊の復活って?』

イツキちゃんの問いに応える答えは決まっていた。

「火星での・・・って事さ。

 俺が遊撃するから、3人とも!!暴れていいぞ!」

彼女がナデシコの横を通過したのはおそらく、副提督への挨拶のためだろう。

『アキトさん、気付いていたんですね?』

「まぁね、真似したくても出来ないカラーリングしてるし、トンボも来てるみたいだし」

『トンボは酷すぎないかい?テンカワくん。

 それに、あの歓迎の祝砲にしても』

「ああ、あれは俺じゃないよ。千沙ちゃんからの愛情表現だって」

『た、隊長!?なんて事言うんですか!?戦闘中の私語は厳禁じゃ無かったんですか?』

『まぁまぁ、千沙。堅いことは言いっこなしで行こうよ。

 さっきもテンカワくんが言ったように今回はリ・オープンフェアなんだから』

「まぁ、そう言うことで、各員!今回は堅いことは言わない。

 楽しんで戦闘するように!」

『楽しんで戦闘なんて、アキト君って時々、面白いこと言うよね?』

ジュンとルリちゃんの判断でナデシコは既にコスモスに収容されている。

俺のブローディアも今回は機動性を重視したため、エステバリス隊への重力波の供給は出来ない。

しかし、そこは俺が鍛え上げた部隊。

限定された戦闘宙域の中で確実に戦果を挙げている。

アリサちゃんやリョーコちゃん、ガイが一瞬エネルギー供給範囲外に出る。

次の瞬間には範囲内に戻っているのだが、単純なプログラミングしかされていない無人兵器は面白いように釣れる。

そこを他のパイロットが狙撃する。

そんな楽勝の戦闘だが、敵の数が多ければそれなりに苦戦する。

 

「さて、試してみるか」

発生させていないDFSに左手を添え、鞘から抜き出すように動かす。

そのような過程を経て発生したDFSはその発生と共に蛍火が舞っていた。

『『アキトォ!』』

北斗、アリサちゃん、リョーコちゃんとイツキちゃんの声が

『テンカワくん!』

舞歌さんの声が響く。

「これが俺の新しい剣・・・。

 無人機共、心を持たないお前らに使うのは少々もったいないが・・・『夜魔天狼剣』!!」

皆の声を聞きながら・・・俺は戦闘を再開した。

 

「ははっ、アキトが夜叉王だったとはな。

 となると、オレ以外の『六星』って連中も近くにいるのかもしれないな。

 さーて、オレもやるとするか」

その瞬間、オレの持つ日本刀風のDFSが幅の広い比較的短い剣に変化する。

「へっ、これがDFS版の竜牙刀か。

 やってやるぜ!海王陣!!」

剣から発生した不思議な力が無人兵器共を飲み込んでいく。

「へへっ、これでアリサやイツキのヤツに一歩リードってところだな」

 

「まさか、アキトさんだけならまだしも、リョーコまでとは」

私は唯一の武器である、ランスを腰に戻すと、両腕を挙げる。

「私は皆さんと違って剣を持ちません。

 ですが、行きますよ!『迦楼羅、飛天翔』!!

 リョーコ、1人だけ先には行かせませんよ」

 

「あーあ、私だけ一歩リードできると思ったのに」

アリサ同様、レールカノンを腰に戻してディストーションフィールドをエステバリスの指先に収束させる。

『双月葉』!!リョーコ!アリサ!負けませんよ!」

三日月状の収束したフィールドを投げ飛ばす。

 

そして・・・彼女も動き出した。

 

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<なかがき>

ルリ :これはいったい何なんでしょうか?

アキト:作者が残していったメモ書きによると

    『聖伝(リグ・ヴェーダ)』っていうマンガとの融合だとか。

ルリ :作者はいったい何を考えているんでしょうか?

    第一キャラの数は合わないし、あっちは全滅系だし。

アキト:更にメモ書きによると、木連の状況とか、

    オレの最大の敵が北辰であるところなんかが似ていたらしいけど。

    あの作品との違いは持国天が『六星』側にいることらしい。

ルリ :持国天てなんです?

アキト:その正体はここには書いてないけど。

ルリ :まさか・・・決めてないとか?

アキト:いや、ここには『後編』で明かすって書いてあるよ。

ルリ :そうですか。

    ではさっさと『後編』にいってしまいましょう。

 

 

代理人の感想

・・・・・いきなり前世物ですか(笑)。

ちなみに元ネタは聞いたこともないのでその内解説をお願いしたいと思います。(爆)