輝ける未来を

第一話






「ここは・・どこだ?」
黒髪で、黒のバイザーと黒マントを着けた青年、テンカワアキトの目の前にあるのは小さな教会だった。見渡す限りそれ以外は何も見あたらない。
「確か、俺はユーチャリスの艦橋にいて、追ってきたルリを振り切ろうとジャンプしようとした時にアンカーが打ちこまれてそのままナデシコと共にランダムジャンプしたんだよな。・・・ラピス!どこだ!!!」
教会の周りをぐるりと一回りして呼びかけてみるがラピスは見当たらない。
「まさか、別の場所に飛ばされたのか。」
一瞬、頭に浮かんだ最悪の考えを打ち消すように頭を振りとりあえず教会の中に入ろうとドアに手をかけると、あっけなく開いた。
「鍵は、掛かってないようだな。すまない誰かいないか。」
教会の中は静まり返り、アキトの声ばかりが空しく響くばかりだった。
「誰もいないみたいだな」
小さくため息をつき近くの椅子に腰を下ろし、しばらくの間十字架を眺めていた。
「何で俺はこんなところにいるんだろうな・・・ふっ、神は俺にここで懺悔でもしろというのか」
「そうではありません。」
「誰だ!!!」
どこからか聞こえてくる女性の声に立ち上がり叫び返す
「ごめんなさい。私には答えたくても名前が無いのです。」
「・・・なら姿をあらわせ」
「私はあなたの後ろにいますが?」
後ろを振り返ると二十代ぐらいの女性が立っていた。髪は長く地面に届きそうで肌の色は白く文句なしの美人だった。
「初めましてテンカワアキトさん。」
(馬鹿な!気配に気がつかなかった・・・いや、気配すら感じなかった)
どんなに上手く消そうとも完全に消すのは普通の人間にはまず不可能だ。まして彼女の姿を見るからに何か武術をしているとは到底思えない。
「あの、どうかなさいましたか?」
先ほどから何もしゃべらず黙り込んでいるアキトに不安そうに聞いてきた。
「・・・いや、何でもない。」
「そうですか、どこかお体の具合でも悪いのかと思いました。」
安心したとばかりにため息をついた
「それより、ここはどこだ?」
「ここは、時間の狭間と言います。もっとも、そう言っているのは私だけですが。」
「時間の狭間だと?」
聞いたこともない言葉に少し戸惑った
「簡単に言うならば、ランダムジャンプした者の中でも天文学的な数字でしかたどり着けないところです。たどり着けた人はまだ五人なのです。あなたを含めて。」
「その中にルリやラピスは・・・」
彼女は静かに首を横に振った。
(そうか・・・)
「でも、彼女たちがどこに飛ばされたかは、解りますよ。」
「本当か!!」
「はい。彼女たちは過去へ、2196年に飛ばされていることが判明しています。」
「よかった・・・」
アキトの体から力が抜け再び椅子に座った
「実は貴方にお願いがあるのです。・・あの子を、琥珀を助けてくださいませんか?」
「琥珀?誰だその子は?」
初めて聞く名前に質問で返した。
「琥珀はネルガルにルリやラピスをつくる前に実験的につくられ、その後はジャンプの実験台にされ、ここに飛ばされた可哀想な子。先ほど言った五人の中で最初にここにたどり着いた子です。」
「なっ・・」
アキトもネルガルの人体実験のことは聞いていたがまさかそこまで悲惨のものとは知らず、怒りに体が震え、彼女の言葉を黙って聞いた。
「私が診たとき彼女の体は度重なる人体実験により目を覆いたくなるぐらいぼろぼろで、この先何年生きれるかわかりませんでしたが、月日をかけ私が持てる最高の技術の治療を行い、今ではもう良くなりました。」
「それなら、俺に何を助けろと言うのだ?」
「はい。実は私はもう長い間、そう、まるで永遠とも思われる間生きてきましたが、だからと言って寿命が無いわけではありません。」
「・・・つまり、命がつきかけているという訳だな。」
「そうです。そして、私の命が尽きると同時にこの空間も消滅します。そうするとこのままではあの子は私と一緒に消滅してしまいます。でもそれだけは防ぎたかった。そのとき・・・」
「俺がここにたどりついたというわけか・・」
「はい。貴方がこの空間に現れた時誠に勝手ながら貴方の情報を調べさしてもらいました。・・・あの子を引き取ってくれませんか。貴方ならきっとあの子を幸せにしてくれると思う、いや確信しています。」
(そんなことを言われてもな・・)
いきなりな話しにアキトは返答に困った。彼女ががどんなにその子のことを思っているかは良く分かった。
「だが、俺は罪のない人々を殺した殺人鬼だ。俺の手がどんなに血にまみれているのは知っているのだろう?こんな俺がその子を引き取ったとしても幸せにしてあげることができるとは思えない。」
「そんなことありません。」
彼女は即座に否定した
「確かにあなたは許されない罪を犯したかもしれません。でも、そんなこと関係ありません。わたしは貴方にお願いしたいんです。」
「どうして俺にそこまでこだわるんだ?」
「私には、あなたの中にある優しさがわかります。輝くほど強い純粋な優しさが。だからあなたにお願いしているのです」
彼女の声から意志の強さが、純粋な思いがつたわってくる。
「・・まずはその子と会わしてくれないか?引き取るかはその後だ。」
「分かりました。琥珀、入ってきて。」
前方にあったドアが開きその中から琥珀色の髪で、マシンチャイルドの証である金色の瞳の少女が入ってきて、アキトの前に立った。
「初めまして、テンカワさん。」
彼女はチョコンと頭を下げた。
「俺はアキトで良い。・・君が琥珀ちゃんか?」
「はい。」
アキトの問いに笑顔で答えた
「単刀直入に聞く。君はどうしたい?」
「私はアキトさんについて行きます。」
彼女からは迷いやためらいなどは感じられない。
「俺は、大量殺人鬼だぞ。」
「知っています。でもそんなこと気にしません。」
しばらく二人は見詰め合った。二人のそれぞれの思いがこもった瞳は言葉で表すよりも心の内を表していた。
「・・分かった。この子を引き取ろう。」
「ありがとうございます!!では、私ができる精一杯のお礼です。アキトさん腕を出してください。」
「何をする気だ?」
いぶかしながらも彼女の言葉に従い腕を出す。
「これを注射します。」
どこかに隠し持っていた注射器をアキトに注射する
「・・何をいれた。」
「アキトさんバイザーを取ってください。」
言われたとうりにバイザーを取ってみる。
「・・見える!!目が見える!!!」
「貴方の中に入れられていたナノマシン全てを統括するナノマシンを入れました。今のアキトさんは全てのナノマシンの恩恵を受けもはや人をはるかに超えたテンカワアキトHM(ハイパーモード)です!!!」
(ハイパーモードって何なんだ?)
アキトは心の中で突っ込んだ
「今のアキトさんなら素手で猛獣も倒せます。」
「・・それは、凄いな。」
何とかそれだけを言うことが出来た。
「まあ、当分の間は慣れないでしょうが頑張ってください。それで、次ですが、アキトさんが一番戻りたい時まで貴方を戻すことが出来ます。・・・貴方は何時まで戻りたいですか?」
「本当か!!!」
「本当です。」
「・・だったら決まっている。幸せだったあの頃に、ナデシコAの頃に戻りたい。」
「分かりました。・・・それともう一つ、アキトさんに手助けするようにサポートをつけます。」
アキトと琥珀を白い光が包んでいく。
「すまない。何から何までおせわになった。」
「お母さん・・」
「琥珀、私は貴方と会えて、貴方と暮らすことが出来てとても幸せでしたよ。これから先にどんなに苦しいことや悲しいことがあるか分からないけど頑張ってね。」
「うん。」
「アキトさん。くれぐれも琥珀のことをよろしくお願いします。」
「わかった。必ず幸せにしてみせる。」
白い光が消え去ると二人の姿は消えていた。
「・・さて、サポートはあの人に頼みましょうか。」
そう言うと壁に備えてつけていたボタンを押した
そしてきっかり三分後、教会の中はボース粒子の輝きで照らされた
「天河 明ただいま到着。」
光の中から現れたのは長い髪を紐で縛り眼鏡を掛けた青年だった。
「相変わらず、速いですね。」
「それが俺の特技ですからね。・・ところで今日は何の用事ですか?」
「これが私から貴方に出す最後の任務です。別世界の貴方の先祖であるテンカワアキトさんのサポートをお願いします。」
「装備は?」
「A級装備まで許可します。」
「イレギュラーは何人まで?」
「制限は無し。なるべく多いほうが良いでしょう。」
彼はしばらくの間沈黙し天井を眺めた。
「ではまず、あのテロ事件まで行きテンカワ夫婦を助けた後にジャンプしてアキトさんと合流することにします。」
再び彼の周りに粒子が包んでいく
「今まで多くの任務をこなしてくれてありがとうございました。」
「最初に助けられたのはこちらですから、俺はその御恩に報いたまでです。・・それよりもこれが最後になると思うとちょっと残念ですね。貴女のような人はそう滅多にいませんから。」
明の答えに嬉しそうでそしてどこか悲しそうな笑みを浮かべた。
「相変わらずお世辞がお上手ですね。」
「お世辞じゃあないんですがね。」
明も同じような笑みを浮かべた
「・・これ以上ここにいたら別れが辛くなりそうなんでもうそろそろ行きますね。」
「・・御武運を。」
そして明もまた粒子と共に姿を消した。
時は再び流れ出す。はたして彼を待ちうけているのは悲劇かそれとも喜劇か。それは神のみ知っている。






後書き
初めましてakiraです。
何かこのホームページを見つけて早数ヶ月。
ついに書いてしまいました。
これからもがんばって書いていきます。
もしお暇があれば感想などをいただけたら幸いです。
それでは、また次回。






代理人の感想

いや、ここはやはり一見逆行ものの主人公最強主義と見せかけて実はコメディ!

 

それもルリ・ラピス・琥珀、

三大妖精地球最期の決戦

とか銘打って血で血を洗い、嫉妬壊れ謀略が入り乱れる

デンジャラス・ラブコメディと言うのはッ!

 

んで、全然原因が理解できずにおろおろする「苦労の王子」アキト君と

先祖のフォロー(尻拭い、ともいう(核爆))に健気に駆け回る明くんの奮闘を描くサイドストーリー、

「子孫は辛いよ」も同時上映!

ちなみにアキトが寅で明がさくら(核爆)。

 

 

追伸

琥珀って策士の素質あり、ですか(核爆)?