輝ける未来を
第七話

アキトがナデシコから飛び立って早一時間、途中でジャンプと言う反則技を使い

さっさとサツキミドリ2号に到着していた。

「やっぱり、ジャンプは便利だなあ。」

サレナを格納庫に預けた後やる事がなくなったアキトはサツキミドリの中を徘徊していた。

「・・・・・暇だな。」

そんな武道家にあるまじき隙だらけのアキトに突然何者かが背後から抱きつき目隠しをする。

「うわっ、何だ。」

「さて、私は誰でしょうか?正解したらもれなくキスを進呈します。」

「・・・・・と言うよりも何でここに居るんだ、琥珀?」

目隠ししてた手を解き、振り向いた先には、本来ならナデシコに居るはずの自分の妻の

琥珀が居た。

「正解です。それでは景品のキスを進呈。」

そう言い終えるとアキトの顔を両手で挟むとキスをする。

その行為に一瞬戸惑ったがすぐに気を取りなおした。

「それで、どうしてここに居るんだ。」

「もちろん、浮気していないか見張るためです。」

「・・・・浮気すると思っているのか?」

「もちろん。」

きっぱりと言いきられちょっぴりブルーになるアキトだった。

「なあ、ナデシコの方は良いのか?居なくなって皆心配しているんじゃあ・・・・」

「それなら大丈夫、明さんが何とかしてくれるっていっていました。」

「今回のも明が仕組んでいたのか。」

「・・・・・まあそれは置いておいて、これからどうするんですか?」

「(置いとくなよ)・・・・・まだ何も予定を立ててないんだ。」

「だったら、あそこに行ってみませんか。」

指差した先にはレンガ作りでおちついた雰囲気の喫茶店があった。

「あそこの喫茶店、パフェが美味しいって有名なんですよ。」

「それも明から聞いたのか?」

「いいえ、これは私がオモイカネで事前に調べたんです。それよりも、速く」

子供のようにはしゃぎながら先に行く琥珀を苦笑しながら後について行った。





アキト達がお店に入ってみるとそこは多くのカップルでごったがえしていた。

「座るところは、無いかもしれないかもな・・・・」

「あなた、あそこに相席させてもらいましょう。」

琥珀が指差した先にはちょうど二人分の席が空いていて、その向かいには一組のカップルが座っていた。

いや、カップルと言うには二人の年があまりにもかけ離れている。

男は容姿は整っていて、背は座っているため正確にはわからないがアキトより

高い事はわかる。それに比べ少女のほうは背は男の半分にも満たない。

だが、その少女は普通ではありえない髪と瞳の色をしていた。桃白色の髪の色と金色の瞳を。

「・・・・・ラピス!?」

アキトの声が聞こえたのかあるいは偶然なのか少女とアキトの視線があった。

その瞬間少女は驚きの表情を浮かべたが、すぐに笑みに変わり

隣に座っていた男に何か言った後こちらに駆け寄ってきた。

「アキト!!!」

駆け寄ってくるとそのままアキトに跳びついた。

「本当に、本当にラピスなのか!?」

「そうだよ、アキトのラピスだよ。」

『アキトの』の部分を妙に力強く大きな声で言うラピス。

その瞬間、その場にいた客からの視線がアキトに集中する。

その視線はやけに冷たく感じられた。

だが、アキトにとって客から浴びせられる冷たい視線よりも、

隣でやけに爽やかな笑みを浮かべている妻のほうが怖かった。

「なあラピス、ちょっと離れてくれなかな。(汗)」

「いや。(0.1秒)」

「そこを何とか・・・・・と言うかお願い。(涙)」

琥珀からダイレクトに殺意が伝わってくる。これ以上浴びていると本気で心臓に悪い。

「・・・・・わかった。」

今にも泣き出しそうなアキトを見てしぶしぶ離れる。

「なあラピス、相席さしてもらって良いか?」

「うん、いいよ。」

「じゃあ、行こうか琥珀。」

隣で未だに殺気を放っている琥珀にそう呼びかけてみるが返事は無い。

「・・・・・なあ?」

「・・・・・・・・・・・・・(怒)」

「とっ、とりあえずいこうか。」

琥珀の手を取り先導するラピスの後について席まで移動する。

「すみません、相席させて頂いて良いですか?」

「ああ、かまわないよ。テンカワアキト君。」

「何故、俺の名前を知っている。」

自分の名前を知っていることに驚き、とっさに構えるアキト。、

だが相手の男は笑みを浮かべたまま動こうとしない。

「そう構えなくて良いよ、君のことを知っているのは

 ラピスから耳にたこが出来るくらい聞いていたからさ。」

隣にいるラピスが頷くのを見てとりあえず彼のいうことを信じ構えをとく。

「どうしてあなたはラピスと一緒にいるんだ。」

「・・・・・少し話そうか。時間は大丈夫?」

「心配ない。どうせ暇だから。」

「なら、まず座って何か注文するといいよ。」

アキトと琥珀は頷き、席に座り注文を済まし、来るのを待つ。

その間にその男とラピスは目の前にあるパフェを食べきった。

それから暫くして注文した物、アキトはコーヒー、琥珀はこの店特製の

スペシャルジャンボパフェが運ばれてくる。

ちなみにスペシャルジャンボパフェとは普通のパフェ四人前の量である

「さて、まずは自己紹介をさせてもらおうかな。俺の名前は北夜(ホクヤ)。優人部隊に所属している者さ。」

「・・・・・そんな重大発言ををこんな所でさらりと言って良いのか?」

「別に問題無いと思うよ。歴史の真実、一般の人達は知らされて無いみたいだし。」

「・・・・・それもそうか。」

「で、趣味と特技は料理をすることかな。」

「北夜の料理、美味しいんだよ。そこら辺の料理人が束になってかかって来ても太刀打ちできないよ、きっと。」

「ラピス、いくらなんでも誉め過ぎだって。俺もまだまだ修業の途中だよ。」

と言っている割に、彼の顔には笑みが浮かんでる。料理人として美味しいと言ってもらえるのが

最高の誉め言葉であるのだから嬉しくないわけが無い。

「それで、ここからが本題になるのだけど・・・・・」

北夜の顔から笑みが消え、声の音量を下げる。

「一年前だったかな、俺の親父の指揮の下である実験施設を襲ったんだ。

 内容は施設の破壊、及び研究者の拉致、そして・・・・・」

「被験者の強奪か。」

「そう言うこと。この時が最初の出会いだったな。本国に戻った後、研究者と一緒に

 ラボに連れていかれる予定だったんだけど、親父の進言で俺の家に引取られること

 になったんだ。で、今に至るわけなんだ。」

「そうか、北夜さんのお父さんには一度あってお礼を言わないといけないな。

 誰なんですかお父さんって?」

アキトがそう言うと、北夜とラピスは苦笑する。

「どうしたんですか二人そろって?」

「ううん、何でも無い。アキト、北夜のお父さんはねアキトがとても

 良く知っている人だよ。ねえ、北夜。」

「そうだね。良く知っていると思うよ。」

パーフ−パーフーパーフー

ドッガー―ン、ドッガー―ン、ドッガー―ン

この二人の会話に要領をえず首をひねっていると外でパトカーのサイレンの音と

凄まじい爆音が聞こえてくる。

「何だ、いったい。」

「・・・・あーーたぶん、親父だな。」

「だろうね。」

「えっ?」

「まあ、聞いとけば解るよ。」

「そこの編み笠をかぶってマントを着けた爬虫類顔の男、三輪車で道路を爆走することは

 法律で禁止されています。今すぐ停車して投降しなさい。さもないとこの対戦車バズーカが火を吹くわよ。

 ・・・・・あ、でももっとぶっとばしたいから、やっぱ逃げてくれてOK。」

何やらとてつもなく恐ろしいことを言いながら一人の婦警がミニパトの窓から身を乗りだし

バズーカを目標の男めがけてぶっ放す。しかし目標の男はまるで後ろに目があるかのごとく

的確に三輪車を動かし回避行動をとる。

「ちっ、何てすばしっこい奴。」

「我は神に選ばれし外道なのだ。貴様のような年増の攻撃など当る物か。

 味噌汁で顔を洗って出なおしてくるが良い!!!」

「年増って言うな。(怒)」

一度ミニパトの中に戻りマシンガンや手榴弾に装備し直し再び身を乗り出し攻撃を再開する。

ズガガガガガガガガガガガ

ヒュ――――ン、ドッガ―――――ン

銃弾や手榴弾の嵐にもまったく動じずひたすら回避しまくる三輪車とひたすら攻撃しまくる

ミニパトがアキト達の店の前を過ぎ去っていった。

「今のは・・・・・北辰!?」

「当たり。あれが俺の親父さ。驚いたかい?」

「あれが北辰だと言うのか・・・・・」

呆然とするアキト。まあそうなることも無理は無いような気がする。

未来で自分の人生を無茶苦茶にした一人が目の前で三輪車を駆り、ミニパトと

真昼間からカーチェイスを繰り広げているのだから。

しかも北夜が言ったことが正しければラピスを助けたのが北辰になるのだから

なおさら信じられない。気分としては夢なら早く覚めてほしいと言ったところか。

「ラピスから色々聞きました。謝ってすむとは思えませんが、

 未来で親父がしたことに対し謝罪をさせてください。」

そう言うとテーブルに手をつき頭を下げる。

「ラピスどうして話したりしたんだ。」

北夜の言葉を聞いたとたんアキトの言葉には抑揚が無くなった。

この場にいた三人はアキトが怒っていることを感じ取る。

「ラピスは何も悪くないんです。だから・・・・・」

「あなたには聞いてない。俺はラピスに聞いているんです。」

北夜の弁解を切り捨てラピスに視線を向ける。

「ラピスも解るだろう。そんな大事なこと簡単に話すと

 取り返しのつかないことになるかもしれないことぐらい。」

ラピスは黙ったままただ頷くばかりで何も話そうとしない。

そんなラピスの態度に少し罪悪感を感じたアキトは怒気を放つのをやめた。

「なあラピス、もう怒ってないからなんで話したりしたのか教えてくれないか?」

今度はなるべく優しい声で尋ねてみる。

「・・・・・本当?」

「ああ、本当さ。(ニコ)」

おずおずと聞いてくるラピスに天下無敵のテンカワスマイルをつけてそう答える。

「(ポッ)あのね、北夜の家に連れて行かれたとき、怖くて誰にも懐かなかったの。

 それである日に北夜が『どうしてそんなに怖がるの?この家の人は君を傷つけたり

 なんかしないよ。』って聞いてきたから、その時に・・・・・」

「俺も最初聞いた時は驚いたよ。いきなり『未来から来た』なんて言うものだから正直言って正気を疑った。

 でもね、その時のラピスの瞳は決して嘘をついているような瞳はしていなかったんだ。だから、きっと

 事実なんだろうと思って話を信じることにしたんだ。まあ、すべて聞いた時はさすがに驚いたけどね。」

北夜はこの日二度目の苦笑を浮かべる。

「アキト君の事を知ったのもその時さ。さすがに聞いていた俺も気分が悪くなったよ。だから、

 君が未来を変える気があるのならぜひとも手伝わしてほしいんだ。より良い未来のために。」

「本当ですか!!」

「もちろん、男に二言は無い。」

「よかったですね、あなた。」

今までしゃべらずにスペシャルジャンボパフェを食べていた琥珀も一緒に喜んでくれる。

ちなみにスペシャルジャンボパフェは綺麗に食べられていた。・・・・・恐ろしい食欲である

「ああ、これで問題の片方が解決される。北夜さん、あなたには和平派を集め議会の掌握を

 お願いできますか?」

「その仕事確かに引き受けた。まかせてくれ。」

「よし、後は軍の方を何とかすれば「そのことなら大丈夫ですよ。」・・・・・え?」

北夜の後ろに座っていた男がこちらに振り向く。その男は琥珀同様に本来ここに居るはずの無い

人間・・・・・明だった。

「明!!どうしてここにいるんだ。」

「そんなの、パフェが食べたかったからに決まってるじゃないですか。」

明はきっぱり言い切った。

「ナデシコのほうはどうしたんだよ。」

「仕事はすべてかたづけたので問題ありません。まあそんなことより、軍のほうなら俺に任してください。

 うまく掌握しときますから。」

「何か策があるのか?」

「まあ、それはおいおい話すとして。」

「ねえ、アキト。せっかく結成したんだからなにか組織の名前つけようよ。」

「・・・・・はい?」

「だからね、ここに居るメンバーはさ未来を変えるために居るわけなんだから、

 一種の組織みたいなものでしょ。名前付けたほうがいいよ、そのほうがかっこいい。」

「いきなりそんなこと言われてもなあ。」

「『ストレリチア』なんてどうですか、アキトさん。」

「あっ、良いですねそれ。それでいきましょう。さすが明さん。」

「うん、悪くないな。いいセンスしていると思うよ。」

琥珀と北夜は明の提案に賛成する。

「ねえ、アキト、『ストレリチア』って何?」

「・・・・・さあ、解らない。」

「『ストレリチア』の花言葉は『輝かしい未来』って意味なんです。俺たちはより良い未来を作るために

 戦っていくわけですからちょうど良いと思ったんです。どうでしょうか?」

「うん、文句ないよ。アキトそれで行こう。」

「ああ、俺も文句無い。・・・・・よし、これから俺たちは『ストレリチア』の名の下に頑張っていこう。」

「「「「おう!!!」」」

この時をもって『ストレリチア』は結成された。果たして彼らは花言葉どうりに『輝かしい未来』を掴む

ことができるかどうか、やはり神のみが知ることであった。






後書き

皆さんお久しぶりですakiraです。

今月中に後一話送る予定を見事に達成できました。・・・・・本当に良かった(しみじみ)

さて、次回はあの三人娘の登場です。こうご期待。

それではまた次回お会いしましょう。


代理人の感想

む〜、一瞬マジギレモードかと思った(苦笑)。

ラピスを叱るだけならもっとソフトな表現でよかったんじゃないでしょうか。

どう見ても北辰とかヤマサキに対して怒っているレベルですよ、あれ。